特許第6436740号(P6436740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6436740
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】地上脱出用の避難扉装置
(51)【国際特許分類】
   A62B 3/00 20060101AFI20181203BHJP
   E06B 5/01 20060101ALI20181203BHJP
   E05F 11/04 20060101ALI20181203BHJP
   E21F 11/00 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   A62B3/00 Z
   E06B5/01
   E05F11/04
   E21F11/00
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-236077(P2014-236077)
(22)【出願日】2014年11月21日
(65)【公開番号】特開2016-97035(P2016-97035A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】野永 正夫
(72)【発明者】
【氏名】越井 宣博
(72)【発明者】
【氏名】平垣 駿
【審査官】 堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−155387(JP,A)
【文献】 実公昭50−021840(JP,Y1)
【文献】 特開2003−253955(JP,A)
【文献】 特開平11−303519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 1/00− 5/00
35/00−99/00
E05F 1/00−13/04、17/00
E06B 5/00− 5/20
E21F 1/00−17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下空間から地上に脱出するための避難通路の地上出口に、該地上出口を開閉して地上出口から地上に脱出するため設けられる地上脱出用の避難扉装置において、該避難扉装置を、前後方向に長く地上出口の開閉をするための避難扉と、該避難扉の吊元部に設けられ、軸心が左右方向を向き、周回り方向に回動して避難扉の開閉をするための水平軸と、該水平軸に一体に設けられ、自重降下することで閉鎖している避難扉を開放作動させるため水平軸よりも吊元側に設けられる錘体と、錘体による避難扉の自動開放に制動を与えて避難扉を閉鎖姿勢に維持するためのブレーキ装置と、該ブレーキ装置の制動解除をして避難扉を開放させるため操作される開放操作具と、開放姿勢の避難扉を閉鎖姿勢に復帰させるため水平軸に連動連結された駆動装置とを備えて構成するにあたり、錘体は、避難通路の天井部に位置し、避難通路の上方で上下動するものであって、避難通路の左右側壁間の寸法の中心となる前後方向の中心線に対して左右対称状に配される一方、駆動装置は、避難通路の天井部でかつ水平軸よりも吊元側に配され、前記避難通路の中心線に対して左右対称になる左右二箇所で動力伝動機構を介して水平軸に連動連結されていると共に、前記動力伝動機構と錘体とは、前記錘体の自重降下状態で側面視したときに互いにオーバーラップするよう構成されていることを特徴とする地上脱出用の避難扉装置。
【請求項2】
錘体は、左右一対に分割されたものが、避難通路の中心線から左右に離間した位置に左右に間隙を存して配され、駆動装置は、左右の分割錘体間の間隙に配され、分割錘体よりも左右内側位置で水平軸に連動連結されていることを特徴とする請求項1記載の地上脱出用の避難扉装置。
【請求項3】
錘体は、一体化されたものが避難通路の中心線を通る左右方向中央位置に配され、駆動装置は、錘体よりも吊元側に配され、錘体よりも左右外側位置で水平軸に連動連結されていることを特徴とする請求項1記載の地上脱出用の避難扉装置。
【請求項4】
錘体、駆動装置、動力伝動機構は、何れも避難通路の左右幅内に配されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1記載の避難扉装置。
【請求項5】
錘体は、避難扉が閉鎖している通常時では下端縁が地上面とほぼ同じ高さとなるように配設されていることを特徴とする請求項1乃至の何れか1記載の地上脱出用の避難扉装置。
【請求項6】
避難扉は、吊元側端と戸先側端とが低く前後方向中央部が高い側面視で円弧形状になっていることを特徴とする請求項1乃至の何れか1記載の地上脱出用の避難扉装置。
【請求項7】
避難扉の左右側面には、閉鎖姿勢の避難扉の左右両側面を閉鎖するための側板が設けられていることを特徴とする請求項1乃至の何れか1記載の地上脱出用の避難扉装置。
【請求項8】
少なくとも一方の側板には、地上からの進入用の子扉が設けられていることを特徴とする請求項記載の地上脱出用の避難扉装置。
【請求項9】
避難通路の子扉が設けられる側の側壁には、子扉から進入した者が避難通路床面に下りるための梯子が設けられていることを特徴とする請求項8記載の地上脱出用の避難扉装置。
【請求項10】
駆動装置は、地上から開閉できるカバーで覆蓋されていて、地上から操作できるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至の何れか1記載の地上脱出用の避難扉装置。
【請求項11】
避難通路には、全開姿勢になった避難扉に当接するストッパが設けられていることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1に記載の地上脱出用の避難扉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下道、地下鉄、地下街等の地下空間から地上に脱出するための地上脱出用の避難扉装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の地下空間においては、火災や事故等が発生した場合に、地上に非常脱出するための避難通路が設けられている。このような避難通路からの地上出口を、例えば道路わきの歩道にしたような場合、地上出口が開放したままであると、誤って人が地下空間に進入することがあり、そこで常時は、地上出口を避難扉で開閉自在に閉鎖しておくことが要求される。
このようなものとして、避難扉の吊元部を水平軸を介して揺動自在に軸支する一方、水平軸よりも吊元側に延設した連結アームに錘体を設け、そして通常時はブレーキ装置の制動で避難扉を閉鎖姿勢に維持するようにしている。このような状態で地下空間に火災等の異常が発生した場合、地下空間にいる避難者は、避難通路を通って地上に避難することになるが、この避難通路を上がってきた避難者は解除操作具を操作することでブレーキ装置の制動が解除され、これにより錘体が自重を受けて下がることにより水平軸が回動して避難扉が自動的に開放するようにして避難者が地上に避難できるようにしたものが提唱されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-155387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記従来のものは、錘体が避難通路の左右何れか一側方の側壁に沿って上下移動するよう配されると共に、開放姿勢になった避難扉を閉鎖姿勢に復帰させるための駆動装置も、該一側方で水平軸に連動連結された構造になっている。このため、避難扉を開閉揺動させるための水平軸に対し、錘体から受ける避難扉を開放するための荷重、および駆動装置から受ける避難扉を閉鎖するための荷重が共に一側方からの片利き状態で働くことになってしまう結果、避難扉の開放作動がぎこちなくなってしまう惧れがあるだけでなく、錘体の上下の作動スペースを避難通路の一方の側壁部位に確保しなければならないため、その分、避難通路が狭くなるという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、地下空間から地上に脱出するための避難通路の地上出口に、該地上出口を開閉して地上出口から地上に脱出するため設けられる地上脱出用の避難扉装置において、該避難扉装置を、前後方向に長く地上出口の開閉をするための避難扉と、該避難扉の吊元部に設けられ、軸心が左右方向を向き、周回り方向に回動して避難扉の開閉をするための水平軸と、該水平軸に一体に設けられ、自重降下することで閉鎖している避難扉を開放作動させるため水平軸よりも吊元側に設けられる錘体と、錘体による避難扉の自動開放に制動を与えて避難扉を閉鎖姿勢に維持するためのブレーキ装置と、該ブレーキ装置の制動解除をして避難扉を開放させるため操作される開放操作具と、開放姿勢の避難扉を閉鎖姿勢に復帰させるため水平軸に連動連結された駆動装置とを備えて構成するにあたり、錘体は、避難通路の天井部に位置し、避難通路の上方で上下動するものであって、避難通路の左右側壁間の寸法の中心となる前後方向の中心線に対して左右対称状に配される一方、駆動装置は、避難通路の天井部でかつ水平軸よりも吊元側に配され、前記避難通路の中心線に対して左右対称になる左右二箇所で動力伝動機構を介して水平軸に連動連結されていると共に、前記動力伝動機構と錘体とは、前記錘体の自重降下状態で側面視したときに互いにオーバーラップするよう構成されていることを特徴とする地上脱出用の避難扉装置である。
請求項2の発明は、錘体は、左右一対に分割されたものが、避難通路の中心線から左右に離間した位置に左右に間隙を存して配され、駆動装置は、左右の分割錘体間の間隙に配され、分割錘体よりも左右内側位置で水平軸に連動連結されていることを特徴とする請求項1記載の地上脱出用の避難扉装置である。
請求項3の発明は、錘体は、一体化されたものが避難通路の中心線を通る左右方向中央位置に配され、駆動装置は、錘体よりも吊元側に配され、錘体よりも左右外側位置で水平軸に連動連結されていることを特徴とする請求項1記載の地上脱出用の避難扉装置である。
請求項の発明は、錘体、駆動装置、動力伝動機構は、何れも避難通路の左右幅内に配されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1記載の避難扉装置である。
請求項の発明は、錘体は、避難扉が閉鎖している通常時では下端縁が地上面とほぼ同じ高さとなるように配設されていることを特徴とする請求項1乃至の何れか1記載の地上脱出用の避難扉装置である。
請求項の発明は、避難扉は、吊元側端と戸先側端とが低く前後方向中央部が高い側面視で円弧形状になっていることを特徴とする請求項1乃至の何れか1記載の地上脱出用の避難扉装置である。
請求項の発明は、避難扉の左右側面には、閉鎖姿勢の避難扉の左右両側面を閉鎖するための側板が設けられていることを特徴とする請求項1乃至の何れか1記載の地上脱出用の避難扉装置である。
請求項の発明は、少なくとも一方の側板には、地上からの進入用の子扉が設けられていることを特徴とする請求項記載の地上脱出用の避難扉装置である。
請求項の発明は、避難通路の子扉が設けられる側の側壁には、子扉から進入した者が避難通路床面に下りるための梯子が設けられていることを特徴とする請求項8記載の地上脱出用の避難扉装置である。
請求項10の発明は、駆動装置は、地上から開閉できるカバーで覆蓋されていて、地上から操作できるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至の何れか1記載の地上脱出用の避難扉装置である。
請求項11の発明は、避難通路には、全開姿勢になった避難扉に当接するストッパが設けられていることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1に記載の地上脱出用の避難扉装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、錘体が天井部に配されることになって避難通路の左右幅を犠牲にすることがなく、避難通路を左右に広いものにできる。しかも錘体および駆動装置からの水平軸に対する連結が、避難通路の左右側壁間の寸法の中心となる前後方向の中心線に対して左右対称状になる結果、左右方向一側方から行うもののように片利き状態になって、避難扉の開閉動作がぎこちなくなってしまう惧れがなく、円滑な開閉作動を行うことができる。
請求項2の発明とすることにより、避難通路の天井部に錘体が左右に分割した状態で左右に対称状に離間する状態で配され、しかもこのあいだに駆動装置が配される結果、駆動装置と錘体とが側面視したときにオーバーラップした配置構成となって、避難扉の開閉作動のぎこちなさを解消したものでありながら、避難扉装置の前後長さを短いものにできることになる。
請求項3の発明とすることにより、避難通路の天井部に、錘体と駆動装置とが前後に直列した納まり構造となって天井収納の簡略化が図れることになると共に、避難通路を幅広くできない場合に有効である。
請求項の発明とすることにより、錘体の配設スペースを地上にすることができることになって避難通路のスペースを広くすることができる。
請求項の発明とすることにより、避難扉が地上から円弧状に突出することとなり、この結果、地上にいる者に避難扉の存在を意識させることができる。
請求項の発明とすることにより、円弧状に突出した避難扉の側面が塞がれることになり、誤って地上にいる者が避難通路に入り込んでしまうことがない。
請求項8、9の発明とすることにより、消防隊のような緊急事態対処者の子扉から避難通路を通っての地下空間への進入が容易になる。
請求項10の発明とすることにより、駆動装置を地上が操作できることになって操作性が向上する。
請求項11の発明とすることにより、全開姿勢の避難扉を安定化できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】地下通路から地上への避難経路を示す概略斜視図である。
図2】避難扉装置の全体斜視図である。
図3】避難扉を省略した状態の避難扉装置の平面図である。
図4】避難扉装置の左右一側方から見た状態の側面図である。
図5】避難扉装置の左右他側方から見た状態の側面図である。
図6】避難扉装置の水平軸部位の縦断面正面図である。
図7】避難扉を開放した状態を示す側面図である。
図8】第二の実施の形態の避難扉を省略した状態の避難扉装置の平面図である。
図9】第二の実施の形態の避難扉装置の左右一側方から見た状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1は地下通路であって、該地下通路1から地上の歩道2に通じる避難通路3が形成されており、該避難通路3の地上出口4に本発明が実施された避難扉5が開閉自在に設けられている。因みに本実施の形態では、避難通路3は直線状の階段となっており、途中に踊り場3aが設けられているが、つづら折り状の階段であっても坂道状であっても良い。
【0009】
前記避難扉5は、側面視したときに吊元側端と戸先側端が低く、前後方向中央部が高い円弧形状をした板状体で形成されており、その基端部位(吊元側部位)の下面には下方に向けて垂下する支持フレーム6、7が前後に設けられ、該支持フレーム6、7の下端に前後方向に長い水平フレーム8が設けられるが、該水平フレーム8の基端(吊元側端)には、地上面GLと略同位置となる状態で軸心が左右方向を向いた水平軸9が避難通路3の左右の側壁3bに設けた左右の支持ブラケット10に回動自在に軸支されている。
【0010】
水平軸9の左右両端部には、避難通路3の左右の側壁3b間の寸法の中心となる前後方向の中心線Lに対して左右対称状になるよう左右一対の支持アーム11が水平軸9よりもさらに吊元側(避難扉5とは逆側)に向けて延設され、該支持アーム11に左右に分割された錘体12が設けられており、これによって錘体12は、左右に分割されたものが左右に間隙を存して離間した状態で中心線Lに対して左右対称状に設けられているが、さらに錘体12は避難通路3の上方の天井部(本実施の形態では踊り場3aの上方天井部)にあって、通常時では下端縁が略地上面GLに位置するように配されている。
【0011】
一方、避難通路3の天井部には、左右の錘体12間の間隙に配される(左右の支持アーム11に挟まれる)状態で駆動装置13が配設されているが、該駆動装置13は、図3から明らかなように、水平軸9よりも吊元側に配されている。そして該駆動装置13に設けられる駆動スプロケット13aは、水平軸9に設けた従動スプロケット9aにチエン14を介して連動連結されている。そして本実施の形態では、駆動スプロケット13a、従動スプロケット9a並びにチエン14による動力伝動機構Kは、錘体12の左右内側位置において、前記中心線Lに対して左右対称となるように配されている。また、駆動装置13にはブレーキ装置が内装されている。そしてこのように構成されることにより、錘体12、駆動装置13並びに動力伝動機構Kは、図3から明らかなように、何れも避難通路3の左右幅内に配された(納まった)配置構成になっている。
そして避難扉5が閉鎖している平常時は、ブレーキ装置による制動が働き、これによって駆動装置13は制動状態に維持され、前記動力伝動機構Kは作動することはなく、避難扉5は閉鎖姿勢に維持されているが、地下通路1において火災が発生する等の異常事態が発生し、地下通路1から避難通路3を上がってきて地上出口4に近づいた避難者が、避難通路3の側壁3bに設けた開放操作具(ブレーキ解除具)15を操作してブレーキ開放をすると、動力伝動機構Kは自由作動が許容され、これにより避難扉5は、錘体12が自重下降することを受けて上方への開放作動をすることになって、避難者は避難扉5が開放した地上出口4から地上の歩道2に脱出できるようになっている。そしてこの場合に、自重降下した状態の錘体12と動力伝動機構Kとは、図4、5から明らかなように、側面視したときに互いにオーバーラップするよう配された構成になっている。
【0012】
このようにして開放した避難扉5を再び閉鎖状態に戻すには、前記駆動装置13を用いて行うことになるが、本実施の形態では、駆動装置13はハンドルを手動で動かす手動式のものを採用しているが、電動式にしても勿論よい。
【0013】
因みに、本実施の形態の避難扉装置には次のような配慮がなされている。まず、雨水等の水の浸入を防ぐため、避難扉5は、地上面GLよりも高くなるようコンクリート等で盛り上げた盛り上げ部Fに設けられている。
また前述したように避難扉5は円弧形状をしているため、左右両側面が開放することになるが、この開放部位を側板16で閉塞している。そしてこのものでは道路とは反対側の側板16に子扉17が開閉自在に設けられるが、該子扉17は、消防隊員や管理者等の者が地下通路1に進入するためのものであって、これらの者が所持する鍵によって施錠−解錠できるよう鍵穴17aが設けられると共に、消防ホースから噴出する水圧によって解錠できるようホース孔17bが設けられている。そして子扉17は、これらの人間が進入しやすいよう盛り上げ部Fが切欠かれた部位に設けられている。
さらに避難通路3の側壁3bには、開放した子扉17から進入する者が避難通路3の床面に降りるための梯子18と、前記避難扉5が全開したときに錘体12および/または支持アーム11が当接してこれ以上の開放作動を規制するためのストッパ19が設けられており、避難扉5の全開時の安定化が図れることになる。
また20は錘体12および駆動装置13を開閉自在に覆蓋するためのカバーであって、該カバー20を開放することにより駆動装置13等のメンテナンスと共に、前記手動での閉鎖作動ができるようになっており、21は警報灯24や図示しない警報ブザー等を作動せしめたりするための制御盤である。さらに22は避難扉5を開放した場合に、側板16と避難扉5の左右側縁部とのあいだの間隙に展開されて、ここからの人の進入を防止する防護ネット、23は手摺りである。前記警報灯24は、開閉扉5が開放しているあいだは点灯するようになっている。また避難扉5の戸先側端部にはゴム材25が設けられ、戸尻側端部にはスポンジ材26が設けられ、さらに側板16の上面にもスポンジ材27が設けられていて閉扉時の封止性を維持するようになっている。
【0014】
叙述の如く構成された本実施の形態において、地下空間において火災等の異常が発生し、地下空間にいた者は、避難者となって地下通路3を上がってきて地上出口4近傍に達することになるが、該達した避難者が避難通路側壁3bに設けた開放操作具15を操作してブレーキ装置の制動解除をすると、動力伝動機構Kは自由作動が許容されることになり、これによって避難扉5は、錘体12の自重を受けた下動により開放することになって地上出口4から歩道2に脱出できることになる。
【0015】
このように本発明が実施されたものにおいては、地下空間にいた避難者は、異常が発生したときに避難扉5が錘体12の自重を受けて自動開放することにより地上に脱出することができるが、錘体12は、避難通路3の上方の天井部において上下動するものであるため、避難通路3の左右幅が狭くなったり、錘体12の上下動させるスペースを避難通路3の側壁3bにわざわざ確保する必要がない。
しかもこのものでは、錘体12は、通常時において地上面GLよりも上側の空間に配置されるようになっているため、避難通路のスペースを広くすることができる。
【0016】
しかも錘体12は、左右に分割されたものが、避難通路3の中心線Lに対して左右対称状に配されているため、錘体12の荷重が水平軸9に対して左右均等状に作用することになって、片利き状態で作用する場合のようにぎこちなくなる惧れもなく円滑な避難扉5の開放作動がなされることになる。
【0017】
そのうえ開放した避難扉5を閉鎖する場合に、カバー20を開けることで地上から駆動装置13を駆動させる操作ができることになるが、駆動装置13と水平軸9との連結が、避難通路5の中心線Lに対して左右対称状になっているため、ここにおいても片利き状態で作用するものに比して円滑な閉鎖作動を行えることになる。
【0018】
また本実施の形態では、錘体12を左右に分割し、その間に駆動装置13を配設したため、側面視したときに錘体12と駆動装置13がオーバーラップした配置となり、後述する第二の実施の形態のように、駆動装置13を錘体12に対してさらに吊元側に配置したものに対して避難扉装置の前後長さを短くすることができるという利点がある。
【0019】
さらに避難扉5は、吊元側端と戸先側端とが低く前後方向中央部が高い側面視で円弧形状になっているため、地上においてその存在を小山のようなものとして認識することができ、この結果、地上にいる者が誤って閉鎖姿勢の避難扉上に載ってしまうようなことを回避することができる。
そしてこの場合に、避難扉5の左右側面は、閉鎖姿勢の避難扉5の左右両側面を閉鎖するための側板16が設けられているため、避難扉を地上において認識されやすい円弧状にしたものでありながら、避難扉5の側面から避難通路5に入り込んでしまうようなことを回避することができる。
【0020】
また避難通路3の一方の側板3bには、地上からの進入用の子扉17が設けられ、避難通路側壁3bには、子扉17から進入した者が避難通路床面に下りるための梯子18が設けられているため、消火をするため消防隊員の進入が、避難通路3側からの操作による避難扉5の開放を待つ必要もなく迅速にできることになる。
【0021】
尚、本発明は前記実施の形態に限定されるものでないことは勿論であって、例えば以下に説明をする図8、9に示す第二の実施の形態のようにしてもよい。このものにおいて、第一の実施の形態と同じものについては同じ引出符号を用い、その詳細については省略する。
【0022】
第二の実施の形態が第一の実施の形態と相違する点は、錘体12が分割型でない点、錘体12と駆動装置13の配置が異なる点、駆動装置13と水平軸9との連結構造が異なる点が相違しており、以下、この相違点について説明する。
まず錘体12についてであるが、本第二の実施の形態の錘体12は、一体化されたものとなっており、避難通路3の中心線Lを通る左右方向中心位置に左右対称状に配されている。一方、駆動装置13は、錘体12よりもさらに吊元側に配されることで、駆動装置13と錘体12とは前後方向に位置ずれした状態で配されている。駆動装置13に設けられる駆動スプロケット13aは、錘体12を避けるべく錘体12の左右端縁よりも左右外側方に配されており、水平軸9に設けられる従動スプロケット9aもこれに対応して配されており、これによって駆動スプロケット13a、従動スプロケット9a並びにこれらスプロケットに懸回したチエン14により構成される動力伝動機構Kは、錘体12よりも左右外側位置において、避難扉5の中心線Lを基準として左右対称状に配されており、このようにしても本発明を実施することができる。
因みに第二の実施の形態のものも、自重下降した錘体12と動力伝動機構Kとは、側面視したときに互いにオーバーラップするよう配された構成になっていると共に、錘体12、駆動装置13並びに動力伝動機構Kは、図8から明らかなように、何れも避難通路3の左右幅内に配された(納まった)配置構成になっている。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、地下道、地下鉄、地下街等の地下空間から地上に脱出するための地上脱出用の避難扉装に利用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 地下通路
2 歩道
3 避難通路
4 地上出口
5 避難扉
9 水平軸
9a 従動スプロケット
12 錘体
13 駆動装置
13a 駆動スプロケット
14 チエン
15 開放操作具
16 側板
17 子扉
18 梯子
F 盛り上げ部
GL 地上面
L 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9