(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記軸受部の外周に、前記ハンマーケースの放熱用の複数のストッパが、周方向に所定間隔をおいて形成され、前記バンドの内周には、前記軸受部の巻回状態で前記ストッパに嵌合するストッパ溝が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のインパクト工具。
前記ハンマーケースの下面側には、前記アンビルの前方を照射するライトが設けられて、前記クランプ部は、前記ライトより上方に位置していることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のインパクト工具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなインパクト工具において、ハンマーケースは先細りのテーパ状や釣り鐘状に形成されているため、サイドハンドルの装着バンドを巻回するためにはハンマーケースの全長を長くする必要があり、コンパクト化の障害となる。また、ハンマーケースの下面側に照明用のライトが設けられていると、装着バンドがライトの光を妨げて照明機能を低下させてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、コンパクト化を阻害することなく、且つハンマーケースの下面側に照明用のライトがあっても照明機能を低下させることなくサイドハンドルを使用できるインパクト工具を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、モータと、モータにより回転するハンマーと、ハンマーにより回転方向に打撃されるアンビルと、モータを収容する本体ハウジングと、本体ハウジングに延設されるハンドルと、ハンドルの下部に配置され、電源となる充電池と、ハンマーを収容して本体ハウジングの前方に固定されるハンマーケースと、を有し、ハンマーケースは、前方へ先細りとなるテーパ部と、テーパ部から前方へ延びる小径の軸受部とを含み、軸受部には、アンビルを軸支する軸受が保持されており、軸受部と係合するクランプ部を有して作業者が把持するサイドハンドルを有することを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、クランプ部は、内径を拡縮可能なバンドであって、バンドが軸受部を巻回して緊締されることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項2の構成において、軸受部の外周に、ハンマーケースの放熱用の複数のストッパが、周方向に所定間隔をおいて形成され、バンドの内周には、軸受部の巻回状態でストッパに嵌合するストッパ溝が形成されていることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1の構成において、クランプ部は、互いに接離可能な第1腕部と第2腕部とからなり、第1腕部と第2腕部とで軸受部を上側から把持することを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れかの構成において、ハンマーケースの下面側には、アンビルの前方を照射するライトが設けられて、クランプ部は、ライトより上方に位置していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば
、コンパクト化を阻害することなく、且つハンマーケースの下面側に照明用のライトがあっても照明機能を低下させることなくサイドハンドルを使用できる。
特に、請求項
1に記載の発明によれば、上記効果に加えて、アンビルの軸受が配置される部分を
軸受部としたことで、小径の
軸受部に対してサイドハンドルが装着可能となり、サイドハンドルを取り付けても突出部分が少なくなって取扱性に優れる。
請求項
2に記載の発明によれば、請求項
1の効果に加えて、クランプ部を、内径が拡縮可能なバンドとしているので、ハンマーケースへの緊締時の信頼性が高くなる。
請求項
4に記載の発明によれば、請求項
1の効果に加えて、第1腕部と第2腕部とで被クランプ部を上側から把持することで、ハンマーケースの大径部であっても下側に張り出すことなくサイドハンドルが装着可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[形態1]
図1は、インパクト工具の一例であるインパクトレンチの斜視図、
図2はサイドハンドルとインパクトレンチとの分解斜視図、
図3は背面図、
図4は縦断面図である。このインパクトレンチ1は、前後方向に延びる本体2に、ハンドル3を下向きに形成した側面視T字状を有し、本体2の先端からは最終出力軸となるアンビル4が突出し、ハンドル3の下端に設けた装着部5には、電源となる複数の充電池を収容したバッテリーパック6が装着されている。
本体2のハウジングは、ブラシレスモータ8を収容する後方部分にハンドル3を延設した合成樹脂製の本体ハウジング7と、本体ハウジング7の前方に組み付けられて打撃機構10を収容する金属製のハンマーケース9とからなる。本体ハウジング7は、左右一対の半割ハウジング7a,7bを左右方向のネジ11,11・・によって組み付けて形成される。
【0010】
本体ハウジング7内でハンマーケース9の後方には、ハンマーケース9の後端に嵌合する金属製で後方へ凸状となるギヤハウジング12が、
図5に示すように、各半割ハウジング7a,7bの内面に突設された保持リブ13,13・・によって保持されている。このギヤハウジング12の外周に設けたリブ14を、本体ハウジング7の前端外面で正面視四角形状の角部に位置するように突設した後ボス15,15・・と、同じくハンマーケース9の後端外面で正面視四角形状の角部に位置するように突設した前ボス16,16・・との間に位置させて、後方から4本のボルト17,17・・で結合することで、本体ハウジング7とギヤハウジング12、ハンマーケース9とが一体化される。このように金属製のハンマーケース9に対してボルト17をねじ込むことで、本体ハウジング7とハンマーケース9とが強固に結合され、耐久性も向上する。また、本体ハウジング7は半割ハウジング7a,7bで形成されるので、内部の配線が容易に行える。
【0011】
本体2には、動力伝達要素となるブラシレスモータ8、スピンドル18、打撃機構10、アンビル4が、後方から順番に配置されている。
まず、ブラシレスモータ8は、ステータ19とその内側のロータ20とからなるインナロータ型で、ステータ19は、複数の積層鋼板から形成される筒状のステータコア21と、ステータコア21の軸方向前後の端面にそれぞれ設けられる前インシュレータ22及び後インシュレータ23と、前後インシュレータ22,23を介してステータコア21に巻回される6つのコイル24,24・・と、を有する。後インシュレータ23には、ロータ20に設けた永久磁石35の位置を検出して回転検出信号を出力する3つの回転検出素子(図示略)を搭載したセンサ回路基板25と、一本巻きされるコイル24,24間の巻線にヒュージングされるヒュージング端子27を対角同士で短絡する3つの板金部材28を備えた短絡部材26とが取り付けられている。この短絡部材26によってコイル24はパラ巻きでデルタ結線される。
【0012】
ここでのステータ19は、本体ハウジング7の半割ハウジング7a,7bの内面へそれぞれ周方向に突設した支持リブ29,29によって外周が保持されると共に、半割ハウジング7a,7bの内面に突設された図示しない突起が、後インシュレータの側面に形成した図示しない凹部にそれぞれ嵌合する。各支持リブ29には、前後に所定間隔をおいて下方へ突出し、先端を本体ハウジング7の内面に近接させる左右方向の板リブ29a,29aが連設されている。この板リブ29aは、センサ回路基板25から引き出されてロータ20の回転検出信号を後述する制御回路基板78へ送信する図示しないリード線と、短絡部材26から引き出されて制御回路基板78から各板金部材28及びヒュージング端子27を介してコイル24へ電力を供給する図示しないリード線とを本体ハウジング7の内面に沿ってガイドするものである。
【0013】
この板リブ29aの下端が近接する本体ハウジング7の下側部分は、ブラシレスモータ8から下方へ離れた位置でハンドル3の連設部分から後方へ行くに従って緩やかに上り傾斜して、ハンドル3を把持した際の手に上から当接してそのまま本体ハウジング7の後部を手で支持可能とする手受け部7cとなっている。
また、前インシュレータ22の外周で左右に設けた凹部30に、半割ハウジング7a,7bの内面に突設された前突起31が係合してステータコア21の前面に当接し、後突起32が短絡部材26の後面に当接する。こうしてステータ19は、本体ハウジング7内に軸方向及び周方向へ位置決めされた状態で収容される。
【0014】
一方、ロータ20は、軸心に位置する回転軸33と、回転軸33の周囲に配置され、複数の鋼板を積層してなる略円筒状のロータコア34と、ロータコア34の内部に固定される4つの板状の永久磁石(焼結磁石)35,35・・とを有する。回転軸33の後端は、本体ハウジング7の後部に保持された軸受36に軸支され、前端は、ギヤハウジング12に保持された軸受37に軸支されて、ピニオン38が形成された前端をギヤハウジング12の前方へ突出している。回転軸33における軸受37の後方部位には、遠心ファン39が取り付けられている。40は、遠心ファン39の位置で本体ハウジング7の左右の側面に形成された排気口、41は、本体ハウジング7の後面に設けられた吸気口である(
図3)。
【0015】
さらに、ロータ20において、ロータコア34と遠心ファン39との間には、前ストッパ42が設けられている。この前ストッパ42は、真鍮製でロータコア34と同じ外径を有する円板で、ロータコア34と同軸で回転軸33に固着されている。一方、ロータコア34と後側の軸受36との間でセンサ回路基板25の内側には、後ストッパ43が設けられている。この後ストッパ43は、真鍮製でロータコア34よりも小さい外径を有する円板で、ロータコア34と同軸で且つロータコア34との間に隙間を空けた状態で回転軸33に固着されている。但し、後ストッパ43の外径は、4つの永久磁石35で囲まれる内側円よりも大径となって、各永久磁石35の後方に後ストッパ43が位置するようになっている。
【0016】
そして、ハンマーケース9とギヤハウジング12とで囲まれる空間内には、スピンドル18及び打撃機構10が収容されている。スピンドル18は、後部に3つの遊星歯車45,45・・を保持するキャリア部44を一体に有し、後端軸心には有底孔46が形成され、先端には小径部47が形成されている。ハンマーケース9内でスピンドル18は、後端がギヤハウジング12に保持される軸受48によって軸支され、その前方でギヤハウジング12に保持されるインターナルギヤ49に遊星歯車45が噛合する。そして、前端の小径部47がアンビル4の軸心に設けた挿入孔50に同軸で挿入されることで、回転軸33と同軸で回転可能に支持される。この状態で回転軸33のピニオン38は有底孔46に後方から挿入されて3つの遊星歯車45の中心で各遊星歯車45に噛合する。
【0017】
打撃機構10は、スピンドル18の前部に外装されたハンマー51と、そのハンマー51とスピンドル18との間に設けたボール52,52と、ハンマー51を前方へ付勢するコイルバネ53とから構成される。ハンマー51は、前面に一対の爪54,54を備えてアンビル4の後端に設けた一対のアーム55,55に回転方向で係合可能となっており、ボール52は、スピンドル18の外周面に設けたV字状のカム溝56とハンマー51の内周面に設けた山形溝57との間に跨がって嵌合されて、スピンドル18とハンマー51とを回転方向で一体化させる。但し、カム溝56に対するボール52の転動範囲においてハンマー51の相対回転及び前後移動が許容される。コイルバネ53は、スピンドル18に外装されて前端をハンマー51の後面に設けたリング溝58に挿入させる一方、後端をキャリア部44の前面に当接させて、常態ではハンマー51を、ボール52がカム溝56の前端中央及び山形溝57の後端中央に位置する前進位置に付勢している。
【0018】
ハンマーケース9は、後述する延設部76のやや前方まで延びる大径部59と、大径部59から前方へ先細りとなるテーパ部60と、テーパ部60から前方へ延びる小径の軸受部61とからなり、テーパ部60と軸受部61との連結部分には、軸受部61の軸線と直交するリング状の平坦面62が形成されている。また、平坦面62から軸受部61の後端外周にかけて、前後方向のストッパ63,63・・が、軸受部61の周方向に所定間隔をおいて一体に形成されている。このストッパ63は、後述するサイドハンドル90が装着されない状態では、ハンマーケース9の放熱用の突起として作用する。さらに、ハンマーケース9の左右において、上下の前ボス16,16同士は、上下方向の中央が前方へ突出する肉厚の凸部64によって連続しており、凸部64の後部に、本体ハウジング7の左右においてギヤハウジング12のリブ14を越えて前方へ突出する突出片65,65が重合している。
【0019】
アンビル4は、軸受部61に保持される軸受メタル66によってスピンドル18と同軸で軸支されて、軸受部61とアーム55,55との間に設けた規制リング67によって前方への位置決めがなされている。アンビル4において、スピンドル18の小径部47が挿入される挿入孔50には、軸受メタル66の内側まで前方へ延びるグリス溜まり68が延設され、アンビル4の外周には、リング状の案内溝69が凹設されて、グリス溜まり68と案内溝69との間を半径方向のグリス供給孔70で連結している。これにより、グリス溜まり68のグリスをグリス供給孔70を介して案内溝69に供給して、軸受メタル66とアンビル4との間の潤滑を図るようにしている。71は、軸受メタル66の前方で軸受部61とアンビル4との間に設けられたシールリングで、アンビル4の先端には、図示しないソケットが嵌着される横断面四角形状の取付部72が形成されている。
【0020】
一方、ハンドル3の上部では、トリガ74を前方へ突出させたスイッチ73が設けられると共に、ブラシレスモータ8の正逆切替ボタン75が設けられている。トリガ74の上方で本体ハウジング7には、ハンマーケース9の下面を覆ってトリガ74よりも前方へ突出する延設部76が形成されて、延設部76の先端左右に、アンビル4の前方を照射する照明用のライトとしてのLED77,77が設けられている。このようにLED77を2つ設けたことで、照射範囲が広くなり、アンビル4に大きなソケットを装着しても作業箇所の照明が支障なく行える。
【0021】
装着部5には、皿状のケース79に保持されてブラシレスモータ8の制御用のスイッチング素子やマイコン等を搭載した制御回路基板78が収容されている。制御回路基板78には、打撃力の切替ボタンやバッテリの残容量表示ランプ等を有するスイッチパネル80が設けられて、装着部5の前部に設けた窓81を介して露出している。ハンドル3の下部と装着部5とは、ハンドル3の下端に突設した連結部82に装着部5を形成する左右の半割部5a,5bを組み付けてネジ83,83で固定することで連結される。連結部82と装着部5との間には弾性材84が介在されて、ハンドル3から装着部5へ伝わる衝撃や振動を緩和可能としている。左側の半割部5aには、正面視がU字状の吊り下げフック85の一端がネジ86によって固定されている。
【0022】
バッテリーパック6は、装着部5に対して前方からスライドさせることでレール同士の嵌合で結合される構造で、結合と共に装着部5に設けた端子台87の端子板がバッテリーパック5側の端子と電気的に接続される。88は、バッテリーパック6の装着状態で装着部5に係止して抜け止めするフック、89はバッテリーパック6の取り外し時にフック88を解除するための解除ボタンである。
【0023】
そして、ハンマーケース9の被クランプ部となる軸受部61の外周には、サイドハンドル90が装着される。このサイドハンドル90は、軸受部61を緊締するクランプ部としてのバンド91と、グリップ92と、バンド91とグリップ92とを連結するボルト93とからなる。バンド91は、軸受部61の外径に略一致するリング状の内形状を有する帯状で、両端には、一直線上に位置する外筒94と内筒95とが一体に形成されている。バンド91の内周で前後の端面際には、軸受部61のストッパ63,63が嵌合可能なストッパ溝96,96・・が、ストッパ63と同じ間隔で略全周に亘って形成されている。
【0024】
グリップ92は、一端側にフランジ97を形成した中空状で、フランジ97側の端部には、バンド91の内筒95に挿入される挿入部98が同軸で突設されて、フランジ97側の内部には、ナット99が埋設されている。ボルト93は、外筒94と内筒95とを貫通してグリップ92の軸心を通ってナット99に螺合され、六角頭部100を外筒94の外面に凹設した六角凹部101に嵌合させることで、外筒94及び内筒95に対して回り止めされた状態で外筒94と内筒95、グリップ92を連結している。よって、グリップ92を、バンド91が回転しない状態でボルト93がナット99へねじ込まれる方向へ回転させると、六角頭部100によって外筒94と内筒95とがグリップ92側へ押圧され、内筒95がグリップ92の端部に当接して停止すると、外筒94と内筒95とが互いに接近することでバンド91の内径を収縮させる。逆にボルト93がナット99から外れる方向へグリップ92を回転させると、外筒94と内筒95との押圧が解除されて互いの離間方向への移動を許容してバンド91の内径が拡開可能となる。樹脂製であるグリップ92の表面には、熱可塑性エラストマ92aが一体に被覆されているので、ハンマーケース9からの振動がグリップ92を介して手に伝わりにくくなっている。
【0025】
以上の如く構成されたインパクトレンチ1においては、サイドハンドル90を装着する際は、バンド91の内径を拡開させた状態で、アンビル4をバンド91に挿入させてバンド91を前方からハンマーケース9の軸受部61に外装させる。すると、バンド91のストッパ溝96に軸受部61のストッパ63が嵌合すると共に、バンド91の後端面がハンマーケース9の平坦面62に当接して回転及び後方への移動が規制される。ここでグリップ92を回転操作してバンド91を収縮させれば、バンド91が軸受部61を緊締し、グリップ92を軸受部61の上方で側方に突出させた姿勢でサイドハンドル90の取付が完了する。よって、作業者は一方の手でハンドル3を把持し、他方の手でサイドハンドル90のグリップ92を把持することでインパクトレンチ1が支持可能となる。なお、グリップ92の向きは左右逆であっても同じで、グリップ92を側方でなく上方や下方へ傾けた向きでもストッパ溝96とストッパ63との嵌合で位置決めできる。
【0026】
この状態でハンドル3を把持した手でトリガ74を押し込み操作すると、スイッチ73がONしてバッテリーパック6の電源によってブラシレスモータ8が駆動する。すなわち、制御回路基板78のマイコンが、センサ回路基板25の回転検出素子から出力されるロータ20の永久磁石35の位置を示す回転検出信号を得てロータ20の回転状態を取得し、取得した回転状態に応じて各スイッチング素子のON/OFFを制御し、ステータ19の各コイル24に対し順番に電流を流すことでロータ20を回転させる。よって、回転軸33が回転してキャリア部44の遊星歯車45を遊星運動させることでスピンドル18が減速回転し、ボール52を介してハンマー51を回転させるため、ハンマー51が係合するアンビル4が回転してソケットによるボルト等の締付が可能となる。
また、スイッチ73のONによって制御回路基板78がLED77,77を点灯させてソケットの前方を照射することになるが、サイドハンドル90のバンド91は小径の軸受部61を巻回しているため、サイドハンドル90がLED77,77の光を遮ることがなく、作業箇所は確実に照明される。
【0027】
締付が進んでアンビル4のトルクが高まると、ハンマー51がコイルバネ53の付勢に抗してボール52をカム溝56に沿って後方へ転動させながら後退し、爪54がアーム55から外れると、コイルバネ53の付勢によってボール52をカム溝56に沿って前方へ転動させることでハンマー51は回転しながら前進し、爪54をアーム55に再係合させてアンビル4に回転打撃力(インパクト)を発生させる。このインパクトを間欠的に繰り返すことでさらなる締付が行われる。このインパクトレンチ1での最大トルクは1000Nm、バッテリーパック6を含めた重量は3.6kgとなっているが、このようにトルクや重量が大きいものであってもサイドハンドル90によって安定した支持が可能となる。。
一方、回転するロータ20には、前後に前ストッパ42と後ストッパ43とが設けられているため、各永久磁石35の前後方向の移動が規制され、ロータコア34から抜け出ることが防止される。
【0028】
このように、上記形態1のインパクトレンチ1によれば、ハンマーケース9の前端の軸受部61に固定されるサイドハンドル90を有することで、コンパクト化を阻害することなく、且つハンマーケース9の下面側に照明用のLED77があっても照明機能を低下させることなくサイドハンドルを使用できる。
特にここでは、軸受メタル66が保持される軸受部61がサイドハンドル90の被クランプ部となっているので、小径の軸受部61に対してサイドハンドル90が装着可能となり、サイドハンドル90を取り付けてもグリップ92を除いて突出部分が少なくなり、取扱性に優れる。
また、クランプ部を内径が拡縮可能なバンド91としているので、ハンマーケース9への緊締時の信頼性が高くなる。
【0029】
なお、上記形態1において、バンドの形態は適宜変更可能で、バンドから外筒と内筒とを分離してバンドの両端を外筒と内筒とに係合させたり、ストッパとストッパ溝との数や間隔を変更したり、ストッパとストッパ溝とに代えて、軸受部の外周面とバンドの内周面とをローレット加工して回り止めを図ったり等することができる。
また、必ずしも軸受部にバンドを緊締する必要はなく、アンビルの軸受から軸方向へずれた位置にバンドによる被クランプ部を形成しても差し支えない。
【0030】
[形態2]
次に、本発明の他の形態を説明する。但し、インパクトレンチ1の構造は形態1と同じであるので、サイドハンドルの形態について専ら説明を行い、同じ構成部には同じ符号を付して重複する説明は省略する。
図7〜11に示すインパクトレンチ1において、サイドハンドル90Aは、ハンマーケース9の軸受部61でなく被クランプ部となる大径部59に取り付けられる。サイドハンドル90Aのクランプ部は、バンド形状ではなく、大径部59の上半分から下半分の途中までの形状に合致する内形状を有する一対の第1腕部102及び第2腕部103を有し、この第1、第2腕部102,103を連結軸104を介してグリップ92に連結している。第1、第2腕部102,103における大径部59への当接部分には、大径部59に設けた凸部64が嵌合可能な溝105が凹設されている。
【0031】
連結軸104は、第1、第2腕部102,103を貫通する第1軸106と、グリップ92に固定される第2軸107とに分割されている。
第1軸106は、第1腕部102の外側から第1、第2腕部102,103を貫通するが、第1腕部102では、円形頭部108がクリップ109によって抜け止めされている。第2腕部103では、スプライン部110においてスプライン結合されて、回転規制された状態で軸方向へ移動可能となっている。第1軸106の先端にはネジ部111が形成されている。
第2軸107は、グリップ92に挿入されて埋設リング118に圧入される埋設部112と、埋設部112に連設されてグリップ92の端面から突出し、軸心に雌ネジ部114を形成した突出部113とからなり、突出部113を第2腕部103の貫通孔115に挿入した状態で第1軸106のネジ部111を雌ネジ部114に螺合することで、第1軸106と連結されている。突出部113の先端は、貫通孔115の奥でスプライン部110に当接してそれ以上の挿入が規制されるようになっている。
【0032】
よって、第1、第2腕部102,103が回転しない状態でグリップ92を、第1軸106が第2軸107の雌ネジ部114にねじ込まれる方向へ回転させると、スプライン部110によって回転規制される第1軸106が第2軸107にねじ込まれることで第1腕部102を第2腕部103側へ移動させる。第2腕部103は、第2軸107の突出部113がスプライン部110に当接することでグリップ92側への移動が規制されるため、第1、第2腕部102,103同士は互いに近接する。逆にグリップ92を、第1軸106が第2軸107の雌ネジ部114から外れる方向へ回転させると、第1軸106が外側へネジ送りされることで、第1、第2腕部102,103同士は互いに離間する。第1、第2腕部102,103の後面には、左右方向の支持ボス116,116がそれぞれ突設されて、両支持ボス116,116の間には、連結軸104と平行なガイドピン117の両端がそれぞれ遊挿されて、接離移動する第1、第2腕部102,103同士のねじれを規制している。
【0033】
以上の如く構成されたインパクトレンチ1において、サイドハンドル90Aを装着する際は、第1、第2腕部102,103同士を離間させた状態で、ハンマーケース9の凸部64の位置で大径部59の上方から第1、第2腕部102,103を嵌合させる。ここでグリップ92を回転操作して第1、第2腕部102,103同士を近接させれば、第1、第2腕部102,103が大径部59を左右から緊締し、グリップ92をハンマーケース9の上方で側方に突出させた姿勢でサイドハンドル90Aの取付が完了する。このとき第1、第2腕部102,103の溝105,105にハンマーケース9の凸部64,64が嵌合しているので、第1、第2腕部102,103の回転は規制される。よって、作業者は一方の手でハンドル3を把持し、他方の手でサイドハンドル90Aのグリップ92を把持することでインパクトレンチ1が支持可能となる。
【0034】
そして、トリガ74の押し込みによって制御回路基板78がLED77,77を点灯させてソケットの前方を照射することになるが、サイドハンドル90Aの第1、第2腕部102,103は殆どハンマーケース9の上側に位置しているため、サイドハンドル90AがLED77,77の光を遮ることがなく、作業箇所は確実に照明される。
【0035】
このように、上記形態2のインパクトレンチ1においても、コンパクト化を阻害することなく、且つハンマーケース9の下面側に照明用のLED77があっても照明機能を低下させることなくサイドハンドル90Aを使用できる。
特にここでは、クランプ部を、互いに接離可能な第1腕部102と第2腕部103とから形成して、第1腕部102と第2腕部103とでハンマーケース9の大径部59を上側から把持するようにしているので、大径部59であっても下側に張り出すことなくサイドハンドル90Aが装着可能となる。
【0036】
なお、上記形態2において、第1腕部と第2腕部との形状は適宜変更可能で、ハンマーケースの下面側での肉厚が小さければ下端を大径部の下側まで延ばすこともできる。また、回り止めするハンマーケース側の凸部と第1、第2腕部側の溝とは、凹凸を逆にしてもよいし、複数の凹凸同士の係合としてもよい。
さらに、ハンマーケースの大径部を把持する場合に限らず、形態1のように前端の軸受部を第1腕部と第2腕部とで左右から把持することもできる。
連結軸も、第2腕部のスプライン部による回り止め以外に、形態1のように六角頭部を第1腕部に嵌合させた第1軸をグリップ側の第2軸に螺合させたり等してもよい。
【0037】
そして、上記形態1,2に共通して、インパクト工具も、最大トルクが1000Nm以上のものに限らず、例えば400〜600Nm、600〜800Nm、800〜1000Nmといった範囲が最大トルクとなるものであってもよい。但し、800〜1000Nmの範囲のものがサイドハンドルの装着による効果は顕著である。重量も、3.6kg以上でもよく、また、1.0〜2.0kg、2.0〜3.0kg、3.0〜3.6kgのような軽量タイプのものであってもよい。但し、3.0〜3.6kgの範囲のものがサイドハンドルの装着による効果は顕著である。
その他、モータがブラシレスでないインパクト工具や、交流電源を使用するインパクト工具等でもよいし、インパクト工具としてはレンチに限らず、アンビルをスピンドルに対して直角に設けたアングルインパクトレンチや、インパクトドライバ等であっても本発明は採用可能である。