特許第6436920号(P6436920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6436920セラミックス成形体の製造方法、及びセラミックス成形体製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6436920
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】セラミックス成形体の製造方法、及びセラミックス成形体製造装置
(51)【国際特許分類】
   B28B 3/20 20060101AFI20181203BHJP
【FI】
   B28B3/20 E
   B28B3/20 K
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-1241(P2016-1241)
(22)【出願日】2016年1月6日
(65)【公開番号】特開2016-193590(P2016-193590A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2017年10月20日
(31)【優先権主張番号】特願2015-74117(P2015-74117)
(32)【優先日】2015年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】田島 裕一
(72)【発明者】
【氏名】奥村 健介
(72)【発明者】
【氏名】林 清一朗
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/018893(WO,A1)
【文献】 特開2007−253149(JP,A)
【文献】 特表2013−545641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 3/00− 5/12
C04B 35/00−35/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス成形体を形成するための原料をバッチ処理により乾式混合する乾式混合工程と、
前記乾式混合工程によって得られた乾式混合物の投入から次工程の混練工程への湿式混合物の送出までを連続的に実施するとともに、水、界面活性剤、潤滑剤、及び可塑剤の少なくともいずれか一種類を含む液体を連続処理により添加し、湿式混合する湿式混合工程と、
前記湿式混合工程によって得られた湿式混合物を混練する混練工程と、
前記混練工程によって得られた成形原料を押出成形する成形工程と
を有し、
前記混練工程は、前記湿式混合物を混練する過程で、前記液体を更に添加することが可能であり、
前記湿式混合工程における前記液体の添加量は、
前記湿式混合工程及び前記混練工程で添加される前記液体の総添加量に対して、60〜90質量%であるセラミックス成形体の製造方法。
【請求項2】
前記成形工程によって形成された押出成形直後の前記セラミックス成形体の成形体形状を計測する成形体形状計測工程を更に有し、
計測された前記成形体形状に基づいて、前記湿式混合工程及び前記混練工程のいずれか一方の前記液体の添加量を調整する請求項1に記載のセラミックス成形体の製造方法。
【請求項3】
前記混練工程及び前記成形工程は、連続一体的に実施される請求項1または2に記載のセラミックス成形体の製造方法。
【請求項4】
セラミックス成形体を形成するための原料をバッチ処理により乾式混合する乾式混合部と、
前記乾式混合部によって混合された乾式混合物の投入から次の混練部への湿式混合物の送出までを連続的に実施するとともに、水、界面活性剤、潤滑剤、及び可塑剤の少なくともいずれか一種類を含む液体を連続処理により添加し、湿式混合する湿式混合部と、
前記湿式混合部によって混合された湿式混合物を混練する混練部と、
前記混練部によって混練された成形原料を押出成形する押出成形部と
を有し、
前記混練部は、
前記湿式混合物を混練する過程で、前記液体を更に添加することが可能であり、
前記湿式混合部における前記液体の添加量は、
前記湿式混合部及び前記混練部で添加される前記液体の総添加量に対して、60〜90質量%であるセラミックス成形体製造装置。
【請求項5】
前記押出成形部によって形成された押出成形直後の前記セラミックス成形体の成形体形状を計測する成形体形状計測部を更に有し、
計測された前記成形体形状に基づいて、前記湿式混合部及び前記混練部のいずれか一方の前記液体の添加量を調整する請求項4に記載のセラミックス成形体製造装置。
【請求項6】
前記混練部及び前記押出成形部は、連続一体的に構成されている請求項4または5に記載のセラミックス成形体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス成形体の製造方法、及びセラミックス成形体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックス成形体は、例えば、ハニカム形状を有するハニカム構造体として構成され、自動車排ガス浄化用触媒担体、ディーゼル微粒子除去フィルタ、或いは燃焼装置用蓄熱体等の広範な用途に使用されている。セラミックス成形体は、成形原料を押出成形した後、高温で焼成する焼成工程を経て製造されている。セラミックス成形体の一つであるハニカム構造体は、流体の流路を形成する一方の端面から他方の端面まで延びる複数の多角形のセルを区画形成する格子状の隔壁を有している。
【0003】
セラミックス成形体を所望の形状に押出成形する成形工程は、所望形状の押出ダイ(口金)を押出口に取り付けた押出成形機を用い、押出方向を水平方向に一致させた状態で所定の押出圧力及び押出速度で、成形原料を当該押出ダイから押し出すことにより行われる。
【0004】
成形原料は、各種のセラミックス原料及びバインダ等が使用され、主に粉末状或いは粉体状のものである。そのため、上記押出成形機からの押し出しを可能とするために、セラミックス原料等を混合する混合工程において、水や界面活性剤等の液体が添加される。混合工程は、始めにバッチ式の混合装置(バッチミキサー)が使用され、予め定められた配合比率に基づいて秤量された上記セラミックス原料等の二種以上の骨材粒子原料を乾式混合し(第1の混合)、更に液体(水)を加える湿式混合(第2の混合)を行うことにより、湿式混合物(成形用配合物)を得ることが一般的に行われている(特許文献1参照)。その後、湿式混合された湿式混合物(成形用混合物)を混練する混練工程を経て、押出成形に適する所定の粘度に調整された成形原料が押出成形機から押し出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/018893号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、成形原料の粘度は、成形原料に添加される液体の量の影響を受けるものであり、当該成形原料の粘度は、押出成形機にかかる機械負荷(トルク)や、押出成形後のセラミックス成形体の成形体形状に大きく寄与することが知られている。すなわち、押出成形機によって押し出される直前の成形原料の粘度が、最終的なセラミックス成形体の押出生産効率(成形速度)や製品形状(例えば、真円度)に大きな影響を与える。そのため、押出成形時の押出挙動を安定させ、製品形状の整ったセラミックス成形体を製造するために、押出成形機に送出される直前の成形原料の粘度を一定にする必要がある。
【0007】
上記特許文献1における液体(水)を加える湿式混合(第2の混合)の工程は、バッチ処理によって行われる乾式混合(第1の混合)と同様に、バッチ処理による混合が主に行われていた。すなわち、乾式混合された乾式混合物に対し、所定量の液体を加えて撹拌混合を行い、所定の撹拌時間を経て、得られた1バッチ毎(1単位毎)の湿式混合物を次工程の混練工程に送出することを行っていた。すなわち、1バッチの湿式混合物が混練工程に送出されたタイミングで、別途撹拌混合された別バッチの湿式混合物の送出に切り替える操作が行われていた。
【0008】
このとき、湿式混合のバッチが切り替えられ、混練工程に新たに送出される切り替え直後の湿式混合物と、別バッチの湿式混合物に切り替えられる直前の湿式混合物との間で、嵩密度がそれぞれ相違することがある。すなわち、切り替え直後の湿式混合物は撹拌混合が終了してからあまり時間が経過していないため、後述する切り替え直前の湿式混合物に対して嵩密度が疎となっている。一方、切り替え直前の湿式混合物は、混練工程に送出されるまでに撹拌混合が終了してから多くの時間が経過しているため、湿式混合物自身の自重にしたがって嵩密度が増加し、前述の切り替え直後の湿式混合物と比べて嵩密度が密となっている。
【0009】
その結果、1バッチの湿式混合物において、時間の経過とともに嵩密度が変動し、バッチの切り替えのタイミングで湿式混合物の性状が大きく異なることがあった。この湿式混合物の嵩密度の違いが、混練工程を経て形成される成形原料の粘度の変動に大きく寄与し、その結果、セラミックス成形体の押出成形効率や製品形状に影響を与え、安定したセラミックス成形体の押出成形が行えないことがあった。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、押出成形機にかかるトルクを低く抑え、流動性及び保形性のバランスのとれた成形原料を用いることで、真円度等の製品形状の整ったセラミックス成形体を製造することが可能なセラミックス成形体の製造方法、及び当該製造方法を実施するためのセラミックス成形体製造装置が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、以下に掲げるセラミックス成形体の製造方法、及びセラミックス成形体製造装置が提供される。
【0012】
[1] セラミックス成形体を形成するための原料をバッチ処理により乾式混合する乾式混合工程と、前記乾式混合工程によって得られた乾式混合物の投入から次工程の混練工程への湿式混合物の送出までを連続的に実施するとともに、水、界面活性剤、潤滑剤、及び可塑剤の少なくともいずれか一種類を含む液体を連続処理により添加し、湿式混合する湿式混合工程と、前記湿式混合工程によって得られた湿式混合物を混練する混練工程と、前記混練工程によって得られた成形原料を押出成形する成形工程とを有し、前記混練工程は、前記湿式混合物を混練する過程で、前記液体を更に添加することが可能であり、前記湿式混合工程における前記液体の添加量は、前記湿式混合工程及び前記混練工程で添加される前記液体の総添加量に対して、60〜90質量%であるセラミックス成形体の製造方法。
【0014】
] 前記成形工程によって形成された押出成形直後の前記セラミックス成形体の成形体形状を計測する成形体形状計測工程を更に有し、計測された前記成形体形状に基づいて、前記湿式混合工程及び前記混練工程のいずれか一方の前記液体の添加量を調整する前記[1]に記載のセラミックス成形体の製造方法。
【0015】
] 前記混練工程及び前記成形工程は、連続一体的に実施される前記[1]または[2]に記載のセラミックス成形体の製造方法。
【0016】
] セラミックス成形体を形成するための原料をバッチ処理により乾式混合する乾式混合部と、前記乾式混合部によって混合された乾式混合物の投入から次の混練部への湿式混合物の送出までを連続的に実施するとともに、水、界面活性剤、潤滑剤、及び可塑剤の少なくともいずれか一種類を含む液体を連続処理により添加し、湿式混合する湿式混合部と、前記湿式混合部によって混合された湿式混合物を混練する混練部と、前記混練部によって混練された成形原料を押出成形する押出成形部とを有し、前記混練部は、前記湿式混合物を混練する過程で、前記液体を更に添加することが可能であり、前記湿式混合部における前記液体の添加量は、前記湿式混合部及び前記混練部で添加される前記液体の総添加量に対して、60〜90質量%であるセラミックス成形体製造装置。
【0018】
] 前記押出成形部によって形成された押出成形直後の前記セラミックス成形体の成形体形状を計測する成形体形状計測部を更に有し、計測された前記成形体形状に基づいて、前記湿式混合部及び前記混練部のいずれか一方の前記液体の添加量を調整する前記[]に記載のセラミックス成形体製造装置。
【0019】
] 前記混練部及び前記押出成形部は、連続一体的に構成されている前記[または]に記載のセラミックス成形体製造装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明のセラミックス成形体の製造方法によれば、湿式混合工程が連続処理で行われる。これにより、バッチ処理により湿式混合された湿式混合物において発生するバッチ切り替え時の嵩密度の変動を抑えることができる。その結果、押出成形機に導入される成形原料の粘度を一定にすることができ、セラミックス成形体の真円度等の製品形状の安定化を図ることができる。
【0021】
加えて、押出成形直後のセラミックス成形体の成形体形状を計測し、計測された成形体形状の計測結果に基づいて、湿式混合工程及び混練工程のいずれか一方で実施される液体の添加量を調整することができる。これにより、成形体形状の計測結果を速やかにフィードバックし、混練工程(または湿式混合工程)から連続的に実施されるセラミックス成形体の押出成形に当該計測結果を反映させることができる。
【0022】
特に、混練工程及び成形工程を一時的に停止することなく、連続的に稼働させながら、セラミックス成形体の成形体形状の微調整を行うことができる。なお、セラミックス成形体製造装置は、上記のセラミックス成形体の製造方法を適用するものであり、当該製造方法による効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態のセラミックス成形体の製造方法、及びセラミックス成形体製造装置の概略構成を模式的に示す説明図である。
図2】原料から成形原料への変換プロセス、及び成形原料からセラミックス成形体の形成の流れを模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明のセラミックス成形体の製造方法、及びセラミックス成形体製造装置の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良等を加え得るものである。
【0025】
本発明の一実施形態のセラミックス成形体の製造方法1(以下、単に「製造方法1」と称す。)は、図1及び図2に主として示すように、セラミックス成形体2を形成するための、特に、押出成形処理に係るものであり、粉末状或いは粉体状のセラミックス粉体3a及びバインダ3b等からなる複数種類の原料3をバッチ処理により乾式混合する乾式混合工程S1と、得られた乾式混合物4に液体5を添加し、連続処理により湿式混合する湿式混合工程S2と、得られた湿式混合物6を混練する混練工程S3と、得られた混練物7を脱気及び圧密処理した成形原料8を押出成形機を用いて押出成形し、所望の形状のセラミックス成形体2(例えば、ハニカム形状のハニカム構造体)を形成する成形工程S4とを主に有している。本実施形態の製造方法1は、混練工程S3において、湿式混合物6を混練する過程で、液体5を追加して添加することができる。
【0026】
更に、本実施形態の製造方法1は、上記構成に加え、押出成形直後のセラミックス成形体2の成形体形状を計測する成形体形状計測工程S5を更に有し、計測された成形体形状に基づいて、湿式混合工程S2及び混練工程S3のいずれか一方における液体5の添加量を調整することができる。
【0027】
本実施形態の製造方法1は、図1に模式的に示した上記工程S1〜S5をそれぞれ実施可能な構成を有するセラミックス成形体製造装置100を使用して実施される。セラミックス成形体製造装置100は、その機能的構成として、バッチ式の乾式混合部10と、連続式の湿式混合部20と、混練部30と、押出成形部40とを主に有し、混練部30はその構成要素内に液体5を更に添加する機能を備えている。加えて、セラミックス成形体製造装置100は、押出成形直後のセラミックス成形体2の成形体形状を計測する成形体形状計測部50を備え、計測された成形体形状に基づいて湿式混合部20及び混練部30のいずれか一方における液体5の添加量を調整する機能を備えている。以下、本実施形態の製造方法1の流れについて、上記セラミックス成形体製造装置100の各部構成とともに説明を行うものとする。
【0028】
ここで、押出成形部40は、セラミックス成形体2の押出成形において、従来から使用されている周知の押出成形機に該当する。また、添加される液体5は、特に限定されないが、水、界面活性剤、潤滑剤、及び可塑剤をそれぞれ単独、若しくは、これらの中の少なくともいずれか一種類を含んで構成されるものを使用することができる。液体5が原料3とそれぞれ混合及び混練されることにより、押出成形部40からの押出成形に適した粘度を備える均質連続体としての成形原料8が得られる。
【0029】
乾式混合工程S1は、バッチ式の乾式混合部10(バッチミキサー)を用いて実施される。所定の配合比率で秤量された複数種類の粉末状または粉体状のセラミックス粉体3a及びバインダ3bを含む原料3が乾式混合部10に投入され、撹拌機構(図示しない)によってセラミックス粉体3a及びバインダ3bが互いに均一に混じり合うように撹拌混合を行う。これにより、原料3が複数種類のセラミックス粉体3a等が均一に分散した乾式混合物4に変換される(図2参照)。
【0030】
得られた乾式混合物4は、湿式混合工程S2に送られる。ここで、湿式混合工程S2は、乾式混合物4を連続処理によって湿式混合を行う連続式の湿式混合部20(連続ミキサー)を用いて行われる。
【0031】
連続式の湿式混合部20を用いることにより、乾式混合部10によって混合された乾式混合物4が予め規定された投入割合で湿式混合部20に徐々に投入され、同時に乾式混合物4の投入量に応じて規定された液体5が投入され、撹拌機構(図示しない)によって湿式混合される。これにより、乾式混合物4及び液体5が均一に分散し、混合された湿式混合物6に変換される。
【0032】
本実施形態の製造方法1及びセラミックス成形体製造装置100において、湿式混合工程S2(湿式混合部20)において添加される液体5の添加量は、後述する混練工程S3(混練部30)において添加される液体5の添加量を加えた液体5の総添加量に対し、上記総添加量に対して60〜100質量%の範囲になるように設定される。
【0033】
湿式混合工程S2において、乾式混合物4に液体5が添加され、連続処理により撹拌混合が行われると、最初にセラミックス粉体3a及びバインダ3bのそれぞれの表面に液体5が吸着する。そして、この湿式混合を継続することにより、原料3中のバインダ3bが液体5を吸収し、膨潤する(図2参照)。これにより、乾式混合物4が湿式混合物6に変換される。一方、セラミックス粉体3aは液体5を吸収しても上記の膨潤が起こることはない。本実施形態の製造方法1において、乾式混合物4の湿式混合部20への投入から次工程(混練工程S3)を行う混練部30への湿式混合物6の送出までが連続的に実施される。
【0034】
その後、混練部30(混練機)を使用して混練工程S3が実施される。本実施形態の製造方法1において、混練工程S3及び次工程の成形工程S4は、連続一体的に実施される。すなわち、セラミックス成形体製造装置100において、湿式混合部20から送られた湿式混合物6を、混練部30は混練し、更に当該混練部30と連続一体的に構成された押出成形部40に、処理された混練物7(成形原料8)が直接送り出される。そして、押出成形部40の押出ダイ(口金)を通じて成形原料8が押出成形される。これにより、セラミックス成形体2が形成される(図2参照)。
【0035】
混練工程S3では、湿式混合工程S2において膨潤したバインダ3bがセラミックス粉体3aと親和する。その結果、セラミックス粉体3aの表面が膨潤したバインダ3bによってコーティングされる(図2参照)。これにより、湿式混合物6が混練物7に変換される。なお、得られた混練物7は混練部30の中で、当該混練物7に含まれる空気を真空吸引装置を利用して吸引し脱気する脱気処理を行い、更に所定の荷重を混練物7に加えることにより、混練物7を圧縮し、緻密化する圧密処理が行われる(図2参照)。その結果、押出成形部40に投入されるセラミックス粉体3a及びバインダ3bが均一に混合され、かつ緻密化した均質連続体としての成形原料8が形成される。
【0036】
連続式の湿式混合部20を用いたことにより、混練部30を経て押出成形部40までの処理を連続一体的に実施することができる。そのため、セラミックス成形体2の形成をより効率的、かつ安定して行うことができる。
【0037】
本実施形態の製造方法1において、混練工程S3は、湿式混合物6を混練する過程で、液体5を更に添加するものであっても構わない。すなわち、原料3から成形原料8へ変換するプロセスにおいて、二度の液体5を添加する機会が設けられる。
【0038】
ここで、本実施形態の製造方法1及びセラミックス成形体製造装置100において、混練工程S3において添加される液体5の添加量は、上記総添加量に対して、0〜40質量%の範囲に設定されている。この液体5の添加量は、前述した湿式混合工程S2(湿式混合部20)において添加される液体5の添加量に対応している。したがって、混練工程S3において、液体5の添加は必須のものではなく、液体5の添加を省略しても構わない。
【0039】
混練された混練物7を脱気及び圧密した成形原料8が押出成形部40(=押出成形機)に送られ、所定の押出圧力及び押出速度で押し出される(成形工程S4)。なお、押出成形部40に相当する押出成形機の構成は既に周知のものであるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0040】
その後、押出ダイから押し出された押出成形直後のセラミックス成形体2の成形体形状が計測される(成形体形状計測工程S5)。ここで、成形体形状計測工程S5は、既存の形状計測技術を用いることが可能であり、例えば、周知のレーザ計測ユニットからなる非接触型の成形体形状計測部50を用いて実施することが可能である。これにより、押出成形直後のセラミックス成形体2の形状データを取得することができる。得られた形状データに基づく成形体形状の計測結果から、標準形状とのずれなどを検出し、当該ずれなどの大きさに基づいて、予め規定された量の液体5が成形原料8に対して添加され、液体5の添加量の調整が行われる(図1における破線矢印参照)。
【0041】
ここで、成形体形状の計測に基づく液体5の添加は、湿式混合工程S2(湿式混合部20)及び混練工程S3(混練部30)のいずれか一方に対して実施される。すなわち、し湿式混合工程S2または混練工程S3のいずれか一方において、成形原料8を調製する際に添加された液体5の添加量を一定のものとし、当該液体5の添加量に対して、所定の比率で添加量の調整が行われる。特に、押出成形の直前の混練工程S3において液体5の添加量の調整を行うことが好適である。すなわち、湿式混合工程S2における液体5の添加量を一定のものとし、当該液体5の添加量に対して所定比率の液体5の添加が行われる。
【0042】
計測された成形体形状によって、成形原料8の液体添加率が高いと判断される場合、湿式混合工程S2または混練工程S3において添加する液体5の添加量を、例えば、規定の添加量より減じるような調整を行う。一方、計測された成形体形状によって、成形原料8の液体添加率が低いと判断される場合、湿式混合工程S2または混練工程S3において添加する液体5の添加量を、例えば、規定の添加量より増やす調整を行う。なお、成形体形状に基づく液体5の添加量の増減の判断は、温度や湿度等の周囲環境の影響を勘案し、更に経験値に基づいて決定される。
【0043】
上記説明したように、本実施形態の製造方法1によれば、湿式混合工程S2(湿式混合部20)において、乾式混合物4に対する湿式混合を連続処理(連続式)で行うことができる。これにより、従来のバッチ切替時における湿式混合物の嵩密度の変動が発生することがなく、バッチ切替時のセラミックス成形体の押出挙動が変化することがない。その結果、押出成形時成形原料8の流動性及びセラミックス成形体2の保形性を維持してセラミックス成形体2を製造することができ、セラミックス成形体2の真円度等の製品形状が安定したものとなる。
【0044】
特に、湿式混合工程S2を連続処理で実施し、換言すれば、湿式混合部20として連続式ミキサーを用いることにより、湿式混合工程S2から混練工程S3を経て成形工程S4に至るまでの工程を連続一体的に実施することが可能となる。すなわち、湿式混合工程S2〜成形工程S4の間を、途切れることなく行うことが可能となり、セラミックス成形体2の効率的な製造が可能となる。
【0045】
更に、押出成形直後のセラミックス成形体2の成形体形状を計測することにより、セラミックス成形体2の成形体形状の計測結果をフィードバックし、成形原料8の粘度を一定の範囲に制御することができる。これにより、更に押出成形時のトルクを低く抑え、成形体形状を安定させることができる。特に、混練工程S3及び成形工程S4が連続一体的に実施されるため、セラミックス成形体製造装置100を一時的に停止させることなく、連続的に稼働した状態でセラミックス成形体の成形体形状を一定に保つように制御することができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明のセラミックス成形体の製造方法、及びセラミックス成形体製造装置について、下記の実施例に基づいて説明するが、本発明のセラミックス成形体の製造方法、及びセラミックス成形体製造装置は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
(1)ハニカム構造体(セラミックス成形体)の形成
本発明のセラミックス成形体の製造方法、及びセラミックス成形体製造装置を用いてセラミックス成形体の一種であるハニカム構造体(実施例1〜3、比較例1,2)を形成した。実施例1,2及び比較例1〜3のハニカム構造体は、湿式混合部の種類(バッチ式または連続式)、湿式混合工程及び混練工程における液体添加割合に係る条件を変化させたものであり、その他の条件は同一のものである。形成されたハニカム構造体は、円柱状を呈し、格子状の隔壁によって多数の多角形のセルが区画形成されたハニカム構造体であり、隔壁厚さが100μm、セル形状が六角形、セル密度が600cpsi(cells per square inch)(93.0セル/cm2)、ハニカム径が100mm、ハニカム長さが100mmのものである。ハニカム構造体の形成条件、湿式混合工程と混練工程のそれぞれの液体添加割合、及び評価結果を下記表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
(2)液体添加割合と供給量変動レンジとの関係
表1に示すように、実施例1,2は、いずれも供給量変動レンジが2.0%以下(更に詳しくは、1.6%以下)であり、押出成形時における成形原料の供給量に大きな変動がないことが確認された。すなわち、成形原料の押出成形部に対する供給が安定していることが示される。そのため、成形体形状が大きく変動するような要因は認められず、良好な押出成形が行われていると考察される。
【0050】
較例1に示されるように、バッチ式の湿式混合部を用いた条件で、混練工程における液体の添加割合が液体の全添加量に対して低くなる(0%)と、供給量変動レンジが3%以上と大となる。すなわち、湿式混合工程(連続処理)及び混練工程の二つの工程で液体を添加する場合において、混練工程で処理の割合以上(少なくとも10質量%以上)の液体を添加することにより、成形原料の流動性を改善することが示された。一方、混練工程における液体の添加割合が全添加量に対して多い場合(50%質量%以上:比較例2参照)、供給量変動レンジは低く抑えることができるものの、押出トルクの値が高くなり(詳細は後述する。)、安定した押出成形が困難となる。したがって、混練工程における液体の添加割合は、0〜40質量%の範囲が適していることが示された。
【0051】
(3)液体添加割合と押出トルクとの関係
表1に示すように、実施例1,2、及び比較例1,3において、いずれも60〜70%前後の押出トルクの値が示され、この場合、押出成形機に対して過大な負荷が加わっていないと推定される。これに対し、比較例2の押出トルクの値は86%と、上記実施例1,2、及び比較例1,3と比べて高いことが示された。比較例2において、湿式混合工程及び混練工程における液体の添加割合が50%である。この場合、上記(2)において示した供給量変動レンジの値は小さく、安定した成形原料の供給は可能であるものの、押出トルクの値が過剰となり、押出成形部(押出成形機)に対する負荷が大きくなり、セラミックス成形体の押出生産効率や成形速度に負の影響を与えることが確認された。これにより、連続式の湿式混合工程の場合、当該湿式混合工程で少なくとも60%以上の液体を添加する必要があることが示された。
【0052】
(4)液体添加割合と真円度の関係
真円度とは、円形状の幾何学的円からの差(狂い)の大きさを表すものであり、一般に、二つの幾何学円で挟んだときの同心二円の間隔が最小となる二つの円の半径差を示している最大の直径と最小の直径の差で示している。本実施例では、既存の真円度計測機を用い、ノギスでハニカム構造体の端面における最大径と最小径の測定を行い、その差を求めている。
【0053】
これによると、実施例1,2は、いずれも真円度がいずれも1.8mm以下であり、良好な真円度を示すことが確認された。本実施形態の製造方法及びセラミックス成形体製造装置によって、二つの工程で成形原料に対する液体を添加することで、成形原料の粘度を安定させることができ、二回の液体の添加による効果の有用性が確認される。一方、比較例1に示すように、供給量変動レンジの値が3%以上と大きくなると、押出成形によって形成されたハニカム構造体の真円度に大きく影響し、真円度が1.8mmを超える傾向が認められた。すなわち、供給量変動レンジの値に依存して真円度が大きくなり、安定した製品形状のハニカム構造体(セラミックス成形体)の製造が困難となる。
【0054】
上記実施例1,2に示されるように、本発明のセラミックス成形体の製造方法及びセラミックス成形体製造装置によれば、湿式混合工程を連続処理で行うことにより(連続式の湿式混合部を用いることにより)、湿式混合工程において、成形原料の粘度を一定にすることができる。その結果、押出成形されたセラミックス成形体の成形体形状が安定する。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のセラミックス成形体の製造方法、及びセラミックス成形体製造装置は、自動車排ガス浄化用触媒担体、ディーゼル微粒子除去フィルタ、あるいは燃焼装置用蓄熱体等に利用可能なセラミックス成形体を製造するために使用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1:製造方法(セラミックス成形体の製造方法)、2:セラミックス成形体、3:原料、3a:セラミックス粉体、3b:バインダ、4:乾式混合物、5:液体、6:湿式混合物、7:混練物、8:成形原料、10:乾式混合部、20:湿式混合部、30:混練部、40:押出成形部、50:成形体形状計測部、100:セラミックス成形体製造装置、S1:乾式混合工程、S2:湿式混合工程、S3:混練工程、S4:成形工程、S5:成形体形状計測工程。
図1
図2