特許第6436981号(P6436981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6436981溶液中におけるメタ(アクリル)酸の重合方法、得られたポリマー溶液およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6436981
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】溶液中におけるメタ(アクリル)酸の重合方法、得られたポリマー溶液およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/38 20060101AFI20181203BHJP
   C08F 4/00 20060101ALI20181203BHJP
   C08F 20/04 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   C08F2/38
   C08F4/00
   C08F20/04
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-519390(P2016-519390)
(86)(22)【出願日】2014年11月17日
(65)【公表番号】特表2016-537447(P2016-537447A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】FR2014052929
(87)【国際公開番号】WO2015079140
(87)【国際公開日】20150604
【審査請求日】2017年10月18日
(31)【優先権主張番号】1361631
(32)【優先日】2013年11月26日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513197585
【氏名又は名称】コアテツクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュオー,ジャン−マルク
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−009905(JP,A)
【文献】 特表2008−508384(JP,A)
【文献】 特表2011−530640(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0179262(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 − 2/60
6/00 − 246/00
301/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液中で(メタ)アクリル酸ポリマーを製造する有機溶媒を使用しない方法であって、前記(メタ)アクリル酸ポリマーは8000g/モル未満の分子量および2と5との間の多分散性指数(PI)を有し、次の工程:
a)合成反応器に水を導入する工程、
b)反応器を少なくとも60℃の温度に加熱する工程、
c)連続的かつ同時に反応器に以下の化合物を、式(I)の化合物と(メタ)アクリルモノマーとの間の重量パーセンテージ(重量/重量)が0.1と2.5%との間であるような量で、導入する工程:
c1)重合する(メタ)アクリルモノマー、
c2)重合開始剤系、
c3)式(I)の化合物:、
【化1】
[式中、
XはNa、KまたはHを表し、および
Rは1から5個の炭素原子を含むアルキル鎖を表す]
を含み、工程a)および/または工程c)の間に、次亜リン酸ナトリウムNaPOまたはその誘導体が、NaPOと(メタ)アクリルモノマーとの間の重量パーセンテージ(重量/重量)が2.9と5.8重量%との間であるような総量で合成反応器に導入される方法。
【請求項2】
重合開始剤系c2)が過酸化水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(I)の前記化合物と前記(メタ)アクリルモノマーとの間の重量パーセンテージ(重量/重量)が0.15と2%との間である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
重合工程c)後に反応副産物を除去するいかなる工程も含まない、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
次亜リン酸ナトリウムNaPOは、次亜リン酸ナトリウムNaPOまたはその誘導体と前記(メタ)アクリルモノマーとの間の重量パーセンテージ(重量/重量)が3.3と5.4重量%との間であるような総量で反応器に導入される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
次亜リン酸ナトリウムの全てが、工程a)中に合成反応器に導入される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
得られた(メタ)アクリル酸ポリマー溶液は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定されるように、1.2重量%未満の量で未重合(メタ)アクリルモノマーを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
イオンクロマトグラフィーにより決定されるように、得られた(メタ)アクリル酸ポリマー溶液は、0.4重量%未満の量でリン酸イオンHPO2−を含有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
式(I)の化合物は、RがCHを表し、XがNaを表すものである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
溶液中で(メタ)アクリル酸ポリマーを調製するための有機溶媒を使用しない方法において次亜リン酸ナトリウムNaPOの一部の置換としての式(I)の化合物の使用であって、
【化2】
[式中、
XはNa、KまたはHを表し、および
Rは1から5個の炭素原子を含むアルキル鎖を表す]
前記(メタ)アクリル酸ポリマーが、8000g/モル未満の分子量および2と3との間の多分散性指数(PI)を有し、
式(I)の前記化合物と前記(メタ)アクリルモノマーとの間の重量パーセンテージ(重量/重量)が0.1と2.5%との間であり、および
NaPOと(メタ)アクリルモノマーとの間の重量パーセンテージ(重量/重量)が2.9と5.8重量%との間である、使用。
【請求項11】
有機溶媒を含まない溶液中で(メタ)アクリル酸ポリマーを製造するための次亜リン酸ナトリウムNaPOまたはその誘導体および式(I)の化合物の使用であって、
【化3】
[式中、
XはNa、KまたはHを表し、および
Rは1から5個の炭素原子を含むアルキル鎖を表す]
(メタ)アクリル酸ポリマーが、8000g/モル未満の分子量および2と5との間の多分散性指数(PI)を有し、
式(I)の前記化合物と前記(メタ)アクリルモノマーとの間の重量パーセンテージ(重量/重量)が0.1と2.5%との間であり、および
NaPOと(メタ)アクリルモノマーとの間の重量パーセンテージ(重量/重量)が2.9と5.8重量%との間である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸のラジカル重合の技術分野に関する。より正確には、本発明は、新規なラジカル重合法、そのように得られたポリマーおよび産業上の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル重合法は、慣習的に、重合するモノマー、連鎖移動剤、フリーラジカル源、および場合により触媒を少なくとも1つの溶媒中で接触させることを必要とする。
【0003】
重合方法の主な目的は、それが意図された用途に適した分子量を有するポリマーを得ることである。本発明は8000g/モル未満、例えば、約6000g/モルの分子量を有するポリマーを得ることを目的とする。
【0004】
様々なラジカル重合方法がある。
【0005】
まず、イソプロパノールのような第二級アルコール等の有機溶剤を利用する方法を挙げることができる。それらは揮発性有機化合物(VOC)を生成するため、これらの方法は今日満足できるものではない。一方で、反応の終了時にこれらの溶媒を除去しなければならず、そのためポリマーの工業的調製方法が複雑になる。他方、これらの溶媒は健康および環境に対し非常に有害な影響を有すると認識されており、それらの製造を回避することが求められている。最後に、精製(蒸留)した後でも、微量の溶媒がいまだポリマー溶液中に残る。
【0006】
ポリアクリル酸ポリマーの合成の他の方法は水中で起こり、揮発性有機化合物を発生しない。
【0007】
様々なラジカル重合方法のうち、モノマーのリビング重合を実施する可逆的付加−開裂連鎖移動(RAFT)型の制御されたラジカル重合を挙げることができる。このような方法は、低い多分散性(多分子性)指数(PI)を有するポリマーを得ることを可能にし、このことが低い多分散性指数を有するポリマーを特定の用途に対して特に効果的にする。
【0008】
RAFT型の制御されたラジカル重合を実施し、良好なPIを有する期待される分子量のポリマーを得るためには、反応媒体中に利用可能量の連鎖移動剤を添加すること、即ち、重合する各鎖が連鎖移動剤によって官能化されるような量の連鎖移動剤を用いることが重要である。また、重合が開始する時、即ち、重合反応器が加熱されてラジカルが生成する時に、この連鎖移動剤が既に利用可能であることが重要である。これは、大量の連鎖移動剤がRAFT型の制御されたラジカル重合方法において用いられなければならないことを暗示している。
【0009】
RAFT重合の全ての利点にもかかわらず、連鎖移動剤のこのような量を使用することは、一定の欠点を有する。
【0010】
まず、連鎖移動剤は高価な製品であることが分かっており、得られたポリマーのコストを大幅に上昇させる。
【0011】
また、文献WO02/070571号、WO2005/095466号およびWO2006/024706号に記載されたような硫黄含有連鎖移動剤が使用される場合には、これらの化合物の一部がCSおよびHS型の遊離の硫黄含有副産物に分解され、最終ポリマーの水溶液および工程の流出する水のなかに見られ、そのためヒトおよび環境に悪影響を及ぼす可能性がある。また、水溶液中にこれらの硫黄含有副産物が存在すると、ポリマーの使用の際に、ヒトに有害なガス状放出物が発生する。
【0012】
制御されたラジカル重合の代替のRAFT型方法がある。1つによれば、過酸化水素が開始剤として使用され、例えば、硫酸銅は触媒および連鎖移動剤として使用される。それにもかかわらず、8000g/モル未満、例えば、約6000g/モルの分子量を有するポリマーを達成するためには、大量の触媒を使用する必要があり、それは大量の汚染副産物を生成する。
【0013】
あるいは、チオ乳酸または他のRSHメルカプタンが追加の連鎖移動剤として使用されるが、この場合もやはり、8000g/モル未満、例えば、約6000g/モルの分子量を有するポリマーを得るためには、大量のチオ乳酸またはより一般的には移動剤を使用しなければならない。
【0014】
さらに他の方法は、過酸化水素またはラジカル発生剤の存在下で、連鎖移動剤および還元−酸化剤として、化学式NaPOを有する次亜リン酸ナトリウムに依存する。文献GB771573Alが特に1つのこのような方法を説明している。それは、大量の次亜リン酸ナトリウムを必要とするという主要な欠点を有し、リンの一部はポリマー中にグラフトして見出され、別のリンの一部は処理水中にリン酸塩の形態で見出される。これは、まず、ポリマーの使用の際の欠点であり、第二に、環境への汚染物質である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2002/070571号
【特許文献2】国際公開第2005/095466号
【特許文献3】国際公開第2006/024706号
【特許文献4】英国特許出願公開第771573号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の1つの目的は、8000g/モル未満、例えば、7000g/モル未満の分子量を有する(メタ)アクリル酸ポリマーの調製方法であって、この方法はポリマーの合成中だけでなくポリマー溶液の使用時にもヒトおよび環境への危険性を低減するように、より少ない二硫化炭素または硫化水素型の副生成物を含有する水性ポリマー溶液を得ることを可能にする方法を提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、硫黄およびリンを含有する試薬の使用に関する、処理水中の汚染物質の量を低減することである。
【0018】
本発明の別の目的は、溶媒がなくても、即ち、揮発性有機化合物を発生することもなく、ポリアクリルポリマーの調製方法を提供することである。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、その方法に関連するコストを抑制しつつ、良好なPIを有するポリマーの調製方法を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、未重合モノマーをほとんど含有しない水性ポリマー溶液の調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者は、溶液中で(メタ)アクリル酸ポリマーを製造する無溶媒方法であって、前記(メタ)アクリル酸ポリマーは8000g/モル未満の分子量および2と5との間、例えば、2と3との間の多分散性指数(PI)を有し、次の工程:
a)合成反応器に水を導入する工程、
b)反応器を少なくとも60℃の温度に加熱する工程、
c)連続的かつ同時に反応器に以下の化合物を、式(I)の化合物と(メタ)アクリルモノマーとの間の質量パーセンテージ(重量/重量)が0.1と2.5%との間であるような量で、導入する工程:
c1)重合する(メタ)アクリルモノマー、
c2)重合開始剤系、
c3)式(I)の化合物:
【0022】
【化1】
[式中、
XはNa、KまたはHを表し、および
Rは、1から5個の炭素原子を含むアルキル鎖を表す]
を含み、工程a)および/または工程c)の間に、次亜リン酸ナトリウムNaPOまたはその誘導体が、NaPOと(メタ)アクリルモノマーとの間の質量パーセンテージ(重量/重量)が2.9と5.8重量%との間であるような総量で合成反応器に導入される方法を開発した。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の方法は、実際、8000g/モル未満、例えば、7000g/モル未満、例えば、約6000g/モルの分子量を有するポリマーを得ることができる。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、ポリマーは500g/モルを超える、例えば、1000g/モルを超える分子量を有する。
【0025】
本発明の方法は、有機溶媒なしで行われる。「溶媒」または「有機溶媒」は、使用温度での液相試薬および反応生成物に対し不活性な任意の物質を意味し、その機能は他の物質を化学的に変更することなく、またそれ自体を変更することなく、他の物質を希釈することである。
【0026】
本発明の方法は、まず、使用される式(I)の化合物の量、および第二に合成反応器に試薬を添加する順序に起因して、RAFT型のラジカル重合方法ではないことに留意されたい。このため、本発明の方法は、有利には、一方ではRAFT型のラジカル重合方法から得られたポリマー溶液よりも少ない硫黄含有(メタ)アクリル酸ポリマーを含む水性ポリマー溶液を得ることができ、他方ではこの方法によって得られた溶液自体がRAFT型のラジカル重合方法から得られたポリマー溶液よりも少ないHS−またはCS−型の反応副産物を含む。得られたポリ(メタ)アクリル酸ポリマーの多分散性指数は、RAFT型のラジカル重合方法によって得られたポリマーの多分散性指数よりも高いが、本発明の方法によって得られたそのような水性ポリマー溶液は、RAFT型のラジカル重合方法によって得られた溶液よりも高い純度を有する。
【0027】
このように、本発明の方法は、式(I)の化合物と重合するモノマーの質量パーセンテージが0.1と2.5%との間の値に減っているという事実により、得られたポリマーの汚染およびCS−またはHS−型の汚染副産物の生産を低減することができる。
【0028】
本発明の方法は、本発明の主要な技術的課題の1つを解決すること、即ち、8000g/モル未満、例えば、6000g/モル未満の分子量を有するポリマーの調製方法を提案するができる。
【0029】
本発明の方法は、業界が受け入れ可能な反応時間でより高い転化率を可能にするという利点も有する。本発明の方法の一実施形態によれば、工程c)の反応時間は4時間未満、例えば、3時間未満である。
【0030】
本発明の方法の工程c)は重合開始剤系も利用する。
【0031】
「重合開始剤系」は、モノマーの重合を開始することができる系を意味する。それは、慣習的に、フリーラジカルを生成する能力を有する化合物である。
【0032】
本発明の一態様によれば、重合開始剤系c2)は、過酸化水素、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、ヒドロペルオキシドおよびこれらの化合物の少なくとも2つの混合物からなる群から選択される。
【0033】
本発明の一態様によれば、重合開始剤系c2)は過酸化水素である。
【0034】
本発明の方法の工程c)は、式(I)の少なくとも1つの化合物も利用する。
【0035】
【化2】
式(I)において:
XはNa、KまたはHを表し、および
Rは1から5個の炭素原子を含むアルキル鎖を表す。
【0036】
1から5個の炭素原子を含むアルキル鎖は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、イソブチルまたはペンチル鎖を意味する。
【0037】
本発明によると、式(I)の化合物と(メタ)アクリルモノマーとの間の質量パーセンテージ(重量/重量)は、0.1と2.5%との間である。
【0038】
本発明の一実施形態によると、式(I)の化合物と(メタ)アクリルモノマーの間の質量パーセンテージ(重量/重量)は、0.15と2%との間である。
【0039】
本発明の別の実施形態によれば、式(I)の化合物と(メタ)アクリルモノマーの間の質量パーセンテージ(重量/重量)は、0.15と1.5%との間である。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、式(I)の化合物は、化合物(IV)、即ち、XがNaを表し、RがCHを表す化合物(I)であり、式(I)の化合物と(メタ)アクリルモノマーとの間の質量パーセンテージ(重量/重量)は、0.1と1.75%との間、例えば、0.5と1.5%との間である。
【0041】
本発明の別の実施形態によれば、式(I)の化合物は、化合物(IV)、即ち、XがNaを表し、RがCHを表す化合物(I)であり、式(I)の化合物と(メタ)アクリルモノマーとの間の質量パーセンテージ(重量/重量)は、0.15と1.5%との間である。
【0042】
これらの範囲の限界値は本発明の範囲内に含まれる。
【0043】
これらの成分は合成反応器に「連続的」、即ち、停止することなく、一定または可変速度で導入される。
【0044】
また、これらの成分は合成反応器に「同時」に導入され、即ち、種々の成分が付随して導入される。
【0045】
本発明の方法の一実施形態によると、これらの成分は合成反応器に「比例して」導入され、即ち、合成反応器に導入される混合物の各成分の割合が、混合物の他の成分に対し、反応時に一定のままである。
【0046】
「重合する(メタ)アクリルモノマー」は、本発明の方法が、アクリル酸からもっぱらなるポリマー(アクリル酸のホモポリマー)、もしくはメタクリル酸からもっぱらなるポリマー(メタクリル酸のホモポリマー)、またはアクリル酸およびメタクリル酸の混合物からなるポリマー(アクリル酸−メタクリル酸のコポリマー)のいずれかを生成することを目的とすることを意味する。後者の場合には、本発明の一態様によれば、アクリル酸とメタクリル酸のモル比は1:100と100:1との間、例えば、1:1と100:1との間または1:1と50:1との間で変化することができる。
【0047】
本発明の別の態様によれば、式(I)の化合物は、ジプロピルトリチオカーボネート(DPTTC、CAS番号6332−91−8)またはその塩、例えば、以下の式(IV)によって表される、その二ナトリウム塩(ナトリウムジプロピオネートトリチオカーボネート、CAS番号86470−33−2、Mw=298.31g/モル)である。
【0048】
【化3】
【0049】
本発明の方法は、工程a)および/または工程c)の間、次亜リン酸ナトリウムNaPOまたはその誘導体を、NaPOと前記(メタ)アクリルモノマーとの間の質量パーセンテージ(重量/重量)が2.9と5.8重量%との間であるような総量で合成反応器に導入することも特徴とする。
【0050】
本発明の方法では、次亜リン酸ナトリウムのいずれかの形、即ち、水和物または非水和物でも使用することができる。例えば、無水次亜リン酸ナトリウムNaPOまたは次亜リン酸ナトリウム一水和物NaPO・HOを使用することができる。この場合、使用される量はNaPO・HOと前記(メタ)アクリルモノマーとの間の質量パーセンテージ(重量/重量)は3.5と7重量%との間であるような量である。
【0051】
本発明の一態様によれば、次亜リン酸ナトリウムNaPOは、NaPOと前記(メタ)アクリルモノマーとの間の質量パーセンテージ(重量/重量)が3.3と5.4重量%との間であるような総量で反応器に導入される。
【0052】
本発明の別の態様によれば、次亜リン酸ナトリウムNaPOは、NaPOと前記(メタ)アクリルモノマーとの間の質量パーセンテージ(重量/重量)が4.1と5.4重量%との間であるような総量で反応器に導入される。
【0053】
本発明の方法の一態様によれば、次亜リン酸ナトリウムの全てが、工程a)中に合成反応器に導入される。
【0054】
ポリマーは、一般的に2つのインデックス/大きさ/値によって特徴付けられる:
多分子性指数(PI、多分散性PDとも呼ばれる);および
重量による分子量。
【0055】
多分子性指数は、ポリマー中の種々の巨大分子のモル質量分布に対応する。
【0056】
全ての巨大分子が同じ長さ(従って同じ分子量)を有する場合には、この指数は1に近くなる。他方、巨大分子が異なる長さ(従って異なる分子量)を有する場合には、PIは1より大きい。
【0057】
ポリマーが様々な用途で有効であるように、PI値をできるだけ1に近づけるようにすることが一般に試みられる。
【0058】
それにもかかわらず、本発明の文脈では、ほとんど反応副産物を含まず、「良好なPI」を含む、溶液中のポリマーを得ることが求められる。「良好なPI」は2と5との間、特に1.5と2.8との間のPIを意味する。
【0059】
本発明によれば、記載された方法に従って得られた溶液中のポリマーは、8000g/モル未満の分子量および2と3との間の多分散性指数(PI)を有する。
【0060】
本発明の一態様によれば、反応条件は、重合するモノマーの転化率が98.8%より大きいようなものである。
【0061】
換言すれば、得られた(メタ)アクリル酸ポリマー溶液は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定されるように、1.2重量%未満の量で未重合(メタ)アクリルモノマーを含む。
【0062】
残留モノマー(アクリル酸またはメタクリル酸)の量は、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により評価することができる。この方法では、混合物の構成成分は固定相上で分離され、UV検出器により検出される。検出器が較正されると、残留(メタ)アクリル酸の量を、アクリル化合物に対応するピークの面積から得ることができる。この方法は、特に、M.Chavanne、A.Julien、G.J.Beaudoin、E.Flamandによる操作説明書「Chimie Organique Experimentale」第2版、Editions Modulo、18章、pp.271−325に記載されている。
【0063】
本発明の別の態様によれば、反応条件は、重合するモノマーの転化率が99.7%より大きいようなものである。この場合には、残存モノマー量は0.3%未満または3000ppm(乾燥/乾燥)未満である。
【0064】
本発明の別の態様によれば、反応条件は、重合するモノマーの転化率が99.9%より大きいようなものである。この場合には、残存モノマー量は0.1%未満または1000ppm(乾燥/乾燥)未満である。
【0065】
本発明の一態様によれば、イオンクロマトグラフィーにより決定されるように、得られた(メタ)アクリル酸ポリマー溶液は、0.4重量%未満の量でリン酸イオン(HPO2−)を含有する。
【0066】
本発明の一態様によれば、方法の工程b)に従って、反応器は少なくとも80℃、例えば、90℃から95℃の温度に加熱される。
【0067】
本発明の別の態様によれば、方法は、重合工程c)後に反応副産物を除去するいかなる工程も含まない。
【0068】
本発明の別の目的は、溶液中で(メタ)アクリル酸ポリマーを調製するための無溶媒方法において次亜リン酸ナトリウムNaPOの一部の置換としての式(I)の化合物の使用にある。
【0069】
【化4】
[式中、
XはNa、KまたはHを表し、および
Rは1から5個の炭素原子を含むアルキル鎖を表す]
前記(メタ)アクリル酸ポリマーは、8000g/モル未満の分子量および2と3との間の多分散性指数(PI)を有する。
【0070】
本発明の一態様によれば、溶液中で前記(メタ)アクリル酸ポリマーを調製するための無溶媒の方法は、以下の条件の下で実施される。
式(I)の化合物と前記(メタ)アクリルモノマー(との間の質量パーセンテージ(重量/重量)が0.1と2.5%との間であり、
NaPOと前記(メタ)アクリルモノマーとの間の質量パーセンテージ(重量/重量)が2.9と5.8重量%との間である。
【0071】
本発明の別の目的は、溶液中で(メタ)アクリル酸ポリマーを製造するための次亜リン酸ナトリウムNaPOまたはその誘導体および式(I)の化合物の使用である:
【0072】
【化5】
[式中、
XはNa、KまたはHを表し、および
Rは1から5個の炭素原子を含むアルキル鎖を表す]
前記(メタ)アクリル酸ポリマーは、8000g/モル未満の分子量および2と5との間の多分散性指数(PI)を有する。
【実施例】
【0073】
以下の実施例の各々では、本発明のポリマーの分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定される。
【0074】
このような技術は、検出器を備えたWaters(TM)の商標の液体クロマトグラフィー装置を使用する。この検出器は、Waters(TM)の商標の屈折率濃度検出器である。
【0075】
この液体クロマトグラフィー装置は、検討中の種々の分子量のポリマーを分離するための、当業者によって適切に選択されたサイズ排除カラムを備えている。
【0076】
溶離液相は、0.05MのNaHCO、0.1MのNaNO、0.02Mのトリエタノールアミンおよび0.03%のNaNを含有する1N水酸化ナトリウムによりpH9.00に調整した水相である。
【0077】
詳細には、第1工程に従って、重合溶液はSEC溶離液相に対応するSEC可溶化溶媒中で乾燥基準で0.9%に希釈され、それに0.04%のジメチルホルムアミドをフローマーカーまたは内部標準として添加する。その後、その混合物を0.2μmフィルターに通す。次いで、100μlをクロマトグラフィー装置(溶離液:0.05MのNaHCO、0.1MのNaNO、0.02Mのトリエタノールアミンおよび0.03%のNaNを含有する1N水酸化ナトリウムによりpH9.00に調整した水相)に注入する。
【0078】
液体クロマトグラフィー装置はアイソクラティックポンプ(Waters(TM)515)を含み、その流量は0.8ml/分に設定される。クロマトグラフィー装置は、また、オーブンも含み、それ自体連続するカラムの以下のシステムを含み、即ち、6cmの長さおよび40mmの内径を有するWaters(TM)Ultrahydrogel Guard Columnタイプのプレカラム、ならびに30cmの長さおよび7.8mmの内径を有するWaters(TM)Ultrahydrogelタイプの線形カラムである。次に、検出システムは、Waters(TM)410 RIタイプの屈折率検出器からなる。オーブンを60℃の温度に加熱し、屈折計を45℃に加熱する。
【0079】
クロマトグラフィー装置は、供給者Polymer Standards ServiceまたはAmerican Polymer Standards Corporationに対し認定された種々の分子量のポリアクリル酸ナトリウム粉末標準によって較正される。
【0080】
ポリマーの多分散性指数(PI)は、数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比である。
【0081】
残留モノマーの量は、当業者に知られている従来の技術、例えば、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定する。
【0082】
[実施例1]
この実施例の目的は、
ジプロピオネートトリチオカーボネート(DPTTC)と前記(メタ)アクリル酸モノマー(TM)との間の質量パーセンテージ(重量/重量)が0.1と2.5%との間(本発明)またはこの範囲外(従来技術または本発明外)の前記DPTTC、および
NaPOと(メタ)アクリル酸モノマー(TM)との間の質量パーセンテージ(重量/重量)が2.9と5.8重量%との間(本発明)またはこの範囲外(従来技術または本発明外)となるような総量での次亜リン酸ナトリウムNaPO
を使用する、本発明の(メタ)アクリル酸ポリマーの調製を説明することである。
【0083】
試験1−従来技術:
この試験は、RAFT型の制御されたラジカル重合によるポリマーの調製方法を示す。
【0084】
機械的攪拌機および油浴型のヒーターを備えたガラス合成反応器に、328gの水および94gの29%DPTTC連鎖移動剤(または27gの100%DPTTC、即ち、0.092モル)を充填する。
【0085】
95℃の温度に到達するまで加熱する。
【0086】
2時間かけて、328gの100%のアクリル酸(即ち、4.558モル)と、以下を並行して導入する:
76gの水に溶解した4gの過硫酸ナトリウムNa(即ち、0.017モル)、および
76gの水に溶解した1.15gのメタ重亜硫酸ナトリウムNa(即ち、0.006モル)。
【0087】
その温度を2時間維持し、次いで46gの水で希釈した3.2gの130Vの過酸化水素を注入する。
【0088】
次いで混合物を、撹拌しながら、48gの水で希釈した381gの50%水酸化ナトリウムで中和する。
【0089】
95℃で1時間加熱を再開し、次いで室温まで冷却する。
【0090】
試験2−本発明外
この試験によれば、使用されたDPTTC連鎖移動剤の量は10分の1に減少させる一方、試験1の条件を再現する。
【0091】
機械的攪拌機および油浴型のヒーターを備えたガラス合成反応器に、328gの水および19gの14%DPTTC連鎖移動剤(または2.7gの100%DPTTC、即ち、0.0092モル)を充填する。
【0092】
95℃の温度に到達するまで加熱する。
【0093】
2時間かけて、328gの100%のアクリル酸(即ち、4.558モル)と、以下を並行して導入する:
76gの水に溶解した4gの過硫酸ナトリウムNa(即ち、0.017モル)、および
76gの水に溶解した1.15gのメタ重亜硫酸ナトリウムNa(即ち、0.006モル)。
【0094】
その温度を2時間維持し、次いで46gの水で希釈した3.2gの130Vの過酸化水素を注入する。
【0095】
次いで混合物を、撹拌しながら、48gの水で希釈した381gの50%水酸化ナトリウムで中和する。
【0096】
95℃で1時間加熱を再開し、次いで室温まで冷却する。
【0097】
試験3−従来技術
この試験は文献WO2005/095466(コアテックス)の実施例2の試験2に相当する。
【0098】
機械的攪拌機および油浴型のヒーターを備えた合成反応器に、150gの水および20.31gの14.4%DPTTC連鎖移動剤(または2.92gの100%DPTTC)および50gの100%アクリル酸を充填する。
【0099】
その後、フリーラジカル源、この場合0.4gのV501を添加する。95℃の温度に到達するまで加熱する。その温度を2時間維持し、その後室温まで冷却する。
【0100】
次いで混合物を、55gの50%水酸化ナトリウムで中和する。
【0101】
試験4−従来技術
この試験は、もっぱら次亜リン酸ナトリウム一水和物によるポリマーの製造方法を示す。
【0102】
水(209g)を機械的攪拌機および油浴型のヒーターを備えた合成反応器に充填する。硫酸鉄七水和物(0.1g)および硫酸銅五水和物(0.015g)を添加する。
【0103】
媒体を90℃に加熱し、次いで、
305gのアクリル酸および13gの水、ならびに
32gの水に溶解した25.6gのNaPO・H
を2時間かけて同時に連続的に添加する。
【0104】
混合物を90℃で90分間加熱する。
【0105】
次いで、混合物をpH8まで50%水酸化ナトリウムで中和する。
【0106】
試験5−本発明
機械的攪拌機および油浴型のヒーターを備えた合成反応器に、198gの水および13gのNaPO・HO(即ち、10.8gのNaPO)を充填する。
【0107】
媒体を90℃に加熱し、次いで、
90分間かけて
23.2gの水で希釈した208.6gのアクリル酸、および
13.41gの14%DPTTC二ナトリウム塩(即ち、1.88gの100%DPTTC)の保存溶液、
130分間かけて、132gの水で希釈した7.44gの130V過酸化水素
を同時に連続的に添加する。
【0108】
混合物を90℃で90分間加熱する。
【0109】
混合物を228gの50%水酸化ナトリウムで中和する。
【0110】
試験6−本発明
機械的攪拌機および油浴型のヒーターを備えた合成反応器に、198gの水および12gのNaPO・HOを充填する。
【0111】
媒体を90℃に加熱し、次いで、
90分間かけて
*23.2gの水で希釈した208.6gのアクリル酸、
*13.41gの14%DPTTC二ナトリウム塩(即ち、1.88gの100%DPTTC)の保存溶液、
130分間かけて、132gの水で希釈した7.44gの130V過酸化水素
を同時に連続的に添加する。
【0112】
混合物を90℃で90分間加熱する。
【0113】
混合物を228gの50%水酸化ナトリウムで中和する。
【0114】
試験7−本発明
水(198g)を機械的攪拌機および油浴型のヒーターを備えた合成反応器に充填する。
【0115】
媒体を90℃に加熱し、次いで、
120分間かけて
*208.6gのアクリル酸、
*10.29gの20%DPTTC二ナトリウム塩(即ち、2.05gの100%DPTTC)の保存溶液、
*40gの水に溶解した12.1gのNaPO・HO、
130分間かけて、80gの水で希釈した7.1gの130V過酸化水素
を同時に連続的に添加する。
【0116】
混合物を90℃で90分間加熱する。
【0117】
混合物を228gの50%水酸化ナトリウムで中和する。
【0118】
試験8−本発明
機械的攪拌機および油浴型のヒーターを備えた合成反応器に、198gの水および6.0gのNaPO・HOを充填する。
【0119】
媒体を90℃に加熱し、次いで、
120分間かけて
*208.6gのアクリル酸、
*10.3gの20%DPTTC二ナトリウム塩(即ち、2.06gの100%DPTTC)の保存溶液、
*40gの水に溶解した6.0gのNaPO・HO、
130分間かけて、90gの水で希釈した7.1gの130V過酸化水素
を同時に連続的に添加する。
【0120】
混合物を90℃で90分間加熱する。
【0121】
混合物を228gの50%水酸化ナトリウムで中和する。
【0122】
試験9−本発明
機械的攪拌機および油浴型のヒーターを備えた合成反応器に、198gの水および10.4gのNaPO・HOを充填する。
【0123】
媒体を90℃に加熱し、次いで、
120分間かけて
*208.6gのアクリル酸、
*15.6gの20%DPTTC二ナトリウム塩(即ち、3.12gの100%DPTTC)の保存溶液、
130分間かけて、90gの水で希釈した7.1gの130V過酸化水素
を同時に連続的に添加する。
【0124】
混合物を90℃で90分間加熱する。
【0125】
混合物を228gの50%水酸化ナトリウムで中和する。
【0126】
試験10−本発明
機械的攪拌機および油浴型のヒーターを備えた合成反応器に、198gの水および8.3gのNaPO・HOを充填する。
【0127】
媒体を90℃に加熱し、次いで、 120分間かけて
*208.6gのアクリル酸、
*15.6gの20%DPTTC二ナトリウム塩(即ち、3.12gの100%DPTTC)の保存溶液、
130分間かけて、90gの水で希釈した7.1gの130V過酸化水素
を同時に連続的に添加する。
【0128】
混合物を90℃で90分間加熱する。
【0129】
混合物を228gの50%水酸化ナトリウムで中和する。
【0130】
試験11−本発明
機械的攪拌機および油浴型のヒーターを備えた合成反応器に、198gの水および10.4gのNaPO・HOを充填する。
【0131】
媒体を90℃に加熱し、次いで、 120分間かけて
*208.6gのアクリル酸、
*26.1gの20%DPTTC二ナトリウム塩(即ち、5.22gの100%DPTTC)の保存溶液、
130分間かけて、90gの水で希釈した7.1gの130V過酸化水素
を同時に連続的に添加する。
【0132】
混合物を90℃で90分間加熱する。
【0133】
混合物を228gの50%水酸化ナトリウムで中和する。
【0134】
【表1】
【0135】
[実施例2]
この実施例の目的は、従来技術のポリマー溶液または本発明のポリマー溶液を使用する種々のサンプルの二硫化炭素、硫化水素およびリン酸イオン含有量を説明することである。
【0136】
種々のサンプルは、Agilent G2577A質量分析検出器に連結されたAgilent G1530ガスクロマトグラフを使用して分析される。注入は、Agilent G1888ヘッドスペースサンプル採取器によって行われる。Agilent HP5 カラム(30m×0.25mm×1μm;5%フェニルおよび95%メチルシロキサン相)を使用し、分析物の溶離を可能にする。分析は2グラムのサンプルそのままを用いて行われる。定量化は標準的な添加方法によって行われる。
【0137】
種々のサンプルはまた、導電率検出器、化学的抑制器およびCO抑制器を備えたMetrohm 761 Compact ICイオンクロマトグラフを用いて分析される。Metrohm A Supp 5 250アニオン交換カラムおよび2つのプレカラム(Metrohm A Supp5 およびRP)をアニオン、とりわけHPO2−を溶離するために使用する。
【0138】
分析は、60gの蒸留水で希釈した0.1gのサンプルを用いて行われる。定量化は外部標準を使用して行われる。
【0139】
3つの合成を行う:
上記実施例1の試験1に従って、RAFT型の制御されたラジカル重合法により調製されたポリアクリル分散剤、
上記実施例1の試験4に従う重合法により調製されたポリアクリル分散剤、
上記実施例1の試験6に従う本発明の方法によって調製されたポリアクリル酸のポリマー溶液。
【0140】
それぞれサンプル1、2および3が得られる。
【0141】
これらのサンプルの分析結果を以下の表1に示す。
【0142】
【表2】
【0143】
サンプル1、即ち、RAFT法によって得られたポリアクリル酸分散剤の分析により、高い量の硫黄含有副産物HSおよびCSが示され、これはそれらの毒性のために主要な欠点である。
【0144】
サンプル2、即ち、高いNaPOを用いる従来技術の方法によって調製されたポリアクリル酸分散剤の分析により、高い残留HPO2−イオン含有量(5032ppm)が示される。
【0145】
サンプル3、即ち、本発明に係る方法により調製されたポリアクリル酸ポリマー溶液の分析により、HSおよびCS含有量が検出されないことが示される。同じ分子量に対するリン酸イオンの含有量はサンプル2のポリマーの含有量よりも実質的に低い。このように、ポリマー合成中だけでなく、ポリマー溶液の使用時にヒトおよび環境に対する危険性が大幅に低減される。