特許第6436769号(P6436769)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6436769-電動倍力装置 図000002
  • 特許6436769-電動倍力装置 図000003
  • 特許6436769-電動倍力装置 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6436769
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】電動倍力装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/74 20060101AFI20181203BHJP
【FI】
   B60T13/74 D
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-265017(P2014-265017)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-124344(P2016-124344A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 大地
(72)【発明者】
【氏名】吉津 力弥
(72)【発明者】
【氏名】臼井 拓也
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−106597(JP,A)
【文献】 特開2012−035814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/00 − 13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられ、電動モータの回転により回転直動変換機構を介して、マスタシリンダのピストンを移動させる電動倍力装置であって、
前記回転直動変換機構が収容されるハウジングと、
前記車両に取り付けるためのボルトが設けられ、前記ハウジングに固定される取付プレートと、を備え、
前記ハウジングは、フロントハウジングとリアハウジングとを備え、
該リアハウジングには、前記回転直動変換機構の回転部材を回転自在に支持する軸受部材が固定され、
前記取付プレートは、前記リアハウジングに前記軸受部材が固定される部位よりも、前記軸受部材の径方向中心から径方向外側に離れた位置で、前記リアハウジングを介して前記フロントハウジングに固定ねじにより固定されることを特徴とする電動倍力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のブレーキ装置に組込まれ、電動モータを利用して、マスタシリンダにブレーキ液圧を発生させる電動倍力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブレーキ装置に組込まれる倍力装置として、例えば特許文献1に記載されているように、電動モータを倍力源とする電動倍力装置が知られている。特許文献1に記載された電動倍力装置は、ブレーキペダルの操作により進退移動する入力ピストンと、入力ピストンに相対移動可能に配置されたプライマリピストン及びセカンダリピストンと、これらプライマリピストン及びセカンダリピストンを進退移動させるボールネジ機構と、該ボールネジ機構に回転力を付与する電動モータとを備えている。そして、ブレーキペダルから入力ピストンに付与される推力と、電動モータからプライマリピストン及びセカンダリピストンに付与される推力とにより、マスタシリンダの圧力室内にブレーキ液圧を発生させている。
【0003】
該特許文献1に記載された電動倍力装置では、ハウジング内にボールネジ機構が収容されており、ハウジングは、フロントハウジングと、該フロントハウジングの開口部を閉塞するリアカバーとからなる。そして、当該電動倍力装置は、リアカバーの取付座面に設けられた複数のスタットボルトを用いて、エンジンルームと車室との間を仕切る隔壁に取り付けられている。また、リアカバーの取付座面の内側(スタッドボルトとは反対側)に近接して、ボールネジ機構の回転部材を回転自在に支持する軸受部材が固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−35814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された電動倍力装置では、リアカバーに、ボールネジ機構の軸力及びブレーキペダルへの踏力が付与される構造となっているために、リアカバーには高い強度が必要になり、肉厚等で対処すると結果的に重くなる。さらに、特許文献1に記載された電動倍力装置では、ボールネジ機構の回転部材を回転自在に支持する軸受部材の外周と、各スタットボルトの中心を結ぶ円周の軌跡とが略一致しており、リアカバーの、軸受部材の外周面を支持する筒状壁面には、各スタットボルトの固定のための切欠凹部が形成されている。この切欠凹部によって、リアカバーの剛性が低下して、音振に対して不利となる。
【0006】
本発明は、ハウジングの剛性、ひいては音振性能を向上させた電動倍力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る電動倍力装置は、車両に取り付けられ、電動モータの回転により回転直動変換機構を介して、マスタシリンダのピストンを移動させる電動倍力装置であって、前記回転直動変換機構が収容されるハウジングと、前記車両に取り付けるためのボルトが設けられ、前記ハウジングに固定される取付プレートと、を備え、前記ハウジングは、フロントハウジングとリアハウジングとを備え、
該リアハウジングには、前記回転直動変換機構の回転部材を回転自在に支持する軸受部材が固定され、前記取付プレートは、前記リアハウジングに前記軸受部材が固定される部位よりも、前記軸受部材の径方向中心から径方向外側に離れた位置で、前記リアハウジングを介して前記フロントハウジングに固定ねじにより固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電動倍力装置によれば、ハウジングの剛性、ひいては音振性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る電動倍力装置の断面図である。
図2図1の電動倍力装置の分解斜視図である。
図3図1の電動倍力装置に採用した取付プレートにスタッドボルトが固定された状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態に係る電動倍力装置1を図1乃至3を参照して詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態に係る電動倍力装置1は、電動モータ2を駆動源とする倍力装置である。電動倍力装置1は、ハウジング3の前側(図の左方)にタンデム型のマスタシリンダ4を連結した構造を有している。マスタシリンダ4の上部には、マスタシリンダ4にブレーキ液を供給するリザーバ5(一部のみ図示する)が取付けられている。ハウジング3は、電動モータ2及びボールネジ機構38等を収容するフロントハウジング3Aと、該フロントハウジング3Aの後端開口を閉塞するリアハウジング3Bとを有している。
【0011】
図1に示すように、ハウジング3のリアハウジング3Bには、マスタシリンダ4と同心で、かつ、ハウジング3の後方(図の右方)、すなわち、マスタシリンダ4から離れる方向に突出する円筒部7が設けられている。図1及び図2に示すように、リアハウジング3Bの円筒部7の周りには取付プレート65が配置される。リアハウジング3Bの円筒部7の周りには階段状部54が設けられ、該階段状部54の周りに、取付プレート65を固定するための平坦の第1及び第2取付用座面61、62が複数放射状に外方に向かって突設される。第1取付用座面61は、第2取付用座面62よりその面積が大きく形成される。本実施形態では、第1取付用座面61は、略対向する位置に2箇所形成され、各第1取付用座面61、61の間に、第2取付用座面62、62が隣接するように2箇所形成される(図2では1箇所しか図示されていない)。第1及び第2取付用座面61、62には、固定ねじ55が挿通される挿通孔61A、62Aがそれぞれ形成される。本実施形態では、第1取付用座面61には挿通孔61Aが2箇所形成される。第2取付用座面62には挿通孔62Aが1箇所形成される。フロントハウジング3Aの前面には、第1及び第2取付用座面61、62に設けた各挿通孔61A、62Aと対応するように複数の挿通孔3A’、3A’(図1参照)が形成される。
【0012】
図2及び図3に示すように、取付プレート65は、リアハウジング3Bの円筒部7が挿通可能な開口部66Aを有する板状の円環状部66と、該円環状部66から外方に複数放射状に突設される第1及び第2取付用鍔部67、68と、円環状部66と各第1及び第2取付用鍔部67、68とを接続する円筒状壁部69とを有している。円環状部66は、第1及び第2取付用鍔部67、68よりも後側に配置される。円環状部66の外周部には、軸方向に沿う挿通孔66Bが複数形成される。各挿通孔66Bは、周方向に間隔を置いて複数形成される。本実施形態では、挿通孔66Bは4箇所形成される。各挿通孔66Bには、各スタッドボルト8が円環状部66の前方からそれぞれ挿通されて、円環状部66よりも後方に延びるとともに、円環状部66に固定される。この時、取付プレート65の円筒状壁部69の軸方向長さは、スタットボルト8の頭部8Aの軸方向長さより長く形成される。
【0013】
取付プレート65の各第1取付用鍔部67は、リアハウジング3Bの各第1取付用座面61に対応して形成される。取付プレート65の各第2取付用鍔部68は、リアハウジング3Bの各第2取付用座面62に対応して形成される。よって、第1取付用鍔部67、67は、略対向する位置に第2箇所に形成され、各第1取付用鍔部67、67の間に、第2取付用鍔部68、68が隣接するように2箇所形成される。第1取付用鍔部67に固定ねじ55が挿通される挿通孔67Aが2箇所形成される。第2取付用鍔部68に固定ねじ55が挿通される挿通孔67Bが1箇所形成される。円筒状壁部69の内周面には、各挿通孔66Bが形成されている位置に各スタットボルト8の頭部8Aとの干渉を避けるように、切欠凹部69Aがそれぞれ形成される。
【0014】
そして、各スタットボルト8を取付プレート65の円環状部66の各挿通孔66Bに固定した後、各固定ねじ55を取付プレート65の各第1及び第2取付用鍔部67、68の各挿通孔67A、68Aにそれぞれ挿通すると共に、リアハウジング3Bの第1及び第2取付用座面61、62の各挿通孔61A、62A及びフロントハウジング3Aの前面に設けた各挿通孔3A’、3A’に挿通して、取付プレート65を、リアハウジング3Bを介してフロントハウジング3Aに固定している。そこで、各固定ねじ55の径方向中心を結ぶ円周の径は、後述するボールネジ機構38のナット部材39を回転自在に支持する軸受部材42の外径よりも大きく設定されている。さらに、取付プレート65の円筒状壁部69の軸方向長さがスタットボルト8の頭部8Aの軸方向長さより長く形成されているので、取付プレート65がリアハウジング3Bを介してフロントハウジング3Aに固定された際、スタッドボルト8の頭部8Aがリアハウジング3Bの後面に干渉することはない。その後、本電動倍力装置1は、その円筒部7を車両のエンジンルームと車室との隔壁であるダッシュパネル(図示せず)に貫通させて車室内に延ばした状態で、エンジンルーム内に配置して、スペーサ75(図1参照)を介して複数のスタッドボルト8を用いてダッシュパネルに固定している。なお、スペーサ75は、電動倍力装置1が取り付けられる車両に応じて設けられるもので、必ずしも設ける必要はない。
【0015】
図1に示すように、マスタシリンダ4内には、有底のシリンダボア9が形成されている。このシリンダボア9の開口部側には、略円筒状のプライマリピストン10(ピストン)が配置されている。このプライマリピストン10の前端側は、カップ状に形成され、シリンダボア9内に配置されている。また、シリンダボア9の底部側には、カップ状のセカンダリピストン11が配置されている。プライマリピストン10の後端部は、マスタシリンダ4の開口部からハウジング3内に延出して、リアハウジング3Bの円筒部7内まで延びている。マスタシリンダ4のシリンダボア9内には、プライマリピストン10とセカンダリピストン11との間にプライマリ室12が形成され、シリンダボア9の底部とセカンダリピストン11との間にセカンダリ室13が形成されている。これらのプライマリ室12及びセカンダリ室13は、それぞれ、マスタシリンダ4の液圧ポート(図示せず)から、2系統の液圧回路を介して、各車輪のホイールシリンダ(図示せず)に接続される。
【0016】
また、マスタシリンダ4には、プライマリ室12及びセカンダリ室13をそれぞれリザーバ5に接続するためのリザーバポート14、15が設けられている。シリンダボア9の内周面には、プライマリピストン10及びセカンダリピストン11との間をシールする環状のピストンシール16、17、18、19が軸方向に沿って所定間隔をもって装着されている。ピストンシール16、17は、軸方向に沿って一方のリザーバポート14を挟んで配置されている。そして、プライマリピストン10が図1に示す非制動位置にあるとき、プライマリ室12は、プライマリピストン10の側壁に設けられたピストンポート20を介してリザーバポート14に連通する。そして、プライマリピストン10が非制動位置から前進してピストンポート20が一方のピストンシール17に達したとき、プライマリ室16がピストンシール17によってリザーバポート14から遮断されて液圧が発生する。
【0017】
同様に、残りの2つのピストンシール18、19は、軸方向に沿ってリザーバポート15を挟んで配置されている。セカンダリピストン11が図1に示す非制動位置にあるとき、セカンダリ室13は、セカンダリピストン11の側壁に設けられたピストンポート21を介してリザーバポート15に連通している。そして、セカンダリピストン11が非制動位置から前進してピストンシール19によってセカンダリ室13がリザーバポート15から遮断されて液圧が発生する。
【0018】
プライマリピストン10とセカンダリピストン11との間には、バネ22が介装されている。また、シリンダボア9の底部とセカンダリピストン11との間には、バネ23が介装されている。
【0019】
プライマリピストン10は、全体が略円筒状に形成され、軸方向中央内部に中間壁24を備えている。中間壁24には、案内ボア25が軸方向に貫通している。案内ボア25には、入力ピストン26が摺動可能かつ液密的に挿通されている。該入力ピストン26は、前側に位置する小径部26Aと、該小径部26Aから連続して後側に延びる大径部26Bとからなる段付形状に形成される。そして、入力ピストン26の小径部26Aが、案内ボア25内に摺動可能かつ液密的に挿通されている。
【0020】
入力ピストン26の小径部26Aの外周面と、案内ボア25の内周面との間は、シール27によってシールされている。入力ピストン26の大径部26Bの後端には、外側フランジ状のバネ受部26Cが形成されている。バネ受部26Cの外周部は、プライマリピストン10の後側の内壁面に近接して配置される。また、入力ピストン26の後端面には、ガイド用凹部26Dが形成されている。該ガイド用凹部26Dに面する、入力ピストン26の大径部26Bの周壁部には、径方向に延びる貫通孔26Eが形成される。入力ピストン26は、マスタシリンダ4のプライマリ室12に、その小径部26Aの前端部が臨むとともに、プライマリピストン10に対して軸方向に沿って相対移動可能となっている。
【0021】
プライマリピストン10の後側の内部における入力ピストン26の後方には、入力プランジャ29が軸方向に沿って移動可能に案内されている。入力プランジャ29の後端部には、入力ロッド30の前端部がボールジョイント31により、ある程度の傾きを許容するように連結されている。入力プランジャ29の前端面には小径突設部29Aが前方に向かって突出している。該小径突設部29Aが、入力ピストン26の後端面に設けたガイド用凹部26Aに挿通されている。入力ロッド30は、入力プランジャ29に連結される前端側が、リアハウジング3Bの円筒部7及びプライマリピストン10の後側の内部に配置され、後端側が円筒部7から外部に延出している。入力ロッド30の後端部にクレビス30Aを介してブレーキペダル(図示せず)が連結される。そして、該ブレーキペダルの操作により入力ロッド30が軸方向に移動する。また、入力ロッド30の円筒部7内に配置されたほぼ中間部位には、鍔状のストッパ当接部32が形成されている。円筒部7の後端部には、径方向内側に延びるストッパ33が形成されており、入力ロッド30のストッパ当接部32がストッパ33に当接することにより、入力ロッド30の後退位置が規定されるようになっている。
【0022】
プライマリピストン10の中間壁24と、入力ピストン26の後端部に形成されたバネ受部26Cとの間に、圧縮コイルバネである第1バネ34が介装されている。また、入力プランジャ29の後端部と、プライマリピストン10の後端部に取付けられたバネ受35との間に、圧縮コイルばねである第2バネ36が介装されている。円筒状部材37が、後述するボールネジ機構38の構成である筒状のネジ軸40内に配置されている。該円筒状部材37は、その後端部がバネ受35の外周部の前面に接触して、ネジ軸40の前端からやや前方に至る位置まで延びている。該円筒状部材37の前端面にはバネ受37Aが形成される。
【0023】
入力ピストン26及び入力プランジャ29は、第1バネ34及び第2バネ36によって、図1に示す中立位置、すなわち、第1バネ34の付勢力と、第2バネ36の付勢力とが釣合う位置に弾性的に保持される。入力ピストン26及び入力プランジャ29は、プライマリピストン10に対して、この中立位置から前方及び後方に移動可能になっている。
【0024】
ハウジング3内には、回転直動変換機構であるボールネジ機構38が収容されている。ボールネジ機構38は、ハウジング3に配置された電動モータ2によって駆動され、回転運動を直線運動に変換してプライマリピストン10に推力を付与するアシスト機構として機能するものである。ボールネジ機構38は、回転部材であるナット部材39及びネジ軸40を有している。ナット部材39は、軸受部材42によってハウジング3内で回転可能に支持されている。該軸受部材42はリアハウジング3Bに固定される。
【0025】
ネジ軸40は、筒状に形成されている。該ネジ軸40は、ナット部材39の内部からハウジング3の円筒部7内に至るまで延び、軸方向に沿って移動可能で、かつ、軸回りに回転しないようにハウジング3に支持されている。該ネジ軸40は、フロントハウジング3Aの底部と、円筒状部材37の前端に設けたバネ受37Aとの間に介装された圧縮コイルバネである戻しバネ49の付勢力によって後退方向に付勢されている。ナット部材39の内周面及びネジ軸40の外周面には、それぞれ螺旋溝39A、40Aが形成されている。これら螺旋溝39A、40A間には、複数の転動体であるボール41がグリスと共に装填されている。ネジ軸40は、円筒部7のストッパ33よって軸方向に沿って移動可能に案内され、軸回りに回転しないよう支持されている。これにより、ナット部材39の回転に伴い、螺旋溝39A、40Aに沿ってボール41が転動して、ネジ軸40が軸方向に移動する。ボールネジ機構38は、ナット部材39とネジ軸40との間で、回転、直線運動を相互に変換可能になっている。
【0026】
プライマリピストン10は、後端部がネジ軸40内に挿入され、バネ受35の外周部の後面がネジ軸40の内周部に形成された環状の段部44に当接して、ネジ軸40に対する後退位置が規定されている。これにより、ネジ軸40の前進により、プライマリピストン10が円筒状部材37と共に、段部44に押されて、また、段部44から離間して単独で前進することができる。
【0027】
電動モータ2は、マスタシリンダ4、入力ロッド30及びボールネジ機構38とは、別軸でハウジング3内に収容されている。電動モータ2は、その出力軸2Aにプーリ45Aが取付けられている。出力軸2Aは軸受部材50、51によりハウジング3内に回転自在に支持される。ボールネジ機構38のナット部材39にもプーリ45Bが取付けられている。出力軸2Aのプーリ45Aと、ナット部材39のプーリ45Bとにベルト46が巻回されている。そして、電動モータ2は、プーリ45A,45B及びベルト46を介して、ボールネジ機構38のナット部材39を回動させるようになっている。
【0028】
電動倍力装置1には、電動モータ2の回転位置を検出する回転位置センサ(図示せず)、入力ロッド30のストロークを検出するストロークセンサ(図示せず)、及び、これらのセンサの出力信号に基づいて電動モータ2の作動を制御するマイクロプロセッサベースのコントローラ(図示せず)が設けられている。コントローラは、回生協調制御、ブレーキアシスト制御、自動ブレーキ制御等の様々なブレーキ制御を実行するための車載コントローラ等に適宜接続することができる。
【0029】
次に、本電動倍力装置1の作動について説明する。
ブレーキペダルを操作して入力ロッド30を前進させると、ブレーキペダルの操作量、すなわち、入力ロッド30のストロークに基づいてコントローラが電動モータ2の作動を制御する。電動モータ2により、プーリ45A,45B及びベルト46を介してボールネジ機構38のナット部材39を回転駆動させることで、ネジ軸40を前進させる。すると、ネジ軸40の段部44により、プライマリピストン10のバネ受35が押圧されて、プライマリピストン10が前進して入力ロッド30のストロークに追従する。これにより、プライマリ室12に液圧が発生し、また、この液圧がセカンダリピストン11を介してセカンダリ室13に伝達される。このようにして、マスタシリンダ4で発生したブレーキ液圧は、各車輪のホイールシリンダに供給され、摩擦制動による制動力を発生させる。
【0030】
ブレーキペダルの操作を解除すると、コントローラは、入力ロッド30のストロークに基づいて電動モータ2を逆回転させることで、プライマリピストン10及びセカンダリピストン11が後退して、マスタシリンダ4のブレーキ液圧が減圧されて制動力が解除される。
【0031】
液圧発生時には、プライマリ室12の液圧を入力ピストン26の小径部26Aによって受圧し、その反力を、入力プランジャ29及び入力ロッド30を介してブレーキペダルに伝達、すわなち、フィードバックする。これにより、所定の倍力比(ブレーキペダルの操作力に対する液圧出力の比)で所望の制動力を発生させることができる。そして、コントローラは、電動モータ2の作動を制御して、入力ピストン26と、これに追従するプライマリピストン10との相対位置を調整することが可能となっている。具体的には、入力ピストン26のストローク位置に対して、プライマリピストン10の位置を前方、すなわち、マスタシリンダ4側に調整することによりブレーキペダルの操作に対する液圧出力を大きく、また、後方、すなわち、ブレーキペダル側に調整することによりブレーキペダルの操作に対する液圧出力を小さくすることができる。その結果、倍力制御、ブレーキアシスト制御、車間制御、回生協調制御等のブレーキ制御を実行することができる。
【0032】
また、万一、電動モータ2又はコントローラの失陥等により、ボールネジ機構38が作動不能になった場合でも、ブレーキペダルの操作により、入力ピストン26が前進して、入力ピストン26の大径部26Bの前端部がプライマリピストン10の中間壁24を押圧することにより、マスタシリンダ4に液圧を発生させることができ、制動機能を維持することができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係る電動倍力装置1によれば、車両に取り付けるためのスタットボルト8が設けられる取付プレート65を、リアハウジング3Bとは別体に備え、取付プレート65がブレーキペダルへの踏力を受ける構造としたので、リアハウジング3Bに要求される強度を軽減でき、結果的に軽量化が実現できる。しかも、取付プレート65は、リアハウジング3Bに軸受部材42が固定される部位よりも、軸受部材42の径方向中心から離れた位置で、リアハウジング3Bとともにフロントハウジング3Aに各固定ねじ55により固定される。すなわち、取付プレート65をリアハウジング3Bとともにフロントハウジングに3Aに固定する各固定ねじ55の径方向中心を結ぶ円周の径が、軸受部材42の外径よりも大きく設定される。これにより、従来のようにリアカバーの軸受部材42を固定する筒状壁面に切欠凹部を形成する必要がなく、リアハウジング3Bの剛性を確保することができ、音振性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 電動倍力装置,2 電動モータ,3 ハウジング,4 マスタシリンダ,3A フロントハウジング,3B リアハウジング,8 スタットボルト,10 プライマリピストン,11 セカンダリピストン,38 ボールネジ機構(回転直動変換機構)、39 ナット部材(回転部材),42 軸受部材,55 固定ねじ,65 取付プレート
図1
図2
図3