特許第6435903号(P6435903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6435903
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/33 20180101AFI20181203BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20181203BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20181203BHJP
【FI】
   F21S41/33
   F21W102:13
   F21Y115:10
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-25569(P2015-25569)
(22)【出願日】2015年2月12日
(65)【公開番号】特開2016-149252(P2016-149252A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2018年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 和則
【審査官】 杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−10968(JP,A)
【文献】 特開平9−22607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/33
F21W 102/13
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
第1焦点が前記光源もしくはその近傍に位置する楕円を基調とする反射面を有するリフレクタと、
前記反射面からの反射光を車両の前方に照射するレンズと、
を備え、
前記反射面は、集光配光パターンを形成する集光反射面と、前記集光反射面よりも前記レンズ側に配置されていて、拡散配光パターンを形成する拡散反射面と、に分割されていて、
前記集光反射面は、光軸の直上に配置されていて、前記集光配光パターンのほぼ全体の第1集光配光パターンを形成する第1集光反射面と、前記第1集光反射面の右側に配置されていて、前記集光配光パターンのほぼ中央部分から右側端部分までの第2集光配光パターンを形成する第2集光反射面と、前記第1集光反射面の左側に配置されていて、前記集光配光パターンのほぼ中央部分から左側端部分までの第3集光配光パターンを形成する第3集光反射面と、に分割されている、
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記光源は、長手方向が前記光軸に対して左右方向に交差する長方形の発光部を有する半導体型光源である、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記集光反射面と前記拡散反射面との分割位置は、前記光源の前記レンズ側の縁よりも前記レンズと反対側に位置し、
前記集光反射面は、前記拡散反射面よりも前記光源側に配置されていて、
前記第1集光反射面は、前記第2集光反射面および前記第3集光反射面よりも前記光源側に配置されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プロジェクタタイプの車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用前照灯は、従来からある(たとえば、特許文献1、特許文献2)。従来の特許文献1の車両用前照灯は、LEDと、リフレクタと、投影レンズと、を備え、リフレクタが、第1反射面と、第2反射面と、を有するものである。従来の特許文献1の車両用前照灯は、LEDからの光を第1反射面で反射して拡散配光パターンを形成し、LEDからの光を1個の第2反射面で反射して集光配光パターンを形成するものである。
【0003】
従来の特許文献2の車両用前照灯は、光源モジュールと、リフレクタと、投影レンズと、を備え、リフレクタが、第1反射面と、左右に2個に分割された第2反射面と、を有するものである。従来の特許文献2の車両用前照灯は、光源モジュールからの光を第1反射面で反射して拡散配光パターンを形成し、光源モジュールからの光を左右2個の第2反射面で反射して集光配光パターンを形成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−143226号公報
【特許文献2】特開2014−10968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の特許文献1の車両用前照灯は、集光配光パターンを形成する第2反射面が1個のものであるから、1個の反射面において、光軸の直上の光をスクリーンの中央に照射し、光軸から離れる光をスクリーンの中央から離れるように照射するものである。この結果、従来の特許文献1の車両用前照灯は、図8(B)に示すように、LEDの発光部の投影像I01が投影像I01の中央部において交差するので、配光パターン(ハイビーム配光パターン)P01の中央の上方に暗部D1が発生する場合があり、理想の配光パターン(ハイビーム配光パターン)が得られない。
【0006】
従来の特許文献2の車両用前照灯は、集光配光パターンを形成する第2反射面が左右に2個に分割されているものであるから、左右2個の反射面において、光軸から離れる光をスクリーンの中央に照射し、光軸の直上の光をスクリーンの中央から離すように照射するものである。この結果、従来の特許文献2の車両用前照灯は、図9(B)に示すように、光源モジュールの発光部の投影像I02が投影像I02の左側端部と投影像I02の右側端部とが交差するので、配光パターン(ハイビーム配光パターン)P02の中央の左右の上方に暗部D2が発生する場合があり、理想の配光パターン(ハイビーム配光パターン)が得られない。
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、従来の車両用前照灯では、理想の配光パターン(ハイビーム配光パターン)が得られない、という点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明(請求項1にかかる発明)は、光源と、第1焦点が光源もしくはその近傍に位置する楕円を基調とする反射面を有するリフレクタと、反射面からの反射光を車両の前方に照射するレンズと、を備え、反射面が、集光配光パターンを形成する集光反射面と、集光反射面よりもレンズ側に配置されていて、拡散配光パターンを形成する拡散反射面と、に分割されていて、集光反射面が、光軸の直上に配置されていて、集光配光パターンのほぼ全体の第1集光配光パターンを形成する第1集光反射面と、第1集光反射面の右側に配置されていて、集光配光パターンのほぼ中央部分から右側端部分までの第2集光配光パターンを形成する第2集光反射面と、第1集光反射面の左側に配置されていて、集光配光パターンのほぼ中央部分から左側端部分までの第3集光配光パターンを形成する第3集光反射面と、に分割されている、ことを特徴とする。
【0009】
この発明(請求項2にかかる発明)は、光源が、長手方向が光軸に対して左右方向に交差する長方形の発光部を有する半導体型光源である、ことを特徴とする。
【0010】
この発明(請求項3にかかる発明)は、集光反射面と拡散反射面との分割位置が、光源のレンズ側の縁よりもレンズと反対側に位置し、集光反射面が、拡散反射面よりも光源側に配置されていて、第1集光反射面が、第2集光反射面および第3集光反射面よりも光源側に配置されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明の車両用前照灯は、第1集光反射面により集光配光パターンのほぼ全体の第1集光配光パターンを形成し、第2集光反射面により集光配光パターンのほぼ中央部分から右側端部分までの第2集光配光パターンを形成し、第3集光反射面により集光配光パターンのほぼ中央部分から左側端部分までの第3集光配光パターンを形成するものである。この結果、この発明の車両用前照灯は、図8(A)、(B)に示すように、従来の特許文献1の車両用前照灯による配光パターン(ハイビーム配光パターン)P01の中央の上方に発生する暗部D1、および、図9(A)、(B)に示すように、従来の特許文献2の車両用前照灯による配光パターン(ハイビーム配光パターン)P02の中央の左右の上方に発生する暗部D2、を集光配光パターンP1、P2、P3内に包含することができる。これにより、この発明の車両用前照灯は、理想の配光パターン(ハイビーム配光パターン)が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態を示すランプユニットの概略縦断面図(概略垂直断面図)である。
図2図2は、リフレクタの集光反射面と拡散反射面の一部を示す底面図(下から見た図であって、図1におけるII矢視図)である。
図3図3は、半導体型光源を示す平面図(上から見た図であって、図1におけるIII矢視図)である。
図4図4は、第1集光反射面、第2集光反射面、第3集光反射面から反射(照射)された半導体型光源の発光部の投影像を示す説明図である。
図5図5は、第1集光反射面、第2集光反射面、第3集光反射面が形成する第1集光配光パターン、第2集光配光パターン、第3集光配光パターンを示す説明図である。
図6図6は、第1集光配光パターン、第2集光配光パターン、第3集光配光パターンを合成(重畳)した集光配光パターンを示す概略説明図である。
図7図7は、集光配光パターンと拡散配光パターンとを示す概略説明図である。
図8図8は、集光配光パターンの効果を示す概略説明図である。
図9図9は、集光配光パターンの効果を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態(実施例)の1例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。図1において、半導体型光源、投影レンズ、可動シェード、ソレノイドのハッチングを省略してある。図4図9において、符号「VU−VD」は、スクリーンの上下の垂直線を示す。符号「HL−HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。この明細書、別紙の特許請求の範囲において、前、後、上、下、左、右は、この発明にかかる車両用前照灯を車両に装備した際の前、後、上、下、左、右である。図5の等照度曲線において、中央の曲線は、高照度曲線であり、外側に行くに従って照度が低下していく。
【0014】
(実施形態の構成の説明)
以下、この実施形態における車両用前照灯の構成について説明する。この例は、たとえば、自動車用前照灯のヘッドランプについて説明する。
【0015】
(車両用前照灯1の説明)
図1において、符号1は、この実施形態における車両用前照灯である。前記車両用前照灯1は、車両の前部の左右両側にそれぞれ搭載されている。前記車両用前照灯1は、図1に示すように、ランプハウジング(図示せず)と、ランプレンズ(図示せず)と、光源としての半導体型光源2と、リフレクタ3と、レンズとしての投影レンズ4と、ヒートシンク部材5と、可動シェード6と、ソレノイド7と、動力伝達部材8と、を備える。
【0016】
前記ランプハウジングおよび前記ランプレンズ(たとえば、素通しのアウターレンズなど)は、灯室(図示せず)を画成する。前記半導体型光源2および前記投影レンズ4および前記リフレクタ3および前記ヒートシンク部材5および前記可動シェード6および前記ソレノイド7および前記動力伝達部材8は、プロジェクタタイプのランプユニットを構成する。前記ランプユニット2、3、4、5、6、7、8は、前記灯室内に配置されていて、かつ、上下方向用光軸調整機構(図示せず)および左右方向用光軸調整機構(図示せず)を介して前記ランプハウジングに取り付けられている。
【0017】
なお、前記灯室内には、前記ランプユニット2、3、4、5、6、7、8以外のランプユニット、たとえば、クリアランスランプユニット、ターンシグナルランプユニット、デイタイムランニングランプユニットなどが配置される場合がある。また、前記灯室内には、インナーパネル(図示せず)やインナーハウジング(図示せず)やインナーレンズ(図示せず)などが配置される場合がある。
【0018】
(ヒートシンク部材5の説明)
前記ヒートシンク部材5は、たとえば、樹脂や金属製ダイカスト(アルミダイカスト)などの熱伝導率が高い材料からなる。前記ヒートシンク部材5には、前記半導体型光源2および前記リフレクタ3および前記投影レンズ4および前記ソレノイド7および前記動力伝達部材8が取り付けられている。前記ヒートシンク部材5は、放熱部材と取付部材とを兼用する。
【0019】
前記ヒートシンク部材5は、板部50と、リング部51と、複数枚のフィン部52と、から構成されている。前記板部50には、前記半導体型光源2および前記リフレクタ3および前記ソレノイド7および前記動力伝達部材8が取り付けられている。前記リング部51には、前記投影レンズ4が取り付けられている。なお、前記リング部51を前記ヒートシンク部材5と別個の部材で構成して、前記ヒートシンク部材5に取り付けても良い。
【0020】
(半導体型光源2の説明)
前記半導体型光源2は、たとえば、LED、OELまたはOLED(有機EL)などの自発光半導体型光源である。前記半導体型光源2は、光を放射する発光部20を有する。前記発光部20は、図3に示すように、長手方向が光軸(前記車両用前照灯1の光軸、前記リフレクタ3の反射面の光軸(図示せず)、前記投影レンズ4の光軸Zなど。以下、「光軸Z」と称する)に対して左右方向に交差(この例では、直交)する長方形形状の発光面を有する。前記発光部20は、この例では、上向きである。
【0021】
前記半導体型光源2は、前記ヒートシンク部材5の前記板部50に実装されていて、かつ、前記ヒートシンク部材5の前記板部50にホルダ21を介して取り付けられている。前記ホルダ21は、前記ヒートシンク部材5の前記板部50にスクリューなど(図示せず)により取り付けられている。前記半導体型光源2には、点灯回路(図示せず)からの電流が供給される。
【0022】
(リフレクタ3の説明)
前記リフレクタ3は、たとえば、樹脂部材などの耐熱性が高くかつ光不透過性の材料からなる。前記リフレクタ3は、前記ヒートシンク部材5の前記板部50にスクリューなど(図示せず)により取り付けられている。
【0023】
前記リフレクタ3は、前側部分および下側部分が開口し、かつ、後側部分および上側部分および左右両側部分が閉塞した中空形状をなす。前記リフレクタ3の閉塞部分の凹内面には、楕円を基調(回転楕円面を基本)とした自由曲面または回転楕円面からなる反射面(収束型反射面)30、31、32、33が設けられている。前記反射面30、31、32、33は、前記半導体型光源2の前記発光部20の中心もしくはその近傍に位置する第1焦点F1と、第2焦点(第2焦線)F2と、前記第1焦点F1と前記第2焦点F2とを結ぶ前記光軸と、を有する。前記反射面30、31、32、33は、前記半導体型光源2の上向きの前記発光部20の前記発光面からの光を反射光として前記投影レンズ4側に反射させるものである。
【0024】
前記反射面は、車両の後方側の集光反射面31、32、33と、前記第1集光反射面31に対して車両の前方側すなわち前記投影レンズ4側に位置する拡散反射面30と、に段部を介してすなわちセグメントにより分割されている。前記集光反射面31、32、33は、集光配光パターンP1、P2、P3を形成する。前記拡散反射面30は、拡散配光パターンP0を形成する。前記集光反射面31、32、33と前記拡散反射面30との分割位置すなわち段部は、前記半導体型光源2の前記発光部20の前側すなわち前記投影レンズ4側の縁よりも後側すなわち前記投影レンズ4と反対側に位置する。前記集光反射面31、32、33は、前記拡散反射面30よりも前記半導体型光源2側に近い位置に配置されている。
【0025】
前記集光反射面は、第1集光反射面31と、第2集光反射面32と、第3集光反射面33と、に段部を介してすなわちセグメントにより分割されている。前記第1集光反射面31は、前記光軸Zの直上に配置されていて、前記集光配光パターンのほぼ全体の第1集光配光パターンP1を形成する。前記第2集光反射面32と、前記第1集光反射面31の右側に配置されていて、前記集光配光パターンのほぼ中央部分から右側端部分までの第2集光配光パターンP2を形成する。前記第3集光反射面33は、前記第1集光反射面31の左側に配置されていて、前記集光配光パターンのほぼ中央部分から左側端部分までの第3集光配光パターンP3を形成する。前記第1集光反射面31は、前記第2集光反射面32および前記第3集光反射面33よりも前記半導体型光源2に近い位置に配置されている。
【0026】
前記光軸Zの直上に配置されている前記第1集光反射面31から反射(照射)された前記半導体型光源2の前記発光部20の第1投影像I1は、図4(A)に示すように、横長である。図4(A)に示されている前記第1投影像I1は、図2における前記第1集光反射面31の点Aから点Bまでの二点鎖線上で反射(照射)された投影像である。前記第1集光反射面31は、前記光軸Zの直上で前記半導体型光源2に近い位置に配置されているので、前記第1投影像I1は、大きい。この結果、前記第1集光反射面31は、図5(A)に示すように、広い範囲を横長の配光である前記第1集光配光パターンP1で照射することができる。すなわち、前記第1集光反射面31は、横長の前記第1集光配光パターンP1を照射するのに適している。前記第1投影像I1および前記第1集光配光パターンP1は、スクリーンの上下の垂直線VU−VDにおいて、ほぼ左右対称である。
【0027】
前記第2集光反射面32から反射(照射)された前記半導体型光源2の前記発光部20の第2投影像I2は、図4(B)に示すように、横長の投影像から縦長の投影像までが含まれている。図4(B)に示されている前記第2投影像I2は、図2における前記第2集光反射面32の点Cから点Dまでの二点鎖線上で反射(照射)された投影像である。前記第2集光反射面32において、前記光軸Zおよび前記半導体型光源2に近い位置の前記点Dから反射(照射)される前記第2投影像I2は、横長で大きい。前記第2集光反射面32において、前記点Dすなわち前記光軸Zおよび前記半導体型光源2から離れるに従って、前記第2投影像I2は、縦長で小さい投影像に連続的に変化する。前記第2集光反射面32において、前記光軸Zおよび前記半導体型光源2から遠い位置の前記点Cから反射(照射)される前記第2投影像I2は、縦長で小さい。この結果、前記第2集光反射面32は、図4(B)に示すように、前記光軸Zおよび前記半導体型光源2から遠い位置から反射(照射)される縦長で小さい前記第2投影像I2を、スクリーンの中央(すなわち、スクリーンの上下の垂直線VU−VDとスクリーンの左右の水平線HL−HRとが交差する中央)に、集めることにより、図5(B)に示すように、スクリーンの中央に高照度帯(ピーク)を形成することができる。すなわち、前記第2集光反射面32は、ほぼ中央部分から右側端部分までの前記第2集光配光パターンP2を照射するのに適している。
【0028】
前記第3集光反射面33から反射(照射)された前記半導体型光源2の前記発光部20の第3投影像I3は、図4(C)に示すように、横長の投影像から縦長の投影像までが含まれている。図4(C)に示されている前記第3投影像I3は、図2における前記第3集光反射面33の点Eから点Fまでの二点鎖線上で反射(照射)された投影像である。前記第3集光反射面33において、前記光軸Zおよび前記半導体型光源2に近い位置の前記点Eから反射(照射)される前記第3投影像I3は、横長で大きい。前記第3集光反射面33において、前記点Eすなわち前記光軸Zおよび前記半導体型光源2から離れるに従って、前記第3投影像I3は、縦長で小さい投影像に連続的に変化する。前記第3集光反射面33において、前記光軸Zおよび前記半導体型光源2から遠い位置の前記点Fから反射(照射)される前記第3投影像I3は、縦長で小さい。この結果、前記第3集光反射面33は、図4(C)に示すように、前記光軸Zおよび前記半導体型光源2から遠い位置から反射(照射)される縦長で小さい前記第3投影像I3をスクリーンの中央に集めることにより、図5(C)に示すように、スクリーンの中央に高照度帯(ピーク)を形成することができる。すなわち、前記第3集光反射面33は、ほぼ中央部分から左側端部分までの前記第3集光配光パターンP3を照射するのに適している。
【0029】
前記第2投影像I2および前記第2集光配光パターンP2と、前記第3投影像I3および前記第3集光配光パターンP3とは、ほぼ左右対称(ほぼ左右反転)である。
【0030】
(投影レンズ4の説明)
前記投影レンズ4は、たとえば、PC材、PMMA材、PCO材などの樹脂製のレンズからなるものである。すなわち、前記半導体型光源2の前記発光部20から放射される光は、高い熱を持たないので、前記投影レンズ4として樹脂製のレンズを使用することができる。前記投影レンズ4は、前記ヒートシンク部材5の前記リング部51に取り付けられている。なお、前記投影レンズ4は、前記リング部51の代わりに、前記ヒートシンク部材5と別個のホルダを使用して前記ヒートシンク部材5に取り付けても良い。
【0031】
前記投影レンズ4は、焦点(焦線、レンズ焦点、レンズ焦線、物空間側の焦点面であるメリジオナル像面)F3および前記光軸Zを有する。前記投影レンズ4の前記焦点F3は、前記反射面30、31、32、33の前記第2焦点F2もしくはその近傍に位置する。前記投影レンズ4の前記光軸Zと、前記反射面30、31、32、33の前記光軸とは、前記第2焦点F2および前記焦点F3もしくはその近傍において交差している。なお、前記投影レンズ4の前記光軸Zと、前記反射面30、31、32、33の前記光軸とは、一致もしくはほぼ一致している場合もある。また、前記焦点F1、F2、F3、前記光軸Zは、図1に示す位置以外の位置に位置する場合がある。
【0032】
前記投影レンズ4は、非球面を基本とする投影レンズである。前記投影レンズ4は、後面の入射面40と、前面の出射面41と、から構成されている。前記入射面40は、前記リフレクタ3と対向する。前記入射面40は、平面もしくは非球面のほぼ平面(前記リフレクタ3に対して凸面あるいは凹面)をなす。前記出射面41は、非球面の凸面をなす。
【0033】
前記投影レンズ4は、前記半導体型光源2の前記発光部20からの前記光であって、前記リフレクタ3の前記反射面30、31、32、33からの前記反射光を、外部すなわち車両の前方に照射する。すなわち、前記投影レンズ4は、前記第1集光配光パターンP1、前記第2集光配光パターンP2、前記第3集光配光パターンP3、前記拡散配光パターンP0を車両の前方に照射する。
【0034】
(ソレノイド7の説明)
前記ソレノイド7は、前記ヒートシンク部材5の前記板部50にスクリューなど(図示せず)により取り付けられている。前記ソレノイド7は、プランジャー70および前記動力伝達部材8を介して前記可動シェード6を第1位置(図1中の二点鎖線にて示す位置)と第2位置(図1中の実線にて示す位置)とに移動させて位置させるものである。
【0035】
(可動シェード6の説明)
前記可動シェード6は、光不透過部材、この例では金属板から構成されている。前記可動シェード6は、前記動力伝達部材8を介して前記ソレノイド7の前記プランジャー70に取り付けられている。前記可動シェード6は、金属板をプレス絞り加工して形成されている。前記可動シェード6は、前記半導体型光源2と前記投影レンズ4との間に配置されている。前記可動シェード6は、前記第1位置に位置する時には、前記反射面30、31、32、33からの前記反射光の一部をカットオフしカットオフされていない残りの前記反射光で上縁にカットオフライン(図示せず)およびエルボー点(図示せず)を有するロービーム配光パターン(図示せず)を形成するものである。前記可動シェード6は、前記第2位置に位置する時には、ハイビーム配光パターンすなわち前記第1集光配光パターンP1、前記第2集光配光パターンP2、前記第3集光配光パターンP3、前記拡散配光パターンP0を形成するものである。
【0036】
(動力伝達部材8の説明)
前記動力伝達部材8は、前記可動シェード6と前記ソレノイド7の前記プランジャー70とに取り付けられている。前記動力伝達部材8は、リンク部材とばね部材などから構成されている。前記動力伝達部材8は、前記ソレノイド7の動力を前記可動シェード6に伝達するものである。
【0037】
(実施形態の作用の説明)
この実施形態における車両用前照灯1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0038】
半導体型光源2の発光部20を点灯発光させる。すると、上向きの発光部20から放射された光は、リフレクタ3の拡散反射面30、第1集光反射面31、第2集光反射面32、第3集光反射面33で反射光として、投影レンズ4側に反射する。ここで、ソレノイド7の駆動により、動力伝達部材8を介して可動シェード6が第2位置に位置する時には、反射光は、可動シェード6に遮蔽されずに投影レンズ4側に進む。投影レンズ4側に進んだ反射光は、投影レンズ4の入射面40から投影レンズ4中に入射して、投影レンズ4の出射面41からハイビーム配光パターンとして、外部すなわち車両の前方に照射される。
【0039】
すなわち、拡散反射面30からの反射光は、拡散配光パターンP0として車両の前方に照射される。第1集光反射面31からの反射光は、第1集光配光パターンP1として車両の前方に照射される。第2集光反射面32からの反射光は、第2集光配光パターンP2として車両の前方に照射される。第3集光反射面33からの反射光は、第3集光配光パターンP3として車両の前方に照射される。この拡散配光パターンP0と、第1集光配光パターンP1と、第2集光配光パターンP2と、第3集光配光パターンP3とが、合成(重畳)されて、ハイビーム配光パターンが形成される。
【0040】
ここで、ソレノイド7の駆動を停止して、動力伝達部材8を介して可動シェード6を第2位置から第1位置に移動させて第1位置に位置させる。すると、可動シェード6により遮蔽されていなかった反射光の一部が可動シェード6により遮蔽される。そして、第1位置に位置する可動シェード6により遮蔽されなかった反射光の残りが投影レンズ4側に進む。投影レンズ4側に進んだ反射光は、投影レンズ4の入射面40から投影レンズ4中に入射して、投影レンズ4の出射面41からロービーム配光パターンとして、外部すなわち車両の前方に照射される。すなわち、拡散配光パターンP0および第1集光配光パターンP1および第2集光配光パターンP2および第3集光配光パターンP3の一部が遮蔽されて残りの配光パターンで、上縁にカットオフラインおよびエルボー点を有するロービーム配光パターンが形成される。
【0041】
(実施形態の効果の説明)
この実施形態における車両用前照灯1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0042】
この実施形態における車両用前照灯1は、第1集光反射面31により集光配光パターンのほぼ全体の第1集光配光パターンP1を形成し(図5(A)、図6図7図8(A)、図9(A)を参照)、第2集光反射面32により集光配光パターンのほぼ中央部分から右側端部分までの第2集光配光パターンP2を形成し(図5(B)、図6図7図8(A)、図9(A)を参照)、第3集光反射面33により集光配光パターンのほぼ中央部分から左側端部分までの第3集光配光パターンP3を形成する(図5(C)、図6図7図8(A)、図9(A)を参照)ものである。
【0043】
この結果、この実施形態における車両用前照灯1は、図8(A)、(B)に示すように、従来の特許文献1の車両用前照灯による配光パターン(ハイビーム配光パターン)P01の中央の上方に発生する暗部D1、および、図9(A)、(B)に示すように、従来の特許文献2の車両用前照灯による配光パターン(ハイビーム配光パターン)P02の中央の左右の上方に発生する暗部D2、を集光配光パターンP1、P2、P3内に包含することができる。これにより、この実施形態における車両用前照灯1は、理想の配光パターンすなわちハイビーム配光パターンP0、P1、P2、P3が得られる。
【0044】
この実施形態における車両用前照灯1は、光源が、長手方向が光軸Zに対して左右方向に交差する長方形の発光部20を有する半導体型光源2である。このために、この実施形態における車両用前照灯1は、第1集光反射面31から横長の半導体型光源2の発光部20の第1投影像I1を反射させることができ、広い範囲の横長の第1集光配光パターンP1を照射するのに適している。また、この実施形態における車両用前照灯1は、第2集光反射面32から横長から縦長までの半導体型光源2の発光部20の第2投影像I2を反射させることができ、ほぼ中央部分から右側端部分までの第2集光配光パターンP2を照射するのに適している。さらに、この実施形態における車両用前照灯1は、第3集光反射面33から横長から縦長までの半導体型光源2の発光部20の第3投影像I3を反射させることができ、ほぼ中央部分から左側端部分までの第3集光配光パターンP3を照射するのに適している。
【0045】
この実施形態における車両用前照灯1は、第1集光反射面31、第2集光反射面32、第3集光反射面33と拡散反射面30との分割位置が、半導体型光源2の発光部20の前側(投影レンズ4側)の縁よりも後側(投影レンズ4と反対側)に位置しているものである。このために、この実施形態における車両用前照灯1は、第1集光反射面31、第2集光反射面32、第3集光反射面33と拡散反射面30との分割面に半導体型光源2の発光部20からの光を入射させることができる。
【0046】
この実施形態における車両用前照灯1は、第1集光反射面31、第2集光反射面32、第3集光反射面33が拡散反射面30よりも半導体型光源2の発光部20側に配置されているものである。このために、この実施形態における車両用前照灯1は、第1集光反射面31、第2集光反射面32、第3集光反射面33により、第1集光配光パターンP1、第2集光配光パターンP2、第3集光配光パターンP3を形成するのに適していて、かつ、拡散反射面30より拡散配光パターンP0を形成するのに適している。
【0047】
この実施形態における車両用前照灯1は、第1集光反射面31が第2集光反射面32および第3集光反射面33よりも半導体型光源2の発光部20側に配置されているものである。このために、この実施形態における車両用前照灯1は、第1集光反射面31により、大きい横長の第1投影像I1を反射させるのに適していて、かつ、第2集光配光パターンP2、第3集光配光パターンP3により、大きい横長の投影像から小さい縦長の投影像までが含まれている第2投影像I2、第3投影像I3を反射させるのに適している。
【0048】
(実施形態以外の例の説明)
なお、この実施形態においては、可動シェード6とソレノイド7と動力伝達部材8との作用により、ロービーム配光パターンとハイビーム配光パターンとに切り替わるものである。ところが、この発明においては、可動シェード6およびソレノイド7および動力伝達部材8を使用せずに、ハイビーム配光パターンのみを照射するものであっても良い。
【符号の説明】
【0049】
1 車両用前照灯
2 半導体型光源
20 発光部
21 ホルダ
3 リフレクタ
30 拡散反射面
31 第1集光反射面
32 第2集光反射面
33 第3集光反射面
4 投影レンズ
40 入射面
41 出射面
5 ヒートシンク部材
50 板部
51 リング部
52 フィン部
6 可動シェード
7 ソレノイド
70 プランジャー
8 動力伝達部材
A、B、C、D、E、F 点
D1 従来の特許文献1の車両用前照灯による暗部
D2 従来の特許文献2の車両用前照灯による暗部
F1 第1焦点
F2 第2焦点
F3 焦点
HL−HR スクリーンの左右の水平線
I1 第1投影像
I2 第2投影像
I3 第3投影像
I01 従来の特許文献1の車両用前照灯による投影像
I02 従来の特許文献2の車両用前照灯による投影像
P0 拡散配光パターン
P1 第1集光配光パターン
P2 第2集光配光パターン
P3 第3集光配光パターン
P01 従来の特許文献1の車両用前照灯によるハイビーム配光パターン
P02 従来の特許文献2の車両用前照灯によるハイビーム配光パターン
VU−VD スクリーンの上下の垂直線
Z 光軸
図1
図2
図3
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図9