(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の目地材は、これまでの設計基準であるレベル1地震動の変位に追随でき、大きな変位量に対応できるものとされている。
一方、近年、レベル1地震動の変位量だけでなく、レベル2地震動の変位量に対して護岸などの構造物自身が変形しても土砂、廃棄物、保有水、遮水材などの漏洩を防止できる目地材が要求され,2つの許容量に対応できるものが必要とされている。
【0006】
本発明は、上記従来技術の要望に鑑みてなされたもので、1次許容量だけでなく1次許容量を越えた変位量に対しても対応して土砂、廃棄物、保有水、遮水材などの漏洩などを防止することができる目地
材の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る目地材
の取付構造は、
目地部を挟んで隣接配置される構造物間の変位を許容して前記目地部からの漏洩を防止する目地材
の取付構造であって、
前記目地材は、
弾性素材によって形成されて前記目地部を跨いで隣接する前記構造物に両端部が固定され前記構造物間の漏洩を防止する余長部を有する2次止水部材と、
前記2次止水部材の少なくとも一方側に設けられて前記目地部を跨いで隣接する前記構造物に両端部が固定され隣接する前記構造物間の変位を許容して漏洩を防止する1次止水部材と、を備え、
前記1次止水部材を前記2次止水部材と独立して変位可能とし、設定した1次許容量の変位までは、前記1次止水部材で変位を許容して前記余長部の変位を規制し、前記1次許容量の変位を越える変位量に対しては、前記余長部により変位を許容可能に構成
されており、
前記構造物間の前記目地部の対向面に目地材取付用凹部を形成し、
前記目地材取付用凹部の前記目地部と交差する一方側の端面間または交差する対角位置の端面間に前記目地材の両端部をそれぞれ固定して構成したことを特徴とする。
【0008】
また、上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る目地材
の取付構造は、
目地部を挟んで隣接配置される構造物間の変位を許容して前記目地部からの漏洩を防止する目地材
の取付構造であって、
前記目地材は、
弾性素材によって形成されて前記目地部を跨いで隣接する前記構造物に両端部が固定され前記構造物間の漏洩を防止する余長部を有する2次止水部材と、
前記2次止水部材を変位させる力が作用する前記余長部の少なくとも一方側に設けられて前記目地部を跨いで隣接する前記構造物に両端部が固定され隣接する前記構造物間の前記余長部の変位を規制する変位規制部材と、を備え、
前記変位規制部材で、設定した1次許容量の変位までは、前記2次止水部材で漏洩を防止しながら前記余長部の変位を規制し、前記1次許容量の変位を越える変位量に対しては、前記余長部の変位の規制を解放して前記余長部により変位を許容可能に構成
されており、
前記構造物間の前記目地部の対向面に目地材取付用凹部を形成し、
前記目地材取付用凹部の前記目地部と交差する一方側の端面間または交差する対角位置の端面間に前記目地材の両端部をそれぞれ固定して構成したことを特徴とする。
【0009】
前記目地材の前記1次許容量の変位を、レベル1地震動による変位量とし、前記1次許容量の変位を越える変位量を、レベル2地震動による変位量とするようにしても良い。
【0010】
また、
前記目地材の前記1次止水部材および/または前記変位規制部材を、前記2次止水部材の両側に設けて構成するようにしても良い。
【0011】
前記目地材の前記2次止水部材の前記余長部は、蛇腹状、渦巻状、折り重ね状のいずれかで構成されるようにしても良い。
【0012】
前記目地材の前記1次止水部材と前記2次止水部材のうち、少なくとも前記2次止水部材の底部に、変形に追随する遮水材を備えて構成するようにしても良い。
【0014】
また、前記目地材取付用凹部は、前記目地部側を広く開口して形成し、
前記目地材取付用凹部の前記目地部と交差する一方側の傾斜した端面間または対角位置の傾斜した端面間に前記目地材の両端部をそれぞれ固定して構成するようにしても良い。
【0015】
前記目地材取付用凹部を、前記構造物間の前記目地部に設置した既存の目地構造と併設して構成するようにしても良い。
【0016】
前記目地材は、前記1次止水部材および/または前記変位規制部材を、前記2次止水部材の両側に設けて構成され、
既存の目地構造を前記目地部に2カ所設置し、前記2カ所の既存の目地構造の中間部に前記目地材取付用凹部を設けて前記請求項4に記載の目地材を固定して構成するようにしても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明の目地
材の取付構造によれば、1次許容量だけでなく1次許容量を越えた変位量に対しても対応して土砂、廃棄物、保有水、遮水材などの漏洩などを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の目地
材の取付構造の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
目地材10は、構造物間の目地部、例えば、海面廃棄物処分場の管理型護岸50のケーソン51,51間の目地部52を跨ぐように取り付けられ、1次許容量の変位であるレベル1地震動の変位量のみならず1次許容量の変位を越えたレベル2地震動により発生する目地部52の相対変位量を許容し、廃棄物および保有水などの漏洩を防止するものである。
なお、以下の説明では、特に記載した場合を含め、1次許容量をレベル1地震動の変位量とし、1次許容量の変位を越えた変位量をレベル2地震動による変位量として説明する。
【0020】
構造物としての海面廃棄物処分場の管理型護岸50のケーソン51は、例えば、
図1に示すように、海底地盤上に構築された捨石マウンド53上にアスファルトマット54を介して設置される。ケーソン51,51間の目地部52には、例えば、2つのシール材55,55が設けられる。2つのシール材55,55間には、アスファルトマスチックのような変形追随性遮水材が目地部遮水材56として充填されて遮水される。ケーソン51の底部の埋立地側は、アスファルトマット54から捨石マウンド53に沿って樹脂系の遮水シート57が敷かれ、アスファルトマスチック58によって押圧されて遮水される。
また、ケーソン51は、捨石マウンド53に代えて、
図2に示すように、コンクリート系、アスファルト系、土質系の遮水材を用いた不透水性地盤改良工法である深層混合処理工法により地盤改良されたトレンチ部59内に設置される場合もある。
なお、管理型護岸として用いられる構造物としては、コンクリート製、鋼板製、これらを組み合わせたハイブリッド製などのケーソンに限らず、L型ブロックやセルラーブロックなどであっても良い。
【0021】
目地材10は、このようなケーソン51,51間の目地部52に、2つのシール材55,55間に目地部遮水材56を充填して遮水する遮水工に加えて用いたり(
図3(a)参照)、これらに代えて2つの目地材10を用いて廃棄物および保有水などの漏洩を防止する(
図3(b)参照)。
目地材10が設けられる構造物としてのケーソン51,51には、目地部52を挟んで対向する端面51a、51aに上下方向に沿って目地材取付溝60,60が形成してある。目地材取付溝60,60には、それぞれ狭幅の開口部60a,60aが設けられるとともに、内部に空間60b,60bが形成される。
目地材10は、ケーソン51,51に設けられた目地材取付溝60の開口部60a,60aから両端部がそれぞれ挿し込まれた後、モルタルなどを空間60b,60bに充填して固定・設置される。
目地材取付溝60,60は、例えば
図4に示すように、ケーソン51の端面51aに横断面が矩形の凹部が形成され、矩形の凹部に横断面形状がコ字状の枠体61が取り付けられて構成される。枠体61の開口は、2枚の板材62で塞ぐようにして狭い幅の開口部60aと内部の空間60bが形成される。さらに、開口部60a,60aには、板材62の開口側端部に丸棒62aが溶接などで取り付けてある。これにより、目地材10と円弧面で接触するようにして接触による損傷を防止する。
なお、板材62の開口側端部に丸棒62aを溶接するのに代えて円弧状に加工(R加工)するようにしても良い。
【0022】
なお、この目地材取付溝60は、開口部60aが狭幅で内部に空間60bが形成されるものであれば、その横断面形状は、矩形に限らず円形など他の形状であっても良い。また、開口部60aがケーソン51の端面51a上に位置し、空間60bがケーソン51内に配置される場合に限らず、鋼材などで構成した枠体61をケーソン51の端面51aから突き出すように取り付けて目地材取付溝60とすることもできる。
また、目地材10のケーソン51,51の目地部52を跨ぐように取り付ける場合として、例えば
図5に示すように、ケーソン51,51の海側の側面に目地材10を配置する場合には、ケーソン51にアンカーボルトを植設し、図示しない押え板などを介してナット63で固定することもできる。
なお、目地材取付溝60のケーソン51の端面51aなどへの配置については、目地材10について説明した後、本発明の目地材の取付構造として詳述する。
また、この形態を用いることによって矢板式護岸にも継材として目地材10を用いることが可能である。
【0023】
本実施形態の目地材10は、1次許容量としてのレベル1地震動の変位量に追随する1次止水部材11と、1次許容量の変位を越えるレベル2地震動の変位量に追随する2次止水部材12と、で構成される。1次止水部材11は、2次止水部材12と独立して固定されて構成される。
そして、レベル1地震動までは、1次止水部材11で変位を許容して土砂、廃棄物、保有水、遮水材などの漏洩を防止する。同時に、1次止水部材11は、2次止水部材12の余長部12aの変位を規制するよう構成してある。
一方、レベル1地震動の変位量を越える変位量に対しては、1次止水部材11は破断され、2次止水部材12の余長部12aにより変位を許容可能とし、漏洩を防止するよう構成してある。
これにより、レベル1地震動に対して目地材10は、1次止水部材11によってケーソン51,51間の目地部52からの廃棄物および保有水などの漏洩を防止する。レベル2地震動に対して目地材10は、2次止水部材12によってケーソン51,51などの構造物(護岸)自体は変形しても海面廃棄物処分場内の廃棄物および保有水が目地部52から外部に漏洩(流出あるいは浸出)しないようにする。
本実施形態では、レベル1地震動に対しては、例えば、相対変位量を100〜200mmの範囲と想定し、レベル2地震動に対しては、例えば、相対変位量を最大750mmと想定する(
図4(b)参照)。
【0024】
目地材10を構成する1次止水部材11は、弾性素材によってシート状に形成されており、弾性素材の可撓性および/または図示しない伸縮部などの形状効果によりレベル1地震動の変位量を許容することができるように構成してある。目地材10では、1次止水部材11に、必要に応じて弾性素材の内部に補強材が入れられて外部を弾性素材とした補強構造が採られたものが用いられる。
1次止水部材11は、例えば、
図4に示すように、両端部に目地材取付溝60に取り付ける取付部11a,11aを備える。
取付部11aは、挿し込み固定金具64にボルト・ナット65を介して取り付けるための取付孔が所定の間隔で形成してある。取付部11aは、補強材で補強する。
1次止水部材11は、取付部11a,11aの中間部に図示しない伸縮部が一体に連結して設けられる。伸縮部は、目地部52に配置され、レベル1地震動までの変位量に追随してシール状態を保持する。
なお、1次止水部材11の伸縮部は、レベル1地震動までの変位量に追随できれば良く、その形状は、特に限定するものでなく、蛇腹状や折り返し状などこれまでの止水部材に採用されている形状を採用することができる。
【0025】
目地材10では、1次止水部材11は、2次止水部材12の少なくとも一方側に設けられる。すなわち、2次止水部材12を変位させる力が加わる上流側、または上流側および下流側の両側に設けられる。
1次止水部材11を2次止水部材12の少なくとも一方側を覆って設けることで、設定した1次許容量であるレベル1地震動までの変位量の範囲では、直接変位を生じさせる力が2次止水部材12に加わらないようにし、2次止水部材12に変位が生じないように規制する。
例えば、
図6に示すように、ケーソン51,51の海側Sや埋立側Eの側面に目地材10を配置する場合には、2次止水部材12の外側(変位させる力が加わる上流側)となる海側S(同図(a)参照)や埋立側E(同図(b)参照)に1次止水部材11を配置して2次止水部材12を覆うようにする。
一方、目地部52の間に目地材10を配置する場合には、両側から変位を生じさせる力が加わることから2次止水部材12の両側(同図(c)参照)に1次止水部材11を配置して両側を覆うようにする。
【0026】
2次止水部材12は、弾性素材によってシート状に形成されている。2次止水部材12は、目地部52を跨いで配置され、両端部が隣接する構造物であるケーソン51,51に、例えば、目地材取付溝60を介して固定される。2次止水部材12は、構造物であるケーソン51,51間のレベル2地震動による変位を許容して漏洩を防止する余長部12aを有している。
これにより、構造物であるケーソン51,51が、レベル2地震動によって護岸自体が損傷したとしても、余長部12aによって相対変位量を最大750mm(総変位量は、1500mm)としているので、ケーソン51,51などの護岸の内側の廃棄物および保有水の流出(漏洩)を防止することができる。
【0027】
2次止水部材12は、例えば、
図4に示すように、両端部に目地材取付溝60に取り付ける取付部12b,12bを備える。
取付部12bには、挿し込み固定金具64にボルト・ナット65を介して取り付けるための取付孔が所定の間隔で形成してある。取付部12bは、補強材で補強してあり、1次止水部材11の取付部11aと重ねて挿し込み固定金具64にボルト・ナット65で取り付けられる。
こうすることで、2次止水部材12の取付部12bに1次止水部材11の取付部11aを介して変位させようとする力が加わることがなく、それぞれを独立して変位させることができる。
【0028】
2次止水部材12は、取付部12b,12bの中間部に余長部12aが一体に連結して設けられる。余長部12aは、例えば、目地部52に配置され、レベル2地震動による変位量に追随してシール状態を保持する。
なお、2次止水部材12の余長部12aは、例えば、
図7に示すように、蛇腹型(同図(a)参照)、中央部で折り重ねて巻くようにした巻取り型(同図(b)参照)や両端部で折り返すようにした折返し型(同図(c)参照)などとしてレベル2地震動の変位量に追随できる長さを備えて構成される。そして、余長部12aを備えた2次止水部材12の両端部の取付部12bの間隔が目地材取付溝60,60の間隔に合わせて形成してある。
目地材10は、長手方向には、ケーソン51の高さに応じた必要な長さに形成され、複数枚の可撓性材料のシートを接着などで連結することで製造される。
なお、目地材10は、吊り上げて挿し込むなどの施工の必要に応じ、施工後切断する部分を上端部に設けておく。
【0029】
目地部52の底部については、1次止水部材11や2次止水部材12の下端部,少なくとも2次止水部材12の下端部に変形に追随する弾性体等の遮水材を取り付けるようにし、その弾性体の遮水材を目地材10の自重により圧縮して追随させることで遮水する。
また、1次止水部材11や2次止水部材12の下端部に弾性体やブラシなどを設けることにより、レベル1地震動およびレベル2地震動の目地材10の変位に対しても対応することができる。
なお、
図2に示した深層混合処理の工法により改良された地盤上のトレンチ部59内にケーソン51を設置する場合には、目地材10の下端部に弾性体を設けることなく、トレンチ部59内の遮水材によって遮水することも可能となる。
【0030】
このように構成した目地材10は、例えば
図4に示すように、ケーソン51,51の目地部52に、目地方向と直交して配置されてケーソン51,51の端面51a、51a間に目地材取付溝60,60を介して固定される。
この状態で、目地材10にレベル1地震動による変位量までの変位が生じると、1次止水部材11がその弾性および図示しない伸縮部による形状効果によって変形を許容し、廃棄物や保有水などの漏洩を防止する。このレベル1地震動による変位量までは、1次止水部材11が破断することなく、2次止水部材12の両側を覆った状態を保持し、2次止水部材12の変位を規制して余長部12aに変位をほとんど生じさせないようにする。
一方、目地材10にレベル1地震動の変位量を超えてレベル2地震動による変位が生じると、1次止水部材11は、その変位量を許容することができず、破断することになって2次止水部材12の変位の規制を解放し、例えば
図4(b)に示すように、2次止水部材12は、その余長部12aによって変位を許容する。
これにより、レベル2地震動の変位量によっても目地部52の止水性は、2次止水部材12によって確保され、例え、ケーソン51による護岸自体が変形しても廃棄物や保有水の漏洩を防止することができる。
また、目地材10では、1次止水部材11と2次止水部材12とが独立して取り付けてあるので、レベル1地震動の変位量を越えた場合には、1次止水部材11が破断するが、その影響が2次止水部材12に何ら及ばず、レベル2地震動までの変位量に対して2次止水部材12が瞬時に変位して大きな変位量を許容することができる。
【0031】
また、目地材10で、1次止水部材11を2次止水部材12の両側に設ける場合には、1次止水部材11,11間を気密状態とし、内部を真空状態にすることで、2次止水部材12の余長部12aを偏平状態にすることができ、目地材取付溝60への挿し込みの際の抵抗を軽減することが可能となる。
また、1次止水部材11を2次止水部材12の両側に設け、1次止水部材11,11間に水などの液体を入れておくことで、2次止水部材12の弾性素材同士の摩擦を軽減することができ、地震時の余長部12aの展開が抵抗を軽減して行われる。
【0032】
次に、本発明
が適用される他の目地
材について、
図8により説明する。
目地材10Aとしては、目地材10を構成する1次止水部材11に代えて変位規制部材13を用いて2次止水部材12のレベル1地震動までの変位を規制するだけの機能とし、止水性は、地震動のレベルに関係なく、常時2次止水部材12で確保する。
変位規制部材13は、止水機能は必要がなく、変位を規制することができれば良く、2次止水部材12の上下方向に間隔を開けて複数取り付けるようにしたり(
図8参照)、網状や格子状のものを2次止水部材12の一方側を覆うように配置する。
また、変位規制部材13は、1次止水部材11と同様に、レベル1地震動による変位量を超えた場合には、破断するように、弾性素材などで構成する。
変位規制部材13は、2次止水部材12の余長部12aがレベル2地震動による変位が生じるまでに、変位してしまうことを規制する必要があるため、2次止水部材12の両側に配置することが好ましい。
変位規制部材13を2次止水部材12の一方側に配置する場合には、目地材10Aに加わる変位させようとする力の2次止水部材12を挟む埋立側Eに設置する。こうすることで、2次止水部材12の余長部12aがレベル1地震動までの変位によって伸長することが防止できる。
このような目地材10Aによれば、目地材10Aの変位量がレベル1地震動による変位量を越えたときに、初めて変位規制部材13が破断され、2次止水部材12の余長部12aが伸長されて止水状態を保持したまま変位し、廃棄物や保有水の漏洩を防止することができる。
【0033】
次に、本発明の目地材の取付構造の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
本実施形態の目地材の取付構造20は、レベル2地震動による変位量を許容するため、余長部12aが長くなった目地材10,10Aであっても取付空間を十分確保することができるようにしたものである。
目地材の取付構造20では、構造物間の目地部であるケーソン51,51の目地部52の端面51a(対向面)に目地材取付用凹部21が形成される。目地材取付用凹部21は、例えば、矩形の凹部とされてこの部分の目地部52の間隔が広くしてある。矩形の凹部とされた目地材取付用凹部21の目地部52と交差する一方側の端面、例えば、
図9に示すように、目地部52と直交する埋立側Eの端面21a、21a間に、目地材10あるいは図示しない目地材10Aの両端部がそれぞれ固定されて構成される。
目地材取付用凹部21の端面21a,21aには、枠体61を取り付けた目地材取付溝60が設けられ、開口部60aと空間60bが形成されている。目地材10は、1次止水部材11と2次止水部材12とで構成された1次止水部材11の取付部11aと2次止水部材12の取付部12bとを重ねて挿し込み固定金具64にボルト・ナット65で固定される。
挿し込み固定金具64に目地材10のそれぞれの端部を固定した後、目地材取付溝60の開口部60aから挿し込み、次いで空間60bにモルタルなどを充填して固定することで、目地材の取り付けが完了する。
【0034】
このような目地材の取付構造20によれば、目地材取付用凹部21を設けることで、目地材取付溝60の間隔を広くすることができ、レベル2地震動による変位量を許容するため、余長部12aが長くなった目地材10であっても取付空間を十分確保することができる。
なお、目地材取付用凹部21の深さは、目地材10の取り付けに必要な空間を考慮して適宜決定される。
また、目地材10を取り付ける一方側の端面として埋立側Eの端面21a,21aとする場合を例に説明したが、図示しない海側Sの端面間に、目地材10の両端部をそれぞれ固定して構成することもできる。
この場合、地震時のケーソン51の変位を考えると、埋立側Eから土圧などが作用している場合には、目地部52は海側Sの方が開くことになることから埋立側Eの端面21a,21a間に目地材10を取り付けることが好ましい。
なお、目地材10Aを取り付ける場合も、目地材10と同一の工程で行われる。
【0035】
また、目地材の取付構造20Aとしては、
図10に示すように、矩形の凹部で構成した目地材取付用凹部21の一方側の端面21aと他方側の端面21bとの間に目地材10あるいは図示しない目地材10Aを配置して目地材10(10A)が目地部52を交差するように固定する。
なお、目地材10の配置以外の具体的な固定方法などは、既に説明した目地材の取付構造20と同一であり、その説明は、省略する。
このような目地材の取付構造20Aによれば、目地材取付用凹部21を設けて目地部52を交差するように目地材10を配置することで、目地材取付溝60の間隔を一層広くすることができ、レベル2地震動による変位量を許容するため、余長部12aが長くなった目地材10であっても取付空間を一層十分に確保することができる。
また、矩形の凹部で構成した目地材取付用凹部21であっても目地材10の取付部の角度が緩やかとなり、耐久性の向上や施工の容易性を確保することもできる。
なお、目地材取付用凹部21の目地部52に沿う方向の長さは、目地材10の取り付けに必要な空間を考慮して適宜決定される。
【0036】
次に、目地材の取付構造20Bでは、
図11に示すように、目地材取付用凹部22を、矩形の凹部から目地部52側を広く開口して形成してあり、目地材取付用凹部22の端面は、傾斜面で構成されている。
目地部52側を広く開口して形成した目地材取付用凹部22の目地部52と交差する一方側の端面、例えば、目地部52と直交する埋立側Eの傾斜した端面22a,22a間に、目地材10あるいは図示しない目地材10Aの両端部がそれぞれ固定されて構成される。
なお、目地材10(10A)を目地材取付用凹部22の傾斜した端面22a,22a間に配置する以外の具体的な固定方法などは、既に説明した目地材の取付構造20,20Aと同一であり、その説明は、省略する。
このような目地材の取付構造20Bによれば、目地材取付用凹部22を設けて目地部52を交差するように目地材10を配置することで、目地材取付溝60の間隔を広くすることができ、レベル2地震動による変位量を許容するため、余長部12aが長くなった目地材10であっても取付空間を十分に確保することができる。
また、傾斜した端面を備えた目地材取付用凹部22によって目地材10の取付部の角度が緩やかとなり、耐久性の向上や施工の容易性を確保することができる。
なお、目地材取付用凹部22の一方側の端面22a,22aの間隔は、目地材10(10A)の取り付けに必要な空間を考慮して適宜決定される。
【0037】
また、目地材の取付構造20Cとしては、
図12に示すように、目地材取付用凹部22を、目地部52側を広く開口して形成して傾斜面で構成された目地材取付用凹部22の傾斜した一方側の端面22aと他方側の端面22bとの間に目地材10あるいは図示しない目地材10Aを配置して目地材10(10A)が目地部52を交差するように固定する。
なお、目地材10(10A)の配置以外の具体的な固定方法などは、既に説明した目地材の取付構造20Bと同一であり、その説明は、省略する。
このような目地材の取付構造20Cによれば、目地材取付用凹部22を設けて目地部52を交差するように目地材10を配置することで、目地材取付溝60の間隔を一層広くすることができ、レベル2地震動による変位量を許容するため、余長部12aが長くなった目地材10であっても取付空間を一層十分に確保することができる。
また、傾斜した端面22a,22bを備えた目地材取付用凹部22とすることで、目地材10の取付部の角度が緩やかとなり、耐久性の向上や施工の容易性を確保することもできる。
なお、目地材取付用凹部22の傾斜した端面22a,22b間の距離(長さ)は、目地材10(10A)の取り付けに必要な空間を考慮して適時決定される。
【0038】
なお、上記目地材の取付構造20,20A,20B,20Cでは、目地部52に1つの目地材10(10A)を取り付ける場合を例に説明したが、既に
図3(a)で説明したように、目地部52の中間部に1つの目地材10(10A)を取り付け、両側には、これまでの2つのシール材55,55の間に目地部遮水材56を充填して遮水する遮水工と併用することもできる。
この場合には、ケーソン51の端面51aでの変位量は、目地部52の両端部より中央部が小さくなると考えられることから、目地部52の中央部に配置するのが好ましい。
また、目地部52に,
図3(b)に示すように、2つの目地材10(10A)海側Sと埋立側Eにそれぞれ取り付け、これまでのシール材55,55の間に目地部遮水材56を充填して遮水する遮水工を省略することもできる。
なお、2つの目地材10(10A)を設ける場合には、地震時のケーソン51の変位を考えると、埋立側Eから土圧などが作用している場合、目地部52は海側Sの方が開くことになることから1つの目地材10(10A)は、埋立側Eの近くに取り付けることが好ましい。
また、もう1つの目地材10(10A)は、ケーソン51の端面51aでの変位量は、目地部52の両端部より中央部が小さくなると考えられることから、目地部52の中央部に配置するのが好ましい。
【0039】
以上、実施の形態とともに詳細に説明したように
、目地材10によれば、目地部52を挟んで隣接配置されるケーソン51,51(構造物)間の変位を許容して目地部52からの漏洩を防止する目地材10であって、弾性素材によって形成されて目地部52を跨いで隣接するケーソン51,51に両端部が固定されケーソン51,51間の漏洩を防止する余長部12aを有する2次止水部材12と、2次止水部材12の少なくとも一方側に設けられて目地部52を跨いで隣接するケーソン51,51に両端部が固定され隣接するケーソン51,51間の変位を許容して漏洩を防止する1次止水部材11と、を備え、1次止水部材11を2次止水部材12と独立して変位可能とし、設定した1次許容量の変位までは、1次止水部材11で変位を許容して余長部12aの変位を規制し、1次許容量の変位を越える変位量に対しては、余長部12aにより変位を許容可能に構成したので、1次許容量の変位に対しては1次止水部材11によって止水状態を保持するとともに、2次止水部材12の余長部12aの変位を規制することができる。1次許容量を越える変位に対しては、1次止水部材11による変位の規制が解放され、2次止水部材12の余長部12aの変位によって止水状態を保持して廃棄物や保有水などの漏洩を防止することができる。
【0040】
目地材10Aによれば、目地部52を挟んで隣接配置されるケーソン51,51(構造物)間の変位を許容して目地部52からの漏洩を防止する目地材であって、弾性素材によって形成されて目地部52を跨いで隣接するケーソン51,51に両端部が固定されケーソン51,51間の漏洩を防止する余長部12aを有する2次止水部材12と、2次止水部材12を変位させる力が作用する余長部12aの少なくとも一方側に設けられて目地部52を跨いで隣接するケーソン51,51に両端部が固定され隣接するケーソン51,51間の余長部12aの変位を規制する変位規制部材13と、を備え、変位規制部材13で、設定した1次許容量の変位までは、2次止水部材12で漏洩を防止しながら余長部12aの変位を規制し、1次許容量の変位を越える変位量に対しては、余長部12aの変位の規制を解放して余長部12aにより変位を許容可能に構成したので、1次許容量の変位に対しては2次止水部材12によって止水状態を保持するとともに、2次止水部材12の余長部12aの変位を変位規制部材13で規制することができる。1次許容量を越える変位に対しては、変位規制部材13による変位の規制が解放され、2次止水部材12の余長部12aの変位によって止水状態を保持して廃棄物や保有水などの漏洩を防止することができる。
【0041】
目地材10,10Aによれば、1次許容量の変位を、レベル1地震動による変位量とし、1次許容量の変位を越える変位量を、レベル2地震動による変位量としたので、目地材10では、レベル1地震動の変位に対しては1次止水部材11によって止水状態を保持するとともに、2次止水部材12の余長部12aの変位を規制することができる。レベル2地震動の変位に対しては、1次止水部材11による変位の規制が解放され、2次止水部材12の余長部12aの変位によって止水状態を保持して廃棄物や保有水などの漏洩を防止することができる。目地材10Aでは、レベル1地震動の変位に対しては2次止水部材12によって止水状態を保持するとともに、2次止水部材12の余長部12aの変位を変位規制部材13で規制することができる。レベル2地震動の変位に対しては、変位規制部材13による変位の規制が解放され、2次止水部材12の余長部12aの変位によって止水状態を保持して廃棄物や保有水などの漏洩を防止することができる。
【0042】
目地材10,10Aによれば、1次止水部材11および/または変位規制部材13を、2次止水部材12の両側に設けて構成したので、1次許容量やレベル1地震動までの変位に対して2次止水部材12の余長部12aの変位を両側の1次止水部材11や変位規制部材13で規制し、1次許容量を越えるレベル2地震動に対しては、1次止水部材11や変位規制部材13での規制を解放し、余長部12aをスムーズに変位させて止水状態を保持して廃棄物や保有水などの漏洩を確実に防止することができる。
【0043】
目地材10,10Aによれば、2次止水部材12の余長部12aは、蛇腹状、渦巻状、折り重ね状のいずれかで構成されているので、1次許容量を越えるレベル2地震動の変位量に対応する長さの余長部12aをコンパクトに設けることができ、1次許容量を越えるレベル2地震動に対しては、1次止水部材11や変位規制部材13での規制を解放し、余長部12aをスムーズに変位させて止水状態を保持して廃棄物や保有水などの漏洩を確実に防止することができる。
【0044】
目地材10,10Aによれば、1次止水部材11と2次止水部材12のうち、少なくとも2次止水部材12の底部に、変形に追随する遮水材を備えて構成したので、目地部52の底部についても、1次止水部材11や2次止水部材12の両方の下端部、あるいは、少なくとも2次止水部材12の下端部に取り付けた変形に追随する弾性体等の遮水材を目地材10、10Aの自重により圧縮して追随させることで遮水することができる。
【0045】
本発明の目地材の取付構造20,20Aによれば、請求項1〜6のいずれかに記載の目地材10,10Aの取付構造であって、ケーソン51,51間(構造物間)の目地部52の対向面に目地材取付用凹部21を形成し、目地材取付用凹部21の目地部52と交差する一方側の端面21a,21a間または交差する対角位置の端面21a,21b間に目地材10,10Aの両端部をそれぞれ固定して構成したので、1次許容量を越えるレベル2地震動等による変位量に対応する長さの余長部12aを備えた目地材10,10Aであっても目地部52に取り付けスペースを確保して取り付けることができ、1次許容量を越えるレベル2地震動等に対しては、1次止水部材11や変位規制部材13での規制を解放し、余長部12aをスムーズに変位させて止水状態を保持して廃棄物や保有水などの漏洩を確実に防止することができる。
【0046】
本発明の目地材の取付構造20B,20Cによれば、目地材取付用凹部22は、目地部52側を広く開口して形成し、目地材取付用凹部22の目地部52と交差する一方側の傾斜した端面22a,22a間または対角位置の傾斜した端面22a,22b間に目地材10,10Aの両端部をそれぞれ固定して構成したので、1次許容量を越えるレベル2地震動等による変位量に対応する長さの余長部12aを備えた目地材10,10Aであっても傾斜した端面によって目地部52に取り付けスペースを確保して無理なく取り付けることができ、1次許容量を越えるレベル2地震動等に対しては、1次止水部材11や変位規制部材13での規制を解放し、余長部12aをスムーズに変位させて止水状態を保持して廃棄物や保有水などの漏洩を確実に防止することができる。
【0047】
本発明の目地材の取付構造20A,20B,20Cによれば、目地材取付用凹部21,22を、ケーソン51,51間の目地部52に設置した既存の目地構造と併設して構成することで、1次許容量を越えるレベル2地震動などによる変位量に対しても止水状態を保持して廃棄物や保有水などの漏洩を確実に防止することができる。
【0048】
本発明の目地材の取付構造20A,20B,20Cによれば、既存の目地構造を目地部52に2カ所設置し、2カ所の既存の目地構造の中間部に目地材取付用凹部21,22を設けて請求項4に記載の目地材10を固定して構成したので、中間部の1カ所の目地材10によって1次許容量やレベル1地震動までの変位に対して2次止水部材12の余長部12aの変位を両側の1次止水部材11や変位規制部材13で規制し、1次許容量を越えるレベル2地震動に対しては、1次止水部材11や変位規制部材13での規制を解放し、余長部12aをスムーズに変位させて止水状態を保持して廃棄物や保有水などの漏洩を確実に防止することができる。
【0049】
なお、上記実施の形態では、目地材の施工対象の構造物として管理型護岸のケーソンの目地部を例に、護岸内部の廃棄物や保有水などの漏洩を防止する場合について説明したが、これに限らず他の用途のケーソンなど1次許容量を越えるレベル2地震動等による変位を許容して固形物や液体など漏出や漏入を防止する必要がある目地部に広く適用することができる。
また、上記実施の形態では、1次許容量をレベル1地震動の変位量とし、1次許容量の変位を越える変位量をレベル2地震動による変位量とした場合で説明したが、これらに限らず、他の基準で1次許容量を設定することもできる。