(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437071
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】磁気的クランプデバイスを有する腕時計
(51)【国際特許分類】
G04C 3/00 20060101AFI20181203BHJP
G04C 23/02 20060101ALI20181203BHJP
G04G 17/06 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
G04C3/00 J
G04C23/02
G04G17/06
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-184571(P2017-184571)
(22)【出願日】2017年9月26日
(65)【公開番号】特開2018-63244(P2018-63244A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2017年9月26日
(31)【優先権主張番号】16193192.8
(32)【優先日】2016年10月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・ラゴルゲット
【審査官】
深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭51−158329(JP,U)
【文献】
特開平10−334881(JP,A)
【文献】
特開2008−277096(JP,A)
【文献】
特開平11−051028(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3188425(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0051193(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 3/00
G04C 23/02
G04G 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレート(2)及び電池(4)によってパワー供給される電子式モジュール(3)を有するケース(1)と、
前記電子式モジュール(3)に前記電池(4)を電気的に接続する導電体(6、7)と、及び
前記電池(4)と前記導電体(6、7)の間の電気接続を確実にするクランプデバイスとを備える腕時計であって、
前記クランプデバイスは、磁石(9、10、11、12、13)を有し、
前記磁石は、前記磁石と前記導電体(6、7)の間の導電性を確実にし、
前記導電体(6、7)は、フレキシブルで平型ケーブルのFFCである
ことを特徴とする腕時計。
【請求項2】
前記導電体(6、7)は、前記磁石(9、10、11、12、13)に固定される
ことを特徴とする請求項1に記載の腕時計。
【請求項3】
前記導電体(6、7)は、前記磁石(9、10、11、12、13)と前記電池(4)の間に配置される
ことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の腕時計。
【請求項4】
前記磁石(9、10、11、12、13)は、導電体(6、7)と電池(4)の間に配置される
ことを特徴とする請求項2に記載の腕時計。
【請求項5】
前記磁石(9、10、11、12、13)は、導電性面を有する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の腕時計。
【請求項6】
前記磁石(9、10、11、12、13)は、導電材料で作られている
ことを特徴とする請求項5に記載の腕時計。
【請求項7】
前記磁石(9、10、11、12、13)は、金めっきされている
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の腕時計。
【請求項8】
前記導電体(6、7)は、他と電気的に絶縁される処理をされている
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の腕時計。
【請求項9】
前記磁石(9、10、11、12、13)は、その長さがその厚みの少なくとも5倍であるような磁性細長材である
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の腕時計。
【請求項10】
電池を保持するように構成しているOリングジョイント(8)を有する
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器の分野に関する。本発明は、特に、ボタンセル電池によってパワー供給される電子式モジュールを有する腕時計に関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの電子式腕時計は、いわゆる「ボタンセル」電池によってパワー供給されるムーブメントを有する。このようなボタンセル電池の寿命には限りがあり、したがって、定期的に交換しなければならない。電池は、一般的には、腕時計プレートに形成された円筒状のハウジングの内側に配置される。恒久的な電気接触をさせ電池を所定位置に保持するために、金属製クランプを用いて電池の側方から大きな圧力を与える。このようなクランプは、スタンピングし曲げることによって作られ、それらのクランプの幾何学的構成は、それらと連係するように意図された電池の幾何学的構成及びムーブメントに具体的に適応するようにされる。しかし、このようなクランプデバイスには、いくつかの課題がある。このようなクランプデバイスは、一般的には、同じクランプを異なる大きさの電池に利用することができない。このため、交換用電池は、元の電池とあらゆる点で同じでなければならない。製品が変わるごとに、高価なスタンピング工具を作らなければならない。このようなクランプは、比較的脆弱であり、寸法が小さいために取り扱いが難しい。電池を交換するときに、このようなクランプは、ユーザーによって偶発的に変形されたり壊されたりすることがある。電池を交換するときに、接触しなくなって、腕時計の部分的又は全体的な不具合を発生させてしまうことがある。スイス特許CH508909又はフランス特許FR2460499には、このような金属製クランプの例示的実施形態が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、電池、特に、ボタンセル電池、によって形成されるエネルギー源のための新規なタイプのクランプデバイスを有する電子式ムーブメント又は電子式モジュールを備える腕時計を提案することによって、従来技術についての前記のような課題を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このために、本発明は、プレート及び電池、特に、ボタンセルタイプの電池、によってパワー供給される電子式モジュールを有するケースと、前記電池を前記電子式モジュールに電気的に接続する導電体と、及び前記電池と前記導電体の間の電気接続を確実にするクランプデバイスとを有する腕時計に関する。本発明に独自な形態にて、前記クランプデバイスは、磁石を有する。
【0005】
この設計には、電池交換を促進し保護し、異なる大きさの電池に適合させることができるという利点がある。
【0006】
添付の図面を参照しながら例として示す実施形態(これに限定されない)の説明を読むことで、本発明の他の特徴及び利点も理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る腕時計のムーブメントの下方からの斜視図である。
【
図2】本発明に係る腕時計の1つの変形態様の断面図である。
【
図3】本発明に係る腕時計の1つの変形態様の断面図である。
【
図4】本発明に係る腕時計の1つの変形態様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に、腕時計の電子式ムーブメント又は電子式モジュールを示しており、そのプレート2には、円筒状の凹部5が設けられており、この凹部5は、伝統的にはプリント回路ボードである電子式モジュール3にパワー供給するように意図されたボタンセル電池4を収容している。切り欠き14によって、電池をそのハウジングから取り外すことが容易になる。平型のフレキシブルケーブルの形態である導電体6は、電子式モジュール3を電池4の電極に電気的に接続するように意図されている。導電体6の第1の端6aは、典型的にはコネクターやはんだを用いて、電子式モジュール3に接続している。導電体6の第2の端部6bには、目で見える導電性面があり、これは、電池4の壁4aと接触する。電池4の第2の電極への接続を示していない。磁石10の形態であるクランプデバイスは、強磁性体で作られている電池4の壁4aに対向しているコネクター端部6bに接するように配置される。磁石10と壁4aの間の磁化力によって、コネクター6の端部6bが電池4の壁4aに対して押され保持されることが可能になる。
【0009】
図2は、本発明に係る腕時計の概略断面図を示しており、本発明を理解するために役立つ詳細部分のみを示しているこの腕時計は、ケース1と、及びケース1内に位置するムーブメントとを有する。ケース1においては、ケース中間部及び風防のみを示している。電子式モジュール3は、プレート2にマウントされる。電子式モジュール3は、プレートに形成された凹部5内に位置するボタンセル電池4によってパワー供給される。導電体6、7は、電池4の2つの端子を電子式モジュール3に接続する。
【0010】
本発明の特定の実施形態によると、電池4は、凹部5の壁に設けられた溝内に配置されたOリングジョイント8によって、凹部5内の適所に保持される。電池を保持するために、変形可能な弾性手段のような任意の他の固定手段も用いることができることは明らかである。
【0011】
図1に示す構成に対応する第1の変形態様によると、導電体6の一方の端部6bが、磁石10と電池4の間でクランプされる。端部6bには、好ましくは、金めっきされた、目で見える導通路があり、これは、磁石10が与える圧力によって電池4と接するように保持される。導電体6は、平型のフレキシブルFFCケーブルであるが、ワイヤーや金属製クランプであることもできる。組み立てを促進し、また、導電体6の端部6bが不適切な位置に配置されたり磁石10の下に動いたりするリスクをなくすために、はんだや接着結合のような任意の手段によって、磁石10を端部6bに固定することができる。
【0012】
第2の変形態様によると、導電体7の一方の端7bは、磁石9に固定され、この磁石9は、磁力によって電池4の片側に固定される。この構成において、磁石9は、導電材料で作られ又は金めっきのような導電性面で被覆されて、これによって、電池4から導電体7へと電流を流す。磁石に対する導電体の固定は、好ましくは、ロボット的な「ピックアンドプレイス」はんだ付け手段によって、はんだ付けによって達成される。導電体7又はその端7bのみが、金属製クランプによって形成される場合、磁石9をそのクランプ上にクリンプすることもできる。導電体7の他方の端7aは、はんだ又は電流を流すことを可能にする任意の他の組み立て手段によって、電子式モジュール3に接続している。
【0013】
図3は、本発明の他の変形態様を示している。第3の変形態様によると、磁石11は、その長さがその厚みの少なくとも5倍であるような磁性細長材である。好ましくは、磁性細長材は、フレキシブルな細長材である。厚みが薄い磁性細長材に発生する磁力の圧力が減少しても、磁化された表面積が増加するので、合計の接触力が伝統的な磁石のものと同じであるほどに、打ち消される。この種の磁石は、同じ磁化力を有する堅固な磁石と比較して、大幅に縮小されたトラクション力で、徐々にはがすことができるという利点がある。したがって、このことによって、磁石が分離されたときに導電体6が引きはがされるリスクを抑えられる。また、厚みが薄いことに起因して、磁性細長材11を用いることによって、本発明を極めて薄い腕時計にて実装することが可能になる。
【0014】
ここまでに示した様々な手法によって、取り外し可能なクランプデバイスが、ボタンセル電池と導電体の間の電気接続を確実にすることができる。
図3及び4に示す本発明の別の有利な態様によると、任意の適切な手段によって磁石12がプレート2に固定される。代わりに、磁石は、ケース中間部のような腕時計の別の固定された部分と一体化されていることができる。導電体6は、上記の構成の1つにおいて、電池4をモジュール3に電気的に接続する。この特定の構成において、クランプデバイスは、電池4と電子式モジュール3の間の電気接続を確実にすることに加えて、プレート2にある凹部5内の適所にボタンセル電池4を保持する。磁化力は、他の保持する手段の使用を必要とせずに電池の固定を確実にするためには、十分な大きさである。電池4の周部に圧力をかけて傾けることによって、又は切り欠き14に適切な工具を挿入することによって、電池4を磁石12から取り外すことができる。このようにして、腕時計における電池4の挿入及び取り外しが促進される。
【0015】
図4に示す別の変形態様によると、磁石13は、磁石12に対向している電池4の側とは反対側の電池4の側に電気的に接続される電池4の側面に対向するように位置している。二面角を形成する磁石又は平行ではない面を有する2つの磁石によって、ムーブメントと平行な平面における電池4の位置合わせを行うことができる。腕時計ケースは、さらに、電池ハッチ16を有する裏蓋15を有する。ハッチ16が外されて、単に凹部5内に電池4を置くことによって、電池4が適切な位置にセットされる。腕時計内のいずれの要素も扱う必要がなく、磁石12及び13の作用を通して、電池4の最終的な配置及び電気接続が自動的に行われる。この構成によって、電池の挿入及び接続を単純化し、腕時計が開かれたときに発生するムーブメントや導電体を損傷させてしまうリスクをなくすことができる。
【0016】
図示した複数の変形態様において、ボタンセル電池4は、ムーブメントと平行に配置されている。しかし、ボタンセル電池4を別の向き、例えば、ムーブメントに垂直な向き、に配置することもできる。
【0017】
電池の各電極に対して電気的にクランプするために、図示した複数の変形態様や従来技術の態様を組み合わせることができることは明らかである。具体的には、磁石を用いて電池の底部に第1のクランプを作り、弾性変形する金属製細長材を用いて電池の側面に第2の電気的なクランプを作ることができる。
【0018】
好ましいことに、磁化力が一定であるために、本発明の磁気的クランプデバイスによって、恒久的な電気接触を達成することができ、また、接触不良のリスクをなくすことができる。このような接触不良は、従来技術のクランプにおいて時間にわたっての弾性応力の緩和によって又は電池交換時のクランプの操作ミスに起因する何らかの塑性変形によって発生する。本発明の磁気的クランプデバイスは、磁化された接触部の取り扱いを容易にして、又は電池を接続するための人の操作をなくすことによって、腕時計における電池を交換する操作を単純化し保護する。
【0019】
ボタンセル電池は、円筒形であり、厚みや直径は可変である。電池に対する導電体のクランプが電池の表面上の磁化力によって達成されるので、このクランプは、クランプの作用を受ける側とは反対の側に対して反力が与えられるような機械的なクランプの場合のように電池の寸法に依存するということはない。好ましいことに、従来技術の解決策とは異なり、本発明の磁気的クランプデバイスによって、直径や厚みが異なる電池を使用することができる。電池を保持することができる固定磁石を備えた構成は、異なる大きさの電池を用いるために特に適している。
【0020】
代わりに、導電体と磁石を有する同じクランプデバイスは、異なる大きさの電池を受けるように意図された異なる腕時計において用いることができる。このことによって、既存のクランプを再使用することによって、新しい腕時計を作っているときに、特定の高価な工具を使用することを抑えることができる。
【0021】
好ましいことに、本発明において用いられる導電体は、従来技術のクランプとは異なり、フレキシブルであり、他と電気的に絶縁される。その結果、ムーブメントの設計及び2つの導電体の互いに対する構成が単純化される。これらの導電体は、例えば、
図3におけるように、電子式モジュールの同じ側の接近している2点にてそれぞれ容易に接続されることができ、また、追加の絶縁体を設ける必要がなく互いに近くに配線されることができる。また、電子式モジュールの位置に対して離れた位置であって独立した形態で電池を配置し、腕時計におけるあらゆる位置に電池を配置することが容易になる。
【0022】
このように、製造コストを削減しつつ電池交換操作を促進し保護するような融通が利く電気的なクランプデバイスを搭載する電子式腕時計を提案した。
【符号の説明】
【0023】
1 ケース
2 プレート
3 電子式モジュール
4 電池
5 凹部
6、7 導電体
8 Oリングジョイント
9、10、11、12、13 磁石
14 切り欠き
15 裏蓋
16 電池ハッチ