【実施例】
【0015】
(実施例1)
上記電力変換装置に係る実施例について、
図1〜
図8を用いて説明する。
図5に示すごとく、本例の電力変換装置1は、コンデンサ2と、該コンデンサ2を冷却する放熱部材3とを備える。
図1〜
図3に示すごとく、コンデンサ2は、コンデンサ素子21と、電極部22と、バスバー23と、耐湿部材24とを備える。
【0016】
図7に示すごとく、コンデンサ素子21は、誘電体210と、該誘電体210の表面に形成された金属層211とを備える。電極部22は、コンデンサ素子21に形成されており、多孔質金属材料からなる。電極部22は、金属層211に接続している。
図1、
図2に示すごとく、電極部22の、金属層211に接続した側とは反対側の主面S1に、バスバー23が接続している。バスバー23は、耐湿性を有する金属材料からなる。
【0017】
耐湿部材24とバスバー23とによって、コンデンサ素子21及び電極部22を封止してある。耐湿部材24は、バスバー23の一部を覆っている。
バスバー23及び電極部22は、コンデンサ素子23と放熱部材3との間に介在している。
バスバー23の、放熱部材3側の主面S2は、耐湿部材24から露出している。
【0018】
本例の電力変換装置1は、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載するための、車載用電力変換装置である。また、コンデンサ素子21は、フィルムコンデンサ素子である。
図6に示すごとく、コンデンサ素子21は、合成樹脂からなるフィルム(誘電体210)と、該フィルムの表面に形成した金属層211とを備える。このフィルムを巻回することにより、コンデンサ素子21を形成してある。金属層211には、一方の電極部22aに接続した第1金属層211aと、他方の電極部22b(
図1参照)に接続した第2金属層211bとがある。また、電極部22は、メタリコン電極である。
【0019】
図5、
図8に示すごとく、本例の電力変換装置1は、フィルタコンデンサ2aと平滑コンデンサ2bとの、2個のコンデンサ2(2a,2b)を備える。
【0020】
図1、
図4に示すごとく、バスバー23から、コンデンサ素子21を他の電子部品5に電気接続するための接続端子230が延出している。バスバー23及び接続端子230は、銅板等からなる。
【0021】
耐湿部材24は、コンデンサ素子21の側面S3と、電極部22の側面S4と、バスバー23の側面S5とを覆っている。耐湿部材24は、エポキシ樹脂等の合成樹脂からなる。また、バスバー23は、電極部22の主面S1を全て覆っている。
【0022】
上述したように、電極部22は多孔質金属材料によって形成されているため、透湿性を有する。また、コンデンサ素子21に水分が浸入すると、コンデンサ素子21の金属層211(
図7参照)が酸化して、静電容量が低下するおそれがある。そのため本例では、電極部22及びコンデンサ素子21を、耐湿性を有するバスバー23と、耐湿部材24とによって封止している。これにより、外部から電極部22やコンデンサ素子21に水分が浸入することを防止している。
【0023】
また、本例では、放熱部材3を用いてバスバー23を冷却している。これにより、電極部22を冷却し、さらにコンデンサ素子21を冷却している。そのため、バスバー23は冷却板としての機能も有する。このように、本例のバスバー23は、コンデンサ素子21を冷却するための冷却板としての機能と、外部から水分が浸入することを防止する防水板としての機能と、コンデンサ素子21と他の電子部品5とを電気接続するための機能とを兼ね備えている。
【0024】
図1、
図2に示すごとく、コンデンサ素子21に形成された2個の電極22(22a,22b)に、それぞれバスバー23(23a,23b)が接続している。本例では、2個の電極22(22a,22b)を両方とも、コンデンサ素子21と放熱部材3との間に配置してある。
【0025】
一方、本例の放熱部材3は、冷媒11が流れる流路12が内部に形成された冷却管3aである。冷却管3aは金属製である。冷却管3aとバスバー23との間には、これらを絶縁する絶縁部材6が介在している。絶縁部材6はセラミック製である。
【0026】
図5に示すごとく、本例の電力変換装置1は、コンデンサ2以外の電子部品5(5
S,5
L)を複数個、備える。電子部品5には、半導体モジュール5
Sとリアクトル5
Lとがある。コンデンサ2(2a,2b)とリアクトル5
Lと半導体モジュール5
Sとは、接続板14によって電気接続されている。これにより、昇圧回路100(
図8参照)及びインバータ回路101を構成している。
【0027】
本例では、電子部品5(5
S,5
L)と、コンデンサ2(2a,2b)と、冷却管3aとをX方向に積層して積層体10を形成してある。積層体10はケース13に収納されている。ケース13の第1壁部131と積層体10との間に、加圧部材4(板ばね)が配されている。この加圧部材4によって、積層体10をケース13の第2壁部132に向けて加圧している。これにより、コンデンサ2(2a,2b)のバスバー23を冷却管3aに押し当て、該バスバー23を冷却している。また、加圧部材4の加圧力によって、電子部品5(5
S,5
L)と冷却管3aとの接触圧を確保すると共に、積層体10をケース10内に固定している。
【0028】
図5に示すごとく、X方向に隣り合う2つの冷却管3aは、一対の連結管17によって連結されている。連結管17は、パワー端子52(
図6参照)の突出方向(Z方向)とX方向との双方に直交する幅方向(Y方向)における、冷却管3aの両端部にそれぞれ設けられている。また、一部の冷却管3aには、冷媒11を導入するための導入管15と、冷媒11を導出するための導出管16とが接続している。導入管15から冷媒11を導入すると、冷媒11は連結管17を通って全ての冷却管3a内を流れ、導出管16から導出する。これにより、コンデンサ2(2a,2b)と電子部品5(5
S,5
L)とを冷却している。
【0029】
図6に示すごとく、半導体モジュール5
Sは、半導体素子50(
図8参照)を内蔵する本体部51と、該本体部51から突出したパワー端子52と、制御端子53とを備える。パワー端子52には、直流電圧が加わる正極端子52p及び負極端子52nと、三相交流モータ81(
図8参照)に接続される交流端子52cとがある。また、制御端子53は制御回路基板18に接続している。制御回路基板18によって上記半導体素子50のスイッチング動作を制御している。
【0030】
図8に示すごとく、本例では、フィルタコンデンサ2aと、リアクトル5
Lと、一部の半導体モジュール5
Sとによって、上記昇圧回路100を形成してある。また、他の半導体モジュール5
Sと平滑コンデンサ2bとによって、インバータ回路101を形成してある。本例では、昇圧回路100を用いて直流電源8の電圧を昇圧し、その後、インバータ回路101を用いて直流電力を交流電力に変換している。そして、得られた交流電力を用いて、三相交流モータ81を駆動している。これにより、上記車両を走行させている。フィルタコンデンサ2aは、直流電源8から供給される電流Iに含まれるノイズ電流を除去している。また、平滑コンデンサ2bは、昇圧回路100によって昇圧された直流電圧を平滑化している。
【0031】
本例の作用効果について説明する。
図1、
図2に示すごとく、本例では、バスバー23及び電極部22を、コンデンサ素子21と放熱部材3との間に介在させている。
そのため、コンデンサ素子21の冷却効率を高めることができる。すなわち、上記構成にすると、放熱部材3の近傍にバスバー23が配されるため、放熱部材3によってバスバー23を冷却でき、さらに電極部22を冷却することができる。上述したように、コンデンサ素子21は、誘電体210(
図7参照)と、該誘電体210の表面に形成された金属層211とを備え、この金属層211が主に発熱する。金属層211は、電極部22に接続している。したがって、放熱部材3によってバスバー23及び電極部22を冷却することにより、金属層211から発生した熱を電極部22に伝え、さらにバスバー23を介して、放熱部材3に伝えることが可能になる。そのため、誘電体210が熱伝導の妨げになりにくくなり、コンデンサ素子21の冷却効率を高めることができる。
【0032】
また、本例では、バスバー23の、放熱部材3側の主面S1が、耐湿部材24から露出している。
このようにすると、バスバー23と放熱部材3との間に耐湿部材24が介在しなくなる。そのため、耐湿部材24が、バスバー23から放熱部材3への熱伝導の妨げになりにくい。したがって、放熱部材3によってバスバー23及び電極部22をより効率的に冷却でき、コンデンサ素子21の冷却効率をより高めることが可能となる。
また、上記構成にすると、バスバー23の放熱部材3側の主面S1が、耐湿部材24によって覆われないため、バスバー23の厚さ方向(X方向)における、コンデンサ2の長さを短くすることができる。そのため、コンデンサ2を小型化しやすい。
なお、バスバー23は耐湿性を有する金属材料によって形成されているため、バスバー23の主面S2を耐湿部材24によって覆わなくても、バスバー23自体によって、外部から電極部22に侵入する水分を遮蔽することができる。
【0033】
また、本例では、コンデンサ素子21に形成された2個の電極部22(22a,22b)に、それぞれバスバー23(23a,23b)を接続してある。そして、2個の電極部22(22a,22b)を両方とも、バスバー23(23a,23b)と共に、コンデンサ素子21と放熱部材3との間に介在させている。
そのため、放熱部材3によって、2個の電極部22(22a,22b)を両方とも冷却することができ、コンデンサ素子21の冷却効率をより高めることができる。
【0034】
また、本例のコンデンサ2は、
図1に示すごとく、バスバー23から延出した接続端子230を備える。接続端子230は、他の電子部品5(5
S,5
L)に電気接続される。接続端子230の一部は、耐湿部材24によって封止されている。
このようにすると、接続端子230が耐湿部材24によって封止されているため、接続端子230の絶縁性を高めることができる。
【0035】
また、本例では上述したように、バスバー23及び電極部22を、放熱部材3によって冷却し、これにより、コンデンサ素子21を冷却するようにしてある。そのため、コンデンサ2を、リアクトル5
Lや半導体モジュール5
S等(
図5参照)のように発熱する電子部品5の近傍に配置しても、これらの電子部品5(5
S,5
L)からの熱を受けてコンデンサ素子21の温度が過度に上昇することを抑制できる。
【0036】
以上のごとく、本例によれば、コンデンサを小型化でき、かつコンデンサ素子の冷却効率をより高めることができる電力変換装置を提供することができる。
【0037】
なお、本例では、放熱部材3として冷却管3aを用いたが、本発明はこれに限るものではなく、例えばケース13(
図5参照)やヒートシンク(図示しない)を放熱部材3として利用してもよい。
【0038】
(実施例2)
以下の実施例においては、図面に用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
【0039】
本例は、バスバー23の形状を変更した例である。
図9、
図10に示すごとく、本例のバスバー23は、底壁25と、該底壁25からX方向に立設する環状側壁26とを備える。この環状側壁26と底壁25とにより、電極部22が嵌合する電極嵌合凹部239が形成されている。電極嵌合凹部239には、コンデンサ素子21の一部も嵌合している。
【0040】
また、本例では、環状側壁26のうち、X方向において電極嵌合凹部239の開口側に位置する部位である先端部261を、耐湿部材24によって覆っている。また、環状側壁26のうち底壁25に近い部位である基端部262に、接続端子230が取り付けられている。
【0041】
バスバー23は、例えば、金属板をプレス加工することにより形成される。また、接続端子230は、バスバー23に、溶接やはんだ付け等される。
【0042】
また、本例の耐湿部材24は、耐湿性を有する耐湿フィルム240を巻回して形成したフィルム巻回部241を備える。耐湿フィルム240には、例えば、絶縁フィルムの表面にアルミニウムを蒸着させたアルミラミネートフィルムを用いることができる。
【0043】
本例の作用効果について説明する。本例では、バスバー23に、電極部22が嵌合する電極嵌合凹部239を形成してある。そのため、電極部22の主面S1だけでなく、側面S4をも、バスバー23によって冷却することができる。そのため、電極部22の冷却効率を高めることができ、コンデンサ素子21の冷却効率をより向上させることができる。
【0044】
また、本例では、電極嵌合凹部239に、コンデンサ素子21の一部も嵌合している。そのため、バスバー23を用いて、コンデンサ素子21を側面S3から冷却することができる。したがって、コンデンサ素子21の冷却効率をより高めることができる。
【0045】
また、本例では、環状側壁26の先端部261を、耐湿部材24によって覆っている。そのため、外部からコンデンサ素子21に水分が浸入することを、より確実に抑制することができる。
【0046】
また、本例のように電極嵌合凹部239を形成すると、実施例1のようにバスバー23を厚くしなくても、バスバー23の先端部261を、耐湿部材24によって覆うことができる。そのため、バスバー23を薄肉化でき、X方向におけるコンデンサ2の長さを短くすることができる。したがって、コンデンサ2を小型化することが可能となる。また、バスバー23を構成する金属材料の使用量を低減できるため、コンデンサ2を軽量化できると共に、コンデンサ2の製造コストを低減することができる。
【0047】
また、本例の耐湿部材24は、耐湿フィルム240を巻回して形成したフィルム巻回部241を備える。コンデンサ2の製造時には、耐湿フィルム240を引っ張りながら巻回することができるため、耐湿フィルム240は、コンデンサ素子21やバスバー23に密着させやすい。そのため、耐湿フィルム240とバスバー23等との間には隙間が形成されにくく、これらの間の耐湿性を高めやすい。したがって、耐湿フィルム240の巻数が少なくても、高い耐湿性を確保することができ、合成樹脂を成型して耐湿部材24を形成する場合と比べて、その厚さを薄くすることができる。そのため、コンデンサ2を小型化することができる。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を備える。
【0048】
(実施例3)
本例は、バスバー23の形状を変更した例である。
図11、
図12に示すごとく、本例のバスバー23は、底壁25と、該底壁25から立設する環状側壁26とを備える。環状側壁26は、底壁25に接続した内側部分263と、該内側部分263の外側に配された外側部分264とを備える。内側部分263と底壁25とによって、電極部22が嵌合する電極嵌合凹部239が形成されている。電極嵌合凹部239には、コンデンサ素子212の一部も嵌合している。
【0049】
内側部分263と外側部分264とは、X方向における、電極嵌合凹部239の開口側の端部28にて、互いに連結している。また、X方向における、外側部分264の底壁25側の端部29から、接続端子230が延出している。
【0050】
本例では、一枚の金属板をプレス加工することにより、バスバー23と接続端子230とを一体的に形成してある。
【0051】
また、本例では、外側部分264の、X方向における電極嵌合凹部239の開口側の部位である先端部261を、耐湿部材24によって覆っている。本例の耐湿部材24は、実施例2と同様に、耐湿性を有する耐湿フィルム240を巻回することにより形成されている。
【0052】
本例の作用効果について説明する。本例のバスバー23は、底壁25と、環状側壁26とを備える。環状側壁26は、内側部分263と外側部分264とを備え、これらは、X方向における電極嵌合凹部239の開口側の端部28にて、互いに連結している。また、X方向における、外側部分264の底壁25側の端部29から、接続端子230が延出している。
このようにすると、一枚の金属板を加工することにより、環状側壁26の先端部26を耐湿部材24によって被覆できるバスバー23と、接続端子230とを、一体的に形成することができる。そのため、バスバー23及び接続端子230を容易に製造することができ、コンデンサ2の製造コストを低減しやすくなる。
その他、実施例2と同様の構成および作用効果を備える。
【0053】
(実施例4)
本例は、絶縁部材6の構造を変更した例である。
図13、
図14に示すごとく、本例の絶縁部材6は、冷却管3aに接触する底部61と、該底部61からX方向に突出する突部62とを備える。これら底部61と突部62とによって、バスバー23が嵌合するバスバー嵌合凹部60が形成されている。
【0054】
本例の作用効果について説明する。上記構成にすると、金属製の冷却管3aとバスバー23との間の沿面距離を長くすることができる。そのため、冷却管3aとバスバーとを絶縁しやすくなる。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を備える。
【0055】
なお、本例では、
図14に示すごとく、Y方向における底部61の両端部611,612には突部62を形成していない。本例では、底部61のY方向長さを、バスバー23のY方向長さ(
図4参照)よりも長くしてあるため、上記両端部611,612に突部62を形成しなくても、バスバー23と冷却管3aとを充分、絶縁することができる。底部61のY方向長さが短い場合は、
図15に示すごとく、底部の上記両端部611,612に突部62を形成することが望ましい。このようにすると、突部62によってバスバー23を四方から取り囲むことができるため、バスバー23と冷却管3aとの間の沿面距離が局所的に短くなる箇所が形成されにくくなる。そのため、バスバー23と冷却管3aとを充分、絶縁することができる。
【0056】
(実施例5)
本例は、耐湿部材24の構造を変更した例である。
図16に示すごとく、本例の耐湿部材24は、耐湿フィルム240を巻回することにより形成したフィルム巻回部241と、合成樹脂を成型することにより形成した樹脂成型部242とを備える。フィルム巻回部241は、樹脂成型部242により覆われている。
【0057】
耐湿フィルム240には、例えば、絶縁フィルムの表面にアルミニウムを蒸着させたアルミラミネートフィルムを用いることができる。また、樹脂成型部242を構成する合成樹脂には、例えばエポキシ樹脂を用いることができる。
【0058】
本例の作用効果について説明する。本例の耐湿部材24は、フィルム巻回部241と樹脂成型部242とを備えるため、コンデンサ素子21及びバスバー23を二重に覆うことができる。そのため、耐湿性をより高めることができる。
【0059】
また、実施例2において説明したように、耐湿フィルム240は、コンデンサ素子21等に密着させることができるため、巻数が少なくても高い耐湿性効果を得やすい。そのため、フィルム巻回部241は厚さを薄くしやすい。したがって、フィルム巻回部241を形成することにより、耐湿部材24全体の厚さを薄くすることができる。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を備える。