特許第6436915号(P6436915)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6436915難燃性ポリアミド樹脂組成物およびそれからなる成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6436915
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】難燃性ポリアミド樹脂組成物およびそれからなる成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20181203BHJP
   C08K 9/00 20060101ALI20181203BHJP
   C08L 93/04 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   C08L77/00
   C08K9/00
   C08L93/04
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-554724(P2015-554724)
(86)(22)【出願日】2014年12月10日
(86)【国際出願番号】JP2014082604
(87)【国際公開番号】WO2015098508
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2017年11月8日
(31)【優先権主張番号】特願2013-270256(P2013-270256)
(32)【優先日】2013年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】甲斐原 将
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 顕
(72)【発明者】
【氏名】古川 幹夫
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−177099(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/084845(WO,A1)
【文献】 特開2001−81318(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/069365(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、C08K9
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂(A)、充填材(B)、被覆赤燐(C)およびロジン(D)を含有する難燃性ポリアミド樹脂組成物であって、
ポリアミド樹脂(A)と充填材(B)の質量比(A/B)が50/50〜20/80であり、
ポリアミド樹脂(A)と充填材(B)の合計100質量部に対して、被覆赤燐(C)の含有量が1〜10質量部であり、ロジン(D)の含有量が0.5〜5質量部であり、
280℃での溶融粘度が900Pa・s以下であることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
充填材(B)の平均粒径が50μm以上であることを特徴とする請求項1記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
熱伝導率が5W/(m・K)以上であることを特徴とする請求項1または2記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性ポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、成形材料として広く使用されている。近年、ポリアミド樹脂の高性能化が要求され、これに対応するため、充填材を配合することが多くなっており、充填材の含有量が50質量%を超えるポリアミド樹脂組成物も珍しくなくなっている。
樹脂組成物は、充填材の含有量が増加すると溶融粘度が上昇するため、成形加工性が低下するという問題がある。そこで、樹脂組成物の溶融粘度を低下させるために、樹脂組成物に溶融粘度低下剤が配合されており、たとえば、特許文献1にはロジンを溶融粘度低下剤として配合することが開示され、特許文献2には多官能性アリル化合物やダイマー酸ベース熱可塑性樹脂を溶融粘度低下剤として配合することが開示されている。
しかしながら、充填材の含有量が高い、上記特許文献に記載された樹脂組成物に、さらに難燃性を付与するために難燃剤を配合すると、成形体の機械的特性が低下することがあった。また、溶融粘度低下剤を含有するポリアミド樹脂組成物においては、溶融粘度の低下にともない、燃焼時にドリップしやすくなって、難燃性が低下することがある。そのため、ポリアミド樹脂に難燃剤と溶融粘度低下剤を併用することは通常行われていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/069365号
【特許文献2】国際公開第2010/084845号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題を解決するものであって、充填材の含有量が多いポリアミド樹脂組成物に、難燃剤を配合して難燃性を付与しても、機械的特性が低下することがない難燃性ポリアミド樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ポリアミド樹脂、充填材およびロジンを含有する樹脂組成物に、難燃剤として被覆赤燐を配合すると、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
(1)ポリアミド樹脂(A)、充填材(B)、被覆赤燐(C)およびロジン(D)を含有する難燃性ポリアミド樹脂組成物であって、
ポリアミド樹脂(A)と充填材(B)の質量比(A/B)が50/50〜20/80であり、
ポリアミド樹脂(A)と充填材(B)の合計100質量部に対して、被覆赤燐(C)の含有量が1〜10質量部であり、ロジン(D)の含有量が0.5〜5質量部であり、
280℃での溶融粘度が900Pa・s以下であることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
(2)充填材(B)の平均粒径が50μm以上であることを特徴とする(1)記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
(3)熱伝導率が5W/(m・K)以上であることを特徴とする(1)または(2)記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、充填材の含有量が多いポリアミド樹脂組成物に、難燃剤として被覆赤燐を配合すると、機械的特性を低下させずに、難燃性を有する成形体を得ることができる。
また難燃剤として被覆赤燐を配合したポリアミド樹脂組成物は、ロジンによる溶融粘度低下効果によって難燃性が低下することなく、むしろ難燃性が向上するという驚くべき効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)、充填材(B)、被覆赤燐(C)およびロジン(D)を含有する。
【0009】
本発明に用いるポリアミド樹脂(A)としては、例えば、ポリカプラミド(ポリアミド6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリカプラミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド6/66)、ポリウンデカミド(ポリアミド11)、ポリカプラミド/ポリウンデカミドコポリマー(ポリアミド6/11)、ポリドデカミド(ポリアミド12)、ポリカプラミド/ポリドデカミドコポリマー(ポリアミド6/12)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ポリアミド116)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/6I)、ポリカプラミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6/6T)、ポリカプラミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6I)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミドTMDT)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド11T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド12T)およびこれらの混合物または共重合体が挙げられる。なかでも、経済性の点からポリアミド6、ポリアミド66が好ましい。
【0010】
本発明に用いる充填材(B)は、特に限定されないが、機械的特性や熱的特性などを改善する目的で用いられるものや、導電性、熱伝導性、磁性、圧電性、電磁波吸収、紫外線吸収などを付与する目的で用いられるものを挙げることができる。
【0011】
充填材(B)としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、金属粉(銀、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、錫、鉄、ステンレスなど)、導電性酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、各種フェライト、磁性酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボン、黒鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸カリウム、ゾノトライト、マイカ、タルク、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、硫酸バリウム、二硫化モリブデン、テフロン(登録商標)粉、シリカ、ガラスビーズ、ガラスバルーン、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸、ホウ酸亜鉛、酸化セリウム、酸化カルシウム、シリカゲル、セピオライト、活性炭、ゼオライト、タングステン、酸化ジルコニウム、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、ガラス繊維、炭素繊維、黒鉛化炭素繊維、アラミド繊維、金属繊維、ステンレス繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、ケナフや麻などの天然繊維が挙げられる。
【0012】
充填材(B)の平均粒径は、50μm以上であることが好ましい。平均粒径が50μm以上の充填材を用いることにより、樹脂組成物の流動性を向上させ、混練や成形の際に、被覆赤燐(C)の発火を抑制する効果を高めることができる。
【0013】
充填材(B)として熱伝導性充填材を用いることで、熱伝導性の樹脂組成物に熱伝導性を付与することができる。熱伝導性充填材を含有する樹脂組成物の熱伝導率は5W/(m・K)以上であることが好ましい。
熱伝導性充填材は、導電性、絶縁性、いずれであってもよいが、その熱伝導率は、5W/(m・K)以上であることが好ましい。熱伝導性充填材の熱伝導率は、その焼結品を用いて測定することができる。熱伝導性充填材の具体的な例としては(括弧内に熱伝導率の代表値(単位:W/(m・K))を記す。)、タルク(5〜10)、酸化アルミニウム(36)、酸化マグネシウム(60)、酸化亜鉛(25)、炭酸マグネシウム(15)、炭化ケイ素(160)、窒化アルミニウム(170)、窒化ホウ素(210)、窒化ケイ素(40)、カーボン(10〜数百)、黒鉛(10〜数百)などの無機系充填材、銀(427)、銅(398)、アルミニウム(237)、チタン(22)、ニッケル(90)、錫(68)、鉄(84)、ステンレス(15)などの金属系充填材が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、併用してもよい。なかでも、ポリアミド樹脂(A)に配合した際の熱伝導率が高いことから、黒鉛、窒化ホウ素を用いることが好ましい。また、経済性の点では、タルク、酸化マグネシウムを用いることが好ましい。
【0014】
黒鉛の形態としては、例えば、球状、粉状、繊維状、針状、鱗片状、ウィスカ状、マイクロコイル状、ナノチューブ状が挙げられる。なかでも鱗片状黒鉛は、ポリアミド樹脂(A)に配合した際に熱伝導効率を高くすることができるため、より好ましい。
【0015】
タルクの形態としては、例えば、板状、鱗状、鱗片状、薄片状が挙げられる。なかでも鱗片状タルク、薄片状タルクは、成形体としたときに、面方向に配向しやすく、その結果、熱伝導率を高めることができるため、より好ましい。
【0016】
窒化ホウ素の形態としては、例えば、板状、鱗片状、薄片状が挙げられる。なかでも鱗片状窒化ホウ素は成形体としたときに、面方向に配向しやすく、その結果、熱伝導率を高めることができるため、より好ましい。窒化ホウ素の結晶系は、特に限定されるものではなく、六方晶系、立方晶系、その他いずれの結晶構造の窒化ホウ素であっても適用可能である。なかでも、六方晶系結晶構造を有する窒化ホウ素は、熱伝導率が高いので好ましい。
【0017】
酸化マグネシウムの形態としては、例えば、球状、繊維状、紡錘状、棒状、針状、筒状、柱状が挙げられる。なかでも球状酸化マグネシウムは、流動性を向上させることができるため、より好ましい。
【0018】
充填材(B)は、ポリアミド樹脂(A)との密着性を向上させるため、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤で表面処理を施してもよい。シラン系カップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルジメトキシメチルシランなどのアミノシラン系カップリング剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系カップリング剤が挙げられる。チタン系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネートが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0019】
本発明において、ポリアミド樹脂(A)と充填材(B)との質量比(A/B)は、50/50〜20/80であることが必要であり、30/70〜20/80であることが好ましい。ポリアミド樹脂(A)が20質量%未満の場合、樹脂組成物は、流動性が著しく低下し、混練や成形の際に被覆赤燐(C)が発火する場合がある。なお、この場合、溶融粘度低下剤のロジン(D)を、本発明で規定する範囲を超えて配合すれば流動性を向上させることは可能であるが、機械的物性が著しく低下するので好ましくない。一方、ポリアミド樹脂(A)が50質量%を超えると、樹脂組成物は流動性を有するものとなる。
【0020】
本発明においては、難燃剤として被覆赤燐(C)を用いることが必要である。一般に、赤燐は、室温でも水と徐々に反応してホスフィンガスを発生し、この現象は、高温になるにつれて増大する傾向にある。ホスフィンガスは、強力な還元剤として作用することから高濃度で存在すると空気中の酸素と反応して発火を起こす。しかしながら、被覆赤燐を用いることで、赤燐と水との反応を抑制することができるため、混練や成形の際の発火を防止することができる。
【0021】
被覆赤燐(C)の平均粒径は、難燃性、機械的特性から、0.01〜35μmであることが好ましく、0.1〜30μmであることがより好ましい。
被覆赤燐(C)は、混練や成形の際に、チップ状や粉末状のものをそのまま用いてもよいが、予め作製した、被覆赤燐(C)を高濃度で含有するマスターバッチを用いた方が、被覆赤燐(C)の濃度を調整しやすい。
被覆赤燐の製造方法としては、例えば、赤燐表面を水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムの粉末で覆う方法や、赤燐を熱硬化性樹脂で被覆する方法が挙げられる。
市販の被覆赤燐としては、例えば、燐化学工業社の「ノーバエクセル140」、「ノーバエクセル140F」が挙げられる。
【0022】
被覆赤燐(C)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)と充填材(B)の合計100質量部に対して、1〜10質量部であることが必要であり、2〜6質量部であることが好ましい。被覆赤燐(C)の含有量が1質量部未満であると、樹脂組成物は、難燃性が不十分となり、一方、含有量が10質量部を超えると、樹脂組成物は、難燃性の向上はみられず、被覆赤燐(C)が充填材として作用するために、流動性が著しく低下し、混練や成形の際に発火する場合がある。
【0023】
本発明に用いるロジン(D)は、樹脂酸(ロジン酸)といわれるジテルペン酸系化合物のことである。ロジン(D)としては、天然ロジン、変性ロジン、重合ロジンが挙げられる。
【0024】
天然ロジンとは、マツ科植物から採取される樹脂酸の混合物であり、生産方法によりガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンに分けられる。該樹脂酸の主成分はアビエチン酸であり、さらに、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、レボピマール酸などが含まれる。変性ロジンとは、天然ロジンを変性したものであり、例えば、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸などの水素化ロジン、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸などの不均化ロジン、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸などにより天然ロジンを変性した酸変性ロジン、これらのエステル体が挙げられる。そして、重合ロジンとは、天然ロジンまたは変性ロジン同士を反応させたものであり、それらの2量化物、3量化物が挙げられる。
【0025】
ロジン(D)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)と充填材(B)の合計100質量部に対して、0.5〜5質量部であることが必要であり、2〜3質量部であることが好ましい。ロジン(D)の含有量が0.5質量部未満であると、流動性改善効果が十分得られないため、樹脂組成物の溶融粘度が高く、混練や成形の際に被覆赤燐(C)が発火する場合がある。一方、ロジン(D)の含有量が5質量部を超えると、得られる成形体の機械的特性が低下する他、溶融粘度が低下しすぎることによって難燃性が低下することがある。
【0026】
ロジン(D)の酸価は、60mgKOH/g以上であることが好ましく、100mgKOH/g以上であることがより好ましく、130mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。酸価が60mgKOH/g以上のロジン(D)を用いることにより、少量で流動性を向上させることができる。
【0027】
ロジン(D)の軟化温度は、110℃以上であることが好ましく、120℃以上がより好ましい。110℃以上の軟化温度を有するロジン(D)を用いることで、ロジン(D)そのものの分解を抑制することができ、成形後の成形体からロジン(D)がブリードアウトすることを抑制することができる。
【0028】
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、280℃での溶融粘度が、900Pa・s以下であることが必要であり、800Pa・s以下であることが好ましい。樹脂組成物の溶融粘度が900Pa・sを超えると、混練や成形の際にかかる高剪断力により、被覆赤燐(C)が欠損する場合がある。
【0029】
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない限り、熱安定剤、酸化防止剤、結晶核剤、相溶化剤、顔料、耐候剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤などの添加剤を加えてもよい。熱安定剤や酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属などのハロゲン化物が挙げられる。結晶核剤としては、例えば、ソルビトール化合物、安息香酸およびその化合物の金属塩、燐酸エステル金属塩が挙げられる。相溶化剤としては、アイオノマー系相溶化剤、オキサゾリン系相溶化剤、エラストマー系相溶化剤、反応性相溶化剤、共重合体系相溶化剤が挙げられる。これらの添加剤は単独で用いてもよいし、併用してもよい。なお、本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物にこれらを混合する方法は特に限定されない。
【0030】
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)と充填材(B)と被覆赤燐(C)とロジン(D)とを、さらには必要に応じて各種添加物を、一般的な押出機、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール混錬機、ブラベンダーを用いて溶融混練することにより製造することができる。このとき、スタティックミキサーやダイナミックミキサーを併用すると効果的である。混練状態をよくするためには、二軸押出機を用いることが好ましい。充填材(B)の添加方法は、特に限定されるものではないが、押出機を用いる場合においては、ホッパーから、または、サイドフィーダーから充填材(B)を添加することができる。
【0031】
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、射出成形、圧縮成形、押出成形、トランスファー成形、シート成形などの通常公知の溶融成形法を用いて所望の形状に成形して成形体とすることができる。
【0032】
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体としては、半導体素子、抵抗などの封止材料、コネクター、ソケット、リレー部品、コイルボビン、光ピックアップ、発振子、コンピュータ関連部品などの電気・電子部品、VTR、テレビ、アイロン、エアコン、ステレオ、掃除機、冷蔵庫、炊飯器、照明器具などの家庭電気製品部品、放熱シートやヒートシンク、ファンなどの電子部品からの熱を外部に逃すための放熱部材、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジングなどの照明器具部品、コンパクトディスク、レーザーディスク、スピーカーなどの音響製品部品、光ケーブル用フェルール、携帯電話機、固定電話機、ファクシミリ、モデムなどの通信機器部品、分離爪、ヒータホルダーなどの複写機、印刷機関連部品、インペラー、ファン歯車、ギヤ、軸受け、モーター部品及びケースなどの機械部品、自動車用機構部品、エンジン部品、エンジンルーム内部品、電装部品、内装部品などの自動車部品、マイクロ波調理用鍋、耐熱食器などの調理用器具、航空機、宇宙機、宇宙機器用部品、センサー類部品が挙げられる。
【実施例】
【0033】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
本発明の実施例と比較例で用いた評価方法を以下に示す。
【0034】
(1)ロジンの酸価
JIS規格K5902に記載の方法に準じて測定した。
【0035】
(2)曲げ強度、曲げ弾性率
樹脂組成物ペレットを、射出成形機(日精樹脂工業社製 NEX110−12E)を用いてシリンダ温度280℃、金型温度100℃、射出時間15秒、冷却時間20秒で射出成形し、曲げ強度、曲げ弾性率評価用ダンベル成形片(試験部127mm×12.7mm×3.2mm)を作製した。
得られた曲げ強度、曲げ弾性率評価用ダンベル成形片を用いて、ASTM規格D−790に記載の方法に準じて測定した。
【0036】
(3)荷重たわみ温度(DTUL)
樹脂組成物ペレットを、射出成形機(日精樹脂工業社製 NEX110−12E)を用いてシリンダ温度280℃、金型温度100℃、射出時間15秒、冷却時間20秒で射出成形し、DTUL評価用成形片(127mm×10mm×1.2mm)を作製した。
得られたDTUL評価用成形片を用いて、ASTM規格D−648に記載の方法に準じて、荷重1.8MPa下における荷重たわみ温度を測定した。
【0037】
(4)難燃性
樹脂組成物ペレットを、射出成形機(日精樹脂工業社製 NEX110−12E)を用いてシリンダ温度280℃、金型温度100℃、射出時間15秒、冷却時間20秒で射出成形し、難燃性評価用成形片(127mm×12.7mm×1.588mm)を作製した。
得られた難燃性評価用成形片を用いて、UL−94に準じて、評価した。
【0038】
(5)溶融粘度
樹脂組成物ペレットについて、降下式フローテスター(島津製作所社製)を用い、所定温度での溶融粘度を測定した。測定温度は、すべて280℃でおこない、オリフィスは、直径1mm×長さ10mmのものを用いた。
【0039】
(6)発火の有無
射出成形機(日精樹脂工業社製 NEX110−12E)を用いて、樹脂組成物のペレットを40cc計量し、3分間保持した後に100mm/sの射出速度で排出するという操作を繰り返して、ノズル先端部の様子を観察し、発火の有無を判断した。シリンダ温度は280℃に設定した。
【0040】
(7)熱伝導率
熱伝導率λは、熱拡散率α、密度ρおよび比熱Cpを下記方法により求め、その積として次式で算出した。
λ=α・ρ・Cp
λ:熱伝導率(W/(m・K))
α:熱拡散率(m/sec)
ρ:密度(g/m
Cp:比熱(J/g・K)
熱拡散率αは、実施例、比較例で得られた評価用成形片の樹脂の流れ方向について、レーザーフラッシュ法熱定数測定装置(アルバック理工社製 TC−7000)を用いて測定した。密度ρは電子比重計(ミラージュ貿易社製 ED−120T)を用いて測定した。比熱Cpは示差走査熱量計(パーキンエルマー社製 DSC―7)を用い、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0041】
本発明の実施例と比較例で用いた原料を以下に示す。
(1)ポリアミド樹脂(A)
・PA6:ポリアミド6樹脂(相対粘度1.9、密度1.13cm
【0042】
(2)充填材(B)
・GrA:鱗片状黒鉛(日本黒鉛工業社製、平均粒径130μm、熱伝導率100W/(m・K)、密度2.25g/cm
・GrB:鱗片状黒鉛(日本黒鉛工業社製、平均粒径60μm、熱伝導率100W/(m・K)、密度2.25g/cm
・GrC:鱗片状黒鉛(日本黒鉛工業社製、平均粒径5μm、熱伝導率100W/(m・K)、密度2.25g/cm
・GF:ガラス繊維(オーウェンスコーニング社製、平均繊維径10μm、平均繊維長3mm、密度2.50g/cm
・TC:鱗片状タルク(日本タルク社製、平均粒径23μm、熱伝導率5〜10W/(m・K)、密度2.70g/cm
・MgO:球状酸化マグネシウム(タテホ化学社製、平均粒径30μm、熱伝導率50W/(m・K)、密度3.58g/cm
・BN:六方晶系鱗片状窒化ホウ素(電気化学社製、平均粒径15μm、熱伝導率210W/(m・K)、密度2.26g/cm
【0043】
(3)難燃剤
(3−1)被覆赤燐(C)
・C1:被覆赤燐(燐化学工業製、ノーバエクセル140、平均粒径25〜35μm)
・C2:被覆赤燐(燐化学工業製、ノーバエクセル140F、平均粒径5〜15μm)
(3−2)臭素系難燃剤
・FR:臭素系難燃剤(ICL−IP社製、F−2400)
(3−3)難燃助剤
・Sb:三酸化アンチモン(日本精鉱社製、PATOX−M)
【0044】
(4)溶融粘度低下剤
(4−1)ロジン(D)
・D1:マレイン化ロジン(荒川化学工業社製、マルキードNo.31、酸価188mgKOH/g、軟化温度141℃)
・D2:マレイン化ロジン(荒川化学工業社製、マルキードNo.33、酸価317mgKOH/g、軟化温度153℃)
・D3:ロジン(荒川化学工業社製、KR−85、酸価165〜175mgKOH/g、軟化温度80〜87℃)
(4−2)多官能性アリル化合物
・E1:トリアリルイソシアネート(日本化成社製 TAIC)
(4−3)ダイマー酸ベースポリアミド樹脂
・E2:ダイマー酸(築野食品工業社製、水素添加なし)と1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼンとを、ダイマー酸/1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン=46.5/53.5(モル比)の割合で反応槽に仕込み、240℃で2時間反応させ、反応終了後に払い出し、切断して得られたダイマー酸ベースポリアミド樹脂ペレットを使用した。230℃、荷重21.18Nにおけるメルトフローレートは、1800g/10分であった。
【0045】
実施例1
二軸押出機(東芝機械社製TEM26SS、スクリュー径26mm)の主ホッパーに、ポリアミド樹脂(PA6)50質量部と、充填材(GrA)50質量部と、被覆赤燐(C1)4質量部と、ロジン(D1)2質量部とを供給し、260℃で溶融混練をおこない、ストランド状に押出して冷却固化した後切断し、樹脂組成物のペレットを得た。
【0046】
実施例2〜20、比較例1〜11
樹脂組成物の組成を表1〜2のように変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、樹脂組成物のペレットを得た。なお、ガラス繊維(GF)はサイドフィーダーにより途中から供給した。
【0047】
実施例1〜20、比較例1〜11で得られた樹脂組成物の評価結果を表1〜2に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
実施例1〜20の樹脂組成物は、いずれも難燃性評価がV−1以上であって、溶融粘度が900Pa・s以下であった。また、いずれも、発火性試験において発火が観測されなかった。
実施例3の樹脂組成物は、被覆赤燐(C)を含有しない比較例1の樹脂組成物と同程度の曲げ強度や曲げ弾性率を有しており、被覆赤燐(C)を配合しても、機械的特性を損なうことがなかった。被覆赤燐(C)やロジン(D)を含有しない比較例1の樹脂組成物に被覆赤燐(C)を配合した比較例2の樹脂組成物では、難燃性がV−1に向上したが、さらにロジン(D)を配合した実施例3の樹脂組成物においては、難燃性がV−0にまで向上した。このさらなる難燃性向上は、ロジン(D)と被覆赤燐(C)の相互作用によるものと推察される。
また、充填材として黒鉛(GrA、GrB)、窒化ホウ素(BN)を用いた実施例の樹脂組成物は、熱伝導率が5W/(m・K)以上であった。
【0051】
比較例1、4の樹脂組成物は、被覆赤燐(C)を含有しないか、含有量が少なかったため、難燃性が低く、V−2以下であった。
比較例2はロジン(D)を含有しないため、比較例5は被覆赤燐(C)の含有量が多すぎたため、比較例6は充填材(B)の含有量が多すぎたため、比較例7は平均粒径が5μmの充填材(B)を用いたため、いずれの樹脂組成物も、溶融粘度が高く、発火性試験において発火が観測された。
比較例3の樹脂組成物は、ロジン(D)の含有量が多かったため、曲げ強度や曲げ弾性率が低下した。
比較例8の樹脂組成物は、難燃剤として臭素系難燃剤(FR)を使用したため、難燃剤を含有しない比較例1の樹脂組成物や、難燃剤として被覆赤燐(C)を含有する比較例2の樹脂組成物に比較して、曲げ強度や曲げ弾性率が著しく低下した。また、比較例9において、難燃剤として臭素系難燃剤(FR)を含有する比較例8の樹脂組成物にロジン(D)を配合しても、ロジン(D)と臭素系難燃剤(FR)とが相互作用することはなく、難燃性が向上することはなかった。
また比較例10、11の樹脂組成物は、難燃剤が被覆赤燐(C)であるが、溶融粘度低下剤としてロジン(D)以外の多官能性アリル化合物やダイマー酸ベース熱可塑性樹脂を使用したため、溶融粘度低下剤を含有しない比較例2の樹脂組成物よりも、難燃性が低下し、V−2となった。