特許第6436057号(P6436057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6436057
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】カバー部材
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/20 20060101AFI20181203BHJP
   F16J 15/52 20060101ALN20181203BHJP
【FI】
   B62D1/20
   !F16J15/52 C
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-215970(P2015-215970)
(22)【出願日】2015年11月2日
(65)【公開番号】特開2017-87775(P2017-87775A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】吉田 浩二
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−024424(JP,A)
【文献】 実開昭57−072371(JP,U)
【文献】 米国特許第05695202(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00−1/28
F16J 15/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギアボックスに連結されるステアリングコラムを覆うカバー部材であって、
ダッシュパネルの取付孔に固定される第1開口縁部と、
ギアボックスに固定される第2開口縁部と、
前記第1開口縁部および前記第2開口縁部の間に設けられる蛇腹部と、
前記第1開口縁部および前記蛇腹部の間で前記蛇腹部に連設される第1管状部と、
前記第2開口縁部および前記蛇腹部の間で前記蛇腹部に連結される第2管状部と、
前記蛇腹部の姿勢を保持する姿勢保持部と、を備え、
前記姿勢保持部は、
前記蛇腹部の外周面に沿って前記蛇腹部の長さ方向に延在する壁部と、
前記壁部の周方向の一方の第1側部と他方の第2側部を連結し、前記第1管状部に巻き付けられる第1連結部と、
前記第1側部と前記第2側部を連結し、前記第2管状部に巻き付けられる第2連結部と、を有し、
前記第1連結部および前記第2連結部の間隔は、前記第1側部側が前記第2側部側より短く、
前記蛇腹部は、前記第1側部側の前記第1連結部および前記第2連結部の間に挟まれることで圧縮された状態で姿勢を保持されることを特徴とするカバー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリングコラムを覆うカバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリング装置に設けられるステアリングコラムは、エンジンルームに配置されたギアボックスに連結される。ステアリングコラムは、車室内からギアボックスに向かって伸びるように配置され、車室とエンジンルームを遮るダッシュパネルに挿通される。エンジンルーム側のステアリングコラムは筒状のカバー部材によって覆われる。
【0003】
特許文献1には、ステアリングコラムを覆い、一端がダッシュパネルに他端がギアボックスに固定されるカバーが開示される。特許文献1に開示されるステアリングコラムのカバーは、中途に形成された蛇腹部により撓み可能に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−24424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ステアリングコラムのカバー部材は、ギアボックスに取り付けられた状態で、ギアボックスとともにダッシュパネルの下方の位置から上方に移動させて、ダッシュパネルに固定される。特許文献1のカバーは、蛇腹部の撓み方向によっては取付時にダッシュパネルに引っ掛かるおそれがある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、ステアリングコラムを覆うカバー部材において、蛇腹部の姿勢を保持する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のカバー部材は、ギアボックスに連結されるステアリングコラムを覆うカバー部材であって、ダッシュパネルの取付孔に固定される第1開口縁部と、ギアボックスに固定される第2開口縁部と、第1開口縁部および第2開口縁部の間に設けられる蛇腹部と、第1開口縁部および蛇腹部の間で蛇腹部に連設される第1管状部と、第2開口縁部および蛇腹部の間で蛇腹部に連結される第2管状部と、蛇腹部の姿勢を保持する姿勢保持部と、を備える。姿勢保持部は、蛇腹部の外周面に沿って蛇腹部の長さ方向に延在する壁部と、壁部の周方向の一方の第1側部と他方の第2側部を連結し、第1管状部に巻き付けられる第1連結部と、第1側部と第2側部を連結し、第2管状部に巻き付けられる第2連結部と、を有する。第1連結部および第2連結部の間隔は、第1側部側が第2側部側より短く、蛇腹部は、第1側部側の第1連結部および第2連結部の間に挟まれることで圧縮された状態で姿勢を保持される。
【0008】
この態様によると、第1側部側の第1連結部および第2連結部により蛇腹部を挟み込んで圧縮した状態に維持することで蛇腹部の姿勢を保持できる。これにより、ギアボックスとともにカバー部材を取り付ける際にカバー部材が蛇腹部によってダッシュパネル側に撓むことを抑え、取付作業を容易にできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ステアリングコラムを覆うカバー部材において、蛇腹部の姿勢を保持する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例のカバー部材の斜視図である。
図2】カバー部材の取付工程について説明するための図である。
図3】姿勢保持部の斜視図である。
図4】変形例の姿勢保持部を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施例のカバー部材10の斜視図である。カバー部材10は、カバー部18および姿勢保持部32により構成され、いずれもゴム材料からなる。カバー部材10は、筒状に形成され、ステアリングコラムを覆う。カバー部材10の一端はダッシュパネルの取付孔に固定され、他端はギアボックスに固定される。
【0012】
カバー部18は、頭部20、蛇腹部22、第1開口縁部24、第2開口縁部26、第1管状部28および第2管状部30を有する。蛇腹部22は、第1開口縁部24をダッシュパネルの取付孔に固定する際に、ダッシュパネルとの位置ずれを吸収するために形成されている。ここで、カバー部材10を取付状態について、新たな図面を参照して説明する。
【0013】
図2は、カバー部材10の取付工程について説明するための図である。図2は車両左側から見たカバー部材10およびその周りの部材の側面図を示す。カバー部材10は、ギアボックス12に立設して固定されている。ステアリングコラムが上下方向および水平方向に交差する方向、すなわちギアボックス12から斜め上方に立ち上がるように配置されるため、カバー部材10も車両後方に向かって斜め上方に立ち上げるように配置される。
【0014】
ギアボックス12は、サスペンションメンバ14に載置された状態でのサスペンションメンバ14の上面に固定され、車両左右方向に延在する。サスペンションメンバ14、ギアボックス12およびカバー部材10は一体に組み付けられている。ダッシュパネル16の取付孔が形成される取付面16aは、車両左右方向に延在し、上部が下部より車両前方側に出るように傾斜する。ダッシュパネル16は、運転席の前方側に位置する取付面16aから下方に渡って延在している。
【0015】
サスペンションメンバ14、ギアボックス12およびカバー部材10をダッシュパネル16からなる組立体を、車体に組み付ける際、ダッシュパネル16より下方の位置から上方に持ち上げ、または、ダッシュパネル16を上方の位置から下方に降ろして組み付けられる。カバー部材10は車両後方側に傾斜しているため、蛇腹部22の撓みにより頭部20がダッシュパネル16側に垂れやすく、取付時にカバー部材10の頭部20がダッシュパネル16に引っ掛かるおそれがある。
【0016】
そこで、姿勢保持部32をカバー部18の蛇腹部22の周りに取り付けて、頭部20をダッシュパネル16から遠ざけるように蛇腹部22の姿勢を保持することで、取付時に頭部20がダッシュパネル16に当たることを抑えることができる。サスペンションメンバ14を車体に固定した後は、蛇腹部22を撓ませることで第1開口縁部24をダッシュパネル16の取付孔に容易に固定できる。なお、ステアリングコラムはサスペンションメンバ14を車体に固定した後に車室側からカバー部材10に挿通してギアボックスに連結される。
【0017】
図1に戻る。カバー部18の第1開口縁部24は、ダッシュパネル16の取付孔に係合して固定される。頭部20は、円筒形に形成され、一端に第1開口縁部24が形成される。第1開口縁部24は、円筒形の頭部20を径方向に交差する方向、すなわち斜めに切り欠いたように形成され、楕円形に形成される。第1開口縁部24は、取付状態において車両後方側に向かって開口する開口面を形成する。
【0018】
第1管状部28は、頭部20の下端に連設される。第2管状部30は第1管状部28と同径に形成され、第1管状部28および第2管状部30の間に蛇腹部22が形成される。第2管状部30の下端に第2開口縁部26が形成される。第1管状部28および第2管状部30は、第1開口縁部24および第2開口縁部26の間で蛇腹部22の両端側に形成され、蛇腹部22の両端に連設する。第2開口縁部26は、ギアボックス12の取付孔に係合して固定される。
【0019】
蛇腹部22は、第1開口縁部24および第2開口縁部26の間で、第1管状部28および第2管状部30の間に設けられる。第1管状部28および第2管状部30は、蛇腹部22より剛性が高くなるように形成される。つまり、蛇腹部22は、肉厚が第1管状部28および第2管状部30より薄くなるように形成されて撓みやすい。蛇腹部22が撓み可能であるため、第2開口縁部26をギアボックス12に固定した際に第1開口縁部24の位置を変えることができ、ダッシュパネル16への固定を容易にできる。
【0020】
姿勢保持部32は、蛇腹部22の周りに取り付けられる。姿勢保持部32は、壁部34、第1連結部36および第2連結部38を有する。ここで、姿勢保持部32の形状について図3を参照しつつ説明する。
【0021】
図3は、姿勢保持部32の斜視図である。壁部34は、矩形状の板部を湾曲して形成される。壁部34は、図1に示すように蛇腹部22の外周面に沿って蛇腹部22の長さ方向に延在する。壁部34は、姿勢を保持するための剛性を出す機能に加えて、エンジンの放熱を受ける機能を有するため、エンジン側に向かって配置される。
【0022】
第1連結部36は、帯状に形成され、壁部34の周方向の第1側部40および第2側部42を連結する。第2連結部38は、帯状に形成され、壁部34の周方向の第1側部40および第2側部42を連結し、第1連結部36と離れて位置する。図1に示すように、姿勢保持部32は、第1連結部36を第1管状部28に巻き付け、第2連結部38を第2管状部30に巻き付けることで、蛇腹部22の周りに固定される。
【0023】
第1連結部36および第2連結部38の間隔は、第1側部40側が第2側部42側より短くなるように構成される。第1連結部36および第1側部40の第1連結点44と、第2連結部38および第1側部40の第2連結点46との間隔L1は、第1連結部36および第2側部42の第3連結点48と、第2連結部38および第2側部42の第4連結点50との間隔L2より短い。
【0024】
第1連結点44および第2連結点46の間隔L1は、蛇腹部22の自由長より短く設定される。これにより、図1に示すように姿勢保持部32は第1側部40側にて蛇腹部22を圧縮させて保持することができる。第1連結点44および第2連結点46の間隔L1は、蛇腹部22の緩みがなくなる程度に蛇腹部22を最大限圧縮するように設定されてよい。第3連結点48および第4連結点50の間隔L2は、蛇腹部22の自由長より長く設定される。これにより姿勢保持部32は、第2側部42側にて蛇腹部22を圧縮させないで保持することができる。これにより、蛇腹部22を圧縮する部分と圧縮しない部分を設定して、頭部20の傾きを所望の状態に保持できる。
【0025】
姿勢保持部32の第1側部40は、第1開口縁部24の開口面の反対側、すなわち車両前方側に位置する。これにより、図1に示すように、蛇腹部22の車両前方側の部分を圧縮して保持し、蛇腹部22を反り返らせて、頭部20および第1開口縁部24が車両後方側に倒れ込むことを抑えることができる。
【0026】
図1に示すように、第1管状部28に径方向外向きに突出する第1突起部52が形成され、第2管状部30に径方向外向きに突出する第2突起部54が形成される。第1突起部52および第2突起部54は、車両前方側に位置する。第1突起部52は、第1連結部36の下端に当接し、第2突起部54は第2連結部38の上端に当接して、第1連結部36および第2連結部38が第1管状部28および第2管状部30から外れることを抑える。
【0027】
このように、姿勢保持部32で蛇腹部22の姿勢を保持することで、カバー部材10の頭部20が車両後方側に垂れることを抑え、取付時に車両後方側に位置するダッシュパネル16に引っ掛かることを抑えることができる。また、姿勢保持部32の壁部34により、エンジンからの蛇腹部22への放熱による変形を抑えることができる。
【0028】
図4は、変形例の姿勢保持部132を説明するための図である。姿勢保持部132は、平板状のゴム材料を切り欠いて形成される。姿勢保持部132は、壁部134、第1連結部136および第2連結部138を有する。
【0029】
組付前の平板状の姿勢保持部132には、壁部134と第1連結部136を分ける第1切欠部60、および壁部134と第2連結部138を分ける第2切欠部62が形成されている。第1切欠部60は、上端に沿って形成され、第2切欠部62は、下端に沿って形成される。姿勢保持部132は、第1切欠部60および第2切欠部62にカバー部18を挿入し、第1連結部136を第1管状部28に、第2連結部138を第2管状部30に巻き付けてカバー部18に取り付けられる。
【0030】
変形例の姿勢保持部132においても、第1連結部136および第2連結部138の間隔は、第1側部40側が第2側部42側より短くなるように構成される。また、第1連結点44および第2連結点46の間隔L1は、蛇腹部22の自由長より短く、第3連結点48および第4連結点50の間隔L2は、蛇腹部22の自由長より長く設定される。これにより蛇腹部22を圧縮する部分と圧縮しない部分を設定して、蛇腹部22の姿勢を反り返るように保持できる。
【0031】
以上、本発明を各実施形態をもとに説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素およびプロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、そのような変形例を述べる。
【0032】
実施例では、姿勢保持部32をゴム材料で形成する態様を示したが、この態様に限られず、例えば姿勢保持部32をアルミなどの金属材料で形成してもよい。
【0033】
また、実施例では、姿勢保持部32をカバー部18に巻き付けるように取り付ける態様を示したが、この態様に限られない。例えば、姿勢保持部は壁部34のみで構成され、壁部34をカバー部18の外周面に接着してもよい。この変形例でも、姿勢保持部は、頭部20が車両後方側に垂れることを抑えるように、蛇腹部22の車両前方側の部分を圧縮して保持する。
【符号の説明】
【0034】
10 カバー部材、 12 ギアボックス、 14 サスペンションメンバ、 16 ダッシュパネル、 18 カバー部、 20 頭部、 22 蛇腹部、 24 第1開口縁部、 26 第2開口縁部、 28 第1管状部、 30 第2管状部、 32 姿勢保持部、 34 壁部、 36 第1連結部、 38 第2連結部、 40 第1側部、 42 第2側部、 52 第1突起部、 54 第2突起部。
図1
図2
図3
図4