【実施例1】
【0017】
図1〜
図6に示す実施例の丸型空調用レジスタ1は、被取付部D(例えば車両のインストルメントパネル)に取り付けられる円筒状のリテーナ2と、リテーナ2の内部でボールジョイントにより任意の方向に回転可能に支持された円環状の吹出口リング3と、吹出口リング3の内部で傾動可能に支持された3つのフィン体4とを備える。
【0018】
[リテーナ2]
リテーナ2は、リテーナ後部6とリテーナ前部5とにより構成されている。リテーナ後部6は内球面形状の内面を有し、その内面にはリテーナ2の中心軸線方向に延びる係合溝7が形成されている。また、リテーナ後部6には支持柱8がリテーナ2の中心軸線上に前方へ突出され、支持柱8の先端にはボールスタッド9が設けられている。リテーナ前部5はリング形状に形成され、リテーナ前部5の外周においてリテーナ2は被取付部Dに固定される。
【0019】
[吹出口リング3]
吹出口リング3は、リング基部10とリング前部11とベゼル部12とにより構成されている。リング前部11及びベゼル部12は、リング基部10に対して、吹出口リング3の中心軸線回りに相対回動可能に連結されている。吹出口リング3は、全体として外球面形状の外面を有し、その外面がリテーナ後部6の内球面形状の内面に摺接した状態で、リテーナ2の内部に配置されている。
【0020】
リング基部10の外面には、前記係合溝7に係合される突起18が設けられている。また、リング基部10の内球面状の内面には、周方向に等間隔をおいて3対のガイド溝対19が形成されている。各ガイド溝対19は、平行をなしてリング基部10の内面を螺旋状に延びる2本の溝からなっている。
【0021】
リング前部11は、円環状の輪部13と、輪部13の中心部に位置する連結部14と、連結部14から輪部13に向かって放射状に延びて輪部13に接続された等角度間隔をおく3本のスポーク15とを有している。連結部14には前記ボールスタッド9と係合するソケット16が形成されており、両者でボールジョイントを構成している。スポーク15における輪部13と付近の両側には、軸突起17が突出されている。
【0022】
ベゼル部12は、同心の円環状の外輪部24及び内輪部25を有し、さらに操作体30が一体的に設けられている。
操作体30は、吹出口リング3の中心軸線上に位置する枝連結部31と、枝連結部31から前記中心軸線回りに等角度間隔をおいて放射状に延びた3本の枝部32とにより構成されている。3本の枝部32は、外輪部24及び内輪部25に接続されている。ベゼル部12はリング前部11に嵌着又は接着により固定されており、3本の枝部32は3本のスポーク15に対し吹出口リング3の中心軸線回りに60度ずれている。すなわち、スポーク15の各相互間中央部の手前に枝部32が配置されている。
【0023】
枝連結部31における枝部相互間の各股面部33の前後長さは15mmであり、各股面部33の前端33Aはリテーナ2の前端よりも前方へ13mm突出(出代量)している。各股面部33の前端33Aには正面視で半径20mmのアールが付けられている。各股面部33には後ろ広がりのテーパ−が付けられ、各股面部33の後端33Bには正面視で半径40mm(前端のアール半径の2倍)のアール半径が付けられている。
【0024】
上記のように構成された吹出口リング3は、操作体30を指でつまんで、リテーナ2の内部でボールスタッド9を中心として吹出口リング3の中心軸線の向きが変わる方向に回転(揺動)可能であり、この揺動により空調用空気の吹出し方向が変更されるようになっている。
また、ボールスタッド9を中心とした吹出口リング3の中心軸線回りの回転については、操作体30を指で回転操作すると、ベゼル部12とリング前部11とが共に回動し、リング基部10の回動は係合溝7への突起18の係合によって規制される。
【0025】
[フィン体4]
3つのフィン体4は、吹出口リング3の内部を中心軸線回りに等分割した3つの扇形の領域に1つずつ収まるよう設けられている。すなわち、フィン体4は、隣接したスポーク15間の扇形の空間に対応して配され、隣接したスポーク15の2つの軸突起17がフィン体4に形成された2つの係合穴20に挿入することにより、リング前部11に回動可能に軸支されている。各フィン体4の回動軸は、前記各領域の扇形の弦に平行である。
【0026】
よって、吹出口リング3の中心軸線回りに見た、各フィン体4の中央部の真ん前に、ベゼル部12の各枝部32が位置する。
【0027】
各フィン体4には、前記ガイド溝対19に係合される2つの球状の突起部からなる突起対21が設けられている。そして、リング前部11とリング基部10との相対回動に応じて、これらの突起対21が螺旋状のガイド溝対19に沿って吹出口リング3の中心軸線方向(前後方向)に案内されることで、フィン体4が傾動(回動)されるようになっている。すなわち、ガイド溝対19と突起対21が、操作体30の回転をフィン体4の傾動に変換する機構である。
【0028】
なお、3つのフィン体4はそれぞれ、2つの係合穴20付近で連結されて2つの係合穴20の中間で互いに離れる主フィン22と副フィン23とを備えている。これら主フィン22及び副フィン23の表裏面がそれぞれ空調用空気の流れを案内する。
【0029】
以上のように構成された丸型空調用レジスタ1の作用・効果を説明する。
操作体30を三本指でつまんで、吹出口リング3の中心軸線回りに回転させる。すると、ベゼル部12、リング前部11及びフィン体4が共に回転し、前記のとおりフィン体4の突起対21の螺旋状のガイド溝対19に沿って前後方向に案内される。これにより、次のように、フィン体4の吹出口リング3の中心軸線に対する傾斜角が変わって、送風モードが変更される。
・
図4(a)に示すように、フィン体4の傾斜角が最大となって、吹出口リング3の内部を閉鎖する、シャットモード
・
図4(b)に示すように、フィン体4の傾斜角が吹出口リング3の中心軸線に対して前広がりとなる、拡散送風モード
・
図4(c)に示すように、フィン体4の傾斜角が吹出口リング3の中心軸線と平行になる、全開モード
・
図4(d)に示すように、フィン体4の傾斜角が吹出口リング3の中心軸線に対して前すぼみとなる、スポット送風モード。
【0030】
このとき、操作体30は、次の効果を発揮する。
・操作体30は、枝連結部31と3本の枝部32で構成されているので、
図5(a)に示すように、水道蛇口のように、三本指でつまみやすく(矢印は力の方向)、つまんだ際の安定性が高く、回転操作しやすい。また、
図5(b)に示すように、回転操作時につまむ力はあまり要らず、主に回転操作方向に力をかければよいので、丸形ノブよりも指の負荷が小さい。
・また、操作体30は、枝部32相互間の各股面部33が前端33Aで半径20mmのアールをなしていることにより、指とのフィット感が向上するため、さらにつまみやすい(前出した
図6(a)参照)。
・また、操作体30は、各股面部33の前端33Aがリテーナの前端よりも前方へ13mm突出(出代量)していることにより、指の腹がかかりやすいため、さらにつまみやすい(前出した
図6(b)参照)。また、この程度の突出であれば、操作体30に不意に人や物が当たることも少ない。
・さらに、操作体30は、各股面部33の前後長さが15mmであり、各股面部33に後ろ広がりのテーパ−が付けられ、各股面部33の後端33Bが正面視で各股面部33の前端33Aのアール半径の2倍のアールをなしていることにより、三本指とのフィット感が向上し、つまみやすさと操作体30の小型化(通風抵抗が小さく、圧力損失・騒音が低減される)を両立させることができる。
【0031】
また、前述のとおり、操作体30を指でつまんで、リテーナ2の内部でボールスタッド9を中心として吹出口リング3の中心軸線の向きが変わる方向に回転(揺動)させると、この揺動により空調用空気の吹出し方向が変更される。この際にも、操作体30による上記効果が発揮される。
【0032】
また、前述のとおり、各フィン体4の中央部の真ん前に、ベゼル部12の各枝部32が位置するので、異物がレジスタにその手前から挿入されて各フィン体4に当たることを、各枝部32が阻止する。
【0033】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、例えば[発明を実施するための形態]において例示したように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。