特許第6436719号(P6436719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6436719スキンパック用熱収縮性延伸多層フィルム、それを用いたスキンパック包装体、及びスキンパック用熱収縮性延伸多層フィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6436719
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】スキンパック用熱収縮性延伸多層フィルム、それを用いたスキンパック包装体、及びスキンパック用熱収縮性延伸多層フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20181203BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20181203BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20181203BHJP
   B65D 75/30 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   B65D65/40 D
   B32B27/00 B
   B32B27/30 101
   B65D75/30 B
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-219423(P2014-219423)
(22)【出願日】2014年10月28日
(65)【公開番号】特開2016-84165(P2016-84165A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南部 翔太
(72)【発明者】
【氏名】飛田 寿徳
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 忠良
【審査官】 家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−296842(JP,A)
【文献】 特開2001−071435(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/094144(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/102695(WO,A1)
【文献】 特開2000−128112(JP,A)
【文献】 特開2010−167765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D65/40
B65D75/30
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋樹脂層、ガスバリア性樹脂層、及びヒートシール性樹脂層が外側から順に配置されており、前記ガスバリア性樹脂層が塩化ビニリデン系樹脂からなる層であり、前記架橋樹脂層と前記ガスバリア性樹脂層との間及び前記ガスバリア性樹脂層と前記ヒートシール性樹脂層との間に、エチレン−酢酸ビニル共重合体からなる中間層が配置されており、120℃における縦方向(MD)及び横方向(TD)の乾熱収縮率がそれぞれ10〜55%であり、120℃における縦方向の引張破断伸度が190%以上であることを特徴とするスキンパック用熱収縮性延伸多層フィルム。
【請求項2】
120℃における縦方向及び横方向の伸長回復率がそれぞれ90〜100%であることを特徴とする請求項1に記載のスキンパック用熱収縮性延伸多層フィルム。
【請求項3】
前記スキンパック用熱収縮性延伸多層フィルムの全厚に対して、前記架橋樹脂層と前記ガスバリア性樹脂層との間に配置されている前記中間層の厚さが30〜50%であり、前記ガスバリア性樹脂層と前記ヒートシール性樹脂層との間に配置されている前記中間層の厚さが10〜30%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスキンパック用熱収縮性延伸多層フィルム。
【請求項4】
底材と、該底材上に配置されている被包装物と、該被包装物に密着して配置されている請求項1〜のうちのいずれか一項に記載の熱収縮性延伸多層フィルムとを備えていることを特徴とするスキンパック包装体。
【請求項5】
架橋樹脂層、ガスバリア性樹脂層、及びヒートシール性樹脂層が外側から順に配置されており、前記ガスバリア性樹脂層が塩化ビニリデン系樹脂からなる層であり、前記架橋樹脂層と前記ガスバリア性樹脂層との間及び前記ガスバリア性樹脂層と前記ヒートシール性樹脂層との間に、エチレン−酢酸ビニル共重合体からなる中間層が配置されている延伸多層フィルムに、温度が70〜90℃、縦方向及び横方向の緩和率がそれぞれ8〜45%の条件で緩和処理を施して、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の熱収縮性延伸多層フィルムを得ることを特徴とするスキンパック用熱収縮性延伸多層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキンパック用熱収縮性延伸多層フィルム、それを用いたスキンパック包装体、及びスキンパック用熱収縮性延伸多層フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品包装の分野においては、外観の良い包装形態が好まれている。このような包装形態のひとつに、スキンパックがある。スキンパックは、透明な包装用フィルムを被包装物の形状に沿って密着包装させる方法であり、スキンパック包装体には皺がないため、例えば、ベーコン、ソーセージ、ハム、食肉、チーズなどの食品類の包装に汎用されている。スキンパックの基本的な技法は、底材(例えば、板紙やプラスチックシートなどの平板状のベースシートや、平板状のベースシートを所定の形状に成形した成形体)上に被包装物を置き、その上から加熱軟化したプラスチックフィルム(以下、スキンフィルムという)をかぶせ、脱気して、スキンフィルムを被包装物の形状に沿って密着させるとともに、周辺部のスキンフィルムと底材とをヒートシールする方法である。
【0003】
スキンパックの一種として、従来から、加熱真空包装法が知られている。加熱真空包装法においては、真空孔を有する凹型の熱板を備えたチャンバー内を真空にしながら、真空金型によりスキンフィルムを予備的に絞り成形し、一方、その絞り成形により形成された凹所部分と合わせられる底材上に被包装物を載せ、絞り成形されたスキンフィルムを冷却することなく、加熱軟化した状態を維持したまま、その凹所の周辺部と底材とを合わせて被包装物を覆い、チャンバー内の気圧を常圧に戻すことにより、スキンフィルムを被包装物の形状に沿って密着させ、同時に、被包装物周辺部のスキンフィルムと底材とをヒートシールする。
【0004】
また、このようなスキンパックに用いられるスキンフィルムとしては、軟質ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)/ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)/エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)からなる積層フィルム(特公昭56−49206号公報(特許文献1))、EVA/PVDC/EVAからなる積層フィルム(特公昭57−23607号公報(特許文献2))、PVC/PVDC/ポリオレフィン樹脂からなる未延伸の共押出積層フィルム(特公平6−2485号公報(特許文献3)、特開平9−216319号公報(特許文献4))、及びアイオノマー(Io)/EVA/ポリアミド(PA)/エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)/PA/EVA/高密度ポリエチレン(HDPE)からなる積層フィルムやポリエチレン(PE)/EVA/PA/EVOH/PA/EVA/HDPEからなる積層フィルム(国際公開第2011/138320号(特許文献5))などの種々の多層フィルムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭56−49206号公報
【特許文献2】特公昭57−23607号公報
【特許文献3】特公平6−2485号公報
【特許文献4】特開平9−216319号公報
【特許文献5】国際公開第2011/138320号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のスキンパック用多層フィルムはスキンパック成形性に優れているものの、スキンパックされた包装体においては、必ずしも被包装物に対する多層フィルムのフィット性が十分ではなく、特に、被包装物のコーナー部分のフィット性が十分ではなかった。
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、成形性及び被包装物に対するフィット性が高く、特に被包装物のコーナー部分のフィット性に優れたスキンパック用多層フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、架橋樹脂層、ガスバリア性樹脂層、及びヒートシール性樹脂層が外側から順に配置されている熱収縮性延伸多層フィルムがスキンパック用多層フィルムとして有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のスキンパック用熱収縮性延伸多層フィルムは、架橋樹脂層、ガスバリア性樹脂層、及びヒートシール性樹脂層が外側から順に配置されており、120℃における縦方向(MD)及び横方向(TD)の乾熱収縮率がそれぞれ10〜55%であることを特徴とするものである。
【0010】
このようなスキンパック用熱収縮性延伸多層フィルムにおいては、120℃における縦方向の引張破断伸度が190%以上であることが好ましく、また、120℃における縦方向及び横方向の伸長回復率がそれぞれ90〜100%であることが好ましい。さらに、本発明のスキンパック用熱収縮性延伸多層フィルムにおいて、前記ガスバリア性樹脂層としては塩化ビニリデン系樹脂からなる層が好ましく、また、前記架橋樹脂層としてはオレフィン系樹脂からなる層が好ましい。
【0011】
また、本発明のスキンパック包装体は、底材と、該底材上に配置されている被包装物と、該被包装物に密着して配置されている本発明のスキンパック用熱収縮性延伸多層フィルムとを備えていることを特徴とするものである。
【0012】
さらに、本発明のスキンパック用熱収縮性延伸多層フィルムの製造方法は、架橋樹脂層、ガスバリア性樹脂層、及びヒートシール性樹脂層が外側から順に配置されている延伸多層フィルムに、温度が70〜90℃、縦方向及び横方向の緩和率がそれぞれ8〜45%の条件で緩和処理を施して、請求項1〜5に記載の熱収縮性延伸多層フィルムを得ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、成形性及び被包装物に対するフィット性が高く、特に被包装物のコーナー部分のフィット性に優れたスキンパック用多層フィルムを得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0015】
先ず、本発明のスキンパック用熱収縮性延伸多層フィルムについて説明する。本発明のスキンパック用熱収縮性延伸多層フィルム(以下、単に「本発明のスキンパック用多層フィルム」ともいう)は、架橋樹脂層、ガスバリア性樹脂層、及びヒートシール性樹脂層が外側から順に配置されたものであり、必要に応じて前記架橋樹脂層と前記ガスバリア性樹脂層との間及び/又は前記ガスバリア性樹脂層と前記ヒートシール性樹脂層との間に中間層を備えていてもよい。また、各層間には接着剤層が配置されていてもよい。
【0016】
(架橋樹脂層)
本発明にかかる架橋樹脂層を構成するための架橋性樹脂としては、シングルサイト触媒又はメタロセン触媒(以下、「SSC」と略す)を用いて重合されたポリオレフィン(例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(SSC−LLDPE)、直鎖状超低密度ポリエチレン(SSC−VLDPE)、従来のポリオレフィン(たとえば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPEまたはULDPE))、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体(EMA)、エチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等のオレフィン系樹脂が挙げられる。前記エチレン−αオレフィン共重合体としては、エチレンと少量の炭素数4〜18のαオレフィン(例えば、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチルペンテン、1−オクテン)との共重合体が挙げられる。また、前記エチレン−アクリル酸エステル共重合体としては、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体等が挙げられ、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体としては、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体等が挙げられる。さらに、エチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含量としては5〜30質量%が好ましく、エチレン−アクリル酸エステル共重合体のアクリル酸エステル含量としては5〜30質量%が好ましく、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体のメタクリル酸エステル含量としては5〜30質量%が好ましい。このようなポリオレフィン系樹脂は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。これらのポリオレフィン系樹脂のうち、延伸性の観点から、LLDPE、VLDPEまたはULDPE、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0017】
(ガスバリア性樹脂層)
本発明にかかるガスバリア性樹脂層を構成するガスバリア性樹脂としては、塩化ビニリデン系樹脂(PVDC)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。これらのガスバリア性樹脂のうち、酸素ガスバリア性の湿度依存性が少ないという観点から、PVDCが特に好ましい。前記PVDCは、65〜95重量%塩化ビニリデンと該塩化ビニリデンと共重合可能な少なくとも1種の不飽和単量体5〜35重量%との共重合体である。塩化ビニリデンと共重合可能な不飽和単量体としては、塩化ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸エステル等が挙げられる。また、前記PVDCには、必要に応じて、EVAなどのポリオレフィン系樹脂(多層フィルムの再生物であってもよい)、可塑剤、安定剤等を添加してもよい。
【0018】
(ヒートシール性樹脂層)
本発明にかかるヒートシール性樹脂層を構成するヒートシール性樹脂としては、前記架橋性樹脂として例示したオレフィン系樹脂のほか、アイオノマー樹脂が挙げられる。このようなヒートシール性樹脂のうち、シール性の観点から、アイオノマー樹脂若しくはエチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましい。アイオノマー樹脂としては、ベースポリマーとして、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体又はエチレン−エチレン性不飽和カルボン酸−エチレン性不飽和カルボン酸エステル三元共重合体(好ましくは、エチレン−エチレン性不飽和カルボン酸−エチレン性不飽和カルボン酸エステル三元共重合体)を用い、これら共重合体中のカルボキシル基を陽イオンで中和した樹脂が挙げられる。前記不飽和カルボン酸としては、メタクリル酸、アクリル酸が好ましく、不飽和カルボン酸エステルとしては、メタクリル酸又はアクリル酸の炭素数1〜6のアルキルエステルが好ましい。また、前記三元共重合体としては、エチレン−メタクリル酸−アクリル酸イソブチルエステル等のエチレン−メタクリル酸(又はアクリル酸)−メタクリル酸アルキルエステル(又はアクリル酸アルキルエステル)が好ましい。
【0019】
前記陽イオンとしては、Na、K、Li、Cs、Ag、Hg、Cu、Mg2+、Zn2+、Be2+、Ca2+、Ba2+、Cu2+、Cd2+、Hg2+、Sn2+、Pb2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Al3+、Sc3+、Fe3+、Y3+などの金属イオン、有機アミン等が挙げられる。これらの陽イオンのうち、Na、K、Ca2+、Zn2+が好ましい。
【0020】
(中間層)
本発明にかかる中間層を構成する樹脂としては、前記架橋性樹脂として例示したオレフィン系樹脂が挙げられる。このようなオレフィン系樹脂のうち、フィルムの延伸性及び柔軟性の観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましい。
【0021】
また、本発明のスキンパック用多層フィルムにおいては、前記架橋樹脂層と前記ガスバリア性樹脂層との間に配置されている中間層及び前記ガスバリア性樹脂層と前記ヒートシール性樹脂層との間に配置されている中間層のうちの少なくとも一方が架橋されていることが好ましく、少なくとも前記架橋樹脂層と前記ガスバリア性樹脂層との間に配置されている中間層が架橋されていることがより好ましく、両者が架橋されていることが特に好ましい。これにより、延伸性、耐熱性、機械強度が向上する傾向にある。
【0022】
(接着剤層)
本発明のスキンパック用多層フィルムにおいては、各層間に接着剤層が配置されていてもよい。各層を接着剤層を介して接合することによって、層間剥離を抑制することができる。本発明にかかる接着剤層を構成する樹脂としては、EVA、EAA、EMA、EAA又はEMAの不飽和カルボン酸変性物又は金属変性物、酸変性VLDPE、酸変性LLDPE等が挙げられる。前記EVAの酢酸ビニル含量としては8〜28質量%が好ましく、前記EAAのアクリル酸エステル含量としては8〜28質量%が好ましく、前記EMAのメタクリル酸エステル含量としては8〜28質量%が好ましい。
【0023】
<スキンパック用熱収縮性延伸多層フィルム>
本発明のスキンパック用熱収縮性延伸多層フィルムは、架橋樹脂層、ガスバリア性樹脂層、及びヒートシール性樹脂層が外側から順に配置され、必要に応じて前記架橋樹脂層と前記ガスバリア性樹脂層との間及び/又は前記ガスバリア性樹脂層と前記ヒートシール性樹脂層との間に中間層を備えるものである。
【0024】
本発明のスキンパック用多層フィルムにおいては、120℃における縦方向(MD)及び横方向(TD)の乾熱収縮率(高温乾熱収縮率)がそれぞれ10〜55%である。高温乾熱収縮率が前記下限未満になると、被包装物に対する多層フィルムのフィット性、特に、被包装物のコーナー部分のフィット性が低下し、前記上限を超えると、スキンパック成形性が低下する。また、スキンパック成形性が向上するという観点から、高温乾熱収縮率としては10〜35%が好ましく、10〜30%がより好ましい。
【0025】
また、本発明のスキンパック用多層フィルムにおいては、120℃における縦方向(MD)の引張破断伸度(高温引張破断伸度)が190%以上であることが好ましく、195%以上であることがより好ましく、250%以上であることが特に好ましく、300%以上であることが最も好ましい。高温引張破断伸度が前記下限未満になると、スキンパック成形性が低下する傾向にある。なお、高温引張破断伸度の上限としては特に制限はないが、500%以下が好ましい。
【0026】
さらに、本発明のスキンパック用多層フィルムにおいては、120℃における縦方向(MD)及び横方向(TD)の伸長回復率(高温伸長回復率)がそれぞれ90〜100%であることが好ましい。高温伸長回復率が前記下限未満になると、被包装物に対するフィット性、特に被包装物のコーナー部分のフィット性が低下する傾向にある。
【0027】
また、本発明のスキンパック用多層フィルムにおいては、スキンパック成形性の観点から、23℃における縦方向(MD)及び横方向(TD)の引張破断伸度がそれぞれ240%以上であることが好ましく、245%以上であることがより好ましく、350%以上であることが特に好ましく、450%以上であることが最も好ましい。なお、前記引張破断伸度の上限としては特に制限はないが、600%以下が好ましい。
【0028】
さらに、本発明のスキンパック用多層フィルムにおいては、スキンパック成形性の観点から、縦方向(MD)及び横方向(TD)の2.5%シーカントモジュラスがそれぞれ75〜130MPaであることが好ましい。
【0029】
本発明のスキンパック用多層フィルムの厚さは、通常50〜200μmである。また、本発明のスキンパック用多層フィルムの全厚に対して、前記架橋樹脂層の厚さとしては1〜10%が好ましく、前記ガスバリア性樹脂層の厚さとしては1〜20%が好ましく、前記ヒートシール性樹脂層の厚さとしては10〜30%が好ましい。さらに、前記中間層の厚さとしては10〜50%が好ましく、特に、前記架橋樹脂層と前記ガスバリア性樹脂層との間に配置されている中間層の厚さとしては30〜50%が好ましく、前記ガスバリア性樹脂層と前記ヒートシール性樹脂層との間に配置されている中間層の厚さとしては10〜30%が好ましい。また、前記接着剤層の厚さとしては1〜5%が好ましい。多層フィルムの全厚が前記下限未満になると、多層フィルムの機械強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、スキンパック成形性や被包装物に対するフィット性が低下する傾向にある。
【0030】
本発明のスキンパック用多層フィルムの層構造の具体例としては以下のものが挙げられる。なお、左側の層が最外層であり、右側の層が最内層である。
(1)オレフィン系樹脂層/PVDC層/アイオノマー層。
(2)オレフィン系樹脂層/接着剤層/PVDC層/接着剤層/アイオノマー層。
(3)オレフィン系樹脂層/接着剤層/PVDC層/接着剤層/オレフィン系樹脂層。
(4)オレフィン系樹脂層/接着剤層/PVDC層/接着剤層/オレフィン系樹脂層/アイオノマー層。
(5)オレフィン系樹脂層/オレフィン系樹脂層/接着剤層/PVDC層/接着剤層/オレフィン系樹脂層/アイオノマー層。
(6)オレフィン系樹脂層/オレフィン系樹脂層/接着剤層/PVDC層/接着剤層/オレフィン系樹脂層/オレフィン系樹脂層。
【0031】
次に、本発明のスキンパック用熱収縮性延伸多層フィルムの製造方法(以下、単に「本発明のスキンパック用多層フィルムの製造方法」ともいう)について説明する。本発明のスキンパック用多層フィルムは、架橋樹脂層、ガスバリア性樹脂層、及びヒートシール性樹脂層が外側から順に配置されている延伸多層フィルムに所定の条件で緩和処理を施すことによって製造することができる。
【0032】
本発明に用いられる延伸多層フィルムは公知の方法により製造することができる。例えば、架橋樹脂層、ガスバリア性樹脂層、ヒートシール性樹脂層、必要に応じて中間層及び接着剤層を構成する各樹脂を、積層数に応じた台数の押出機を用いて、所定の層構造となるように、環状ダイから筒状に押出し、得られた筒状体をインフレーション法により二軸延伸したり、或いは、Tダイを用いて平面状に押出し、得られた平板状多層フィルムをテンター法により一軸又は二軸延伸したりすることによって、熱収縮性が付与された延伸多層フィルムを得ることができる。
【0033】
延伸倍率としては、通常、縦方向(MD)が2.0〜5.0倍、横方向(TD)が2.0〜5.0倍である。延伸倍率が前記下限未満になると、延伸時のバブルショルダーが不安定になり、製膜が不安定になる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、過延伸によるフィルムの白化や破断により製膜性が低下する傾向にある。
【0034】
また、前記延伸多層フィルムを製造するに際し、延伸前又は延伸後に、公知の方法により多層フィルムに放射線照射することが好ましい。これにより、前記架橋樹脂層を構成する架橋性樹脂及び中間層(特に、前記架橋樹脂層と前記ガスバリア性樹脂層との間に配置されている中間層)を構成するオレフィン系樹脂が架橋され、延伸性、耐熱性、機械強度が向上する傾向にある。照射する放射線としては、α線、β線、電子線、γ線、X線等が挙げられる。これらのうち、照射前後での架橋効果が大きいという観点から、電子線及びγ線が好ましく、電子線がより好ましい。
【0035】
放射線の照射条件としては、例えば、電子線照射の場合、加速電圧が150〜500kVであることが好ましく、照射線量が10〜200キログレイ(kGy)であることが好ましい。加速電圧や照射線量が前記下限未満になると、前記架橋樹脂層及び前記中間層を十分に架橋することができない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記ガスバリア性樹脂がPVDC層の場合、PVDCの分解が発生する場合がある。
【0036】
本発明のスキンパック用多層フィルムの製造方法においては、このようにして得られた延伸多層フィルムに所定の条件で緩和処理を施す。これにより、高温乾熱収縮率が所定の範囲にある熱収縮性延伸多層フィルムを得ることができる。また、このようにして得られた熱収縮性延伸多層フィルムにおいては、高温引張破断伸度及び高温伸長回復率についても所定の条件を満たす傾向にある。
【0037】
本発明にかかる緩和処理時の温度は70〜90℃である。緩和処理時の温度が前記下限未満になると、所定の高温乾熱収縮率及び高温引張破断伸度が付与されず、スキンパック成形性が低下し、他方、前記上限を超えると、緩和処理における加熱時に不安定となり、安定して巻き取ることができなくなる。また、スキンパック成形性が向上するという観点から、緩和処理時の温度としては80〜90℃が好ましい。本発明にかかる緩和処理時間としては、例えば、熱処理塔の高さが2mの場合には、熱処理塔内を1〜20秒間で通過させることが好ましい。
【0038】
本発明にかかる緩和率は、縦方向(MD)及び横方向(TD)のそれぞれについて8〜45%である。緩和率が前記下限未満になると、所定の高温乾熱収縮率及び高温引張破断伸度が付与されず、スキンパック成形性が低下し、他方、前記上限を超えると、所定の高温乾熱収縮率及び高温伸長回復率が付与されず、被包装物に対するフィット性が低下する。また、スキンパック成形性が向上するという観点から、緩和率としては25〜45%が好ましい。
【0039】
次に、本発明のスキンパック包装体について説明する。本発明のスキンパック包装体は、底材と、この底材上に配置されている被包装物と、この被包装物に密着して配置されている本発明のスキンパック用熱収縮性延伸多層フィルムとを備えている。本発明のスキンパック用熱収縮性延伸多層フィルムは、スキンパック成形性及び被包装物に対するフィット性、特に、被包装物のコーナー部分のフィット性に優れているため、例えば、前記被包装物として、ベーコン、ソーセージ、ハム、食肉、チーズ等のコーナー部分を有する食品をスキンパックするための多層フィルムとして最適である。
【0040】
本発明のスキンパック包装体に用いられる底材としては特に制限はなく、例えば、従来のスキンパック包装体に用いられている汎用の平板状底材フィルム(例えば、板紙やプラスチックシートなどの平板状ベースシート)を底材として使用することができる。また、このような平板状底材フィルムを所望の形状に成形した成形体を底材として使用することもできる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例1〜7で使用した樹脂を以下に示す。
(1)塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体(PVDC)
(株)クレハ製「塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体」、密度=1.71g/cm、融点=140℃。
(2)線状超低密度ポリエチレン(VLDPE)
(株)プライムポリマー製「モアテック0398CN」、密度=0.907g/cm、MFR(190℃)=3.3g/10min、融点=117℃。
(3)エチレン−酢酸ビニル共重合体(18%EVA)
TPI Polene社製「Polene N8038F」、密度=0.941g/cm、MFR(190℃)=2.8g/10min、融点=85℃、酢酸ビニル含有量=18質量%。
(4)エチレン−酢酸ビニル共重合体(15%EVA)
TPI Polene社製「Polene N8036」、密度=0.937g/cm、MFR(190℃)=2.3g/10min、融点=90℃、酢酸ビニル含有量=15質量%。
(5)エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)
18%EMA(三井・デュポンポリケミカル(株)製「エルバロイ1218AC」、密度=0.940g/cm、MFR(190℃)=2.0g/10min、融点=94℃、メチルアクリレート含有量=18質量%)と9%EMA(三井・デュポンポリケミカル(株)製「エルバロイ1209AC」、密度=0.927g/cm、MFR(190℃)=2.0g/10min、融点=101℃、メチルアクリレート含有量=9質量%)とを、18%EMA:9%EMA=33質量%:67質量%の割合で混合して使用した。
(6)アイオノマー樹脂(アイオノマー)
三井デュポンポリケミカル(株)製「ハイミランAM79301」、密度=0.94g/cm、MFR(190℃)=2.8g/10min、融点=92℃。
【0042】
また、実施例及び比較例で得られた多層フィルムの各物性の測定方法を以下に示す。
【0043】
(1)引張破断強度及び引張破断伸度
幅10mm、長さ100mmの短冊状のフィルム試料をテンシロン万能材料試験機(オリエンテック社製「RTC−1210型」)に装着(チャック間距離50mm)し、温度23℃、引張速度500mm/minで伸張させ、フィルム試料が破断した時の応力(引張破断強度)と伸び(引張破断伸度)を、23℃、50%RHの条件下で測定した。この測定は、多層フィルムの縦方向(MD)及び横方向(TD)のそれぞれについて行なった。1試料について5回試験を行い、その平均値を引張破断強度及び引張破断伸度とし、縦方向及び横方向のそれぞれについて求めた。
【0044】
(2)2.5%シーカントモジュラス
幅20mm、長さ150mmの短冊状のフィルム試料をテンシロン万能材料試験機(オリエンテック社製「RTC−1210型」)に装着(チャック間距離100mm)し、23℃、50%RHの条件下で、引張速度10mm/minで伸張させ、伸度2.5%伸長時の応力を測定し、得られた値を40倍して値を求めた。1試料について5回試験を行い、その平均値を2.5%シーカントモジュラスとし、縦方向及び横方向のそれぞれについて求めた。
【0045】
(3)高温乾熱収縮率
厚み3mmのダンボール紙を網棚の上に敷いておいたギアーオーブン((株)清水理化学機器製作所製)を予め120℃に調整し、その中に得られた多層フィルムの縦方向(MD)及び横方向(TD)に100mmの距離で印をつけたフィルム試料を入れ、3秒以内に扉を閉めた。30秒間ギアーオーブン中に測定用試料を保持した後、取り出して自然冷却したフィルム試料の印をつけた距離を測定し、100mmからの減少値の原長100mmに対する割合を百分率で表示した。1試料について5回試験を行い、その平均値を高温乾熱収縮率とし、縦方向及び横方向のそれぞれについて求めた。
【0046】
(4)高温引張破断伸度
幅10mm、長さ70mmのフィルム試料をテンシロン万能材料試験機(オリエンテック社製「RTC−1210型」)に装着(チャック間距離20mm)し、予め温度120℃に調整しておいた恒温槽内で30秒間保持し、その後温度120℃、引張速度500mm/minで伸張させ、フィルム試料が破断した時の多層フィルムの縦方向(MD)の伸び(引張破断伸度)を測定した。1試料について5回試験を行い、その平均値を高温引張破断伸度とした。
【0047】
(5)高温伸長回復率
幅20mm、長さ150mmのフィルム試料をテンシロン万能材料試験機(オリエンテック社製「RTC−1210型」)に装着(チャック間距離100mm)し、予め温度120℃に調整しておいた恒温槽内で30秒間保持し、その後温度120℃、引張速度500mm/minで測定変位130mm(伸度130%)まで伸張させ、同速度で初期の位置に戻した。荷重がゼロになった時の変位(Xzero)から下記式:
伸長回復率(%)=(130−Xzero)/130×100
により伸長回復率を算出した。1試料について5回試験を行い、その平均値を高温伸長回復率とし、縦方向及び横方向のそれぞれについて求めた。
【0048】
(6)突刺し強度
23℃、50%相対湿度で、リング内径44mmφの中空台にセットしたフィルム試料の中心部において、先端曲率半径1mmの突刺し治具を用いて速度50mm/minで突刺しを行い、最大荷重を測定した。この測定は、多層フィルムの表側から(架橋樹脂層から)と裏側(シール層から)のそれぞれについて行なった。1試料について5回試験を行い、その平均値を突刺し強度とし、表側および裏側のそれぞれについて求めた。
【0049】
(7)スキンパックの成形性
真空スキン包装機(MULTIVAC社製「R575CD」)を使用し、下記の条件でスキンパック包装体を作成して成形性を評価した。ふた材(スキンパックフイルム)には、幅425mmにスリットした多層フィルムを使用し、底材には汎用底材フィルム(PE/EVOH/PE、幅425mm、厚み350μm)を使用した。深さ50mm、縦175mm、横275mmの金型を使用し、必要に応じて50〜70℃で予備加熱した後、金型温度150〜170℃でゴム製擬似内容物(高さ40mm、縦40mm、横115mm)をスキンパックした。このときの成形性を以下の基準で評価した。
<成形性>
A:予備加熱なしで成形可能。
B:予備加熱すれば成形可能。
C:予備加熱してもフィルムが破断して成形不可能。
【0050】
(8)スキンパック包装体のフィット性
小型真空スキン包装機(大森機械(株)製)使用し、下記条件でスキンパック包装体を作成しフィット性を評価した。ふた材(スキンパックフィルム)には、縦300mm、横500mmのサイズで切り出した多層フィルムを使用し、底材にはふた材と同サイズで切り出した汎用底材フィルム(PE/EVOH/PE、厚み350μm)を使用した。深さ18mm、縦120mm、横245mmの金型を使用し、金型温度110℃で市販の円柱型ハム(厚さ10mm)3枚(約45g)をスキンパックした。得られた包装体のコーナー部分のフィット性を以下の基準で評価した。
<フィット性>
A:フィルムが浮くところなく内容物に密着している。
B:フィルムの一部が内容物から浮いている。
C:内容物の端でフィルムが底材から浮いて皺になっている。
【0051】
(実施例1)
ポリ塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体(PVDC)、線状超低密度ポリエチレン(VLDPE)、酢酸ビニル含量が18質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(18%EVA)、酢酸ビニル含量が15質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(15%EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、及びアイオノマー樹脂(アイオノマー)の6種類の樹脂を6台の押出機で別々に押出し、溶融された各樹脂を共押出環状ダイに導入し、最外層から最内層に向かってVLDPE(5.5)/18%EVA(40.6)/EMA(2.7)/PVDC(12.1)/EMA(2.7)/15%EVA(18.2)/アイオノマー(18.2)の順に溶融接合し、ダイ内で7層として共押出し、溶融筒状体を得た。なお、前記各層の括弧内の数値は、全厚に対する各層の厚みの割合(単位:%)である。また、ダイ出口部での溶融筒状体の樹脂温度は200℃であった。得られた溶融筒状体を10℃の冷水シャワーリングによって冷却した後、扁平幅196mm、厚さ608μmの扁平筒状体を得た。
【0052】
この扁平筒状体に、加速電圧275KeVの電子線照射装置中で筒状体の外側から電子線照射して100キログレイの照射線量を与えた。次に、85℃の熱水槽を通過させ、11℃のエアリングで冷却しながらインフレーション法で縦方向(MD)に3.40倍、横方向(TD)に3.25倍の同時二軸延伸を行い、折り幅637mm、厚さ55μmの二軸延伸筒状体を得た。
【0053】
次に、得られた二軸延伸筒状体を筒長2mの熱処理塔に導入し、スチームにより70℃に加熱しながら12秒間通過させて、縦方向(MD)に20%、横方向(TD)に10%の緩和処理を施して、幅573mm、厚さ76μmの熱収縮性延伸多層筒状体を得た。この熱収縮性延伸多層筒状体の両耳を切り、幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムを巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表1に示す。なお、この熱収縮性延伸多層フィルムにおいては、VLDPE層及び18%EVA層が架橋されている。
【0054】
(実施例2)
緩和処理時の温度を80℃に変更し、横方向(TD)の緩和率を8%に変更した以外は実施例1と同様にして、幅585mm、厚さ75μmの熱収縮性延伸多層筒状体を得た。実施例1と同様にこの筒状体の両耳を切り、幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムとして巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表1に示す。
【0055】
(実施例3)
縦方向(MD)の緩和率を24%、横方向(TD)の緩和率を20%に変更した以外は実施例1と同様にして、幅510mm、厚さ90μmの熱収縮性延伸多層筒状体を得た。実施例1と同様にこの筒状体の両耳を切り、幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムとして巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表1に示す。
【0056】
(実施例4)
緩和処理時の温度を80℃に変更し、縦方向(MD)の緩和率を26%、横方向(TD)の緩和率を21%に変更した以外は実施例1と同様にして、幅503mm、厚さ94μmの熱収縮性延伸多層筒状体を得た。実施例1と同様にこの筒状体の両耳を切り、幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムとして巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表1に示す。
【0057】
(実施例5)
緩和処理時の温度を80℃に変更し、縦方向(MD)の緩和率を32%、横方向(TD)の緩和率を30%に変更した以外は実施例1と同様にして、幅446mm、厚さ116μmの熱収縮性延伸多層筒状体を得た。この熱収縮性延伸多層筒状体の片耳を切り、開いて幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムとして巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表1に示す。
【0058】
(実施例6)
緩和処理時の温度を80℃に変更し、縦方向(MD)の緩和率を42%、横方向(TD)の緩和率を40%に変更した以外は実施例1と同様にして、幅370mm、厚さ158μmの熱収縮性延伸多層筒状体を得た。実施例5と同様にこの筒状体の片耳を切り、開いて幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムを巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表1に示す。
【0059】
(実施例7)
緩和処理時の温度を90℃に変更し、縦方向(MD)の緩和率を36%、横方向(TD)の緩和率を39%に変更した以外は実施例1と同様にして、幅390mm、厚さ140μmの熱収縮性延伸多層筒状体を得た。実施例5と同様にこの筒状体の片耳を切り、開いて幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムとして巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表1に示す。
【0060】
(実施例8)
実施例7と同様にして得られた熱収縮性延伸多層フィルムに、緊張状態で140℃の乾熱炉に3分間通す熱処理を施した。この熱処理後の熱収縮性多層フィルムの厚みを測定したところ、147μmであった。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表1に示す。
【0061】
(実施例9)
実施例7と同様にして得られた熱収縮性延伸多層フィルムに、緊張状態で140℃の乾熱炉に7分間通す熱処理を施した。この熱処理後の熱収縮性多層フィルムの厚みを測定したところ162μmであった。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表1に示す。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表1に示す。
【0062】
(比較例1)
実施例1と同様に同時二軸延伸して折り幅637mm、厚さ55μmの二軸延伸筒状体を得た。得られた二軸延伸筒状体を緩和処理せずに両耳を切り、幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムとして巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表2に示す。
【0063】
(比較例2)
緩和処理時の温度を60℃に変更し、縦方向(MD)の緩和率を4%、横方向(TD)の緩和率を3%に変更した以外は実施例1と同様にして、幅620mm、厚さ59μmの熱収縮性延伸多層筒状体を得た。実施例1と同様にこの筒状体の両耳を切り、幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムとして巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表2に示す。
【0064】
(比較例3)
縦方向(MD)の緩和率を7%、横方向(TD)の緩和率を3%に変更した以外は実施例1と同様にして、幅616mm、厚さ61μmの熱収縮性延伸多層筒状体を得た。実施例1と同様にこの筒状体の両耳を切り、幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムとして巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表2に示す。
【0065】
(比較例4)
緩和処理時の温度を80℃に変更し、縦方向(MD)の緩和率を12%、横方向(TD)の緩和率を7%に変更した以外は実施例1と同様にして、幅594mm、厚さ67μmの熱収縮性延伸多層筒状体を得た。実施例1と同様にこの筒状体の両耳を切り、幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムとして巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表2に示す。
【0066】
(比較例5)
緩和処理時の温度を60℃に変更し、縦方向(MD)の緩和率を9%に変更した以外は実施例1と同様にして、幅574mm、厚さ67μmの熱収縮性延伸多層筒状体を得た。実施例1と同様にこの筒状体の両耳を切り、幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムとして巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表2に示す。
【0067】
(比較例6)
実施例7と同様にして得られた熱収縮性延伸多層フィルムに、緊張状態で140℃の乾熱炉に10分間通す熱処理を施した。この熱処理後の熱収縮性多層フィルムの厚みを測定したところ160μmであった。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表2に示す。
【0068】
(比較例7)
比較例6と同様にして得られた熱収縮性延伸多層フィルムに、緊張状態で再度120℃の乾熱炉に1分間通す熱処理を施した。この熱処理後の熱収縮性多層フイルムの厚みを測定したところ170μmであった。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表2に示す。
【0069】
(比較例8)
従来用いられる非収縮性の多層スキンパックフィルムは、以下の5種類の樹脂を用いて作製した。
(1)線状超低密度ポリエチレン(VLDPE)
(株)プライムポリマー製「モアテック0278G」。
(2)エチレン−酢酸ビニル共重合体(19%EVA)
三井・デュポンポリケミカル(株)製「エバフレックスV430RC」。
(3)接着性ポリオレフィン(ADMER)
三井化学(株)製「アドマーAT1707E」。
(4)エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)
日本合成化学工業(株)製「ソアノールE3808」、エチレン含量=38モル%。
(5)線状低密度ポリエチレン(LLDPE)
(株)プライムポリマー製「エボリューSP0540」。
【0070】
7台の押出機を使用し、上記5種の樹脂材料を別々に溶融混練し、多層フィルムの各層が下記の厚みになるようにドラフト比を設定し、Tダイ共押出により最外層から最内層に向かってLLDPE(15μm)/19%EVA(50μm)/ADMER(3μm)/EVOH(8μm)/ADMER(3μm)/19%EVA(46μm)/VLDPE(16μm)の7層構成の溶融体を作製し、40℃のチルドロール上で急冷し、ドラフトして全厚141μmの未延伸多層フィルムを得た。この未延伸多層フィルムを電子線照射によって架橋した。得られた非収縮性の未延伸多層スキンパックフィルムの物性の測定結果を表2に示す。なお、この非収縮性未延伸多層スキンパックフィルムにおいては、7層すべてが架橋されている。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
表1に示した結果から明らかなように、120℃における乾熱収縮率が10〜55%である本発明の熱収縮性延伸多層フィルム(実施例1〜9)は、高温伸長回復率及び高温引張破断伸度が高く、良好なスキンパック成形性及びフィット性を有しており、スキンパック用フィルムに適していることが確認された。
【0074】
一方、表2に示した結果から明らかなように、120℃における乾熱収縮率が55%を超える熱収縮性延伸多層フィルム(比較例1〜5)は、高温引張破断伸度が低く、スキンパック成形性に劣るものであることがわかった。また、120℃における乾熱収縮率が10%未満の熱収縮性延伸多層フィルム(比較例6)及び非収縮性多層フィルム(比較例7〜8)は、高温伸長回復率が低く、フィット性に劣るものであることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上説明したように、本発明によれば、成形性及び被包装物に対するフィット性が高く、特に被包装物のコーナー部分のフィット性に優れた熱収縮性延伸多層フィルムを得ることが可能となる。
したがって、本発明のスキンパック用熱収縮性延伸多層フィルムは、被包装物のコーナー部分のフィット性に優れているため、ベーコン、ソーセージ、ハム、食肉、チーズ等のコーナー部分を有する食品をスキンパックするための多層フィルムとして有用である。