特許第6435908号(P6435908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6435908
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/689 20180101AFI20181203BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20181203BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20181203BHJP
【FI】
   F21S41/689
   F21W102:13
   F21Y115:10
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-28815(P2015-28815)
(22)【出願日】2015年2月17日
(65)【公開番号】特開2016-152126(P2016-152126A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2018年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】安部 俊也
【審査官】 杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−252926(JP,A)
【文献】 特開2014−56792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/689
F21W 102/13
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源が取り付けられているヒートシンク部材と、
前記ヒートシンク部材に取り付けられているブラケットと、
前記ブラケットに第1位置と第2位置との間を回転軸回りに回転切替可能にかつ前記回転軸方向に移動切替可能に取り付けられていて、前記光源からの光を所定の配光に光学制御する可動配光光学制御部材と、
前記ブラケットと前記可動配光光学制御部材との間に介在されていて、前記可動配光光学制御部材を前記第1位置に付勢させる付勢部材と、
前記ブラケットに回転軸回りに回転可能に取り付けられていて、前記可動配光光学制御部材に連結されている駆動力伝達部材と、
前記ブラケットに取り付けられていて、前記駆動力伝達部材が連結されている駆動部を有し、前記駆動部の駆動力により前記駆動力伝達部材を介して前記第1位置に位置する前記可動配光光学制御部材を前記付勢部材の付勢力に抗して回転させて前記第2位置に切り替えて、前記配光を切り替える駆動機構と、
を備え、
前記駆動力伝達部材は、前記可動配光光学制御部材が前記第1位置に位置する時に前記可動配光光学制御部材を前記回転軸方向の一方向に片寄せする力を前記可動配光光学制御部材に伝達し、前記可動配光光学制御部材が前記第2位置に位置する時に前記可動配光光学制御部材を前記回転軸方向の他方向に片寄せする力を前記可動配光光学制御部材に伝達する、
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記駆動部の駆動力の作用方向は、前記可動配光光学制御部材の前記回転軸と平行もしくはほぼ平行である、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記駆動力伝達部材は、前記可動配光光学制御部材の前記回転軸に対して傾斜している、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記可動配光光学制御部材の前記回転軸と前記駆動力伝達部材の前記回転軸とは、ねじれの位置の位置関係にあり、かつ、直角もしくはほぼ直角をなす、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記付勢部材は、ばね部材から構成されていて、
前記駆動力伝達部材は、リンク部材から構成されていて、
前記ばね部材の一端と前記リンク部材の一端とは、接続部を介して一体に接続されていて、
前記接続部は、前記駆動部に連結されていて、
前記ばね部材の他端は、前記駆動機構に固定されていて、
前記リンク部材の他端は、前記可動配光光学制御部材に連結されている、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記リンク部材の剛性は、前記ばね部材の剛性より大である、
ことを特徴とする請求項5に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記ばね部材と前記リンク部材とは、同一軸上のコイル形状をなす、
ことを特徴とする請求項5または6に記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記接続部は、線材からなり、線材からなる前記接続部と、前記同一軸とは、平行もしくはほぼ平行である、
ことを特徴とする請求項7に記載の車両用灯具。
【請求項9】
前記ばね部材の巻数は、前記リンク部材の巻数よりも多い、もしくは、前記ばね部材のコイル中心径は、前記リンク部材のコイル中心径よりも大きい、
ことを特徴とする請求項7または8に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配光を切り替えることができる車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用灯具は、従来からある(たとえば、特許文献1、特許文献2)。以下、従来の車両用灯具について説明する。
【0003】
従来の特許文献1の車両用灯具は、ホルダと、光源バルブと、ホルダに回動可能に支持されている可動シェードと、可動シェードをすれ違いビーム用配光パターンを形成する遮蔽位置ヘ向けて常時弾性付勢するリターンスプリングと、可動シェードに連結されているロッド部材と、ロッド部材が連結されていて可動シェードを遮蔽位置から走行ビーム用配光パターンを形成する遮蔽緩和位置に移動させるソレノイドと、を備えるものである。従来の特許文献1の車両用灯具は、配光をすれ違いビーム用配光パターンと走行ビーム用配光パターンとに切り替えることができる。
【0004】
従来の特許文献2の車両用灯具は、ホルダーと、バルブと、ホルダーに回動自在に支持されているシェードと、シェードをロービームを形成する前上位置に付勢させるスプリングと、シェードに固定されているリテーナと、リテーナに連結されていてシェードを前上位置からハイビームを形成する後下位置に回動させるソレノイドと、を備えるものである。従来の特許文献2の車両用灯具は、配光をロービームとハイビームとに切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4527639号公報
【特許文献2】特開2002−50216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる車両用灯具においては、可動シェード、シェードのブレを抑えて、配光の変化を抑制することが重要である。すなわち、従来の特許文献1の車両用灯具においては、リターンスプリングにより可動シェードのブレを抑えて、配光の変化を抑制している。従来の特許文献2の車両用灯具においては、スプリングによりシェードのブレを抑えて、配光の変化を抑制している。
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、従来の車両用灯具においては、配光の変化を抑制することが重要である、という点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明(請求項1にかかる発明)は、光源と、光源が取り付けられているヒートシンク部材と、ヒートシンク部材に取り付けられているブラケットと、ブラケットに第1位置と第2位置との間を回転軸回りに回転切替可能にかつ回転軸方向に移動切替可能に取り付けられていて、光源からの光を所定の配光に光学制御する可動配光光学制御部材と、ブラケットと可動配光光学制御部材との間に介在されていて、可動配光光学制御部材を第1位置に付勢させる付勢部材と、ブラケットに回転軸回りに回転可能に取り付けられていて、可動配光光学制御部材に連結されている駆動力伝達部材と、ブラケットに取り付けられていて、駆動力伝達部材が連結されている駆動部を有し、駆動部の駆動力により駆動力伝達部材を介して第1位置に位置する可動配光光学制御部材を付勢部材の付勢力に抗して回転させて第2位置に切り替えて、配光を切り替える駆動機構と、を備え、駆動力伝達部材が、可動配光光学制御部材が第1位置に位置する時に可動配光光学制御部材を回転軸方向の一方向に片寄せする力を可動配光光学制御部材に伝達し、可動配光光学制御部材が第2位置に位置する時に可動配光光学制御部材を回転軸方向の他方向に片寄せする力を可動配光光学制御部材に伝達する、ことを特徴とする。
【0009】
この発明(請求項2にかかる発明)は、駆動部の駆動力の作用方向が、可動配光光学制御部材の回転軸と平行もしくはほぼ平行である、ことを特徴とする。
【0010】
この発明(請求項3にかかる発明)は、駆動力伝達部材が可動配光光学制御部材の回転軸に対して傾斜している、ことを特徴とする。
【0011】
この発明(請求項4にかかる発明)は、可動配光光学制御部材の回転軸と駆動力伝達部材の回転軸とが、ねじれの位置の位置関係にあり、かつ、直角もしくはほぼ直角をなす、ことを特徴とする。
【0012】
この発明(請求項5にかかる発明)は、付勢部材が、ばね部材から構成されていて、駆動力伝達部材が、リンク部材から構成されていて、ばね部材の一端とリンク部材の一端とが、接続部を介して一体に接続されていて、接続部が、駆動部に連結されていて、ばね部材の他端が、駆動機構に固定されていて、リンク部材の他端が、可動配光光学制御部材に連結されている、ことを特徴とする。
【0013】
この発明(請求項6にかかる発明)は、リンク部材の剛性が、ばね部材の剛性より大である、ことを特徴とする。
【0014】
この発明(請求項7にかかる発明)は、ばね部材とリンク部材とが、同一軸上のコイル形状をなす、ことを特徴とする。
【0015】
この発明(請求項8にかかる発明)は、接続部が線材からなり、線材からなる接続部と、同一軸とが、平行もしくはほぼ平行である、ことを特徴とする。
【0016】
この発明(請求項9にかかる発明)は、ばね部材の巻数が、リンク部材の巻数よりも多い、もしくは、ばね部材のコイル中心径が、リンク部材のコイル中心径よりも大きい、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明の車両用灯具は、駆動力伝達部材により、可動配光光学制御部材が第1位置に位置する時には、可動配光光学制御部材を回転軸方向の一方向に片寄せする力が可動配光光学制御部材に伝達され、可動配光光学制御部材が第2位置に位置する時には、可動配光光学制御部材を回転軸方向の他方向に片寄せする力が可動配光光学制御部材に伝達される。この結果、この発明の車両用灯具は、可動配光光学制御部材が第1位置に位置する時には、可動配光光学制御部材が回転軸方向の一方向に片寄せられていて、可動配光光学制御部材が第2位置に位置する時には、可動配光光学制御部材が回転軸方向の他方向に片寄せられている。これにより、この発明の車両用灯具は、可動配光光学制御部材のブレを抑えて、配光の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、この発明にかかる車両用灯具の実施形態を示すランプユニットの概略縦断面図(概略垂直断面図)である。
図2図2は、ブラケット、可動シェード、ソレノイド、付勢部材、駆動力伝達部材などの要部を示す斜視図である。
図3図3は、可動シェードが第1位置に位置している時の要部を示す正面図(図2におけるIII矢視図)である。
図4図4は、取付軸と可動シェードの一部を示す平面図(図3におけるIV−IV線断面図)である。
図5図5は、可動シェードが第2位置に位置している時の要部を示す正面図(図2におけるIII矢視図)である。
図6図6は、取付軸と可動シェードの一部を示す平面図(図5におけるVI−VI線断面図)である。
図7図7は、付勢部材および駆動力伝達部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明にかかる車両用灯具の実施形態(実施例)の1例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。図1において、半導体型光源、投影レンズ、可動シェード、ソレノイド、付勢部材、駆動力伝達部材のハッチングを省略してある。図4図6において、取付軸のハッチングを省略してある。この明細書において、前、後、上、下、左、右とは、この発明にかかる車両用灯具を車両に装備した際の前、後、上、下、左、右である。図2において、符号「F」は「前」、「B」は「後」、「U」は上、「D」は「下」、「L」は「左」、「R」は「右」である。
【0020】
(実施形態の構成の説明)
以下、この実施形態における車両用灯具の構成について説明する。この例は、たとえば、自動車用前照灯のヘッドランプについて説明する。
【0021】
(車両用灯具1の説明)
図1において、符号1は、この実施形態における車両用灯具である。前記車両用灯具1は、車両の前部の左右両側にそれぞれ搭載されている。前記車両用灯具1は、図1に示すように、ランプハウジング(図示せず)と、ランプレンズ(図示せず)と、光源としての半導体型光源2と、リフレクタ3と、投影レンズ4と、ヒートシンク部材5と、可動配光光学制御部材としての可動シェード6と、駆動機構としてのソレノイド7と、付勢部材としてのばね部材80と、駆動力伝達部材としてのリンク部材81と、取付部材としてのブラケット10およびホルダ11と、を備える。
【0022】
前記ランプハウジングおよび前記ランプレンズ(たとえば、素通しのアウターレンズなど)は、灯室(図示せず)を画成する。前記半導体型光源2および前記リフレクタ3および前記投影レンズ4および前記ヒートシンク部材5および前記可動シェード6および前記ソレノイド7および前記ばね部材80および前記リンク部材81および前記ブラケット10および前記ホルダ11は、プロジェクタタイプのランプユニットを構成する。前記ランプユニット2、3、4、5、6、7、80、81、10、11は、前記灯室内に配置されていて、かつ、前記ブラケット10および前記ホルダ11および上下方向用光軸調整機構(図示せず)および左右方向用光軸調整機構(図示せず)を介して前記ランプハウジングに取り付けられている。
【0023】
なお、前記灯室内には、前記ランプユニット2、3、4、5、6、7、80、81、10、11以外のランプユニット、たとえば、クリアランスランプユニット、ターンシグナルランプユニット、デイタイムランニングランプユニットなどが配置される場合がある。また、前記灯室内には、インナーパネル(図示せず)やインナーハウジング(図示せず)やインナーレンズ(図示せず)などが配置される場合がある。
【0024】
(ブラケット10およびホルダ11の説明)
前記ブラケット10と前記ホルダ11とは、別体構造あるいは一体構造をなす。なお、前記取付部材は、前記ブラケット10および前記ホルダ11以外の取付部品を備える場合がある。
【0025】
前記ブラケット10は、板形状をなしている。前記ブラケット10は、第1板部101と、第2板部102と、第3板部103と、から構成されている。
【0026】
前記第1板部101は、左右横長の長方形の板形状をなす。前記第1板部101の後側(前記半導体型光源2側であって、前記投影レンズ4と反対側)の面には、前記ヒートシンク部材5が配置されている。前記第1板部101の前側(前記半導体型光源2と反対側であって、前記投影レンズ4側)の面には、前記ソレノイド7が取り付けられている。
【0027】
前記第1板部101の前側の面の左側には、この例では円柱形状をなす取付軸104の一端が固定されている。前記取付軸104は、前後方向に配置されている。前記取付軸104の中心軸(軸)O1は、光軸(前記車両用灯具1の光軸、前記リフレクタ3の反射面の光軸(図示せず)、前記投影レンズ4の光軸Zなど。以下、「光軸Z」と称する)と平行もしくはほぼ平行である。前記取付軸104には、前記ばね部材80および前記リンク部材81が取り付けられている。
【0028】
前記第2板部102は、前記第1板部101の左右両側から後側に直角もしくはほぼ直角に折り曲げられて一体に設けられている。左右の前記第2板部102の上側には、左右の凸片が一体にそれぞれ設けられている。左右の前記第2板部の前記凸片の外側面には、この例では円柱形状をなす左右の回転軸105の一端がそれぞれ固定されている。
【0029】
左右の前記回転軸105は、左右方向に配置されている。左右の前記回転軸105の中心軸(軸)O2は、前記光軸Zおよび前記取付軸104の前記中心軸O1と直交もしくはほぼ直交する。左右の前記回転軸105の外側の端部には、段部を介して径が小さい軸部109がそれぞれ一体に設けられている。左右の前記軸部109には、前記可動シェード6が第1位置と第2位置との間を回転可能にかつ切替可能に取り付けられている。
【0030】
右の前記第2板部102の前記凸片の前側には、第1ストッパ106が右側に直角もしくはほぼ直角に折り曲げられて一体に設けられている。前記第1ストッパ106は、前記可動シェード6の前記第1位置を決める。すなわち、前記可動シェード6を前記第1位置に位置させる。
【0031】
前記第3板部103は、左右の前記第2板部102の後側から左右両側に直角もしくはほぼ直角に折り曲げられて一体に設けられている。右の前記第3板部103の上側には、第2ストッパ107が前記第1ストッパ106と対向して一体に設けられている。前記第2ストッパ107は、前記第3板部103に対して後側に傾斜して折り曲げられている。この結果、前記第1ストッパ106と前記第2ストッパ107とは、前記回転軸105の前記中心軸O2を中心とする中心角度の開角度で前後に相対向している。前記第2ストッパ107は、前記可動シェード6の前記第2位置を決める。すなわち、前記可動シェード6を前記第2位置に位置させる。
【0032】
前記第3板部103には、取付孔や位置決め孔などが設けられている。前記第3板部103には、前記ヒートシンク部材5が取り付けられている。前記第3板部103は、前記上下方向用光軸調整機構および前記左右方向用光軸調整機構(および前記取付部品)を介して前記ランプハウジングに取り付けられている。
【0033】
前記ホルダ11は、リング形状をなしている。前記ホルダ11には、前記投影レンズ4が取り付けられている。
【0034】
(半導体型光源2の説明)
前記半導体型光源2は、たとえば、LED、OELまたはOLED(有機EL)などの自発光半導体型光源である。前記半導体型光源2は、光(図示せず)を放射する発光部20を有する。前記発光部20は、長手方向が前記光軸Zに対して左右方向に交差(この例では、直交もしくはほぼ直交)する長方形形状の発光面を有する。前記発光部20は、この例では、上向きである。
【0035】
前記半導体型光源2は、前記ヒートシンク部材5に実装されていて、かつ、前記ヒートシンク部材5にホルダ21を介して取り付けられている。前記ホルダ21は、前記ヒートシンク部材5にスクリューなど(図示せず)により取り付けられている。前記半導体型光源2には、点灯回路(図示せず)からの電流が供給される。
【0036】
(リフレクタ3の説明)
前記リフレクタ3は、たとえば、樹脂部材などの耐熱性が高くかつ光不透過性の材料からなる。前記リフレクタ3は、前記ヒートシンク部材5にスクリューなど(図示せず)により取り付けられている。
【0037】
前記リフレクタ3は、前側部分および下側部分が開口し、かつ、後側部分および上側部分および左右両側部分が閉塞した中空形状をなす。前記リフレクタ3の閉塞部分の凹内面には、楕円を基調(回転楕円面を基本)とした自由曲面または回転楕円面からなる反射面(収束型反射面)30が設けられている。前記反射面30は、前記半導体型光源2の前記発光部20の中心もしくはその近傍に位置する第1焦点F1と、第2焦点(第2焦線)F2と、前記第1焦点F1と前記第2焦点F2とを結ぶ前記光軸Zと、を有する。前記反射面30は、前記半導体型光源2の上向きの前記発光部20の前記発光面からの光を反射光(図示せず)として前記投影レンズ4側に反射させるものである。
【0038】
(投影レンズ4の説明)
前記投影レンズ4は、たとえば、PC材、PMMA材、PCO材などの樹脂製のレンズからなるものである。すなわち、前記半導体型光源2の前記発光部20から放射される光は、高い熱を持たないので、前記投影レンズ4として樹脂製のレンズを使用することができる。前記投影レンズ4は、前記ホルダ11に取り付けられている。
【0039】
前記投影レンズ4は、焦点(焦線、レンズ焦点、レンズ焦線、物空間側の焦点面であるメリジオナル像面)F3および前記光軸Zを有する。前記投影レンズ4の前記焦点F3は、前記反射面30の前記第2焦点F2もしくはその近傍に位置する。前記投影レンズ4の前記光軸Zと、前記反射面30の前記光軸とは、前記第2焦点F2および前記焦点F3もしくはその近傍において交差している。なお、前記投影レンズ4の前記光軸Zと、前記反射面30の前記光軸とは、一致もしくはほぼ一致している場合もある。
【0040】
前記投影レンズ4は、非球面を基本とする投影レンズである。前記投影レンズ4は、後面の入射面40と、前面の出射面41と、から構成されている。前記入射面40は、前記リフレクタ3と対向する。前記入射面40は、平面もしくは非球面のほぼ平面(前記リフレクタ3に対して凸面あるいは凹面)をなす。前記出射面41は、非球面の凸面をなす。
【0041】
前記投影レンズ4は、前記半導体型光源2の前記発光部20からの前記光であって、前記リフレクタ3の前記反射面30からの前記反射光を、外部すなわち車両の前方に照射する。すなわち、前記投影レンズ4は、ロービーム配光パターン(図示せず)、ハイビーム配光パターン(図示せず)を車両の前方に照射する。
【0042】
(ヒートシンク部材5の説明)
前記ヒートシンク部材5は、たとえば、樹脂や金属製ダイカスト(アルミダイカスト)などの熱伝導率が高い材料からなる。前記ヒートシンク部材5は、上板部50と、複数枚のフィン部52と、から構成されている。前記上板部50には、前記半導体型光源2および前記リフレクタ3が取り付けられている。前記ヒートシンク部材5は、前記ブラケット10に取り付けられている。前記ヒートシンク部材5は、放熱部材と取付部材とを兼用しても良い。
【0043】
(可動シェード6の説明)
前記可動シェード6は、光不透過部材、この例では金属板から構成されている。前記可動シェード6は、金属板をプレス絞り加工して形成されている。前記可動シェード6は、前側の第1シェード61と、後側の第2シェード62と、から構成されている。前記第1シェード61と前記第2シェード62とは、加締め、リベット止め、溶接などにより一体に固定されている。前記第1シェード61および前記第2シェード62の上縁には、前記ロービーム配光パターンのカットオフライン(図示せず)を形成するエッジがそれぞれ設けられている。
【0044】
前記第1シェード61の左右両端部には、後側に凹んだ凹部を介して取付片63がそれぞれ一体に設けられている。左右の前記取付片63は、前記光軸Zおよび前記取付軸104の前記中心軸O1と平行もしくはほぼ平行であり、かつ、前記回転軸105の前記中心軸O2と直交もしくはほぼ直交する。左右の前記取付片63は、Eリング64により、左右の前記回転軸105の前記軸部109に回転可能に取り付けられている。すなわち、左右の前記取付片63には、円形の取付孔がそれぞれ設けられている。前記取付孔を介して左右の前記取付片63を左右の前記回転軸105の前記軸部109に外側から嵌合(外嵌)して、左右の前記回転軸105の先端に前記Eリング64をそれぞれ固定する。ここで、左右の前記取付片63は、左右の前記軸部109に回転可能に取り付けられているので、左右の前記取付片63の前記取付孔の内周面と左右の前記軸部109の外周面との間には、きわめて微小の隙間が存在する。このために、左右の前記取付片63は、左右の前記軸部109に対して、前記回転軸105の前記中心軸O2方向(左右方向)に移動可能である。このように、前記可動シェード6は、前記半導体型光源2と前記投影レンズ4との間において、前記ブラケット10に前記回転軸105の前記中心軸O2回りに回転可能にかつ前記回転軸105の前記中心軸O2方向に移動可能に配置されている。前記可動シェード6の回転軸である前記回転軸105の前記中心軸O2は、前記光軸Zに対して上から見た平面視あるいは下から見た底面視において相互に直角もしくはほぼ直角をなし、かつ、左右に水平もしくはほぼ水平である。
【0045】
右の前記取付片63の上側には、ストッパ片67が前記第1ストッパ106および前記第2ストッパ107と対向して一体に設けられている。前記ストッパ片67は、前記第1ストッパ106と前記第2ストッパ107との間に配置されている。前記ストッパ片67が前記第1ストッパ106に当接した時には、前記可動シェード6は、図1中の実線、図2図3図5中の二点鎖線に示すように、前記第1位置に位置する。前記ストッパ片67が前記第2ストッパ107に当接した時には、前記可動シェード6は、図1中の二点鎖線、図5中の実線に示すように、前記第2位置に位置する。
【0046】
この結果、前記可動シェード6は、前記ブラケット10に前記第1位置と前記第2位置との間を、前記中心軸O2回りに回転切替可能にかつ前記中心軸O2方向に移動切替可能に取り付けられている。前記可動シェード6は、前記第1位置に位置する時には、前記半導体型光源2からの光であって、前記リフレクタ3からの反射光を所定の配光すなわち前記ロービーム配光パターンに光学制御する。前記可動シェード6は、前記第2位置に位置する時には、前記半導体型光源2からの光であって、前記リフレクタ3からの反射光を所定の配光すなわち前記ハイビーム配光パターンに光学制御する。
【0047】
前記第1シェード61の下縁の中央部分には、連結片65が前側に直角もしくはほぼ直角に折り曲げられて一体に設けられている。前記連結片65は、左右の前記取付片63と平行もしくはほぼ平行である。すなわち、前記連結片65は、前記光軸Zおよび前記取付軸104の前記中心軸O1と平行もしくはほぼ平行であり、かつ、前記回転軸105の前記中心軸O2と直交もしくはほぼ直交する。前記連結片65には、小円形状の連結孔66が設けられている。
【0048】
(ソレノイド7の説明)
前記ソレノイド7は、前記ブラケット10の前側の面に取り付けられているケース70を備えるものである。なお、前記ソレノイド7は、前記ブラケット10の一部を前記ケース70の一部とする場合もある。
【0049】
前記ケース70内には、コイルなど(図示せず)が収納されている。前記ケース70の左側の側面には、駆動部としてのプランジャー71が進退可能に取り付けられている。前記プランジャー71は円柱形状をなす。前記プランジャー71の進退方向すなわち中心軸(軸)O3は、前記光軸Zおよび前記取付軸104の前記中心軸O1と直交もしくはほぼ直交する。この結果、前記プランジャー71の前記中心軸O3は、左右の前記回転軸105の前記中心軸O2と平行もしくはほぼ平行である。すなわち、駆動部の駆動力の作用方向であって前記プランジャー71の進退方向(前記中心軸O3)は、前記可動シェード6の左右の前記回転軸105(前記中心軸O2)と平行もしくはほぼ平行である。
【0050】
前記プランジャー71の先端部の上側の部分には、スリット72が前記中心軸O3に対して直交もしくはほぼ直交するように設けられている。前記スリット72には、前記ばね部材80の一端と前記リンク部材81の一端とが連結されている。前記ケース70の上面の左側の縁には、フック73が上側に一体に設けられている。前記フック73には、前記ばね部材80の他端が固定されている。前記ソレノイド7の前記ケース70は、ケース部材と取付部材とを兼用しても良い。
【0051】
前記ソレノイド7は、前記プランジャー71が後退する時の駆動力により、前記第1位置に位置する前記可動シェード6を前記第2位置に切り替えて、前記ロービーム配光パターンから前記ハイビーム配光パターンに切り替えるものである。
【0052】
(ばね部材80、リンク部材81の説明)
前記ばね部材80は、前記ブラケット10と前記可動シェード6との間に介在されている。前記ばね部材80は、前記可動シェード6を前記第1位置に付勢させるものである。一方、前記リンク部材81は、前記ブラケット10に前記取付軸104の前記中心軸O1回りに回転可能に取り付けられている。かつ、前記リンク部材81は、前記可動シェード6に連結されている。
【0053】
前記ばね部材80は、この例では、図7に示すように、1個のねじりコイルばね(トーションコイルバネ)から構成されている。すなわち、前記ばね部材80は、この例では、断面円形の丸棒のばね鋼材から構成されている。前記リンク部材81は、この例では、図7に示すように、同じく1個のねじりコイルばね(トーションコイルバネ)から構成されている。すなわち、前記リンク部材81は、この例では、同じく断面円形の丸棒のばね鋼材から構成されている。
【0054】
前記ばね部材80の一端すなわち一方のアーム82と前記リンク部材81の一端すなわち一方のアーム83とは、接続部84を介して一体に接続(結合)されている。前記ばね部材80の前記一方のアーム82および前記リンク部材81の前記一方のアーム83と、前記接続部84とは、相互に直角もしくはほぼ直角に折れ曲がっている。一体に構成されている前記ばね部材80および前記リンク部材81は、この例では、図7に示すように、2個のねじりコイルばね(トーションコイルバネ)を結合したダブルトーションばねであって連結部材8からなる。
【0055】
前記ばね部材80のコイル部および前記リンク部材81のコイル部は、Eリング87により前記取付軸104に取り付けられている。すなわち、前記ばね部材80の前記コイル部および前記リンク部材81の前記コイル部を前記取付軸104に外側から嵌合(外嵌)して、前記取付軸104の先端に前記Eリング87を固定する。前記ばね部材80の前記コイル部と前記取付軸104との間には、前記ばね部材80の前記コイル部が巻き締められる分の空間が設けられている。
【0056】
前記リンク部材81の前記コイル部と前記取付軸104との間には、前記リンク部材81の前記コイル部が前記取付軸104に対して回転できる程度の空間が設けられている。この結果、前記リンク部材81は、前記ブラケット10に前記取付軸104の前記中心軸O1回りに回転可能に取り付けられている。
【0057】
前記接続部84は、前記プランジャー71の前記スリット72中に収納されている。この結果、前記接続部84は、前記プランジャー71に連結されている。すなわち、前記接続部84は、前記スリット72の前記プランジャー71の先端側の面に常時弾性当接している。前記接続部84と前記スリット72の面との弾性当接は、図5図7中の実線および二点鎖線に示すように、前記接続部84の前記中心軸O1回りの回転と前記プランジャー71の前記中心軸O3方向の進退とを許容するものである。
【0058】
前記ばね部材80の他端すなわち他方のアーム85は、前記ソレノイド7の前記ケース70の前記フック73に係合されている。この結果、前記ばね部材80の他端は、前記ソレノイド7に固定されている。これにより、前記ばね部材80は、前記ブラケット10と前記可動シェード6との間に介在されている。
【0059】
前記リンク部材81の他端すなわち他方のアーム86の先端部分は、前記可動シェード6の前記連結片65の前記連結孔66中に斜め下方から挿入されている。この結果、前記リンク部材81の他端は、前記可動シェード6に連結されている。
【0060】
前記リンク部材81の前記他方のアーム86の先端部分は、前記連結孔66中に斜め下方から挿入されているので、前記連結孔66の縁に常時弾性当接している。前記他方のアーム86の先端部分と前記連結孔66の縁との弾性当接は、図5図7中の実線および二点鎖線に示すように、前記他方のアーム86の先端部分の前記中心軸O1回りの回転と前記可動シェード6の前記連結片65の前記中心軸O2回りの回転とを許容するものである。
【0061】
図2図3図5図7に示すように、前記連結孔66中に斜め下方から挿入されている前記リンク部材81の前記他方のアーム86(図2図3中の二点鎖線を参照)は、前記可動シェード6の回転軸(図2図3中の一点鎖線の前記中心軸O2を参照)対して、傾斜している。かつ、前記リンク部材81の前記他方のアーム86(図2図3中の二点鎖線を参照)と、前記可動シェード6の回転軸(図2図3中の一点鎖線の中心軸O2を参照)とは、ねじれの位置の位置関係にある。また、前記他方のアーム86の回転軸すなわち前記中心軸O1と、前記可動シェード6の回転軸すなわち前記中心軸O2とは、図2図3図5図7に示すように、ねじれの位置の位置関係にあり、かつ、上から見た平面視あるいは下から見た底面視において直角もしくはほぼ直角をなす。
【0062】
前記リンク部材81は、図3に示すように、前記可動シェード6が前記第1位置に位置する時に前記可動シェード6を前記回転軸105の前記中心軸O2方向の一方向(右方向)に片寄せする力である右向きの第2分力F7を前記可動シェード6に伝達する。また、前記リンク部材81は、図5に示すように、前記可動シェード6が前記第2位置に位置する時に前記可動シェード6を前記回転軸の前記中心軸O2方向の他方向(左方向)に片寄せする力である左向きの第2分力F11を前記可動シェード6に伝達する。
【0063】
前記リンク部材81の剛性は、前記ばね部材80の剛性より大である。すなわち、前記リンク部材81のばね定数は、前記ばね部材80のばね定数より大である。この例では、前記ばね部材80の巻数(有効巻数)は、前記リンク部材81の巻数(有効巻数)よりも多く、また、前記ばね部材80のコイル中心径と前記リンク部材81のコイル中心径とは、同一もしくはほぼ同一である。この例の前記ばね部材80および前記リンク部材81(前記連結部材8)は、軸方向の長さが長くなるが、径方向の寸法を小さくすることができる。
【0064】
なお、前記ばね部材80の巻数と前記リンク部材81の巻数とを同じもしくはほぼ同じにして、前記ばね部材80のコイル中心径を前記リンク部材81のコイル中心径よりも大きくする場合がある。この場合の前記ばね部材80および前記リンク部材81(前記連結部材8)は、径方向の寸法が大きくなるが、軸方向の長さを短くすることができる。また、巻数とコイル中心径とを同時に変化させても良い。さらに、巻数とコイル中心径と線径とを任意に組み合わせても良い。
【0065】
前記ばね部材80の前記コイル部と前記リンク部材81の前記コイル部とは、同一軸すなわち前記取付軸104の前記中心軸O1上のコイル形状をなす。すなわち、前記ばね部材80の前記コイル部の中心線と前記リンク部材81の前記コイル部の中心線とは、一致もしくはほぼ一致するものである。前記取付軸104の前記中心軸O1と前記接続部84(前記接続部84の前記ばね部材80の前記一方のアーム82と前記リンク部材81の前記一方のアーム83との接続方向であって、前記接続部84の丸棒の中心線)とは、平行もしくはほぼ平行である。すなわち、前記ばね部材80の前記コイル部の中心線および前記リンク部材81の前記コイル部の中心線と、前記接続部84の丸棒の中心線とは、平行もしくはほぼ平行である。
【0066】
(実施形態の作用の説明)
この実施形態における車両用灯具1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0067】
常態すなわちソレノイド7のコイルに通電していない状態の時は、連結部材8のばね部材80のばね力により、ソレノイド7のプランジャー71が前進した状態(図2図3中の実線、図5中の二点鎖線にて示す伸長した状態)にある。この時、図3に示すように、前から見た正面視において、連結部材8のリンク部材81の他方のアーム86には、中心軸O1回りに反時計方向の力F4が作用している。このために、他方のアーム86の先端部分が挿入されている可動シェード6の連結片65の連結孔66の縁には、力F5が作用している。この力F5は、下向きの第1分力F6と右向きの第2分力F7とに分解されている。
【0068】
下向きの第1分力F6は、可動シェード6を中心軸O2回りに前側(図1に示すように、左側から見た左側面視において反時計方向)に回転させる力として可動シェード6に作用する。このために、可動シェード6のストッパ片67は、ブラケット10の第1ストッパ106に当接している。この結果、可動シェード6は、図1図3中の実線および図5中の二点鎖線に示すように、第1位置に位置する。
【0069】
一方、右向きの第2分力F7は、図3図4に示すように、可動シェード6を中心軸O2に沿って右に移動させる力として可動シェード6に作用する。このために、可動シェード6は、右に片寄せられて、可動シェード6の左の取付片63の右側面は、ブラケット10の左の回転軸105の段部面108に当接する。これにより、可動シェード6は、ガタなく第1位置に位置する。右向きの第2分力F7は、下向きの第1分力F6と比較して小さく、可動シェード6を右に片寄せできる程度の大きさの力である。
【0070】
なお、可動シェード6が右に片寄せられると、可動シェード6の右の取付片63の左側面は、ブラケット10の右の回転軸105の段部面108から離れて、取付片63の左側面と段部面108との間には、隙間SRが発生する。この隙間SRが発生しても、可動シェード6は、右向きの第2分力F7により、右に片寄せられて、ガタなく第1位置に位置する。
【0071】
この状態の時に、半導体型光源2の発光部20を点灯発光させる。すると、上向きの発光部20から放射された光は、リフレクタ3の反射面30で反射光として、投影レンズ4側に反射する。ここで、反射光の一部が第1位置に位置する可動シェード6により遮蔽される。第1位置に位置する可動シェード6により遮蔽されなかった反射光が投影レンズ4側に進む。投影レンズ4側に進んだ反射光は、投影レンズ4の入射面40から投影レンズ4中に入射して、投影レンズ4の出射面41からロービーム配光パターンとして、外部すなわち車両の前方に照射される。
【0072】
半導体型光源2の発光部20を点灯発光させている状態において、ソレノイド7のコイルに通電する。すると、ソレノイド7のプランジャー71は、連結部材8のばね部材80のばね力に抗して、前進状態(伸長状態)から中心軸O3に沿って後退する。プランジャー71の後退に伴って、図5に示すように、前から見た正面視において、連結部材8のばね部材80の一方のアーム82およびリンク部材81の一方のアーム83および接続部84が中心軸O1回りに時計方向(二点鎖線に示す状態から実線に示す状態)に回転する。
【0073】
ここで、連結部材8において、リンク部材81の剛性は、ばね部材80の剛性より大である。また、ばね部材80の他方のアーム85は、ソレノイド7のフック73に係合固定されている。このために、図5に示すように、前から見た正面視において、連結部材8のリンク部材81の他方のアーム86は、中心軸O1回りに時計方向(二点鎖線に示す状態から実線に示す状態)に回転する。
【0074】
プランジャー71が後退した状態(図5中の実線にて示す短縮した状態)にある時、図5に示すように、前から見た正面視において、連結部材8のリンク部材81の他方のアーム86には、中心軸O1回りに時計方向の力F8が作用している。このために、他方のアーム86の先端部分が挿入されている可動シェード6の連結片65の連結孔66の縁には、力F9が作用している。この力F9は、上向きの第1分力F10と左向きの第2分力F11とに分解されている。
【0075】
上向きの第1分力F10は、可動シェード6を中心軸O2回りに後側(図1に示すように、左側から見た左側面視において時計方向)に回転させる力として可動シェード6に作用する。このために、可動シェード6のストッパ片67は、ブラケット10の第2ストッパ107に当接している。この結果、可動シェード6は、図1中の二点鎖線および図5中の実線に示すように、第2位置に位置する。
【0076】
一方、左向きの第2分力F11は、図5図6に示すように、可動シェード6を中心軸O2に沿って左に移動させる力として可動シェード6に作用する。このために、可動シェード6は、左に片寄せられて、可動シェード6の右の取付片63の左側面は、ブラケット10の右の回転軸105の段部面108に当接する。これにより、可動シェード6は、ガタなく第2位置に位置する。左向きの第2分力F11は、上向きの第1分力F10と比較して小さく、可動シェード6を左に片寄せできる程度の大きさの力である。
【0077】
なお、可動シェード6が左に片寄せられると、可動シェード6の左の取付片63の右側面は、ブラケット10の左の回転軸105の段部面108から離れて、取付片63の右側面と段部面108との間には、隙間SLが発生する。この隙間SLが発生しても、可動シェード6は、左向きの第2分力F11により、左に片寄せられて、ガタなく第1位置に位置する。
【0078】
この時、今まで、第1位置に位置する可動シェード6により遮蔽されていた反射光の一部は、第2位置に位置する可動シェード6により遮蔽されずに、第1位置に位置する可動シェード6により遮蔽されなかった反射光と共に投影レンズ4側に進む。投影レンズ4側に進んだ反射光は、投影レンズ4の入射面40から投影レンズ4中に入射して、投影レンズ4の出射面41からハイビーム配光パターンとして、外部すなわち車両の前方に照射される。
【0079】
そして、ソレノイド7のコイルへの通電を遮断する。すると、ソレノイド7のプランジャー71は、連結部材8のばね部材80のばね力により、後退状態から中心軸O3に沿って前進する。これにより、図5に示すように、前から見た正面視において、連結部材8のばね部材80の一方のアーム82およびリンク部材81の一方のアーム83および接続部84が中心軸O1回りに反時計方向(実線に示す状態から二点鎖線に示す状態)に回転する。
【0080】
ここで、連結部材8において、リンク部材81の剛性は、ばね部材80の剛性より大である。また、ばね部材80の他方のアーム85は、ソレノイド7のフック73に係合固定されている。このために、図5に示すように、前から見た正面視において、連結部材8のリンク部材81の他方のアーム86は、中心軸O1回りに反時計方向(実線に示す状態から二点鎖線に示す状態)に回転する。
【0081】
この時、図3に示すように、前から見た正面視において、連結部材8のリンク部材81の他方のアーム86には、中心軸O1回りに反時計方向の力F4が作用している。この結果、前記の通り、可動シェード6は、右に片寄せられて、第1位置にガタなく位置する。そして、投影レンズ4の出射面41からロービーム配光パターンが外部すなわち車両の前方に照射される。
【0082】
(実施形態の効果の説明)
この実施形態における車両用灯具1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0083】
この実施形態における車両用灯具1は、リンク部材81により、図3に示すように、可動シェード6が第1位置に位置する時には、可動シェード6を回転軸105の中心軸O2方向の一方向(右方向)に片寄せする力である右向きの第2分力F7が可動シェード6に伝達される。また、この実施形態における車両用灯具1は、リンク部材81により、図5に示すように、可動シェード6が第2位置に位置する時には、可動シェード6を回転軸105の中心軸O2方向の他方向(左方向)に片寄せする力である左向きの第2分力F11が可動シェード6に伝達される。この結果、この実施形態における車両用灯具1は、可動シェード6が第1位置に位置する時には、可動シェード6が回転軸105の中心軸O2方向の一方向(右方向)に片寄せられていて、可動シェード6が第2位置に位置する時には、可動シェード6が回転軸105の中心軸O2方向の他方向(左方向)に片寄せられている。これにより、この実施形態における車両用灯具1は、可動シェード6のブレを抑えて、ロービーム配光パターンおよびハイビーム配光パターンの配光の変化を抑制することができる。
【0084】
この実施形態における車両用灯具1は、駆動部の駆動力の作用方向であってプランジャー71の進退方向(中心軸O3)が、可動シェード6の左右の回転軸105(中心軸O2)と平行もしくはほぼ平行である。この結果、この実施形態における車両用灯具1は、プランジャー71の後退の駆動力がリンク部材81を介して可動シェード6の他方向の片寄にスムーズに伝達され、また、ばね部材80のばね力がリンク部材81を介して可動シェード6の一方向の片寄およびプランジャー71の前進にスムーズに伝達される。これにより、この実施形態における車両用灯具1は、可動シェード6を一方向および他方向に確実に片寄せすることができる。
【0085】
この実施形態における車両用灯具1は、図2図3図5図7に示すように、リンク部材81の他方のアーム86(図2図3中の二点鎖線を参照)が可動シェード6の回転軸(図2図3中の一点鎖線の中心軸O2を参照)に対して傾斜していて、かつ、リンク部材81の他方のアーム86(図2図3中の二点鎖線を参照)と可動シェード6の回転軸(図2図3中の一点鎖線の中心軸O2を参照)とがねじれの位置の位置関係にある。この結果、この実施形態における車両用灯具1は、右向きの第2分力F7および左向きの第2分力F11が確実に得られる。これにより、この実施形態における車両用灯具1は、可動シェード6のブレを確実に抑えて、ロービーム配光パターンおよびハイビーム配光パターンの配光の変化を確実に抑制することができる。
【0086】
この実施形態における車両用灯具1は、リンク部材81の他方のアーム86の回転軸すなわち中心軸O1と、可動シェード6の回転軸すなわち中心軸O2とが、図2図3図5図7に示すように、ねじれの位置の位置関係にあり、かつ、上から見た平面視あるいは下から見た底面視において直角もしくはほぼ直角をなす。この結果、この実施形態における車両用灯具1は、下向きの第1分力F6と右向きの第2分力F7、および、上向きの第1分力F10と左向きの第2分力F11、以外の分力の分解を確実に防ぐことができるので、右向きの第2分力F7および左向きの第2分力F11がさらに確実に得られる。これにより、この実施形態における車両用灯具1は、可動シェード6のブレをさらに確実に抑えて、ロービーム配光パターンおよびハイビーム配光パターンの配光の変化をさらに確実に抑制することができる。
【0087】
この実施形態における車両用灯具1は、連結部材8の付勢部材としてのばね部材80と駆動力伝達部材としてのリンク部材81とが一体に構成されているので、従来の車両用灯具と比較して、部品点数を軽減することができる。これにより、この実施形態における車両用灯具1は、構成を簡略化することができ、製造コストを安価にすることができる。
【0088】
この実施形態における車両用灯具1は、ばね部材80の一端である一方のアーム82とリンク部材81の一端である一方のアーム83とが接続部84を介して一体に接続されていて、その接続部84がソレノイド7のプランジャー71に連結されていて、ばね部材80の他端である他方のアーム85がソレノイド7のケース70に固定されていて、リンク部材81の他端である他方のアーム86が可動シェード6に連結片65の連結孔66を介して連結されている。これにより、この実施形態における車両用灯具1は、ソレノイド7のプランジャー71の進退の駆動力を連結部材8を介して可動シェード6に可動シェード6の回転力として確実に伝達することができる。このために、この実施形態における車両用灯具1は、連結部材8の付勢部材としてのばね部材80と駆動力伝達部材としてのリンク部材81とが一体に構成されていても、右向きの第2分力F7および左向きの第2分力F11が得られる。この結果、この実施形態における車両用灯具1は、可動シェード6のブレを抑えて、ロービーム配光パターンおよびハイビーム配光パターンの配光の変化を抑制することができる。
【0089】
この実施形態における車両用灯具1は、リンク部材81の剛性がばね部材80の剛性より大であるから、リンク部材81の一方のアーム83と他方のアーム86とが1個の剛体とみなされる。この結果、この実施形態における車両用灯具1は、ソレノイド7のプランジャー71の進退に伴って、リンク部材81の一方のアーム83が取付軸104の中心軸O1回りに反時計方向、時計方向に回転すると、リンク部材81の他方のアーム86が中心軸O1回りに時計方向、反時計方向に回転する。これにより、この実施形態における車両用灯具1は、ソレノイド7のプランジャー71の進退の駆動力を連結部材8を介して可動シェード6に可動シェード6の回転力として確実に伝達することができる。このために、この実施形態における車両用灯具1は、右向きの第2分力F7および左向きの第2分力F11が得られる。この結果、この実施形態における車両用灯具1は、可動シェード6のブレを抑えて、ロービーム配光パターンおよびハイビーム配光パターンの配光の変化を抑制することができる。
【0090】
この実施形態における車両用灯具1は、ばね部材80とリンク部材81とが同一軸すなわち取付軸104の中心軸O1上のコイル形状をなす。すなわち、この実施形態における車両用灯具1は、ばね部材80のコイル部の中心線とリンク部材81のコイル部の中心線とが一致もしくはほぼ一致するものである。これにより、この実施形態における車両用灯具1は、ソレノイド7のプランジャー71の進退の駆動力を連結部材8を介して可動シェード6に可動シェード6の回転力として確実に伝達することができる。このために、この実施形態における車両用灯具1は、右向きの第2分力F7および左向きの第2分力F11が得られる。この結果、この実施形態における車両用灯具1は、可動シェード6のブレを抑えて、ロービーム配光パターンおよびハイビーム配光パターンの配光の変化を抑制することができる。
【0091】
この実施形態における車両用灯具1は、取付軸104の中心軸O1と接続部84のばね部材80の一方のアーム82とリンク部材81の一方のアーム83との接続方向であって、接続部84の丸棒の中心線とが、平行もしくはほぼ平行である。これにより、この実施形態における車両用灯具1は、ソレノイド7のプランジャー71の進退の駆動力を連結部材8を介して可動シェード6に可動シェード6の回転力として確実に伝達することができる。このために、この実施形態における車両用灯具1は、右向きの第2分力F7および左向きの第2分力F11が得られる。この結果、この実施形態における車両用灯具1は、可動シェード6のブレを抑えて、ロービーム配光パターンおよびハイビーム配光パターンの配光の変化を抑制することができる。
【0092】
この実施形態における車両用灯具1は、ばね部材80の巻数(有効巻数)がリンク部材81の巻数(有効巻数)よりも多く、また、ばね部材80のコイル中心径とリンク部材81のコイル中心径とが同一もしくはほぼ同一である。この結果、この実施形態における車両用灯具1は、リンク部材81のばね定数がばね部材80のばね定数より大となるので、リンク部材81の剛性がばね部材80の剛性より大となる。これにより、この実施形態における車両用灯具1は、ソレノイド7のプランジャー71の進退の駆動力を連結部材8を介して可動シェード6に可動シェード6の回転力として確実に伝達することができる。このために、この実施形態における車両用灯具1は、右向きの第2分力F7および左向きの第2分力F11が得られる。この結果、この実施形態における車両用灯具1は、可動シェード6のブレを抑えて、ロービーム配光パターンおよびハイビーム配光パターンの配光の変化を抑制することができる。
【0093】
しかも、この実施形態における車両用灯具1は、ばね部材80の巻数(有効巻数)がリンク部材81の巻数(有効巻数)よりも多く、また、ばね部材80のコイル中心径とリンク部材81のコイル中心径とが同一もしくはほぼ同一である。この結果、この実施形態における車両用灯具1は、ばね部材80およびリンク部材81すなわち連結部材8が軸方向(コイル部の中心線方向であって、取付軸104の中心軸O1方向)の長さが長くなるが、径方向の寸法を小さくすることができる。
【0094】
(実施形態以外の例の説明)
なお、この実施形態においては、ばね部材80の巻数(有効巻数)がリンク部材81の巻数(有効巻数)よりも多く、また、ばね部材80のコイル中心径とリンク部材81のコイル中心径とが同一もしくはほぼ同一である。ところが、この発明においては、ばね部材80の巻数とリンク部材81の巻数とを同じもしくはほぼ同じにして、ばね部材80のコイル中心径をリンク部材81のコイル中心径よりも大きくしても良い。この場合においては、ばね部材80およびリンク部材81すなわち連結部材8が径方向の寸法が大きくなるが、軸方向の長さを短くすることができる。また、この発明においては、巻数とコイル中心径とを同時に変化させても良い。さらに、巻数とコイル中心径と線径とを任意に組み合わせても良い。
【0095】
また、この実施形態においては、可動シェード6がブラケット10に第1位置と第2位置との間を切替可能に取り付けられている。ところが、この発明においては、可動シェード6がブラケット10以外の取付部材に第1位置と第2位置との間を切替可能に取り付けられていても良い。
【0096】
さらに、この実施形態においては、光源として半導体型光源2を使用するものである。ところが、この発明においては、光源として、半導体型光源2以外の光源、たとえば、放電灯光源、ハロゲンランプ光源、白熱灯光源などであっても良い。
【0097】
さらにまた、この実施形態においては、楕円を基調とした反射面30を有するリフレクタ3と投影レンズ4とから構成されているプロジェクタタイプの車両用灯具について説明するものである。ところが、この発明においては、プロジェクタタイプの車両用灯具以外の車両用灯具、たとえば、レンズ直射タイプの車両用灯具や反射タイプの車両用灯具などであっても良い。
【0098】
さらにまた、この実施形態においては、可動配光光学制御部材として可動シェード6を使用するものである。ところが、この発明においては、可動配光光学制御部材として、可動シェード6以外の可動配光光学制御部材、たとえば、配光の光路(向き)を変えたり、あるいは、配光を拡散もしくは集中(集束)させたりするレンズ部材、また、特定の波長の光を透過させたりもしくは遮蔽したりするフィルタ部材などであっても良い。
【0099】
さらにまた、この実施形態においては、駆動機構としてソレノイド7を使用するものである。ところが、この発明においては、駆動機構として、ソレノイド7以外の駆動機構、たとえば、モータなどであっても良い。このモータの場合の駆動部は、出力軸となる。
【0100】
さらにまた、この実施形態においては、付勢部材として1個のねじりコイルばね(トーションコイルバネ)から構成されているばね部材80を使用するものである。ところが、この発明においては、付勢部材として、1個のねじりコイルばね(トーションコイルバネ)から構成されているばね部材80以外のばね部材などを使用しても良い。
【0101】
さらにまた、この実施形態においては、駆動力伝達部材として1個のねじりコイルばね(トーションコイルバネ)から構成されているリンク部材81を使用するものである。ところが、この発明においては、駆動力伝達部材として、1個のねじりコイルばね(トーションコイルバネ)から構成されているリンク部材81以外のリンク部材などを使用しても良い。
【符号の説明】
【0102】
1 車両用灯具
10 ブラケット(取付部材)
11 ホルダ(取付部材)
101 第1板部
102 第2板部
103 第3板部
104 取付軸
105 回転軸
106 第1ストッパ
107 第2ストッパ
108 段部面
109 軸部
2 半導体型光源(光源)
20 発光部
21 ホルダ
3 リフレクタ
30 反射面
4 投影レンズ
40 入射面
41 出射面
5 ヒートシンク部材
50 上板部
52 フィン部
6 可動シェード(可動配光光学制御部材)
61 第1シェード
62 第2シェード
63 取付片
64 Eリング
65 連結片
66 連結孔
67 ストッパ片
7 ソレノイド(駆動機構)
70 ケース
71 プランジャー(駆動部)
72 スリット
73 フック
8 連結部材
80 ばね部材(付勢部材)
81 リンク部材(駆動力伝達部材)
82 一方のアーム
83 一方のアーム
84 接続部
85 他方のアーム
86 他方のアーム
87 Eリング
B 後
D 下
F 前
F1 第1焦点
F2 第2焦点
F3 焦点
F4 反時計方向の力
F5 力
F6 下向きの第1分力
F7 右向きの第2分力
F8 時計方向の力
F9 力
F10 上向きの第1分力
F11 左向きの第2分力
L 左
O1 取付軸の中心軸
O2 回転軸の中心軸
O3 プランジャーの中心軸
R 右
SL 隙間
SR 隙間
U 上
Z 光軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7