【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例1〜7で使用した樹脂を以下に示す。
(1)塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体(PVDC)
(株)クレハ製「塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体」、密度=1.71g/cm
3、融点=140℃。
(2)線状超低密度ポリエチレン(VLDPE)
(株)プライムポリマー製「モアテック0398CN」、密度=0.907g/cm
3、MFR(190℃)=3.3g/10min、融点=117℃。
(3)エチレン−酢酸ビニル共重合体(18%EVA)
TPI Polene社製「Polene N8038F」、密度=0.941g/cm
3、MFR(190℃)=2.8g/10min、融点=85℃、酢酸ビニル含有量=18質量%。
(4)エチレン−酢酸ビニル共重合体(15%EVA)
TPI Polene社製「Polene N8036」、密度=0.937g/cm
3、MFR(190℃)=2.3g/10min、融点=90℃、酢酸ビニル含有量=15質量%。
(5)エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)
18%EMA(三井・デュポンポリケミカル(株)製「エルバロイ1218AC」、密度=0.940g/cm
3、MFR(190℃)=2.0g/10min、融点=94℃、メチルアクリレート含有量=18質量%)と9%EMA(三井・デュポンポリケミカル(株)製「エルバロイ1209AC」、密度=0.927g/cm
3、MFR(190℃)=2.0g/10min、融点=101℃、メチルアクリレート含有量=9質量%)とを、18%EMA:9%EMA=33質量%:67質量%の割合で混合して使用した。
(6)アイオノマー樹脂(アイオノマー)
三井デュポンポリケミカル(株)製「ハイミランAM79301」、密度=0.94g/cm
3、MFR(190℃)=2.8g/10min、融点=92℃。
【0042】
また、実施例及び比較例で得られた多層フィルムの各物性の測定方法を以下に示す。
【0043】
(1)引張破断強度及び引張破断伸度
幅10mm、長さ100mmの短冊状のフィルム試料をテンシロン万能材料試験機(オリエンテック社製「RTC−1210型」)に装着(チャック間距離50mm)し、温度23℃、引張速度500mm/minで伸張させ、フィルム試料が破断した時の応力(引張破断強度)と伸び(引張破断伸度)を、23℃、50%RHの条件下で測定した。この測定は、多層フィルムの縦方向(MD)及び横方向(TD)のそれぞれについて行なった。1試料について5回試験を行い、その平均値を引張破断強度及び引張破断伸度とし、縦方向及び横方向のそれぞれについて求めた。
【0044】
(2)2.5%シーカントモジュラス
幅20mm、長さ150mmの短冊状のフィルム試料をテンシロン万能材料試験機(オリエンテック社製「RTC−1210型」)に装着(チャック間距離100mm)し、23℃、50%RHの条件下で、引張速度10mm/minで伸張させ、伸度2.5%伸長時の応力を測定し、得られた値を40倍して値を求めた。1試料について5回試験を行い、その平均値を2.5%シーカントモジュラスとし、縦方向及び横方向のそれぞれについて求めた。
【0045】
(3)高温乾熱収縮率
厚み3mmのダンボール紙を網棚の上に敷いておいたギアーオーブン((株)清水理化学機器製作所製)を予め120℃に調整し、その中に得られた多層フィルムの縦方向(MD)及び横方向(TD)に100mmの距離で印をつけたフィルム試料を入れ、3秒以内に扉を閉めた。30秒間ギアーオーブン中に測定用試料を保持した後、取り出して自然冷却したフィルム試料の印をつけた距離を測定し、100mmからの減少値の原長100mmに対する割合を百分率で表示した。1試料について5回試験を行い、その平均値を高温乾熱収縮率とし、縦方向及び横方向のそれぞれについて求めた。
【0046】
(4)高温引張破断伸度
幅10mm、長さ70mmのフィルム試料をテンシロン万能材料試験機(オリエンテック社製「RTC−1210型」)に装着(チャック間距離20mm)し、予め温度120℃に調整しておいた恒温槽内で30秒間保持し、その後温度120℃、引張速度500mm/minで伸張させ、フィルム試料が破断した時の多層フィルムの縦方向(MD)の伸び(引張破断伸度)を測定した。1試料について5回試験を行い、その平均値を高温引張破断伸度とした。
【0047】
(5)高温伸長回復率
幅20mm、長さ150mmのフィルム試料をテンシロン万能材料試験機(オリエンテック社製「RTC−1210型」)に装着(チャック間距離100mm)し、予め温度120℃に調整しておいた恒温槽内で30秒間保持し、その後温度120℃、引張速度500mm/minで測定変位130mm(伸度130%)まで伸張させ、同速度で初期の位置に戻した。荷重がゼロになった時の変位(X
zero)から下記式:
伸長回復率(%)=(130−X
zero)/130×100
により伸長回復率を算出した。1試料について5回試験を行い、その平均値を高温伸長回復率とし、縦方向及び横方向のそれぞれについて求めた。
【0048】
(6)突刺し強度
23℃、50%相対湿度で、リング内径44mmφの中空台にセットしたフィルム試料の中心部において、先端曲率半径1mmの突刺し治具を用いて速度50mm/minで突刺しを行い、最大荷重を測定した。この測定は、多層フィルムの表側から(架橋樹脂層から)と裏側(シール層から)のそれぞれについて行なった。1試料について5回試験を行い、その平均値を突刺し強度とし、表側および裏側のそれぞれについて求めた。
【0049】
(7)スキンパックの成形性
真空スキン包装機(MULTIVAC社製「R575CD」)を使用し、下記の条件でスキンパック包装体を作成して成形性を評価した。ふた材(スキンパックフイルム)には、幅425mmにスリットした多層フィルムを使用し、底材には汎用底材フィルム(PE/EVOH/PE、幅425mm、厚み350μm)を使用した。深さ50mm、縦175mm、横275mmの金型を使用し、必要に応じて50〜70℃で予備加熱した後、金型温度150〜170℃でゴム製擬似内容物(高さ40mm、縦40mm、横115mm)をスキンパックした。このときの成形性を以下の基準で評価した。
<成形性>
A:予備加熱なしで成形可能。
B:予備加熱すれば成形可能。
C:予備加熱してもフィルムが破断して成形不可能。
【0050】
(8)スキンパック包装体のフィット性
小型真空スキン包装機(大森機械(株)製)使用し、下記条件でスキンパック包装体を作成しフィット性を評価した。ふた材(スキンパックフィルム)には、縦300mm、横500mmのサイズで切り出した多層フィルムを使用し、底材にはふた材と同サイズで切り出した汎用底材フィルム(PE/EVOH/PE、厚み350μm)を使用した。深さ18mm、縦120mm、横245mmの金型を使用し、金型温度110℃で市販の円柱型ハム(厚さ10mm)3枚(約45g)をスキンパックした。得られた包装体のコーナー部分のフィット性を以下の基準で評価した。
<フィット性>
A:フィルムが浮くところなく内容物に密着している。
B:フィルムの一部が内容物から浮いている。
C:内容物の端でフィルムが底材から浮いて皺になっている。
【0051】
(実施例1)
ポリ塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体(PVDC)、線状超低密度ポリエチレン(VLDPE)、酢酸ビニル含量が18質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(18%EVA)、酢酸ビニル含量が15質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(15%EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、及びアイオノマー樹脂(アイオノマー)の6種類の樹脂を6台の押出機で別々に押出し、溶融された各樹脂を共押出環状ダイに導入し、最外層から最内層に向かってVLDPE(5.5)/18%EVA(40.6)/EMA(2.7)/PVDC(12.1)/EMA(2.7)/15%EVA(18.2)/アイオノマー(18.2)の順に溶融接合し、ダイ内で7層として共押出し、溶融筒状体を得た。なお、前記各層の括弧内の数値は、全厚に対する各層の厚みの割合(単位:%)である。また、ダイ出口部での溶融筒状体の樹脂温度は200℃であった。得られた溶融筒状体を10℃の冷水シャワーリングによって冷却した後、扁平幅196mm、厚さ608μmの扁平筒状体を得た。
【0052】
この扁平筒状体に、加速電圧275KeVの電子線照射装置中で筒状体の外側から電子線照射して100キログレイの照射線量を与えた。次に、85℃の熱水槽を通過させ、11℃のエアリングで冷却しながらインフレーション法で縦方向(MD)に3.40倍、横方向(TD)に3.25倍の同時二軸延伸を行い、折り幅637mm、厚さ55μmの二軸延伸筒状体を得た。
【0053】
次に、得られた二軸延伸筒状体を筒長2mの熱処理塔に導入し、スチームにより70℃に加熱しながら12秒間通過させて、縦方向(MD)に20%、横方向(TD)に10%の緩和処理を施して、幅573mm、厚さ76μmの熱収縮性延伸多層筒状体を得た。この熱収縮性延伸多層筒状体の両耳を切り、幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムを巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表1に示す。なお、この熱収縮性延伸多層フィルムにおいては、VLDPE層及び18%EVA層が架橋されている。
【0054】
(実施例2)
緩和処理時の温度を80℃に変更し、横方向(TD)の緩和率を8%に変更した以外は実施例1と同様にして、幅585mm、厚さ75μmの熱収縮性延伸多層筒状体を得た。実施例1と同様にこの筒状体の両耳を切り、幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムとして巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表1に示す。
【0055】
(実施例3)
縦方向(MD)の緩和率を24%、横方向(TD)の緩和率を20%に変更した以外は実施例1と同様にして、幅510mm、厚さ90μmの熱収縮性延伸多層筒状体を得た。実施例1と同様にこの筒状体の両耳を切り、幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムとして巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表1に示す。
【0056】
(実施例4)
緩和処理時の温度を80℃に変更し、縦方向(MD)の緩和率を26%、横方向(TD)の緩和率を21%に変更した以外は実施例1と同様にして、幅503mm、厚さ94μmの熱収縮性延伸多層筒状体を得た。実施例1と同様にこの筒状体の両耳を切り、幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムとして巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表1に示す。
【0057】
(実施例5)
緩和処理時の温度を80℃に変更し、縦方向(MD)の緩和率を32%、横方向(TD)の緩和率を30%に変更した以外は実施例1と同様にして、幅446mm、厚さ116μmの熱収縮性延伸多層筒状体を得た。この熱収縮性延伸多層筒状体の片耳を切り、開いて幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムとして巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表1に示す。
【0058】
(実施例6)
緩和処理時の温度を80℃に変更し、縦方向(MD)の緩和率を42%、横方向(TD)の緩和率を40%に変更した以外は実施例1と同様にして、幅370mm、厚さ158μmの熱収縮性延伸多層筒状体を得た。実施例5と同様にこの筒状体の片耳を切り、開いて幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムを巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表1に示す。
【0059】
(実施例7)
緩和処理時の温度を90℃に変更し、縦方向(MD)の緩和率を36%、横方向(TD)の緩和率を39%に変更した以外は実施例1と同様にして、幅390mm、厚さ140μmの熱収縮性延伸多層筒状体を得た。実施例5と同様にこの筒状体の片耳を切り、開いて幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムとして巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表1に示す。
【0060】
(実施例8)
実施例7と同様にして得られた熱収縮性延伸多層フィルムに、緊張状態で140℃の乾熱炉に3分間通す熱処理を施した。この熱処理後の熱収縮性多層フィルムの厚みを測定したところ、147μmであった。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表1に示す。
【0061】
(実施例9)
実施例7と同様にして得られた熱収縮性延伸多層フィルムに、緊張状態で140℃の乾熱炉に7分間通す熱処理を施した。この熱処理後の熱収縮性多層フィルムの厚みを測定したところ162μmであった。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表1に示す。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表1に示す。
【0062】
(比較例1)
実施例1と同様に同時二軸延伸して折り幅637mm、厚さ55μmの二軸延伸筒状体を得た。得られた二軸延伸筒状体を緩和処理せずに両耳を切り、幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムとして巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表2に示す。
【0063】
(比較例2)
緩和処理時の温度を60℃に変更し、縦方向(MD)の緩和率を4%、横方向(TD)の緩和率を3%に変更した以外は実施例1と同様にして、幅620mm、厚さ59μmの熱収縮性延伸多層筒状体を得た。実施例1と同様にこの筒状体の両耳を切り、幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムとして巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表2に示す。
【0064】
(比較例3)
縦方向(MD)の緩和率を7%、横方向(TD)の緩和率を3%に変更した以外は実施例1と同様にして、幅616mm、厚さ61μmの熱収縮性延伸多層筒状体を得た。実施例1と同様にこの筒状体の両耳を切り、幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムとして巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表2に示す。
【0065】
(比較例4)
緩和処理時の温度を80℃に変更し、縦方向(MD)の緩和率を12%、横方向(TD)の緩和率を7%に変更した以外は実施例1と同様にして、幅594mm、厚さ67μmの熱収縮性延伸多層筒状体を得た。実施例1と同様にこの筒状体の両耳を切り、幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムとして巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表2に示す。
【0066】
(比較例5)
緩和処理時の温度を60℃に変更し、縦方向(MD)の緩和率を9%に変更した以外は実施例1と同様にして、幅574mm、厚さ67μmの熱収縮性延伸多層筒状体を得た。実施例1と同様にこの筒状体の両耳を切り、幅480mmの熱収縮性延伸多層フィルムとして巻き取った。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表2に示す。
【0067】
(比較例6)
実施例7と同様にして得られた熱収縮性延伸多層フィルムに、緊張状態で140℃の乾熱炉に10分間通す熱処理を施した。この熱処理後の熱収縮性多層フィルムの厚みを測定したところ160μmであった。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表2に示す。
【0068】
(比較例7)
比較例6と同様にして得られた熱収縮性延伸多層フィルムに、緊張状態で再度120℃の乾熱炉に1分間通す熱処理を施した。この熱処理後の熱収縮性多層フイルムの厚みを測定したところ170μmであった。この熱収縮性延伸多層フィルムの物性の測定結果を表2に示す。
【0069】
(比較例8)
従来用いられる非収縮性の多層スキンパックフィルムは、以下の5種類の樹脂を用いて作製した。
(1)線状超低密度ポリエチレン(VLDPE)
(株)プライムポリマー製「モアテック0278G」。
(2)エチレン−酢酸ビニル共重合体(19%EVA)
三井・デュポンポリケミカル(株)製「エバフレックスV430RC」。
(3)接着性ポリオレフィン(ADMER)
三井化学(株)製「アドマーAT1707E」。
(4)エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)
日本合成化学工業(株)製「ソアノールE3808」、エチレン含量=38モル%。
(5)線状低密度ポリエチレン(LLDPE)
(株)プライムポリマー製「エボリューSP0540」。
【0070】
7台の押出機を使用し、上記5種の樹脂材料を別々に溶融混練し、多層フィルムの各層が下記の厚みになるようにドラフト比を設定し、Tダイ共押出により最外層から最内層に向かってLLDPE(15μm)/19%EVA(50μm)/ADMER(3μm)/EVOH(8μm)/ADMER(3μm)/19%EVA(46μm)/VLDPE(16μm)の7層構成の溶融体を作製し、40℃のチルドロール上で急冷し、ドラフトして全厚141μmの未延伸多層フィルムを得た。この未延伸多層フィルムを電子線照射によって架橋した。得られた非収縮性の未延伸多層スキンパックフィルムの物性の測定結果を表2に示す。なお、この非収縮性未延伸多層スキンパックフィルムにおいては、7層すべてが架橋されている。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
表1に示した結果から明らかなように、120℃における乾熱収縮率が10〜55%である本発明の熱収縮性延伸多層フィルム(実施例1〜9)は、高温伸長回復率及び高温引張破断伸度が高く、良好なスキンパック成形性及びフィット性を有しており、スキンパック用フィルムに適していることが確認された。
【0074】
一方、表2に示した結果から明らかなように、120℃における乾熱収縮率が55%を超える熱収縮性延伸多層フィルム(比較例1〜5)は、高温引張破断伸度が低く、スキンパック成形性に劣るものであることがわかった。また、120℃における乾熱収縮率が10%未満の熱収縮性延伸多層フィルム(比較例6)及び非収縮性多層フィルム(比較例7〜8)は、高温伸長回復率が低く、フィット性に劣るものであることがわかった。