特許第6436774号(P6436774)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6436774水加熱装置および水加熱装置の炎の炎電流を測定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6436774
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】水加熱装置および水加熱装置の炎の炎電流を測定する方法
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/14 20060101AFI20181203BHJP
   F23N 5/12 20060101ALI20181203BHJP
   F23N 5/00 20060101ALI20181203BHJP
   F23N 5/24 20060101ALI20181203BHJP
   F23N 1/02 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   F24H1/14 B
   F23N5/12 F
   F23N5/00 S
   F23N5/24 106A
   F23N5/00 C
   F23N1/02 K
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-528316(P2014-528316)
(86)(22)【出願日】2012年8月28日
(65)【公表番号】特表2014-527613(P2014-527613A)
(43)【公表日】2014年10月16日
(86)【国際出願番号】NL2012050588
(87)【国際公開番号】WO2013032324
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年8月27日
(31)【優先権主張番号】2007310
(32)【優先日】2011年8月29日
(33)【優先権主張国】NL
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513151266
【氏名又は名称】インターガス・ヒーティング・アセッツ・ベスローテン・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】INTERGAS HEATING ASSETS B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】ハルム・ヘンドリク・バレルス
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−40697(JP,A)
【文献】 特開2004−301437(JP,A)
【文献】 特開平11−14050(JP,A)
【文献】 実開平1−67466(JP,U)
【文献】 特開2004−271138(JP,A)
【文献】 特開昭62−252824(JP,A)
【文献】 特開平4−353313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/10 − 1/16
F23N 1/02
F23N 5/00
F23N 5/12
F23N 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナーと、
2つの電極と1つの電圧源とを含み、前記電圧源の極のそれぞれが前記電極の1つにつながっている、炎電流を測定するための炎電流測定装置と、
を含む水加熱装置であって、
前記バーナーに対して電気的に絶縁されている熱交換器を有し、前記バーナーと前記熱交換器とが前記炎電流測定装置の前記電極を形成し、
前記電圧源が、前記2つの電極に交流電位差を印加し、双方向の前記炎電流を測定し、
空気/燃料比を制御するための空気/燃料制御器を有し、上記で測定された前記炎電流を用いて燃焼の過剰空気係数を決定し、前記空気/燃料制御器が、決定された前記過剰空気係数を用いて前記空気/燃料比を制御し、
前記バーナーと前記熱交換器との間に炎が存在しない時に、前記バーナーへの燃料の供給を遮断するためのイオン化に基づく安全装置を有し、前記イオン化に基づく安全装置が前記炎電流測定装置を含み、測定された前記炎電流に基づいて炎が存在するかどうかを決定することを特徴とする水加熱装置。
【請求項2】
前記バーナーまたは前記熱交換器が接地されていることを特徴とする、請求項1に記載の水加熱装置。
【請求項3】
前記熱交換器が接地されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の水加熱装置。
【請求項4】
湯沸かし器、ボイラー、セントラルヒーティングボイラーまたはコンビボイラーを含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の水加熱装置。
【請求項5】
前記バーナーがパイロットバーナーであり、前記装置がメインバーナーを含み、前記メインバーナーが前記パイロットバーナーの炎によって点火されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の水加熱装置。
【請求項6】
バーナーと、前記バーナーから電気的に絶縁された熱交換器と、を含む水加熱装置の炎の炎電流を測定する方法であって、
前記バーナーと前記熱交換器との間に交流電位差を印加する工程と、
前記電位差を印加した結果として流れ始める双方向の炎電流を測定する工程と、
測定された前記炎電流に基づいて過剰空気係数を決定する工程と、
空気/燃料比を有する空気と燃料の混合物が前記バーナーに供給され、決定された前記過剰空気係数に基づいて前記空気/燃料比を制御する工程と、
測定された前記炎電流が実質的に同一ではないことを確認することにより、前記バーナーと前記熱交換器との間に炎が存在するか否かを判断する工程と、
前記バーナーと前記熱交換器との間に炎が存在しない場合に、前記バーナーへの前記燃料の供給を遮断する工程と、
を含む方法。
【請求項7】
前記バーナーと前記熱交換器との間に前記電位差を印加する前に、前記バーナーまたは前記熱交換器を接地電位につなげる工程を有することを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記熱交換器が前記接地電位に接続されていることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナーと炎電流(または火炎電流、a flame curent)を測定するための炎電流測定装置を含む水加熱装置に関し、測定装置は2つの電極と電圧源(または電源)を含み、電圧源の両極のそれぞれは電極の1つにつながっている。
【0002】
本発明はまた、水加熱装置の炎の炎電流を測定する方法にも関する。
【0003】
このような水加熱装置および方法は、例えばWO2010/094673A1から知られているである。
【0004】
水加熱装置において、水は加熱される。これは通常は燃焼熱を用いて行われる。例はオイル式またはガス式ボイラーである。燃料が燃焼している間、酸素が必要とされ、通常は周囲の空気から抽出される。ガス燃料の場合、燃料と酸素、または燃料と空気は通常は予め混合され、その後、混合物は燃焼される。混合物における酸素が少な過ぎる場合、その後不完全燃焼が起こるであろう。そして、一酸化炭素(CO)および他の物質が放出される。一酸化炭素は有毒であり、それ故にその放出は常に防がれるべきである。それ故、家庭用の燃焼装置は常に余剰な酸素が利用出来るように設けられ、完全燃焼が可能となる。余剰酸素が増大するほど、燃料と空気または酸素とを混合するのにより多くのエネルギーを必要とするので燃焼効率がより悪くなる。これはより多くのエネルギーを生み出す燃焼を伴わないが、主として余剰の空気は不必要に加熱されるので、燃焼排ガスの放出を通して、この熱の一部は余剰分を伴って外部へ消失する。従って、燃焼装置は通常は、余剰の酸素が存在するように設けられるが、この余剰分は過多であってはならない。余剰分の測定は、空気過剰率λによって示され、またλ値として呼ばれる。この係数は、(理論的に)完全燃焼するのに必要とされる最小の量に対して、余剰空気が存在する係数を意味する。水加熱装置は実際には、過剰空気係数λがおおよそ1.2〜1.3の範囲となるように設定される。
【背景技術】
【0005】
従来型の水加熱装置では、過剰空気係数λは、ガスブロックを調整することによって機械的に制御されている。より最近の水加熱装置では、過剰空気係数λは電気的に制御されている。機械的制御が製造業者によって設定され、および/または取付けの間に(および必要に応じてその後のメンテナンスの間に)技術者によって設定されるフィードフォーワード制御である場合には、電気的制御はフィードバック制御の更なる可能性を提供する。
【0006】
しかし、フィードバック制御のためには、測定は過剰空気係数λの直接的または間接的な定量を可能にするように行われなければならない。この測定には、特に炎電流測定を用いる。この測定は既に、多くの水加熱装置において火炎検知の部分として実施されている。
【0007】
燃焼装置は流体の燃焼を利用しており、そのため、例えば炎が吹き消された結果として、燃焼が(もはや)起こっていない間に流体を供給する弁が開いている場合に、爆発災害が起こる危険性がある。その場合、燃焼装置が置かれている場所は可燃性または爆発性の流体で充満され、ただ1つの(a single)火花の発生により瞬時に悲惨な結果となる可能性がある。この危険を未然に防ぐためまたは少なくとも低減するために、火炎検知器が用いられる。火炎検知器は、炎がもはや検知されない場合に燃料弁の開放信号が抑制され、それにより燃料弁が閉止され、さらなる燃料の供給がなくなることを確実にする。
【0008】
非常によく使われる火炎検知の方法は、イオン化に基づく安全装置(ionization-based safety)を用いる。この方法は、炎電流測定を利用する。炎の熱が、ガス分子を、例えば空気中のガス分子を、イオン化する(または電離する、ionize)という事実を利用する。
【0009】
図1は、このような炎電流測定10の例を示す。燃焼性のガスと空気の混合物は、バーナー20から流出する。炎30で、空気由来の酸素と共にガスは燃焼する。電極12は炎30の内または近傍に構成される。交流電圧源14は、コンデンサ16、または必要に応じて抵抗器、を介して電極12につながれる。交流電圧源14の他方の極は、(伝導性の)熱交換器40につながれる。これは、炎30にわたって交流電界を作り出す。炎のイオン化の作用に起因して、電極12と熱交換器40の間に荷電粒子が存在する。これによって、電極12と熱交換器40の間に小電流が流れる。しかし、交流電界から生じる導電性は双方向において同一ではない。
【0010】
図2は、図1の炎電流測定における炎の電気等価回路図を示す。抵抗器32は、両方の電流方向に共通する炎を介したリーク電流成分を表し、抵抗器36は導電性がより大きい方向における追加的なリーク電流成分を表す。抵抗器32を通るリーク電流成分は、抵抗器36を通るリーク電流成分よりもはるかに小さい。ダイオード34は、この成分が一方向にのみ起こることを確実にする。ダイオードの効果は、クランプ18と19の間(つまり電極12と熱交換器40の間)の交流電圧が、直流電圧成分を得ることを確実にする。コンデンサ16は、交流電圧成分と直流電圧成分の分離を提供する。直流電圧成分は、コンデンサ16を通じて測定することが出来る。電極12と熱交換器40の間に炎30が存在する間は、クランプ18と19の間に直流電圧成分が存在し、コンデンサ16にわたって測定することが出来る。つまり、直流電圧成分が検知される限り、イオン化に基づく安全装置はバーナー20のガス供給を開放したままにする。しかし、直流電圧成分が停止する場合、その後ガス供給は閉止される。
【0011】
しかし、炎によるイオン化の程度は、炎30の燃焼の完全性についての情報も提供する。過剰空気係数λが変化する場合、λ=1において、測定される炎電流の最大は記録される。従って、炎電流測定は過剰空気係数λを測定するのに用いることも出来る。これらのデータを用いて、過剰空気制御器は過剰空気係数λを制御することが出来る。
【0012】
しかし測定された炎電流は過剰空気係数のみに依存しない。炎のサイズ、炎から電極12および熱交換器までの距離ならびに、電極12と熱交換器40の状態(例えば、すすの発生の程度、腐食の程度など)、ならびに他の要因も、炎電流の測定に影響を及ぼす。
【0013】
上述の文書 WO 2010/094673 A1は、バーナーの表面から異なる距離にある2つ以上の測定ピンを用いている、炎の検知およびガス/空気の制御のためのシステムを備えたバーナーを記載している。ここで測定ピンは平行につながれて第1電極を形成し、一方バーナーは第2電極または本体(mass)を形成する。炎が燃焼している時、測定ピンの1つまたは両方の測定ピンおよび接地(バーナー)にわたって電流が生じ、それは電気部品で測定され、必要に応じて増幅される。この部品からの出力信号は、バーナーへの空気供給およびガス供給を制御する制御回路へ送られる。
【0014】
日本の文書 JP 56−74519は、不完全燃焼の場合に生じる過剰な炎を検知するためのシステムを備えたバーナーを記載する。このシステムは2つの電極に基づいており、その1つはバーナーからある距離にある熱吸収フィンによって形成され、その他の電極(本体)はバーナーによって形成される。不完全燃焼の場合、炎はフィンと接触し、それにより直流が生じる。この直流は、最終的には電磁弁を閉止する制御回路に供給され、それによりバーナーへのガスの供給が中断され、炎が消える。ここで、ガス/空気制御については記載されておらず、バーナーのスイッチを切ることのみ記載される。
【0015】
最後に、米国特許公報 US 2010/159408において、交流電圧を供給される2つの電極を備えた火炎検知システムも記載される。
【発明の概要】
【0016】
本発明の目的は、上述した影響への依存性がより低い炎電流測定を提供することである。
【0017】
本発明の第1態様によると、この目的は、バーナーに対して電気的に絶縁されている熱交換器を備える上述のタイプの水加熱装置で達成され、前記バーナーと前記熱交換器は炎電流測定装置の電極を形成している。
【0018】
熱交換器に加えて炎電流測定装置の電極として特別な測定ピンが存在する従来技術とは対照的に、本発明ではこの特別な測定ピンは含まれない。「測定ピン」として作用するものはバーナーである。炎と特別な測定ピンとの間の距離の変動に対する従来技術の炎電流測定の感度と比較すると、バーナーと熱交換器のサイズのために前記炎電流測定は炎と電極との間の距離の変動に対する感度がより低い。特に、比較的大きいバーナーを備えた水加熱装置の場合、バーナーと熱交換器の両方の大きな表面積のために、炎電流測定は炎に対する「電極」の位置についての依存性はより低くなる。本願の水加熱装置におけるバーナーは、10cmから40cmの間で変化する幅を有する。バーナーと熱交換器の大きな表面積は、熱交換器上の堆積物(または沈着物、deposit)、例えばすす、に対して、従来技術の特別な測定ピンの感度よりも小さな感度をもたらす。バーナーが有するすすの堆積についての問題がはるかに少なくなるように、バーナーはまた炎に対して常に上流に位置する。また、バーナーはさらに、ガス混合物の流れによって冷却され、一方従来技術の測定ピンは通常は炎内にそれ自体が設置される。
【0019】
炎電流は電極の温度にも依存するため、本発明に係る炎電流測定は絶対温度への依存が小さく、また例えば、バーナーのスイッチのオンおよびオフされる結果としての温度変動への依存も小さい。バーナーと炎の間の距離は空気/燃料の混合物の流出速度によって主に決定されるので、この距離は水加熱装置の施工時の変動にはもはや依存せず、そしてバーナーに対する測定ピンの位置にはもはや依存しない。
【0020】
さらなる利点は、電極のより大きな表面積のために、より大きな炎電流が流れ始めることである。従来技術による測定ピン(WO 2010/094673またはUS 2010/159408)またはフィン(JP 56−74915)に生じる炎電流は数マイクロアンペアであるが、本発明の炎電流は数百マイクロアンペアから数千マイクロアンペアであり、例えば約1000μAである。これによって炎電流測定は、干渉への感度がより小さくなり、かつ使用可能な値に炎電流を増幅する前置増幅器に対してより厳しくない条件を設定することが出来る。また、分解能が大幅に増加する。適切に燃焼(ほとんどλ=1)する場合と、適切に調節されていない(λ<1または1よりもはるかに大きい)燃焼との場合では、測定されたリーク電流には大きな違いがあり、それによって過剰空気係数の変動を直ちに検知することが出来る。
【0021】
熱交換器およびバーナーはそれぞれ異なる電位を得るので、それらは互いに電気的に絶縁して取り付けられなければならない。炎電流測定の電極についての標準的な電位差は、数十ボルト(例えば30V)から数百ボルト(例えば、230Vまたは300V)まで変化する。
【0022】
燃焼装置の電流を流さない金属部分の大半を共有電位(a shared potential)、例えば本体、につなげることが通常である。本発明に係る水加熱装置の実施形態において、バーナーまたは熱交換器は接地されている。
【0023】
熱交換器が接地されている場合、構造的に単純な実施形態が得られる。バーナーは、比較的に単純な方法で周囲の構造物から電気的に絶縁することができるが、これは実用的には熱交換器に対しては不可能である。
【0024】
水加熱装置の好ましい実施形態において、測定された炎電流は、燃焼の過剰空気係数の測定に用いられる。更なる実施形態において、この過剰空気係数の測定は、誤って設定された燃焼、すなわち1より小さい、または1よりはるかに大きい過剰空気係数λ、に対する保護として続いて利用される。さらに別の実施形態において、過剰空気係数の測定は、過剰空気係数の制御の目的で利用され、過剰空気係数はλ=1より少し高い範囲内に常に保持される。
【0025】
更なる実施形態において、水加熱装置は空気/燃料比を制御するための空気/燃料制御器をさらに含み、空気/燃料制御器は測定された過剰空気係数を用いて空気/燃料比を制御する。空気/燃料制御器は、混合された空気と燃料の量の比率を制御する。更なる実施形態において、空気/燃料制御器は電気的に制御されるガスブロックを運転する。
【0026】
本発明に係る水加熱装置のさらに好ましい実施形態は、バーナーと熱交換器との間に炎が存在しない時にバーナーへの燃料供給を停止するためのイオン化に基づく安全装置を含み、イオン化に基づく安全装置は、炎電流測定装置を含み、測定された炎電流に基づいて、炎が存在するか否かを判断する。本発明に係る炎電流測定装置の、炎の燃焼の程度に対するより大きな感度と、電極上のすすの堆積および電極の腐食のような要因に対するより小さな感度(およびそれによる炎電流測定装置のより大きな選択度(selectivity))によって、より信頼性のあるイオン化に基づく安全装置が得られる。
【0027】
水加熱装置のさらなる実施形態において、電圧源は2つの電極に交流電位差を印加し、双方向の炎電流を測定する。炎電流測定に対して交流電位差を用いることは、本質的には絶対不可欠ではない。しかし、イオン化に基づく安全装置は、炎のダイオード効果(diode effect)の実行に基づいている。この場合、双方向の炎電流の間の差を検知することを可能とするためには、電流が双方向において測定され、そのようにして電位差が逆転することが必要不可欠である。
【0028】
水加熱装置は、湯沸かし器(geyser)、ボイラー、セントラルヒーティングボイラー、またはコンビボイラーを含むことが出来る。
【0029】
水加熱装置のさらなる実施形態において、バーナーはパイロットバーナーであり、また装置はメインバーナーを含み、メインバーナーはパイロットバーナーの炎によって点火される。
【0030】
本発明の第2の態様において、バーナーと、そこから電気的に絶縁された熱交換器と、を含む水加熱装置の炎の炎電流を測定する方法が提供され、当該方法は、バーナーと熱交換器との間に電位差を印加する工程と、電位差を印加した結果流れ始める電流を測定する工程と、を含む。
【0031】
本発明の方法の変形例においては、電位差を印加する前に、バーナーまたは熱交換器を接地電位と接続するさらなる工程を含む。
【0032】
熱交換器は好ましくは接地電位に接続され、バーナーは周囲の構造物から、特に熱交換器から、電気的に絶縁される。
【0033】
本発明の方法はさらに、測定された炎電流に基づいて、過剰空気係数を決定する工程を含むことが出来る。
【0034】
本発明の方法のさらに別の変形例においては、バーナーはある空気/燃料比での空気と燃料の混合物を提供され、方法は、決定された過剰空気係数に基づいて前記空気/燃料比を制御する工程をさらに含む。
【0035】
印加された電位差が交流電位差である時、本発明の方法は、双方向の炎電流を測定する工程と、双方向で測定される炎電流が実質的に同一ではないことを確認することにより、バーナーと熱交換器との間に炎が存在するか否かを判断する工程と、バーナーと熱交換器との間に炎が存在しない場合にバーナーへの燃料の供給を停止する工程と、をさらに含むことが出来る。
【0036】
更なる実施形態および有利性については、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、従来技術の炎電流測定装置を概略的に示す。
図2図2は、図1の炎電流測定装置の炎の、電気等価回路図を示す。
図3図3は、本発明に係る炎電流測定装置を概略的に示す。
図4図4は、本発明に係る炎電流測定装置に備わる水加熱装置の分解された部品の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の好ましい実施形態は、バーナー20と熱交換器40を含む。空気/ガス混合物がバーナーから流出し、混合物が点火される時に、そして炎30は燃焼する。燃焼のために、高温ガスは熱交換器40に沿って流れ、そこへその熱を廃棄する。熱交換器40は、例えば管44の形態の、水が流れるガイドを含む。冷水はフィード42を通って供給される。熱交換器40は、管44内の水に熱を放棄し、それにより水は加熱される。高温水は、放出路(discharge)46を介して熱交換器40を離れる。
【0039】
バーナー20および熱交換器40は、お互いに電気的に絶縁されており、炎電流測定装置100の電極を形成する。示される例において、熱交換器40は、水加熱装置の他の電流を流さない金属部品と同じように、配線41を介して接地電位につながれている。一方バーナー20は、周囲の構造物から電気的に絶縁されており、とりわけ熱交換器40から絶縁されている。バーナー20と熱交換器40の両方ともが導電性の材料、例えばアルミニウム、銅または鋼、を含んでいる。熱交換器40は、熱伝導性の材料、例えばアルミニウム、銅または鋼、を含んでいる。バーナーと熱交換器は、交流電圧源14およびコンデンサ16の直列接続の極にそれぞれ接続している。交流電圧源14は、バーナー20と熱交換器40との間に交流電場が作られることを確実にする。コンデンサ16は、交流電圧源成分を、炎30によって生じる直流電圧源成分から分離する。
【0040】
炎30の燃焼熱によって、炎30の内側および周囲のガスの一部がイオン化する。バーナー20と熱交換器40との間の電界の影響下において、荷電粒子が移動し、小さなリーク電流が2つの電極、バーナー20と熱交換器40、の間を流れる。このリーク電流の程度は、他の複数の要因の中でも、燃焼の完全性によって、従って過剰空気係数λによって決定される。過剰空気係数λは測定された炎電流に基づいて決定される。
【0041】
交流電圧源14は交流電圧を発生させるので、電界は交番(alteranting)であり、かつリーク電流は同じく交番である。リーク電流は双方向において同じではない。その結果として、交流電圧源14とコンデンサ16との直列接続の全体にわたって、クランプ18および19上に、直流オフセットがある交流電圧がかかる。(炎自体も追加的に、弱い電圧源としてある程度まで作用する。)この直流成分は、コンデンサ16にわたって測定することが出来る。これらのクランプにわたって直流成分が検知されると直ちに、これはバーナー20と熱交換器40との間で炎が燃焼していることを意味する。クランプ18および19における信号は、イオン化に基づく安全装置に関する従来型の回路(ここでは表示しない)に伝達され、そこでコンパレータは、直流成分がしきい電圧を超えているのか否かを調べる。しきい電圧を超えている場合、炎30はまだ燃焼しており、そしてガス供給の弁が開放されたままであってもよい。直流成分がしきい値を下回ったとコンパレータが判断するとすぐに、弁はもはや作動せず、閉止し、そしてガス供給は遮断される。
【0042】
さらに、クランプ18、19における信号はバーナー20のガス/空気比率を制御するのに用いられる。上述したように、炎電流は燃焼の完全性、およびそれによる過剰空気係数λの表示(indication)を表す。従って、過剰空気係数λはクランプ18、19において検知される信号に基づいて決定することができ、その後クランプ18、19に接続されている空気/燃料制御器(ここでは非表示)が、このように決定された係数λと過剰空気係数の目標値を比較する。この比較に基づいて、それから燃料供給および/または空気供給は、所望の空気/燃料比を設定するように制御される。実際には、空気/燃料制御器は、ガスブロックを操作することにより燃料供給に介在する。
【0043】
図4は、本発明に係る水加熱装置の実施形態を示す。バーナー20と熱交換器40との間の距離はここでは非常に誇張されている。すなわち現実においては、バーナー20は、
相対的に外側に飛び出していないフィン45を有することにより形成された熱交換器40の凹部空間43内の熱交換部の近くに位置する。バーナー20が比較的に大きな表面積を有し、熱交換器40の全体の横幅まで実質的に延在することが、図面に明確に示される。大きな炎電流がここで生じ、従ってクランプ18、19において強い信号が存在する。これは、信頼性のある火炎検知およびガス/空気比の安定した制御器を提供する。検知はまた、この方法の場合には、測定ピンの場合よりも、精密で正確な「電極」の据え付けの影響を受けにくい。さらに、電極として機能するバーナー20の大きな表面積により、環境の影響、例えばすすの堆積、に対する感度は著しく低下する。
【0044】
上述した実施形態および図に示した実施形態は、本発明の説明のための単なる例示的な実施形態である。図に示した例示的な実施形態および上述した例示的な実施形態に対する多くの変更およびそれらの組み合わせは、本発明の範囲内において可能である。例示的な実施形態は従って限定的に解釈されるべきではない。要求される保護は、次の特許請求の範囲によってのみ規定される。
図1
図2
図3
図4