【実施例】
【0073】
以下の実施例の各々では、本発明のポリマーの分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定される。
【0074】
このような技術は、検出器を備えたWaters(TM)の商標の液体クロマトグラフィー装置を使用する。この検出器は、Waters(TM)の商標の屈折率濃度検出器である。
【0075】
この液体クロマトグラフィー装置は、検討中の種々の分子量のポリマーを分離するための、当業者によって適切に選択されたサイズ排除カラムを備えている。
【0076】
溶離液相は、0.05MのNaHCO
3、0.1MのNaNO
3、0.02Mのトリエタノールアミンおよび0.03%のNaN
3を含有する1N水酸化ナトリウムによりpH9.00に調整した水相である。
【0077】
詳細には、第1工程に従って、重合溶液はSEC溶離液相に対応するSEC可溶化溶媒中で乾燥基準で0.9%に希釈され、それに0.04%のジメチルホルムアミドをフローマーカーまたは内部標準として添加する。その後、その混合物を0.2μmフィルターに通す。次いで、100μlをクロマトグラフィー装置(溶離液:0.05MのNaHCO
3、0.1MのNaNO
3、0.02Mのトリエタノールアミンおよび0.03%のNaN
3を含有する1N水酸化ナトリウムによりpH9.00に調整した水相)に注入する。
【0078】
液体クロマトグラフィー装置はアイソクラティックポンプ(Waters(TM)515)を含み、その流量は0.8ml/分に設定される。クロマトグラフィー装置は、また、オーブンも含み、それ自体連続するカラムの以下のシステムを含み、即ち、6cmの長さおよび40mmの内径を有するWaters(TM)Ultrahydrogel Guard Columnタイプのプレカラム、ならびに30cmの長さおよび7.8mmの内径を有するWaters(TM)Ultrahydrogelタイプの線形カラムである。次に、検出システムは、Waters(TM)410 RIタイプの屈折率検出器からなる。オーブンを60℃の温度に加熱し、屈折計を45℃に加熱する。
【0079】
クロマトグラフィー装置は、供給者Polymer Standards ServiceまたはAmerican Polymer Standards Corporationに対し認定された種々の分子量のポリアクリル酸ナトリウム粉末標準によって較正される。
【0080】
ポリマーの多分散性指数(PI)は、数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比である。
【0081】
残留モノマーの量は、当業者に知られている従来の技術、例えば、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定する。
【0082】
[実施例1]
この実施例の目的は、
ジプロピオネートトリチオカーボネート(DPTTC)と前記(メタ)アクリル酸モノマー(TM)との間の質量パーセンテージ(重量/重量)が0.1と2.5%との間(本発明)またはこの範囲外(従来技術または本発明外)の前記DPTTC、および
NaPO
2H
2と(メタ)アクリル酸モノマー(TM)との間の質量パーセンテージ(重量/重量)が2.9と5.8重量%との間(本発明)またはこの範囲外(従来技術または本発明外)となるような総量での次亜リン酸ナトリウムNaPO
2H
2
を使用する、本発明の(メタ)アクリル酸ポリマーの調製を説明することである。
【0083】
試験1−従来技術:
この試験は、RAFT型の制御されたラジカル重合によるポリマーの調製方法を示す。
【0084】
機械的攪拌機および油浴型のヒーターを備えたガラス合成反応器に、328gの水および94gの29%DPTTC連鎖移動剤(または27gの100%DPTTC、即ち、0.092モル)を充填する。
【0085】
95℃の温度に到達するまで加熱する。
【0086】
2時間かけて、328gの100%のアクリル酸(即ち、4.558モル)と、以下を並行して導入する:
76gの水に溶解した4gの過硫酸ナトリウムNa
2S
2O
8(即ち、0.017モル)、および
76gの水に溶解した1.15gのメタ重亜硫酸ナトリウムNa
2S
2O
5(即ち、0.006モル)。
【0087】
その温度を2時間維持し、次いで46gの水で希釈した3.2gの130Vの過酸化水素を注入する。
【0088】
次いで混合物を、撹拌しながら、48gの水で希釈した381gの50%水酸化ナトリウムで中和する。
【0089】
95℃で1時間加熱を再開し、次いで室温まで冷却する。
【0090】
試験2−本発明外
この試験によれば、使用されたDPTTC連鎖移動剤の量は10分の1に減少させる一方、試験1の条件を再現する。
【0091】
機械的攪拌機および油浴型のヒーターを備えたガラス合成反応器に、328gの水および19gの14%DPTTC連鎖移動剤(または2.7gの100%DPTTC、即ち、0.0092モル)を充填する。
【0092】
95℃の温度に到達するまで加熱する。
【0093】
2時間かけて、328gの100%のアクリル酸(即ち、4.558モル)と、以下を並行して導入する:
76gの水に溶解した4gの過硫酸ナトリウムNa
2S
2O
8(即ち、0.017モル)、および
76gの水に溶解した1.15gのメタ重亜硫酸ナトリウムNa
2S
2O
5(即ち、0.006モル)。
【0094】
その温度を2時間維持し、次いで46gの水で希釈した3.2gの130Vの過酸化水素を注入する。
【0095】
次いで混合物を、撹拌しながら、48gの水で希釈した381gの50%水酸化ナトリウムで中和する。
【0096】
95℃で1時間加熱を再開し、次いで室温まで冷却する。
【0097】
試験3−従来技術
この試験は文献WO2005/095466(コアテックス)の実施例2の試験2に相当する。
【0098】
機械的攪拌機および油浴型のヒーターを備えた合成反応器に、150gの水および20.31gの14.4%DPTTC連鎖移動剤(または2.92gの100%DPTTC)および50gの100%アクリル酸を充填する。
【0099】
その後、フリーラジカル源、この場合0.4gのV501を添加する。95℃の温度に到達するまで加熱する。その温度を2時間維持し、その後室温まで冷却する。
【0100】
次いで混合物を、55gの50%水酸化ナトリウムで中和する。
【0101】
試験4−従来技術
この試験は、もっぱら次亜リン酸ナトリウム一水和物によるポリマーの製造方法を示す。
【0102】
水(209g)を機械的攪拌機および油浴型のヒーターを備えた合成反応器に充填する。硫酸鉄七水和物(0.1g)および硫酸銅五水和物(0.015g)を添加する。
【0103】
媒体を90℃に加熱し、次いで、
305gのアクリル酸および13gの水、ならびに
32gの水に溶解した25.6gのNaPO
2H
2・H
2O
を2時間かけて同時に連続的に添加する。
【0104】
混合物を90℃で90分間加熱する。
【0105】
次いで、混合物をpH8まで50%水酸化ナトリウムで中和する。
【0106】
試験5−本発明
機械的攪拌機および油浴型のヒーターを備えた合成反応器に、198gの水および13gのNaPO
2H
2・H
2O(即ち、10.8gのNaPO
2H
2)を充填する。
【0107】
媒体を90℃に加熱し、次いで、
90分間かけて
23.2gの水で希釈した208.6gのアクリル酸、および
13.41gの14%DPTTC二ナトリウム塩(即ち、1.88gの100%DPTTC)の保存溶液、
130分間かけて、132gの水で希釈した7.44gの130V過酸化水素
を同時に連続的に添加する。
【0108】
混合物を90℃で90分間加熱する。
【0109】
混合物を228gの50%水酸化ナトリウムで中和する。
【0110】
試験6−本発明
機械的攪拌機および油浴型のヒーターを備えた合成反応器に、198gの水および12gのNaPO
2H
2・H
2Oを充填する。
【0111】
媒体を90℃に加熱し、次いで、
90分間かけて
*23.2gの水で希釈した208.6gのアクリル酸、
*13.41gの14%DPTTC二ナトリウム塩(即ち、1.88gの100%DPTTC)の保存溶液、
130分間かけて、132gの水で希釈した7.44gの130V過酸化水素
を同時に連続的に添加する。
【0112】
混合物を90℃で90分間加熱する。
【0113】
混合物を228gの50%水酸化ナトリウムで中和する。
【0114】
試験7−本発明
水(198g)を機械的攪拌機および油浴型のヒーターを備えた合成反応器に充填する。
【0115】
媒体を90℃に加熱し、次いで、
120分間かけて
*208.6gのアクリル酸、
*10.29gの20%DPTTC二ナトリウム塩(即ち、2.05gの100%DPTTC)の保存溶液、
*40gの水に溶解した12.1gのNaPO
2H
2・H
2O、
130分間かけて、80gの水で希釈した7.1gの130V過酸化水素
を同時に連続的に添加する。
【0116】
混合物を90℃で90分間加熱する。
【0117】
混合物を228gの50%水酸化ナトリウムで中和する。
【0118】
試験8−本発明
機械的攪拌機および油浴型のヒーターを備えた合成反応器に、198gの水および6.0gのNaPO
2H
2・H
2Oを充填する。
【0119】
媒体を90℃に加熱し、次いで、
120分間かけて
*208.6gのアクリル酸、
*10.3gの20%DPTTC二ナトリウム塩(即ち、2.06gの100%DPTTC)の保存溶液、
*40gの水に溶解した6.0gのNaPO
2H
2・H
2O、
130分間かけて、90gの水で希釈した7.1gの130V過酸化水素
を同時に連続的に添加する。
【0120】
混合物を90℃で90分間加熱する。
【0121】
混合物を228gの50%水酸化ナトリウムで中和する。
【0122】
試験9−本発明
機械的攪拌機および油浴型のヒーターを備えた合成反応器に、198gの水および10.4gのNaPO
2H
2・H
2Oを充填する。
【0123】
媒体を90℃に加熱し、次いで、
120分間かけて
*208.6gのアクリル酸、
*15.6gの20%DPTTC二ナトリウム塩(即ち、3.12gの100%DPTTC)の保存溶液、
130分間かけて、90gの水で希釈した7.1gの130V過酸化水素
を同時に連続的に添加する。
【0124】
混合物を90℃で90分間加熱する。
【0125】
混合物を228gの50%水酸化ナトリウムで中和する。
【0126】
試験10−本発明
機械的攪拌機および油浴型のヒーターを備えた合成反応器に、198gの水および8.3gのNaPO
2H
2・H
2Oを充填する。
【0127】
媒体を90℃に加熱し、次いで、 120分間かけて
*208.6gのアクリル酸、
*15.6gの20%DPTTC二ナトリウム塩(即ち、3.12gの100%DPTTC)の保存溶液、
130分間かけて、90gの水で希釈した7.1gの130V過酸化水素
を同時に連続的に添加する。
【0128】
混合物を90℃で90分間加熱する。
【0129】
混合物を228gの50%水酸化ナトリウムで中和する。
【0130】
試験11−本発明
機械的攪拌機および油浴型のヒーターを備えた合成反応器に、198gの水および10.4gのNaPO
2H
2・H
2Oを充填する。
【0131】
媒体を90℃に加熱し、次いで、 120分間かけて
*208.6gのアクリル酸、
*26.1gの20%DPTTC二ナトリウム塩(即ち、5.22gの100%DPTTC)の保存溶液、
130分間かけて、90gの水で希釈した7.1gの130V過酸化水素
を同時に連続的に添加する。
【0132】
混合物を90℃で90分間加熱する。
【0133】
混合物を228gの50%水酸化ナトリウムで中和する。
【0134】
【表1】
【0135】
[実施例2]
この実施例の目的は、従来技術のポリマー溶液または本発明のポリマー溶液を使用する種々のサンプルの二硫化炭素、硫化水素およびリン酸イオン含有量を説明することである。
【0136】
種々のサンプルは、Agilent G2577A質量分析検出器に連結されたAgilent G1530ガスクロマトグラフを使用して分析される。注入は、Agilent G1888ヘッドスペースサンプル採取器によって行われる。Agilent HP5 カラム(30m×0.25mm×1μm;5%フェニルおよび95%メチルシロキサン相)を使用し、分析物の溶離を可能にする。分析は2グラムのサンプルそのままを用いて行われる。定量化は標準的な添加方法によって行われる。
【0137】
種々のサンプルはまた、導電率検出器、化学的抑制器およびCO
2抑制器を備えたMetrohm 761 Compact ICイオンクロマトグラフを用いて分析される。Metrohm A Supp 5 250アニオン交換カラムおよび2つのプレカラム(Metrohm A Supp5 およびRP)をアニオン、とりわけHPO
42−を溶離するために使用する。
【0138】
分析は、60gの蒸留水で希釈した0.1gのサンプルを用いて行われる。定量化は外部標準を使用して行われる。
【0139】
3つの合成を行う:
上記実施例1の試験1に従って、RAFT型の制御されたラジカル重合法により調製されたポリアクリル分散剤、
上記実施例1の試験4に従う重合法により調製されたポリアクリル分散剤、
上記実施例1の試験6に従う本発明の方法によって調製されたポリアクリル酸のポリマー溶液。
【0140】
それぞれサンプル1、2および3が得られる。
【0141】
これらのサンプルの分析結果を以下の表1に示す。
【0142】
【表2】
【0143】
サンプル1、即ち、RAFT法によって得られたポリアクリル酸分散剤の分析により、高い量の硫黄含有副産物H
2SおよびCS
2が示され、これはそれらの毒性のために主要な欠点である。
【0144】
サンプル2、即ち、高いNaPO
2H
2を用いる従来技術の方法によって調製されたポリアクリル酸分散剤の分析により、高い残留HPO
42−イオン含有量(5032ppm)が示される。
【0145】
サンプル3、即ち、本発明に係る方法により調製されたポリアクリル酸ポリマー溶液の分析により、H
2SおよびCS
2含有量が検出されないことが示される。同じ分子量に対するリン酸イオンの含有量はサンプル2のポリマーの含有量よりも実質的に低い。このように、ポリマー合成中だけでなく、ポリマー溶液の使用時にヒトおよび環境に対する危険性が大幅に低減される。