特許第6436706号(P6436706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6436706ガスセンサおよびガス検出器、ガスセンサの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6436706
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】ガスセンサおよびガス検出器、ガスセンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20181203BHJP
【FI】
   G01N27/12 B
【請求項の数】24
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-197413(P2014-197413)
(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2016-70704(P2016-70704A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】野中 篤
(72)【発明者】
【氏名】大西 久男
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−132762(JP,A)
【文献】 特開2011−153996(JP,A)
【文献】 特開平02−196950(JP,A)
【文献】 特開2000−258376(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0134753(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサであって、
前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、
前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、
前記基板の前記接続端部のうち、前記第2架橋部が接続される第2接続端部には、前記ガス感応体に覆われていないガス感応体非被覆領域が形成されており、
前記基板の前記接続端部のうち、前記第1架橋部が接続される第1接続端部には、前記ガス感応体が被覆形成されているガスセンサ。
【請求項2】
基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサであって、
前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、
前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、
前記基板の上面視での中心である中心点と、前記基板と前記第2架橋部との接続点とを結ぶ線分の垂直二等分線によって区切られた前記基板における領域のうち、前記接続点の側の領域である第2領域に、前記ガス感応体に覆われていないガス感応体非被覆領域が形成されており、
前記基板の前記接続端部のうち、前記第1架橋部が接続される第1接続端部には、前記ガス感応体が被覆形成されているガスセンサ。
【請求項3】
基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサであって、
前記基板を構成するベースに設けられる前記加熱部を覆うように絶縁層が設けられ、
前記絶縁層の上に一対の電極が設けられ、
前記絶縁層及び前記一対の電極の上に前記ガス感応体が設けられ、
前記検知部は、前記一対の電極を有し、当該一対の電極の間の抵抗値の変化に基づいて前記検知対象ガスを検知するように構成され、
前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、
前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、
前記基板の前記接続端部のうち、前記第2架橋部が接続される第2接続端部には、前記ガス感応体に覆われていないガス感応体非被覆領域が形成されているガスセンサ。
【請求項4】
基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサであって、
前記基板を構成するベースに前記検知部としての機能と前記加熱部としての機能とを有する抵抗体が設けられ、
前記抵抗体及び前記ベースの上には前記ガス感応体が設けられ、
前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、
前記架橋部は、前記加熱部としての前記抵抗体に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、
前記基板の前記接続端部のうち、前記第2架橋部が接続される第2接続端部には、前記ガス感応体に覆われていないガス感応体非被覆領域が形成されているガスセンサ。
【請求項5】
基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサであって、
前記基板を構成するベースに設けられる前記加熱部を覆うように絶縁層が設けられ、
前記絶縁層の上に一対の電極が設けられ、
前記絶縁層及び前記一対の電極の上に前記ガス感応体が設けられ、
前記検知部は、前記一対の電極を有し、当該一対の電極の間の抵抗値の変化に基づいて前記検知対象ガスを検知するように構成され、
前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、
前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、
前記基板の上面視での中心である中心点と、前記基板と前記第2架橋部との接続点とを結ぶ線分の垂直二等分線によって区切られた前記基板における領域のうち、前記接続点の側の領域である第2領域に、前記ガス感応体に覆われていないガス感応体非被覆領域が形成されているガスセンサ。
【請求項6】
基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサであって、
前記基板を構成するベースに前記検知部としての機能と前記加熱部としての機能とを有する抵抗体が設けられ、
前記抵抗体及び前記ベースの上には前記ガス感応体が設けられ、
前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、
前記架橋部は、前記加熱部としての前記抵抗体に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、
前記基板の上面視での中心である中心点と、前記基板と前記第2架橋部との接続点とを結ぶ線分の垂直二等分線によって区切られた前記基板における領域のうち、前記接続点の側の領域である第2領域に、前記ガス感応体に覆われていないガス感応体非被覆領域が形成されているガスセンサ。
【請求項7】
前記基板の前記接続端部のうち、前記第1架橋部が接続される第1接続端部には、前記ガス感応体が被覆形成されている請求項3〜6のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【請求項8】
前記ガス感応体非被覆領域には、前記検知対象ガスに対する感応性が前記ガス感応体よりも小さいガス低感応体、または前記検知対象ガスに対する感応性を有さないガス不感応体が被覆形成されている請求項1,2,3,5のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【請求項9】
前記ガス感応体非被覆領域には、前記ガス感応体よりも電気抵抗が大きい高抵抗体が被覆形成されている請求項1,2,3,5,8のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【請求項10】
前記高抵抗体が絶縁性酸化物を主成分とする請求項9に記載のガスセンサ。
【請求項11】
前記ガス感応体が酸化物半導体を主成分とする請求項1,2,3,5,8〜10のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【請求項12】
前記ガス感応体は、接触した前記検知対象ガスの燃焼を促進する触媒活性を有し、前記基板の前記接続端部のうち、前記第2架橋部が接続される第2接続端部における前記ガス感応体非被覆領域には、触媒活性が前記ガス感応体よりも低い触媒低活性体、または触媒活性を有さない触媒不活性体が被覆形成されている請求項1,2,4,6のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【請求項13】
前記触媒低活性体または前記触媒不活性体が金属酸化物を主成分とする請求項12に記載のガスセンサ。
【請求項14】
前記ガス感応体は金属酸化物に担持された貴金属触媒を含有する請求項12または13に記載のガスセンサ。
【請求項15】
前記加熱部は、測定時に前記ガス感応体を所定の検知温度以上に加熱し、前記検知温度が350℃以上550℃以下である請求項1〜14のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のガスセンサと、前記ガスセンサの出力に基づいて前記検知対象ガスに関係したガス情報を出力する出力部を有するガス検出器。
【請求項17】
基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサの製造方法であって、
前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、
前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、
前記基板の前記接続端部のうち前記第2架橋部が接続される第2接続端部に前記ガス感応体に覆われていないガス感応体非被覆領域を形成し且つ前記基板の前記接続端部のうち前記第1架橋部が接続される第1接続端部に前記ガス感応体を形成する形態で、前記ガス感応体の材料を前記基板の上に付着させる付着工程を有するガスセンサの製造方法。
【請求項18】
基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサの製造方法であって、
前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、
前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、
前記接続端部のうち前記第2架橋部が接続される第2接続端部の上に、前記検知対象ガスに対する感応性が前記ガス感応体よりも小さいガス低感応体、または前記検知対象ガスに対する感応性を有さないガス不感応体を付着させる第1付着工程と、
前記ガス感応体の材料を、前記接続端部のうち前記第1架橋部が接続される第1接続端部を含む前記基板の上に付着させる第2付着工程とを有するガスセンサの製造方法。
【請求項19】
基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサの製造方法であって、
前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、
前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、
前記接続端部のうち前記第2架橋部が接続される第2接続端部の上に、接触した前記検知対象ガスの燃焼を促進する触媒活性が前記ガス感応体よりも低い触媒低活性体、または接触した前記検知対象ガスの燃焼を促進する触媒活性を有さない触媒不活性体を付着させる第1付着工程と、
前記ガス感応体の材料を、前記接続端部のうち前記第1架橋部が接続される第1接続端部を含む前記基板の上に付着させる第2付着工程とを有するガスセンサの製造方法。
【請求項20】
基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサの製造方法であって、
前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、
前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、
前記接続端部のうち前記第2架橋部が接続される第2接続端部をマスキング材で覆うマスキング工程と、
前記マスキング工程の後に前記ガス感応体の材料を前記基板の上に付着させる付着工程と、
前記付着工程の後に、前記マスキング材を除去する工程とを有するガスセンサの製造方法。
【請求項21】
基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサの製造方法であって、
前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、
前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、
前記基板を構成するベースの上に前記加熱部を形成する工程と、
前記加熱部を覆うように絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層の上に一対の電極を形成する工程と、
前記基板の前記接続端部のうち前記第2架橋部が接続される第2接続端部に前記ガス感応体に覆われていないガス感応体非被覆領域を形成する形態で、前記ガス感応体の材料を前記絶縁層及び前記一対の電極の上に付着させる付着工程を有し、
前記検知部は、前記一対の電極を有し、当該一対の電極の間の抵抗値の変化に基づいて前記検知対象ガスを検知するように構成されるガスセンサの製造方法。
【請求項22】
基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサの製造方法であって、
前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、
前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、
前記基板を構成するベースの上に前記検知部としての機能と前記加熱部としての機能とを有する抵抗体を形成する工程と、
前記基板の前記接続端部のうち前記第2架橋部が接続される第2接続端部に前記ガス感応体に覆われていないガス感応体非被覆領域を形成する形態で、前記ガス感応体の材料を前記抵抗体及び前記ベースの上に付着させる付着工程を有するガスセンサの製造方法。
【請求項23】
基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサの製造方法であって、
前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、
前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、
前記基板を構成するベースの上に前記加熱部を形成する工程と、
前記加熱部を覆うように絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層の上に一対の電極を形成する工程と、
前記接続端部のうち前記第2架橋部が接続される第2接続端部の上に、前記検知対象ガスに対する感応性が前記ガス感応体よりも小さいガス低感応体、または前記検知対象ガスに対する感応性を有さないガス不感応体を付着させる第1付着工程と、
前記ガス感応体の材料を前記絶縁層及び前記一対の電極の上に付着させる第2付着工程とを有し、
前記検知部は、前記一対の電極を有し、当該一対の電極の間の抵抗値の変化に基づいて前記検知対象ガスを検知するように構成されるガスセンサの製造方法。
【請求項24】
基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサの製造方法であって、
前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、
前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、
前記基板を構成するベースの上に前記検知部としての機能と前記加熱部としての機能とを有する抵抗体を形成する工程と、
前記接続端部のうち前記第2架橋部が接続される第2接続端部の上に、接触した前記検知対象ガスの燃焼を促進する触媒活性が前記ガス感応体よりも低い触媒低活性体、または接触した前記検知対象ガスの燃焼を促進する触媒活性を有さない触媒不活性体を付着させる第1付着工程と、
前記ガス感応体の材料を前記抵抗体及び前記ベースの上に付着させる第2付着工程とを有するガスセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサおよびガス検出器、ガスセンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
省電力化、小型化のため、MEMS技術(Micro Electro Mechanical Systems)を利用したガスセンサが開発されている。そのようなガスセンサには、ガス感応体と検知部(電極)と加熱部(ヒータ)とが基板に設けられて、その基板が複数の架橋部により宙吊りの状態で支持されたものがある。このタイプのガスセンサは、その宙吊り構造により基板から熱が逃げにくいため、省電力の面で有利である。
【0003】
特許文献1のガスセンサでは、薄膜ヒータのオンオフに伴いベースに働く熱応力を緩和するために、センサ中央の孔の一方で他方に比べて薄膜ヒータの配線が1本少なくされ、かつ、ダミーの配線が少なくとも1本設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−98232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のガスセンサは、短期的な湿度変化の影響を受けて出力が変動したり、長期の使用により感度が低下する問題があった。発明者は鋭意検討の末、これらの問題の原因が、上述の宙吊り構造により生じる基板上の温度不均一に起因すると思い至った。
【0006】
基板を支持する複数の架橋部のうち、ヒータへ給電する配線が設けられた架橋部(第1架橋部)は、通電による配線の発熱やヒータからの熱伝導によって温度が上昇する。一方、そのような配線が設けられていない架橋部(第2架橋部)では、第1架橋部のような温度上昇はみられない。すると、第2架橋部を通じた熱の流出が大きくなるため、第2架橋部と基板の接続部ではガス感応体の温度が他の場所よりも低くなる。
【0007】
ガス感応体としては酸化スズ等の酸化物半導体やガスに対する触媒活性をもつ物質が用いられる。ガス感応体に低温の部位が存在すると、そこでは湿度による感度変化が大きかったり、湿度により徐々に影響を受けて感度が低下すると考えられる。
【0008】
なお小型のガスセンサにおいては、さらなる消費電力の低減のためパルス駆動、すなわちヒータへの通電とガス検知とが間欠的に行われる場合がある。このような場合には上述の問題がより顕著に現れると考えられる。すなわちガス感応体は大部分の期間で常温であり、空気中の水分に晒される。この間にガス感応体に付着した水分は、加熱期間中に放出される筈であるが、上述の低温部分においては放出が十分でなく、徐々に水分が蓄積して感度低下を引き起こすと考えられる。
【0009】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、短期的な湿度依存性と長期的な感度低下が抑制されたガスセンサと、そのガスセンサを用いたガス検出器、およびガスセンサの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係るガスセンサの特徴構成は、基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサであって、前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、前記基板の前記接続端部のうち、前記第2架橋部が接続される第2接続端部には、前記ガス感応体に覆われていないガス感応体非被覆領域が形成されており、前記基板の前記接続端部のうち、前記第1架橋部が接続される第1接続端部には、前記ガス感応体が被覆形成されている点にある。
【0011】
第2架橋部には加熱部に給電する給電線が設けられていないので、第2架橋部が接続される第2接続端部にガス感応体を設けた場合、第2接続端部の上のガス感応体は他の部位のガス感応体よりも低温になる場合がある。上記の特徴構成によれば、基板の接続端部のうち、第2架橋部が接続される第2接続端部には、ガス感応体に覆われていないガス感応体非被覆領域が形成されているので、基板の上に設けられるガス感応体のうち、加熱部によって加熱された際に低温となる部位が小さくなる。すると、検知部によるセンサ出力に対する、上述の低温となる部位からの寄与がより小さくなるので、湿度の影響を受けにくくなる。よって、短期的な湿度依存性と長期的な感度低下が抑制されたガスセンサを実現することができる。
【0012】
ガス感応体非被覆領域を設けることにより、ガス感応体を基板の全面に設ける場合に比べてガス感応体の総量あるいは表面積が小さくなるので、センサ出力自体は小さくなる可能性がある。しかしながら、第2接続端部にガス感応体非被覆領域を設けることで、低温となる部位のガス感応体が小さくなるので、短期的な湿度依存性と長期的な感度低下を抑制することができる。
加えて、基板の接続端部のうち、第1架橋部が接続される第1接続端部には、ガス感応体が被覆形成されているので、センサ出力の低下を抑えつつも短期的な湿度依存性と長期的な感度低下が抑制されたガスセンサを実現できる。
上記目的を達成するための本発明に係るガスセンサの特徴構成は、基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサであって、前記基板を構成するベースに設けられる前記加熱部を覆うように絶縁層が設けられ、前記絶縁層の上に一対の電極が設けられ、前記絶縁層及び前記一対の電極の上に前記ガス感応体が設けられ、前記検知部は、前記一対の電極を有し、当該一対の電極の間の抵抗値の変化に基づいて前記検知対象ガスを検知するように構成され、前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、前記基板の前記接続端部のうち、前記第2架橋部が接続される第2接続端部には、前記ガス感応体に覆われていないガス感応体非被覆領域が形成されている点にある。
上記目的を達成するための本発明に係るガスセンサの特徴構成は、基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサであって、前記基板を構成するベースに前記検知部としての機能と前記加熱部としての機能とを有する抵抗体が設けられ、前記抵抗体及び前記ベースの上には前記ガス感応体が設けられ、前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、前記架橋部は、前記加熱部としての前記抵抗体に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、前記基板の前記接続端部のうち、前記第2架橋部が接続される第2接続端部には、前記ガス感応体に覆われていないガス感応体非被覆領域が形成されている点にある。
【0013】
上記目的を達成するための本発明に係るガスセンサの特徴構成は、基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサであって、前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、前記基板の上面視での中心である中心点と、前記基板と前記第2架橋部との接続点とを結ぶ線分の垂直二等分線によって区切られた前記基板における領域のうち、前記接続点の側の領域である第2領域に、前記ガス感応体に覆われていないガス感応体非被覆領域が形成されており、前記基板の前記接続端部のうち、前記第1架橋部が接続される第1接続端部には、前記ガス感応体が被覆形成されている点にある。
【0014】
第2架橋部には加熱部に給電する給電線が設けられていないので、基板と第2架橋部との接続点の近傍は第2架橋部を通じた熱流出が大きいことにより温度が低下する。上記の特徴構成によれば、基板の上面視での中心である中心点と基板と第2架橋部との接続点とを結ぶ線分の垂直二等分線によって区切られた基板における領域のうち、接続点の側の領域である第2領域に、前記ガス感応体に覆われていないガス感応体非被覆領域が形成されているので、基板の上に設けられるガス感応体のうち、加熱部によって加熱された際に低温となる部位が小さくなる。すると、検知部によるセンサ出力に対する、上述の低温となる部位からの寄与がより小さくなるので、湿度の影響を受けにくくなる。よって、短期的な湿度依存性と長期的な感度低下が抑制されたガスセンサを実現することができる。
加えて、基板の接続端部のうち、第1架橋部が接続される第1接続端部には、ガス感応体が被覆形成されているので、センサ出力の低下を抑えつつも短期的な湿度依存性と長期的な感度低下が抑制されたガスセンサを実現できる。
上記目的を達成するための本発明に係るガスセンサの特徴構成は、基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサであって、前記基板を構成するベースに設けられる前記加熱部を覆うように絶縁層が設けられ、前記絶縁層の上に一対の電極が設けられ、前記絶縁層及び前記一対の電極の上に前記ガス感応体が設けられ、前記検知部は、前記一対の電極を有し、当該一対の電極の間の抵抗値の変化に基づいて前記検知対象ガスを検知するように構成され、前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、前記基板の上面視での中心である中心点と、前記基板と前記第2架橋部との接続点とを結ぶ線分の垂直二等分線によって区切られた前記基板における領域のうち、前記接続点の側の領域である第2領域に、前記ガス感応体に覆われていないガス感応体非被覆領域が形成されている点にある。
上記目的を達成するための本発明に係るガスセンサの特徴構成は、基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサであって、前記基板を構成するベースに前記検知部としての機能と前記加熱部としての機能とを有する抵抗体が設けられ、前記抵抗体及び前記ベースの上には前記ガス感応体が設けられ、前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、前記架橋部は、前記加熱部としての前記抵抗体に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、前記基板の上面視での中心である中心点と、前記基板と前記第2架橋部との接続点とを結ぶ線分の垂直二等分線によって区切られた前記基板における領域のうち、前記接続点の側の領域である第2領域に、前記ガス感応体に覆われていないガス感応体非被覆領域が形成されている点にある。
【0015】
本発明に係るガスセンサの別の特徴構成は、前記基板の前記接続端部のうち、前記第1架橋部が接続される第1接続端部には、前記ガス感応体が被覆形成されている点にある。
【0016】
上記の特徴構成によれば、基板の接続端部のうち、第1架橋部が接続される第1接続端部には、ガス感応体が被覆形成されているので、センサ出力の低下を抑えつつも短期的な湿度依存性と長期的な感度低下が抑制されたガスセンサを実現できる。
【0017】
本発明に係るガスセンサの別の特徴構成は、前記ガス感応体非被覆領域には、前記検知対象ガスに対する感応性が前記ガス感応体よりも小さいガス低感応体、または前記検知対象ガスに対する感応性を有さないガス不感応体が被覆形成されている点にある。
【0018】
上記の特徴構成によれば、ガス感応体非被覆領域には、検知対象ガスに対する感応性がガス感応体よりも小さいガス低感応体、または検知対象ガスに対する感応性を有さないガス不感応体が被覆形成されているので、基板上の低温となる部位からのセンサ出力への寄与をガス低感応体またはガス不感応体の存在により効果的に低減しつつ、基板をガス低感応体またはガス不感応体で覆うことにより基板や検知部の腐食・劣化を抑制して耐環境性に優れたガスセンサを実現できる。また、基板のガス感応体非被覆領域がガス低感応体またはガス不感応体で覆われているので、ガス感応体非被覆領域からの放熱が抑制され、基板を適温に保ち、検知対象ガスの検出を安定して行うことができる。
【0019】
本発明に係るガスセンサの別の特徴構成は、前記ガス感応体非被覆領域には、前記ガス感応体よりも電気抵抗が大きい高抵抗体が被覆形成されている点にある。
【0020】
半導体式ガスセンサまたは熱線型半導体式ガスセンサにおいては、ガス感応体として酸化物半導体が用いられる。加熱部により加熱された酸化物半導体と検知対象ガスとが接触すると、酸化物半導体の電気抵抗値が変化する。その変化を検知部が検知し、ガスセンサの出力となる。したがって、ガス感応体よりも電気抵抗が大きい高抵抗体が基板上に設けられると、その部位からのセンサ出力への寄与は小さくなる。
【0021】
すなわち上記の特徴構成によれば、ガス感応体非被覆領域には、ガス感応体よりも電気抵抗が大きい高抵抗体が被覆形成されているので、基板上の低温となる部位からのセンサ出力への寄与を高抵抗体の存在により効果的に低減しつつ、基板を高抵抗体で覆うことにより基板や検知部の腐食・劣化を抑制して耐環境性に優れたガスセンサを実現できる。また、基板のガス感応体非被覆領域がガス低感応体またはガス不感応体で覆われているので、ガス感応体非被覆領域からの放熱が抑制され、基板を適温に保ち、検知対象ガスの検出を安定して行うことができる。
【0022】
本発明に係るガスセンサの別の特徴構成は、前記高抵抗体が絶縁性酸化物を主成分とする点にある。
【0023】
上記の特徴構成によれば、高抵抗体が絶縁性酸化物を主成分とするので、環境影響を受け難く長期的に安定な材料により基板上の低温となる部位からのセンサ出力への寄与を効果的に低減しつつ、基板を当該材料で覆うことにより耐環境性にも優れたガスセンサを実現できる。絶縁性酸化物としては、例えば、アルミナ、シリカ、マグネシア、ジルコニア、チタニア等を用いることができる。
【0024】
本発明に係るガスセンサの別の特徴構成は、前記ガス感応体が酸化物半導体を主成分とする点にある。
【0025】
上記の特徴構成によれば、ガス感応体が酸化物半導体を主成分とするので、高感度なガス感応体を用いつつ短期的な湿度依存性と長期的な感度低下が抑制されたガスセンサを実現できる。酸化物半導体としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄などの遷移金属酸化物や酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化アンチモン等の金属酸化物を主成分とする半導体材料を用いることができる。
【0026】
本発明に係るガスセンサの別の特徴構成は、前記ガス感応体は、接触した前記検知対象ガスの燃焼を促進する触媒活性を有し、前記第2接続端部における前記ガス感応体非被覆領域には、触媒活性が前記ガス感応体よりも低い触媒低活性体、または触媒活性を有さない触媒不活性体が被覆形成されている点にある。
【0027】
接触燃焼式ガスセンサにおいては、ガス感応体として検知対象ガスの燃焼を促進する触媒活性を有する材料が用いられる。加熱部により加熱されたガス感応体と検知対象ガスとが接触すると、ガス感応体の表面で検知対象ガスの酸化(燃焼)が発生し、その燃焼熱によりガス感応体の温度が上昇する。この温度上昇を検知部が電気抵抗の上昇として検知し、センサ出力となる。したがって、触媒活性がガス感応体よりも低い触媒低活性体、または触媒活性を有さない触媒不活性体が基板上に設けられると、その部位からのセンサ出力への寄与は小さくなる。
【0028】
すなわち上記の特徴構成によれば、第2接続端部におけるガス感応体非被覆領域には、触媒活性が前記ガス感応体よりも低い触媒低活性体、または触媒活性を有さない触媒不活性体が被覆形成されているので、基板上の低温となる部位からのセンサ出力への寄与を触媒低活性体または触媒非活性体の存在により効果的に低減しつつ、基板を触媒低活性体または触媒非活性体で覆うことにより耐環境性にも優れたガスセンサを実現できる。
【0029】
本発明に係るガスセンサの別の特徴構成は、前記触媒低活性体または前記触媒不活性体が金属酸化物を主成分とする点にある。
【0030】
上記の特徴構成によれば、触媒低活性体または触媒不活性体が金属酸化物を主成分とするので、環境影響を受け難く長期的に安定な材料により基板上の低温となる部位からのセンサ出力への寄与を効果的に低減しつつ、基板を当該材料で覆うことにより耐環境性にも優れたガスセンサを実現できる。また、基板のガス感応体非被覆領域がガス低感応体またはガス不感応体で覆われているので、ガス感応体非被覆領域からの放熱が抑制され、基板を適温に保ち、検知対象ガスの検出を安定して行うことができる。なお金属酸化物としては、例えば、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、チタニア等を用いることができる。
【0031】
本発明に係るガスセンサの別の特徴構成は、前記ガス感応体は金属酸化物に担持された貴金属触媒を含有する点にある。
【0032】
上記の特徴構成によれば、ガス感応体は金属酸化物に担持された貴金属触媒を含有するので、高感度なガス感応体を用いつつ短期的な湿度依存性と長期的な感度低下が抑制されたガスセンサを実現できる。金属酸化物としては、例えば、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、チタニア等を用いることができる。貴金属触媒としては、例えば、白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金)を用いることができる。
【0033】
本発明に係るガスセンサの別の特徴構成は、前記加熱部は、測定時に前記ガス感応体を所定の検知温度以上に加熱し、前記検知温度が350℃以上550℃以下である点にある。
【0034】
上記の特徴構成によれば、加熱部は、測定時にガス感応体を所定の検知温度以上に加熱し、検知温度が350℃以上550℃以下であるから、ガス感応体の温度を高くしてセンサ感度を高く保ちつつ、短期的な湿度依存性と長期的な感度低下が抑制されたガスセンサを実現できる。
【0035】
上記目的を達成するための本発明に係るガス検出器の特徴構成は、上述のガスセンサと前記ガスセンサの出力に基づいて前記検知対象ガスに関係したガス情報を出力する出力部を有することを特徴とする。
【0036】
上記の特徴構成によれば、上述のガスセンサと前記ガスセンサの出力に基づいて前記検知対象ガスに関係したガス情報を出力する出力部を有するので、短期的な湿度依存性と長期的な感度低下が抑制され、信頼性の高いガス検出器を実現することができる。
【0037】
上記目的を達成するための本発明に係るガスセンサの製造方法の特徴構成は、基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサの製造方法であって、前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、前記基板の前記接続端部のうち前記第2架橋部が接続される第2接続端部に前記ガス感応体に覆われていないガス感応体非被覆領域を形成し且つ前記基板の前記接続端部のうち前記第1架橋部が接続される第1接続端部に前記ガス感応体を形成する形態で、前記ガス感応体の材料を前記基板の上に付着させる付着工程を有する点にある。
【0038】
上記の特徴構成によれば、付着工程により、第2接続端部にガス感応体非被覆領域を形成する形態で、ガス感応体の材料を基板の上に付着させるので、基板の上に設けられるガス感応体のうち、加熱部によって加熱された際に低温となる部位がより小さいガスセンサが製造される。すると、検知部によるセンサ出力に対する、上述の低温となる部位からの寄与がより小さくなるので、湿度の影響を受けにくくなる。よって、短期的な湿度依存性と長期的な感度低下が抑制されたガスセンサを製造することができる。
加えて、基板の接続端部のうち、第1架橋部が接続される第1接続端部には、ガス感応体が被覆形成されているので、センサ出力の低下を抑えつつも短期的な湿度依存性と長期的な感度低下が抑制されたガスセンサを実現できる。
上記目的を達成するための本発明に係るガスセンサの製造方法の特徴構成は、基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサの製造方法であって、前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、前記基板を構成するベースの上に前記加熱部を形成する工程と、前記加熱部を覆うように絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層の上に一対の電極を形成する工程と、前記基板の前記接続端部のうち前記第2架橋部が接続される第2接続端部に前記ガス感応体に覆われていないガス感応体非被覆領域を形成する形態で、前記ガス感応体の材料を前記絶縁層及び前記一対の電極の上に付着させる付着工程を有し、前記検知部は、前記一対の電極を有し、当該一対の電極の間の抵抗値の変化に基づいて前記検知対象ガスを検知するように構成される点にある。
上記目的を達成するための本発明に係るガスセンサの製造方法の特徴構成は、基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサの製造方法であって、前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、前記基板を構成するベースの上に前記検知部としての機能と前記加熱部としての機能とを有する抵抗体を形成する工程と、前記基板の前記接続端部のうち前記第2架橋部が接続される第2接続端部に前記ガス感応体に覆われていないガス感応体非被覆領域を形成する形態で、前記ガス感応体の材料を前記抵抗体及び前記ベースの上に付着させる付着工程を有する点にある。
【0039】
上記目的を達成するための本発明に係るガスセンサの製造方法の特徴構成は、基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサの製造方法であって、前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、前記接続端部のうち前記第2架橋部が接続される第2接続端部の上に、前記検知対象ガスに対する感応性が前記ガス感応体よりも小さいガス低感応体、または前記検知対象ガスに対する感応性を有さないガス不感応体を付着させる第1付着工程と、前記ガス感応体の材料を、前記接続端部のうち前記第1架橋部が接続される第1接続端部を含む前記基板の上に付着させる第2付着工程とを有する点にある。
【0040】
上記の特徴構成によれば、第2接続端部の上に、検知対象ガスに対する感応性がガス感応体よりも小さいガス低感応体、または検知対象ガスに対する感応性を有さないガス不感応体を付着させる第1付着工程と、ガス感応体の材料を基板の上に付着させる第2付着工程とを有するので、ガス低感応体またはガス不感応体で覆われた領域(第2接続端部を含む領域)にはガス感応体の材料が付着しない。これにより、基板の上に設けられるガス感応体のうち、加熱部によって加熱された際に低温となる部位がより小さいガスセンサが製造される。すると、検知部によるセンサ出力に対する、上述の低温となる部位からの寄与がより小さくなるので、湿度の影響を受けにくくなる。よって、短期的な湿度依存性と長期的な感度低下が抑制されたガスセンサを製造することができる。
加えて、基板の接続端部のうち、第1架橋部が接続される第1接続端部には、ガス感応体が被覆形成されているので、センサ出力の低下を抑えつつも短期的な湿度依存性と長期的な感度低下が抑制されたガスセンサを実現できる。
上記目的を達成するための本発明に係るガスセンサの製造方法の特徴構成は、基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサの製造方法であって、前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、前記接続端部のうち前記第2架橋部が接続される第2接続端部の上に、接触した前記検知対象ガスの燃焼を促進する触媒活性が前記ガス感応体よりも低い触媒低活性体、または接触した前記検知対象ガスの燃焼を促進する触媒活性を有さない触媒不活性体を付着させる第1付着工程と、前記ガス感応体の材料を、前記接続端部のうち前記第1架橋部が接続される第1接続端部を含む前記基板の上に付着させる第2付着工程とを有する点にある。
上記目的を達成するための本発明に係るガスセンサの製造方法の特徴構成は、基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサの製造方法であって、前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、前記基板を構成するベースの上に前記加熱部を形成する工程と、前記加熱部を覆うように絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層の上に一対の電極を形成する工程と、前記接続端部のうち前記第2架橋部が接続される第2接続端部の上に、前記検知対象ガスに対する感応性が前記ガス感応体よりも小さいガス低感応体、または前記検知対象ガスに対する感応性を有さないガス不感応体を付着させる第1付着工程と、前記ガス感応体の材料を前記絶縁層及び前記一対の電極の上に付着させる第2付着工程とを有し、前記検知部は、前記一対の電極を有し、当該一対の電極の間の抵抗値の変化に基づいて前記検知対象ガスを検知するように構成される点にある。
上記目的を達成するための本発明に係るガスセンサの製造方法の特徴構成は、基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサの製造方法であって、前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、前記基板を構成するベースの上に前記検知部としての機能と前記加熱部としての機能とを有する抵抗体を形成する工程と、前記接続端部のうち前記第2架橋部が接続される第2接続端部の上に、接触した前記検知対象ガスの燃焼を促進する触媒活性が前記ガス感応体よりも低い触媒低活性体、または接触した前記検知対象ガスの燃焼を促進する触媒活性を有さない触媒不活性体を付着させる第1付着工程と、前記ガス感応体の材料を前記抵抗体及び前記ベースの上に付着させる第2付着工程とを有する点にある。
【0041】
上記目的を達成するための本発明に係るガスセンサの製造方法の特徴構成は、基板に設けられたガス感応体と、検知対象ガスが前記ガス感応体に接触したことを検知する検知部と、前記ガス感応体を加熱する加熱部とを有するガスセンサの製造方法であって、前記基板は、前記基板の接続端部に接続された架橋部によって支持基板に支持されており、前記架橋部は、前記加熱部に給電する給電線が設けられた第1架橋部と、前記給電線が設けられない第2架橋部とを有し、前記接続端部のうち前記第2架橋部が接続される第2接続端部をマスキング材で覆うマスキング工程と、前記マスキング工程の後に前記ガス感応体の材料を前記基板の上に付着させる付着工程と、前記付着工程の後に、前記マスキング材を除去する工程とを有する点にある。
【0042】
上記の特徴構成によれば、第2接続端部をマスキング材で覆うマスキング工程と、マスキング工程の後にガス感応体の材料を基板の上に付着させる付着工程とを有するので、マスキング材で覆われた領域(第2接続端部を含む領域)にはガス感応体の材料が付着しない。これにより、基板の上に設けられるガス感応体のうち、加熱部によって加熱された際に低温となる部位がより小さいガスセンサが製造される。すると、検知部によるセンサ出力に対する、上述の低温となる部位からの寄与がより小さくなるので、湿度の影響を受けにくくなる。よって、短期的な湿度依存性と長期的な感度低下が抑制されたガスセンサを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】ガスセンサの構造を示す斜視図
図2】ガスセンサの構造を示す断面図
図3】第1実施形態に係る半導体式ガスセンサの上面図
図4】第1実施形態に係る半導体式ガスセンサの上面図
図5】第1実施形態に係る半導体式ガスセンサの断面図
図6】第2実施形態に係る半導体式ガスセンサの上面図
図7】第2実施形態に係る半導体式ガスセンサの断面図
図8】第2実施形態に係る半導体式ガスセンサの製造時の上面図
図9】第3実施形態に係る接触燃焼式ガスセンサの上面図
図10】第4実施形態に係る半導体式ガスセンサの上面図
図11】第4実施形態に係る半導体式ガスセンサの上面図
図12】第5実施形態に係る半導体式ガスセンサの上面図
図13】第5実施形態に係る半導体式ガスセンサの断面図
図14】第5実施形態の変形例に係る半導体式ガスセンサの上面図
図15】第5実施形態の変形例に係る半導体式ガスセンサの断面図
図16】比較例1の半導体式ガスセンサの上面図
図17】短期湿度影響の試験結果を示すグラフ
図18】長期湿度影響の試験結果を示すグラフ
図19】長期湿度影響の試験結果を示すグラフ
図20】比較例2の接触燃焼式ガスセンサの上面図
図21】長期湿度影響の試験結果を示すグラフ
図22】長期湿度影響の試験結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0044】
<第1実施形態>
まず図1および図2を用いて第1実施形態に係る半導体式ガスセンサ1a(ガスセンサ1)の構造と動作を説明する。図1および図2に示す通り、半導体式ガスセンサ1aでは、ガス感応体50が上面に設けられた基板10が、第1架橋部21と第2架橋部22とによって宙吊りの状態で、支持基板2に支持される。基板10の下側は空洞部3となっている。半導体式ガスセンサ1aは、その構造全体がMEMS技術により形成されている。例えば支持基板2にはシリコンが用いられる。
【0045】
図2図1のII−IIによる断面図である。図2に示す通り、基板10は、ベース11と、ベース11の上に順に積層された薄膜状のヒータ30および絶縁層12とからなる。そして基板10の上に一対の電極41、42(検知部40)とガス感応体50とが積層されている。例えばベース11および絶縁層12にはSiO2が、ヒータ30および電極41、42には白金等が用いられる。ガス感応体50には、その電気抵抗値が検知対象ガスの存在や濃度により変化する半導体材料が用いられ、例えば酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化チタン等を主成分とするものが用いられる。
【0046】
一対の電極41、42は櫛歯状に形成されており、一方の電極の櫛歯の隙間に、他方の電極の櫛歯が入り込む態様で、一定の間隔を空けて配置されている。
【0047】
ヒータ30は、第1架橋部21に設けられた給電線23を通じて給電され、発熱し、ガス感応体50を加熱する。加熱されたガス感応体50は、検知対象ガスと接触すると抵抗値が変化する。一対の電極41と42は、ガス感応体50に接触した状態で対向して配置されており、ガス感応体の抵抗値が変化すると、電極41と電極42の間の抵抗値が変化する。その抵抗値変化は、第2架橋部22に設けられた検知線24を通じて外部に取り出され、図示しない検出回路等により半導体式ガスセンサ1aの出力に変換される。
【0048】
なお上述の加熱・検出の動作は、省電力の目的のため、いわゆる間欠駆動またはパルス駆動にて行われ、20秒から60秒程度の所定の間隔で、100μsec〜100msec程度の極めて短い時間で行われる。例えば30秒の間隔をおいて100msecの間行われる。またヒータ30はガス感応体50を所定の検知温度以上に加熱する。検知温度は、ガス感応体50として用いる材料に応じて定まり、350℃から550℃の範囲で設定される。例えばガス感応体50に酸化スズを用いてメタンガスを検知する場合、検知温度は400℃〜500℃とするのが適切である。
【0049】
次に図3図5を用いて、基板10の第1接続端部13、第2接続端部14、ガス感応体非被覆領域15について説明する。
【0050】
図3は、基板10の上に電極41と42が配置された状態の上面図である。基板10は、その四隅が第1架橋部21と第2架橋部22とに接続されている。詳しくは、基板10の対角線上に位置する2か所の第1接続端部13にて第1架橋部21と基板10とが接続され、基板10の対角線上に位置する2か所の第2接続端部14にて第2架橋部22と基板10とが接続されている。
【0051】
上述の通り、第1架橋部21にはヒータ30と接続されて給電する給電線23が配置されている。第2架橋部22には電極41、42と接続される検知線24が配置されている。ここでヒータ30に通電してガス感応体50を加熱する際、第1架橋部21は、給電線23自体の発熱や、ヒータ30から給電線23への熱伝導によって温度が上昇する。
【0052】
一方、第2架橋部22には給電線23のように発熱する物体が配置されないため、第1架橋部21のような温度上昇はみられない。すると、第2架橋部22を通じた基板10から支持基板2への熱の流出が大きくなる。その結果、第2架橋部22が接続されている基板10の第2接続端部14は、基板10の中央部や、第1架橋部21が接続されている基板10の第1接続端部13よりも、温度が低くなる。
【0053】
そこで、ガス感応体50の一部の温度が低くなることによる短期的な湿度依存性と長期的な感度低下を抑制するため、基板10の第2接続端部14に、ガス感応体50に覆われていないガス感応体非被覆領域15が形成される。図4および図5に示すように、第1実施形態では、基板10の全面をガス感応体50で覆うのではなく、ガス感応体非被覆領域15にアルミナ51が設けられる。
【0054】
アルミナ51は、検知対象ガスに対する感応性を有さないガス不感応体である。またアルミナ51は、ガス感応体50よりも電気抵抗が大きい高抵抗体である。なお、アルミナ51に換えて、検知対象ガスに対する感応性がガス感応体50よりも小さいガス低感応体をガス感応体非被覆領域15に設けてもよい。ガス低感応体には、検知対象ガスに対する感応性を有する酸化物半導体中の添加元素の含有量を小さくして検知対象ガスに対する感応性を小さくした材料を用いてもよい。また、アルミナ51に換えて絶縁性の酸化物、例えばジルコニア、マグネシア、チタニア等の金属酸化物やシリカを用いてもよい。
【0055】
以上述べた通り、第1実施形態に係る半導体式ガスセンサ1a(ガスセンサ1)においては、ヒータ30による加熱の際に低温となる第2接続端部14は、ガス感応体50に換えてアルミナ51で覆われる。すなわち第2接続端部14には、ガス感応体50に覆われていないガス感応体非被覆領域15が形成されている。よって、基板10の全面をガス感応体50で覆う場合に比べ、低温となる部位が小さくなる。すると、一対の電極41、42で検知するガス感応体50の抵抗値変化について、低温部位の寄与が小さくなる。よって、短期的な湿度依存性と長期的な感度低下が抑制された半導体式ガスセンサ1aを実現することができる。
【0056】
ガス感応体非被覆領域15の占める面積としては、1つの第2架橋部22に対して、上面視で基板10の面積の5%以上13%以下とするのが適当である。
【0057】
なお第1接続端部13は、基板10と第1架橋部21とが接する基板10上の点、基板10の辺の一部に限られず、それらの近傍を含む部分である。第2接続端部14は、基板10と第2架橋部22とが接する基板10上の点、基板10の辺の一部に限られず、それらの近傍を含む部分である。
【0058】
また第1実施形態に係る半導体式ガスセンサ1aにおいては、第2架橋部22は上面視で正方形である基板10の頂点に接続されているが、その点(基板10の頂点)を頂点とする所定の半径の扇形の領域にガス感応体非被覆領域15が形成されているともいえる。また、上面視で基板10に第2架橋部22が接続された点から所定の距離の範囲内にガス感応体非被覆領域15が形成されているともいえる。上述の通り、第2架橋部22からの熱の流出による温度低下がガスセンサ1の性能に悪影響を与えるところ、基板10と第2架橋部22とが接続された点から所定の距離の領域は基板10の温度が低下すると考えられる。この領域にガス感応体非被覆領域15を設けることで、ガス感応体50の低温になる部分を小さくして、ガスセンサ1の短期的な湿度依存性と長期的な感度低下を抑制することができる。なお、上述の扇形の半径、あるいは所定の距離は、基板10や第1架橋部21、第2架橋部22等のガスセンサ1の構造、ガス感応体50の物性、検知対象ガスの検知に必要な温度等により、適当に定めることができる。
【0059】
次に、第1実施形態に係る半導体式ガスセンサ1aの製造方法について説明する。
【0060】
第1工程として、支持基板2となるシリコンウエハを酸化して、ベース11、第1架橋部21、第2架橋部22となるSiO2の絶縁層を形成する。
【0061】
第2工程として、絶縁層の上に白金をスパッタリング法により成膜して約1mm角のヒータ30を形成する。
【0062】
第3工程として、ヒータ30を覆うようにSiO2の絶縁層(絶縁層12)を成膜する。
【0063】
第4工程として、絶縁層12の上に白金をスパッタリング法により成膜して一対の電極41、42を形成する。
【0064】
第5工程として、シリコンウエハをエッチングして空洞部3を形成する。この際、適宜マスク等を用いてヒータ30、電極41、42のパターンを形成する。
【0065】
第6工程として、印刷法により第2接続端部14の上にアルミナ51を被覆形成する(第1付着工程)。例えば、図4の符号51で示す領域にアルミナ51を被覆形成する。
【0066】
第7工程として、印刷法により基板10の上にガス感応体50を被覆形成する(第2付着工程)。
【0067】
第6工程により、第2接続端部14の上にアルミナ51が形成されているので、第7工程で基板10の上にガス感応体50を形成する際、第2接続端部14の上にはガス感応体50が形成されない。すなわち第6工程と第7工程により、第2接続端部14にガス感応体50に覆われていないガス感応体非被覆領域15を形成する形態で、ガス感応体50の材料が基板10の上に付着されている(付着工程)。
【0068】
<第2実施形態>
図6および図7を用いて第2実施形態に係る半導体式ガスセンサ1a(ガスセンサ1)について説明する。図6は第2実施形態に係る半導体式ガスセンサ1a(ガスセンサ1)の基板10の上面図であり、図7図6におけるVII−VIIによる断面図である。なお、第1実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0069】
第1実施形態ではガス感応体非被覆領域15にアルミナ51が設けられたが、第2実施形態ではアルミナ51は設けられない。すなわち、第2実施形態では、第2架橋部22が接続される第2接続端部14には、ガス感応体50に覆われていないガス感応体非被覆領域15が形成されている。
【0070】
次に第2実施形態に係る半導体式ガスセンサ1aの製造方法について説明する。第1工程から第4工程までは第1実施形態と同様である。
【0071】
第5工程として、基板10の一対の電極41、42の上に、図8に示すように第2接続端部14を覆う形態でマスキングテープTを貼り付ける(マスキング工程)。
【0072】
第6工程として、印刷法により基板10の上にガス感応体50を被覆形成する(付着工程)。
【0073】
第7工程として、基板10からマスキングテープTを除去する。
【0074】
第5工程により、第2接続端部14の上にマスキングテープTが貼り付けられているので、第6工程で基板10の上にガス感応体50を形成する際、第2接続端部14の上にはガス感応体50が形成されない。すなわち第5工程と第6工程により、第2接続端部14にガス感応体50に覆われていないガス感応体非被覆領域15を形成する形態で、ガス感応体50の材料が基板10の上に付着されている(付着工程)。
【0075】
<第3実施形態>
図9を用いて第3実施形態に係る接触燃焼式ガスセンサ(ガスセンサ1)について説明する。図9は第3実施形態に係る接触燃焼式ガスセンサ(ガスセンサ1)の基板10の上面図である。なお、第1実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0076】
第1実施形態では、ガス感応体50として電気抵抗値が検知対象ガスの存在や濃度により変化する半導体材料が用いられ、その抵抗値変化を一対の電極41、42で検出した。第3実施形態の接触燃焼式ガスセンサでは、ガス感応体50として、接触した検知対象ガスの燃焼を促進する触媒活性を有する材料が用いられ、検知対象ガスの燃焼熱によるガス感応体50の温度上昇を、抵抗体43(検知部40)の抵抗値変化として検出する。ガス感応体50としては、例えば、貴金属触媒がもちいられ、アルミナに担持されたパラジウムが好適に用いられる。
【0077】
抵抗体43は、図9に示すように、基板10の四隅の一つから対角までに亘って、蛇行しながら一繋がりに設けられている。抵抗体43は、上述の通りガス感応体50の温度変化を検知する検知部40としての機能と、ガス感応体50を加熱する加熱部としての機能とを有する。抵抗体43には、例えば白金、タングステン、金などが用いられる。
【0078】
抵抗体43は、給電検知線25を通じて給電され、発熱し、ガス感応体50を加熱する。そして抵抗体43の抵抗値変化は、給電検知線25を通じて外部に取り出され、図示しない検出回路等により接触燃焼式ガスセンサの出力に変換される。すなわち、給電検知線25は、第1実施形態の給電線23と検知線24の機能を有する。
【0079】
図9に示すとおり、基板10は、その四隅が第1架橋部21と第2架橋部22とに接続されている。詳しくは、基板10の対角線上に位置する2か所の第1接続端部13にて第1架橋部21と基板10とが接続され、基板10の対角線上に位置する2か所の第2接続端部14にて第2架橋部22と基板10とが接続されている。
【0080】
第3実施形態では、第1架橋部21には抵抗体43と接続されて給電する給電検知線25が配置されている。第2架橋部22には、第1実施形態と異なり、検知線24は配置されない。抵抗体43に通電してガス感応体50を加熱する際、第1架橋部21は、給電検知線25自体の発熱や、抵抗体43から給電検知線25への熱伝導によって温度が上昇する。一方、第2架橋部22には温度上昇は見られず、第2架橋部22を通じた熱の流出が大きくなる。その結果、第2架橋部22が接続されている基板10の第2接続端部14は、基板10の中央部や、第1架橋部21が接続されている基板10の第1接続端部13よりも、温度が低くなる。
【0081】
そこで、ガス感応体50の一部の温度が低くなることによる短期的な湿度依存性と長期的な感度低下を抑制するため、基板10の第2接続端部14に、ガス感応体50に覆われていないガス感応体非被覆領域15が形成される。図9に示すように、第3実施形態では、基板10の全面をガス感応体50で覆うのではなく、ガス感応体非被覆領域15にアルミナ51が設けられる。
【0082】
アルミナ51は、検知対象ガスに対する触媒活性を有さない触媒不活性体である。なお、アルミナ51に換えて、検知対象ガスに対する触媒活性がガス感応体50よりも低い触媒低活性体をガス感応体非被覆領域15に設けてもよい。触媒低活性体には、触媒貴金属の含有量や比表面積を低くして検知対象ガスに対する触媒活性を小さくした材料を用いてもよい。また、アルミナ51に換えて、金属酸化物として、例えば、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、チタニア等を用いることができる。
【0083】
以上述べた通り、第3実施形態に係る接触燃焼式ガスセンサ(ガスセンサ1)においては、抵抗体43による加熱の際に低温となる第2接続端部14は、ガス感応体50に換えてアルミナ51で覆われる。すなわち第2接続端部14には、ガス感応体50に覆われていないガス感応体非被覆領域15が形成されている。よって、基板10の全面をガス感応体50で覆う場合に比べ、低温となる部位が小さくなる。すると、抵抗体43で検知するガス感応体50の温度変化について、低温部位の寄与が小さくなる。よって、短期的な湿度依存性と長期的な感度低下が抑制された接触燃焼式ガスセンサを実現することができる。
【0084】
次に第3実施形態に係る接触燃焼式ガスセンサ(ガスセンサ1)の製造方法を説明する。
【0085】
第1工程として、支持基板2となるシリコンウエハを酸化して、ベース11、第1架橋部21、第2架橋部22となるSiO2の絶縁層を形成する。
【0086】
第2工程として、絶縁層の上に白金をスパッタリング法により成膜して抵抗体43を形成する。
【0087】
第3工程として、シリコンウエハをエッチングして空洞部3を形成する。この際、適宜マスク等を用いて抵抗体43のパターンを形成する。
【0088】
第4工程として、印刷法により第2接続端部14の上にアルミナ51を被覆形成する(第1付着工程)。例えば、図9の符号51で示す領域にアルミナ51を被覆形成する。
【0089】
第5工程として、印刷法により基板10の上にガス感応体50を被覆形成する(第2付着工程)。
【0090】
第4工程により、第2接続端部14の上にアルミナ51が被覆形成されているので、第5工程で基板10の上にガス感応体50を被覆形成する際、第2接続端部14の上にはガス感応体50が被覆形成されない。すなわち第4工程と第5工程により、第2接続端部14にガス感応体50に覆われていないガス感応体非被覆領域15を形成する形態で、ガス感応体50の材料が基板10の上に付着されている(付着工程)。
【0091】
<第4実施形態>
図10および図11を用いて第実施形態に係る半導体式ガスセンサ1a(ガスセンサ1)について説明する。なお、第1実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0092】
上述の第1実施形態では、第2接続端部14に、ガス感応体非被覆領域15を設けることにより、ガス感応体50において、第2架橋部22からの熱の流出により低温となる部位を小さくしている。これにより、湿度により影響を受ける低温部からのセンサ出力への寄与を小さくして、短期的な湿度依存性と長期的な感度低下が抑制された半導体式ガスセンサ1aを実現している。
【0093】
第4実施形態では、さらに短期的な湿度依存性と長期的な感度低下を抑制するため、以下の構成をとる。すなわち、ヒータ30は測定時にガス感応体50を所定の検知温度以上に加熱する。図11に示すとおり、ガス感応体50は、測定時に検知温度以上の温度となる適温部位16と、測定時に検知温度未満の温度となる低温部位17とを有する。そして低温部位17には、一対の電極41、42のうち少なくとも一方の電極が配置されないよう構成されている。
【0094】
すると、低温部位17のガス感応体50は一方の電極までの距離が適温部位16に比べて大きくなる。すると、半導体式ガスセンサ1aは一対の電極41、42の間の抵抗値の変化に基づいて検知対象ガスを検知するところ、検知出力に対する低温部位17の寄与は、適温部位16に比べて小さくなる。
【0095】
説明を追加すると、半導体式ガスセンサ1aにおいて一対の電極41、42の間の抵抗値は、一方の電極からガス感応体50の一部分を通って他方の電極に至る全ての経路の抵抗値を用いて、それらの並列の合成抵抗で与えられる。すなわち、電極間抵抗値Rは各経路抵抗値riを用いて次のように計算される。
1/R=1/r1+1/r2+1/r3+・・・・ (式1)
ここで経路抵抗値riが大きくなると、1/riの値は小さくなるので、riの値が変化したときにRに与える影響度は小さくなる。
【0096】
低温部位17に少なくとも一方の電極が配置されないことで、低温部位17のガス感応体50は、一方の電極までの距離が(適温部位16に比べて)大きくなる。すると、低温部位17を通る経路の抵抗値は(適温部位16に比べて)大きくなるので、低温部位17の抵抗値が変化したときに電極間抵抗値に与える影響度は小さくなる。すなわち、検知対象ガスがガス感応体50の低温部位17に接触した場合の検知部の出力変化(電極間抵抗値の変化)は、適温部位16に比べて小さくなる。
【0097】
なお第4実施形態では、図10に示すように、一対の電極41、42の櫛歯状の電極のうち、基板10の外周に沿って延びる電極は、第1実施形態に比べて半分程度の長さに形成されている。詳しくは、電極41の櫛歯状電極の先端部411は、電極41の他の櫛歯状電極よりも短く形成されているので、上面視で右下に位置する低温部位17には電極41は配置されていない。同様に、電極42の櫛歯状電極の先端部421は、電極42の他の櫛歯状電極よりも短く形成されているので、上面視で左上に位置する低温部位17には電極42は配置されていない。
【0098】
上述の検知温度は、ガス感応体50として用いる材料に応じて定まり、350℃から550℃の範囲で設定される。例えばガス感応体50に酸化スズを用いてメタンガスを検知する場合、検知温度は400℃〜500℃とするのが適切である。
【0099】
また第4実施形態では、一方の電極41からの距離と他方の電極42からの距離との和が所定の測定寄与距離以下となる部位である測定寄与部位18が、基板10の平面視において低温部位17と重複して設けられていない。測定寄与部位18は図10において一点鎖線の斜線部で示されている。
【0100】
測定寄与部位18は、一方の電極41からの距離と他方の電極42からの距離との和が所定の測定寄与距離以下となる基板上の部位であり、一対の電極41、42の形状および配置によって定まる部位である。上述の通り、電極からの距離に応じて電極間抵抗値Rすなわち検知部40の検知結果に及ぼす影響度合いが変化するので、測定寄与部位18に位置するガス感応体50は、それ以外の部位に位置するガス感応体50に比べて検知部40の検知結果への寄与が大きい。
【0101】
すなわち、測定寄与部位18が平面視において低温部位17と重複して設けられないことにより、ガス感応体50の低温部位17が検知部40の検知結果に及ぼす影響を小さくできる。したがって、低温部位17において湿度による感度変化や長期的な感度低下が生じたとしても、半導体式ガスセンサ1aの出力に対する影響を小さくすることができ、短期的な湿度依存性と長期的な感度低下が抑制された半導体式ガスセンサ1aを実現することができる。
【0102】
<第5実施形態>
第1〜第4実施形態では、第2架橋部22との接続によって温度が低下する第2接続端部14に、ガス感応体50に覆われていないガス感応体非被覆領域15が形成されることにより、低温となるガス感応体50を小さく(少なく)して、短期的な湿度依存性と長期的な感度低下を抑制していた。
【0103】
第5実施形態に係る半導体式ガスセンサ1a(ガスセンサ1)では、図12および図13に示すように、基板10の上面視での中心である中心点61と、基板10と第2架橋部22との接続点62とを結ぶ線分の垂直二等分線によって区切られた基板10における領域のうち、接続点62の側の領域である第2領域63に、ガス感応体50に覆われていないガス感応体非被覆領域15、すなわちアルミナ51が形成されている。
【0104】
以下、図12および図13を用いて第5実施形態に係る半導体式ガスセンサ1aについて説明する。図12は半導体式ガスセンサ1aの基板10の上面図であり、図13図12におけるXIII−XIIIによる断面図である。なお、第1実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0105】
図12に示す中心点61は、基板10の上面視での中央の点、すなわち、四角形の基板10の対角線の交点である。なお、基板10が円形の場合は円の中心が中心点61としてもよく、その他の形状の場合は、幾何学上の重心の位置を中心点61としてもよい。
【0106】
接続点62は、基板10と第2架橋部22とが接続される点であって、図12に平面視で示す基板10の左上と右下の頂点である。接続点62は、上面視で正方形である基板10の頂点としてもよいし、基板10の辺のうち上面視で第2架橋部22と接している部分の一点でもよい。また基板10が円形の場合には、基板10の外周のうち上面視で第2架橋部22と接している部分の一点でもよい。
【0107】
図12に示すとおり、中心点61と接続点62を結ぶ線分の垂直二等分線は、上面視で正方形である基板10の2つの辺と交わり、基板10を区切る。区切られた領域のうち、接続点62の側の領域である第2領域63に、アルミナ51が被覆形成されている。すなわち、第2領域63にガス感応体非被覆領域15が形成されている。
【0108】
第2架橋部22には、ヒータ30に給電する給電線23が設けられていないので、基板10と第2架橋部22との接続点62の近傍は第2架橋部22を通じた熱流出が大きいことにより温度が低下する。すなわち第2領域で63では基板10の温度が基板10の中央付近に比べて低くなる。よって第2領域63にガス感応体非被覆領域15を形成することで、低温となるガス感応体50を小さく(少なく)して、ガスセンサ1の短期的な湿度依存性と長期的な感度低下を抑制することができる。
【0109】
<第5実施形態の変形例>
図14図15に、第5実施形態の変形例を示す。この変形例では、第2領域63にガス感応体非被覆領域15すなわちアルミナ51が設けられると共に、第2領域63の内部で接続点62の近傍にガス感応体50が設けられている。このように、第2領域63の全てをガス感応体非被覆領域15とせず、一部にガス感応体50が存在する場合であっても、基板10の全面をガス感応体50で覆う場合に比べ、低温となるガス感応体50を小さく(少なく)することができるので、ガスセンサ1の短期的な湿度依存性と長期的な感度低下を抑制することができる。
【0110】
<第6実施形態>
上述のガスセンサ1と、ガスセンサ1の出力に基づいて検知対象ガスに関係したガス情報を出力する出力部とを用いて、ガス検出器を構成することができる。
ガスセンサ1は、基板10の第2接続端部14にガス感応体非被覆領域15が形成されているので、短期的な湿度依存性と長期的な感度低下が抑制されたガスセンサ1となっている。これに、ガスセンサ1の出力に基づいて検知対象ガスに関係したガス情報を出力する出力部を組み合わせてガス検出器を構成すると、短期的な湿度依存性と長期的な感度低下が抑制され、信頼性の高いガス検出器を実現することができる。
【0111】
出力部は、ガスセンサ1の出力をガス濃度に変換する。詳しくは、ガスセンサ1の検知部40からの出力値である抵抗値を、ホイートストンブリッジ回路とA/D変換器を用いてデジタルデータに変換し、ガスセンサ1の感度特性に基づいてガス濃度に変換する。
【0112】
出力部は更に、得られたガス濃度を予め設定された閾値と比較し、ガス濃度が閾値を超えた場合に、検知対象ガスが検知された旨の警報(ガス情報)を出力する。ガス情報としての警報は、単に検知対象ガスの有無の情報でもよいし、ガスの濃度の情報を含んでもよい。また警報は、音や光を発するものでもよく、他の機器への報知でもよい。
【0113】
<別実施形態>
(1)上述の各実施形態では、2つの第1架橋部21と2つの第2架橋部22、すなわち4つの架橋部で基板10を支持する形態としたが、架橋部の数は5本以上でもよいし、3本あるいは2本でもよい。架橋部が2つの場合は、1つの第1架橋部21に給電線23を設け、1つの第2架橋部が基板10に接続される第2接続端部14にガス感応体非被覆領域15が設けられる。
【0114】
(2)また、上述の各実施形態では、2つの第1架橋部21が基板10の対角線上の角に接続され、2つの第2架橋部22が基板10の残りの角に接続された。2つの第1架橋部21が基板10の隣接する角に接続され、2つの第2架橋部22が基板10の残りの隣接する角に接続されるよう構成してもよい。
【0115】
(3)第1〜第4の実施形態では、第2架橋部22は上面視で正方形である基板10の頂点に接続され、その点(基板10の頂点)を頂点とする所定の半径の扇形の領域にガス感応体非被覆領域15が形成されている。これを、図14に示す第5実施形態の変形例のように、基板10の頂点(接続点62)の近傍にガス感応体50を被覆形成し、その内側にガス感応体非被覆領域15(アルミナ51)も設けてもよい。このような形態であっても、第2接続端部14にガス感応体非被覆領域15が形成されているといえ、低温となるガス感応体50を小さくして第2架橋部22からの熱流出による影響を減じて、短期的な湿度依存性と長期的な感度低下が抑制されたガスセンサ1を実現することができる。
【0116】
<短期湿度影響と長期湿度影響の試験結果>
以下、第1実施形態に係る実施例1と比較例1についての短期湿度影響・長期湿度影響の試験結果を示す。その次に、第3実施形態に係る実施例2と比較例2についての長期湿度影響の試験結果を示す。
【0117】
<実施例1:第1実施形態>
支持基板2にシリコンを用いて、ベース11と第1架橋部21と第2架橋部22と絶縁層12とをSiO2で形成し、ヒータ30と電極41、42とを白金にて形成し、ガス感応体50として酸化スズを用いて、上述の第1実施形態に係る実施例1の試験サンプルを作成した。ガス感応体非被覆領域15にはアルミナが配置されている。
【0118】
<比較例1>
比較例1の試験サンプルとして、図16に示すように、基板10の全面をガス感応体50で覆う形態の試験サンプルを作成した。ガス感応体50としては実施例1と同じく酸化スズを用いた。その他の構成は実施例1と同様とした。
【0119】
<短期湿度影響>
試験サンプルを相対湿度5%、65%、90%の環境下におき、空気中における抵抗値Raとメタン3000ppmにおける抵抗値Rmを測定した。メタン(3000ppm)感度S(以下「感度S」と省略して記す。感度S=Ra/Rm)の相対湿度に対する依存性を実施例1と比較例1とで比較した。比較結果を図17に示す。
【0120】
比較例1は、相対湿度5%においては感度Sは59と高いが、相対湿度65%においては感度Sが急激に低下して12となり、相対湿度90%ではさらに下がって感度Sは6となった。
【0121】
一方、実施例1は、相対湿度5%においては感度Sは43となり、比較例1より低くなった。しかし相対湿度65%で感度Sは25、相対湿度95%で感度Sは20となり、比較例1に比べて高い感度となった。また、相対湿度5%の感度を基準とした高い湿度での感度の低下量は、比較例1に比べて実施例1は小さくなった。すなわち実施例1は、比較例1に比べて短期間の湿度依存性が小さく抑制されている。
【0122】
<長期湿度影響>
試験サンプルを45日間、温度50℃、相対湿度90%の環境下におき、空気中における抵抗値Raとメタン3000ppmにおける抵抗値Rmを測定して、感度Sを算出した。測定開始時の感度Sを初期値として、初期値との変化率を図18に示す。
【0123】
また、センサ出力が閾値を超えてガス警報器として警報を発するメタンガスの濃度(警報濃度)を測定した。警報濃度の推移を図19に示す。
【0124】
比較例1は、試験日数が経過するにつれて感度Sが低下し、試験開始から45日経過時点では、試験開始時の感度の0.6倍にまで低下した。また警報濃度については、試験日数が経過するにつれて増加し、試験開始時はメタンガス濃度が3000ppmで警報を発していたのが、45日経過時点ではメタンガス濃度が5400ppmまで増加しないと警報を発しない状態となった。
【0125】
一方実施例1では、試験日数が経過しても感度Sに大きな低下は見られず、試験開始から45日経過しても、試験開始時の感度とほぼ同じ感度を保っていた。また警報濃度についても大きな上昇は見られず、試験開始から45日経過してもメタンガス濃度が3000ppmで警報を発する状態であった。すなわち実施例1は、比較例1に比べて長期的な感度低下が抑制されている。
【0126】
<実施例2:第3実施形態>
支持基板2にシリコンを用いて、ベース11と第1架橋部21と第2架橋部22とをSiO2で形成し、抵抗体43を白金にて形成し、ガス感応体50としてパラジウム担持されたアルミナを用いて、上述の第3実施形態に係る実施例2の試験サンプルを作成した。ガス感応体非被覆領域15にはアルミナが配置されている。
【0127】
<比較例2>
比較例2の試験サンプルとして、図20に示すように、基板10の全面をガス感応体50で覆う形態の試験サンプルを作成した。ガス感応体50としては実施例1と同じくパラジウム担持されたアルミナを用いた。その他の構成は実施例2と同様とした。
【0128】
<長期湿度影響>
上述の実施例1、比較例1と同様に、試験サンプルを45日間、温度50℃、相対湿度90%の環境下におき、感度Sと警報濃度を測定する試験を行った。感度Sの初期値との変化率を図21に、警報濃度の推移を図22に示す。
【0129】
比較例2は、試験日数が経過するにつれて感度Sが低下し、試験開始から45日経過時点では、試験開始時の感度の0.7倍にまで低下した。また警報濃度については、試験日数が経過するにつれて増加し、試験開始時はメタンガス濃度が3000ppmで警報を発していたのが、45日経過時点ではメタンガス濃度が4500ppmまで増加しないと警報を発しない状態となった。
【0130】
一方実施例2では、試験日数が経過するにつれて徐々に感度Sが低下したが、試験開始から45日経過しても、試験開始時の感度と0.95倍の感度を保っていた。また警報濃度についても大きな上昇は見られず、試験開始から45日経過してもメタンガス濃度が3000ppmで警報を発する状態であった。すなわち実施例2は、比較例2に比べて長期的な感度低下が抑制されている。
【0131】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0132】
短期的な湿度依存性と長期的な感度低下が抑制されたガスセンサとして有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0133】
1 :ガスセンサ
1a :半導体式ガスセンサ
2 :支持基板
3 :空洞部
10 :基板
11 :ベース
12 :絶縁層
13 :第1接続端部
14 :第2接続端部
15 :ガス感応体非被覆領域
16 :適温部位
17 :低温部位
18 :測定寄与部位
21 :第1架橋部
22 :第2架橋部
23 :給電線
24 :検知線
25 :給電検知線(給電線)
30 :ヒータ(加熱部)
40 :検知部
41 :電極
42 :電極
43 :抵抗体(検知部)
50 :ガス感応体
51 :アルミナ
60 :第2領域
61 :中心点
62 :接続点
T :マスキングテープ
図1
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