(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一対の検出電極は、前記測定管内で水流方向の変化に起因して流速の偏りが発生する測定管の内側壁の所定範囲内で対向して配置されることを特徴とする請求項1に記載の電磁式水道メータ。
前記所定範囲は、前記流入口に流入される水道水の水流方向を表すとともに前記測定管の中心軸を通る線分を想定し、その線分を中心軸の回りに回転させた際に線分により測定管の内側壁に描かれる軌跡の範囲で定義され、
前記軌跡の範囲は、前記線分を中心軸の回りに±10度以下の範囲で回転させた際に線分が測定管の内側壁に描く軌跡の範囲に対応することを特徴とする請求項2に記載の電磁式水道メータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここに、特許文献1に記載された羽根車を用いた機械式の水道メータでは、羽根車のような可動構成物を使用する関係上、羽根車に異物が混入した場合には羽根車が動かなくなってしまい、結果的に水道水の流量を計測できなくなる虞がある。また、羽根車を使用する水道メータに大流量の水道水が流入されると、同様に羽根車が破損して水道水の流量を計測できなくなる虞もある。
【0006】
このような事情を勘案して、羽根車を使用することなく一対の検出電極を使用して、電磁的に水道水の流量を積算する、所謂、電磁式水道メータが普及している。かかる電磁式水道メータでは、メータケース内に内蔵された直管状の測定管の内壁にて対向する位置に一対の検出電極を配置するとともに電磁石を介して測定管内に磁界を形成しておき、導電性の水道水が測定管内に形成された磁界を直角に通過する際に発生する起電力を検出電極を介して検出することにより、水道水の積算流量を検出している。
【0007】
ところで、水道メータに使用されるメータケースは比較的堅牢に形成されており、長期の使用に十分耐えるものであり、前記特許文献1に記載された羽根車を使用する機械的水道メータのメータケースを電磁式水道メータのメータケースに転用することが検討されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載れた縦型水道メータに使用されるメータケースでは、前記したようにメータケースにて水平方向に開口された流入口から流入された水道水が下側部屋(導入路)に案内されるとともに、下側部屋にて水道水の水流方向が略垂直方向に変化され、その後水道水は整流器から羽根車を経てメータケースの流出口から水道管に流出される。
【0009】
このように、内部で水道水の水流方向が変化されるメータケースでは、水流方向が変化することに起因して、流量測定が行われる測定管の内側壁で流速の偏り(偏流)が発生する。かかる偏流は、水道水の流入方向に依存して測定管の内側壁で分布する傾向があり、電磁式水道メータにおいて測定管の内部を流れる水道水の流量を正確に測定するには、測定管の内側壁で大きな偏流を検出可能な位置に一対の検出電極を配置する必要がある。
【0010】
本発明は前記従来の問題点を解消するためになされたものであり、羽根車を使用する縦型水道メータのケース本体を電磁式水道メータに使用することに基づきケース本体内で水道水の水流方向が変化する場合においても、測定管の内側壁にて発生する偏流の最大値及びその周辺値を確実に検出可能な位置に一対の検出電極を配設し、水道水の流量を正確に検出することができる電磁式水道メータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため請求項1に係る電磁式水道メータは、水道水が流入される流入口及び水道水が流出される流出口を有し、流入口と流出口との間で水道水の水流方向が変化されるケース本体と、前記ケース本体内で水道水の水流方向が変化する部分に配設される測定管と、前記測定管に固定され、水道水の流速を検出する一対の検出電極と
、前記一対の検出電極により検出される水道水の流速を示す信号に基づいて水道水の流量を演算する変換器が内蔵され、前記測定管の下流側に配置される変換器ケースと、基部及び複数の足部を有し、基部を前記変換器ケースの底部に固定するとともに各足部の端部を前記測定管の下流側端部に固定することにより変換器ケースの底部と測定管の下流側端部との間に間隙を形成しつつ変換器ケースと測定管とを連結するブラケットと、を備え、前記ブラケットの足部は3つあり、この3つの足部は前記測定管の中心軸を中心とする円周上に均等に配置され、その1つの足部は前記流入口に流入される水道水の水流方向を表すとともに前記測定管の中心軸を通る線分を想定し、その線分上の前記測定管の中心軸に対して前記流入口側に配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る電磁式水道メータは、請求項1の電磁式水道メータにおいて、前記一対の検出電極は、前記測定管内で水流方向の変化に起因して流速の偏りが発生する測定管の内側壁の所定範囲内で対向して配置されることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る電磁式水道メータは、請求項1又は請求項2の電磁式水道メータにおいて、前記所定範囲は、前記流入口に流入される水道水の水流方向を表すとともに前記測定管の中心軸を通る線分を想定し、その線分を中心軸の回りに回転させた際に線分により測定管の内側壁に描かれる軌跡の範囲で定義され、前記軌跡の範囲は、前記線分を中心軸の回りに±10度以下の範囲で回転させた際に線分が測定管の内側壁に描く軌跡の範囲に対応することを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る電磁式水道メータは、請求項1乃至請求項3のいずれかの電磁式水道メータにおいて
、前記測定管を流れる水道水が当たる前記変換器ケースの底部に設けられ、測定管からの水道水を変換器ケースの底部の周囲に分散する整流部を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る電磁式水道メータは、請求項1乃至請求項4のいずれかの電磁式水道メータにおいて、前記ケース本体の内部に形成され、前記測定管の上流側端部が挿入される挿入孔と、前記測定管の上流側端部を保持するとともに前記挿入孔に嵌合され、円環状に形成されたホルダ部材とを備え、前記ホルダ部材の上流側端部には、湾曲部が形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項6係る電磁式水道メータは、請求項5の電磁式水道メータにおいて、前記挿入孔の周囲には段差部が形成され、前記ホルダ部材の周囲には、前記段差部に係止される鍔部が形成されていることを特徴とする。
【0017】
【0018】
請求項7に係る電磁式水道メータは、請求項4乃至請求項6のいずれかの電磁式水道メータにおいて、前記測定管の外周面との間に間隙を保持しつつ測定管を収納する測定管ケースと、前記変換器ケースの底部を貫通するとともに前記測定管と測定管ケースとの間隙に配置され、前記各検出電極と前記変換器ケースに収納される変換器とを電気接続する配線が挿通される防水パイプとを備え、前記防水パイプは、前記変換器ケースの底部と前記測定管の下流側端部との間に形成された間隙にて、
前記流入口に流入される水道水の水流方向を表すとともに前記測定管の中心軸を通る線分を想定し、その線分上の前記測定管の中心軸に対して前記流入口側に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る電磁式水道メータでは、流入口と流出口との間で水道水の水流方向が変化されるケース本体内で水道水の水流方向が変化する部分に測定管を配設し、測定管に水道水の流速を検出する一対の検出電極を固定したので、縦型羽根車式水道メータのケース本体を電磁式水道メータに転用して水道メータのコストを格段に低減することができる。
【0020】
請求項2に係る電磁式水道メータでは、水道水の流速を検出する一対の検出電極を測定管内で水流方向の変化に起因して流速の偏りが発生する測定管の内側壁の所定範囲内で対向して配置したので、測定管内で水道水の流速の偏りが発生した場合においても、水道水の流速のピークを確実に検出することができ、水道水の流量を高い測定精度で測定することができる。
【0021】
請求項3に係る電磁式水道メータでは、一対の検出電極が配置される測定管の内側壁における所定範囲を、流入口に流入される水道水の水流方向を表すとともに測定管の中心軸を通る線分を想定し、その線分を中心軸の回りに回転させた際に線分により測定管の内側壁に描かれる軌跡の範囲で定義し、軌跡の範囲を線分を中心軸の回りに±10度以下の範囲で回転させた際に線分が測定管の内側壁に描く軌跡の範囲に対応させたので、各検出電極の中心部が軌跡の範囲内に存在する限り最適位置から多少ずれた場合でも、水道水の流速のピークを確実に検出することができ、水道水の流量を高い測定精度で測定することができる。このように、測定管内の内側壁における一対の各検出電極の配置位置にフレキシビリティを付与することができるので、各検出電極を測定管の内側壁に容易に配置することが可能となる。
【0022】
請求項4に係る電磁式水道メータでは、一対の検出電極により検出される水道水の流速を示す信号に基づいて水道水の流量を演算する変換器が内蔵された変換器ケースを測定管の下流側に配置し、測定管を流れる水道水が当たる変換器ケースの底部に、測定管からの水道水を変換器ケースの底部の周囲に分散する整流部を備えているので、測定管から流出した水道水は整流部により変換器ケースの底部の周囲に分散され、水道水の滞留や水流の乱れ・剥離が抑制される。これにより水流の圧力損失を低減することができる。
【0023】
請求項5に係る電磁式水道メータでは、ケース本体の内部に形成され、測定管の上流側端部が挿入される挿入孔に嵌合され、測定管の上流側端部を保持する円環状に形成されたホルダ部材を備え、ホルダ部材の上流側端部には湾曲部を形成したので、ケース本体の流入口から流入した水道水は、ホルダ部材の湾曲部でスムーズに案内され、これにより測定管の上流側端部で水道水の滞留や水流の乱れ・剥離が抑制されるので水流の圧力損失を低減することができる。
【0024】
請求項6に係る電磁式水道メータでは、本体ケースの内部に形成された挿入孔の周囲に段差部が形成され、ホルダ部材の周囲には、段差部に係止される鍔部が形成されているので、水道水が測定管の上流側端部と挿入孔との間から本体ケース内に漏出してしまうことはなく、これにより流入口から流入される水道水を確実に測定管に流して正確に水量を測定することが可能となる。
【0025】
請求項
1に係る電磁式水道メータでは、基部を変換器ケースの底部に固定するとともに各足部の端部を測定管の下流側端部に固定することにより変換器ケースの底部と測定管の下流側端部との間に間隙を形成しつつ変換器ケースと測定管とを連結するブラケットを備え、ブラケットの足部は、測定管から流出される水道水の水流抵抗を低減する位置に配置されているので、ブラケットの足部が測定管から流出される水道水の水流抵抗となることはなく、これにより水流抵抗を低減して水流の圧力損失を低減することができる。
【0026】
請求項
7に係る電磁式水道メータでは、測定管の外周面との間に間隙を保持しつつ測定管を収納する測定管ケースと、変換器ケースの底部を貫通するとともに測定管と測定管ケースとの間隙に配置されて各検出電極と変換器ケースに収納される変換器とを電気接続する配線が挿通される防水パイプとを備え、防水パイプは、変換器ケースの底部と測定管の下流側端部との間に形成された間隙にて、測定管から流出される水道水の水流抵抗を低減する位置に配置されているので、防水パイプが測定管から流出される水道水の水流抵抗となることはなく、これにより水流抵抗を低減して水流の圧力損失を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る電磁式水道メータについて、本発明を具体化した実施形態に基づき図面を参照しつつ説明する。先ず、本実施形態に係る電磁式水道メータ1の基本構成について
図1乃至
図4に基づき説明する。
電磁式水道メータ1は縦型の下ケース10を有し、かかる下ケース10内には後述するメータ本体20が挿嵌されている。下ケース10の上部にはフランジ10Aが形成されており、フランジ10Aには上ケース11が接合されてボルト11Aを介して締結されている。上ケース11の中央部には円形孔11Bが形成されており、かかる円形孔11Bからはメータ本体20の一部を構成する変換部40の変換器40A(
図2参照)の上部に設けられた表示盤42が露出されている。かかる表示盤42には水道水の積算流量などが表示される。
【0029】
下ケース10は、所謂、縦型羽根車式水道メータで汎用されているケースを本実施形態の電磁式水道メータ1のケースとして転用したものであり、この結果、下ケース10内では、
図2にて矢印で示すように、水道水の水流方向が変化される。かかる事情下、下ケース10の転用を行うに際して、測定方式の相違を勘案して、以下に説明するように電磁式水道メータ1に転用できるように工夫を行っている。
【0030】
電磁式水道メータ1は水道管に配設され、下ケース10は、
図2に示すように、水道管から水道水を下ケース10内に流入する流入口12及び下ケース10から水道水を水道管に流出する流出口13が設けられている。下ケース10の上部には、円形の開口部14が設けられており、かかる開口部14の外周には、水平方向に延出されたフランジ10Aが形成されている。
【0031】
また、下ケース10は大別して2つの部屋に分割されており、流入口12に連通して下側に配置される下側部屋15及び下側部屋15から上側に連通されて下側部屋15からの水道水が送られる上側部屋16が形成されている。下側部屋15と上側部屋16とは、円形の挿入孔17を介して上下方向で連通している。かかる挿入孔17には、後述する測定管31及び測定管ケース32の上流側端部31D、32A(
図2中下側端部)が挿入されるとともに、測定管31及び測定管ケース32の上流側端部31D、32Aを保持するボトムホルダ54が嵌合される。挿入孔17の上側には、段差部17Aが形成されている。
【0032】
ボトムホルダ54は円筒状の本体部と、円形状の孔が開口された底面部54Aと、本体部の周囲から水平方向に延伸した鍔部54Bとを有する。鍔部54Bは、棚漏れ防止用パッキン55を挟んで挿入孔17の段差部17Aに係止される。また、ボトムホルダ54の上流側端部(
図2中下側端部)に対応する底面部54Aには湾曲面が形成されている。更に、測定管31の下側水平部31Bは、間に測定管パッキン56を挟んでボトムホルダ54の底面部54Aに配置される。
【0033】
メータ本体20は、基本的に測定部30及び変換部40から構成されており、測定部30と変換部40とは、接続ブラケット53を介して相互に連結されている。
【0034】
測定部30は、下ケース10内で水道水の水流方向が変化する部分に配設される測定管31、測定管31の外周面との間に間隙Sを保持しつつ測定管31を収納する測定管ケース32、測定管31の内側壁にて対向する位置に配置され測定管31を通過する水道水の流速を検出する一対の検出電極33、33、間隙Sに配置される一対の電磁コイル34を備えている。
【0035】
測定管ケース32は円筒状に形成され、測定管ケース32より小径の円筒部31Aを有する。また、測定管31の上端部および下端部は円筒部31Aより外側水平方向に折り曲げられた水平部31Bを有する。また、水平部31Bの端部は測定管ケース32と接合される。
【0036】
図3に示すように、一対の検出電極33は、その接続部33Aが測定管31の円筒部31Aを貫通し、また、その検出部33Bが測定管31の内側壁から露出するように配置される。
【0037】
ここで、
図3に示すように、一対の検出電極33を測定管31の内側壁に配置可能な範囲につき考察すると、かかる範囲は、下ケース10の流入口12から下ケース10内に流入される水道水の水流方向を表すとともに測定管31の中心軸31Cを通る線分Lを想定し、その線分Lを中心軸31Cの回りに回転させた際に線分Lにより測定管31の内側壁に描かれる軌跡の範囲で定義することができる。具体的に、かかる軌跡の範囲は、線分Lを中心軸31Cの回りに線分Lを基準に±10度以下の範囲で回転させた際に線分Lが測定管31の内側壁に描く軌跡の範囲に対応している。この軌跡の範囲は、各検出電極33における検出部33Bの検出中心が移動できる範囲である。
【0038】
一対の検出電極33は、測定管31の中心軸31Cを挟んで対向し、検出電極33における検出部33Bの中心が線分Lを通るように、測定管31の内側壁に配設される。また、一対の電磁コイル34は、測定管31の中心軸31Cを挟んで対向し、電磁コイル34の中心が線分Lと直交する線分M上に配設される。
【0039】
更に、
図2に戻って説明を続ける。測定管31の水平部31Bを貫通するように下防水パイプ35が配設され、かかる下防水パイプ35は円筒状の形状を有して上部が大径となるように階段状に形成されている。下防水パイプ35には、後述する上防水パイプ44が大径の円筒部に挿入される。
【0040】
変換部40は、基本的に測定管31の上部に配置される変換器ケース41及び変換器ケース41に収納される変換器40Aから構成される。変換器ケース41は円筒状の胴部41Bと底部41Cを有し、底部41Cには、略円錐状に下方に突出した整流部41Aを有する。変換器ケース41は、測定管31の下流側(
図2中上側)に配置される。変換器40Aは、一対の検出電極33により検出される水道水の流速を示す信号、具体的には、一対の検出電極33間に発生した電位差に基づいて測定管31を通過する水道水の流量を演算し、その演算された水道水の流量を表示盤42表示する。また、変換器40Aは、前記測定演算を行う際に電磁コイル34を通電し励磁させる。
【0041】
変換器ケース41の高さ方向の略中央部にて、変換器ケース41の外周には変換器リング43が固設されており、変換器ケース41は、変換器リング43と下ケース10のフランジ10Aとの間に上ケースパッキン51を介在させた状態で、上ケース11に対して締結固定される。
【0042】
変換器ケース41の底部41Cには、上防水パイプ44が底部41Cを貫通するように固着されている。かかる上防水パイプ44の下端部は、変換器ケース41の底部41Cから下方に突出されているとともに、その外周にOリング52が介装されている。そして、上防水パイプ44は、前記した下防水パイプ 35に挿入接合される。
【0043】
前記のように下防水パイプ35と上防水パイプ44とから構成される防水パイプには、前記した検出電極33及び電磁コイル34と変換器40Aとを接続するリード線(不図示)が挿通される。
【0044】
ここに、下防水パイプ35と上防水パイプ44とから構成される防水パイプは、変換器ケース41の底部41Cと測定管31の下流側端部(
図2中上側端部)との間に形成された間隙にて、測定管31から流出される水道水の水流抵抗を低減する位置、具体的には、
図3に示すように、測定管31の中心軸31Cに対して流入口12側(
図2において測定管31及び変換器ケース41の右側)に配置されている。
【0045】
次に、測定管31と変換器ケース41との接続構造について説明する。測定管31と変換器ケース41とは、接続ブラケット53を介して相互に連結固定されている。接続ブラケット53は、
図4に示すように、基部53A及び複数個(3個)の足部53Bを有している。基部53Aは、変換器ケース41の底部41Cに固定される。各足部53Bの下端部は、測定管31と測定管ケース32の下流側端部(
図2中上側端部)に固定される。これにより、変換器ケース41と測定管31は、変換器ケース41の底部41Cと測定管31、測定管ケース32の上端部との間に間隙を形成しつつ固定連結される。
尚、接続ブラケット53の足部53Bは、基部53Aの下面で120度間隔で形成されており、1つの足部53Bは、
図3における線分L上で流入口12側(
図2、
図3中右側)の位置にて測定管ケース32の上端部に固着され、また、残りの2つの足部53Bは、それぞれ120度間隔で測定管ケース32の上端部に固着されている。これにより、接続ブラケット53の各足部53Bは、測定管31から流出される水道水の水流抵抗を低減する位置に配置されることとなる。
【0046】
続いて、前記のように構成された電磁式水道メータ1により、水道水の流量を計測する計測方法について説明する。
水道水の流量を計測するには、変換器40Aにより電磁コイル34が励磁される。これにより測定管31内に磁界が発生される。測定管31内を導電性の水道水が通過すると、一対の検出電極33間に水道水の流速に応じた電位差が発生する。発生した電位差は、下防水パイプ35及び上防水パイプ44に挿通されたリード線(不図示)を介して変換器40Aへ伝達される。そして、変換器40Aにおいて、電位差に基づき流量が算出される。算出された流量は表示盤42に表示される。
【0047】
このとき、水道管から流入口12を通って下ケース10内に流れ込んだ水道水は、下側部屋15にて流れの向きが略垂直上方に変わり、測定管31を通過して上側部屋16に移動し、上側部屋16から流出口13に向かう。下側部屋15で流れの向きが変わるため、測定管31において、流速の偏りである、所謂偏流が発生する。具体的には、測定管31の水平断面において、流入口12側で流速は遅く、流出口13側で流速は速くなる。つまり、流速のピークとなる位置が測定管31の中心軸31Cからずれ、線分L上で高速から低速までの流速が分布する。従って、成分L上に一対の検出電極33を対向配置すれば、低速から高速までの流域を網羅して測定することができる。
これに対し、例えば、一対の検出電極33を線分Lと直交する線分M上に配置した場合には、高速および低速の流速を測定することができなくなり、この場合、広い流速分布に対し、中間の流速のみを測定することになる。この結果、測定精度が低下するおそれがある。
前記したように、線分L上に一対の検出電極33を対向配置すれば、流速のピークを含み、高速および低速の流速を含む分布の全範囲を測定することができるため、正確な測定を行うことができる。
尚、前記したように、検出電極33を配置する位置は、線分L上に限定されることはなく、
図3に示すように、線分Lを基準として中心軸31Cの回りに±10度の回転範囲内であれば良い。かかる範囲内であれば、流速のピークを含んで正確に流速の測定を行うことができる。このように、水道水の流速を正確に測定する上で、各検出電極33を測定管31の内側壁に配置するについて、線分Lを基準に±10度の回転範囲内で配置することが可能であることから、各検出電極33を測定管31の内側壁に容易に配置することができる。
【0048】
次に、水道メータ1の組み立て方法について
図4乃至
図10を用いて説明する。
図4は水道メータ1の分解斜視図である。
図5乃至
図10は組み立て手順を説明する図である。
【0049】
先ず、測定管31に下防水パイプ35を溶接接合し、測定管31に検出電極33及び電磁コイル34を組み付ける。次に、測定管31に測定管ケース32を溶接接合する(
図5参照)。続いて変換器ケース41に上防水パイプ44及び変換器リング43を溶接接合する(
図6参照)。
【0050】
次に接続ブラケット53の基部53Aに変換器ケース41を載せ、また、上防水パイプ44にOリング52を嵌めて下防水パイプ35に挿入する。そして、変換器ケース41と接続ブラケット53の基部53Aとを溶接接合するとともに、測定管ケース32と接続ブラケット53の足部53Bを溶接接合する(
図7参照)。このとき、上防水パイプ44及び下防水パイプ35並びに接続ブラケット53の1本の足部53Bとが、線分L上に配置されるように、溶接接合される。
【0051】
次に、下ケース10の挿入孔17に設けられた段差部17Aに棚漏れ防止用パッキン55を設置し、更にボトムホルダ54を挿入する。また、上ケース11のフランジ10Aに上ケースパッキン51を設置する(
図8参照)。次に測定管31の底部に測定管パッキン56を組み付け、変換器ケース41、接続ブラケット53と共に測定管31を下ケース10に挿入配置する(
図9参照)。次に、上ケース11を組み付けるべく、下ケース10のフランジ10A、上ケースパッキン51、上ケース11の順に重ねられ、下ケース10のフランジ10Aに開口されたボルト孔、上ケース11及び上ケースパッキン51に開口されたボルト孔にボルト11Aを挿入し、締結する(
図10参照)。その後、変換器40Aが組み付けられる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る電磁式水道メータ1によれば、流入口12と流出口13との間で水道水の水流方向が変化される下ケース10本体内で水道水の水流方向が変化する部分に測定管31を配設し、測定管31に水道水の流速を検出する一対の検出電極33を固定したので、ケース内で水流の方向が変化する縦型羽根車式水道メータのケースを電磁式水道メータに転用して水道メータのコストを格段に低減することができる。
【0053】
また、流入口12と流出口13との間で水道水の水流方向が変化される下ケース10本体内で水道水の水流方向が変化する部分に測定管31を配設し、水道水の流速を検出する一対の検出電極33を測定管31内で水流方向の変化に起因して流速の偏りが発生する測定管31の内側壁の所定範囲内で対向して配置したので、測定管31内で水道水の流速の偏り(偏流)が発生した場合においても、水道水の流速のピークを確実に検出することができ、水道水の流量を高い測定精度で測定することができる。
【0054】
また、一対の検出電極33が配置される測定管31の内側壁における所定範囲を、流入口12に流入される水道水の水流方向を表すとともに測定管31の中心軸31Cを通る線分Lを想定し、その線分Lを中心軸31Cの回りに回転させた際に線分Lにより測定管31の内側壁に描かれる軌跡の範囲で定義し、軌跡の範囲を線分Lを中心軸31Cの回りに±10度以下の範囲で回転させた際に線分Lが測定管31の内側壁に描く軌跡の範囲に対応させたので、各検出電極33における検出部33Bの中心部が軌跡の範囲内に存在する限り最適位置から多少ずれた場合でも、水道水の流速のピークを確実に検出することができ、水道水の流量を高い測定精度で測定することができる。このように、測定管31内の内側壁における一対の各検出電極33の配置位置にフレキシビリティを付与することができるので、各検出電極33を測定管31の内側壁に容易に配置することが可能となる。
【0055】
また、一対の検出電極33により検出される水道水の流速を示す信号に基づいて水道水の流量を演算する変換器40Aが内蔵された変換器ケース41を測定管31の下流側に配置し、測定管31を流れる水道水が当たる変換器ケース41の底部41Cに、測定管31からの水道水を変換器ケース41の底部41Cの周囲に分散する整流部41Aを備えているので、測定管31から流出した水道水は整流部41Aにより変換器ケース41の底部の周囲に分散され、水道水の滞留や水流の乱れ・剥離が抑制される。これにより水流の圧力損失を低減することができる。
【0056】
また、下ケース10の内部に形成されて測定管31の上流側端部が挿入される挿入孔17に嵌合されるとともに、測定管31の上流側端部を保持する円環状に形成されたボトムホルダ54を備え、ボトムホルダ54の上流側端部(下端部)である底面部54Aを湾曲面に形成したので、下ケース10の流入口12から流入した水道水は、ボトムホルダ54の湾曲底部54Aでスムーズに案内され、これにより測定管31の上流側端部で水道水の滞留や水流の乱れ・剥離が抑制されるので水流の圧力損失を低減することができる。
【0057】
また、下ケース10の内部に形成された挿入孔17の周囲に段差部17Aが形成され、ボトムホルダ54の周囲には、段差部17Aに係止される鍔部54Bが形成されているので、水道水が測定管31の上流側端部と挿入孔17との間から下ケース10内に漏出してしまうことはなく、これにより流入口12から流入される水道水を確実に測定管31に流して正確に水量を測定することが可能となる。
【0058】
また、基部53Aを変換器ケース41の底部41Cに固定するとともに各足部53Bの端部を測定管ケース32の下流側端部に固定することにより変換器ケース41の底部41Cと測定管31の下流側端部との間に間隙を形成しつつ変換器ケース41と測定管31とを連結する接続ブラケット53を備え、接続ブラケット53の足部53Bは、測定管31から流出される水道水の水流抵抗を低減する位置に配置されているので、接続ブラケット53の足部53Bが測定管31から流出される水道水の水流抵抗となることはなく、これにより水流抵抗を低減して水流の圧力損失を低減することができる。
【0059】
また、測定管31の外周面との間に間隙を保持しつつ測定管31を収納する測定管ケース32と、変換器ケース41の底部41Cを貫通するとともに測定管31と測定管ケース32との間隙に配置されて各検出電極33と変換器ケース41に収納される変換器40Aとを電気接続するリード線が挿通される下防水パイプ35及び上防水パイプ44とを備え、下防水パイプ35及び上防水パイプ44は、変換器ケース41の底部41Cと測定管31の下流側端部との間に形成された間隙にて、測定管31から流出される水道水の水流抵抗を低減する位置に配置されているので、下防水パイプ35及び上防水パイプ44が測定管31から流出される水道水の水流抵抗となることはなく、これにより水流抵抗を低減して水流の圧力損失を低減することができる。
【0060】
尚、前記実施形態は本発明を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。