(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パネルの上面部は、室外側から室内側に向かって立ち上がり状に延びる第1縦長弧状面と、前記第1縦長弧状面の上端から当該パネルの室内側面部まで延びる第1上面と、を備え、
前記パネルの下面部は、室外側から室内側に向かって立ち上がり状に延びる第2縦長弧状面と、前記第2縦長弧状面の上端から当該パネルの室内側面部まで延びる第2上面と、を備え、
前記第1縦長弧状面は前記室外側要素の上端面及び前記室内側要素の上端面から形成され、前記第1上面は、前記室内側要素の上端面から形成されており、
前記第2縦長弧状面は前記室外側要素の下端面及び前記室内側要素の下端面から形成され、前記第2上面は、前記室内側要素の下端面から形成されている、
請求項1に記載の木製パネル。
【背景技術】
【0002】
木製のパネルを用いたオーバーヘッドドアは知られており、例えば特許文献1に記載されている。オーバーヘッドドアの開閉時には、上下隣位のパネル間に隙間が生じるため、上側のパネル下端に断面が略円弧状の凹状部を形成し、下側のパネル上端に断面が略円弧状の凸状部を形成し、凹状部と凸状部の隙間に指が入り込まないような寸法とすることで、指挟み防止を図っている。
【0003】
しかしながら、木製パネルは、木製であるが故に、開閉時の変形(撓み、反り等)や経年変形(日光の照射や乾燥等による反り等)が生じて、開閉毎に上側のパネルの下端と下側のパネルの上端とが擦れてしまう可能性がある。
【0004】
上下のパネルの擦れは以下のような不具合を生じさせる。
(ア)開閉時にパネルが擦れることで操作性が悪くなり、オーバーヘッドドアが過負荷検知手段を備えている場合には、擦れた時に過負荷検知が行われて開閉中の扉体が停止してしまうおそれがある。
(イ)開閉時に異音が発生する。
(ウ)変形したパネルを介して当該パネルを回動可能に連結する丁番に負担がかかり、設計耐用回数に至る前に、丁番の構成部品の破損やねじの緩みが発生するおそれがある。
【0005】
木製パネルを外表面材と枠組立体から構成することは特許文献1にも記載されているが、この種の木製パネルの反りには、パネルの高さ方向の中央部位が膨出するように変形する反りがある(
図11(B)参照)。本明細書では、このような反りを縦方向の反りと呼ぶ。この縦方向の反りの度合いが大きくなると、扉体の開閉に支障を来すことになる。
【特許文献1】特開2009−293302
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、縦方向の反りが抑制された木製パネルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が採用した技術手段は高さ方向に複数枚を回動可能に連結することで扉体を形成する木製パネルにおいて、
前記パネルは、板状の室外側要素と、枠状の室内側要素と、を備えており、
前記室外側要素は、複数枚の板状体を高さ方向に連設して形成されており、
上側の板状体と下側の板状体の連設部は、互いに嵌り合う形状に形成された上側の板状体の下端と下側の板状体の上端を嵌め合わせてなり、
前記パネルの高さ方向の中央部位付近には、1つの連設部が位置している、
木製パネル、である。
1つの態様では、前記室外側要素と前記室内側要素は同じ板厚を有している。
1つの態様では、各板状体はほぼ同じ高さを有している。
【0008】
1つの態様では、前記パネルの上面部は、室外側から室内側に向かって立ち上がり状に延びる第1縦長弧状面と、前記第1縦長弧状面の上端から当該パネルの室内側面部まで延びる第1上面と、を備え、
前記パネルの下面部は、室外側から室内側に向かって立ち上がり状に延びる第2縦長弧状面と、前記第2縦長弧状面の上端から当該パネルの室内側面部まで延びる第2上面と、を備え、
前記第1縦長弧状面は前記室外側要素の上端面及び前記室内側要素の上端面から形成され、前記第1上面は、前記室内側要素の上端面から形成されており、
前記第2縦長弧状面は前記室外側要素の下端面及び前記室内側要素の下端面から形成され、前記第2上面は、前記室内側要素の下端面から形成されている。
【0009】
1つの態様では、前記パネルは上下に回動支点を備え、
前記上下の回動支点は、前記パネルの前記室内側面部の外側に当該室内側面部から離間して位置しており、
上側の回動支点は、前記パネルの前記上面部の前記室内側面部の外側に位置しており、
下側の回動支点を通る水平面上に前記パネルの第2縦長弧状面の下端が位置している。
【0010】
1つの態様では、前記第1縦長弧状面、前記第2縦長弧状面は、側面視において、水平方向の長軸、垂直方向の短軸を備えた楕円弧の部分である。
【0011】
1つの態様では、前記楕円の中心に、前記パネルの上下の回動支点が位置している。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、室外側要素を複数枚の板状体を高さ方向に連設して形成すると共に、前記パネルの高さ方向の中央部位付近に1つの連設部を位置させることで、パネルの高さ方向中央部位がパネル厚方向に膨出する縦方向の反りが可及的に規制される。
また、上側の板状体と下側の板状体の連設部は、互いに嵌り合う形状に形成された上側の板状体の下端と下側の板状体の上端を嵌め合わせてなるので、隣接する板状体の上端と下端がパネル厚方向に当接する部分を備えることになり、各板状体のパネル厚方向の変形が抑制される。
【0013】
請求項2〜5に記載の態様は、パネル回動時(扉体開閉時)のパネル同士の接触や擦れを防止するのに有効であり、より具体的な効果については本明細書の記載から明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は全閉姿勢にあるオーバーヘッドドアの側面図、
図2は全閉姿勢にあるオーバーヘッドドアを室内側から見た正面図であり、オーバーヘッドドアは、建物開口部の左右に立設したガイドレール1と、複数枚の木製のパネル2を、丁番3を介して上下方向に互いに回動可能に連結して構成された扉体と、を備えている。各パネル2の幅方向の両端部にはガイドローラ4が設けてあり、ガイドローラ4がガイドレール1内を転動することで、扉体の幅方向左右両端部がガイドレール1に沿って昇降案内されて開口部を開閉する。
【0016】
ガイドレール1の上方部位は後方に向かって湾曲し、さらに天井面に沿って略水平状に延びており、ガイドレール1は開口部の高さ方向に延びる第1部位1Aと、湾曲状の第2部位1Bと、水平状の第3部位1Cとからなる。開口部全閉状態では各パネル2(最上位のパネル2を除く)はガイドレール1の第1部位1Aに位置することで複数枚のパネル2が垂直姿勢となって開口部を閉鎖している。開口部全閉状態から、各パネル2が垂直姿勢から第3部位1Cに位置する水平姿勢まで引き上げられ(最下位のパネル2は湾曲部位1Bに位置する)、扉体が室内側空間の天井に沿って横方向に延びた姿勢となって、開口部全開状態となる。本実施形態では、最上位パネル2を案内する第2レール1´(前方側がガイドレール1の第2部位1Bの上方に位置しており、後方に向かって第3部位1Cの直上に位置して延びている)が設けてある。
図1において、開口部全開状態における最上位パネル(2´で示す)の位置を示している。
【0017】
電動駆動機構は、開閉機5と、トロリーレール50と、連結アーム51と、を備え、連結アーム51の上端はトロリーレール50上を移動可能となっており、連結アーム51の移動によって最上位パネル2が移動する。開閉機5により最上位パネル2を第2レール1´に沿って移動させることによって、扉体は電動で昇降駆動される。開口部の上方には、バランススプリング60を備えた回転軸6が配設されており、回転軸6の両端部に軸支したドラム61に一端をそれぞれ固定した巻き取りワイヤの他端を、最下位のパネル2の左右両端にそれぞれ接続して、バランススプリング60の巻き上げ方向の付勢力により全閉姿勢にある扉体を開放方向(上方)に付勢するように構成されている。なお、上述のオーバーヘッドドアの構成は一例に過ぎないものであり、本発明の内容を限定するものではない。
【0018】
扉体を構成するパネル2は、最上位のパネル2と、最下位のパネル2と、最上位パネル2と最下位パネル2の間に位置する中間パネル2と、からなる。
図7に示すように、中間パネル2は、開口幅に亘って延びる正面視横長方形状であり、
図9に示すように、凸状の上面部20と、凹状の下面部21と、垂直姿勢において室外側に面する室外側面部(室外側見付面)22と、垂直姿勢において室内側に面する室内側面部(室内側見付面)23と、左右の側面部24(
図7参照)と、を備えている。上下に隣位のパネル2は、下側のパネル2の室内側面部23の上端部と、上側のパネル2の室内側面部23の下端部とが丁番3によって連結されており、パネル2同士は互いに回動可能に連結されている。なお、上面部20、下面部21は、垂直姿勢にあるパネル2の基準とする名称であり、パネル2が水平姿勢となった時には、上面部20、下面部21は、それぞれ、パネル2の室内側寄り、室外側寄りに位置することになる。
【0019】
図3、
図4(B)、(C)に示すように、最上位のパネル2、最下位のパネル2は、中間に位置する複数のパネル2と少し異なる構成を備えている。具体的には、最上位パネル2の上面部20´は水平面となっており、最下位パネル2の下面部21´は水平面となっており、開口部全閉時に床面に接地するフィン25が装着されている。
【0020】
最上位パネル2と最下位パネル2の間に位置する中間パネル2は全て同じ形状を有している。なお、最上位のパネル2の直ぐ下に位置する上から2番目のパネル2の室内側面部23の上方部位を緩やかな傾斜面230に形成してもよい(
図14参照)。傾斜面230の上端は上面201の室内側端部に位置しており、傾斜面230の下端の高さ位置は、回動支点Pを通る水平線とほぼ一致している。
【0021】
パネル2の幅方向両端にはガイドレール1内を転動するガイドローラ4が回転自在に設けてある。ガイドローラ4は、パネル2の室内側面部23の幅方向両端部に設けたローラブラケット40(中間パネル)、トップローラブラケット40´(最上位パネル)、ボトムローラブラケット40´´(最下位パネル)を介してパネル2の室内側面部23から持ち出し状に支持されている。図示の態様では、第1部位1Aは、垂直方向に対して後方側に僅かに傾斜状に配置されており、第3部位1Cは、水平方向に対して後方側に向かって僅かに上向き傾斜状に延びている。各パネル(中間パネル)2のガイドローラ4の取付位置(パネル2の厚さ方向における)がローラブラケット40に対して調整可能となっており、第1部位1Aが緩やかに傾斜するものでありながら、開口部全閉時には、パネル2は垂直姿勢を維持しており、パネル2の室外側面部22から扉体の垂直状の室外側見付面が形成される。
【0022】
図12に示すように、中間パネル2の上面部20は、室外側から室内側に向かって立ち上がり状に延びる縦長弧状面200と、縦長弧状面200の上端から室内側面部23に達するまで水平に延びる上面201と、縦長弧状面200の下端から室外側面部22に向かって下向き傾斜状に延びる第1傾斜面202と、第1傾斜面202の下端から下方に垂直状に延びる垂直面203と、垂直面203の下端から室外側面部22に向かって水平状に延びる下面204と、下面204の先端から室外側面部22に向かって下向き傾斜状に延びる第2傾斜面205と、からなる。第2傾斜面205の下端からパネル2の室外側面部22から垂直状に延びている。縦長円弧面200はその下端と上端を結ぶ直線に対して外側(室外側)に膨らんでいる。
【0023】
図13に示すように、パネル2の下面部21は、室外側から室内側に向かって立ち上がり状に延びる縦長弧状面210と、縦長弧状面210の上端から室内側面部23に達するまで水平に延びる上面211と、縦長弧状面210の下端から室外側面部22に向かって下向き傾斜状に延びる第1傾斜面212と、第1傾斜面212の下端から室外側面部22に向かって水平状に延びる下面213と、下面213の先端から室外側面部22に向かって上向き傾斜状に延びる第2傾斜面214と、からなる。第2傾斜面214の上端からパネル2の室外側面部22が垂直状に延びている。縦長円弧面210はその下端と上端を結ぶ直線に対して内側(室外側)に膨らんでいる。
【0024】
図12、
図13に示すように、全閉姿勢にある扉体の上下に隣接する2枚のパネル2において、上側のパネル2の下面部21の上面211は下側のパネル2の上面部20の上面201に載るようになっており、上面211と上面201は面同士で当接している。このように全閉姿勢において面同士で当接させることで、木製のパネル2の変形や傷みを可及的に防止している。また、
図12、
図13に示すように、上面211の幅寸法(パネル厚方向)は、上面201の幅寸法(パネル厚方向)よりも大きい寸法となっている。
【0025】
図12〜
図14に示すように、上側のパネル2の下面部21の上面211が下側のパネル2の上面部20の上面201に当接した状態で、上側のパネル2の下面部21の縦長弧状面210と下側のパネル2の上面部20の縦長弧状面200は略平行状に離間しており、縦長弧状面200、縦長弧状面210間に、側面視において弧状ないし弓形の弧状空間S1が形成されている。弧状空間S1は、パネル2の長さ方向に亘って形成されており、断面視における溝幅は縦長弧状面200、210の湾曲方向(周方向)に亘って略同じ寸法となっている。すなわち、回動支点Pから延びる直線上において、縦長弧状面200の曲率と縦長弧状面210の曲率が同じとなっている。なお、後述するように、本実施形態では、縦長弧状面200、210は側面視において楕円弧の部分からなり、縦長弧状面200、210の曲率は、それぞれ周方向(湾曲方向)において異なっている。
【0026】
下側のパネル2の上面部20の縦長弧状面200の下端は、上側のパネル2の下面部21の下面213よりも下方に延びており、下側のパネル2の上面部20の垂直面203と同じ鉛直面状に上側のパネル2の下面部21の縦長弧状面210の下端が位置している。
【0027】
弧状空間S1の溝幅、及び、上側のパネル2の下面部21の縦長弧状面210の下端と下側のパネル2の上面部20の第1傾斜面202との隙間は、人の指が挟み込まれないような小さい寸法となっている。下側のパネル2に対して上側のパネル2が回動する時には、下側のパネル2の上面部20の縦長弧状面200に対して、上側のパネル2の下面部21の縦長弧状面210が一定の溝幅(人の指が挟み込まれることがない程度の小さな隙間)を維持しながら移動する。
【0028】
上側のパネル2の下面部21の下面213と、下側のパネル2の上面部20の下面204は高さ方向に離間対向しており、扉体の室外側面部に凹状空間S2を形成している。凹状空間S2の高さ寸法(すなわち、下面213と下面204間の距離)は、人の指よりも十分に大きい寸法を備えており、下面213と下面204との間に指が挟まれることを防止している。
【0029】
図6〜
図10に示すように、パネル2は、板状の室外側要素7と、枠状の室内側要素8と、からなる。室外側要素7は、横長長方形状のパネル表面材である。図示の態様では、室外側要素7は、4枚の木製の第1板状体70、第2板状体71、第3板状体71、第4板状体72を高さ方向に連設して形成されている。室内側要素8は、木製の上框80、下框81、左右の縦框82、中框83から横長長方形状の枠体に組み立てられている。室外側要素7の室内側面部(701、711、721)と室内側要素8の室外側面部(800、810、820、830)を接合して一体化することでパネル2が形成されている。図示の態様では、室外側要素7(第1板状体70、第2板状体71、第3板状体71、第4板状体72)の厚さと室内側要素8(上框80、下框81、左右の縦框82、中框83)の厚さは同じであるが、これに限定されるものではなく、室外側要素7、室内側要素8のいずれか一方の厚さを他方の厚さよりも大きくしてもよい。
【0030】
第1板状体70、第2板状体71、第3板状体71、第4板状体72は、パネル2と同じ横幅寸法(開口幅方向の寸法)を備えると共に、パネル2の高さ寸法に対して小さい高さ寸法を備えている。第1板状体70、第2板状体71、第3板状体71、第4板状体72は、ほぼ同じ高さ寸法を備えており、図示の態様では、第1板状体70、第2板状体71、第3板状体71、第4板状体72は、それぞれパネル2の高さ寸法のほぼ1/4の高さ寸法を備えている。第1板状体70、第2板状体71、第3板状体71、第4板状体72は、同じ板厚を備えており、図示の態様では、パネル2の板厚の1/2の板厚を備えている。
【0031】
図10(A)に示すように、上側の第1板状体70は、第1面部700、第2面部701を備えており、板状体70の上端部は、パネル2の上面部20の部分、具体的には、縦長弧状部200の部分200A、第1傾斜面202、垂直面203、下面204、第2傾斜面205、を形成している。板状体70の下端部には下向の凹部730を備えた嵌合受部73が形成されている。
【0032】
図10(B)に示すように、中間の第2、第3板状体71は、第1面部710、第2面部711を備えており、上端部には、上向きの凸部740を備えた嵌合部74が形成され、下端部には、下向の凹部730を備えた嵌合受部73が形成されている。
【0033】
図10(C)に示すように、下側の第4板状体72は、第1面部720、第2面部721を備えており、上端部には、上向きの凸部740を備えた嵌合部74が形成されている。板状体72の下端部は、パネル2の下面部21の部分、具体的には、縦長弧状面210の部分210A、第1傾斜面212、下面213、第2傾斜面214、を形成している。
【0034】
第1板状体70の下端の嵌合受部73に、第2板状体71の上端の嵌合部74を嵌合し、第2板状体71の下端の嵌合受部73に、第3板状体71の上端の嵌合部74を嵌合し、第3板状体71の下端の嵌合受部73に、第4板状体72の上端の嵌合部74を嵌合することで、室外側要素7が形成される。凹部730と凸部740が嵌合した状態では、凹部730の底面7300、室外側側面7301、室内側側面7302に、凸部740の上面7400、室外側側面7401、室内側側面7402がそれぞれ当接している。特に、室外側側面7301と7401、室内側側面7302と7402が当接することで、第1板状体70、第2板状体71、第3板状体71、第4板状体72の反り(
図11(A)参照)を抑制する作用効果がある。図示の態様では、各板状体の上端と下端の間に隙間が形成されているが、これは、木製の板状体の膨張や乾燥等を許容するための遊び・逃げを目的としたものである。
【0035】
第1板状体70、第2板状体71、第3板状体71、第4板状体72の第1面部700、710、710、720から室外側要素7の室外側面部、すなわち、パネル2の室外側面部22が形成される。第1板状体70、第2板状体71、第3板状体71、第4板状体72の第2面部701、711、711、721から室外側要素7の室内側面部が形成される。
【0036】
図10(A)〜(D)に示す態様では、第1板状体70、第2板状体71、第3板状体71の下端に嵌合受部73(凹部730)、第2板状体71、第3板状体71、第4板状体72上端に嵌合部74(凸部740)が形成されているが、凹部と凸部を逆に形成することで(すなわち、上側の板状体の下端に下向き凸部、下側の板状体の上端に上向き凹部を形成する)、上側の板状体の下端と下側の板状体の上端を嵌合させてもよい。
【0037】
図10(A)〜(D)に示す態様では、板状体の厚さ方向の中間部位に凹部730、凸部740を形成しているが、凹部、凸部を板状体の室外側あるいは室内側に偏倚して設けてもよい。
図10(E)は、凹部、凸部を板状体の室内側に偏倚させた形状を示し、結果として、上側の板状体の下端は、室外側水平面750の高さが下方、室内側水平面751の高さが上方に位置し、室外側水平面750と、室内側水平面751と、室外側水平面750と室内側水平面751とを接続する垂直面752と、から段状に形成され、下側の板状体の上端は、室外側水平面760の高さが下方、室内側水平面761の高さが上方に位置し、室外側水平面760と、室内側水平面761と、室外側水平面760と室内側水平面761とを接続する垂直面762と、から段状に形成され、上側の板状体の段状の下端と下側の板状体の段状の上端が互いに嵌り合う形状となっている。上側の板状体の下端の垂直面752と下側の板状体の上端の垂直面762が対向近接しており、
図10(A)〜(D)に示す態様と同様に、各板状体の反りを抑制する作用効果を奏する。本明細書において、「嵌合」には、
図10(E)のような態様を含むものとする。
【0038】
図7に示すように、室内側要素8は、パネル2の全幅に亘って水平状に延びる上框80、パネル2の全幅に亘って水平状に延びる下框81を備えており、上框80と下框81は高さ方向に離間している。上框80と下框81の長さ方向両端部には、上框80の下面と下框81の上面との間に位置して左右の縦框82が設けてある。左右の縦框82の間に位置して、上框80の下面と下框81の上面との間に位置して複数本の中框83が上框80、下框81の長さ方向に間隔を存して設けてある。上框80、下框81、縦框82、中框83は同じ板厚を有しており、縦框82および中框83の上面は上框80の下面に接続されており、縦框82および中框83の下面は下框81の上面に接続されている。
【0039】
上框80、下框81、縦框82、中框83は、第1面部800、810、820、830と、第2面部801、811、821、831と、を備えており、第1面部800、810、820、830が、室内側要素8の室外側面部を形成し、当該室外側面部が室外側要素7の室内側面部(701、711、721)に面同士で接合されている。第2面部801、811、821、831から室内側要素8の室内側面部、すなわち、パネル2の室内側面部23が形成される。
【0040】
図9に示すように、上框80の上端部は、パネル2の上面部20の部分、具体的には、縦長弧状部200の部分200B、上面201、を形成している。下框81の下端部は、パネル2の下面部21の部分、具体的には、縦長弧状部210の部分210B、上面211、を形成している。
【0041】
図9に示すように、室外側要素7と室内側要素8を接合して形成されたパネル2において、室外側要素7の縦長弧状部200の部分200Aと室内側要素8の縦長弧状部200の部分200Bから上側の縦長弧状部200が形成され、室外側要素7の縦長弧状部210の部分210Aと室内側要素8の縦長弧状部210の部分210Bから下側の縦長弧状部210が形成される。室外側要素7と室内側要素8を接合して形成されたパネル2において、パネル2の上面部20、下面部21が、室外側要素7の上端、下端、室内側要素8の上端、下端にどのように分配されるかについては、室外側要素7、室内側要素8の厚さ等に依存するものであり、室外側要素7の上端、下端、室内側要素8の上端、下端の構成は、図示の態様に限定されるものではない。
【0042】
図11(A)に示すように、第2板状体71と第3板状体71との嵌合部位77は、パネル2の全高のほぼ中央に位置している。室外側要素7´を1枚の板体から形成した場合には、パネル2が
図11(B)に示すように室内外方向(パネル厚方向)に反ってしまう場合があった。本実施形態では、第1板状体70、第2板状体71、第3板状体71、第4板状体72の嵌合部位77において、凹部730の室外側側面7301と凸部740の室外側側面7401、凹部730の室内側側面7302と凸部740の室内側側面7402が当接することで、個々の第1板状体70、第2板状体71、第3板状体71、第4板状体72の反り(
図11(A)参照)を抑制すると共に、複数の嵌合部位77の1つをパネル2の全高のほぼ中央に位置して設けたことで、パネル2の高さ方向中央部位が室内外方向(パネル厚方向)に膨出することが規制され、仮に個々の第1板状体70、第2板状体71、第3板状体71、第4板状体72が多少反ったとしても、パネル2全体で見た時の室内外方向(パネル厚方向)の反りの量を抑えることができる。本実施形態では、4枚の略同じ高さ寸法を備えた第1板状体70、第2板状体71、第3板状体71、第4板状体72から室外側要素7を構成したが、板状体の枚数や板状体の互いの相対的な高さ寸法は本実施形態に限定されるものではない。
【0043】
室内側要素8の組み立て、室外側要素7と室内側要素8の接合は、木製部材の組み立てにおける公知の手段(ビスケットや接着剤)を用いればよい。1つの態様において、中間パネル2の製造工程では、パネル2の上面部20、下面部21の輪郭形状は、室外側要素7と室内側要素8を接合した後に切削形成される。具体的には、室外側要素7を形成する第1板状体70、第4板状体72、室内側要素8を形成する上框80、下框81は、それぞれ断面視縦長長方形状の木部材として用意され、室外側要素7と室内側要素8を接合した後(この状態では、パネル2は縦長方形状の断面形状を有している)に上端部位、下端部位が所定形状にカットされる。なお、パネル2の製造工程はこの態様に限定されるものではない。
【0044】
図2〜
図4に示すように、上下隣位のパネル2の縦框82同士、中框83同士が丁番3で連結されている。丁番3は、水平状の回転軸30を介して互いに回動自在な上側プレート31と下側プレート32と、からなり、上側プレート31が上側に位置するパネル2の縦框82、中框83の第2面部(室内側面部)821、831の下端部位に螺子で取り付けられ、下側プレート32が下側に位置するパネル2の縦框82、中框83の第2面部(室内側面部)821、831の上端部位に螺子で取り付けられる。
【0045】
図6に示すように、丁番3の回転軸30は、パネル2の室内側面部23に対して外側(特許文献1のようにパネル2の厚さ内では無く、室内側面部23に対して室内側)に位置しており、パネル2の回動支点(回転中心)Pは、パネル2の室内側面部23に対して外側(室内側)に位置しており、室内側面部23から室内側に離間している(
図12〜
図14参照)。図示の態様では、丁番3は、回転軸30(回動支点P)を通る水平線が、垂直姿勢にある上下隣位のパネル2の上側のパネル2の下面部21の下面213とほぼ一致するように、パネル2に取り付けられている。
【0046】
図12に示すように、縦長弧状面200は、側面視ないし断面視において、弧の下端a1を通る水平線と弧の上端b1を通る垂直線との仮想交点をx1とした時に、b1−x1間の距離が、a1−x1間の距離よりも大きくなっており、このような弧状面を縦長弧状面と呼ぶ。同様に、
図13に示すように、縦長弧状面210は、側面視ないし断面視において、弧の下端a2を通る水平線と弧の上端b2を通る垂直線との仮想交点をx2とした時に、b2−x2間の距離が、a2−x2間の距離よりも大きくなっている。
【0047】
上側のパネル2の下面部21の縦長弧状面210の上端から室内側面部23まで上面211が水平に延びており、下側のパネル2の上面部20の縦長弧状面200の上端から室内側面部23まで上面201が水平に延びており、下側のパネル2の縦長弧状面200の下端を通る水平線上で、室内側面部23の外側に位置させて回動支点Pが設定されている。垂直姿勢にある上側のパネル2と下側のパネル2から、回動支点Pを中心に上側パネル2が下側パネル2に対して回動する時に、上側のパネル2の下面部21の縦長弧状面の上端b2は、当接している上面201、211を通る水平面から上方に離間するように移動し、同時に上面211が上面201から上方に離間する。
【0048】
図15に示すように、縦長弧状面200は、側面視において、回動支点Pを中心とし、水平方向に延びる長軸(径R1)、垂直方向に延びる短軸(径R2<径R1)を備えた楕円弧の部分を形成している。図示の態様では、楕円弧の部分は、水平状の長軸と楕円周の交点から水平状の短軸に対して上方に約60度の角度で延びる径と楕円周の交点までの部分である。縦長弧状面210も同様の形状を備えており、側面視において、回動支点Pを中心にとり、水平方向に延びる長軸(半径R1+α)、垂直方向に延びる短軸(径R2+α<径R1+α)を備えた楕円弧の部分を形成している。寸法αは弧状空間S1の溝幅を決定する要素である。1つの態様では、R1=30.5mm、R2=30mm、α=2.5mmであり、回動支点Pとパネル2の室内側面部23との距離は6.5mmである。
【0049】
縦長弧状面200、縦長弧状面210が回動支点Pを中心とし、水平方向に延びる長軸、垂直方向に延びる短軸を備えた楕円弧の部分を形成しているので、上側のパネル2の下面部21の縦長弧状面210の弧面の移動軌跡が、回動支点Pを通る水平線において、回動支点Pと縦長弧状面210の下端との距離を径R1+αとする仮想円弧面の内側(仮想円の中心に向かう側)を通るようになっており、上側のパネル2の回動時には、縦長弧状面210と縦長弧状面200の間の隙間がほぼ一定に維持され、室内側に生じる縦長弧状面210の弧面と下側のパネル2の上面部20の上面201との間の距離をなるべく小さくしている。
【0050】
図14に、本実施形態に係る上側のパネル2が下側のパネル2に対して回動する時の下側のパネル2の上面部20に対する上側のパネル2の下面部21の移動軌跡を示す。上下に隣位のパネル2は、垂直姿勢にある時には、下側のパネル2の上面部20の上面201に上側のパネル2の下面部21の上面211が当接した状態にあり、下側のパネル2に対する上側のパネル2の回動時には、下側のパネル2の上面部20の縦長弧状面200に対して、上側のパネル2の下面部21の縦長弧状面210が弧状空間S1の溝幅(縦長弧状面200、210間のクリアランス)を維持しながら弧状面の周方向に移動する。同様に、扉体がほぼ水平状の収納姿勢にある時に、室外側寄りのパネル2と室内側寄りのパネル2において、室外側寄りのパネル2が室内側寄りのパネル2に対して下方に回動する時には、室内側寄りのパネル2の下面部21の縦長弧状面210に対して、室外側寄りのパネル2の上面部20の縦長弧状面200が弧状空間S1の溝幅(縦長弧状面200、210間のクリアランス)を維持しながら弧状面の周方向に移動する。
【0051】
弧状空間S1の溝幅(クリアランス)は、パネル2の回動時に、室外側から人の指が挟み込まれることがない程度の小さな寸法に維持されている一方、本実施形態では、全閉状態に形成される弧状空間S1の溝幅は、指が挟み込まれることを防止するような寸法を備えつつも、
図16に示す従来構成のクリアランスよりも大きい寸法となっている。
【0052】
このように、全閉状態における縦長弧状面200、210間のクリアランスを大きくすることで、パネル2が変形(撓み、反り等)した場合であっても、開口部全閉時(扉体開閉時においても)における上側のパネル2の下面部21と下側のパネル2の上面部20との不要な接触や擦れが防止され、この接触や擦れに起因する不具合(操作性の悪化、開閉時の異音発生、丁番への過度の負荷)が防止される。また、全閉状態で形成される弧状空間S1の所定の溝幅を確保することで、開口部全閉時における上側のパネル2の下面部21と下側のパネル2の上面部20の間に形成される隙間の圧力を外気と同程度に維持することができ、風圧力を伴った降雨時であっても、毛細管現象による室内側への雨水の浸入が防止される。
【0053】
垂直姿勢から下側のパネル2に対して上側のパネル2が回動する時に、回動支点Pを室内側面部23に対して外側(パネル厚の外側)に位置させたので、回動支点がパネル厚さ内に位置する場合に比べて、大きな径で弧を描くように回動し、特に上側のパネル2の下面部21の上面211が、回動を開始した瞬間に、下側のパネル2の上面部20の上面201から逃げるように持ち上がって離間していく。同様に、扉体がほぼ水平状の収納姿勢にある時に、室外側寄りのパネル2と室内側寄りのパネル2において、室外側寄りのパネル2が室内側寄りのパネル2に対して下方に回動する時には、室外側寄りのパネル2の上面部20の上面201が、回動を開始した瞬間に、室内側寄りのパネル2の下面部21の上面211から逃げるように離間していく。
【0054】
したがって、扉体を構成するパネル2に変形(撓みや反り等)が生じている場合であっても、扉体開閉時における上側のパネル2の下面部21と下側のパネル2の上面部20との擦れが防止され、この擦れに起因する不具合(操作性の悪化、開閉時の異音発生、丁番への過度の負荷等)が防止される。これに対して、
図16に示すような従来構成(回動支点がパネル厚さ内に位置する)では、パネルが変形していると、扉体開閉時に上側のパネルの下面部と下側のパネルの上面部との擦れが生じ易い。
【0055】
垂直姿勢から下側のパネル2に対して上側のパネル2が回動すると、室内側に位置して、回動した上側のパネル2の下面部21の縦長弧状面210と、下側のパネル2の上面部20の上面201との間に隙間が生じる。回動角度が大きくなると隙間も少しずつ大きくなるが、本実施形態では、縦長弧状面210の回動軌跡が、回動支点Pを中心とする円弧面の内側になるようにしたことで、上記隙間を可及的に小さくしている。同様に、扉体がほぼ水平状の収納姿勢にある時に、室外側寄りのパネル2と室内側寄りのパネル2において、室外側寄りのパネル2が室内側寄りのパネル2に対して下方に回動する時には、室内側に形成される隙間の可及的に小さくしている。
【0056】
図14の態様では、下側のパネル2の上面部20の上面201との間の隙間寸法が、c
1=約5mm、c
2=約6mmであり、いずれも指挟み防止の基準となる8mmよりも小さい隙間となっており、室内側からの指挟みを防止することができる。これに対して、
図17の構成(
図16の構成における回動支点をパネルの外側に位置させた仮想構成)では、室内側に位置してc
3=約10mmの隙間が生じることとなる。なお、
図16の構成では、室内側に位置して形成される隙間c
4=約2mmであるが、パネル回動時に、パネル同士が擦れてしまうという不具合を生じ得るものである。
【0057】
最後に、傾斜面230の作用効果について説明する。扉体が収納姿勢にある時には、最上位のパネル2´(
図1参照)の上端側のガイドローラ4は第2ガイドレール1´内に位置しており、上から2番目のパネル2の上端側のガイドローラ4は、ガイドレール1の第3部位1C内に位置している。第2ガイドレール1´はガイドレール1の第3部位1Cの直上に位置しており、最上位パネル2´の下端は上から2番目のパネル2の上端に丁番3によって連結されているので、収納姿勢において最上位パネル2´と上から2番目のパネル2は、最上位パネル2´が傾斜姿勢となることで、回動方向とは反対方向に屈曲した姿勢となる傾向があり、屈曲の度合いが大きくなると、最上位のパネル2´と上から2番目のパネル2を連結する丁番3や上から2番目のパネル2のガイドローラ4に過剰は負担がかかるおそれがある。上から2番目のパネル2の室内側面部23の上方部位に形成した傾斜面230は、収納姿勢において、最上位パネル2´に対して上から2番目のパネル2が回動方向とは逆方向に屈曲した時に逃げを提供することで、最上位のパネル2´と上から2番目のパネル2を連結する丁番3や上から2番目のパネル2のガイドローラ4にかかるであろう負荷を軽減する。