(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一タンク部から前記第二タンク部へと移送される液化ガス燃料の流量は、前記充填装置から前記第一タンク部へと流入する液化ガス燃料の流量よりも多いことを特徴とする請求項1に記載の燃料タンクシステム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。そして、複数の実施形態及び変形例に記述された構成同士の明示されていない組み合わせも、以下の説明によって開示されているものとする。
【0011】
(第一実施形態)
図1に示す燃料タンクシステム100は、内燃機関110と共に車両に搭載されている。燃料タンクシステム100は、液化ガス燃料の一種であるジメチルエーテル(Dimethyl Ether,DME)を、内燃機関110へ供給する燃料として貯留している。内燃機関110は、具体的にはディーゼル機関であり、各気筒に配置されたインジェクタ40から噴射されるDME燃料を各気筒内にて圧縮する。内燃機関110は、各燃焼室111において圧縮により燃焼するDME燃料の熱エネルギーを動力に変換する。内燃機関110は、サプライポンプ20及びコモンレール30を、上述のインジェクタ40に加えて有している。
【0012】
サプライポンプ20は、例えばプランジャポンプ等であり、内燃機関110によって駆動される。サプライポンプ20は、燃料タンクシステム100から供給されるDME燃料をさらに加圧する。サプライポンプ20は、昇圧されたDME燃料をコモンレール30に向けて圧送する。
【0013】
コモンレール30は、鉄鋼材等の金属材料によって形成された管状部材である。コモンレール30は、サプライポンプ20にて加圧されたDME燃料を、圧力を維持させたまま蓄積する。コモンレール30は、各インジェクタ40にDME燃料を供給する。コモンレール30には、減圧弁31が設けられている。減圧弁31は、コモンレール30内の燃料圧力が所定の上限圧力を超えた場合に開弁する。
【0014】
インジェクタ40は、コモンレール30を通じて供給されるDME燃料を、内燃機関110の各気筒内に供給する。インジェクタ40は、内燃機関110のヘッド部に形成された貫通孔に挿入されることにより、燃焼室111内に噴孔を露出させている。インジェクタ40は、入力される制御信号に基づいて、燃焼室111に露出した噴孔からDME燃料を噴射する。
【0015】
次に燃料タンクシステム100の構成を説明する。燃料タンクシステム100は、第一燃料タンク90、第二燃料タンク190、第一フィードポンプ10、第二フィードポンプ60、燃料ライン80、供給遮断弁71、移送遮断弁72、還流遮断弁77、及び制御装置50を備えている。
【0016】
第一燃料タンク90及び第二燃料タンク190は、例えば円筒状に形成された金属製の圧力容器である。第一燃料タンク90及び第二燃料タンク190はそれぞれ、DME燃料を貯留する第一貯留室90a及び第二貯留室190aを区画している。第二燃料タンク190が第一燃料タンク90の外部に位置しているため、第一貯留室90aと第二貯留室190aとは、互いに重複していない。即ち、第二貯留室190aは、第一貯留室90aとは別に設けられている。第一燃料タンク90及び第二燃料タンク190は、一つの車両において異なる位置に搭載されている。第一燃料タンク90及び第二燃料タンク190の各容量は、同程度とされている。DME燃料は、燃料蒸気圧に応じた圧力で加圧されることによって液化されている。第一燃料タンク90は、後述するDMEディスペンサ1と接続される給油口91を有している。第一燃料タンク90及び第二燃料タンク190のそれぞれには、安全弁が設けられている。安全弁は、各燃料タンク90,190内の圧力が所定の上限圧力を超えた場合に開弁する。上限圧力は、例えば1.8MPa程度に設定されている。
【0017】
第一フィードポンプ10及び第二フィードポンプ60は、第一燃料タンク90及び第二燃料タンク190の外部に配置された電動ポンプである。第一フィードポンプ10は、電動モータの動力を用いて、第一燃料タンク90に貯留されているDME燃料を吸い込み、DME燃料にフィード圧力(例えば1〜2MPa)を加えて昇圧させる。第二フィードポンプ60は、電動モータの動力を用いて、第二燃料タンク190に貯留されているDME燃料を吸い込み、第一フィードポンプ10と実質同一のフィード圧力(例えば1〜2MPa)をDME燃料に加えて昇圧させる。第一フィードポンプ10及び第二フィードポンプ60は共に、昇圧したDME燃料を内燃機関110のサプライポンプ20に圧送する。
【0018】
燃料ライン80は、第一燃料タンク90及び第二燃料タンク190と、内燃機関110との間において、DME燃料を流通させる配管である。燃料ライン80は、ポリエステル又はアラミド等により補強されたゴム製のホース材によって形成されている。燃料ライン80には、第一供給ライン81、移送ライン83、第二供給ライン85、及びリターン燃料ライン86が含まれている。
【0019】
第一供給ライン81は、第一燃料タンク90から第一フィードポンプ10にDME燃料を供給する燃料流路と、第一フィードポンプ10からサプライポンプ20にDME燃料を供給する燃料流路とを形成している。第一供給ライン81には、移送分岐部82及び合流部84が設けられている。移送分岐部82及び合流部84は、例えばT型の継ぎ手部材によって形成されている。便宜的に、第一供給ライン81うちで、第一燃料タンク90から移送分岐部82までの区間を第一区間81aとし、移送分岐部82から合流部84までの区間を第二区間81bとし、合流部84からサプライポンプ20までの区間を第三区間81cとする。移送分岐部82は、第一供給ライン81の第一区間81aを、第二区間81bと移送ライン83とに分岐させている。合流部84は、第一供給ライン81の第二区間81bと第二供給ライン85とを合流させて、第三区間81cとしている。
【0020】
移送ライン83は、移送分岐部82及び第二燃料タンク190と接続されている。移送ライン83は、第一フィードポンプ10から第二燃料タンク190へと繋がる燃料流路を、第一供給ライン81の第一区間81aと共に形成している。第二供給ライン85は、第二燃料タンク190と合流部84とに接続されている。第二供給ライン85は、第二燃料タンク190から第二フィードポンプ60にDME燃料を供給する燃料流路を形成している。加えて第二供給ライン85は、第二フィードポンプ60からサプライポンプ20にDME燃料を供給する燃料流路を、第一供給ライン81の第三区間81cと共に形成している。
【0021】
リターン燃料ライン86は、内燃機関110から排出されるリターン燃料としてのDME燃料を、第一燃料タンク90及び第二燃料タンク190のそれぞれに流通させる燃料流路を形成している。リターン燃料は、具体的には、減圧弁31の開弁によってコモンレール30から排出される余剰燃料、各インジェクタ40にて噴射されずに排出されるリーク燃料、サプライポンプ20から排出されるリーク燃料等である。リターン燃料ライン86は、リターン分岐部88、第一タンクライン87、及び第二タンクライン89を有している。リターン分岐部88は、例えばT型の継ぎ手部材によって形成されている。第一タンクライン87は、リターン分岐部88と第一燃料タンク90とを繋いでいる。第二タンクライン89は、リターン分岐部88と第二燃料タンク190とを繋いでいる。
【0022】
供給遮断弁71、移送遮断弁72、及び還流遮断弁77はそれぞれ、DME燃料を流通させる弁本体と、弁本体を制御するアクチュエータ等によって構成された二方弁である。供給遮断弁71の弁本体には、それぞれ第一供給ライン81の第二区間81bと接続された流入ポート部71a及び流出ポート部71bが設けられている。供給遮断弁71は、アクチュエータに入力される制御信号に基づいて、第二区間81bを通じたDME燃料の流通を遮断できる。
【0023】
移送遮断弁72の弁本体には、それぞれ移送ライン83と接続された流入ポート部72a及び流出ポート部72bが設けられている。移送遮断弁72は、アクチュエータに入力される制御信号に基づいて、移送ライン83を通じたDME燃料の流通を遮断できる。
【0024】
還流遮断弁77の弁本体には、それぞれ第二タンクライン89と接続された第一ポート部77a及び第二ポート部77bが設けられている。移送遮断弁72は、アクチュエータに入力される制御信号に基づいて、第二タンクライン89を通じたDME燃料の流通を遮断できる。
【0025】
制御装置50は、演算回路としてのプロセッサ58、RAM、及び書き換え可能な不揮発性の記憶媒体としてのフラッシュメモリ59等によって構成されている。制御装置50は、入力部51及び出力部52を有している。入力部51は、第一フューエルセンダ56、内圧センサ56a、温度センサ56b、及び第二フューエルセンダ57を含む多数の車載センサ等の出力信号に加えて、イグニッションスイッチ54及び給油スイッチ55を含む多数の操作部からの操作信号を取得する。
【0026】
各フューエルセンダ56,57は、液化されたDME燃料の液面に追従して上下するフロートの位置を、磁電変換素子又は可変抵抗器を用いて検出することにより、各燃料タンク90,190におけるDME燃料の残量を計測するセンサである。第一フューエルセンダ56は、第一貯留室90a内に位置し、第一燃料タンク90の壁部に取り付けられている。第一フューエルセンダ56によって計測された第一燃料タンク90内のDME燃料の残量に応じた計測値が、信号として入力部51に入力される。第二フューエルセンダ57は、第二貯留室190a内に位置し、第二燃料タンク190の壁部に取り付けられている。第二フューエルセンダ57によって計測された第二燃料タンク190内のDME燃料の残量に応じた計測値が、信号として入力部51に入力される。
【0027】
内圧センサ56a及び温度センサ56bは、第一燃料タンク90の底壁に取り付けられている。内圧センサ56aは、圧力を受ける金属製のダイアフラム部と、圧力に起因したダイアフラム部の変形を電気信号に変換するひずみゲージ等とを備えている。内圧センサ56aは、第一燃料タンク90内の燃料圧力に応じた電気信号を制御装置50へ出力する。温度センサ56bは、温度によって抵抗値を変化させるサーミスタ等を備えている。温度センサ56bは、第一燃料タンク90内の燃料温度に応じた電気信号を制御装置50へ出力する。
【0028】
イグニッションスイッチ54には、内燃機関110の始動及び停止を指示する操作が入力される。運転者等の操作者がイグニッションスイッチ54を操作すると、入力部51には、内燃機関110の始動信号及び停止信号のいずれかが操作信号として入力される。給油スイッチ55には、燃料タンクシステム100への給油開始を通知する操作が入力される。具体的に、運転者等の操作者は、後述するDMEディスペンサ1を燃料タンクシステム100に接続する前に、給油スイッチ55を操作する。給油スイッチ55への入力に基づき、入力部51には、給油開始を通知する給油開始信号が操作信号として入力される。
【0029】
出力部52は、第一フィードポンプ10及び第二フィードポンプ60と、供給遮断弁71、移送遮断弁72、及び還流遮断弁77の各アクチュエータとに接続されている。制御装置50は、フラッシュメモリ59に記憶されている制御プログラムと入力部51を通じて取得した各信号情報とに基づいて、出力部52から出力する制御信号を生成する。
【0030】
<通常時>
以上の燃料タンクシステム100において、稼動状態にある内燃機関110へDME燃料を供給している場合(以下、「通常時」)の作動を説明する。内燃機関110の稼動状態では、供給遮断弁71及び還流遮断弁77は、開状態とされる。一方で、移送遮断弁72は、閉状態とされる。以上の状態で、第一フィードポンプ10及び第二フィードポンプ60の作動により、第一供給ライン81及び第二供給ライン85を通じて、各燃料タンク90,190に貯留されているDME燃料が、内燃機関110のサプライポンプ20に圧送される。
【0031】
<給油時>
次に、燃料タンクシステム100において、第一燃料タンク90にDME燃料を充填する場合(以下、「給油時」)の作動を説明する。DME燃料は、第一燃料タンク90の給油口91に接続されるDMEディスペンサ1により、第一燃料タンク90内に充填される。まず、DMEディスペンサ1の詳細を説明する。
【0032】
DMEディスペンサ1は、DME燃料を給油する給油ステーション等の施設に設置されている。DMEディスペンサ1は、給油ノズル3を有している。給油ノズル3は、第一燃料タンク90の給油口91と液密且つ気密な状態で接続される。DMEディスペンサ1は、施設に設置された貯蔵タンクに貯蔵されているDME燃料に充填圧力を加えて給油ノズル3へと圧送する。DMEディスペンサ1から送り出されるDME燃料は、給油ノズル3及び給油口91を通じて、第一燃料タンク90に流入し、第一燃料タンク90及び第二燃料タンク190に充填される。
【0033】
燃料タンクシステム100では、DMEディスペンサ1による給油が開始される前に、第一燃料タンク90に残留していたDME燃料は、第二燃料タンク190へと移送される。以下、こうした移送作動が行われる際に、制御装置50のプロセッサ58によって実施される処理を、
図2に基づき、
図1を参照しつつ説明する。
図2に示す処理は、例えばイグニッションスイッチ54への操作に基づく停止信号を取得したことを条件として、制御装置50により開始される。内燃機関110のサプライポンプ20、並びに燃料タンクシステム100の第一フィードポンプ10及び第二フィードポンプ60は、停止信号に基づいて、一旦は停止状態とされる。
【0034】
S101では、給油スイッチ55への操作の入力に基づく給油開始信号の取得処理を行い、S102に進む。S102では、S101にて給油開始信号を取得できたか否かに基づき、DME燃料の充填が開始されるか否かを判定する。S102にて、給油開始信号を取得しておらず、DME燃料の充填が開始されないと判定した場合には、一連の処理を終了する。
【0035】
一方で、S102にて、給油開始信号を取得しており、DME燃料の充填が開始されると判定した場合には、燃料ライン80におけるDME燃料の流通経路を切り替えるS103〜S105へと進む。S103では、制御信号を供給遮断弁71のアクチュエータへ出力し、S104に進む。S103にて出力される制御信号は、通常時において開状態とされている供給遮断弁71を閉状態へと切り替える信号である。S103により、第一供給ライン81が連通状態から遮断状態へと切り替えられる。
【0036】
S104では、制御信号を移送遮断弁72のアクチュエータへ出力し、S105に進む。S104にて出力される制御信号は、通常時において閉状態とされている移送遮断弁72を開状態へと切り替える信号である。S104により、移送ライン83が遮断状態から連通状態へと切り替えられる。
【0037】
S105では、制御信号を還流遮断弁77のアクチュエータへ出力し、S106に進む。S105にて出力される制御信号は、通常時において開状態とされている還流遮断弁77を閉状態へと切り替える信号である。S105により、第二タンクライン89が連通状態から遮断状態へと切り替えられる。その結果、第二燃料タンク190から第一燃料タンク90へのリターン燃料ライン86を通じたDME燃料の流通が規制される。
【0038】
S106では、移送ライン83を通じて、第一燃料タンク90から第二燃料タンク190へとDME燃料を移送するために、第一フィードポンプ10を稼動させる制御信号を当該ポンプ10へ出力し、S107に進む。S106により、第一燃料タンク90に貯留されているDME燃料は、第二燃料タンク190に貯留されているDME燃料の蒸気圧よりも高い圧力まで、第一フィードポンプ10によって昇圧される。そして、昇圧されたDME燃料は、第一区間81a及び移送ライン83を通じて第二燃料タンク190へと移送される。このとき、第一燃料タンク90から第二燃料タンク190へと移送されるDME燃料の流量は、DMEディスペンサ1から第一燃料タンク90へと流入するDME燃料の流量よりも多くされることが望ましい。
【0039】
S107では、第一燃料タンク90の残量に係る情報として、第一フューエルセンダ56、内圧センサ56a、及び温度センサ56bから入力される各信号を取得し、S108に進む。S108では、S107にて取得した各信号等に基づいて、第一燃料タンク90にDME燃料が残留しているか否かを判定する。S108では、以下説明する三つの条件の何れか一つが成立していた場合に、第一燃料タンク90が空であると肯定判定を行い、S109に進む。尚、S108においては、三つの条件のいずれか二つが成立していた場合に肯定判定がなされてもよく、又は三つの条件が全て成立していた場合に肯定判定がなされてもよい。
【0040】
上述の三つの条件の一つ目は、第一燃料タンク90内のDME燃料が気化しているか否かである。具体的には、内圧センサ56aから取得した第一燃料タンク90内のタンク圧力と、温度センサ56bから取得した第一燃料タンク90内のタンク温度とに基づいて、DME燃料の気液判定を行う。気液判定には、飽和蒸気圧(
図3参照)が用いられる。タンク温度に対応する飽和蒸気圧よりもタンク圧力が低い場合に、第一燃料タンク90内のDME燃料は、気化した状態であるとみなされる。
【0041】
二つ目の条件は、第一フィードポンプ10がDME燃料の負荷の低下が生じているか否かである。具体的には、第一フィードポンプ10の現在の回転速度が閾値となる所定速度を超えている場合に、液相のDME燃料が第一燃料タンク90から無くなって、負荷の低下が生じているとみなされる。閾値となる上記の回転速度は、例えばフラッシュメモリ59に予め記憶されている。
【0042】
三つ目の条件は、第一燃料タンク90内にて液面が顕著に低下しているか否かである。具体的には、第一フューエルセンダ56から取得した液面高さがの閾値となる所定の液面高さを下回っている場合に、液相のDME燃料が第一燃料タンク90から無くなって、液面の低下が生じているとみなされる。閾値となる液面高さは、例えばフラッシュメモリ59に予め記憶されている。
【0043】
S108にて肯定判定をした場合には、S109に進む。S109では、第一フィードポンプ10を停止させる制御信号を、当該ポンプ10へ出力し、S110に進む。S109にて出力される制御信号に基づいて、第一燃料タンク90から第二燃料タンク190へのDME燃料の移送が一時的に中断又は停止される。
【0044】
S110では、第二フューエルセンダ57から入力される信号に基づいて、第二燃料タンク190におけるDME燃料の残量情報を取得する処理を行い、S111に進む。S111では、S110にて取得した第二燃料タンク190の残量割合と、所定の閾値(例えば、85パーセント)との比較に基づいて、第二燃料タンク190が満タンの状態になったか否かを判定する。S111にて、残量割合が85パーセント以上であり、満タン状態にあると判定した場合、S117に進む。一方で、S111にて、残量割合が85パーセント未満であり、満タン状態に無いと判定した場合、S112に進む。
【0045】
S112では、S107と同様に、第一燃料タンク90の残量に係る情報を取得し、S113に進む。S113では、第一燃料タンク90にDME燃料が残留しているか否かを判定する。但し、第一フィードポンプ10の稼動及び停止が繰り返される煩雑な処理とならないよう、S113の内容は、S108の内容と異なっている。
【0046】
具体的にS113では、ヒステリシスを設けるため、以下の二つの条件が成立していた場合に肯定判定がなされる。一つ目の条件は、タンク温度に対応する飽和蒸気圧よりも、タンク圧力が十分に高いか否かである。二つ目の条件は、第一燃料タンク90内の液面高さが所定の液面高さを超えているか否かである。この所定の液面高さは、S108の閾値よりも高い値に設定されており、例えばフラッシュメモリ59に予め記憶されている。
【0047】
S113にて否定判定をした場合、S112及びS113を繰り返すことにより、第一燃料タンク90にDME燃料が溜まるまで待機する。そして、第二燃料タンク190に移送可能なDME燃料が溜まり、肯定判定を行うことにより、S106へと戻る。以上により、一時的に停止されていた第一フィードポンプ10が再び稼動される。尚、所定の時間を超えてS112及びS113が繰り返された場合、給油が停止されたと推定し、S120及びS121へ移行してもよい。
【0048】
S107の否定判定に基づくS114では、S110と同様に、第二燃料タンク190におけるDME燃料の残量情報を取得する処理を行い、S115に進む。S115では、S111と同様に、第二燃料タンク190が満タンの状態になったか否かを判定する。S115にて、残量割合が85パーセント未満であり、満タン状態に無いと判定した場合、S107に戻る。一方で、S115にて、残量割合が85パーセント以上であり、満タン状態にあると判定した場合、S116に進む。S116では、S109と同様に、第一フィードポンプ10を停止させる制御信号を、当該ポンプ10へ出力し、S117に進む。以上により、第一燃料タンク90から第二燃料タンク190へのDME燃料の移送が終了される。
【0049】
S117では、移送遮断弁72のアクチュエータへ制御信号を出力し、S118に進む。S117にて出力される制御信号は、開状態となっていた移送遮断弁72を閉状態へと切り替える信号である。S117により、移送ライン83は、連通状態から遮断状態へと切り替えられる。
【0050】
S118では、第一フューエルセンダ56から入力される信号に基づいて、第一燃料タンク90におけるDME燃料の残量情報を取得する処理を行い、S118に進む。S118では、S117にて取得した第一燃料タンク90の残量割合と、所定の閾値(例えば、85パーセント)との比較に基づいて、第一燃料タンク90が満タンの状態になったか否かを判定する。S119にて、残量割合が85パーセント未満であり、満タン状態に無いと判定した場合、S118及びS119を繰り返すことにより、第一燃料タンク90が満タン状態となるまで待機する。そして、残量割合が85パーセントを超えて、第一燃料タンク90が満タン状態となったと判定することにより、S120に進む。
【0051】
S120では、供給遮断弁71のアクチュエータへ制御信号を出力し、S121に進む。S120にて出力される制御信号は、閉状態とされていた供給遮断弁71を開状態へと切り替える信号である。S120により、第一供給ライン81が遮断状態から連通状態へと切り替えられる。
【0052】
S121では、還流遮断弁77のアクチュエータへ制御信号を出力し、一連の処理を終了する。S121にて出力される制御信号は、閉状態とされていた還流遮断弁77を開状態へと切り替える信号である。S121により、第二タンクライン89が遮断状態から連通状態へと切り替えられる。
【0053】
ここまで説明した第一実施形態では、DMEディスペンサ1によってDME燃料を充填する際に、第一燃料タンク90に貯留されているDME燃料は、第一フィードポンプ10の作動によって昇圧されることにより、第二燃料タンク190へと移送可能となる。例えば第一フィードポンプ10は、第一燃料タンク90に20パーセント程度残留していたDME燃料を汲み上げて、10パーセント程度のDME燃料が残留している第二燃料タンク190に移送することができる。
【0054】
このようにして第一燃料タンク90に残るDME燃料が少なくなれば、第一燃料タンク90の熱容量は、小さくなる。故に、
図3の如く、DMEディスペンサ1から送られるDME燃料の蒸発潜熱により、リターン燃料によって60℃程度まで高められていた第一燃料タンク90内の温度は、40℃程度まで急速に下がり得る。その結果、第一燃料タンク90内の圧力は、1.5MPa程度から1.0MPa未満へと低下する。以上により、第一燃料タンク90内の圧力とDMEディスペンサ1から送られるDME燃料の充填圧力との差が確保され、第一燃料タンク90へのDME燃料の流入速度は、迅速に高まり得る。したがって、給油時間を短縮することが可能となる。
【0055】
加えて第一実施形態では、DMEディスペンサ1から第一燃料タンク90に流入するよりも多くのDME燃料が、第一フィードポンプ10によって第一燃料タンク90から第二燃料タンク190へと移送可能である。故に、二つの燃料タンク90,190に貯留されたDME燃料の総量が第二燃料タンク190の容量よりも多い場合、第二燃料タンク190は、第一燃料タンク90よりも先に満タンの状態となる。以上により、第一燃料タンク90から第二燃料タンク190への移送に時間を要することで給油時間が長くなってしまう事態は、回避可能となる。また、DMEディスペンサ1から第一燃料タンク90への流入量が移送量よりも多いため、第一燃料タンク90内の圧力は低くなる。よって、給油時間の長さは問題とならず、且つ、本実施形態のデメリットともならない。
【0056】
また第一実施形態では、給油スイッチ55に操作が入力された場合に、DME燃料の移送が開始される。こうした構成であれば、給油が行われない場合では、二つの燃料タンク90,190のそれぞれに概ね等しい量のDME燃料を貯留しておくことが可能である。故に、内燃機関110が稼動状態にある場合では、燃料タンクシステム100は、各燃料タンク90,190から内燃機関110へと、十分な量のDME燃料を確実に送り出すことができる。
【0057】
加えて第一実施形態では、第一燃料タンク90が空の状態になると、第一フィードポンプ10によるDME燃料の移送は、一時的に中断される。故に、第一フィードポンプ10を空転させることに起因した故障の発生は、回避可能となる。
【0058】
さらに第一実施形態では、通常時において第一燃料タンク90から内燃機関110へとDME燃料を供給していた第一フィードポンプ10が、給油時にてDME燃料を移送する移送部として利用されている。以上の構成であれば、燃料タンクシステム100に移送のための構成を追加することなく、給油時間の短縮を図ることが可能となる。
【0059】
そして、第一実施形態のようにリターン燃料ライン86が設けられた形態では、リターン燃料ライン86を通じて、第二燃料タンク190に移送されたDME燃料が第一燃料タンク90に戻ってしまう懸念がある。そのため第一実施形態では、リターン燃料ライン86の第二タンクライン89に、還流遮断弁77が設けられている。還流遮断弁77を閉状態とすることにより、二つの燃料タンク90,190を繋いでいるリターン燃料ライン86は、遮断状態となる。以上により、第二燃料タンク190へと一旦移送されたDME燃料の第一燃料タンク90への戻りは、確実に防がれ得る。
【0060】
尚、第一実施形態において、DMEディスペンサ1が特許請求の範囲に記載の「充填装置」に相当し、第一フィードポンプ10が特許請求の範囲に記載の「移送部」に相当し、制御装置50が特許請求の範囲に記載の「判定部」に相当する。また、供給遮断弁71及び移送遮断弁72が特許請求の範囲に記載の「第一切替部」に相当し、還流遮断弁77が特許請求の範囲に記載の「規制部」に相当し、移送ライン83が特許請求の範囲に記載の「第一移送ライン」に相当する。加えて、第一燃料タンク90が特許請求の範囲に記載の「第一タンク部」に相当し、給油口91が特許請求の範囲に記載の「接続部」に相当し、第二燃料タンク190が特許請求の範囲に記載の「第二タンク部」に相当する。そして、内燃機関110が特許請求の範囲に記載の「機関」に相当する。
【0061】
(第二実施形態)
図4に示す本発明の第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。第二実施形態による燃料タンクシステム200は、第一実施形態とは異なる構成の燃料ライン280を備えている。また、燃料タンクシステム200は、第一実施形態の供給遮断弁71及び移送遮断弁72(
図1参照)と実質的に同一の第一供給遮断弁171及び第一移送遮断弁172に加えて、第二供給遮断弁271及び第二移送遮断弁272を備えている。さらに、第二実施形態の第二フィードポンプ260は、電動モータの出力軸を逆回転させることにより、吸い込み及び吐き出しの方向を反転させることが可能である。以下、燃料タンクシステム200の詳細を順に説明する。
【0062】
燃料ライン280には、第一実施形態の各ライン81,83,86と実質同一の第一供給ライン181、第一移送ライン183、及びリターン燃料ライン286に加えて、第二供給ライン285、第二移送ライン283が含まれている。
【0063】
第二供給ライン285は、第一実施形態の第二供給ライン85(
図1参照)に相当し、第二燃料タンク190と第一供給ライン181の合流部84とに接続されている。第二供給ライン285は、第二燃料タンク190から第二フィードポンプ260にDME燃料を供給する燃料流路を形成している。加えて第二供給ライン285は、第二フィードポンプ260からサプライポンプ20にDME燃料を供給する燃料流路を、第一供給ライン181の第三区間181cと共に形成している。第二供給ライン285には、移送合流部284が設けられている。便宜的に、第二供給ライン285のうちで、第二燃料タンク190から移送合流部284までの区間を第一区間285aとし、移送合流部284から合流部84までの区間を第二区間285bとする。移送合流部284は、例えばT型の継ぎ手部材によって形成されている。移送合流部284は、第二移送ライン283を第二供給ライン285に合流させている。
【0064】
第二移送ライン283は、第一燃料タンク90及び移送合流部284と接続されている。第二移送ライン283は、第一フィードポンプ10から第二燃料タンク190へと繋がる燃料流路を、第二供給ライン285の第一区間285aと共に形成している。第二移送ライン283は、第一移送ライン183によって形成される燃料流路とは別系統の燃料流路を形成している。
【0065】
第二供給遮断弁271及び第二移送遮断弁272はそれぞれ、DME燃料を流通させる弁本体と、弁本体を制御するアクチュエータ等によって構成された二方弁である。第二供給遮断弁271は、第二供給ライン285の第二区間285bに配置されている。第二供給遮断弁271の弁本体には、それぞれ第二区間285bと接続された流入ポート部271a及び流出ポート部271bが設けられている。第二供給遮断弁271は、アクチュエータに入力される制御信号に基づいて、第二区間285bを通じたDME燃料の流通を遮断できる。
【0066】
第二移送遮断弁272は、第二移送ライン283に配置されている。第二移送遮断弁272の弁本体には、それぞれ第二移送ライン283と接続された流入ポート部272a及び流出ポート部272bが設けられている。第二移送遮断弁272は、アクチュエータに入力される制御信号に基づいて、第二移送ライン283を通じたDME燃料の流通を遮断できる。
【0067】
<通常時>
以上の燃料タンクシステム200の通常時における作動を説明する。内燃機関110の稼動状態では、第一供給遮断弁171、第二供給遮断弁271、及び還流遮断弁77は、開状態とされる。一方で、第一移送遮断弁172及び第二移送遮断弁272は、閉状態とされる。以上の状態で第一フィードポンプ10及び第二フィードポンプ260が作動することにより、各燃料タンク90,190に貯留されたDME燃料が、第一供給ライン181及び第二供給ライン285を通じて、内燃機関110のサプライポンプ20に圧送される。
【0068】
<給油時>
次に、燃料タンクシステム200の給油時における作動を説明する。給油時においては、第一供給遮断弁171、第二供給遮断弁271、及び還流遮断弁77は、閉状態とされる。一方で、第一移送遮断弁172及び第二移送遮断弁272は、開状態とされる。以上の状態で、第一フィードポンプ10は、電動モータの出力軸を通常時と同じ方向に回転(以下、「正回転」)させることにより、通常時と同一の流通方向にDME燃料を吐出する。一方で、第二フィードポンプ260は、電動モータの出力軸を通常時とは逆方向に回転(以下、「逆回転」)させることにより、通常時とは反対の流通方向にDME燃料を吐出する。以上のような作動を燃料タンクシステム200に行わせるために、制御装置250によって実施される処理の詳細を、
図5〜
図7に基づき、
図4を参照しつつ説明する。
【0069】
S201及びS202では、第一実施形態のS101及びS102(
図2参照)と実質的に同一の処理を実施し、S203に進む。S203では、第一供給遮断弁171及び第二供給遮断弁271の各アクチュエータへ制御信号を出力し、S204に進む。S203にて出力される制御信号は、通常時において開状態とされている第一供給遮断弁171及び第二供給遮断弁271を閉状態へと切り替える信号である。S203により、第一供給ライン181及び第二供給ライン285は共に、連通状態から遮断状態へと切り替えられる。
【0070】
S204では、第一移送遮断弁172及び第二移送遮断弁272の各アクチュエータへ制御信号を出力し、S205に進む。S204にて出力される制御信号は、通常時において閉状態とされている第一移送遮断弁172及び第二移送遮断弁272を開状態へと切り替える信号である。S204により、第一移送ライン183及び第二移送ライン283は共に、遮断状態から連通状態へと切り替えられる。S205では、第一実施形態のS105(
図2参照)と実質的に同一の処理が実施され、S206に進む。
【0071】
S206では、電動モータを正回転させる制御信号を第一フィードポンプ10へ出力することにより、当該フィードポンプ10を稼動させ、S207に進む。S206により、第一燃料タンク90に貯留されているDME燃料が第一フィードポンプ10によって昇圧され、第一区間181a及び第一移送ライン183を通じて第二燃料タンク190へと移送される。
【0072】
S207では、電動モータを逆回転させる制御信号を第二フィードポンプ260へ出力することにより、当該フィードポンプ260を稼動させ、S208に進む。S207により、第一燃料タンク90に貯留されているDME燃料が第二フィードポンプ260によって昇圧され、第二移送ライン283及び第二供給ライン285の第一区間285aを通じて第二燃料タンク190へと移送される。
【0073】
S208及びS209では、第一実施形態のS107及びS108(
図2参照)と実質的に同一の処理を実施する。S209にて、第一燃料タンク90が空の状態であると判定した場合には、S210に進む。S210では、各電動モータの回転を停止させる制御信号を第一フィードポンプ10及び第二フィードポンプ260のそれぞれに出力し、S211に進む。
【0074】
S211〜S214では、第一実施形態のS110〜S113(
図2参照)と実質的に同一の処理を実施する。S211にて、第二燃料タンク190が満タン状態にあると判定した場合、S218に進む。また、S214にて肯定判定を行った場合、S206へと戻る。
【0075】
S209にて否定判定を行った場合のS215及びS216では、SS211及びS212と同様に、第二燃料タンク190が満タンの状態になったか否かを判定する。S216にて、第二燃料タンク190が満タンの状態に無いと判定した場合、S208に戻る。一方で、S216にて満タンの状態であると判定した場合、S217に進む。
【0076】
S217では、S210と同様に、第一フィードポンプ10及び第二フィードポンプ260を停止させる制御信号を、各フィードポンプ10,260へ出力し、S218に進む。以上により、第一燃料タンク90から第二燃料タンク190へのDME燃料の移送が終了される。
【0077】
S218では、第一移送遮断弁172及び第二移送遮断弁272の各アクチュエータへ制御信号を出力し、S219に進む。S218にて出力される制御信号は、開状態となっていた第一移送遮断弁172及び第二移送遮断弁272を閉状態へと切り替える信号である。S218により、第一移送ライン183及び第二移送ライン283は共に、連通状態から遮断状態へと切り替えられる。
【0078】
S219及びS220では、第一実施形態のS118及びS119(
図2参照)と実質的に同一の処理を実施する。S220にて、第一燃料タンク90が満タン状態となったと判定すると、S221に進む。S221では、第一供給遮断弁171及び第二供給遮断弁271の各アクチュエータへ制御信号を出力し、S222に進む。S221にて出力される制御信号は、閉状態となっていた第一供給遮断弁171及び第二供給遮断弁271を開状態へと切り替える信号である。S221により、第一供給ライン181及び第二供給ライン285は共に、遮断状態から連通状態へと切り替えられる。S222では、第一実施形態のS121(
図2参照)と実質的に同一の処理を実施し、一連の処理を終了する。
【0079】
ここまで説明した第二実施形態でも、第一実施形態と同様の効果を奏することにより、第一燃料タンク90内の圧力とDMEディスペンサ1から送られるDME燃料の充填圧力との差は、確保され得る。故に、第一燃料タンク90へのDME燃料の流入速度を迅速に高めて、給油時間を短縮することが可能となる。
【0080】
加えて第二実施形態では、第一燃料タンク90から第二燃料タンク190へのDME燃料の移送に、第一フィードポンプ10だけでなく、第二フィードポンプ260も用いられている。故に、第一燃料タンク90から第二燃料タンク190へと移送されるDME燃料の流量は、DMEディスペンサ1から第一燃料タンク90へと流入するDME燃料の流量よりも確実に多くなる。したがって、第一燃料タンク90から第二燃料タンク190への移送に時間を要することで給油時間が長くなる事態は、確実に回避可能となる。
【0081】
尚、第二実施形態においては、制御装置250が特許請求の範囲に記載の「判定部」に相当し、第二フィードポンプ260が特許請求の範囲に記載の「供給部」に相当する。また、第一供給遮断弁171及び第一移送遮断弁172が特許請求の範囲に記載の「第一切替部」に相当し、第二供給遮断弁271及び第二移送遮断弁272が特許請求の範囲に記載の「第二切替部」に相当する。
【0082】
(第三実施形態)
図8に示す本発明の第三実施形態は、第一実施形態の別の変形例である。第三実施形態による燃料タンクシステム300では、第一燃料タンク90及び第二燃料タンク190のうちで、第二燃料タンク190のみからサプライポンプ20へとDME燃料が供給される。燃料タンクシステム300は、第一実施形態の第一フィードポンプ10及び第二フィードポンプ60に替えて、移送ポンプ310及びフィードポンプ360を備えている。加えて、燃料タンクシステム300は、第一実施形態とは異なる構成の燃料ライン380を備えている。
【0083】
移送ポンプ310は、第一燃料タンク90に貯留されているDME燃料を吸い込み、第二燃料タンク190に圧送する。移送ポンプ310は、第二燃料タンク190におけるDME燃料の残量が第一燃料タンク90におけるDME燃料の残量よりも多くなるよう、第一燃料タンク90から第二燃料タンク190へと液化ガス燃料を移送する。
【0084】
フィードポンプ360は、第二燃料タンク190に貯留されているDME燃料を吸い込み、DME燃料にフィード圧力(例えば1〜2MPa)を加えて昇圧させる。フィードポンプ360は、昇圧したDME燃料を内燃機関110のサプライポンプ20に圧送する。フィードポンプ360によって圧送されるDME燃料の流量は、第一実施形態の二つのフィードポンプ10,60(
図1参照)の流量の合計と同程度とされている。
【0085】
燃料ライン380には、移送ライン383、供給ライン381、リターン燃料ライン386が含まれている。移送ライン383は、第一燃料タンク90及び第二燃料タンク190と接続されている。移送ライン383には、移送ポンプ310及び移送遮断弁72が配置されている。移送ライン383は、第一燃料タンク90から移送ポンプ310へと繋がる燃料流路と、移送ポンプ310から第二燃料タンク190へと繋がる燃料流路とを形成している。
【0086】
供給ライン381は、第二燃料タンク190及びサプライポンプ20と接続されている。供給ライン381には、フィードポンプ360及び供給遮断弁371が配置されている。供給ライン381は、第二燃料タンク190からフィードポンプ360へと繋がる燃料流路と、フィードポンプ360からサプライポンプ20へと繋がる燃料流路とを形成している。
【0087】
供給遮断弁371は、第一実施形態の供給遮断弁71(
図1参照)に相当する構成であり、供給ライン381上において、第二燃料タンク190とフィードポンプ360との間に位置している。供給遮断弁371は、供給ライン381を通じたDME燃料の流通を遮断できる。
【0088】
リターン燃料ライン386は、内燃機関110及び第二燃料タンク190と接続されている。リターン燃料ライン386は、内燃機関110から排出されるリターン燃料としてのDME燃料を、第一燃料タンク90及び第二燃料タンク190のうちで、第二燃料タンク190のみに流通させる燃料通路を形成している。リターン燃料ライン386には、還流遮断弁77が配置されている。
【0089】
<通常時>
以上の燃料タンクシステム300の通常時における作動を説明する。内燃機関110の稼動状態では、移送遮断弁72、供給遮断弁371、及び還流遮断弁77は、全て開状態とされる。こうした状態下、フィードポンプ360の作動により、第二燃料タンク190に貯留されたDME燃料が供給ライン381を通じてサプライポンプ20に圧送される。
【0090】
以上のような作動を燃料タンクシステム300に行わせるために、制御装置350によって実施される処理の詳細を、
図9に基づき、
図8を参照しつつ説明する。
図9に示す処理は、例えばイグニッションスイッチ54への操作に基づく始動信号を取得したことを条件として制御装置350によって開始され、停止信号を取得するまで繰り返される。
【0091】
S301では、第一フューエルセンダ56及び第二フューエルセンダ57から入力される信号に基づいて、第一燃料タンク90及び第二燃料タンク190のそれぞれにおけるDME燃料の残量情報を取得する処理を行い、S302進む。S302では、各燃料タンク90,190におけるDME燃料の残量の総和が燃料タンクシステム300に貯留可能なDME燃料量の半分以上であるか否かを判定する。S302にて肯定判定を行った場合、S303に進む。S302では、第二燃料タンク190の満タン状態を維持するよう、移送ポンプ310によるDME燃料の移送を制御する。
【0092】
S302にて否定判定を行った場合のS304では、DME燃料の残量の総和が燃料タンクシステム300に貯留可能なDME燃料量の30パーセント以上であるか否かを判定する。S304にて肯定判定を行った場合、S305に進む。S305では、第一燃料タンク90の残量が所定の下限値を下回らないよう、移送ポンプ310によるDME燃料の移送を制御する。第一燃料タンク90に対し設定される下限値は、例えば第二燃料タンク190の残量に応じて変更される。この下限値は、例えば第一燃料タンク90及び第二燃料タンク190間の重量差に起因して車両の走行に不都合が生じる場合に、適宜高い値に調整可能である。
【0093】
一方、S304にて、DME燃料の残量の総和が燃料タンクシステム300に貯留可能なDME燃料量の30パーセント未満であると判定した場合、S306に進む。S306では、車両の航続距離を最大限伸ばすことを目的として、第一燃料タンク90が空の状態となるよう、移送ポンプ310によるDME燃料の移送を制御する。こうして第一燃料タンク90の残量を極力0パーセントに近づけることにより、DME燃料を使い切ることが可能になる。尚、残量の総和が30パーセント未満の場合では、重量差の問題は、生じ難くなる。また、S302及びS304の判定に用いられる閾値は、適宜変更可能である。
【0094】
<給油時>
次に、燃料タンクシステム300の給油時における作動を説明する。給油時においては、移送遮断弁72が開状態とされる一方で、供給遮断弁71及び還流遮断弁77は、閉状態とされる。こうした状態下、移送ポンプ310の作動により、第一燃料タンク90のDME燃料が第二燃料タンク190に移送される。以上のような作動を燃料タンクシステム300に行わせるために、制御装置350によって実施される処理の詳細を、
図10に基づき、
図8を参照しつつ説明する。
【0095】
S311〜S315では、第一実施形態のS101〜S105(
図2参照)と実質的に同一の処理を実施し、S316に進む。S316では、移送ポンプ310を稼動させる制御信号を当該ポンプ310へ出力し、S317に進む。S316により、第一燃料タンク90に貯留されているDME燃料が移送ポンプ310によって昇圧され、第二燃料タンク190へと移送される。
【0096】
S317及びS318では、第一実施形態のS107及びS108(
図2参照)と実質的に同一の処理を実施し、S319に進む。S319では、移送ポンプ310を停止させる制御信号を、当該ポンプ310へ出力し、S320に進む。S319にて出力される制御信号に基づいて、第一燃料タンク90から第二燃料タンク190へのDME燃料の移送が一時的に中断又は停止される。S320〜S325では、第一実施形態のS110〜S115(
図2参照)と実質的に同一の処理を実施する。
【0097】
S325にて肯定判定を行った場合のS326では、S319と同様に、移送ポンプ310を停止させる制御信号を出力し、S327に進む。S327〜S331では、第一実施形態のS117〜S121(
図2参照)と実質的に同一の処理を実施し、一連の処理を終了する。
【0098】
ここまで説明した第三実施形態でも、第一実施形態と同様の効果を奏することにより、第一燃料タンク90内の圧力とDMEディスペンサ1から送られるDME燃料の充填圧力との差は、確保され得る。故に、第一燃料タンク90へのDME燃料の流入速度を迅速に高めて、給油時間を短縮することが可能となる。
【0099】
加えて第三実施形態では、内燃機関110の稼動中においても、第二燃料タンク190へのDME燃料の移送が行われる。故に、給油時においては、第一燃料タンク90が実質的に空の状態で、DME燃料の充填が開始され得る。したがって、蒸発潜熱による第一燃料タンク90内の温度及び圧力の低下を迅速に生じさせ、給油開始直後から高い流入速度でDME燃料を充填することが可能となる。
【0100】
加えて第三実施形態では、第一燃料タンク90の残量は、走行中において極力0%に近づけられる。故に、第一燃料タンク90に貯留されていたDME燃料を使い切ることができるため、航続距離を伸ばすことが可能となる。さらに第三実施形態のフィードポンプ360は、内燃機関110にて必要とされるDME燃料を単独で供給可能である。故に、走行中に第一燃料タンク90から第二燃料タンク190へDME燃料を移送していても、内燃機関110には十分なDME燃料が供給され得る。よって、内燃機関110にて、出力制限が発生するような事態は、回避される。
【0101】
さらに第三実施形態におけるリターン燃料は、第二燃料タンク190に戻される。故に、高温のリターン燃料に起因した第一燃料タンク90内の温度上昇は、生じ得ない。したがって、給油開始直後において圧力差が確実に確保され得るため、給油時間は、確実に短縮可能となる。
【0102】
尚、第三実施形態においては、移送ポンプ310が特許請求の範囲に記載の「移送部」に相当し、フィードポンプ360が特許請求の範囲に記載の「供給部」に相当する。
【0103】
(他の実施形態)
以上、本発明による複数の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0104】
上記第一,第二実施形態では、第一燃料タンク内のDME燃料を内燃機関へと圧送する第一フィードポンプが、給油時に第一燃料タンクから第二燃料タンクへとDME燃料を移送していた。しかし、第一燃料タンクから第二燃料タンクへとDME燃料を移送するポンプ等の構成が、フィードポンプとは別に設けられていてもよい。
【0105】
上記第一,第二実施形態では、第一燃料タンク内のDME燃料を内燃機関へと供給する供給ラインの一部が、第一燃料タンクから第二燃料タンクへとDME燃料を移送する移送ラインの一部を兼ねていた。しかし、移送ラインは、供給ラインとは全く別の燃料流路を形成してもよい。
【0106】
上記実施形態の制御装置は、給油スイッチからの給油開始信号に基づいて、DME燃料の充填開始を判定していた。しかし、給油開始を判定するための情報は、こうしたスイッチの操作情報に限定されない。例えば、給油口を開けたことに基づいて、給油開始が判定されてもよい。また、GPS等の位置情報に基づき、給油ステーション等の施設内で内燃機関が停止された場合に、給油開始の判定がなされてもよい。さらに、燃料残量が僅かとなった状態下、内燃機関が停止された場合に、給油開始の判定がなされてもよい。
【0107】
上記第一実施形態では、供給遮断弁及び移送遮断弁の二つの二方弁により、第一供給ラインを連通状態から遮断状態へと切り替えると共に、移送ラインを遮断状態から連通状態へと切り替える「第一切替部」の機能が果たされていた。しかし、例えば移送分岐部に設けた三方弁が、「第一切替部」の機能を果たしてもよい。同様に、第二実施形態の移送合流部に設けた三方弁により、第二供給ラインを連通状態から遮断状態へと切り替えると共に、第二移送ラインを遮断状態から連通状態へと切り替える「第二切替部」の機能が果たされてもよい。加えて、リターン燃料ラインに設けた逆止弁によって、第二燃料タンクから第一燃料タンクへのDME燃料の流通が規制されてもよい。さらに、第三実施形態における各遮断弁371,72,77は、必要に応じて省略可能である。
【0108】
上記第一,第二実施形態におけるリターン燃料ラインは、第一燃料タンク及び第二燃料タンクのうちで、一方の燃料タンクのみに接続される構成であってもよい。また、上記第三実施形態におけるリターン燃料ラインは、第一燃料タンクのみに接続される構成であってもよく、又は第一燃料タンク及び第二燃料タンクの両方に接続される構成であってもよい。
【0109】
上記実施形態では、二つの燃料タンクが個別に形成されていた。しかし、一つの燃料タンク内の空間を区画壁によって分割する構成により、当該タンク内に互いに重複しない第一貯留室及び第二貯留室が共に形成されていてもよい。また、各燃料タンクの容積は、互いに異なっていてもよい。さらに、給油口は、第一燃料タンク及び第二燃料タンクの両方に設けられていてもよい。
【0110】
上記実施形態では、燃料供給システムによって内燃機関に供給される液化ガス燃料として、DME燃料を例示した。しかし、液化ガス燃料は、DME燃料に限定されない。例えば、主成分としてDMEを含む軽油等のディーゼル燃料が、液化ガス燃料として使用可能である。
【0111】
上記実施形態の制御装置によって提供されていた機能は、所定のプログラムを実行するプロセッサの機能ブロックであってもよく、又は専用の集積回路によって実現されていてもよい。或いは、上述のものとは異なるハードウェア及びソフトウェア、或いはこれらの組み合わせによって、各機能が提供されてよい。
【0112】
上記実施形態では、車両に搭載された内燃機関に供給される燃料を貯留する燃料タンクシステムに本発明を適用した例を説明した。しかし、車載された内燃機関に限らず、船舶、鉄道車両、及び航空機等に搭載された内燃機関又は外燃機関に供給される燃料を貯留する燃料タンクシステムにも、本発明は適用可能である。さらに、発電用の内燃機関又は外燃機関にて消費される燃料を貯留する燃料タンクシステムにも、本発明は適用可能である。