(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6436788
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒、光学機器、および、撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20060101AFI20181203BHJP
【FI】
G02B7/04 D
G02B7/04 C
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-4210(P2015-4210)
(22)【出願日】2015年1月13日
(65)【公開番号】特開2016-130765(P2016-130765A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2018年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】越智 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岡田 忠典
【審査官】
藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−93612(JP,A)
【文献】
特開2011−39386(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0253793(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 − 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを保持するレンズ保持枠と、
前記レンズ保持枠を保持して直進移動可能な直進筒と、
前記直進筒のカム溝の内部に設けられた第1のカムフォロアおよび第2のカムフォロアと、を有し、
前記第1のカムフォロアは、前記レンズ保持枠の位置を調整可能であり、
前記第2のカムフォロアは、外力が加わった場合、前記カム溝に当接して前記第1のカムフォロアの変形を低減するように構成されている、ことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記第1のカムフォロアは、前記直進筒の前記カム溝に沿って移動することにより、前記レンズ保持枠の光軸方向における前記位置を調整可能であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記第1のカムフォロアの幅は、前記直進筒の前記カム溝の幅よりも大きく、
前記第2のカムフォロアの幅は、前記カム溝の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記第1のカムフォロアは、圧入して前記直進筒の前記カム溝に係合していることを特徴とする請求項3に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記第1のカムフォロアは、ビスを用いて前記レンズ保持枠と前記直進筒とを固定していることを特徴とする請求項4に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記第2のカムフォロアと前記直進筒の前記カム溝との第1の隙間は、該カム溝と前記第1のカムフォロアとの第2の隙間よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記第1のカムフォロアは樹脂材料からなり、
前記第2のカムフォロアは金属材料からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
前記第1のカムフォロアは、金属部材と、該金属部材の周囲を覆う前記樹脂材料とにより形成されていることを特徴とする請求項7に記載のレンズ鏡筒。
【請求項9】
前記外力が加わった場合、前記第2のカムフォロアは、前記第1のカムフォロアが塑性変形するよりも先に、前記直進筒の前記カム溝に当接することを特徴とする請求項7または8に記載のレンズ鏡筒。
【請求項10】
前記第1のカムフォロアの側面は円形状であり、
前記第2のカムフォロアの側面は平坦形状を含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項11】
前記第2のカムフォロアは、前記レンズ保持枠に対する位相を決定する位置決め部を有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒を有することを特徴とする光学機器。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒と、
前記レンズ鏡筒の光学系を介して形成される光学像を光電変換して画像データを出力する撮像素子と、を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学機器に用いられるレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラやビデオカメラなどの光学機器に用いられるレンズ鏡筒においては、レンズ群を保持するレンズ保持部材を鏡筒本体に組み込む際に、レンズ群の傾きや光軸を偏芯させてレンズ群の光学調整が行われる。
【0003】
特許文献1には、偏芯コロによりレンズの傾き調整を行うとともに、保持部材をカム溝の案内により回転させて光学素子の光軸方向の位置調整を行うレンズ鏡筒が開示されている。特許文献2には、複数の貫通穴を介して取り付けられたピン部材の周囲に充填された接着剤を用いて、レンズ保持部材が鏡筒本体に固定されているレンズ鏡筒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−91153号公報
【特許文献2】特開2010−191070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のレンズ鏡筒では、円形の樹脂材料または金属材料の偏芯コロが用いられている。樹脂材料の偏芯コロを用いた場合、レンズ鏡筒に衝撃が加わった際に偏芯コロの打痕による変形や、偏芯コロの回転などにより、レンズ保持枠の調整状態が変化する可能性がある。一方、金属材料の偏芯コロを用いた場合、カム溝との抉りを防ぐためにカム溝と偏芯コロの間にガタを設ける必要がある。しかしこのとき、レンズ保持枠が保持するレンズの敏感度やレンズ鏡筒の全系の敏感度が大きいと、所望の光学性能を満たすことができない。
【0006】
特許文献2のレンズ鏡筒では、レンズ鏡筒に衝撃(外力)が加わった場合、偏芯コロのみで加重を受けるのではなく、ピン部材の周囲に充填された接着剤とで加重を受ける。このため、外力が加わった場合に偏芯コロの回転や打痕による変形が生じにくく、調整位置のずれを小さくすることができる。しかし、重量が重いレンズ鏡筒の場合、コロの打痕による変形が生じ、光学性能が劣化する可能性がある。
【0007】
そこで本発明は、耐衝撃性の高い、光学性能を向上させたレンズ鏡筒、光学機器、および、撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としてのレンズ鏡筒は、レンズを保持するレンズ保持枠と、前記レンズ保持枠を保持して直進移動可能な直進筒と、前記直進筒のカム溝の内部に設けられた第1のカムフォロアおよび第2のカムフォロアとを有し、前記第1のカムフォロアは、前記レンズ保持枠の位置を調整可能であり、前記第2のカムフォロアは、外力が加わった場合、前記カム溝に当接して前記第1のカムフォロアの変形を低減するように構成されている。
【0009】
本発明の他の側面としての光学機器は、前記レンズ鏡筒を有する。
【0010】
本発明の他の側面としての撮像装置は、前記レンズ鏡筒と、前記レンズ鏡筒の光学系を介して形成される光学像を光電変換して画像データを出力する撮像素子とを有する。
【0011】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施形態において説明される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐衝撃性の高い、光学性能を向上させたレンズ鏡筒、光学機器、および、撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態におけるレンズ鏡筒の断面図である。
【
図2】第1の実施形態における直進筒の断面図である。
【
図3】第1の実施形態におけるレンズ鏡筒の主要部の分解斜視図である。
【
図4】第1の実施形態における直進筒および1群保持枠の側面図である。
【
図5】第1の実施形態における1群保持枠(第1のカムフォロア)の断面図である。
【
図6】第1の実施形態における1群保持枠(第2のカムフォロア)の断面図である。
【
図7】第1の実施形態における第2のカムフォロアの詳細図である。
【
図8】第2の実施形態における第2のカムフォロアの詳細図である。
【
図9】第2の実施形態における1群保持枠の詳細図である。
【
図10】第3の実施形態におけるレンズ鏡筒の主要部の分解斜視図である。
【
図11】第3の実施形態における第2のカムフォロアの詳細図である。
【
図12】第4の実施形態における光学機器(撮像装置)の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
まず、
図1乃至
図3を参照して、第1の実施形態におけるレンズ鏡筒の全体構成について説明する。
図1は、本実施形態におけるレンズ鏡筒1の断面図である。
図2は、レンズ鏡筒1における直進筒3の断面図である。
図3は、レンズ鏡筒1における主要部の分解斜視図である。
【0016】
1は、カメラ本体(撮像装置本体)に着脱可能に取り付けられるレンズ鏡筒である。マウント19は、レンズ鏡筒1をカメラ本体に取り付けるためのバヨネット部を有する。レンズ鏡筒1は、物体側から像面側へ順に、第1レンズ群L1、第2レンズ群L2、および、第3レンズ群L3から構成される複数のレンズ群を有する。第1レンズ群L1、第2レンズ群L2、および、第3レンズ群L3は、ズーム動作に際し、光軸OAの方向(光軸方向)に移動する変倍レンズ群(ズームレンズ)である。これらのレンズ群のうち第2レンズ群L2は、フォーカス動作に際し、光軸方向に移動する合焦レンズ群(フォーカスレンズ)である。
【0017】
フランジバック調整環21は、固定筒18とマウント19との間に挟み込まれ、ビスを用いてマウント19と共に固定筒18に固定されている。4は案内筒であり、ビスを用いて固定筒18に固定されている。案内筒4の内周には、バヨネット部5aにより光軸OAを中心に回転可能なカム筒5が嵌合されている。
【0018】
3は直進筒である。直進筒3には、第1レンズ群L1を保持する1群保持枠10がコロ10aにより保持されている。直進筒3は、その像面側の内周に摺動面3cを有し、案内筒4に対して移動可能に、案内筒4の摺動面4bに嵌合している。また直進筒3は、その周方向に設けられた3つのキー部材17をビス17aにより保持し、カム筒4の外周に形成された直進溝4cにキー部材17を係合することにより、光軸方向に直進移動可能に保持されている。
【0019】
図2に示されるように、直進筒3の内周には有底の1群カム3aが設けられており、1群カム3aには、カム筒5の先端外周にビス5cで固定されたコロ5bが係合している。このような構成において、カム筒5の回転により、直進筒3は1群カム3aの軌跡に従って直進移動を行う。1群保持枠10は、コロ10aが直進筒3のリフトを有するカム溝3bにより光軸方向に位置調整されて固定されており、直進筒3と一体的に移動可能である。
【0020】
2は調整筒であり、光軸OAを中心に像面側から物体側へ向けて径が大きくなる複数の円筒部を有する。複数の円筒部はそれぞれ、円盤状のフランジ部で繋がっており、フランジ形状の小径部において、案内筒4に光軸方向からビスにて固定されている。調整筒2は、案内筒4に対して光軸方向に偏芯調整が可能であり、レンズ鏡筒1における全系の光軸調整を行うことができる。直進筒3はフランジ形状を有し、フランジ大径部に形成された3か所の係合溝にそれぞれローラー軸12が係合し、ローラー13が光軸方向に移動可能にローラー軸固定板金14を介して直進筒3にビスにより固定されている。なお、不図示のローラー軸付勢バネがローラー軸12を光軸OAと直交する方向(光軸直交方向)に付勢しており、ローラー13は常に直進筒3に対して付勢されている。
【0021】
23はフォーカスカム筒である。フォーカスカム筒23には、カム溝が形成されている。22は、合焦レンズ群としての第2レンズ群L2を保持する2群保持枠である。2群保持枠22は、その外周に設けられたカムフォロワ部がフォーカスカム筒23に形成されたフォーカスカム溝に係合している。24は、第3レンズ群L3を保持する3群保持枠である。
【0022】
26は、2群保持枠22および3群保持枠24を保持する後群保持枠である。フォーカスカム筒23は、後群保持枠26とフォーカスカム筒押さえ板金27とで挟まれ、フォーカスカム筒押さえ板金27を後群保持枠26にビス固定することにより、後群保持枠26に保持される。後群保持枠26は、不図示のコロがカム筒5に形成されたカム溝に係合して保持される。カム筒5を回転させると、案内筒4に形成された光軸方向へ延伸した直進溝と、カム筒5に形成された後群用カム溝および直進筒用カム溝との交点が移動する。この交点の移動に従い、後群保持枠26および直進筒3は、それぞれの移動コロを介して光軸方向に直進移動する。
【0023】
30は、絞り値(F値)を決定する光量調整を行うための主絞りユニット(電磁絞りユニット)である。主絞りユニット30は、フォーカスカム筒23の内径に配置され、フォーカスカム筒押さえ板金27が後群保持枠26にビス固定されることによりフォーカスカム筒23の内径に保持される。31は、ズーム動作による開放絞り口径の補正を行う第1の副絞りユニットである。第1の副絞りユニット31は、主絞りユニット30に対して光軸方向の物体側に配置されている。第1の副絞り31ユニットは、副絞り保持筒32に対して不図示のビスを用いて固定され保持されている。また副絞り保持筒32は、不図示のコロがカム筒5に形成されたカム溝に係合され、カム筒5に保持されている。33は、ズーム動作による周辺光量の大きな変化を防ぐための第2の副絞りユニットである。第2の副絞りユニット33は、主絞りユニット30に対して光軸方向の後方(像面側)に配置され、不図示のビスにより後群保持枠26に保持されている。
【0024】
28はフォーカスユニットであり、案内筒4にビス固定されている。15はマニュアルリングであり、フォーカスユニット28に対して定位置回転可能に保持されている。フォーカスユニット28は、主に振動型モータと差動機構とで構成されており、振動型モータのロータ回転量とマニュアルリング15の回転量とに応じた回転量を不図示のフォーカスキーに出力する。フォーカスキーは、フォーカスカム筒23に形成されたフォーカスキー係合溝に係合されている。オートフォーカスの際には振動型モータの駆動構成により、マニュアルフォーカスの際にはマニュアルリング15を回転させることにより、それぞれフォーカスキーを回転させる。これにより、2群保持枠22に保持された第2レンズ群L2は、フォーカスカム筒23に形成されたカム溝の軌跡に沿って光軸方向に進退し、フォーカシングを行うことができる。
【0025】
20はズームリングである。ズームリング20は、ズーム操作の際に使用者が回転操作する部材であり、固定筒18に対して定位置回転可能に保持されている。ズームリング20には、不図示のズームキーがビスにて固定されている。ズームキーは、カム筒5に形成されたズームキー係合溝に係合している。ズームリング20を回転させると、その回転力により、ズームキーを介して一体的にカム筒5を回転させることができる。
【0026】
6はレンズフードであり、光軸OAを中心に像面側から物体側に向けて径が大きくなる複数の円筒部を持つフランジ形状を有する。レンズフード6は、光軸方向の物体側面において調整筒2に当接し、像面側面においてウェーブワッシャー7(第1の弾性部材)に当接している。ウェーブワッシャー7は、レンズフード6と、調整筒2にビスで固定された固定リング部材9との光軸方向の間に狭持されている。8はゴムリング(第2の弾性部材)である。ゴムリング8は、調整筒2の外径部とレンズフード6の内径部との間で隙間なく狭持されている。29は裏蓋であり、マウント19にスナップ結合して有害光をカットする。34はメイン基板(制御部)であり、フォーカスユニット28および主絞りユニット30に電気的に接続されており、各種の制御を行う。
【0027】
ここで、
図3乃至
図7を参照して、直進筒3に対する1群保持枠の保持構造について説明する。
図4は、直進筒3および1群保持枠10の側面図である。
図5は、1群保持枠10の要部断面図(第1のカムフォロアの断面図)である。
図6は、1群保持枠10の要部断面図(第2のカムフォロアの断面図)である。
図7は、第2のカムフォロアの詳細図である。
【0028】
第1のカムフォロアであるコロ10aは、金属製の芯部材10a1の周囲に樹脂部材10a2を被せた構造を有し、芯部材10a1と樹脂部材10a2とが一体化して構成されている。コロ10aは、ビス10cを用いて強固にビス締めされており、直進筒3のカム溝3bには樹脂部材10a2が係合している。樹脂部材10a2の径は、カム溝3bの幅に対して僅かに大きい。このためコロ10aは、軽く圧入してカム溝3bに組み込まれる。詳細には、調整の際に1群保持枠10をガタつき無く自由に光軸中心に回転可能な程度の圧入になる寸法に設定されている。
【0029】
直進筒3の外周には、カム溝3bが6箇所等分に設けられており、そのうち3箇所にコロ10aが組み込まれている。残りの3箇所には、金属材料からなる第2のカムフォロアであるコロ10dが組み込まれている。コロ10dは、コロ10aと同様に、ビス10cを用いて固定されている。コロ10dは、
図7に示されるように、円筒部を平行に削除した平面部10eを有する小判型形状である。平面部10eの幅D1は、カム溝3bの幅D2よりも小さくなるように設計されており、部品公差がばらついた場合でもわずかな隙間ができる寸法に設定されている。このような構成において外部から衝撃が加わった場合、コロ10aが塑性変形する前に(弾性変形領域内で)コロ10dの平面部10eがカム溝3bに当接することにより、コロ10aの破損が防止される。
【0030】
図4において、16は回り止めである。回り止め16は、直進筒3の周溝3fにおいてビス13aで固定されている。回り止め13の円筒部13bは、1群保持枠10の溝10fに嵌合している。調整の際にはビス16aを緩めておき、1群保持枠10を光軸周りに回転させることにより、カム溝3bのリフトに従って、1群保持枠10は光軸方向に回転繰出しする。調整後にビス16aを締め付けることにより、1群保持枠10が回転しないように固定することができる。
【0031】
本実施形態のレンズ鏡筒1は、広角系のズームレンズである。このため、第1レンズ群L1の外径は大きく、その重量も重い。より広角側の焦点距離になるに従い、より広い画角の光線を入射させるために第1レンズ群L1の外径を大きくする必要がある。またそれに伴い、重量も重くなる傾向がある。レンズの重量が重くなると、ズーム動作の際にレンズ保持枠(1群保持枠10)を移動するためのコロに対して加わる衝撃が大きくなるため、コロの塑性変形や割れが懸念される。本実施形態のレンズ鏡筒1では、コロ10a(第1のカムフォロア)が変形する前に、先に衝撃を受けるコロ10d(第2のカムフォロア)が別に設けられているため、コロ10aが変形しにくい。このため本実施形態のレンズ鏡筒によれば、良好な光学性能を実現することができる。
【0032】
(第2の実施形態)
次に、
図8および
図9を参照して、本発明の第2の実施形態におけるレンズ鏡筒について説明する。本実施形態は、第2のカムフォロア(コロ10d)の構成が変更されている点で、第1の実施形態におけるレンズ鏡筒とは異なる。本実施形態のレンズ鏡筒は、第2のカムフォロア(コロ10d’)の構成を除いて第1の実施形態と同様であるため、第2のカムフォロアの構成以外の説明は省略する。
【0033】
図8は、本実施形態における第2のカムフォロア(コロ10d’)の詳細図である。
図9は、本実施形態における1群保持枠10の詳細図である。コロ10dは、1群保持枠10に組み付けられる際に、円筒部10hが1群保持枠10の丸溝部10jに導入され、ビス固定されている。本実施形態において、コロ10d’には、角度位置決め部10i(位置決め部)が設けられている。角度位置決め部10iは、1群保持枠10の溝部10kに嵌合し、コロ10d’の平面部10eと直進筒3のカム溝3bとが互いに平行になるように、コロ10d’の角度位置(位相)を規制する。
【0034】
本実施形態によれば、外部から衝撃が加わった場合、第2のカムフォロアであるコロ10d’の平面部10eが直進筒3のカム溝3bと面で当たるように規制される。このため、衝撃に対する第1のカムフォロアの変形がより生じにくくなり、耐衝撃性をより高めることができる。
【0035】
(第3の実施形態)
次に、
図10および
図11を参照して、本発明の第3の実施形態におけるレンズ鏡筒について説明する。本実施形態は、第2のカムフォロア(コロ10d)の構成が変更されている点で、第1の実施形態におけるレンズ鏡筒とは異なる。本実施形態のレンズ鏡筒は、第2のカムフォロア(コロ10g)の構成を除いて第1の実施形態と同様であるため、第2のカムフォロアの構成以外の説明は省略する。
【0036】
図10は、本実施形態におけるレンズ鏡筒の主要部の分解斜視図である。
図11は、本実施形態における第2のカムフォロア(コロ10g)の詳細図である。第1のカムフォロア(コロ10a)は、金属製の芯部材10a1の周りに樹脂部材10a2を被せた構造を有し、芯部材10a1と樹脂部材10a2とが一体化して構成されている。コロ10aは、ビス10cを用いて強固にビス締めされ、直進筒3のカム溝3bには樹脂部材10a2が係合している。樹脂部材10a2の径は、カム溝3bの幅に対して僅かに大きく、コロ10aは軽く圧入してカム溝3bに組み込まれる。より詳細には、調整の際に、1群保持枠10をガタつき無く自由に光軸中心に(光軸OAの周りに)回転可能な程度の圧入になる寸法に設定されている。
【0037】
直進筒3の外周には、カム溝3bが6箇所等分に設けられており、そのうち3箇所にコロ10aが組み込まれている。残りの3箇所には、金属材料からなるコロ10g(第2のカムフォロア)が組み込まれている。コロ10gは、コロ10aと同様に、ビス10cで固定されている。
図11に示されるように、コロ10gは円筒形状(円筒部10m)を有する。円筒部10mの径D3は、カム溝3bの幅D2よりも小さく設定されており、部品公差がばらついた場合でも僅かな隙間が形成されるように設定されている。このような構成において外部から衝撃が加わった場合、コロ10aが塑性変形する前の弾性変形域内でコロ10gがカム溝3bに当接することにより、コロ10aの破損を防止することができる。
【0038】
(第4の実施形態)
次に、
図12を参照して、第4の実施形態における光学機器について説明する。
図12は、本実施形態における光学機器としての撮像装置200(一眼レフカメラ)の構成図である。撮像装置200は、前述の各実施形態におけるレンズ鏡筒1を有する。
【0039】
レンズ鏡筒1(交換レンズ)は、第1レンズ群L1、第2レンズ群L2、および、第3レンズ群L3を含む撮像光学系110(光学系)を有する。220はカメラ本体(撮像装置本体)である。カメラ本体220は、クイックリターンミラー203、焦点板204、ペンタダハプリズム205、および、接眼レンズ206などを備えて構成されている。クイックリターンミラー203は、撮像光学系110を介して形成された光束を上方に反射する。焦点板204は、撮像光学系110の像形成位置に配置されている。ペンタダハプリズム205は、焦点板204に形成された逆像を正立像に変換する。ユーザは、その正立像を、接眼レンズ206を介して観察することができる。207は感光面であり、感光面207には、像を受光するCCDセンサやCMOSセンサなどの光電変換素子(撮像素子)や銀塩フィルムが配置される。撮影時には、クイックリターンミラー203が光路から退避して、撮像光学系110により感光面207上に像(光学像)が形成される。このように撮像素子は、撮像光学系110により形成される光学像を光電変換して画像データを出力する。
【0040】
本実施形態のレンズ鏡筒1を一眼レフカメラなどの撮像装置200に適用することにより、高い光学性能を有する光学機器を実現することができる。また、レンズ鏡筒1は、カメラ本体220と着脱可能に構成された交換レンズであるが、本実施形態はレンズ鏡筒1とカメラ本体220とが一体的に構成された撮像装置にも適用可能である。またレンズ鏡筒1は、クイックリターンミラーのないミラーレスの一眼レフカメラ(ミラーレスカメラ)にも適用することができる。
【0041】
各実施形態のレンズ鏡筒は、レンズを保持するレンズ保持枠(1群保持枠10)、レンズ保持枠を保持して直進移動可能な直進筒3、および、直進筒のカム溝3bの内部に設けられた第1のカムフォロアおよび第2のカムフォロアを有する。第1のカムフォロア(コロ10a)は、レンズ保持枠の位置を調整可能である。第2のカムフォロア(コロ10d、10d’、10g)は、外力(外部からの衝撃)が加わった場合、カム溝(の側面)に当接して第1のカムフォロアの変形を低減するように構成されている。
【0042】
好ましくは、第1のカムフォロアは、直進筒のカム溝に沿って移動することにより、レンズ保持枠の光軸方向における位置を調整可能である。また好ましくは、第1のカムフォロアの幅は、直進筒のカム溝の幅よりも大きく、第2のカムフォロアの幅(D1、D3)は、カム溝の幅(D2)よりも小さい。より好ましくは、第1のカムフォロアは、圧入して直進筒のカム溝に係合している。より好ましくは、第1のカムフォロアは、ビスを用いてレンズ保持枠と直進筒とを固定している。
【0043】
好ましくは、第2のカムフォロアと直進筒のカム溝との隙間は、カム溝と第1のカムフォロアとの隙間よりも大きい。また好ましくは、第1のカムフォロアは樹脂材料からなり、第2のカムフォロアは金属材料からなる。より好ましくは、第1のカムフォロアは、金属部材(金属製の芯部材10a1)と、金属部材の周囲を覆う樹脂材料(樹脂部材10a2)とにより形成されている。より好ましくは、外力が加わった場合、第2のカムフォロアは、第1のカムフォロアが塑性変形するよりも先に(弾性変形中に)、直進筒のカム溝に当接する。また好ましくは、第1のカムフォロアの側面は円形状であり、第2のカムフォロアの側面は平坦形状(平面部10e)を含む。また好ましくは、第2のカムフォロアは、レンズ保持枠に対する位相(組み込み位相)を決定する位置決め部(角度位置決め部10i)を有する。
【0044】
各実施形態のレンズ鏡筒によれば、コロを用いて光軸方向の位置調整や倒れ調整などを行う光学調整機構を有する構成において、外部から衝撃が加わった場合にもコロの打痕による変形を低減することができる。このため各実施例によれば、耐衝撃性の高い、光学性能を向上させたレンズ鏡筒、光学機器、および、撮像装置を提供することができる。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0046】
各実施形態のレンズ鏡筒は、撮像装置に用いられるレンズ鏡筒であるとして説明したが、これに限定されるものではない。各実施形態は、プロジェクタの投射レンズや複写機の光学系など、撮像装置以外の光学機器に用いられるレンズ鏡筒にも適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 レンズ鏡筒
3 直進筒
10 1群保持枠(レンズ保持枠)
10a コロ(第1のカムフォロア)
10d、10g コロ(第2のカムフォロア)