特許第6436023号(P6436023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6436023印刷用シート、剥離層付き印刷用シート、および加飾シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6436023
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】印刷用シート、剥離層付き印刷用シート、および加飾シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/02 20060101AFI20181203BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20181203BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20181203BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   B32B7/02 103
   B32B7/02 105
   B32B27/00 E
   C09J7/20
   C09J201/00
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-180013(P2015-180013)
(22)【出願日】2015年9月11日
(65)【公開番号】特開2017-52252(P2017-52252A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2017年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 昇平
(72)【発明者】
【氏名】瀬口 誠司
(72)【発明者】
【氏名】藤井 靖弘
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−284736(JP,A)
【文献】 特開2007−171914(JP,A)
【文献】 特開2002−194310(JP,A)
【文献】 特開2014−208432(JP,A)
【文献】 特開2004−348270(JP,A)
【文献】 特開2010−244059(JP,A)
【文献】 特開2001−035261(JP,A)
【文献】 特開2015−143308(JP,A)
【文献】 特開2014−205366(JP,A)
【文献】 特開2012−091497(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/030699(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/029666(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/088127(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/088278(WO,A1)
【文献】 特開2013−168643(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/175306(WO,A1)
【文献】 特開2012−018347(JP,A)
【文献】 特開2009−237376(JP,A)
【文献】 特開2015−105962(JP,A)
【文献】 特開2005−138375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B44C 1/16−1/175
C09J 1/00−201/10
C09D 1/00−10/00
101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライマー樹脂層、粘着層の順に積層された印刷用シートであって、
プライマー樹脂層はガラス転移温度が0℃〜100℃である樹脂組成物の硬化層であり、リタデーションが100nm以下である印刷用シート。
【請求項2】
JIS−K5600−5−1に基づいて測定される耐屈曲性が4mmφ以下ある請求項1に記載の印刷用シート。
【請求項3】
前記粘着層の対180°ガラス粘着力が2〜40N/25mmである請求項1または2に記載の印刷用シート。
【請求項4】
前記プライマー樹脂層および粘着層の少なくとも一方の上に、さらに剥離層が積層された請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷用シート。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷用シートのプライマー樹脂層の上に、さらに印刷層が積層された加飾シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用シート、剥離層付き印刷用シート、該印刷用シートに印刷を施した加飾シートに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル等のモジュールに使用されるガラス表面に装飾を施す際(加飾)、ガラスに直接加飾すると歩留まりやのコストが高くなることから、印刷などで加飾したシート(加飾シート)を成形品表面に貼着することがある。これにより、タッチパネル等の成形品に意匠性を付与したり、成形品表面を保護したりすることができる。
【0003】
このような加飾シートとしては、基材フィルムの一方の面にハードコート層を設け、さらに加飾印刷層と粘着層とが設けられた加飾印刷層付き粘着シートが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011‐093977
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の加飾印刷層付き粘着シートは、ハードコート層(樹脂層)と加飾印刷層との密着性が悪いという問題があった。また、加飾印刷層を形成する前のシートは、通常は連続帯状の状態で巻き取られ、ロール状として搬送・保管されるが、巻き取りの際に樹脂層が割れるという問題があった。さらに、巻き取りの際に樹脂層とこれに隣接する基材フィルムとが貼りつきやすく(ブロッキング)、その結果、インキ抜けなどの印刷障害が発生しやすかった。
【0006】
そこで本発明者らは、このような技術課題を解決するために、印刷層との密着性がよく、巻き取る際に樹脂層が割れないよう、耐屈曲性を有する印刷用シートを得ることを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、このような課題を解決することを目的として検討した結果、樹脂層を形成する樹脂組成物のガラス転移温度を特定の範囲に規定することで、課題の解決が可能になることを見出した。さらに、特定の範囲のリタデーションを備えた構成とすることで、液晶部材として組み込まれた際に基材の配向により発生する虹ムラ等の問題も解消された印刷用シートが得られ、本発明を完成するに至った。
本発明は課題を解決する手段として、以下の態様を有する。
【0008】
[1]プライマー樹脂層、粘着層の順に積層された印刷用シートであって、
プライマー樹脂層はガラス転移温度が0℃〜100℃である樹脂組成物の硬化層であり、
リタデーション(Re)が100nm以下である印刷用シート。
[2]JIS−K5600−5−1に基づいて測定される耐屈曲性が4mmφ以下ある[1]に記載の印刷用シート。
[3]前記粘着層の対180°ガラス粘着力が2〜40N/25mmである[1]または[2]に記載の印刷用シート。
[4]前記プライマー樹脂層および粘着層の少なくとも一方の上に、さらに剥離層が積層された[1]〜[3]のいずれかに記載の剥離層付き印刷用シート。
[5][1]〜[3]のいずれかに記載の印刷用シートのプライマー樹脂層の上に、さらに印刷層が積層された加飾シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、印刷性、耐屈曲性、ハンドリング性に優れ、さらに薄膜化も可能である印刷用シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の印刷用シートの構造を示す概略断面図である。
図2】本発明の剥離層付き印刷用シートの構造を示す概略断面図である。
図3】本発明の加飾シートの構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
[印刷シート]
図1は、本発明の一実施形態例である印刷用シートの構成を示す断面図である。
この例の印刷用シート10は、プライマー樹脂層11と、プライマー樹脂層11上に形成された粘着層12とを有し、リタデーション(Re)が100nm以下である。
本印刷用シートのリタデーション(Re)は、70nm以下より好ましく、50nm以下がさらに好ましく、30nm以下が最も好ましい。本発明の印刷用シートは、プライマー樹脂層11と、プライマー樹脂層11上に形成された粘着層12との2層構成であり、リタデーション(Re)を上記範囲内とすることで、液晶表示装置の部材として組み込まれた場合でも、虹ムラ等の視認性の問題が生じにくい。リタデーション(Re)は、後述するプライマー樹脂層形成用組成物を硬化させる際の乾燥温度、活性エネルギー線の照射量や、硬化後のプライマー樹脂層を延伸することによりプライマー樹脂層の延伸、収縮の度合いを変化させることによって調整することができる。
上記リタデーション(Re)とは、印刷用シートの面内において最も屈折率が大きい方向(遅相軸方向)の屈折率(nx)と、遅相軸方向と直交する方向(進相軸方向)の屈折率(ny)と、印刷用シートの厚み(d)とにより、以下の式によって表わされるものである。
リタデーション(Re)=(nx−ny)×d
上記リタデーション(Re)は、大塚電子(株)製のRETS−100や王子計測機器社製KOBRA−WRにより測定傾斜角度0°、測定波長590nmで測定した
なお、屈折率は、島津製作所(株)製のKPR−30Aやアタゴ(株)製のNAR−3Tなどを用いて測定することができる。
【0013】
印刷用シート10の厚みは、5〜40μmであることが好ましく、10〜25μmであることがより好ましい。前記厚みは触針式膜厚計(例えば、ミツトヨ社製ピークホールド機能付ABSデジマチックインジケーターD−C112A)を用いて測定することができる。
【0014】
本発明の印刷用シートは、JIS−K5600−5−1に基づいて測定される耐屈曲性が4mmφ以下であり、2mmφ以下であることがより好ましい。耐屈曲性が上記以下であることにより、印刷などの加工工程でプライマー樹脂層が割れることなく、さらに平面のみでなく曲面を有する被着体に対しても、問題なく貼合することができる。
【0015】
<プライマー樹脂層>
プライマー樹脂層11は、ガラス転移温度が0℃〜100℃の樹脂組成物を硬化させた層である。ガラス転移温度は20〜90℃がより好ましく、40〜80℃がさらに好ましい。ガラス転移温度が上記範囲内であるため、印刷層との密着性もよく、巻取りとした際には反塗工面と貼りつくことなく巻き取ることが可能となりやすい
ガラス転移温度は、樹脂組成物の種類や組成比率、重合条件等を調整することによって上記範囲内とすることが可能である。なお、ガラス転移温度は、熱重量−示差熱分析、示差走査熱量測定、熱機械分析などの方法により測定できる。
詳しくは後述するが、プライマー樹脂層11は、剥離シート上に上記プライマー樹脂層形成用組成物を塗工し、塗膜を加熱や活性エネルギー線の照射により硬化させることで得ることができる。
【0016】
樹脂組成物としては、熱硬化型樹脂、活性エネルギー線硬化型樹脂のいずれであってもよい。熱硬化型樹脂としては、例えば、ポリエステルウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化型樹脂としては、ウレタンアクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステルアクリル樹脂、エポキシアクリル樹脂などが挙げられる。ウレタンアクリル樹脂は、ウレタン結合を介してポリオキシアルキレンセグメント又は飽和ポリエステルセグメントあるいはその両方が連結し、両末端にアクリロイル基を有するものである。
上記樹脂の中でも、印刷層との密着性の観点からポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂、ポリエステルアクリル樹脂が好ましい。
【0017】
プライマー樹脂層11中の樹脂の含有量は、樹脂組成物の固形分100質量%中、20〜100質量%であることが好ましく、60〜98質量%がより好ましく、80〜98質量%がさらに好ましい。上記範囲内であれば、印刷層との密着性が良好でプライマー層としての十分な強度を有する。
【0018】
(その他の成分)
プライマー樹脂層形成用組成物は、硬化を促進させるために、架橋剤(熱硬化剤)または光重合開始剤を含有することが好ましい。架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物などが挙げられ、これらは必要に応じ2種類以上を併用しても良い。
これら架橋剤の中でも、イソシアネート化合物、エポキシ化合物が好ましい。イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラグリシジルキシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。光重合開始剤としては、公知のものが使用でき、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインーn一ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2一ジメトキシー2一フェニルアセトフェノン、2,2一ジエトキシー2一フェニルアセトフェノン、2一ヒドロキシー2一メチルー1一フェニルプロパンー1一オン、1一ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2一メチルー1一[4一(メチルチオ)フェニル]一2一モルフオリノープロパンー1一オン、4一(2一ヒドロキシエトキシ)フェニルー2(ヒドロキシー2一プロプル)ケトン、ベンゾフェノン、p一フェニルベンゾフェノン、4,4’一ジエチルアミノベンゾフェノン、プロピオフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2一メチルアントラキノン、2一エチルアントラキノン、2一夕一シャリーブチルアントラキノン、2一アミノアントラキノン、2一メチルチオキサントン、2一エチルチオキサントン、2一クロロチオキサントン、2,4一ジメチルチオキサントン、2,4一ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p一ジメチルアミン安息香酸エステルなどが挙げられる。これら光重合開始剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
架橋剤または光重合開始剤の配合量は、プライマー樹脂層形成用組成物の固形分100質量部中に、0.5〜10質量部が好ましく、2〜8質量部がより好ましい。0.5質量部以上であるとプライマー樹脂層11の硬化不良が生じにくいため好ましい。また、前記光重合開始剤をプライマー樹脂層形成用組成物の固形分の総質量に対して10質量%を超えて配合しても、配合量に見合った硬化促進効果は得られず、コストも高くなる。また、プライマー樹脂層11中に光重合開始剤が残留して黄変やブリードアウトなどの原因となるおそれがある。
また、光重合開始剤に加えて、光増感剤をさらに含有することもできる。光増感剤としては、たとえば、n一ブチルアミン、トリエチルアミン、トリーn一ブチルホスフィン等が挙げられる。
【0020】
プライマー樹脂層形成用組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の成分を含有してもよい。例えば、プライマー樹脂層11にインキ密着性、耐ブロッキング性以外の他の機能(抗菌性、防汚性、帯電防止性、紫外線遮蔽性、防眩性、硬度等)を付与するために用いられている公知の添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、例えば抗菌性を付与するための抗菌剤、防汚性を付与するためのシリコーン系防汚剤やフッ素系防汚剤、指すべり性を付与するためのシリコーン系滑剤やフッ素系滑剤、塗工適性を向上させるためのレベリング剤、帯電防止性能を付与するための金属酸化物微粒子、帯電防止樹脂、導電性高分子、紫外線遮蔽性を付与するための金属酸化物微粒子、紫外線吸収剤、光安定化剤、防眩性、硬度を付与させるための無機微粒子、有機微粒子等が挙げられる。無機微粒子、有機微粒子は、耐ブロッキング性向上のために含有させてもよい。
【0021】
プライマー樹脂層形成用組成物は、溶剤を含有してもよい。
溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、n一ヘキサン、n一ブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N一メチルー2一ピロリドンなどが使用される。これらは1種以上を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
特に、塗工ムラを軽減できることから、蒸発速度の異なる2種以上の溶剤を併用することが好ましい。例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエンから選ばれる少なくとも2種を混合して使用することが好ましい。
【0022】
(プライマー樹脂層の機能)
プライマー樹脂層11は、印刷用シート10のプライマー樹脂層11の上に印刷層を形成した際、印刷層とプライマー樹脂層11との密着性を高める役割を果たす。
【0023】
(プライマー樹脂層の膜厚)
プライマー樹脂層11の膜厚は、0.1〜100μmの範囲で調整することができる。
プライマー樹脂層11の膜厚は、3〜25μmがより好ましく、5〜15μmがさらに好ましい。プライマー樹脂層11の膜厚が0.1μm未満であると、プライマー樹脂層11自体の強度が弱く、せん断応力などにより裂けやすくなる。また、プライマー樹脂層11の機能が発揮されず、印刷用シート10に印刷を施したときに、すなわち、プライマー樹脂層11の上に印刷層を積層した際、プライマー樹脂層11と印刷層との密着性が低下する。一方、プライマー樹脂層11の膜厚が100μmを超えると、プライマー樹脂層自体の透明性が低下する。
【0024】
<粘着層>
本発明の印刷用シート10は粘着層12を有する。粘着層12を形成する粘着剤としては、例えば、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが使用される。また、溶剤系、エマルジョン系、水系のいずれであってもよい。なかでも光学系用途に使用する場合は透明度、耐候性、耐久性、コスト等の観点からアクリル系粘着剤が特に好ましい。
【0025】
アクリル系粘着剤はアクリル共重合体を主成分とするものである。アクリル共重合体は、官能基を持たない(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、反応性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーとを共重合させたものである。反応性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーは架橋剤を用いる場合の反応点となり、架橋により粘着力や凝集力、耐熱性の制御を可能とする。反応性官能基を有するモノマーの含有量はアクリル共重合体を構成するモノマーの全質量に対して、0.1〜20質量%とすることが好ましい。より好ましくは0.5〜15質量%であり、さらに好ましくは1〜10質量%である。
【0026】
アクリル共重合体を構成する官能基を持たない(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が挙げられるが、これらは必要に応じ2種類以上を併用しても良い。
【0027】
反応性官能基としては、例えばカルボキシ基、アミド基、アミノ基、ヒドロキシ基、グリシジル基などが挙げられる。
【0028】
カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水フマル酸を挙げることができる。アミド基またはアミノ基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、モルホリルアクリルアミド、アリルアミドなどを挙げることができる。アミノ基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−tert−ブチルアミノエチルアクリレートなどを挙げることができる。なお、これらは必要に応じ2種類以上を併用しても良い。
【0029】
アクリル共重合体を重合する際には、例えば、溶液重合法を適用することができる。溶液重合法としては、イオン重合法やラジカル重合法など挙げられる。その際に使用される溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、クロロホルム、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
【0030】
本発明で用いるアクリル共重合体は、架橋剤を配合することにより架橋処理を施すことができる。
架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物などが挙げられ、これらは必要に応じ2種類以上を併用しても良い。
これら架橋剤の中でも、アクリル共重合体を容易に架橋できることから、イソシアネート化合物、エポキシ化合物が好ましい。イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラグリシジルキシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
架橋剤の含有量は、所望とする粘着物性に応じて適宜選択することが好ましい。
【0031】
粘着剤には、必要に応じて他の助剤が添加されてもよい。他の助剤としては、粘着付与剤、シランカップリング剤、金属腐食防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、pH調整剤、タッキファイヤ、バインダ、架橋剤、粘着性微粒子、消泡剤、防腐防徽剤、顔料、無機充填剤、安定剤、濡れ剤、湿潤剤などが挙げられる。
粘着付与剤として、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油樹脂などが挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、メルカプトアルコキシシラン化合物(例えば、メルカプト基置換アルコキシオリゴマー等)などが挙げられる。金属腐食防止剤としては金属と錯体を形成し金属表面に皮膜を作ることにより腐食を防止するタイプが好ましく、特にベンゾトリアゾール系金属腐食防止剤が好ましい。特に、粘着剤層上に、金属がパターニングされた導電性フィルムや導電層付きガラスの導電面を貼合する際は、粘着剤層に金属腐食防止剤を含有させることが好ましい。
酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系化合物に代表される酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤は、一般にラジカル連鎖停止剤とよばれる一次酸化防止剤と、過酸化物分解剤として作用する二次酸化防止剤とに分類される。一次酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤が挙げられる。また、二次酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤が挙げられる。これら酸化防止剤は1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物などが好ましい。
【0032】
併用される添加剤の含有量は、アクリル共重合体100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましく、0.05〜2質量部であることがより好ましい。含有量が上記下限値以上であれば添加剤による効果が発現し、上記上限値以下であれば添加剤のブリードアウトが発生しにくい。
【0033】
粘着層12の厚みは3〜100μmとすることが好ましく、5〜50μmとすることがより好ましく、5〜25μmとすることがさらに好ましい。厚みが3μm以上であれば、十分な粘着力を確保でき、長時間使用しても浮きや剥がれが生じにくくなる。また、厚みのコントロールが容易でありムラになりにくい。粘着層の厚みが100μm以下であれば、ディスプレイの大きさに粘着シートをカットする際にカット刃などに粘着剤が付着して不良率が上がるなどのトラブルが生じにくいという利点がある。
ここで、粘着層12の膜厚とは、粘着層12と後述する剥離層13の界面から、粘着層12とプライマー樹脂層11の界面までの距離のことを指す。粘着層12の厚みは、触針式膜厚計(ミツトヨ社製ピークホールド機能付ABSデジマチックインジケーターD−C112A)を用いて測定することができる。
【0034】
本発明の印刷用シートの対ガラス180°粘着力は、2〜40N/25mmである。下限値は、8N/25mm以上であることがより好ましく、10N/25mm以上であることがさらに好ましい。対ガラス180°粘着力とは、アルカリガラス板と粘着層を貼り合せてから1日経過した後、JIS Z0237に基づき規定された180°引きはがし法によって、引張速度300mm/分で引きはがした際の粘着力(N/25mm)のことをいう。
【0035】
印刷用シート10のヘイズ値は1%以下であることが好ましく、全光線透過率は87%以上であることが好ましい。ヘイズ値および全光線透過率が上記範囲内であれば、印刷用シート10を光学用途として好適に用いることができる。
【0036】
ヘイズ値はJISK7136に準拠して測定される値である。印刷用シート10のヘイズ値は、100mm×100mmのサンプルを用いて、CIEの標準の光D65を光源として試験片を通過する透過光のうち、散乱によって、入射光から0.044rad(2.5度)以上それた透過光の百分率として定義される方法により測定することができる。
前記ヘイズ値は、1.0%以下であることが好ましく、0.8%以下であることがより好ましい。
【0037】
全光線透過率はJISK7361に準拠して測定される値である。印刷用シート10の全光線透過率は、100mm×100mmのサンプルを用いて、CIEの標準の光D65を光源として試験片の平行入射光束に対する積分球で集積された全透過光束の割合として定義される方法により測定することができる。また、前記全光線透過率は、87%以上であることが好ましく、89%以上であることがより好ましい。
印刷用シート10のヘイズ値や全光線透過率は、プライマー樹脂層11を形成する樹脂組成物の種類、およびプライマー樹脂層11の表面のRaによって調整できる。
【0038】
[剥離層付き印刷シート]
<剥離層>
本発明の印刷用シート10のプライマー樹脂層11および/または粘着層12の表面には、さらに剥離層13と剥離層14が形成されていても良い。プライマー樹脂層11または粘着層12が露出していると、意図しない物品に付着してしまったり、プライマー樹脂層11または粘着層12自体が劣化してしまったりするおそれがある。このため、プライマー樹脂層11を物理的および化学的に保護するために、プライマー樹脂層11の表面に剥離層13または保護層を設けておき、使用する際に剥離層13または保護層を剥離してプライマー樹脂層11を露出させ、加飾印刷等を施すことができる。同様に、粘着層12を物理的および化学的に保護するために、粘着層12の表面に剥離層14を設けておき、使用する際に剥離層14を剥離して粘着層14を露出させ、他の部材へ貼り合わせることができる。一般に印刷層21を設けた後、被着体に貼合されるので、剥離層14よりも剥離層13または保護層の剥離力を軽くするほうが好ましい。
【0039】
剥離層としては、例えば、各種プラスチックフィルムにシリコーン等の剥離剤を塗布して剥離剤層を形成したもの、ポリプロピレンフィルム単体などが挙げられ、通常の粘着シート用の剥離シートとして用いられているものを利用することができる。
保護層としては例えば、各種プラスチックフィルムにウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン粘着剤等の粘着剤を塗布して粘着層を形成したもの、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム単体などが挙げられ、通常の保護シートとして用いられているものを利用することができる。
【0040】
<剥離層付き印刷用シートの製造方法>
印刷用シート10は、例えば以下のようにして製造できる。
まず、プライマー樹脂層形成用組成物を調製する。プライマー樹脂層形成用組成物の固形分濃度としては、プライマー樹脂層形成用組成物の総質量に対して、10〜100質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましい。
ついで、剥離シート(剥離層13)にプライマー層形成用組成物を塗工し、塗膜を加熱または活性エネルギー線の照射により硬化させることで、剥離シート上にプライマー樹脂層11が形成される(プライマー樹脂シートの形成)。
次に、別の剥離シート(剥離層14)に粘着層12を形成する粘着剤を塗工し、塗膜を加熱または活性エネルギー線の照射により硬化させることで、剥離シート上に粘着層12が形成される(粘着シートの形成)。
最後に、プライマー樹脂シートと粘着シートとを、プライマー樹脂層11と粘着層12とが接するように重ね、圧着することで剥離層付き印刷シート10’が得られる。
【0041】
プライマー樹脂層形成用組成物の塗工方法としては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター、印刷機等を用いた方法が挙げられる。硬化型樹脂層形成用組成物の塗工量は、形成するプライマー樹脂層11の厚みに応じて適宜設定される。
【0042】
塗膜は、プライマー樹脂層形成用組成物が活性エネルギー線硬化型樹脂である場合は、活性エネルギー線の照射によって硬化させることができる。
活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線、γ線等の電離性放射線などが挙げられ、中でも、汎用性の点から、紫外線が好ましい。紫外線の光源としては、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク、無電極紫外線ランプ等を使用できる。電子線としては、例えば、コックロフトワルト型、バンデクラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線を使用できる。
活性エネルギー線の照射による硬化は、窒素等の不活性ガス存在下で行うことが好ましい。また、前記活性エネルギー線の照射量は、100〜1000mJ/cmであることが好ましく、150〜500mJ/cmであることがより好ましい。
硬化は、1段階で行ってもよく、予備硬化工程と本硬化工程の2段階に分けて行ってもよい。
【0043】
プライマー樹脂層形成用組成物が熱硬化型樹脂である場合は、加熱炉や赤外線ランプ等を用いて加熱することによって硬化させることができる。加熱条件としては、60〜120℃で、1〜5分間行うことが好ましく、70〜100℃で、2〜3分間行うことがより好ましい。
【0044】
なお、硬化させた粘着層に直接プライマー樹脂層を塗工する方法では、プライマー樹脂層形成用組成物が粘着層の凹凸に追従して硬化するため、平滑な面とすることが困難である。また、硬化させたプライマー樹脂層に直接粘着剤を塗工する方法ではプライマー樹脂層の強度が弱く、製造過程において巻き取りとして繰り出していく過程でロールと接触した際にプライマー樹脂層が破けてしまう欠点があった。
さらに、プライマー樹脂層形成用組成物と粘着層形成用組成物とを同時に塗工し積層させる方法では、必然的にプライマー樹脂層と粘着層の混合層ができ、その混合層内で両者の樹脂成分が反応して白化する等の不具合が生じ得る。
【0045】
[加飾シート]
図3は、本発明の一実施形態例である加飾シート20の構成を示す断面図である。
この例の加飾シート20は、図1に示す印刷用シート10のプライマー樹脂層11上に印刷層21が積層されている。
【0046】
<印刷層>
印刷層21は、主に加飾等のために施される。
印刷層21としては、例えば、印刷インキにより絵柄、文字、写真等が印刷された層が挙げられる。印刷層21は、図3に示すように、プライマー樹脂層11の全面上に形成されていてもよいし、プライマー樹脂層11の一部の面上に形成されていてもよい。
印刷層21は、例えば、着色剤(顔料、染料)とバインダ(ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂)とを含む着色インキを印刷することによって形成できる。金属発色させる場合には、アルミニウム、チタン、ブロンズ等の金属の粒子、マイカに酸化チタンをコーティングしたパール顔料を用いることができる。すなわち、印刷層21は、着色剤と、バインダとを含むことが好ましい。
【0047】
印刷層21の膜厚、すなわち、図3において、プライマー樹脂層11の界面から、印刷層21の最表面(空気との界面)までの距離は、0.1〜50μmが好ましく、1〜30μmがより好ましい。また、前記膜厚は、具体的には触針式膜厚計(ミツトヨ社製ピークホールド機能付ABSデジマチックインジケータID−C112A)を用いて測定することができる。
【0048】
<加飾シートの製造方法>
加飾シート20は、例えば、平版印刷版(平版)、スクリーン印刷法、熱転写印刷法などを用いて印刷用シート10を印刷することで得られる。例えば、平版印刷版と印刷用シート10のプライマー樹脂層11とを接触させて印刷を行い、プライマー樹脂層11の上に印刷層21を形成することで得られる。
【0049】
<部材>
本発明の印刷用シート10の粘着層12表面には、さらに部材が積層されていてもよい。部材としては、ガラス部材、樹脂板等を挙げることができる。本発明の印刷用シートは、このような部材に対して、良好な接着性を発揮することができる。
【0050】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0051】
(プライマー樹脂層形成用組成物Aの調製)
ガラス転移温度(Tg)が46℃であるポリエステルウレタン樹脂A(商品名 バイロンUR−1350、濃度33%、東洋紡(株)製)100質量部、熱硬化剤としてHDI系硬化剤(商品名 コロネートHXR、東ソー(株)製)0.66質量部を混合してプライマー樹脂層形成用組成物Aを調製した。
【0052】
(プライマー樹脂層形成用組成物Bの調製)
Tgが68℃であるポリエステルウレタン樹脂B(商品名 バイロンUR−4125、濃度23%、東洋紡(株)製)100質量部、熱硬化剤としてHDI系硬化剤(商品名 コロネートHXR、東ソー(株)製)0.46質量部を混合してプライマー樹脂層形成用組成物Bを調製した。
【0053】
(プライマー樹脂層形成用組成物Cの調製)
Tgが92℃であるポリエステル樹脂C(商品名 バイロンUR−1700、濃度30%、東洋紡(株)製)100質量部、熱硬化剤としてHDI系硬化剤(商品名 コロネートHXR、東ソー(株)製)0.6質量部を混合してプライマー樹脂層形成用組成物Cを調製した。
【0054】
(プライマー樹脂層形成用組成物Dの調製)
Tgが10℃であるポリエステルウレタン樹脂D(商品名 バイロンUR−3500、濃度40%、東洋紡(株)製)100質量部、熱硬化剤としてHDI系硬化剤(商品名 コロネートHXR、東ソー(株)製)0.8質量部を混合してプライマー樹脂層形成用組成物Dを調製した。
【0055】
(プライマー樹脂層形成用組成物Eの調製)
Tgが23℃であるポリエステルウレタン樹脂E(商品名 バイロンUR−8300、濃度30%、東洋紡(株)製)100質量部、熱硬化剤としてHDI系硬化剤(商品名 コロネートHXR、東ソー(株)製)0.6質量部を混合してプライマー樹脂層形成用組成物Eを調製した。
【0056】
(プライマー樹脂層形成用組成物Fの調製)
Tgが50℃であるウレタンアクリル樹脂F(商品名 8UA−017、濃度50%、大成ファインケミカル(株)製)100質量部、光重合開始剤(商品名 IRGACURE184 BASF(株)製)1質量部を混合してプライマー樹脂層形成用組成物Fを調製した。
【0057】
(プライマー樹脂層形成用組成物Gの調製)
Tgが60℃であるウレタンアクリル樹脂G(商品名 8UA−301、濃度30%、大成ファインケミカル(株)製)100質量部、光重合開始剤(商品名 IRGACURE184 BASF(株)製)0.6質量部を混合してプライマー樹脂層形成用組成物Gを調製した。
【0058】
(プライマー樹脂層形成用組成物Hの調製)
Tgが106℃であるポリエステルウレタンH(商品名 バイロンUR−4800、濃度32%、東洋紡(株)製)100質量部、熱硬化剤としてHDI系硬化剤(商品名 コロネートHXR、東ソー(株)製)0.64質量部を混合してプライマー樹脂層形成用組成物Hを調製した。
【0059】
(プライマー樹脂層形成用組成物Iの調製)
Tgが−3℃であるポリエステルウレタンI(商品名 バイロンUR−3200、濃度30%、東洋紡(株)製)100質量部、熱硬化剤としてHDI系硬化剤(商品名 コロネートHXR、東ソー(株)製)0.6質量部を混合してプライマー樹脂層形成用組成物Iを調製した。
【0060】
(プライマー樹脂層形成用組成物Jの調製)
Tgが250℃以上であるアクリル樹脂J(商品名 アロニックスM403、濃度100%、東亞合成(株)製)100質量部、光重合開始剤(商品名 IRGACURE184 BASF(株)製)2質量部を混合してプライマー樹脂層形成用組成物Jを調製した。
【0061】
(プライマー樹脂層形成用組成物Kの調製)
Tgが250℃以上であるアクリル樹脂K(商品名 アロニックスM306、濃度100%、東亞合成(株)製)100質量部、光重合開始剤(商品名 IRGACURE184 BASF(株)製)2質量部を混合してプライマー樹脂層形成用組成物Kを調製した。
【0062】
(中間層形成用組成物Lの調製)
ウレタンアクリル樹脂L(商品名 アートレジンUN−9200A、濃度100%、根上工業(株)製)100質量部、光重合開始剤(商品名 IRGACURE184 BASF(株)製)2質量部を混合して中間層形成用組成物Lを調製した。
【0063】
(粘着剤溶液1の調製)
攪拌機、温度計、還流冷却機、滴下装置、窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを封入後、溶媒である酢酸エチルを添加した。次いで、反応装置内に、アクリル単量体であるブチルアクリレート65質量部、メチルアクリレート35質量部、アクリル酸2部と、重合開始剤である2,2´−アゾイソブチロニトリル0.1質量部を添加した。その後、攪拌しながら窒素ガス気流中、溶媒の還流温度で8時間重合した。反応終了後、トルエンを添加してアクリル重合体溶液を得た。次いで、該アクリル重合体固形分100質量部に対して、架橋剤であるトリレンジイソシアネート(商品名コロネートL、東ソー(株)製)0.1質量部を混合して粘着剤溶液1を得た。
【0064】
(粘着剤溶液2の調製)
2−エチルヘキシルアクリレート(東亞合成(株))50質量部、2-ヒドロキシプロピルアクリレート(大阪有機化学(株))50質量部、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート(商品名701A、 親中村化学(株))0.5質量部、光重合開始剤(商品名 IRGACURE184 BASF(株)製)3質量部を混合して粘着剤溶液2を得た。
【0065】
<実施例1>
(印刷用シートの作製)
プライマー樹脂層形成用組成物Aを、セパレーターA(商品名 E7002、東洋紡績(株)製 100μm)の離型処理が施された面にナイフコーターにより、乾燥後の塗工厚さが15μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥させて、プライマー樹脂層を形成させ、プライマー樹脂シートを作製した。
また、粘着剤溶液1をセパレーターB(商品名 E7001、東洋紡績(株)製 100μm)の離型処理が施された面にナイフコーターにより、乾燥後の塗工厚さが25μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥させて、粘着層を形成させ、粘着シートを作製した。
次いで、プライマー樹脂シートと粘着シートとを、プライマー樹脂層と粘着層とが接するように重ね、圧着して、剥離層付き印刷用シートを得た。
その後、プライマー層側のセパレーターAと粘着層側のセパレーターBを剥離させ、印刷用シートを得た。
【0066】
<実施例2>
プライマー樹脂層形成用組成物Aをプライマー樹脂層形成用組成物Bへ変更した以外は実施例1と同様にして、印刷用シートを作製した。
【0067】
<実施例3>
プライマー樹脂層形成用組成物Aをプライマー樹脂層形成用組成物Cに変更した以外は実施例1と同様にして、印刷用シートを作製した。
【0068】
<実施例4>
プライマー樹脂層形成用組成物Aをプライマー樹脂層形成用組成物Dへ変更した以外は実施例1と同様にして、印刷用シートを作製した。
【0069】
<実施例5>
プライマー樹脂層形成用組成物Aをプライマー樹脂層形成用組成物E変更した以外は実施例1と同様にして、印刷用シートを作製した。
【0070】
<実施例6>
プライマー樹脂層形成用組成物Fを、セパレーターA(商品名 E7002、東洋紡績(株)製 100μm)の離型処理が施された面にナイフコーターにより、乾燥後の塗工厚さが15μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥させて、高圧水銀ランプ紫外線照射機(アイグラフィックス社製)を用いて、照射強度200mW/cm、積算光量300mJ/cmの条件で紫外線を照射した。また、粘着剤溶液1をセパレーターB(商品名 E7001、東洋紡績(株)製 100μm)の離型処理が施された面にナイフコーターにより、乾燥後の塗工厚さが25μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥させて、粘着層を形成した。
次いで、プライマー樹脂シートと粘着シートとを、プライマー樹脂層と粘着層とが接するように重ね、圧着して、剥離層付き印刷用シートを得た。
その後、プライマー樹脂層側のセパレーターAと粘着層側のセパレーターBを剥離させ、印刷用シートを得た。
【0071】
<実施例7>
プライマー樹脂層形成用組成物Fをプライマー樹脂層形成用組成物Gへ変更した以外は実施例6と同様にして、印刷用シートを作製した。
【0072】
<実施例8>
プライマー樹脂層の厚みを50μmへ変更した以外は実施例1と同様にして、印刷用シートを作製した。
【0073】
<実施例9>
プライマー樹脂層の厚みを100μmへ変更した以外は実施例1と同様にして、印刷用シートを作製した。
【0074】
<実施例10>
プライマー樹脂層の厚みを1μmへ変更した以外は実施例1と同様にして、印刷用シートを作製した。
【0075】
<実施例11>
粘着層の厚みを50μmへ変更した以外は実施例1と同様にして、印刷用シートを作製した。
【0076】
<実施例12>
粘着層の厚みを80μmへ変更した以外は実施例1と同様にして、印刷用シートを作製した。
【0077】
<実施例13>
プライマー樹脂層形成用組成物Aを、セパレーターA(商品名 E7002、東洋紡績(株)製100μm)の離型処理が施された面にナイフコーターにより、乾燥後の塗工厚さが15μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥させて、プライマー樹脂層を形成した。
また、粘着剤溶液2をセパレーターB(商品名 E7001、東洋紡績(株)製 100μm)の離型処理が施された面にナイフコーターにより、乾燥後の塗工厚さが30μmになるように塗工し、高圧水銀ランプ紫外線照射機(アイグラフィックス社製)を用いて、照射強度200mW/cm、積算光量300mJ/cmの条件で紫外線を照射し、粘着層を形成した。
次いで、プライマー樹脂シートと粘着シートとを、プライマー樹脂層と粘着層とが接するように重ね、圧着して、剥離層付き印刷用シートを得た。
その後、プライマー樹脂層側のセパレーターAと粘着層側のセパレーターBを剥離させ、印刷用シートを得た。
【0078】
<比較例1>
プライマー樹脂層形成用組成物Aをプライマー樹脂層形成用組成物Hへ変更した以外は実施例1と同様にして、印刷用シートを作製した。
【0079】
<比較例2>
プライマー樹脂層形成用組成物Aをプライマー樹脂層形成用組成物Iへ変更した以外は実施例1と同様にして、印刷用シートを作製した。
【0080】
<比較例3>
プライマー樹脂層形成用組成物Jを、セパレーターA(商品名 E7002、東洋紡績(株)製 100μm)の離型処理が施された面にナイフコーターにより、乾燥後の塗工厚さが15μmになるように塗工し、高圧水銀ランプ紫外線照射機(アイグラフィックス社製)を用いて、照射強度200mW/cm、積算光量300mJ/cmの条件で紫外線を照射した。また、粘着剤溶液1をセパレーターB(商品名 E7001、東洋紡績(株)製 100μm)の離型処理が施された面にナイフコーターにより、乾燥後の塗工厚さが25μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥させて、粘着層を形成した。
次いで、プライマー樹脂シートと粘着シートとを、プライマー樹脂層と粘着層とが接するように重ね、圧着して、剥離層付き印刷用シートを得た。
その後、プライマー樹脂層側のセパレーターAと粘着層側のセパレーターBを剥離させ、印刷シートを得た。
【0081】
<比較例4>
プライマー層形成用組成物Jをプライマー樹脂層形成用組成物Kへ変更した以外は比較例3と同様にして、印刷用シートを作製した。
【0082】
<比較例5>
粘着剤溶液1をセパレーターB(商品名 E7001、東洋紡績(株)製 100μm)の離型処理が施された面にナイフコーターにより、乾燥後の塗工厚さが25μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥させて、粘着層を形成した。
次いで、基材A(商品名 T−60、東レ(株)製 25μm)をプライマー樹脂シートとし、プライマー樹脂シートである基材Aと粘着シートの粘着層とが接するように重ね、圧着して剥離層付き印刷用シートを得た。
その後、粘着層側のセパレーターBを剥離させ、印刷用シートを得た。
【0083】
<比較例6>
プライマー樹脂層形成用組成物Fを、セパレーターA(商品名 E7002、東洋紡績(株)製 100μm)の離型処理が施された面にナイフコーターにより、乾燥後の塗工厚さが80μmになるように塗工し、プライマー樹脂層を形成した。
また、粘着剤溶液2をセパレーターB(商品名 E7001、東洋紡績(株)製 100μm)の離型処理が施された面にナイフコーターにより、乾燥後の塗工厚さが30μmになるように塗工し、高圧水銀ランプ紫外線照射機(アイグラフィックス社製)を用いて、照射強度200mW/cm、積算光量50mJ/cmの条件で紫外線を照射し、粘着層を形成した。
次いで、プライマー樹脂層上に中間層形成用組成物Lをナイフコーターにより、乾燥後の塗工厚さが70μmになるように塗工し、その上に粘着層が接するように重ね、圧着した。さらに高圧水銀ランプ紫外線照射機(アイグラフィックス社製)を用いて、照射強度200mW/cm、積算光量600mJ/cmの条件で紫外線を照射し、剥離層付き印刷用シートを得た。
その後、プライマー樹脂層側のセパレーターAと粘着層側のセパレーターBを剥離させ、印刷用シートを得た。
【0084】
<比較例7>
プライマー樹脂層形成用組成物Aを、基材A(商品名 T−60、東レ(株)製 25μm)にナイフコーターにより、乾燥後の塗工厚さが15μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥させて、プライマー樹脂シートを形成した。
また、粘着剤溶液1をセパレーターB(商品名 E7001、東洋紡績(株)製 100μm)の離型処理が施された面にナイフコーターにより、乾燥後の塗工厚さが25μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥させて、粘着層を形成した。
次いで、プライマー樹脂シートと粘着シートとを、プライマー樹脂シートの基材Aと粘着層とが接するように重ね、圧着した後、粘着層側のセパレーターBを剥離させ、印刷用シートを得た。
【0085】
<リタデーションの評価>
大塚電子製のRETS−100を使用し、回転検光子法にて傾斜角度0°、波長590nmにおける印刷用シートのリタデーションを測定した。
【0086】
<耐屈曲性の評価>
印刷用シートの耐屈曲性を、JIS−K5600−5−1に基づき、コーテック(株)製の円筒形マンドレル屈曲試験器でマンドレル直径4mmφ、2mmφにて試験し、2mmφでプライマー樹脂層が割れなかったものを○、4mmφで割れなかったが、2mmφで割れたものを△、4mmφで割れたものを×とした。
【0087】
<粘着力の評価>
作製した印刷用シートを温度23℃、湿度50%の環境下で7日間エージングさせた後、このフィルムから、幅25mm×長さ100mmの試験片をサンプリングした。一方、表面をエタノールで洗浄し、温度23℃、湿度50%RHの環境下にて3時間以上放置したアルカリガラス板を用意した。試験片から剥離フィルムを剥離したものを、アルカリガラス板の表面に質量2kgの圧着ローラーで一往復させることによって貼り合せた。貼り合せてから30分経過した後、JIS Z0237に規定された180度引きはがし法によって、引張速度300mm/分で引きはがして、粘着力(N/25mm)を測定した。
【0088】
<インキの密着性の評価>
インキ(商品名MRX HF−919墨、帝国インキ社製)の100質量部と、硬化剤(商品名210硬化剤、帝国インキ社製)の5質量部とを混合し、インキAを調製した。
別途、インキ(商品名MRX HF−619白、帝国インキ社製)の100質量部と、硬化剤(商品名210硬化剤、帝国インキ社製)の5質量部とを混合し、インキBを調製した。
インキA、インキBをそれぞれ用いて、印刷用シートのプライマー樹脂層の表面にスクリーン印刷し、80℃で1時間乾燥させてプライマー樹脂層上に膜厚15μmの印刷層を形成した。
JIS K 5600−5−6に準拠し、以下のようにして碁盤目密着試験を行った。
セロハンテープ(商品名CT28、ニチバン社製)を、指で上から押し付けるようにして印刷層に密着させた後に剥離した。100マスの内、印刷層が全てのマス目で剥離していない場合を100/100、全てのマス目で剥離している場合を0/100とし、印刷層が剥離していないマス目を数え、以下の評価基準にてインキの密着性を評価した。
A:96/100〜100/100
B:50/100〜95/100
C:0/100〜49/100
【0089】
<貼りつきの評価>
プライマー樹脂層面をセパレーターAの離型処理が施されていない表面にのせた時の貼りつきを目視で確認した。このとき、のせた面に貼りつきが発生しない場合を○、部分的に貼りつきが発生する場合を△、前面に貼りつきが発生する場合を×とした。
【0090】
<虹ムラの評価>
白色LEDをバックライト光源とし、市販の偏光板を2枚用意して偏向軸が互いに90°となるように重ね合わせた。その後、ガラスに貼合したサンプルを2枚の偏光板間に挿入し、サンプルのみを360°回転させながら、虹ムラの発生について目視観察した。
○:いずれの角度においてもから観察しても虹ムラの発生は見られない
×:いずれの角度で虹ムラが発生する
【0091】
<セパレーターAの剥がしやすさの評価>
プライマー樹脂層側からセパレーターAを剥離させる際に、プライマー樹脂層が全く破壊されることなく剥離できた場合を○、プライマー樹脂層がほとんど破壊されることなく剥離できた場合を△、プライマー層が破壊されてしまった場合を×とした。
【0092】
実施例1〜13の評価結果を表1に、比較例1〜7の評価結果を表2に示した。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
実施例1〜13は、全ての評価において良好な結果が得られたのに対して、プライマー樹脂層のガラス転移温度が高い比較例1はインキ密着性に劣るものであった。比較例2はガラス転移温度が低く、貼りつきが発生して巻き取ることが困難であった。比較例3、4、6は、ガラス転移温度が非常に高くインキ密着性、耐屈曲性に劣るものであった。比較例5と7はリタデーションが非常に高く、虹ムラが生じ視認性が劣るものであった。
【符号の説明】
【0096】
10 印刷用シート
10’剥離層付き印刷用シート
11 プライマー樹脂層
12 粘着層
13 剥離層
14 剥離層
20 加飾シート
21 印刷層
図1
図2
図3