特許第6436824号(P6436824)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6436824
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20181203BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20181203BHJP
   B01J 29/072 20060101ALI20181203BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20181203BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   B01J35/04 301A
   B01D53/94 222
   B01J29/072 AZAB
   F01N3/28 301C
   F01N3/28 301P
   F01N3/08 B
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-60036(P2015-60036)
(22)【出願日】2015年3月23日
(65)【公開番号】特開2016-179426(P2016-179426A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2017年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】葛谷 晃司
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−189026(JP,A)
【文献】 特開2003−205245(JP,A)
【文献】 特開2013−053589(JP,A)
【文献】 特表2015−504353(JP,A)
【文献】 特表2015−505723(JP,A)
【文献】 特開2000−238153(JP,A)
【文献】 特表2001−523569(JP,A)
【文献】 特開2007−181798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01D 53/86
B01D 53/94
F01N 3/00 − 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端面である流入端面から他方の端面である流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備え、
前記複数のセルが、前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記セルを2つの空間に分断する分断壁が設けられた複数の分断セル(但し、当該分断セルは閉塞されているものを除く)と、前記分断壁が設けられていない複数の通常セル(但し、当該通常セルは閉塞されているものを除く)とを含み、
前記通常セルは、前記セルの延びる方向に直交する断面において、その形状が正方形であり、
前記分断セルは、前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記分断壁を除いた部分の形状が、前記通常セルの形状と合同な正方形であるとともに、前記分断壁により分断された前記2つの空間のそれぞれの形状が長方形であり、
前記通常セルの少なくとも一部と、前記分断セルの少なくとも一部とが、前記隔壁を隔てて隣接するように配置されており、
前記分断セルの個数と前記通常セルの個数とを合わせた総個数に対する、前記分断セルの個数の割合が、30〜80%であるハニカム構造体。
【請求項2】
前記分断セルの少なくとも一部が、前記隔壁を隔てて前記分断セルに隣接する4つのセルの全てが前記通常セルである特定分断セルであり、前記分断セルの個数と前記通常セルの個数とを合わせた総個数に対する、前記特定分断セルの個数の割合が、30〜50%である請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記分断壁により分断された前記2つの空間のそれぞれの断面積が、前記通常セルの断面積の35%以上である請求項1または2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
排ガス浄化用の触媒が担持された請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記触媒が、SCR触媒である請求項4に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SCR触媒等の触媒を担持するための担体として使用されるハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用エンジン、建設機械用エンジン、産業用定置エンジン、燃焼機器等から排出される排ガス中の窒素酸化物(NO)を浄化するための触媒として、ゼオライト、バナジウム等を主成分とするSCR触媒が提案されている。なお、「SCR」とは、「Selective Catalytic Reduction:選択触媒還元」の略であり、「SCR触媒」とは、還元反応によって被浄化成分を選択還元する触媒(選択還元触媒)のことを意味する。
【0003】
通常、SCR触媒は、触媒担体に担持した状態で使用される。SCR触媒を担持するための触媒担体としては、一方の端面である流入端面から他方の端面である流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備えたハニカム構造体が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。SCR触媒を、このようなハニカム構造体に担持すると、ハニカム構造体の流入端面からセル内に流入した排ガスは、ハニカム構造体の流出端面からセル外に流出するまでの間に、SCR触媒に接触し、排ガス中のNOがNに還元される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−53594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の排ガス規制の強化に伴い、SCR触媒によるNOの浄化率の向上が重要な技術課題となっている。SCR触媒によるNOの浄化率を向上させるには、排ガスとSCR触媒との接触面積を増加させることが効果的である。しかしながら、触媒担体となるハニカム構造体において、この接触面積の増加のため、SCR触媒を担持する隔壁の面積を増加させると、ハニカム構造体全体の寸法が大きくなり、自動車等への搭載性が悪くなる。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明の課題とするところは、排ガス浄化用の触媒を担持した場合において、排ガスと触媒とが接触し易く、大型化しなくても、高い浄化性能が得られるハニカム構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下に示すハニカム構造体が提供される。
【0008】
[1] 一方の端面である流入端面から他方の端面である流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備え、前記複数のセルが、前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記セルを2つの空間に分断する分断壁が設けられた複数の分断セル(但し、当該分断セルは閉塞されているものを除く)と、前記分断壁が設けられていない複数の通常セルと(但し、当該通常セルは閉塞されているものを除く)を含み、前記通常セルは、前記セルの延びる方向に直交する断面において、その形状が正方形であり、前記分断セルは、前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記分断壁を除いた部分の形状が、前記通常セルの形状と合同な正方形であるとともに、前記分断壁により分断された前記2つの空間のそれぞれの形状が長方形であり、前記通常セルの少なくとも一部と、前記分断セルの少なくとも一部とが、前記隔壁を隔てて隣接するように配置されており、前記分断セルの個数と前記通常セルの個数とを合わせた総個数に対する、前記分断セルの個数の割合が、30〜80%であるハニカム構造体。
【0009】
[2] 前記分断セルの少なくとも一部が、前記隔壁を隔てて前記分断セルに隣接する4つのセルの全てが前記通常セルである特定分断セルであり、前記分断セルの個数と前記通常セルの個数とを合わせた総個数に対する、前記特定分断セルの個数の割合が、30〜50%である前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0010】
[3] 前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記分断壁により分断された前記2つの空間のそれぞれの断面積が、前記通常セルの断面積の35%以上である前記[1]または[2]に記載のハニカム構造体。
【0011】
[4] 排ガス浄化用の触媒が担持された前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0012】
[5] 前記触媒が、SCR触媒である前記[4]に記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0013】
本発明のハニカム構造体は、排ガスを流通させた際に、セル内で排ガスが拡散し易い。このため、本発明のハニカム構造体にSCR触媒等の排ガス浄化用の触媒を担持すると、排ガスと触媒とが接触し易く、触媒が有効活用される。その結果、本発明のハニカム構造体は、大型化しなくても、担持された触媒によって高い浄化性能が得られる。また、本発明のハニカム構造体は、分断セルの分断壁が補強材としても機能するため、高い強度を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す部分拡大断面図である。
図3】本発明のハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す部分拡大断面図である。
図4A】隣接する通常セルと分断セルとを模式的に示す、ハニカム構造体の一端面側から見た部分拡大平面図である。
図4B図4AのI−I’断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0016】
(1)ハニカム構造体:
図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図であり、図2は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す部分拡大断面図である。これらの図に示すように、ハニカム構造体100は、一方の端面である流入端面11から他方の端面である流出端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を備える。複数のセル2には、セルの延びる方向に直交する断面において、セルを2つの空間4,4に分断する分断壁3が設けられた複数の分断セル2bと、そのような分断壁3が設けられていない複数の通常セル2aとが含まれる。通常セル2aは、セルの延びる方向に直交する断面において、その形状が正方形である。分断セル2bは、セルの延びる方向に直交する断面において、分断壁3を除いた部分の形状(分断壁3が設けられていないと仮定した場合の形状)が、通常セル2aの形状と合同な正方形である。また、分断セル2bにおいては、分断壁3により分断された2つの空間4,4のそれぞれの形状が長方形である(以下、この2つの空間のそれぞれを「長方形セル」という場合がある)。1つの分断セル2bには、2つの長方形セル4,4が含まれる。
【0017】
本発明においては、通常セル2aの少なくとも一部と、分断セル2bの少なくとも一部とが、隔壁1を隔てて隣接するように配置されている。図4Aは、隣接する通常セルと分断セルとを模式的に示す、ハニカム構造体の一端面側から見た部分拡大平面図で、図4Bは、図4AのI−I’断面を模式的に示す断面図である。分断セル2bは、セルの延びる方向に直交する断面において、分断壁3を除いた部分の形状が、通常セル2aの形状と合同な正方形である。そのため、分断壁3によって分断された2つの長方形セル4,4のそれぞれの断面積は、通常セル2aの断面積よりも小さくなる。このため、ハニカム構造体100内に排ガスGを流入させると、通常セル2a内を通過する排ガスG1と、長方形セル4内を通過する排ガスG2との流量に差が生じ、それによって、通常セル2aと長方形セル4との間に圧力差が生じる。そして、隔壁1が多孔質であることから、このような圧力差が生じると、隔壁1を隔てて隣接する通常セル2aと長方形セル4との間において、圧力の高い側(通常セル2a内)から低い側(長方形セル4内)へ排ガスGが移動しようとする。その結果、セル内で排ガスGが拡散し、隔壁1と接触し易くなる。
【0018】
よって、ハニカム構造体100にSCR触媒等の排ガス浄化用の触媒を担持すると、排ガスと触媒とが接触し易く、触媒が有効活用される。このため、ハニカム構造体100は、大型化しなくても、担持された触媒によって高い浄化性能が得られる。また、ハニカム構造体100は、分断セル2bの分断壁3が補強材としても機能するため、高い強度を発揮する。
【0019】
本発明においては、分断セル2bの個数と通常セル2aの個数とを合わせた総個数に対する、分断セル2bの個数の割合が、30〜80%、好ましくは40〜70%、更に好ましくは50〜70%である。上記割合を、このような範囲とすることにより、通常セル2aに隣接する分断セル2bの数を多くすることができ、それによりセル内における排ガスの拡散が促進されて、ハニカム構造体100に触媒を担持した場合における排ガス浄化性能が向上する。なお、上記割合が、30%未満では、通常セル2aに対して分断セル2bが少なすぎるため、通常セル2aに隣接する分断セル2bの数も少なくなり、排ガスの浄化性能が十分に向上しない場合がある。一方、上記割合が、80%を超えると、通常セル2aに対して分断セル2bが多すぎる。そのため、通常セル2aに隣接しない分断セル2bの数が多くなり、排ガスの浄化性能が十分に向上しない場合がある。また、分断壁3の数が多くなりすぎて、圧力損失が過剰に増大する場合がある。更に、断面積の小さな長方形セル4の数が多くなることにより、ハニカム構造体100に触媒を担持する際に、セルの目詰まりが生じ易くなる場合がある。
【0020】
本発明においては、図2に示すように、分断セル2bの少なくとも一部が、隔壁1を隔ててその分断セル2bに隣接する4つのセルの全てが通常セル2aである特定分断セル2b’であることが好ましい。特定分断セル2b’は、それに隣接する4つの通常セル2aの全てとの間で、圧力差による排ガスの拡散を生じさせる。そのため、このような特定分断セル2b’の存在は、ハニカム構造体100に触媒を担持した場合において、排ガスの浄化性能の向上に大きく寄与する。分断セル2bの個数と通常セル2aの個数とを合わせた総個数に対する、特定分断セル2b’の個数の割合は、30〜50%であることが好ましく、35〜50%であることが更に好ましく、40〜50%であることが特に好ましい。上記割合を、このような範囲とすることにより、ハニカム構造体100に触媒を担持した場合において、高い排ガス浄化性能が得られる。
【0021】
本発明においては、セルの延びる方向に直交する断面において、分断壁3により分断された2つの空間(長方形セル)4,4のそれぞれの断面積が、通常セル2aの断面積の35%以上であることが好ましく、40%以上であることが更に好ましく、45%以上であることが特に好ましい。長方形セル4の断面積を、このような範囲とすることにより、ハニカム構造体100に触媒を担持する際に、長方形セル4の目詰まりが生じ難くなる。長方形セル4,4の断面積が通常セルの断面積の35%未満であると、長方形セル4の断面積が小さすぎて、ハニカム構造体100に触媒を担持する際に、長方形セル4の目詰まりが生じ易くなる場合がある。なお、各分断セル2bにおいて、分断壁3により分断された2つの空間(長方形セル)4,4の断面積は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。長方形セル4の断面積は、分断セル2bにおける分断壁3の位置や厚さにより調整することができる。
【0022】
図2に示す実施形態では、セルの延びる方向に直交する断面において、分断壁3の延びる方向が、全ての分断セル2bで同一方向となっているが、分断壁3の延びる方向は、全ての分断セル2bで同一である必要は無い。例えば、図3に示す、本発明の他の実施形態のように、セルの延びる方向に直交する断面において、セルの列(一定方向に並んだセル群)毎に、分断セル2bにおける分断壁3の延びる方向を変えてもよい。また、図2に示す実施形態及び図3に示す実施形態では、セルの延びる方向に直交する断面上の直交する2方向(X方向とY方向)において、通常セル2aと分断セル2bとが全て交互に配置されている。しかし、本発明におけるセルの配置はこれに限定されない。例えば、X方向及び/またはY方向において、通常セル2aや分断セル2bが複数個連続するような配置が含まれていてもよい。
【0023】
また、ハニカム構造体100は、図1に示すように、隔壁1の周囲に、外周壁20を備えていてもよい。この場合、最外周部に位置するセル2cは、外周壁20の内周面と接していることにより、セルの延びる方向に直交する断面において、他のセルとは異なる形状を呈することがある。本発明における「複数のセル2」には、このような他のセルとは異なる形状のセル2cが含まれていてもよい。
【0024】
本発明において、隔壁1の厚さは、60〜300μmであることが好ましく、60〜140μmであることが更に好ましく、60〜120μmであることが特に好ましい。隔壁1の厚さが60μm未満であると、十分な強度が得られない場合がある。また、隔壁1の厚さが300μmを超えると、圧力損失が大きくなりすぎる場合がある。
【0025】
分断壁3の厚さは、50〜250μmであることが好ましく、50〜110μmであることが更に好ましく、50〜100μmであることが特に好ましい。分断壁3の厚さが50μm未満であると、十分な強度が得られない場合がある。また、分断壁の厚さが250μmを超えると、圧力損失が大きくなりすぎる場合がある。
【0026】
隔壁1の気孔率は、40〜70%であることが好ましく、45〜60%であることが更に好ましく、50〜60%であることが特に好ましい。隔壁1の気孔率が40%未満であると、隔壁1を隔てて隣接する通常セル2aと長方形セル4との間に圧力差が生じても、それらセル内において排ガスが十分に拡散しない場合がある。また、隔壁1の気孔率が70%を超えると、十分な強度が得られない場合がある。なお、「気孔率」は、水銀ポロシメータによって測定した値である。
【0027】
隔壁1の平均細孔径は、10〜25μmであることが好ましく、10〜20μmであることが更に好ましく、12〜20μmであることが特に好ましい。隔壁1の平均細孔径が10μm未満であると、隔壁1を隔てて隣接する通常セル2aと長方形セル4との間に圧力差が生じても、それらセル内において排ガスが十分に拡散しない場合がある。また、隔壁1の平均細孔径が25μmを超えると、十分な強度が得られない場合がある。なお、「平均細孔径」は、水銀ポロシメータによって測定した値である。
【0028】
ハニカム構造体100のセルピッチは、1.04〜1.47mmであることが好ましく、1.09〜1.47μmであることが更に好ましく、1.14〜1.47μmであることが特に好ましい。ハニカム構造体100のセルピッチが1.04未満では、十分な強度が得られない場合がある。また、ハニカム構造体100のセルピッチが1.47mmを超えると、圧力損失が大きくなりすぎる場合がある。なお、この「セルピッチ」は、分断セル2bについては、分断壁3とその分断壁3によって分断された2つの空間(長方形セル)4,4とを合わせて1つのセルと見なした場合の値である。
【0029】
ハニカム構造体100の形状(外形)は、特に限定されない。ハニカム構造体100の形状としては、例えば、円柱状、セルの延びる方向に直交する断面が楕円形、レーストラック形状、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形の柱状等を挙げることができる。
【0030】
ハニカム構造体100の形状が円柱状である場合には、ハニカム構造体100の直径が143.8〜330.2mmで、かつ、長さが101.6〜203.2mmであることが好ましい。このような寸法のハニカム構造体100は、SCR触媒を担持して、排ガス中の窒素酸化物(NO)を浄化に用いる場合において、自動車等への搭載性が良い。また、ハニカム構造体100は、このような寸法であれば、SCR触媒を担持して、排ガス中の窒素酸化物(NO)を浄化に用いる場合において、十分な浄化性能を発揮する。
【0031】
ハニカム構造体100は、その製造工程において、隔壁1と分断壁3とが一体的に成形されたものであることが好ましい。隔壁1と分断壁3とが一体的に成形されたものであることにより、高い強度が得られる。また、押出成形法等で、隔壁1と分断壁3とを一体的に成形することにより、ハニカム構造体100の製造が容易になる。
【0032】
ハニカム構造体100の構成材料としては、セラミックスが好ましい。特に、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、及び炭化珪素−コージェライト系複合材料からなる群から選択される少なくとも1種のセラミックスが好ましい。このようなセラミックスは、強度及び耐熱性に優れるためである。
【0033】
本発明のハニカム構造体100は、触媒を担持するための担体、特に、SCR触媒を担持するための担体として使用することが好ましい。
【0034】
SCR触媒となる物質としては、例えば、金属置換されたゼオライトを挙げることができる。ゼオライトを金属置換する金属としては、鉄(Fe)、銅(Cu)を挙げることができる。ゼオライトとしては、ベータゼオライトを好適例として挙げることができる。
【0035】
また、SCR触媒が、バナジウム及びチタニアからなる群より選択される少なくとも1種を主たる成分として含有する触媒であってもよい。SCR触媒中のバナジウム及びチタニアの含有量は、60質量%以上であることが好ましい。
【0036】
SCR触媒の担持量については、特に制限はない。但し、SCR触媒の担持量が少なすぎると十分な浄化性能が得られない場合があるので、ハニカム構造体100の単位体積(1リットル)当りの担持量として、150g以上であることが好ましい。一方、SCR触媒の担持量が多すぎると、ハニカム構造体100の圧力損失が過剰に増大することがある。そのため、SCR触媒の担持量の上限は、ハニカム構造体100の単位体積(1リットル)当りの担持量として、400g程度とすることが好ましい。
【0037】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
以下、本発明に係るハニカム構造体の製造方法の一例を説明する。まず、セラミック原料を含有する成形原料を混合し、混練して坏土を得る。セラミック原料としては、コージェライト化原料、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、及び炭化珪素−コージェライト系複合材料からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。なお、コージェライト化原料とは、焼成されることによりコージェライトになる原料のことである。具体的には、コージェライト化原料は、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合された原料のことである。
【0038】
成形原料は、上記セラミック原料に、分散媒、焼結助剤、有機バインダ、界面活性剤、造孔材等を混合して調製することが好ましい。
【0039】
分散媒としては、水を用いることが好ましい。分散媒の含有量は、成形原料を混練して得られる坏土が成形しやすい硬度となるように適宜調整する。具体的な分散媒の含有量としては、成形原料全体に対して20〜80質量%であることが好ましい。
【0040】
焼結助剤としては、例えば、イットリア、マグネシア、酸化ストロンチウム等を用いることができる。焼結助剤の含有量は、成形原料全体に対して0.1〜0.3質量%であることが好ましい。
【0041】
有機バインダとしては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、成形原料全体に対して2〜10質量%であることが好ましい。
【0042】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、成形原料全体に対して2質量%以下であることが好ましい。
【0043】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、中空樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、成形原料全体に対して10質量%以下であることが好ましい。
【0044】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0045】
次いで、得られた坏土を成形して、ハニカム成形体を形成する。ハニカム成形体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を有する成形体である。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては特に制限はない。例えば、押出成形法、射出成形法等の公知の成形方法を採用することができる。例えば、所望のセル形状、隔壁厚さ、セルピッチ等を有する口金を用いて押出成形する方法等を好適例として挙げることができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。なお、この押出成形に際しては、分断セルの分断壁を隔壁と一体的(同時に)に成形することが好ましい。
【0046】
このようにして得られたハニカム成形体を乾燥させた後、焼成する。乾燥方法は、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。中でも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥または熱風乾燥を単独でまたは組み合わせて行うことが好ましい。
【0047】
乾燥後のハニカム成形体は、焼成(本焼成)の前に仮焼することが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものである。仮焼の方法については特に制限はない。例えば、ハニカム成形体中の有機物の少なくとも一部を除去することができればよい。上記有機物としては、有機バインダ、界面活性剤、造孔材等を挙げることができる。有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度である。このため、仮焼は、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度で、10〜100時間程度加熱することが好ましい。
【0048】
ハニカム成形体の焼成(本焼成)は、仮焼したハニカム成形体を構成する成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するために行われるものである。焼成の条件は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度は、1350〜1440℃が好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、3〜10時間が好ましい。仮焼、本焼成を行う装置としては、電気炉、ガス炉等を挙げることができる。
【0049】
以上のような製造方法により、本発明のハニカム構造体を得ることができる。
【0050】
(3)SCR触媒の担持方法:
次に、上記のようにして製造されたハニカム構造体に、SCR触媒を担持する方法の一例を説明する。まず、SCR触媒を含む触媒スラリーを調製する。この触媒スラリーを、ハニカム構造体の隔壁及び分断壁の表面にコート(塗布)する。コートの方法は、特に限定されない。例えば、ハニカム構造体の一方の端面を触媒スラリー中に漬けた状態で、ハニカム構造体の他方の端面から吸引する方法(吸引法)が好適なコート方法として挙げられる。そして、ハニカム構造体の隔壁及び分断壁の表面に触媒スラリーをコートした後、触媒スラリーを乾燥する。更に、乾燥した触媒スラリーを焼成してもよい。このようにして、SCR触媒が担持されたハニカム構造体を得ることができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
セラミック原料として、アルミナ、タルク、及びカオリンからなるコージェライト化原料を用いた。アルミナ、タルク、カオリンの質量比は、焼成後、コージェライトが得られる質量比とした。このセラミック原料に、バインダ(メチルセルロース)、水を混合してセラミック成形原料を得た。
【0053】
次に、この成形原料を、ニーダーを用いて混練し、円柱状の坏土を得た。この坏土を真空押出成形機を用いてハニカム形状に成形し、ハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を、マイクロ波乾燥機で乾燥した後、更に熱風乾燥機で乾燥して、ハニカム乾燥体を得た。
【0054】
次いで、このハニカム乾燥体を、大気雰囲気にて450℃で5時間かけて仮焼(脱脂)した。その後、1425℃で7時間焼成して、通常セルと分断セルとを有するハニカム構造体を得た。このハニカム構造体は、直径が266.7mm、長さが152.4mmの円柱形であった。また、分断セルの個数と通常セルの個数とを合わせた総個数に対する、分断セルの個数の割合は30%であった。また、分断セルの個数と通常セルの個数とを合わせた総個数に対する、特定分断セルの個数の割合も30%であった。また、セルの延びる方向に直交する断面において、通常セルの断面積を100%としたときの、最も小さい長方形セルの断面積は35%であった。更に、隔壁の厚さは139.7μm、セルピッチは1.27mm、隔壁の気孔率は50%、隔壁の平均細孔径は20μm、分断壁の厚さは76.2μmであった。なお、隔壁の気孔率と平均細孔径は、水銀ポロシメータによって測定した値である。また、セルピッチは、分断セルについては、分断壁とその分断壁によって分断された2つの空間(長方形セル)とを合わせて1つのセルと見なした場合の値である。
【0055】
続いて、このハニカム構造体に、SCR触媒を担持させた。SCR触媒には、Cu置換ゼオライトを用いた。具体的な担持方法としては、まず、Cu置換ゼオライトを含む触媒スラリーを調製した。触媒スラリーの分散剤としては、水を用いた。水の量は、スラリーの粘度が7mPa・sとなるように調節した。この触媒スラリーを、吸引法によって、ハニカム構造体の隔壁及び分断壁の表面にコートした。その後、このハニカム構造体を熱風乾燥機で乾燥して、SCR触媒が担持されたハニカム構造体を得た。なお、ハニカム構造体の単位体積(1リットル)当りのSCR触媒の担持量は、150gとした。
【0056】
(実施例2〜7、比較例1〜3)
ハニカム構造体の寸法、セルの構造等が表1に示す値となるようにした以外は、実施例1と同様にして、SCR触媒が担持されたハニカム構造体を得た。なお、比較例1のハニカム構造体は、分断セルを有しておらず、このため、分断壁と長方形セルも有していない。また、ハニカム構造体の単位体積(1リットル)当りのSCR触媒の担持量は、実施例1と同様に150gとした。
【0057】
(評価)
実施例1〜7及び比較例1〜3のハニカム構造体について、下記の方法で、「NO浄化率」、「触媒コート性」及び「圧力損失」の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0058】
[NO浄化率]
NO濃度が300ppm、NH濃度が300ppmである燃焼ガスを、空間速度(SV)80000h−1、温度200℃の条件で、SCR触媒が担持されたハニカム構造体内に流入させた。流入前後における燃焼ガスのNO濃度から、NO浄化率(%)を算出した。そして、比較例1のハニカム構造体(分断セルを有していない従来構造のハニカム構造体)の浄化率を基準として、以下のように評価を行った。
「AA」:比較例1のハニカム構造体のNO浄化率と比較して、NO浄化率が10%以上高い。
「A」:比較例1のハニカム構造体のNO浄化率と比較して、NO浄化率が7%以上、10%未満の範囲で高い。
「B」:比較例1のハニカム構造体のNO浄化率と比較して、NO浄化率が4%以上、7%未満の範囲で高い。
「C」:比較例1のハニカム構造体のNO浄化率と比較して、NO浄化率が1%以上、4%未満の範囲で高い。
「D」:比較例1のハニカム構造体のNO浄化率と比較して、NO浄化率が1%未満の範囲で高いか、同等以下である。
【0059】
[触媒コート性]
上述のような方法で触媒スラリーをコートすることによりSCR触媒が担持されたハニカム構造体について、担持された触媒により目詰まりが生じているセルの個数を調べ、以下のように評価を行った。
「A」:目詰まりが生じているセルが無い。
「B」:目詰まりが生じているセルの個数が全セルの個数の5%未満である。
「C」:目詰まりが生じているセルの個数が全セルの個数の5%以上、10%未満である。
「D」:目詰まりが生じているセルの個数が全セルの個数の10%以上である。
【0060】
[圧力損失]
SCR触媒が担持されたハニカム構造体から、縦36mm×横36mm×長さ50mmの試験片を切り出した。試験片の切り出しは、試験片の長さ方向が、ハニカム構造体のセルの延びる方向となるように行った。切り出された試験片に、室温条件下、2Nm/分の流量でエアーを流通させ、試験片の上流側における圧力と、下流側における圧力とを測定した。上流側における圧力と、下流側における圧力との圧力差を圧力損失とし、以下のように評価を行った。
「A」:圧力損失が1.4kPa未満である。
「B」:圧力損失が1.4kPa以上、1.8kPa未満である。
「C」:圧力損失が1.8kPa以上、2.2kPa未満である。
「D」:圧力損失が2.2kPa以上である。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
(考察)
表2に示すとおり、実施例1〜7のハニカム構造体は、全ての評価項目において良好な評価が得られた。一方、分断セルを有していない比較例1のハニカム構造体と、分断セルの割合が30%未満である比較例2のハニカム構造体は、実施例1〜7のハニカム構造体に比べて、NO浄化率が明らかに劣っていた。また、分断セルの割合が80%を超える比較例3のハニカム構造体は、実施例1〜7のハニカム構造体に比べて、全ての評価項目において劣っていた。比較例3のハニカム構造体は、特に、触媒コート性と圧力損失が、顕著に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のハニカム構造体は、SCR触媒等の触媒を担持するための担体として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1:隔壁、2:セル、2a:通常セル、2b:分断セル、2b’:特定分断セル、2c:最外周部に位置するセル、3:分断壁、4:空間(長方形セル)、11:流入端面、12:流出端面、20:外周壁、100:ハニカム構造体。
図1
図2
図3
図4A
図4B