(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記データベース部に記憶された前記容器の識別情報と、前記容器の細胞濃度および液量情報とに基づいて、細胞をほぐすために前記容器に付与される衝撃力の大きさと衝撃が付与される際の継続時間とを算出する、
請求項1に記載の細胞培養管理装置。
前記制御部は、前記データベース部に記憶された前記容器の識別情報と、前記容器の細胞濃度および液量情報と、に基づいて、細胞培養の処理について、前記容器内の細胞の濃度を調整する細胞濃度調整指示と、容器の液量を調整する細胞液量調整指示と、前記細胞培養端末と、に作業指示を行う、
請求項1に記載の細胞培養管理装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る細胞を培養する細胞培養端末、細胞培養管理装置、およびこれらを含む細胞培養システムの実施の一形態について、添付図面を用いて説明する。
図1に示すように、本細胞培養システム全体の構成としては、クライアント部1、サーバ部2、ユニット部3に分けられる。
【0010】
クライアント部1とサーバ部とを含む装置は、細胞培養管理装置であり、ユニット部3を含む端末群を細胞培養端末装置という。
クライアント部1は、管理者が、スケジューリングの管理や、検体の受け入れ管理を行うもので、3つのブロックより構成される。
図2にクライアント部1とサーバ部2の内部のブロック図を示す。
【0011】
1つ目が、工程管理部4で、ユニット部3で行われる、検体に対する細胞培養工程を、管理者に対して表示するものである。
2つ目は、バーコード印刷部5、つまり、識別情報生成部である。
これは、検体が収納される容器に貼られるバーコード、試薬が入った容器に貼られるバーコード、および、それら容器の設置場所に貼られるバーコードを、予め印刷するものである。印刷されるバーコード情報は、サーバ部2内に設けたデータベース部6に予め登録される。
【0012】
上記識別情報生成部で生成された細胞を入れる容器の識別情報と、この容器を設置する設置部の識別情報は、工程管理部4において、細胞を培養する工程ごとに紐付けされる。
識別情報は、細胞を培養する各工程において、どの細胞がどの容器に入れられて、どの設置場所に置かれるかについて、工程管理部4で紐付けされたものであり、細胞培養を行う前に設定されるものである。
【0013】
3つ目は、検体エントリ部7であり、業者から納入された検体を確認するために、検体が入れられた容器に貼られたバーコード情報を読み取り、このバーコード情報を確認することで、検体が正しく納入されたかどうかを確認する。
サーバ部2は、データの管理と、ユニット部との情報のやり取りをしながら、工程の管理を行うもので、2つのブロックより構成される。
【0014】
1つ目は、データベース部6であり、検体の識別を行うためのバーコード情報が入っている。
2つ目は、ユニット制御部8であり、ユニット部3と、やり取りを行いながら、工程の管理を行うものである。
図3にユニット部3の内部のブロック図を示す。
【0015】
ユニット部3は、3つのブロックで構成されている。
1つ目は、細胞起こし部9であり、小容器に入って、納入された検体細胞をほぐし、適切な濃度の細胞群として大容器に移し、細胞培養を行うための検体となる細胞群を準備する工程を行うブロックである。
2つ目は、濃度調整播種部10であり、大容器に入った検体細胞を、所定の濃度にするために培地を足し、その検体細胞を16プレート、3ブロックのウェルプレートに分けて設置する工程を行うブロックである。
【0016】
3つ目は、細胞培養部11であり、ウェルプレートの検体細胞を培養し、その後、所定のスケジュールに従って、培養された検体細胞に、所定の試薬を添加し、その後、色判定を行って、検体細胞の培養状態を観察する工程を行うブロックである。
では、細胞培養の工程について、より具体的に説明を行う。
実施例として、患者Pに対して、3種類の試薬に対する反応をモニタリングするプロセスを一例として説明をする。
【0017】
<細胞起こし部9の構成>
まず、細胞起こし部9の制御ブロック図を
図4に示す。
細胞起こし部9は、投入部17と、第1細胞詰め替え部18と、遠心分離部19と、培地調整部20と、細胞ほぐし部21と、細胞攪拌部22と、第2細胞詰め替え部23と、と検体細胞取り出し部24と、細胞濃度計測部25と、制御部26と、操作部27と、を有している。
【0018】
投入部17は、検体容器や試薬が投入される。
第1細胞詰め替え部18は、投入部17に設置された容器に入れられた検体細胞を、別の中容器に移し替えるとともに、中容器の細胞の液量と細胞濃度を計測する。
遠心分離部19は、中容器に入った細胞を遠心分離機によって、細胞と培養上清に分離する。
【0019】
培地調整部20は、培地上清の除去、培地の新たに添加等することで、培地の調整を行う。
細胞ほぐし部21は、容器に対して振動等を付与することで、例えば、遠心分離部19による処理によって容器の一部(底等)に固まった細胞をほぐす処理を行う。
細胞攪拌部22は、検体細胞を攪拌する。
【0020】
第2細胞詰め替え部23は、攪拌された検体細胞を培地調整して大容器に詰め替える。
検体細胞取り出し部24は、大容器に詰め替えられた検体細胞を取り出す。
細胞濃度計測部25は、検体細胞の細胞数を計測する。
制御部26は、予め決められた工程に従って、サーバ部と通信を行いながら検体を制御する。
操作部27と、タッチパネル式の操作パネルであって、使用者の操作入力が行われる。
【0021】
<細胞起こし部9のトレーサビリティ>
次に、細胞起こし部のトレーサビリティ確保について説明をする。
まず、本実施形態の一例として、患者Pに対して、3種類の試薬の反応を検査することとする。検体細胞としては、検体細胞が入れられた小容器(2ml)に、1試薬あたり4本ずつ、合計12本入れられて納入される。
そして、試薬としては、試薬A、試薬B、試薬Cの3種類の試薬が容器に入れられて納入される。
【0022】
そして、検体の細胞を培養する培地が入った容器が納入される。
検体が収納される容器に貼られるバーコード、試薬が入った容器に貼られるバーコード、および、培地が収納された容器に貼られたバーコード、それら容器の設置場所に貼られるバーコードについて、これらのバーコード情報は、クライアント部1のバーコード印刷部5において、管理者が入力し、印刷されたものであり、これらのバーコード情報は、サーバ部2のデータベース部6に収納されている。
【0023】
これらのバーコード情報は、データベース部6において、患者情報に紐付けされているとともに、管理者が、クライアント部1の工程管理部4より入力する工程管理情報とも紐付けされている。
まず、ベンダーから納入された検体が入れられた12本の小容器のバーコード情報と、3つの試薬(試薬A、試薬B、試薬C)が入った3本の容器のバーコード情報と、培地が入れられた容器のバーコード情報とは、作業者によって、ハンディターミナルで読み取られる。そして、読み取られた情報は、細胞起こし部9の制御部26を通して、サーバ部2のユニット制御部8に転送される。
【0024】
ユニット制御部8では、読み取られたバーコード情報と、サーバ部2のデータベース部6に収納されているバーコード情報とを照合し、所望の患者の細胞培養に関する検体、試薬、培地が納入されているのかどうかについて、確認を行う。
ハンディターミナルは、バーコード読み取り機能付き端末であり、表示部も備えている。
【0025】
このハンディターミナルで、容器のバーコード情報を読み取った際には、表示部には、そのバーコードが適切であるかどうかの結果が表示される。そして、表示部には、バーコードが適切である場合には、その容器を投入部のどの位置に設置すれば良いのかが表示される。
【0026】
<細胞起こし部9の工程>
次に、工程について、
図5を用いて具体的に説明をする。
工程は、サーバ部2、クライアント部1、ユニット部3、ハンディターミナル、作業者の5つによって実行される。
まず、作業者は、細胞起こし部9に設けられた、操作部27としてのタッチパネルを操作して、細胞起こし部9のモードを補充モードに設定する。
補充モードとは、工程開始前に、投入された検体、試薬に誤りがないかどうかを確認するモードである。
【0027】
次に、作業者は、納入された小容器を、ハンディターミナルに表示された所定の投入部17に設置する。投入部17の設置場所に設けられたバーコードリーダによって読み取られたバーコード情報は、制御部26を経由してサーバ部2のデータベース部6のバーコード情報に照会される。そして、検体容器が正しい設置位置に置かれたかどうかについて確認される(S1)。
【0028】
確認した内容が正しければ、細胞起こし部9の制御部26は、運転モードに移行可能な状態になる。そして、作業者は、操作部27のタッチパネルを操作して、運転モードに設定する。
次に、投入部17に設置された2mlの小容器6本に入った検体細胞は、第1細胞詰め替え部18に移動され、15mlの中容器6本に、それぞれ詰め替えられる。詰め替える際には、中容器6本それぞれの液量と、細胞濃度を計測している。そして、次に、細胞起こし部9の制御部26は、詰め替え先の容器に貼られたバーコード情報と、この容器の液量と細胞濃度を、サーバ部2のユニット制御部8に送信する。ユニット制御部8は、詰め替え先のバーコード情報と、容器の液量と細胞濃度を検体情報に紐付けして、データベース部6に記憶する(S2)。
【0029】
そして、次に、中容器に入った検体細胞は、遠心分離部19に移動し、遠心分離部19の設置台に対して、バランスを取って、並べられる。この並べ方は、サーバ部2のユニット制御部8から細胞起こし部9の制御部26に対して指示される。遠心分離部19では、遠心分離によって、検体細胞は容器内で細胞と培養上清に分離される(S3)。
遠心分離部19での回転速度と時間は、容器の液量と細胞濃度によって制御されている。
【0030】
具体的には、細胞濃度が高いほど、回転速度は大きく、また遠心分離の時間も長くなるように設定されている。
細胞培養管理装置では、細胞を入れる容器の識別情報と、この容器の液量と細胞濃度の情報を基に、この容器の遠心分離部19での回転速度と時間を算出している。
このような構成にすることで、細胞濃度に対して適切な遠心分離を行うことが可能となるので、分離時間の最適化と、時間の効率向上、そして、容器内の細胞を細胞と培養上清に適切に分離することが可能となる。
【0031】
その結果、細胞培養のプロセスが簡単になるのである。
そして、次に、培地調整部20において、不要な培養上清を除去し(S4)、細胞ほぐし部21で細胞をほぐした後(S5)、培地調整部20において新たに培地を添加する(S6)。
細胞ほぐし部21での細胞ほぐし機の構成を
図15に示す。
【0032】
細胞ほぐし機41は、容器42を固定した状態で保持する保持体43と、保持体43により固定・保持された容器42の下部先端に対して水平に往復移動しながら叩いて容器に衝撃力を与えることによって容器内の細胞をほぐす叩き部44と、を有している。
衝撃力の大きさは、叩き部44を水平移動する速度と、その周期を設定することで制御することができる。水平移動する速度を大きくすればするほど衝撃力は大きくなる。
【0033】
また、叩き部44の動作時間も設定可能に構成されていて、トータルの動作時間を長くすればするほど、細胞のほぐす程度は大きくなる。
細胞培養管理装置では、細胞を入れる容器の識別情報と、この容器の液量と細胞濃度の情報を基に、この容器に与える衝撃力の大きさと、ほぐすための動作時間を算出している。
【0034】
細胞ほぐし機41の衝撃力の大きさと動作時間は、容器の液量と細胞濃度によって制御されている。
具体的には、細胞濃度が高いほど、衝撃力は大きくなり、また動作時間も長くなるように設定されている。
それらの情報を受信したユニット制御部8では、細胞が入れられた容器に、所定時間の衝撃力を与えて、細胞ほぐし機を制御する構成となっている。
【0035】
このような構成にすることで、細胞濃度に対して適切な細胞ほぐしを行うことが可能となるので、動作時間の最適化と、時間の効率向上、そして、細胞を適切にほぐすことが可能となる。
その結果、細胞培養のプロセスが簡単になるのである。
そして、次に、細胞攪拌部22にて、攪拌された後(S7)、再び遠心分離部19を経て(S8)、培地調整部20において、不要な培養上清が除去される(S9)。そして、細胞ほぐし部21で細胞をほぐした後(S10)、培地調整部20において新たに培地を添加する(S11)。
【0036】
そして、第2細胞詰め替え部23にて、50mlの大容器3本と、2mlの3本の小容器に分けて移される。このとき、細胞起こし部9の制御部26は、詰め替え先の容器に貼られたバーコード情報をサーバ部2のユニット制御部8に送信する。ユニット制御部8は、詰め替え先のバーコード情報を、検体情報に紐付けして、データベース部6に記憶する(S12)。
【0037】
そして、50mlの大容器の液量を計測するとともに、それら50mlに入った検体細胞、それぞれに対応した2mlの容器の検体細胞の細胞数は細胞濃度計測部25で計測される。そして、細胞濃度に換算される(S13)。そして、50mlの大容器に入った検体の液量と、その細胞濃度の情報は、制御部26より、サーバ部2のデータベース部6に送られる。データベース部6では、大容器に貼られたバーコード情報と紐付けされて、その液量と細胞濃度が記憶される。
【0038】
そして、細胞起こし部9の成果物としては、50mlの大容器に入った検体細胞が、検体細胞取り出し部24より取り出されることになる(S14)。
上記のように、本発明の実施の形態では、検体の確認と、検体のトレース記録を、ユニット部3とサーバ部2が各工程実施時に連係して確認しながら行っている。その点について、より詳しく説明を行う。
【0039】
図5の投入部材の確認の工程(S1)における、細胞起こし部9と、サーバ部2とのコミュニケーションについて、
図6に示す。
まず、細胞起こし部9の投入部17に投入された検体と、試薬、培地は、それらが収納された容器に貼られたバーコード情報を、細胞起こし部9の制御部26から、サーバ部2のユニット制御部8に送られる(S15)。
【0040】
そして送信されたバーコード情報は、サーバ部2のユニット制御部8を介して、データベース部6に照会される(S19)。そして、投入された検体と、試薬、培地が正しいか否かについて確認される。そしてその結果は、ユニット制御部8から細胞起こし部9の制御部26に送信される(S20)。
次に、細胞起こし部9の制御部26は、検体と、試薬、培地が、投入部17の正しい設置位置に置かれたかどうかについて問い合わせを行う(S17)。具体的には、検体と、試薬、培地は、それらが収納された容器の設置場所に設けられたバーコードリーダによって読み取られたバーコード情報は、細胞起こし部9の制御部26から、サーバ部2のユニット制御部8に送られる(S17)。そして、投入された検体と、試薬、培地が正しい位置に設置されたか否かについて確認される(S21)。そして、その結果は、ユニット制御部8から細胞起こし部9の制御部26に送信される(S22)。
【0041】
図5の検体細胞の容器詰め替えの工程(S2)における、細胞起こし部9と、サーバ部2とのコミュニケーションについて、
図7に示す。
細胞起こし部9の制御部26から、検体の詰め替え先の容器の情報が、サーバ部2のユニット制御部8に送られる(S23)。送られた検体の詰め替え先の容器の情報は、サーバ部2のデータベース部6に対して、検体情報として紐付けされて記憶される(S24)。
【0042】
図5の検体細胞を遠心分離する工程(S3、S8)における、細胞起こし部9と、サーバ部2とのコミュニケーションについて、
図8に示す。
また、
図20に遠心分離機の回転部分の上面図を示す。
遠心分離機の回転部分には、回転中心58を中心として、回転角90度ずつずらした位置には、容器の設置台として4つのバケット59a、59b、59c、59dが設けられている。
【0043】
各バケットには、細胞が入れられた容器を並べるための2列×4本分のホルダ60が設けられている。
遠心分離機は、バランスが取れていない状態で回転数を大きくしていくと、大きな振動が発生し、内容物の飛び出し等、危険を伴う。そのため、回転中心に対して対向するバケット間の対象物の重量差が小さくなることが望ましい。
【0044】
まず、サーバ部2のユニット制御部8は、遠心分離機のバケット59のホルダに対して、細胞容器をどのように並べるかについて、計算を行う。サーバ部2のデータベース部6には、細胞容器の液量の情報が入っており、回転中心58に対して、対向するバケット同士の液量配分が等しくなるように計算を行う。
より具体的には、対向するバケット間の回転中心58に対して、点対称となるホルダ位置(例えば、60aと60b)に、投入していく細胞容器の液量が大きい順に順次容器を並べるように並べ方を算出する。投入する細胞容器の本数が奇数本の場合は、一方の細胞容器の重量に相当する重さのダミー容器を他方へ並べるよう算出する。そして、全容器の並べ方を算出した後に、サーバ部2のユニット制御部8は、細胞起こし部9の制御部26に、並べ方の情報を送る(S26)。細胞起こし部9の制御部26は、その情報を基に、遠心分離機のバケットに対して、細胞容器を並べる(S25)。その結果、遠心分離機は、回転バランスが取れた状態で遠心分離機を動作させることができるのである。
【0045】
なお、上記では、細胞容器の並べる順序を液量の大きい順としたが、これに限定されるものではなく、一般的な数学的探索アルゴリズムを用いた並べ方を用いてもよい。
また、遠心分離機のバケット59に容器を並べる手段としては、ロボットアームを有する搬送部によって行われる。この搬送部は、細胞起こし部9の制御部26によって制御されるものである。
【0046】
細胞起こし部9の制御プログラムは、上記の工程にしたがってプログラムされるものである。
図5の検体細胞の液量と細胞濃度の計測の工程(S13)における、細胞起こし部9と、サーバ部2とのコミュニケーションについて、
図9に示す。
細胞起こし部9の制御部26から、検体の液量と、細胞濃度の情報は、サーバ部2のユニット制御部8に送られる(S27)。送られた検体の詰め替え先の容器の情報は、サーバ部2のデータベース部6に対して、検体情報として紐付けされて記憶される(S28)。
【0047】
以上のように、サーバ部2と、ユニット部3は、検体が工程ごとに、どの容器に、どのような液量、および、細胞濃度で収納されているのか、更新しながら、検体情報として紐付けしていき、その情報をデータベース部6に収納していく。このようにすることで、検体のトレーサビリティの確保を容易に行うことが可能となるので、検体の細胞培養を正しく実行することが可能となるのである。
【0048】
さらには、工程管理部で紐付けされた細胞を入れる容器の識別情報と、この容器を設置する設置部の識別情報を比較して判定・照合するので、人為的ミスを防止させるという効果もある。
【0049】
<濃度調整播種部10の構成>
次に、濃度調整播種部10の制御ブロック図を
図8に示す。
濃度調整播種部10は、検体容器や、試薬を投入する投入部28と、投入部28に設置された大容器に入った検体細胞を、培地上清を除去するか、あるいは、培地を足して所定の濃度にする濃度調整部29と、大容器に入った細胞を16ブロック*3のウェルプレート上に、サーバ部2の指示に従って 播種する細胞播種部30と、細胞が播種されたウェルプレートを取り出し設定する取り出し部31と、予め決められた工程に従って、サーバ部2と通信を行いながら検体を制御する制御部32と、タッチパネルより操作する操作部33と、より構成されている。
【0050】
そして、上位システムである細胞培養管理装置において、データベース部6に記憶された細胞が入れられる容器の識別情報と、この容器の細胞濃度と液量情報と、に基づいて、細胞培養の処理について、容器の細胞濃度を調整する細胞濃度調整指示と、容器の液量を調整する細胞液量調整指示と、が制御部32に送られる。
制御部32では、細胞が入れられた容器が、所定の濃度になるように、濃度調整部29を制御する。
具体的には、もし、細胞濃度が低すぎる場合には、培地上清を除去する処理を行う。一方、もし、細胞濃度が高すぎる場合には、培地を足して所定の濃度にする処理を行う。
【0051】
<濃度調整播種部10のトレーサビリティ>
次に濃度調整播種部のトレーサビリティ確保について説明をする。
まず、細胞起こし部9から、3種類の試薬のそれぞれに対応した3本の大容器が投入される。これら3本の大容器には、細胞起こし部9で計測した、細胞の濃度と、液量がサーバ部2のデータベース部6内で紐付けされている。
【0052】
検体が収納される大容器に貼られたバーコード、それら容器の設置場所に貼られるバーコードについて、これらのバーコード情報は、クライアント部1のバーコード印刷部5において、管理者によって入力されたものが印刷される。これらのバーコード情報は、サーバ部2のデータベース部6に収納されている。
これらのバーコード情報は、データベース部6において、患者情報に紐付けされているとともに、管理者が、クライアント部1の工程管理部4より入力する工程管理情報とも紐付けされている。
【0053】
まず、3本の大容器のバーコード情報は、作業者によって、ハンディターミナルで読み取られ、その情報は、濃度調整播種部10の制御部32を通して、サーバ部2のユニット制御部8に転送される。
ユニット制御部8では、読み取ったバーコード情報と、サーバ部2のデータベース部6に収納されているバーコード情報を照合し、所望の患者の細胞培養に関する検体、が投入されているのかどうかについて、確認を行う。
【0054】
ハンディターミナルは、バーコード読み取り機能付き端末であり、表示部も備えている。
このハンディターミナルで、容器のバーコード情報を読み取る際には、表示部には、そのバーコードが適切であるかどうかの結果が表示される。そして、バーコードが適切である場合には、その容器を投入部28のどの位置に設置すれば良いのかが、表示部に表示される。
【0055】
そして、細胞播種部30においては、3本の大容器に入った検体は、ウェルプレートの3つのブロックにそれぞれ播種される。ウェルプレートの各ブロックには、16のウェルがあり、サーバ部2のデータベース部6に予め設定された所定のウェルに検体が播種されることになる。このウェルプレートにもバーコード情報を備えており、上記3本の大容器のバーコード情報に対してサーバ部2のデータベース部6において紐付けされている。
【0056】
<濃度調整播種部10の工程>
次に、工程について、
図9を用いて具体的に説明をする。
工程は、サーバ部2、クライアント部1、ユニット部3、ハンディターミナル、作業者の5つによって実行される。
まず、作業者は、濃度調整播種部10に設けられた、操作部33としてのタッチパネルを操作して、濃度調整播種部10のモードを補充モードに設定する。
【0057】
補充モードとは、工程開始前に、投入された検体、試薬に誤りがないかどうかを確認するモードである。
次に、作業者は、納入された大容器を、ハンディターミナルに表示された所定の投入部28に設置する。投入部28の設置場所に設けられたバーコードリーダによって読み取られたバーコード情報は、制御部32を経由してサーバ部2のデータベース部6のバーコード情報に照会される。そして、検体容器が正しい設置位置に置かれたかどうかについて確認される(S29)。
【0058】
確認した内容が正しければ、濃度調整播種部10の制御部32は、運転モードに移行可能な状態になる。そして、作業者は、操作部33のタッチパネルを操作して、運転モードに設定する。
次に、投入部28に設置された50mlの大容器3本に入った検体細胞は、濃度調整部29に移動される。ここでは、細胞培養管理装置から送られる細胞を入れる容器の識別情報と、容器の細胞濃度を調整する細胞濃度調整指示と、容器の液量を調整する細胞液量調整指示とに基づいて、もし、細胞濃度が低すぎる場合には、培地上清を除去する処理が行われる。一方、もし、細胞濃度が高すぎる場合には、培地を足して所定の濃度にする処理が行われる(S30)。
【0059】
次に、大容器3本に入った検体細胞は、ウェルプレートに播種される。このとき、濃度調整播種部10の制御部32は、ウェルプレートに貼られたバーコード情報をサーバ部2のユニット制御部8に送信する。ユニット制御部8は、ウェルプレートのバーコード情報を、検体情報に紐付けして、データベース部6に記憶する。そして、ユニット制御部8は、ウェルプレート上のどのウェルに播種するかを、制御部32に指示する(S31)。
【0060】
そして、濃度調整播種部10の成果物としては、ウェルプレートに入った検体細胞が、取り出し部31より取り出されることになる(S32)。
濃度調整播種部10の制御プログラムは、上記の工程にしたがってプログラムされるものである。
以上のように、サーバ部2と、ユニット部3は、検体が工程ごとに、どの容器に、どのような液量、および、細胞濃度で収納されているのか、更新しながら、検体情報として紐付けしていき、その情報をデータベース部6に収納していく。このようにすることで、検体のトレーサビリティの確保を容易に行うことが可能となるので、検体の細胞培養を正しく実行することが可能となるのである。
【0061】
<細胞培養部11の構成>
次に、細胞培養部11の制御ブロック図を
図12に示す。
細胞培養部11は、投入部34と、培地交換部35と、試薬添加部36と、細胞判定部37と、取り出し部38と、制御部39と、操作部40と、を有している。
投入部34は、ウェルプレートや試薬を投入する。
【0062】
培地交換部35は、投入部34に設置されたウェルプレートに入った検体細胞を、培養日数に応じて、培地交換を行う。
試薬添加部36は、試薬を添加する。
細胞判定部37は、培養した細胞がどの程度培養されているかを判定する。
取り出し部38は、細胞が培養されたウェルプレートを取り出し設定する。
【0063】
制御部39は、予め決められた工程に従って、サーバ部2と通信を行いながら検体を制御する。
操作部40は、タッチパネル式の操作パネルであって、使用者の操作入力が行われる。
【0064】
<細胞培養部11のトレーサビリティ>
次に細胞培養部11のトレーサビリティ確保について説明をする。
まず、濃度調整播種部10から、ウェルプレートが投入される。
ウェルプレートに貼られたバーコード、およびウェルプレートの設置場所に貼られるバーコードのバーコード情報は、クライアント部1のバーコード印刷部5において、管理者が入力したものが印刷される。これらのバーコード情報は、サーバ部2のデータベース部6に収納されている。
【0065】
これらのバーコード情報は、データベース部6において、患者情報に紐付けされているとともに、管理者が、クライアント部1の工程管理部4より入力する工程管理情報とも紐付けされている。
まず、ウェルプレートのバーコード情報は、作業者によって、ハンディターミナルで読み取られ、その情報は、細胞培養部11の制御部39を通して、サーバ部2のユニット制御部8に転送される。
【0066】
ユニット制御部8では、読み取ったバーコード情報と、サーバ部2のデータベース部6に収納されているバーコード情報を照合し、所望の患者の細胞培養に関する検体、が投入されているのかどうかについて、確認を行う。
ハンディターミナルは、バーコード読み取り機能付き端末であり、表示部も備えている。
【0067】
このハンディターミナルで、容器のバーコード情報を読み取った際には、表示部には、そのバーコードが適切であるかどうかの結果が表示される。そして、表示部には、バーコードが適切である場合には、その容器を投入部34のどの位置に設置すれば良いのかが表示される。
そして、細胞培養部11においては、ウェルプレートの3つのブロックには、16のウェルがあり、サーバ部2のデータベース部6に予め設定された所定のウェルに検体が培養されることになる。このウェルプレートにもバーコード情報を備えており、上記3種類の試薬のバーコード情報に対してサーバ部2のデータベース部6において紐付けされている。
【0068】
<細胞培養部11の工程>
次に、工程について、
図13を用いて具体的に説明をする。
工程は、サーバ部2、クライアント部1、ユニット部3、ハンディターミナル、作業者の5つによって実行される。
まず、作業者は、細胞培養部11に設けられた、操作部40としてのタッチパネルを操作して、細胞培養部11のモードを補充モードに設定する。
【0069】
補充モードとは、工程開始前に、投入された検体、試薬に誤りがないかどうかを確認するモードである。
次に、作業者は、インキュベータを経由して投入されたウェルプレートを、ハンディターミナルに表示された所定の投入部34に設置する。投入部34の設置場所に設けられたバーコードリーダによって読み取られたバーコード情報は、制御部39を経由してサーバ部2のデータベース部6のバーコード情報に照会される。そして、ウェルプレートが正しい設置位置に置かれたかどうかについて確認される(S33)。
【0070】
確認した内容が正しければ、細胞培養部11の制御部39は、運転モードに移行可能な状態になる。そして、作業者は、操作部40のタッチパネルを操作して、運転モードに設定する。
次に、投入部34に設置されたウェルプレートに入った検体細胞は、細胞培養日数に応じて、3つの工程に分かれる(S34)。細胞日数が所定の以下の場合は、培地を交換して細胞培養を継続する(S35)。所定の日であれば、所定の試薬を添加する(S36)。所定の日数を超えている場合には、細胞が培養されているかどうかを判定する(S37)。
【0071】
そして、細胞培養部11の成果物としては、所定の試薬を添加した状態で細胞培養されたウェルプレートに入った検体細胞が、取り出し部38より取り出されることになる(S38)。
細胞培養部11の制御プログラムは、上記の工程にしたがってプログラムされるものである。
【0072】
以上のように、サーバ部2と、ユニット部3は、検体が工程ごとに、どの容器に、どのような液量、および、細胞濃度で収納されているのか、更新しながら、検体情報として紐付けしていき、その情報をデータベース部6に収納していく。このようにすることで、検体のトレーサビリティの確保を容易に行うことが可能となるので、検体の細胞培養を正しく実行することが可能となるのである。
【0073】
なお、本実施形態においては、各ユニット間の検体細胞の移動については、作業者による人為的な作業として説明を行ったが、この作業を搬送用ロボットによって行っても良い。
また、ユニット内の検体細胞の移動、および、作業は、ロボットによって行われるものである。