(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0012】
===風力発電サイト及びメッシュ===
図1を参照して、本実施形態における発電量予測装置によって発電量が予測される風力発電サイト、及び、その風力発電サイトを含む領域に画成されるメッシュを説明する。
【0013】
図1に示されるように、風力発電機31−36を含む風力発電サイト3が設けられている。風力発電機31−36のそれぞれは、1台の風力発電機でもよいし、複数の風力発電機を代表していてもよい。
【0014】
本実施形態では、LFMに係る気象予報データに基づいて風力発電サイト3の発電量を予測するので、風力発電サイト3の設置場所(
図1において太線で囲まれた範囲)を含む領域が、一辺2kmのメッシュ(区画)で画成されている。もっとも、メソモデル(MSM)などの他の気象予報データが用いられてもよく、その場合、上記領域は、例えば一辺5kmのメッシュで画成されてもよい。
【0015】
また、風力発電サイト3を含む領域は、
図1に示されるように8行7列に配置された56個のメッシュA1−G8に分けられ、風力発電サイト3は、外周のメッシュの内側に設けられているものとする。したがって、本実施形態では、風力発電サイト3の外側2kmまでの領域について気象予報データが提供されることになる。ただし、気象予報データが提供される領域を、例えば風力発電サイト3の外側4kmまで拡張してもよいし、あるいは、縮小しても構わない。
【0016】
なお、このような領域に属する全てのメッシュについての気象予測データを発電量の予測に用いる必要はなく、発電量の予測に用いる気象予報データを特定のメッシュの予報データに限定してもよい。また、本実施形態では風速の予報値が用いられるが、他の気象予報値、例えば湿度、気圧などの予報値が併用されてもよい。
【0017】
===発電量予測装置の構成===
図2、
図4−
図6、
図7A、
図7Bを参照して、本実施形態における発電量予測装置の構成を説明する。
図2は、発電量予測装置の機能を示すブロック図である。
図3は、発電量予測装置の動作を示すフローチャートである。
図4は、発電量予測装置に入力される風速予報値の一例を示す図である。
図5は、パワーカーブの一例を示すグラフである。
図6は、風速予報値の発電量への換算の一例を示す。
図7Aは、ある時刻における発電量の予測結果の一例を示し、
図7Bは、
図7Aとは別の時刻における発電量の予測結果の一例を示す。
【0018】
図2に示されるように、発電量予測装置1は、入力部11、算出部12、選択部13、出力部14、及び記憶部15を備える。なお、説明の便宜上、2014年12月20日0時に最新の気象予報情報が配信されたものとする(
図4,
図6参照)。
【0019】
入力部11は、発電量予測装置1と外部装置(不図示)との間のインターフェイスであるとともに、発電量予測装置1と使用者との間のインターフェイスでもある。具体的には、入力部11は、例えば気象庁のサーバー(不図示)から、風速などの気象予報値を示す予報情報を受信する。本実施形態において、予報情報は、56個のメッシュA1−G8のそれぞれについて所定の時間間隔毎(例えば1時間毎)に配信されるものとし、例えば配信時刻から9時間先までの1時間毎の風速の予報値を含む(
図4参照)。ここでは、風速は、
図4に示されるように南北方向の大きさと東西方向の大きさとで与えられているが、例えば風向きと大きさとで与えられてもよい。また、ここでは、地上における風速の予報値が配信されるものとするが、例えば海抜50mのような所定の高さでの風速の予報値が配信されても構わない。
【0020】
また、入力部11は、例えば風力発電サイト3に設置された情報装置(不図示)から、風力発電サイト3における発電実績を示す実績情報を受信する。本実施形態において、実績情報は、予報情報と同じ時間間隔(例えば1時間毎)に配信されるものとするが、異なる時間間隔(例えば30分毎)に配信されても構わない。入力部11は更に、例えば風力発電サイト3の情報装置(不図示)から、風力発電機31−36の故障や点検、保守による運転停止を示す情報を受信してもよい。なお、入力部11が受信した各種情報は、所定の期間分だけ記憶部15に記憶されてもよい。
【0021】
本実施形態において、予報情報は、上述したように所定の領域内の全てのメッシュについて提供されるが、予報情報が与えられるメッシュの範囲は、使用者によって、キーボードやタッチパネルスクリーンなどの入力装置(不図示)を介して適宜変更されてもよい。あるいは、入力部11は、上述した入力装置を介した使用者の指示に応じて、発電量の予測に用いられる予報情報を、受信した予報情報のうち特定のメッシュに関する予報情報に制限することができるように設計されてもよい。
【0022】
次いで算出部12について述べると、算出部12は、風力発電機31−36の設置場所を含む56個のメッシュA1−G8における風速の予報値を示す予報情報(
図4参照)に基づいて、予報値の発電量への換算値を算出する。
【0023】
具体的には、算出部12はまず、南北方向の成分Vy及び東西方向の成分Vxで表わされている風速Vを、次の数式1を用いて絶対値|V|に変換する。なお、風速の予測値が風速の大きさ及び風向きで与えられる場合には、かかる変換は不要である。
【0024】
【数1】
そして、算出部12は、このように変換された風速の絶対値|V|を、記憶部15に記憶された所定の換算式を用いて、ナセルの高さ(海抜高度)における風速の予測値|V’|に換算する。その際、ナセルの高さが風力発電機31−36毎に異なる場合には、例えば、発電機毎に風速の予測値|V’
1|−|V’
6|を求めてもよいし、ナセルの平均的な高さにおける風速の予測値|V’
av|を求めてもよい。なお、気象予報データが、風力発電機のナセルの高さにおける風速として与えられる場合、上述の換算は不要であり、配信された風速の予報値の絶対値|V|が風速の予測値|V’|となる。
【0025】
そして、算出部12は、かかる風速の予測値|V’|を、
図5に例示されるようなパワーカーブに適用して、発電量に換算する。例えば、個々の発電機のナセルにおける風速の予測値の平均|V’
av|を用いて発電量の換算値を算出する場合、かかる予測値の平均|V’
av|をパワーカーブに適用して得た値に風力発電機の稼働台数を乗じた値を発電量換算値とする。あるいは、風力発電機31−36毎の風速の予測値|V’
1|−|V’
6|を用いる場合、稼働中の風力発電機についての予測値をそれぞれのパワーカーブに適用して得た値を合計し、合計値を発電量換算値とする。この場合、風力発電機毎に異なるパワーカーブを用いれば、予測の精度が向上する。ここで、風力発電機の稼働台数や風力発電機31−36の稼働に関する情報は、記憶部15に記憶されている情報に基づく。
【0026】
かかる発電量への換算は、本実施形態では、入力部11が予報情報を受信する毎に実行される。また、予報情報は、上述したように、56個のメッシュ毎に現在時刻から9時間先までの1時間毎の予測値として与えられるから、1回の変換作業で560個(56個x10)の換算値が算出されることになる(
図6参照)。このようにして算出された発電量への換算値は、記憶部15に記憶される。
【0027】
選択部13の説明に移ると、選択部13は、所定の時間帯について上述のように算出された複数の換算値のうち、所定の時間帯における風力発電サイト3の発電実績との誤差が最小となる換算値に対応するメッシュについて算出された将来の時間帯における換算値を、発電量の予測値として選択する。例えば、
図4に示すような2014年12月20日0時に配信された予報情報に基づいて、同日0時におけるメッシュA1,A2,・・・A8・・・G8での発電量換算値が、
図6のように550[kW],538[kW],・・・513・・・425[kW]と算出されたとする。そして、2014年12月20日0時における風力発電サイト3の発電実績が510[kW]であると通知されたとき、選択部13は、かかる発電実績を上述の56個の発電量換算値のそれぞれと比較し、メッシュA8における発電量換算値513[kW]が発電実績510[kW]と最小の誤差を有すると判断する。そして、選択部13は、メッシュA8についての同日1時以降の発電量換算値を、風力発電サイト3での発電量の予測値として選択する(
図7A参照)。
【0028】
本実施形態において、選択部13は、風力発電サイト3の発電実績を示す情報が配信される毎に、その発電実績を、同時刻についての56個の発電量換算値のそれぞれと比較し、発電実績との誤差が最小となる換算値に対応するメッシュにおける将来の換算値を、風力発電サイト3における発電量の予測値として選択する。したがって、発電量の予測値として選択される値の基礎となるメッシュは、所定の時間間隔毎に変わり得る。上述した
図6の例において、発電量換算値が更新される前に2014年12月20日1時の発電実績が配信された場合を考える。この場合、
図6から、2014年12月20日1時における発電量の予測値は、
(A1, A2, ... A8, B1, ... G8) = (538, 513, ... 788, 663, ... 833)
である。したがって、メッシュG8における同時刻の発電量換算値が発電実績820[kW]に最も近いので、選択部13は、メッシュG8の同日2時以降の発電量換算値を選択することになる(
図7B参照)。
【0029】
出力部14は、算出部12が算出した発電量の予測値を表示装置2に出力する。出力部14は、発電量の予測値の時間推移が運用者に視覚的に把握されるべく、例えば
図7A、
図7Bのように表やグラフの形式で予測値を出力してもよい。また、出力部14は、過去の時刻における発電実績と将来の時刻における予測値とが時間軸に沿って表示されるように、発電実績と予測値とを出力してもよい。
【0030】
記憶部15は、入力部11が受信した予報情報や実績情報を記憶するとともに、算出部12が算出した発電量換算値を記憶する。また、記憶部15は、風力発電機31−36のナセルの高さ、風力発電機31−36のそれぞれに対応するパワーカーブ、風力発電機31−36の運転停止に関する情報を記憶する。その他、記憶部15は、発電量予測装置1の各機能を実行するためのプログラムを格納する。
【0031】
なお、上述した入力部11,算出部12,選択部13,出力部14,及び記憶部15の各機能は、CPU、RAM、及びROMを備えたコンピュータによって実現される。
【0032】
===発電量予測装置の動作===
図3を参照して、発電量予測装置1の動作を説明する。
図3は、発電量予測装置の動作を示すフローチャートである。
【0033】
発電量予測装置1が起動され、あるいは、予測対象となる風力発電サイトが選択されると、まず、ステップS1において、風速の予測値が取得されるべきメッシュが選択される。上述したとおり、本実施形態では、選択されるメッシュは、通常、風力発電サイト3の外側2kmの領域に属する56個のメッシュA1−G8である。これにより、気象予報値の位置ずれや時間ずれに由来する予測値の誤差が低減する。なお、この設定が運用者によって変更されてもよいことは上述したとおりであり、これにより、計算処理の効率化、高速化を図るとともに、風力発電サイト3の状況に応じた適切な予測値を得ることができる。
【0034】
次いで、ステップS2において、選択されたメッシュにおける気象予報値が発電量に換算される。このような発電量への換算は、算出部12において実行される。発電量への換算に際して、風力発電サイト3に属する風力発電機31−36の運転停止に関する情報が用いられるから、風力発電機の故障等による停止を踏まえた精度の高い予測が可能となる。
【0035】
気象予報値が発電量に換算されると、ステップS3において、風力発電サイト3の発電実績との誤差が最小となる発電量換算値が求められ、その発電量換算値に対応するメッシュにおける将来の発電量換算値が風力発電サイト3の発電量の予測値として選択される。かかる予測値の選択は選択部13において実行される。選択された発電量の予測値は、出力部14を介して表示装置2に出力される。これにより、系統の運用者は、最新の情報による精度の高い予測値を用いて系統の運用を行うことができる。
【0036】
このように、本実施形態では、発電実績との誤差が最小となる発電量換算値に対応するメッシュにおける将来の発電量換算値が、風力発電サイト3における発電量の予測値として選択される。そのため、気象予報値の位置ずれや時間ずれに由来する予測誤差が低減するとともに、風力発電サイト3内の風力発電機の運転停止による予測誤差が低減し、予測の精度が向上する。これにより、発電計画の効率的かつ安定的な運用が可能となる。また、風力発電サイト3の発電実績が配信される毎に、発電量の予測値が更新されるから、予測業務の自動化及び効率化を図ることができる。
【0037】
以上説明したように、発電量予測装置1は、風力発電サイト3の設置場所を含む56個のメッシュA1−G8における風速の予報値を示す予報情報に基づいて、予報値の発電量への複数の換算値を算出する算出部12と、所定の時間帯における複数の換算値のうち所定の時間帯における風力発電サイト3の発電実績との誤差が最小となる換算値に対応する区画について算出された将来の時間帯における換算値を、将来の時間帯における発電量の予測値として選択する選択部13と、選択された予測値を出力する出力部14と、を備える。かかる実施形態によれば、風力発電サイト3内の風力発電機の運転停止による予測誤差が低減し、予測の精度が向上する。このことは、発電計画の効率的かつ安定的な運用に資する。
【0038】
また、メッシュA1−G8が、風力発電サイト3の設置場所を囲む領域よりも広い領域に亘って画成されることで、気象予報値の位置ずれや時間ずれに由来する予測誤差も低減させることができるから、予測の精度が向上する。
【0039】
また、算出部12が、風速と風力発電機の出力との関係を示すパワーカーブを用いて発電量換算値を算出することで、個々の発電機の特性に応じた発電量の予測が可能となり、予測の精度が向上する。
【0040】
また、算出部12が、風力発電機のナセルの高さにおける風速の予測値を用いて発電量換算値を算出することで、風力発電機が実際に受ける風力に近い状況の下で発電量を予測することができるから、予測の精度が向上する。
【0041】
また、算出部12は、所定の時間間隔毎に発電量換算値を算出し、選択部13は、算出部12が発電量換算値を算出すると、予測値を選択し、出力部14は、選択部13が予測値を選択すると、選択された予測値を出力することが好ましい。これにより、発電量の予測値が定期的に更新されるから、より精度の高い予測値を系統運用者に提示することが可能となる。また、予測業務の自動化及び効率化を図ることができる。
【0042】
尚、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、気象予報情報は、30分毎に配信されてもよい。また、風力発電機の停止に関する情報は、系統運用者によって、入力装置を介して入力されてもよい。