(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ケースと、前記ケース内部に配置された電動機と、前記電動機を制御するインバータと、前記インバータと前記電動機とを電気的に接続する接続装置と、前記ケース内部の空気を外部に排出するブリーザプラグとを備え、
前記ケースには、前記接続装置に含まれる電線を前記ケース内に挿入するための開口部と、前記開口部を取り囲むように前記ケースの外側に向けて立設され、前記接続装置を固定するための環状の端子台と、前記ケース内部と前記ケース外部とを連通し、前記ブリーザプラグが挿入されるブリーザ孔とが設けられ、
前記ブリーザ孔は、前記端子台の外側に位置する前記ケースの外面に開口する開口面と、前記ケースの内面に到達しないように設けられた底面部と、前記開口面と前記底面部とを接続する接続経路と、前記底面部よりも前記開口面側に位置する部分の前記接続経路から分岐して前記端子台の内周面に到達するように設けられた連通孔と、を含む、動力伝達装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0016】
図1は、トランスアクスルの模式図である。
図2は、
図1に示すトランスアクスルの側面図である。
図1および
図2を参照して、本実施の形態に係るトランスアクスル1について説明する。
【0017】
図1に示すように、動力伝達装置としてのトランスアクスル1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関と、充放電可能なバッテリ80から電力供給されるモータジェネレータ10とを動力源とするハイブリッド自動車に設けられている。トランスアクスル1は、ハイブリッド自動車のエンジンルームに設置されている。
【0018】
トランスアクスル1は、モータジェネレータ10と、ケース20と、減速機構30と、ディファレンシャル機構40と、ドライブシャフト受け部90と、端子台60と、インバータ70と、接続装置65と、ブリーザプラグ100と、を含んで構成される。
【0019】
モータジェネレータ10は、電動機または発電機としての機能を有する回転電機である。モータジェネレータ10は、高電圧が印加される車両走行用の回転電機である。モータジェネレータ10は、回転シャフト11と、ロータ13と、ステータ14とを含む。
【0020】
回転シャフト11は、軸受12を介してケース20に回転可能に取付けられている。回転シャフト11は、複数の歯車を含んで構成された減速機構30に接続されている。回転シャフト11は、ロータ13と一体となって回転する。
【0021】
ロータ13は、ロータコア(不図示)と永久磁石(不図示)とを有する。ロータコアは、回転シャフト11の中心軸に沿って筒状に延在する形状を有する。ロータコアは、たとえば、回転シャフト11の中心軸方向に積層された複数の電磁鋼板から形成されている。永久磁石は、ロータコアに埋設されている。
【0022】
ステータ14は、ロータ13の外周を取り囲むように設けられている。ステータ14は、ステータコア(不図示)と、ステータコアに巻回されたステータコイル(不図示)とを有する。ステータコアは、回転シャフト11の中心軸に沿って筒状に延在する形状を有する。ステータコアは、たとえば、回転シャフト11の中心軸方向に積層された複数の電磁鋼板から形成されている。ステータコイルは、たとえば、絶縁被覆された銅線から形成されている。ステータコイルは、U相、V相、およびW相のコイルから構成されている。
【0023】
なお、ロータコアおよびステータコアは、電磁鋼板に限定されず、たとえば圧粉磁心等の磁性材料から形成されてもよい。
【0024】
ケース20は、内部空間15を形成する。内部空間15は、略密閉された空間である。内部空間15に、モータジェネレータ10が収容されている。内部空間15には、モータジェネレータ10の冷却や各種歯車機構の潤滑等を目的として、潤滑油が封入されている。ケース20には、ブリーザ孔21と、後述する開口部23と、端子台60と、が設けられている。
【0025】
ブリーザ孔21は、ケース20内部とケース外部とを連通するように設けられている。ブリーザ孔21は、ケース20の上部に設けられる。開口部23は、ケース20を貫通するように設けられている。開口部23は、接続装置65に含まれる後述する電線63をケース20内に挿入するための部位である。端子台60は、ケース20の上部に設けられている。端子台60には、接続装置65に含まれる電線63とパワーケーブル64とを接続するための端子部(不図示)が組み付けられている。
【0026】
接続装置65は、モータジェネレータ10とインバータ70とを電気的に接続する。接続装置65は、電線63とパワーケーブル64とを含む。電線63は、端子台60に組み付けられた端子部とモータジェネレータ10とを電気的に接続する。電線63は、ケース20に設けられた開口部23を通って上述の端子部と上述のステータコイルとを接続する。パワーケーブル64は、端子台60に組み付けられた端子部とインバータ70とを電気的に接続する。
【0027】
インバータ70は、バッテリ80に電気的に接続されている。インバータ70は、バッテリ80からの直流電流をモータ駆動用の交流電源に変換するとともに、回生ブレーキにより発電された交流電流を、バッテリ80に充電するための直流電流に変換する。
【0028】
モータジェネレータ10から出力された動力は、減速機構30からディファレンシャル機構40を介してドライブシャフト受け部90に伝達される。ドライブシャフト受け部90に伝達された駆動力は、ドライブシャフトを介して車輪に回転力として伝達される。
【0029】
一方、ハイブリッド自動車の回生制動時には、車輪は車体の慣性力により回転させられる。車輪からの回転力によりドライブシャフト受け部90、ディファレンシャル機構40および減速機構30を介してモータジェネレータ10が駆動される。このとき、モータジェネレータ10が発電機として作動する。モータジェネレータ10により発電された電力は、インバータ70によって直流電流に変換された後、バッテリ80に供給される。
【0030】
ブリーザプラグ100は、ケース20内部の空気を外部に排出するための部位である。ブリーザプラグ100は、ブリーザ孔21に挿入されている。ブリーザプラグ100は、内部空間15と、ケース20の外側の外部空間とを連通させる。
【0031】
ブリーザプラグ100は、内部空間15から外部空間に向かう空気の流れを許容する。ブリーザプラグ100は、外部空間から内部空間15に向かう空気の流れを規制する。なお、ブリーザプラグ100の詳細な構造については、
図7を用いて後述する。
【0032】
図3および
図4は、
図1に示す端子台周囲のトランスアクスルの上面図および斜視図である。
図5は、
図4に示すV−V線に沿った断面図である。
図6は、
図3に示すVI−VI線に沿った断面図である。
図3から
図6を参照して、端子台60およびブリーザ孔21の詳細について説明する。
【0033】
図3から
図5に示すように、端子台60は、環状形状を有する。端子台60は、ケース20に設けられた開口部23を取り囲むように設けられている。端子台60は、開口部23の周縁の少なくとも一部から立設されている部分を含む。端子台60は、ケース20の外側に向けて立設される。
【0034】
端子台60は、開口部23を取り込むように設けられた環状の周壁部61を含む。周壁部61の内周面62に囲まれる空間は、開口部23を介してケース20内に連通する。周壁部61の上端には、複数のネジ穴が設けられている。周壁部61に囲まれる空間を塞ぐように、上述の端子部が設けられたユニットがネジによって周壁部61に固定される。この際、端子部は、上記空間内に収容されることが好ましい。
【0035】
この端子部に電線63およびパワーケーブル64の一端側が固定されることにより、接続装置65が端子台60に固定される。電線63は、開口部23を通ってケース20内のモータジェネレータ10に接続される。
【0036】
図6に示すように、ブリーザ孔21は、開口面21aと、底面部21bと、接続経路21cと、連通孔22とを含む。開口面21aは、端子台60の外側に位置する部分のケース20の外面20aに開口するように設けられている。
【0037】
底面部21bは、開口面21aの下方に設けられている。底面部21bは、開口面21aに対向するように設けられている。底面部21bは、ケース20の内面20bに到達しないように設けられている。底面部21bは、モータジェネレータ10の上方に設けられることが好ましい。
【0038】
接続経路21cは、開口面21aと底面部21bを接続するように設けられている。接続経路21cは、筒状形状を有する。接続経路21cは、下方に向けて延在するように設けられている。
【0039】
連通孔22は、底面部21bよりも開口面21a側に位置する部分の接続経路21cから分岐する。連通孔22は、接続経路21cに交差するように設けられている。連通孔22は、端子台60の内周面62に到達するように設けられている。連通孔22は、底面部21bよりも上方における接続経路21cから周壁部61の内周面62に到達するように設けられている。ケース20の内部と外部とは、接続経路21cおよび連通孔22によって連通可能となる。
【0040】
連通孔22が、接続経路21cの途中領域から分岐して設けられることにより、接続経路21cのうち連通孔22よりも下方に位置する部分は、水等の異物がケース20外部からブリーザ孔21に侵入してきた際に、異物を貯留する貯留部として機能する。これにより、水等の異物がケース20内に侵入して、ケース20内の潤滑油が劣化したり、ケース20内の変速機等が錆びたりすることを防止できる。
【0041】
また、底面部21bがモータジェネレータ10の上方に設けられることにより、底面部21b近傍に位置する上記貯留部に貯留された水等の異物が、モータジェネレータ10の熱によって蒸発させることができる。水等の異物の蒸気は、ブリーザ孔21に挿入されたブリーザプラグ100を通って外部に排出される。
【0042】
周壁部61によって囲まれた空間は、この空間の下方に隣接する開口部23を介してのみケース20の内部に連通している。このため、下方以外の周囲からは、ケース20内の潤滑油が上記空間内に侵入することはない。
【0043】
端子台60は、ケース20の上方に設けられているため、上記空間もケース20の上方側に位置する。これにより、ケース20の電動機等によって潤滑油が飛散されたり、車体とともにケース20が傾斜したりした場合であっても、ケース20内の潤滑油は、開口部23を通って上記空間内に到達しにくくなっている。
【0044】
したがって、開口部23を取り囲むようにケース20の外側に向けて立設された環状の端子台60の内周面62に到達するように連通孔22を設けることにより、ケース20内の潤滑油がブリーザ孔21に侵入することを抑制することができる。この結果、ケース20内部からの潤滑油の吹出しを抑制することができる。
【0045】
上述のように連通孔22を設ける位置を調整することにより、遮蔽板等のケース20内側からブリーザ孔21への潤滑油の侵入を防止するための潤滑油侵入防止部材を別途設ける必要がなくなる。これにより、部品点数が増加することを防止し、製造コストが増加することを防止することができる。
【0046】
図7は、ブリーザプラグの構成を示す図である。
図7を参照して、ブリーザプラグ100の構成について説明する。
【0047】
図7に示すように、ブリーザプラグ100は、筒体110、キャップ120、弁体130、およびカバー140を含む。筒体110は、たとえば樹脂部材によって形成されている。筒体110は、ケース20の開口面21a側からブリーザ孔21に挿入される。筒体110は、上下方向に延在するようにブリーザ孔21に挿入される。筒体110の一端110aは、ブリーザ孔21内に位置し、筒体110の他端110bは、ケース20の外側に位置する。
【0048】
筒体110は、中央部に一端110a側から他端110b側に貫通する貫通孔111を有する。貫通孔111は、ブリーザ孔21に直接連通する第1部分111aと、弁体130を収容する第2部分111bと、キャップ120を取り付けるための第3部分111cとを有する。
【0049】
第1部分111aは、筒体110の一端110a側に位置する。第1部分111aのうち第2部分111b側に位置する部分の内径は、筒体110の一端110a側に位置する部分の内径よりも小さくなっている。
【0050】
第2部分111bは、第1部分111aと第3部分111cとの間に位置する。第2部分111bの下方側には、弁体130を受けるための弁座112が設けられている。弁座112は、下方に向かうにつれて内径が小さくなるように設けられている。
【0051】
第3部分111cは、筒体110の他端110b側に位置する。第3部分111cの内径は、第2部分111bの内径よりも大きい。第3部分111cには、キャップ120が挿入されている。
【0052】
キャップ120は、樹脂部材によって形成されている。キャップ120は、筒状形状を有する。キャップ120は、筒体110の貫通孔111に連通する貫通孔121が設けられている。具体的には、キャップ120の貫通孔121は、筒体110の貫通孔111の第2部分111bに連通する。
【0053】
キャップ120の下端側には、弁体130を受けるための弁座122が設けられている。弁座122は、下方に向かうにつれて内径が大きくなるように設けられている。弁座122は、筒体110の弁座112に対向するように設けられている。
【0054】
弁体130は、球状形状を有する。弁体130は、弁座112と弁座122との間を移動可能に第2部分111bに収容されている。弁体130は、弁座112と弁座122とに着座可能に設けられている。また、弁体130の比重は、ケース20内に収容される潤滑油の比重よりも小さい。弁体130は、潤滑油が貫通孔111内に浸入したときには、その油面に浮くように構成されている。
【0055】
カバー140は、キャップ120を覆うように設けられている。カバー140は、有底筒形状を有する。カバー140の開放端は、筒体110に対して複数箇所で部分的にカシメにより固定される。これにより、キャップ120が筒体110に対して固定される。カバー140の開放端と筒体110の外周面との間には、カシメ加工が施されていない複数の箇所に隙間が形成されている。この隙間を介してキャップ120の貫通孔121と外部空間とが連通する。このように、カバー140は、キャップ120を固定しつつ、外部に連通可能にキャップ120を覆っている。
【0056】
ケース20の内圧が高くない場合には、弁体130は、自重により弁座112に着座する。これにより、弁座112よりも下方側の貫通孔111が塞がれるため、外部からケース20内に異物が混入することを防止することができる。
【0057】
ケース20の内圧が上昇したときには、弁体130が弁座112から離間し、第2部分111b内に浮上する。ケース20の内圧で弁体130が浮いた状態になることにより、弁体130の外周面と第2部分111bの内周面との間の隙間を介して、筒体110の貫通孔111とキャップ120の貫通孔121とが連通する。また、キャップ120の貫通孔121は、上述のようにカバー140と筒体110との隙間によって外部空間に連結している。
【0058】
これにより、ケース20の内部がブリーザプラグ100によって大気に開放され、ケース20の内圧が低下する。ケース20の内圧が低くなった際には、弁体130が自重によって落下し、弁座112に着座する。
【0059】
上述のように、端子台60の周壁部61の内周面62に到達するように連通孔22が設けられることにより、ケース20内に収容された潤滑油が連通孔22に侵入することが抑制される。しかしながら、万が一連通孔22内に潤滑油が侵入してブリーザプラグ100内にまで到達した場合には、上昇した潤滑油の油面に浮かぶ弁体130が弁座122に着座する。これにより、キャップ120の貫通孔121が塞がれるため、潤滑油がケース20外部に吹出すことをより確実に防止することができる。
【0060】
以上のように、本実施の形態に係るトランスアクスル1にあっては、連通孔22が底面部21bよりも開口面21a側に位置する部分の接続経路21cから分岐して設けられることにより、接続経路21cのうち連通孔22よりも下方に位置する部分に水等の異物を貯留することができる貯留部が形成される。これにより、水等の異物がブリーザプラグ100を通ってブリーザ孔21内に侵入した場合でも、異物を当該貯留部に貯留することができる。これにより、水等の異物がケース20内部に侵入することを抑制できる。
【0061】
端子台60は、ケース20の上方へ設けられるとともに、電線63をケース20内に挿入するための開口部23の四方を壁面にて取り囲むように設けられている。このため、モータジェネレータ10により飛散された潤滑油が、端子台60の内部に侵入しにくくなる。潤滑油が侵入しにくい端子台60の内部に連通するように連通孔22が設けられることにより、ブリーザ孔21への潤滑油の侵入を抑制することができる。これにより、ブリーザ孔21およびブリーザプラグ100を通ってケース20内部からの潤滑油がケース20外部に吹出すことを抑制することができる。
【0062】
また、連通孔22を設ける位置を調整することにより、ケース20の内側からブリーザ孔21への潤滑油の侵入を防止するための遮蔽板等の潤滑油侵入防止部材を別途設ける必要がなくなる。これにより、部品点数が増加することを防止することができる。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。