(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガスは、一酸化炭素(CO)、未燃焼炭化水素(“HC”)及び窒素酸化物(NO
x)といったガス排出物ばかりでなく、いわゆる微粒子または微粒子物質が構成する凝縮相物質(液体及び固体)も含む不均質混合物である。ディーゼルエンジンの排気システムには、触媒成分及び触媒成分が分解された基板が、ある種のまたはこれらすべての排気成分を無害な成分に変えるためにしばしば備えられている。例えば、ディーゼル排気システムは、1以上のディーゼル用酸化触媒、煤煙フィルタ及びNO
X削減用の触媒を有する。
【0003】
プラチナ族の金属、卑金属及びこれらの混合物を含む酸化触媒は、HCやCoといったガス状の汚染物質及びこれら汚染物質が酸化した微粒子物質の一部を二酸化炭素や水に変換することを促進して、ディーゼルエンジンの排気ガスの処理を容易にすることが知られている。これら触媒は、一般的に、単一のいわゆるディーゼル用酸化触媒(“DOC”)に含まれ、大気中に排気ガスが排出される前に排気ガスを処理するために、ディーゼルエンジンの排気システムに配置されている。ガス状のHC、CO、及び微粒子物質への変換に加えて、プラチナ族の金属(典型的には耐火性酸化物助剤に分散している)を含む酸化触媒は、一酸化窒素(NO)から二酸化窒素(NO
2)への酸化を促進する。
【0004】
ディーゼルの排気における全微粒子物質の排出物は、3つの主要な混合物を含んでいる。第1の混合物は固体で乾燥した固体炭素成分、または煤煙成分である。この乾燥した炭素物質は、ディーゼルの排気に伴う視認性のある煤煙の排出に有効である。第2の微粒子物質の成分は、可溶性有機成分(“SOF”)である。可溶性有機成分は、しばしば揮発性有機成分(“VOF”)とよばれる。専門用語として用いられる。VOFは、ディーゼルの排気物中に、ディーゼル排気物の温度に応じて、蒸気としてまたはエアゾール(凝縮液の微細な液滴)として存在し得る。標準的な微粒子捕集温度52℃で、凝縮液が汚染された排気ガスに一般的に存在することは、U.S. Heavy Duty Transient Federal Test Procedureといった標準的な測定試験によって規定されている。このような液体は、2つの源である(1)ピストンがエンジンのシリンダ壁を上下する度に掃きだされた潤滑油、及び(2)不燃のまたは部分燃焼したディーゼル燃料、から生じる。
【0005】
微粒子物質の第3の成分は、いわゆる硫酸成分である。硫酸成分は、ディーゼル燃料中に存在する少量の硫黄成分から生成される。ディーゼルの燃焼中に少ない割合でSO
3が生成され、次に、このSO
3が硫酸を生成するために排気ガス中で水と迅速に結合して硫酸が生成される。硫酸は、エアゾール化した微粒子を凝縮相として収集する。または、他の微粒子成分中に吸収され、全微粒子物質の集合に付加される。
【0006】
高い微粒子物質の削減のために使用される1つの後処理技術は、ディーゼルパティキュレートフィルタである。ディーゼルの排気ガスから微粒子物質を除去するために有効なフィルタ構造は、数多く知られている。例えば、ハニカム壁のフローフィルタ、繊維を巻きつけたまたは束ねたフィルタ、オープンセルフォーム、焼結金属フィルタ等が挙げられる。しかし、後述するセラミック壁フローフィルタは、最も注目に値するものである。これらのフィルタは、ディーゼルの排気ガスから90%以上の微粒子物質を除去することができる。フィルタは、排気ガスから粒子を除去する物理的な構造物であり、集積する粒子は、フィルタまたはエンジンからの背圧を増大させる。従って、集積する粒子は、継続的または定期的に、許容背圧を維持するためにフィルタで燃焼させる必要がある。
【0007】
アンモニア選択触媒還元(SCR)は、ディーゼル及びリーンバーンエンジンにおける厳格なNO
X排出規制をみたすために用いられるNO
X減少の技術である。アンモニアSCR工程では、NO
X(NOとNO
2の総和と定義される)は、アンモニア(または尿素といったアンモニア前駆体)と反応して、典型的には卑金属から構成される触媒を介して二窒素(N
2)を形成する。
【0008】
NO
XのSCRを促進する触媒を担持した触媒作用を有するウォールフローフィルタは、2つの機能を果たす。この機能は、排気ガス流の微粒子成分の除去及び排気ガス流のNO
X成分をN
2に変換することである。NO
X削減目標を達成するSCR被覆されたウォールフローフィルタは、車両中の通常の空間的な制約の下では、ウォールフローフィルタ上のSCR触媒成分の十分な担持量を要求する。排気ガス流のある種の有害な成分または高温に製品寿命を超えて晒されて、成分の触媒効果が漸次減少し、これにより、SCR触媒成分の触媒担持量を多くする必要性が増加する。しかし、高い触媒担持量を有する被覆されたウォールフローフィルタを備えることは、排気システム内の背圧が、許容できないほど高くなる。背圧の増大は、燃料効率を悪化させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ウォールフローフィルタの被覆の際に考慮する他の事項は、適正なSCR触媒成分の選択である。第1に、触媒成分は、フィルタの再生の特徴である高温に長時間晒された後であっても、SCR触媒活性を維持し得るように熱耐久性を有することが必要である。例えば、微粒子物質の煤煙成分の燃焼は、しばしば、700℃を超える。このような温度は、バナジウム及びチタニウムの混合酸化物といった通常用いられる多くのSCR触媒成分の触媒作用をより減少させるように働く。第2に、SCR触媒成分は、好ましくは、車両が動作する際の温度範囲を超えて様々な温度範囲に適合可能なように、十分に広い作用温度範囲を有する。300℃未満の温度は、典型的には、例えば、低負荷状態または始動状態の場合に生じる。SCR触媒成分は、低い排気ガス温度のとき、特にSCR触媒が例えばウォールフローフィルタのフィルタ基板に配置されているときであっても、排気ガス中のNO
X成分の削減を、NO
X削減目標に到達するように触媒作用を生じることが好適である。一般に、SCR触媒は、高い水熱安定性に関して顕著な作用を有することを要する。
【0011】
ウォールフローフィルタ上に高いSCR触媒の担持量を与えることを許容しつつも背圧を受け得る流下特性を維持することができる、SCR触媒及び被覆技術を含むウォールフローフィルタが提案されている。高いSCR触媒担持量を有するこのような提案されたウォールフローフィルタ及び被覆技術にも関わらず、背圧及びSCR触媒の触媒機能の管理が可能な他の触媒フィルタ及びシステムが要求されるであろう。加えて、排気ガス流がフィルタを流れる際に十分に低い温度でのNO
Xの変換を達成し、かつ好適な水熱時間変化特性を示すSCR触媒担体で被覆されたパティキュレートフィルタを利用する好適な触媒物質、システム及び方法を提供することが望まれるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、パーシャル効率フィルタは、ディーゼルエンジンの排気ガスを減少させるため、及びNO
X及び微粒子物質を含むエンジン排気ガス流の処理を行うためのシステム及び方法において使用される。例えば、EU III及びEU IVといった遵守すべき排出ガイドラインは、高効率のフィルタを必ずしも要求しておらず、パーシャル効率フィルタは、高いフィルタ効果を要求しないシステムで用いられる。ここで用いられる“パーシャルフィルタ”または“パーシャル効率フィルタ”は、フィルタ効率が質量基準で、およそ30%〜およそ60%の範囲のフィルタのことをいう。
【0013】
加えて、ディーゼル排気装置におけるパーシャル効率煤煙フィルタの使用は、付加的な排気処理システムの設計の柔軟性をもたらす。例えば、パーシャルフィルタの中の煤煙の堆積が高効率フィルタより低い割合で生じることから、必要とされる再生の間の時間はより長くなり、それにより、煤煙の完全燃焼及びフィルタ材料にかかる熱的負荷の削減が確実なものとなるように、排気ガス温度の上昇に伴い燃料消費の削減が達成される。また、あるパーシャルフィルタは金属から形成され、これにより、熱的・機械的衝撃に対する抵抗力が増大する。これは、振動及び排気圧脈動力がかなり高いエンジンの近傍にフィルタを配置することを許容するものである。更に、パーシャルフィルタは、任意のブラインドを有さないか、または溝を有していない。従って、高効率フィルタを用いて作られた煤煙の燃焼による耐熱性無機副生成物、すなわち灰の収集がしにくい。高効率フィルタで形成された灰は、排気システムの背圧増大及びエンジンの不可避的な低効率化をもたらす。従って、パーシャルフィルタで灰が形成されることを回避すれば、高いエンジン効率及び低燃費に直接的につながる。これら設計上の考慮事項を念頭に置くと、パーシャルフィルタを用いた粒子排出規制に適合しうる装置は、フィルタを設計することに明確なインセンティヴを有する。
【0014】
本発明の実施の形態によれば、パティキュレートフィルタは、ガス流から微粒子物質の少なくとも30〜60%を除去するパーシャルフィルタである。また、パティキュレートフィルタは、50%〜95%の多孔質性を有する。パティキュレートフィルタは、フォームを含み得る。このようなフィルタは、更に、開放基板構造または網状基板構造及び/または孔及び多孔質壁を形成する支柱を有する。
【0015】
他の実施の形態によれば、パティキュレートフィルタは、0.1g/in
3〜3.5g/in
3の範囲の触媒担持量を有し、より具体的には、約0.5g/in
3〜2.0g/in
3の範囲の触媒担持量を有する。1以上の実施の形態では、SCR触媒は、パティキュレートフィルタの軸長に沿って配置されている。ある実施の形態では、SCR触媒は、パティキュレートフィルタの軸長の一部または領域に配置され、パティキュレートフィルタの全軸長に亘ってまたは全軸長に亘らないで配置される。
【0016】
本発明の他の実施の形態によると、システムで処理されるガス流の成分は、約500ppmのNO、500ppmのNH
3及び5%の大気中の水分である。本実施の形態で用いられるSCR触媒は、250℃で少なくとも10%のNO
X変換をもたらすまたはこの変換に有用な、及びNH
3に対して1の割合のNO
Xとともに約40000h
-1の空間速度をもたらすまたは有用な任意の材料を用いることができる。本システムのある実施の形態は、同様の被覆されていないフィルタを用いた同様のシステムと対比した場合に、最小約30%以上のNO
X変換及び最大の背圧増加を約25%とすることができる。具体的な実施の形態では、目標のNO
X変換率はテストサイクルを通じて約60%であり、フィルタ中の背圧における最大の目標割合は、同様の被覆されていないフィルタを用いた同様のシステムと対比した場合の約25%である。
【0017】
本発明の種々の実施の形態において、SCR触媒は、例えば、CuCHA構造といったCHA構造を有するゼオライトを含みうる。1以上の実施の形態におけるSCR触媒は、V
2O
5及びTiO
2の混合酸化物を含み、及び/またはFeが添加されたゼオライトを含み得る。他の実施の形態では、SCR触媒は、Cu、Fe、Mn、Co、Ag及びこれらの混合物を含み得るモレキュラシーブを含み得る。
【0018】
同様のまたは異なるシステムにおいて異なる位置に配置される複数のSCR触媒が、存在し得る。2つの触媒が異なる場合は、第1のSCR触媒は、高いガス流温度でNO
X変換を実施可能であり、第2のSCR触媒は、低いガス流温度でNO
X変換を実施可能である。
【0019】
SCR触媒を備えたパティキュレートフィルタを含むシステムは,1以上の他の基板を組み入れてもよく、この基板は、SCRまたは酸化触媒を含み得る。このような他の基板に用いられるSCR触媒は、パティキュレートフィルタに用いられるSCR触媒と同様または異なっていてもよい。1以上の実施の形態では、酸化触媒はパティキュレートフィルタの上流に配置される。システムのより具体的な実施の形態では、パティキュレートフィルタは、パティキュレートフィルタとエンジンとの間にSCR触媒が介在することのないように、エンジンに近接して配置される。システムは、パティキュレートフィルタの下流に配置されるフロースルー基板を含み、また、パティキュレートフィルタの上流に配置された酸化触媒を任意的に含み得る。このようなシステムでは、フロースルー基板は、NO
X変換に有効なSCR触媒を含み、システムは、約50%〜100%の範囲のNO
X変換率を有する。より具体的な実施の形態では、パティキュレートフィルタによるNO
X変換率は、システムのトータルNO
X変換率の約10%〜90%の範囲にある。
【0020】
本システムの1以上の実施の形態は、排気ガス流中の初期の、中間の、及び最終のNO
X濃度を効果的に発生させるものである。このような実施の形態では、システムは、排気ガス流がパティキュレートフィルタを通過した後に中間のNO
X濃度を発生し、排気ガス流が第2の基板を通過した後に最終のNO
X濃度を発生する。このようなシステムでは、初期のNO
X濃度及び最終のNO
X濃度及びシステムの背圧の増加に基づくシステムのNO
X変換率は、最小の目標となるNO
X変換率及びシステムの背圧の最大の目標割合の増加率に基づいた作動可能領域に存在する。1以上の実施の形態では、目標のNO
X変換率は50%以上であり、システムの背圧の最大の目標割合の増加率は、同様の被覆されていないフィルタを含む同様のシステムと比べて約25%である。
【0021】
更に、本発明は、NO
X濃度、システムの背圧及びシステムのNO
X変換を有するエンジン排気ガス流の処理方法を含む。この方法は、NO
Xの変換に有効であり、かつ、最小の目標となるNO
X変換及びシステムの背圧の最大の目標割合の増加に基づく排気ガスシステムの作動可能領域を明確にし、エンジンの下流に配置されたパティキュレートフィルタを介してガス流を通し、アンモニアやアンモニア前駆体といった還元剤をパティキュレートフィルタの上流のガス流に噴射し、パティキュレートフィルタの下流に配置された第2のSCR触媒が担持された第2の基板を介してガス流を通すプロセスを有し、システムのNO
X変換及びシステムの背圧が作動可能領域内に存在する。排出処理システムから出るガス流は、最終のNO
X濃度を有する。1以上の実施の形態では、システムのNO
X濃度は、約50%〜100%の範囲を有する。本発明の方法に係る1以上の実施の形態に用いられるパティキュレートフィルタの変換は、システムのNO
X変換の約10〜90%の範囲にある。
【0022】
より具体的な実施の形態では、ガス流は、エンジンの下流に配置され質量基準で約30%〜60%の範囲の微粒子濾過効率を有するパティキュレートフィルタを介して通される。本方法の実施の形態では、パティキュレートフィルタは、60%〜95%の多孔性を有する金属発泡フィルタである。本方法の具体的な実施の形態では、SCR触媒が担持されたパティキュレートフィルタは、例えば、略0.1g/in
3〜3.5g/in
3の範囲でNO
X変換に有効な担持量を有する。他の実施の形態では、SCR触媒は、約0.5g/in
3〜2.0g/in
3の範囲内の担持量を有する。SCR触媒は、それ自体の長さの10〜100%のフィルタ基板上に配置される。
【0023】
本方法の1以上の実施の形態では、システムの背圧の割合増加は、システムの背圧を伴った触媒が担持されていないフィルタと、約20000hr
-1〜120000hr
-1の範囲内の空間速度で、コールドフロー値の平均で測定された触媒を担持したフィルタとの対比に基づいている。1以上の実施の形態では、本方法は、エンジンとパティキュレートフィルタとの間にSCR触媒が介在することがない。更に具体的な実施の形態では、第2の基板には、NO
X変換に効果的なパティキュレートフィルタの下流に配置された第2のSCR触媒が担持される。
【0024】
本方法の実施の形態によれば、最小の目標となるNO
X変換は、同様の被覆されていないフィルタを含む同様のシステムと比べて約30%以上であり、システムの背圧における最大の目標割合の増加は、同様の被覆されていないフィルタを含む同様のシステムと比べて約25%である。具体的な実施の形態では、目標のシステムのNO
X変換はテストサイクルを通じて約50%であり、フィルタ中の背圧における最大の目標割合は、同様の被覆されていないフィルタを用いた同様のシステムと対比した場合に約25%である。
【0025】
本発明の特徴及び技術的に有利な点についての概略は、上記の通りである。本発明の要旨の範囲内で、開示された具体的な実施の形態は、他の構造またはプロセスに改変または設計するための基礎として、当業者によって容易に用いることができる。また、このような均等な構造物は、従属項で述べられる本発明の思想及び範囲から離れるものではないと当業者に認識されるものである。
【0026】
上記列挙した本発明の特徴は、上述の記載によって詳細に理解し得るものと考える。上記に端的に要約したが、本発明のより具体的な記載については、実施の形態を参照し得る。実施の形態のうちいくつかは、以下の図面に示されている。しかし、以下の図面は本発明の典型的な実施の形態を示したものに過ぎず、これによって本発明の範囲が限定されるものでもなく、本発明の範囲は他の同等な効果的な実施の形態に及ぶものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
触媒物質、システム及び方法が提供され、触媒物質は、微粒子物質、NO
X及びディーゼルエンジン排気ガスのガス成分を一斉に処理するパーシャル効率フィルタを有する。排気処理システムは、排出システムに要求される質量及び体積が極力小さくなるように、統合煤煙フィルタ及びSCR触媒が使用される。更に、システムに具備される触媒成分を選択することによって、種々の排気ガス流の温度のために効果的な汚染物質の減少がもたらされる。この特徴は、種々の負荷及び車両のエンジンから排出される排気の温度に大きな影響を及ぼす車両速度でディーゼル車を運転するために有利である。
【0029】
NO
X削減及び微粒子除去の機能の単一の触媒製品内への統合が、SCR触媒成分で被覆されたパーシャルフィルタ基板を用いることで達成される。ウォールフロー基板上のSCR触媒成分の実用的なレベルの達成は、NO
Xの削減レベルの要求達成のための十分な触媒活性をもたらすために重要であり、かつ、フィルタに残った煤煙の破片が燃焼する温度を低下せしめるために重要である。煤煙フィルタ上のSCR触媒成分の適正なレベルの達成もまた、触媒の適切な耐久性を確保するために重要である。排出処理システムの耐久期限を超えた使用により、潤滑油の分解によって生じる、またはディーゼル燃料の不純性から生じる種々のレベルの触媒被毒に曝されている。このような触媒被毒の例としては、リン、亜鉛、アルカリ金属及びアルカリアース金属が挙げられる。触媒成分の高いレベルはこれにより、典型的に触媒基板に沈殿し、触媒活性の不可避的な損失を回避する。
【0030】
排出処理システムにおける発明の一の実施の形態が、
図1Aに模式的に示されている。図示のように、ガス状の汚染物質(未燃焼の炭化水素、一酸化炭素及びNO
Xを含む)を含む排気ガス流及びエンジン15からの微粒子物質がシステムに導入される。炭化水素、アンモニアまたはアンモニア前駆体(尿素など)またはSCR反応を促進する十分に高い還元能力を示す任意の他の物質が、ノズル(図示しない)を介して排気ガス流にスプレーとして噴射される。一の線18で示された水性の尿素は、混合部16において他の線19で示される空気と混合されるアンモニア前駆体として機能する。バルブ14は、排気ガス流中でアンモニアに変換される水性尿素の正確な量を計測するために用いられる。還元剤が添加された排気ガス流は、第1のSCR触媒を含むパティキュレートフィルタ12に向かって運ばれる。排気ガス流がパティキュレートフィルタ12を通過すると、NO
X成分は、アンモニアを有する選択的なNO
Xの触媒還元剤を介して窒素に変換される。エンジン15とパティキュレートフィルタ12との間には、中間的なSCR触媒は配置されていない。
【0031】
煤煙の一部及びVOFを含む微粒子物質もまた、パティキュレートフィルタ12によって除去(質量基準に基づいて約30〜60%)される。パティキュレートフィルタ12に沈殿する微粒子物質は、フィルタの再生を通して燃焼され、フィルタは、SCR触媒の存在によって補助される。微粒子物質の燃焼物の煤煙の破片の温度は、パティキュレートフィルタ12に配置された触媒成分の存在によって低下せしめられる。
【0032】
パティキュレートフィルタ12の存在によって、ガス流は、第2のSCR触媒を含む基板13を通過する。基板13は、フロースルー基板であってもよく、パティキュレートフィルタ12の下流に配置されている。エンジン15から排出されるガス流は、パティキュレートフィルタ12に入る前の位置3において初期のNO
X濃度を含んでおり、パティキュレートフィルタ12と下流の基板13との間に中間のNO
X濃度を含んでおり、フロースルー基板13を通過した後の位置7に最終のNO
X濃度を含んでいる。初期のNO
X濃度及び最終のNO
X濃度を基礎としたガス流中で達成したNO
Xのシステム変換は、略50%よりも大きい。パティキュレートフィルタ12によるNO
X変換は、テスト運転サイクル(テスト運転サイクルについては、http://www.epa.gov/nvfel/testing/dvnamometer.htmを参照)を通して全体的に測定された、またはシミュレートされた反応器の状態の下における、システムのNO
X変換の約10%〜約90%の範囲である。開示された排出処理システムを見渡すと、ガス流は、システムの背圧を約25%未満に増加させる。システムの背圧の増加量は、被覆されていないフィルタを通過するガス流から生じる背圧の増加量と比較して決定される。システムの背圧は、空間速度におけるコールドフロー値の平均によって測定され、システム体積によって分割されたガス流の体積測定フロー割合と等しく、20000h
-1と120000h
-1との間にある。
【0033】
本発明の排出処理システムは、最小の目標NO
X濃度及びシステムの背圧における最大の目標割合の増加によって規定された作動可能領域の内側の操作を許容する。この作動可能領域は、高いNO
X変換が過大でかつ望ましくない背圧の大きな増加を引き起こすことがないと認識された範囲でもたらされる。一の実施の形態では、最小の目標のNO
X変換は、テストサイクルを通して約50%であり、被覆されていないパーシャルフィルタを通したシステムの背圧における最大の目標割合の増加は、約25%である。明らかに、他の最小の目標のシステムのNO
X濃度及びシステムの背圧における最大の目標割合の増加が確立され得る。
【0034】
システムに用いられる好適なSCR触媒成分は、適切なNO
Xレベルが、典型的には低排出温度に関連する低負荷の状態の下であっても処理し得るように、600℃以下の温度でNO
X成分の還元に効果的に触媒作用を及ぼすことができる。好ましくは、触媒物質は、システムに添加される還元剤の量次第では、少なくとも50%のNO
X成分をN
2に変換することができる。加えて、システムに用いられるSCR触媒成分は、微粒子物質の煤煙の破片が燃焼される際に温度が低下することによってフィルタの再生を促進する。成分に対する他の好適な特性は、NH
3が大気中に排出されないように、任意の過剰なNH
3、N
2及びH
2Oを備えたO
2の反応に触媒作用を及ぼす能力を有する。システムの実施の形態では、第1のSCR触媒及び/または第2の触媒は、銅CHA構造を有するゼオライト、V
2O
5の酸化混合物、WO
3及びTiO
2またはFeを付与したゼオライトを含む。1以上の実施の形態では、SCR触媒はモレキュラシーブを含み、Cu、Fe、Mn、Co、Ag及びこれらの材料の混合物といった促進剤を含む。
【0035】
1以上の実施の形態では、1以上のSCR触媒が用いられる。SCR触媒の成分は、同一であっても異なっていてもよい。異なっている場合は、一のSCR触媒は、より高いガス流温度でNO
X変換を制御し、他のSCR触媒は、より低いガス流温度でNO
X変換を制御する。例えば、一のSCR触媒はCHA構造を有するゼオライトを含み、他のSCR触媒はV
2O
5、WO
3及びTiO
2の酸化混合物を含む。具体的な実施の形態では、一のSCR触媒はFeを付与したゼオライトを含み、他のSCR触媒はV
2O
5、WO
3及びTiO
2の酸化混合物を含む。より具体的な実施の形態では、一のSCR触媒はFeを付与したゼオライトを含み、他のSCR触媒はCHA構造を有するゼオライトを含む。
【0036】
本発明に係るシステムに用いられる有用なSCR触媒成分は、650℃以上の温度に対する温度抵抗を有する。このような高い温度はしばしば、パティキュレートフィルタの再生の間に生じる。SCR触媒成分は、ディーゼルエンジンの排気ガス成分にはしばしば発生する硫黄成分に曝されることによる崩壊に抵抗し得る。第1のSCR触媒は、250℃で少なくとも略10%で、かつ空間速度が略40000h
-1のシステムNO
X変換を付与するために選択される。好ましくは、第1のSCR触媒は、これら同じ状態の下で、少なくとも略50%のシステムのNO
X変換をもたらすために選択される。
【0037】
好適なSCR触媒成分は、例えば、米国特許4961917号(917特許)及び5516497号に開示されている。この双方の開示内容は全て、本発明に組み込まれている。ゼオライト中に約0.1〜30質量%の量で存在する、好ましくは、促進剤を付加したゼオライト中に約1〜5質量%の量で存在する鉄及び銅の促進剤のうちの一方または双方を含む成分が、917特許で開示されている。N
2にNH
3でNO
Xの削減を生じさせる触媒作用を有する能力に加えて、開示された成分は、過剰なNH
3をO
2で酸化を促進する。特に、これらの成分は、高い促進剤の濃度を有する。
【0038】
このような成分に用いられるゼオライト及びモレキュラシーブは、硫黄被毒に対して抵抗力を有し、SCRプロセスの高いレベルの活動を維持し、過剰なアンモニアを酸素で酸化する能力を有する。これらのゼオライトは、短期的な硫黄被毒に起因する硫黄酸化物の分子の存在下で、及び/または長期的な硫黄被毒に起因する硫黄沈殿物の存在下で、反応分子NO及びNH
3に対して、生成物分子N
2及びH
2Oからの適切な動作を許容するのに十分な大きさの細孔を有する。好適なサイズの細孔のシステムは、全ての3つの結晶面と相互に連結している。ゼオライトの分野で知られている技術として、ゼオライトの結晶構造は、多かれ少なかれ通常に回復する接続、交差およびその類を有する複合的な細孔構造を示す。このような特定の直径寸法または断面形状等の特定の特性を有する細孔は、それらの細孔が他の同様の細孔と交差しない場合には、一次元である。細孔が、与えられた平面内でのみ交差している場合は、このような特徴を有する細孔は、二次元(結晶)として相互に連結している。細孔が、同じ平面内及び他の平面内に配置される他の同様の細孔と交差する場合、このような細孔は、三次元として相互に連結している。換言すると、三次元的となるということである。1以上の実施の形態によれば、硫黄被毒に対して高い抵抗力を有し、SCRプロセス及び酸素を伴ったアンモニアの酸化の両方に良好な作用を付与し、高温・高水熱状態及び硫黄被毒の条件下にあるときでさえ良好な作用を維持するゼオライトは、細孔の直径が少なくとも略7オングストロームを示す細孔を有し、三次元で相互に連結している。特定の理論に拘束されることなく、三次元における少なくとも7オングストロームの直径の細孔の交差は、ゼオライト構造を通過する硫黄分子の良好な搬送性をもたらす。上述の基準に適合する任意のゼオライトは、本発明の実施に用いるのに好適である。このような基準に適合する特定のゼオライトは、USY、Beta、及びZSM−20である。他のモレキュラシーブは、前述の基準をみたす。
【0039】
パティキュレートフィルタの基板に沈殿する場合、このようなSCR触媒成分は、要求されるNO
X削減を確保すべく、約0.1g/m
3の濃度を超えかつ約3.5g/m
3の濃度を下回って沈殿し、微粒子の除去レベルが達成され、触媒の適切な耐用性を超えた使用が確保される。
【0040】
図1Bに示された排出処理システムの他の実施の形態では、酸化触媒11は、パティキュレートフィルタ12の上流に配置される。
図1Bでは、エンジン15から排出されるガス流は、酸化触媒11に入る前の位置2において、第1のNO
X濃度を含んでいる。第2のNO
X濃度は酸化触媒11とパティキュレートフィルタ12との間の位置4に位置し、第3のNO
X濃度はパティキュレートフィルタ12を通過して下流基板13に入る際の位置6に位置し、最終のNO
X濃度は、下流基板13を通過した後の位置13に位置する。
【0041】
酸化触媒11では、未燃焼ガス及び不揮発性の炭化水素(例えばVOF)及び一酸化炭素は、大部分が燃焼されて二酸化炭素及び水を生成する。特に、酸化触媒に用いられるVOFの実質的な部分の除去は、システムの下流に配置されたパティキュレートフィルタ12に微粒子物質が大量に沈殿すること(例えばクロッギング)を防止する。加えて、NO
X成分のNOの実質的部分は、酸化触媒においてNO
2に酸化される。上流の酸化触媒の触媒作用により増加したNO
XにおけるNO
2の部分は、NO
X成分中のNO
2の少ない部分を含む排気ガス流と比べると、NO
Xの削減を促進する。
【0042】
酸化触媒11は、未燃焼ガス及び不揮発性の炭化水素(例えばVOF)及び一酸化炭素の効率的な燃焼をもたらす任意の成分から形成される。加えて、酸化触媒は、NO
X成分のNOの実質的な部分をNO
2に効率的に変換する。ここで用いられるように、「NO
X成分のNOのNO
2への実質的な変換」の語の意味は、運転サイクルを通して少なくとも約5%、または少なくとも約10%、または少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約60%のNO及びNO
2のN
2への変換を意味する。これらの特性を有する触媒成分は当業者に知られた技術であり、プラチナ族の金属及び卑金属を基とした成分を含む。触媒成分は、耐熱性の金属またはセラミック(例えばコーディアライト)物質により形成されるハニカムフロースルーモノリス基板上に被覆される。一方、酸化触媒は、公知の金属またはセラミックフォーム基板の上に形成される。これらの酸化触媒は、それらが被覆された基板(例えばオープンセルセラミックフォーム)によって、及び/またはそれらが内在する酸化触媒作用によって、ある程度の微粒子除去をもたらす。好ましくは、酸化触媒は、フィルタ上の微粒子の質量が潜在的に強制再生する前に時間を拡張することから、フィルタの上流の排気ガス流から微粒子物質を除去する。
【0043】
排出処理システムで用いられるある好適な酸化触媒成分は、高表面積上で分散するプラチナ族成分(例えば、プラチナ、パラジウムまたはロジウム成分)、ゼオライト成分(好ましくはベータゼオライト)と結合する耐熱性酸化助剤を含む。好適なプラチナ族金属成分はプラチナである。成分が耐熱性酸化基板、例えばフロースルーハニカム基板に沈殿すると、プラチナの濃度は、典型的には約10〜120g/ft
3である。
【0044】
酸化触媒の形成に用いられるプラチナ族金属を基にした成分は、米国特許第5100632号(632特許)に開示されており、本発明に組み込まれている。632特許には、プラチナ、パラジウム、ロジウム及びルテニウム及び、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウムまたはプラチナ族金属とアルカリ土類金属との間の原子の割合が約1:250〜1:1、好適には略1:60〜1:6といったアルカリ土類金属酸化物の混合要素を有する成分が開示されている。
【0045】
酸化触媒に適した触媒成分は、触媒として卑金属を用いることで形成される。例えば、米国特許第5491120号(本発明に組み込まれている)には、少なくとも約10m
2/gのBET表面積を有する触媒物質を含み、かつ1以上のチタニア、ジルコニア、セリア−ジルコニア、シリカ、アルミナ−シリカ、及びアルファ−アルミナによるバルク二元金属酸化物を主要構成とした、酸化触媒成分が開示されている。
【0046】
更に有効な触媒成分が、米国特許第5462907号(907特許、本発明に組み込まれている)で開示されている。907特許は、少なくとも約10m
2/gの表面積をそれぞれ有するセリア及びアルミナを含む触媒物質を有する成分を示唆する。例えば、セリア及び活性化したアルミナの質量比は、約1.5:1〜1:1.5である。任意的に、プラチナは、COや未燃焼の炭化水素の気相酸化を促進することが制限するのに有効な量で、907特許に開示された成分中に含まれていてもよい。しかし、SOからSO
2への過剰な酸化の排除は制限される。一方、任意の要求量のパラジウムが触媒物質に含まれる。
【0047】
図示しない第3実施の形態における排出処理システムでは、酸化触媒11は、成分を含んだ付加的な下流のSCRを何ら含まず、SCRが担持されたパティキュレートフィルタ12の上流に位置している。
【0048】
図2は、本発明の実施の形態におけるパティキュレートフィルタ24の概略を説明する断面斜視図である。パティキュレートフィルタ24は、本発明に係るフィルタアセンブリ22がそれぞれ配置された間に、パーティション17が配置される。この実施の形態では、フィルタアセンブリ22は、2つの被覆層21を備え、これら2つの被覆層21の間に配置された繊維層29を備える。もっとも、これらの層は、境界領域において技術的に結合されていることから、断面図では結合状態は確認できない。本実施の形態のパーティション17は、構造物として形成されることから、フィルタアセンブリ22は実質的にスムーズな表面を有する。この構造物であるパーティション17は、排気ガスが流れ方向25に沿って流れる通路20を構成する。本実施の形態に係るパーティション17は、形成された通路20が排気ガスの到来する流れの特性に対して適合しうるように、異なった高さ28を有して形成されている。
【0049】
図示された実施の形態は、オープンフィルタを実質的に示している。この特性は、少なくとも20%の流れの自由度が存在するということである。本明細書において、「流れの自由度」の語は、任意に要求される断面斜視図において、少なくとも領域の20%、すなわち、領域の少なくとも20%は、迂回表面27の類のように、内部構造が自由化されているという意味である。換言すれば、このタイプのパティキュレートフィルタを端部からみた場合、内部の取付部品が全て同じ位置(例えば、他の取付部品の後ろに取付部品が配置される)にあるように形成された通路の少なくともいくつかを見通すことができる。これは、少なくとも部分的に構造化されたシート状の金属層から形成されたハニカム体を有する典型的なケースである。しかし、流れの自由度、互いに整列されていない内部の取付部品の場合、このタイプのハニカム体の部分を見通すことはできない。パーティション17には、開口部26及びガス流をフィルタアセンブリ22に向けてそらす迂回表面27が形成される。これは、煤煙微粒子及びその類が繊維層29に残存して積層するようにフィルタアセンブリ22に向かって透過させて、排気ガスの部分の流れを生成せしめる圧力差を生成する。
【0050】
図3は、本発明によるフィルタボディの形状を若干変更した図である。この場合もまた、通路42は、パーティション45に関連する構造物によって実質的に生成されている。更に、パーティション45は、通路42の全断面を切り取った迂回表面46を有する。この結果、排気ガスの流れ方向44は、微粒子含有排気ガスがフィルタアセンブリ40を介して導かれるような方法で影響される。この形状は、圧力損が重大でない装置に主に適している。移動物体用排気システムの場合、最近の研究によれば、収縮されているが切り取られていない通路42を具備するオープンフィルタを用いるのが好適である。排気ガスが通過及び/または流通するフィルタアセンブリ40の迂回表面46の数次第では、最終的には、
図2で示されるオープンフィルタボディ12の場合であっても、全体のガス流は実質的に濾過及び浄化される。
【0051】
図4A及び
図4Bで示されるように、フォーム状のフィルタとして用いられるパーシャルフィルタの一つの形態は、金属製、セラミックまたはエンジン排気システムに好適な他の任意の材料である。具体的な実施の形態では、フォーム状のフィルタは金属製のフォーム状のフィルタであって、本発明の一実施の形態による金属製のフォーム状のフィルタは、
図4Bで示す多孔性の壁を形成する金属セルまたは細孔及び支柱を含むオープンまたは網状の基板構造を形成する。金属フォーム状の基板は、
図4Aで示すように、更に不規則な形状の通路を有する多孔性マトリクスとして開示され、排気ガスは、無作為な紆余曲折を経て、フィルタの上流側から下流側に移動する。この乱れた流路や蛇行した流路は、無数の開口部、細孔、溝または同様の構造的特性を有するもので形成され、液体及び/またはガスを、乱流または実質的に非層型でそこに流し、基板を介し
た流体の流路の全体の体積あたりの高表面積を
基板にもたらす。例えば、
特性は、そこに流体用の高
い物質
移動ゾーンを作成する。反対に、プレート、チューブ、フォイル及びその類といった高密度の基板は、基板に穿孔されているか否かに関わりなく、基板を介した流路全体の体積あたりの比較的小さな表面積を有する。そして、実質的に、
そこを通る層
流を妨げることはない。重要なことは、
金属フォームのオープンまたは網状
の基板構造は、高い物質移動
ゾーンを形成するばかりでなく、かかるオープン構造は、背圧を低く抑える。本発明に係る金属フォーム状のフィルタは、金属フォーム状フィルタの概略斜視図を示した
図4A、及び金属フォーム状フィルタの三次元の網状組織の要部拡大図を示した
図4Bを再び参照すれば容易に理解できるように、両方共に本発明の実施の形態を制限するものではない。
図4A及び
図4Bで示すように、金属フォーム状フィルタ56は、ハウジングユニット58内に収容されている。
その図は、空気を導入する流れが曲がりくねった流路となるように構成された、壁部60及び細孔62を形成する金属支柱のオープンな網状組織を示す。
【0052】
これら金属フォーム状構造物は高密度基板よりも高い表面積を有し、かつ流体の流動を許容することから、液状またはガス状の物質をとらえるフィルタ部材に使用することに適している。更に、高表面積は、触媒担体としての金属フォームの効用を改善する活性要素の物質移動の改善をもたらす。フォーム状の金属の製造方法は、米国特許第3111396号に開示されかつ本発明に組み込まれており、公知である。そして、触媒物質を担体としてフォーム状の金属を用いることは、SAE Technical Paper 971032、タイトル「A New Catalyst Support Structure For Automotive Catalytic Converters」に示唆されており、Arums D.Jatkarによって、International Congress and Exposition,Detroit,Michigan,Feb.24−27,1997において発表された。
【0053】
金属フォームは、種々に特徴づけられ、そのうちのいくつかは、金属が沈殿した当初の有機マトリックスの特徴に関連する。フォーム状の金属基板のある特徴は、セルの大きさ、密度、容積の自由度及び特定の表面積に認められる。例えば、表面積は、フォーム状の基板と同じサイズを有する固体の基板の1500倍である。触媒材料の担体として有用なフォーム状の金属基板は、実質的なセルの直径が0.5〜5mmの範囲、及び約80〜98%の自由容積、例えばフォーム状の基板によって占められた容積の3〜15%が金属で構成されている。基板の多孔性は単位インチ(ppi)当たり3〜100ppiであり、例えば、30〜90ppi、または40〜70ppiである。実施の形態における10〜80ppiの範囲では、セルの単位平方インチといった他の特徴は100〜6400の範囲及び繊維のおよその直径は0.01〜0.004インチの間で変化する。このようなフォームは、オープンセルの網状の構造物であり、網状の/相互に連結したウェブ前駆体を基礎とする。これらは、典型的には、孔隙率がフォームの立方フィートあたり約700平方メートル(m
2/ft
3)で約10ppi〜4000m
2/ft
3で約60ppi等で増加する表面積を有する。他の好適な金属フォーム状の基板は、フォーム状金属の立方フィートあたり約200平方メートル(m
2/ft
3)で約10ppi〜約1900ft
2/ft
3で約80ppiの範囲の表面積を有する。これらは、単位立方センチメートル(g/cc)あたり0.1〜1グラムの範囲で容積密度を有する。実施の形態では、0.1〜0.3g/ccも挙げることができる。金属フォーム状の基板は、例えば、鉄、チタニウム、タンタル、タングステン、貴金属や、通常の焼結性金属、例えば銅、ニッケル、青銅等や、アルミニウム、ジルコニウム等、及びチタニウムアルミニウム合金といった結合や合金、鋼、ステンレス鋼、ハステロイ、Ni/Cr、インコネル(Ni/Cr/Fe)、モネル(Ni/Cu)及びFeCr合金(Fe/Cr/Al/Yt)といった種々の金属によって形成される。
【0054】
用いることのできるパーシャルフィルタの他の形態は、被覆された金属メッシュに基づくものである。このように、触媒が沈殿した織メッシュの個々の層は、三次元構造を形成するために積み重ねられる。この、被覆された金属メッシュの積み重ねは、上記した被覆されたフォーム構造物と同様の特性を有する。メッシュ材料は、金属またはセラミックを用いることができ、織って、切断して、広げて、孔を開けて、または、前方領域が約30〜90%開かれたシートを製造する公知の手法によって作り上げることができる。このようなシートは、三次元状に積層化された構造物を形成するために被覆を施す前または施した後に、曲げられ、またはしわを付けられる。しわを付けられ、またはしわを付けられていない積層されたシートは、三次元構造の流下特性を高めるために用いられる。
【0055】
本発明に用いられる多孔性フィルタは、上記要素を有する壁部が1以上の触媒材料を壁部上に保持し、または壁部に含有されることによって、触媒作用を奏する。触媒材料は、フィルタエレメントの表面上またはフィルタの迂回要素の表面上に存在し、フィルタエレメントの表面上に埋め込まれ、またはフィルタそれ自体の全体または一部が触媒材料で構成される。本発明は、触媒材料の1以上の層の使用及びフィルタエレメント上に存在する触媒材料の1以上の層の結合、表面に埋め込まれまたはフィルタエレメントの一部または全部に組み込まれた触媒材料を含む。
【0056】
SCR触媒成分を備えたパーシャルフィルタ基板を被覆するためには、基板は、基板の頂部がスラリーの表面の直上に位置されるように、触媒スラリーのポーション中に垂直に浸される。サンプルは、約30秒間、スラリーに浸される。スラリーから基板が取り出され、最初に一部から水気が切られ、次に(スラリーの浸透方向と反対方向から)圧縮空気が吹き付けられ、余剰のスラリーが基板から取り除かれる。この技術を用いることによって、触媒スラリーは基板に浸透し、フィルタの内表面全体を被覆する。一方、過度の背圧が完成した基板に蓄積されるまでは、フィルタのガス流溝を接続しない。
【0057】
被覆された基板は、一般的には、約100℃で乾燥され、高温(例えば300℃〜450℃)で焼成される。焼成の後、被覆及び未被覆の基板の質量の測定を通して、触媒担持量が決定される。当業者に明らかな技術として、触媒担持量は、コーティングスラリーの固体含有量を変えることによって改変することができる。一方、コーティングスラリー中の基板の繰り返しの浸漬が実行され、上記したように、余剰のスラリーの除去が実行される。
【0058】
(実施例)
(比較例1)ウォールフローフィルタ上のSCR被覆
SCR触媒は、孔隙率が65%で、直径1で長さ3のコーディアライトフィルタコアに担持される。このように、Feベータといったベータ構造を有するアルミノシリケートゼオライトに変換した金属、触媒粉が、粒子の90%が10ミクロン以下(例えばD90<10μm)の直径となるように、水と混合及び粉砕される。結果物としてのスラリーは、20質量%の固体に希釈される。フィルタコアは、スラリーでフィルタコアが完全に浸透されるまで、スラリー中に浸され、圧縮空気が吹き付けられてスラリーが壁部から除去される。壁部及び溝から全ての余剰のスラリーが除去された後、その部分は、30分間、120℃の流動空気で乾燥される。乾燥されたサンプルは、1時間、450℃の静止大気で焼成される。その部分に担持された結果物としての触媒は、0.76g/in
3である。圧力損失測定は、スーパーフロー(登録商標)のフローベンチを用いて、被覆に優先しかつ被覆後にも実行される。流量は、被覆に優先して及び被覆後に再び、水の4、6、8、10、12及び15インチにおいて測定される。流量の減少は記録及び平均化され、1.0%の被覆を備えた単一の背圧増加をもたらす。被覆後、サンプルは、10%の蒸気を含んだ空気の流動下で、5時間に亘って750℃で熟成される。被覆されたサンプルのSCR性能は、500ppmのNO、500ppmのNH
3、5%のH
2O、10%のO
2、及び残余のN
2を含むガス供給を備えた石英ライニング反応器を用いて測定される。サンプルを流通する全フローガスは22.5Lであり、その結果は、単位時間あたりおよそ37000hr
-1のガス空間速度である。サンプルであるSCR触媒作用は、15分間、200℃で安定化された状態で試験され、下流のNO、NO
2、N
2O及びNH
3ガスの濃度がFTIRで測定される。ガス濃度は、同じ方法によって250、300、350及び450℃において測定される。サンプルの“NO
X”変換率は、それぞれの測定温度においてNOの濃度が何%削減されたかが記録されることで求められる。その結果を下記の表1に示す。
【0059】
[表1]65%の孔隙率を有するコーディアライトフィルタ上のSCRのNO
X変換
【0061】
(実施例2)パーシャルフィルタコアを基にした金属フォーム上のSCRの触媒被覆
実施例1の方法を用いて、95%の孔隙率を有する金属フォームディスクであって、直径1に対する厚み1、30.5%の固形スラリーを用いたFeベータのSCR触媒を担持させることで、一連のサンプルが形成された。このように、単位インチあたり40〜50孔(ppi)の孔密度の95%の孔隙率を有するFeCr合金の金属フォームは、触媒で被覆され、0.7〜0.9g/in
3の触媒担持量に達するように乾燥及び焼成される。
背圧の増加及びSCR触媒の性能は、1つのX3セットを形成するために直列に配置された3つの直径1、厚み1のサンプルのために測定された。セットのSCRの作用は、実施例1と同じ手法である。作用の結果は、下記の表2で示される。3つのサンプルの被覆されたセット
の背圧増加
が、
それぞれのピースについて測定され、
平均化されて被覆上で約11%の背圧増加が得られた。
【0062】
[表2]50ppiで95%の孔隙率を有する金属フォーム状フィルタ上でのSCRのNO
X変換
【0064】
上記実施例2のパーシャルフィルタサンプルの上のSCRの低い変換率にも関わらず、上記
の概要
のように、付加的な利点を有する
システムに基づくパーシャルフィル
タに、適切な変換をもたらす。すなわち、適切な変換及び微粒子変換を達成しうる限り、熱的負荷及び再生
行事の頻度の削減
は、システム
への灰粉塵の蓄積の削減
と同じく有利である。
【0065】
本明細書を通して、“一の実施の形態”、“ある実施の形態”、“1以上の実施の形態”または“実施の形態”は、実施の形態に含まれる本発明の少なくとも一つの実施の形態に関連した特定の特徴、構造、物質、または特性を開示していることを意味する。このように、本明細書の随所で見られる“1以上の実施の形態では”、“ある実施の形態では”、“1の実施の形態では”または“実施の形態では”といった文言上の表現は、本発明の同じ実施の形態に言及しているものではない。更に、1以上の実施の形態では、特定の特徴、構造、材料または特性が任意の好適な手段によって結合されている。上記した方法に限定されることなく、この方法は、上記した順序で実行するものに限らず、省略または付加をしてもよい。
【0066】
上記記載は、実施の形態を記載したものであり、これに限定されるものではない。上記記載を鑑みると、多くの他の実施の形態は当業者にとって公知なものである。従って、本発明の範囲は、添付した特許請求の範囲、このような特許請求の範囲に記載された発明と均等な範囲に基づいて定められる。