特許第6437067号(P6437067)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437067
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】自動巻き式腕時計
(51)【国際特許分類】
   G04C 1/00 20060101AFI20181203BHJP
   G04B 5/16 20060101ALI20181203BHJP
   G04C 10/02 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   G04C1/00
   G04B5/16
   G04C10/02 Z
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-174621(P2017-174621)
(22)【出願日】2017年9月12日
(65)【公開番号】特開2018-54605(P2018-54605A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2017年9月12日
(31)【優先権主張番号】16190915.5
(32)【優先日】2016年9月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】リオネル・トンベ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ジャック・ボルン
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・ウィルマン
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・ウィンクレ
(72)【発明者】
【氏名】リオネル・パラット
【審査官】 藤田 憲二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−020071(JP,A)
【文献】 特開平11−295447(JP,A)
【文献】 米国特許第05278806(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 1/00−99/00
G04B 1/00−99/00
G04G 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレルばねの巻きデバイス(1)に接続されたムーブメントを有する自動巻き式腕時計であって、
軸Aのまわりを回転する振動錘(2)と、
バレルにトルクを伝達するように前記振動錘(2)と連係する減速車列(7)と、
電気エネルギーを格納する少なくとも1つのエネルギー格納ユニット(4)と、
周辺光を受け前記エネルギー格納ユニット(4)をチャージするように構成している少なくとも1つの光電池(3)と、
前記エネルギー格納ユニット(4)の端子に接続される制御回路(5)と、及び
前記制御回路(5)に接続され、前記振動錘(2)に連結されて前記振動錘(2)を動かせる駆動手段(6)とを有し、
前記エネルギー格納ユニット(4)、前記制御回路(5)及び前記駆動手段(6)は、前記振動錘(2)にて一体化されている
ことを特徴とする腕時計。
【請求項2】
前記駆動手段(6)は、当該腕時計と連係するように構成している少なくとも1つのマイクロモーターを有し、これによって、前記軸Aのまわりに前記振動錘(2)を動かせる
ことを特徴とする請求項1に記載の腕時計。
【請求項3】
前記駆動手段(6)は、当該腕時計と一体化された歯付きリング(60)を有し、この歯付きリング(60)は、少なくとも1つのマイクロモーターと連係する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の腕時計。
【請求項4】
前記少なくとも1つのマイクロモーターは、歯付きリング(60)と噛み合うピニオン(61)を支持する伝動軸を有する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の腕時計。
【請求項5】
前記歯付きリング(60)は、前記ムーブメントの直径と同じ又は前記ムーブメントの直径よりもわずかに大きい直径を有する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の腕時計。
【請求項6】
前記駆動手段(6)は、当該腕時計と連係するように構成している多極車(62)を有し、これによって、前記軸Aのまわりに前記振動錘(2)を動かせる
ことを特徴とする請求項1に記載の腕時計。
【請求項7】
前記駆動手段(6)は、強磁性体によって作られた歯付きリング(63)を有し、この歯付きリング(63)は、当該腕時計と一体化されており、前記多極車(62)と連係する
ことを特徴とする請求項6に記載の腕時計。
【請求項8】
前記エネルギー格納ユニット(4)は、スーパーキャパシター、キャパシター、インダクター又は電池を有する
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の腕時計。
【請求項9】
前記光電池(3)は、前記振動錘(2)にマウントされる
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の腕時計。
【請求項10】
当該腕時計上にて前記光電池(3)が組み付けられる
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動巻きデバイスの技術分野に関する。本発明は、より詳細には、周辺光のエネルギーによって、例えば、光電池によって、計時器のバレルばねを巻くことができるデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも1つの時間指示をする機構のアセンブリーにエネルギーを供給するために、腕時計用ムーブメントには駆動手段が必要である。
【0003】
この駆動手段は、機械式腕時計の場合、メインばねないしバレルばねであり、これは、手動操作される巻き機構の作用によって、又は着用者の運動が減速車列に接続された回転錘を介してバレルばねに伝達されることによって、巻かれる。本発明は、振動錘を用いる自動巻き式の計時器用ムーブメントに関する。
【0004】
振動錘は、振動錘が発生させるエネルギーを用いてばねを巻くことができる。その回転方向は、どの機構に接続されるかに応じて、単一方向のみ又は両方向である。
【0005】
一般的には、振動錘は、シャフト上で回転自在にガイドされアンバランスがあるようにマウントされる。この振動錘が、巻き方向と呼ばれる第1の回転方向に動くと、この振動錘は、バレルのばねを巻く伝達車列を駆動する。振動錘が、自由方向と呼ばれる反対方向に動くと、この振動錘は、ばねの伝達車列に作用しなくなり、自由に回転することができるようになる。着用者が運動をしていないと、振動錘は、いくつかの振動の後に、その均衡位置に戻る。アンバランスのためである。これによって、振動錘が巻き方向に動くごとに、振動錘がばねを巻くことができる。
【0006】
腕時計の着用者の腕の運動によって、一方の回転方向又は他方の回転方向に振動錘を回転させて、エネルギーを回復させることができる。
【0007】
また、振動錘を動かしてバレルばねを巻くことを可能にするように意図されたモーターを有するような自動巻きデバイスが知られている。欧州特許文献EP0320754に、このようなデバイスが記載されている。しかし、ばねを巻くために必要なトルクは非常に大きく、このことによって、パワーがあって、したがって、かさばるモーターが必要となったり、厄介である高いギア比が必要になったりする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、特に、これらの既知の技術の様々な短所を改善することである。
【0009】
より詳細には、本発明は、バレルばねを巻くために必要なトルクを低減させることを可能にする自動巻きデバイスを提供することを目的とする。
【0010】
本発明の別の目的は、着用していないときに腕時計を巻いて稼働状態を維持して、また、着用しているときに振動錘の機能を保持することである。
【0011】
本発明は、さらに、既存のムーブメントの振動錘を大きな変更なしで置き換えることができるような「プラグアンドプレイ」デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的や下の説明を読むことで明確になる他の目的は、バレルばねの巻きデバイスに接続されたムーブメントを有する本発明に係る自動巻き式腕時計であって、
* 軸Aのまわりを回転する振動錘と、
* バレルにトルクを伝達するように前記振動錘と連係する減速車列と、
* 電気エネルギーを格納する格納ユニットと、
* 周辺光を受け前記格納ユニットをチャージするように構成している光電池と、
* 前記電気エネルギー格納ユニットの端子に接続される制御回路と、及び
* 前記制御回路に接続され、前記振動錘に連結されて前記振動錘を動かせる駆動手段と
を有するものによって達成される。
【0013】
本発明によると、前記格納ユニット、前記制御回路及び前記駆動手段は、好ましくは、前記振動錘にて一体化されている。
【0014】
本発明の他の好ましい変形態様によると、以下の特徴を有する。
* 前記駆動手段は、当該腕時計と連係するように構成している少なくとも1つのマイクロモーターを有し、これによって、軸のまわりに前記振動錘を動かせる。
* 前記駆動手段は、当該腕時計と一体化された歯付きリングを有し、この歯付きリングは、前記駆動手段と連係する。
* 前記駆動手段は、前記歯付きリングと噛み合うピニオンを支持する伝動軸を有する。
* 前記歯付きリングは、前記ムーブメントの直径と同じ又は前記ムーブメントの直径よりもわずかに大きい直径を有する。
* 前記駆動手段は、当該腕時計と連係するように構成している多極車を有し、これによって、軸Aのまわりに前記振動錘を動かせる。
* 前記駆動手段は、強磁性体によって作られた歯付きリングを有し、この歯付きリングは、当該腕時計と一体化されており、前記多極車と連係する。
* 前記エネルギー格納ユニットは、スーパーキャパシター、キャパシター、インダクター又は電池を有する。
* 前記光電池は、好ましくは、前記振動錘の可視面にマウントされる。しかし、例えば、光透過性のムーブメントにおいて、別の面にマウントすることができる。
* 当該腕時計上にて前記光電池が組み付けられる。
【0015】
また、本発明は、本発明を適用可能なすべての計時器に関する。
【0016】
図面を参照しながら例として与えられる本発明の特定の実施形態(これに限定されない)についての以下の説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に基づく腕時計に取り付けられる巻きデバイスの概略図である。
図2】本発明の第2の実施形態に基づく腕時計に取り付けられる巻きデバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示した特に有利なアプリケーションのフレームワークの範囲内にて、本発明に係る腕時計の実施形態について説明する。巻きデバイス1は、伝統的な機械式腕時計用ムーブメントに接続され、このアセンブリーは、巻きエネルギーが、腕時計の着用者の腕の運動によって作られる代わりに、又はこれに加えて、周辺光によって供給されるような自動腕時計を形成している。したがって、腕時計は、着用されているときに巻かれたり、腕時計が光エネルギーを受けた後すぐに巻かれたりする。
【0019】
巻きデバイス1は、光電池3を用いて、自然又は人工の周辺光から電気エネルギーへとエネルギーを変換し、また、腕時計を着用していないときに光を受けるように光電池3を腕時計の振動錘2上に配置することができ、また、腕時計を着用していないときに表盤側から光を受けるように光電池3を表盤側に配置することができる。当業者は、さらに、これらの両方の組み合わせを想到することができる。光電池3は、電流を供給するように直列及び/又は並列に接続されたいくつかの基本セルを備えることができる。例えば、ヘテロ接合タイプのセルである。この電流は、腕時計が部分光又は完全な太陽光の下に位置するかどうかに応じて、相当に大きい割合において変化することができる。
【0020】
電気エネルギー格納ユニット4は、光電池3に接続しており、これによって、この光電池3によって作られるエネルギーを格納する。電気エネルギー格納ユニット4は、充電式電池、スーパーキャパシター、又は単純なセラミックスキャパシター又はインダクターの形態であることができる。そして、光電池2及び電気エネルギー格納ユニット4は、制御回路5に接続され、この制御回路5は、その出力にて駆動パルスを駆動手段6に供給する。
【0021】
第1の実施形態によると、駆動手段6は、時計製造業において周知なブラシレスタイプのマイクロモーター又はラベット(Lavet)タイプのステッピングモーターを有し、あるいは例えば、軸方向のフラックスモーターや圧電タイプのモーターを有し、マイクロモーターは、伝動軸を有し、この伝動軸の端にてピニオン61がマウントされ、このピニオン61は、歯付きリング60と連係するように、又は腕時計において形成され又は腕時計にて組み立てられた歯付き区画と連係するように、構成している。このように、マイクロモーターがアクティブであるときに、マイクロモーターは、軸Aのまわりに振動錘2を動かせる。このことには、自動巻き式の機械式腕時計において一般的に用いられる減速車列7を通してバレルばねを巻く効果がある。このような手法の利点は、既知のデバイスにおいて必要とされるトルクよりもはるかに小さいトルクしか必要としないということである。これは、車列7によって発生する減速に起因している。
【0022】
図2に示す第2の実施形態によると、駆動手段6においては、マイクロモーターによって駆動される複数の磁石又は一体化された磁石によって構成している車62と、腕時計と一体化された強磁性体の切り欠き付き車63との間の磁気結合が発生し、車62の磁石は、切り欠き付き車63の切り欠きによって引きつけられ、このことによって、いずれの接触もなく振動錘2を駆動する。
【0023】
磁気結合の力は、高々バレルばねの最大トルクよりも小さい特定のトルクまでのトルクで振動錘2を駆動するように選択される。このことによって、ばねの応力付与を防ぎ、着用しているときに振動錘2がその巻き仕事をすることが可能になる。また、接触がないことは、衝撃を受けたときにギヤの歯に対する相当に大きな応力を回避することができることを意味する。なぜなら、振動錘2の大きな慣性のためである。
【0024】
電気エネルギー格納ユニット4が初期に放電しており、光電池3に光が当てられるとすると、光電池3によって供給される電流には、電気的な格納ユニット4をチャージし、この格納ユニット4の電圧又は電流を増加させる効果がある。特定の時間の後に、格納ユニット4の端子における電圧又は電流が基準値に対応する値に達していると、回路5は、所定の時間間隔の間に格納ユニット4の端子を駆動手段6の端子に接続する回路ブレーカーとしてはたらく。そして、格納ユニット4は、明確に定められた駆動パルスを駆動手段6に供給して、駆動手段6を一又は複数のステップ進ませる。
【0025】
好ましいことに、腕時計の姿勢に応じて伝達を制御することができる。腕時計が水平姿勢となっているときないし平坦に横たわっているときに、重力の影響は無視でき、振動錘2は連続回転するようにされる。腕時計が鉛直姿勢であるときないし一方の端を下にして直立しているときに、振動錘2は、特定の角度、例えば、90°、から巻かれ、その後に放されて、これによって、振動錘2が、その均衡位置に戻るまでに、重力の影響の下で振動するようにされる。均衡位置に達すると、サイクルが再び始まる。例として、通常の光の状態では、マイクロモーターは、毎秒約25ステップを実行することができる。一般的には、ばねを巻くのにバレルを5回転させることで十分である。これは、振動錘の500ターンに対応する。これは、すなわち、マイクロモーターの250000ステップ、また、振動錘の1ターン当たり500ステップに対応する。したがって、バレルばねを巻くのに約3時間あれば十分である。
【0026】
本発明の別の特定の実施形態によると、腕時計には、意図的にシェード付けされた領域があり、これによって、光電池3から光を周期的に奪って、駆動手段6に供給するために必要なパルスを発生させる。このような変形態様によって、電子回路5を回避することができる。
【0027】
本発明の変形態様の1つによると、電子回路5は、供給されるエネルギー量、及び/又はモーターに供給するために必要な電流プロファイル、及び/又は実行したステップ数を測定する手段を有し、これによって、モーメント又はバレルが完全に巻かれたことを検出する。このモーメントが検出されると、電子回路5は、マイクロモーターにパルスを送ることを止めて、バレルばねを劣化させないようにする。
【0028】
巻きデバイス1に接続された腕時計用ムーブメントは、それ自身、バレルばねと、ばねによって駆動される車列と、ムーブメントのいくつかの車の回転を安定させるように前記車列によって振動する発振器セットと、及びこの車列によって制御される時間ディスプレーとを有する。そして、バレルばねは、歯車列7につながれて、駆動手段6によって実行される各ステップで巻かれる。このように、ムーブメントと巻きデバイスは、十分に機能するために、典型的には約150/200ルクスである周辺光しか必要としない自律的な自動腕時計の心臓部を形成する。
【0029】
本発明の別の変形態様によると、振動錘2は、コイルを有し、これによって、振動錘2自身がモーターのローターを形成する。ステーターは、いくつかの磁石を有するリングによって形成され、これによって、モーターなしで振動錘2自身が動くことが可能になり、電子回路5が磁界を作るようにコイルに電流を供給する。
【0030】
本発明のこれらの異なる態様によって、エネルギーの観点で自律的であるような自動腕時計が提供される。これは、腕時計を着用していないときであっても、時間を連続的に指示し、また、バレルばねを巻くためにいずれの特定の行為をも必要としない。
【0031】
本発明は、もちろん、図示した例に制限されず、当業者に明らかな様々な変形態様及び改変が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 巻きデバイス
2 振動錘
3 光電池
4 エネルギー格納ユニット
5 制御回路
6 駆動手段
7 減速車列
60 歯付きリング
61 ピニオン
62 多極車
63 歯付きリング
図1
図2