(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対象において局所化された脂肪沈着を非手術的に除去するための製剤であって、前記製剤は、8未満のpHを有する薬学的に許容される製剤において脂肪溶解濃度のコレート及びケノデオキシコレートのうち1以上を含み、前記コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上は、脂肪溶解のための活性成分として使用される、製剤。
前記製剤は、前記コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上が約0.5%ないし約4.0%の濃度を有するものである、対象において局所化された脂肪沈着を非手術的に除去するための請求項1または2に記載の製剤。
前記製剤は、前記コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上が約0.5%ないし約2.0%の濃度を有するものである、対象において局所化された脂肪沈着を非手術的に除去するための請求項1〜3のいずれか1項に記載の製剤。
抗炎症剤、鎮痛剤、分散剤、透過増強剤、及びその組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加的な活性成分をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製剤。
抗微生物剤、抗血栓剤、抗凝集剤、泡抑制剤、抗炎症剤、麻酔剤、鎮痛剤、ステロイド、鎭静剤、抗分散剤、筋肉弛緩剤、及びその組み合わせからなる群から選択される治療剤をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製剤。
前記局所化された脂肪蓄積は、下眼瞼脂肪ヘルニア、脂肪腫、脂肪異栄養症、セルライト関連性脂肪蓄積、及びその組み合わせからなる群より選択される、請求項9または10に記載の使用。
前記脂肪沈着は、目の下、あごの下、腕の下、臀部、ふくらはぎ、背、太股、足首、胃、及びその組み合わせからなる群より選択される対象の部位に局所化される、請求項9〜11のいずれか1項に記載の使用。
(a)請求項1〜8のいずれか1項に記載の製剤を含む第1容器、及び(b)手術を使用せず、対象において脂肪沈着を減少させるための前記製剤を使用するためのマニュアルを含む、対象において局所化された脂肪沈着を非手術的に除去するためのキット。
第2容器をさらに含み、前記第2容器は、抗微生物剤、抗血栓剤、抗凝集剤、泡抑制剤、抗炎症剤、麻酔剤、鎮痛剤、ステロイド、鎭静剤、抗分散剤、筋肉弛緩剤、及びその組み合わせからなる群より選択される第2治療剤を含む、請求項13に記載のキット。
【図面の簡単な説明】
【0023】
下記本発明の望ましい実施形態に係る詳細な説明は、添付図面と共に読まれる場合、さらに良好に理解されるであろう。本発明の説明のために、図面には、現在望ましい実施形態が図示されている。しかし、本発明が、図面に図示された実施形態の正確な配列及び手段にのみ限定されるものではないということが理解されなければならない。
【
図1】3T3−L1前駆脂肪細胞の分化を示した一連のイメージである。3T3−L1前駆脂肪細胞(
図1A)は、分化培地(MDI培地)で処理し、分化された脂肪細胞(
図1B)は、洗浄及び固定した。0.2% triton−X100で透過させた後、Oil Red O(
図1C)で染色し、200X倍率で撮影した。
【
図2】3T3−L1脂肪細胞において、界面活性剤の細胞溶解効果を図示した一連のイメージである。分化された3T3−L1脂肪細胞をデオキシコレート(DCA)、ケノデオキシコレート(CDCA)、タウロウルソデオキシコレート(TUDCA:taurourosodeoxycholate)及びコレート(CA)(0〜0.1%)(
図2A)、及びTUDCA及びCA(0〜2%)(
図2B)、及びウルソデオキシコレート(UDCA)、ヒオデオキシコレート(HDCA:hyodeoxycholate)及びCA(0〜1%)(
図2C)に1時間露出させ、細胞生存度を3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)分析法によって測定した。TUDCAを除いた全ての界面活性剤は、用量依存的な細胞溶解効果を示した。実験は、各処理当たり3回反復した。結果は、未処理対照群対比の生存細胞の総百分率でもって表現した。
【
図3】DCA、CDCA、HDCA及びCAで処理した後、脂肪パッド(fat pad)溶解の測定を示した一連のチャートである。95〜100mg脂肪組織を、食餌誘導された肥満マウスから切開し、多様な濃度のDCA、CDCA及びCA(
図3A)、並びにHDCA(
図3B)に露出させた。脂肪組織の生存度は、MTT分析によって測定し、相対吸光度(OD
570)は、分光光度計で測定した。界面活性剤の濃度を上昇させるにつれ、脂肪組織溶解がさらに著しかった。実験は、各処理当たり5回反復して行った。
【
図4】高脂肪食餌を食べさせたマウスからの平均体重増加を示したグラフである。体重は、毎2週ごとにモニタリングした。
【
図5】1% DCA、CDCA、CA及びリン酸緩衝食塩水(PBS)で注射された肥満マウスの体重(
図5A)、及び鼠蹊部(inguinal)脂肪パッド重量(
図5B)を図示した一連のチャートである。胆汁塩(DCA、CDCA及びCA)溶液は、マウスの右側鼠蹊部脂肪パッドに注射した。マウスの左側鼠蹊部脂肪パッドには、対照群として、同一体積のPBSを注射した。注射は、2週間4回さらに反復した。マウスは、最終注射以後、4日経過時点で剖検し、鼠蹊部脂肪パッドを切開した後、その重量を測定した。
【
図6】胆汁塩投与されたマウスからの脂肪パッドで観察される組織学的変化を図示したイメージである。胆汁塩及びPBSの注射以後、注射された領域の脂肪組織を切開した。切開された組織は、パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィンブロック内に含浸させた後、スライドガラスに断片化した。組織損傷及び懐死は、H&E染色によって観察した。
【
図7】懐死領域測定のための代表的過程である。注射後24時間経過時点で得られた2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)染色された脂肪パッドのイメージを図示したものである。正常組織は、赤色で染色され、懐死領域は、白色で染色され、映像分析システムを使用して定量した。懐死領域(白色、未染色領域)は、映像分析システム(ImageJ:National Institutes of Health、Bethesda、MD、米国)を使用して測定した。
【
図8】in vivo懐死領域の定量化を図示したチャートである。多様な濃度の胆汁塩(DCA、CDCA及びCA)及びPBSで注射された脂肪パッドを切開し、懐死領域をTTC染色(各グループ当たりn=8)によって測定した。界面活性剤の濃度を上昇させるほど、さらに著しい脂肪パッド溶解が発生した。
【
図9】多様な胆汁塩(DCA、CA、CDCA)及びビヒクル(PBS)で処理された後、TTC染色された脂肪パッドを図示した代表的イメージである。
【
図10】正常PBSと比較した組織生存度(
図10A)、及びMTT分析以後の相対吸光度(
図10B)を示した一連のグラフである。マウス鼠蹊部脂肪パッドは、CA、DCA及びCDCAを含むリン酸緩衝溶液における多様な塩濃度(0〜200mM塩化ナトリウム)中に曝露された。95〜100mgの脂肪組織を、多様な塩濃度におけるDCA、CDCA及びCAのEC
50濃度(正常PBSにおいて、50%の組織生存度低下を示す濃度)でインキュベーションした。実験は、各処理当たり5回反復した。
【
図11A】DCA、CDCA、CA、HDCA及びPBSと共に、多様なpH条件(pH6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0)中に曝露されたマウス鼠蹊部脂肪パッドの生存度(
図11A、
図11C)及び相対吸光度(
図11B、
図11D)を示した一連のイメージである。95〜100mgの脂肪組織を、多様なpH条件において、DCA、CDCA、HDCA及びCAのEC
50濃度で培養した。脂肪組織の生存度は、MTT分析法によって測定し、吸光度(OD570)は、分光光度計で測定した。実験は、各処理当たり5回反復して行った。
【
図11B】DCA、CDCA、CA、HDCA及びPBSと共に、多様なpH条件(pH6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0)中に曝露されたマウス鼠蹊部脂肪パッドの生存度(
図11A、
図11C)及び相対吸光度(
図11B、
図11D)を示した一連のイメージである。95〜100mgの脂肪組織を、多様なpH条件において、DCA、CDCA、HDCA及びCAのEC
50濃度で培養した。脂肪組織の生存度は、MTT分析法によって測定し、吸光度(OD570)は、分光光度計で測定した。実験は、各処理当たり5回反復して行った。
【
図11C】DCA、CDCA、CA、HDCA及びPBSと共に、多様なpH条件(pH6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0)中に曝露されたマウス鼠蹊部脂肪パッドの生存度(
図11A、
図11C)及び相対吸光度(
図11B、
図11D)を示した一連のイメージである。95〜100mgの脂肪組織を、多様なpH条件において、DCA、CDCA、HDCA及びCAのEC
50濃度で培養した。脂肪組織の生存度は、MTT分析法によって測定し、吸光度(OD570)は、分光光度計で測定した。実験は、各処理当たり5回反復して行った。
【
図11D】DCA、CDCA、CA、HDCA及びPBSと共に、多様なpH条件(pH6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0)中に曝露されたマウス鼠蹊部脂肪パッドの生存度(
図11A、
図11C)及び相対吸光度(
図11B、
図11D)を示した一連のイメージである。95〜100mgの脂肪組織を、多様なpH条件において、DCA、CDCA、HDCA及びCAのEC
50濃度で培養した。脂肪組織の生存度は、MTT分析法によって測定し、吸光度(OD570)は、分光光度計で測定した。実験は、各処理当たり5回反復して行った。
【
図12A】相対懐死領域を図示した一連のグラフである。多様な濃度のDCA、CDCA及びCA(
図12A)、UDCA(
図12B)、HDCA(
図12C)で注射された脂肪パッドを切開し、懐死領域をTTC染色(各グループ当たりn=10)によって測定した。懐死領域(白色、未染色領域)は、映像分析システムを使用して測定した。界面活性剤をさらに高い濃度で注射した場合、脂肪組織溶解がさらに著しかった。
【
図12B】相対懐死領域を図示した一連のグラフである。多様な濃度のDCA、CDCA及びCA(
図12A)、UDCA(
図12B)、HDCA(
図12C)で注射された脂肪パッドを切開し、懐死領域をTTC染色(各グループ当たりn=10)によって測定した。懐死領域(白色、未染色領域)は、映像分析システムを使用して測定した。界面活性剤をさらに高い濃度で注射した場合、脂肪組織溶解がさらに著しかった。
【
図12C】相対懐死領域を図示した一連のグラフである。多様な濃度のDCA、CDCA及びCA(
図12A)、UDCA(
図12B)、HDCA(
図12C)で注射された脂肪パッドを切開し、懐死領域をTTC染色(各グループ当たりn=10)によって測定した。懐死領域(白色、未染色領域)は、映像分析システムを使用して測定した。界面活性剤をさらに高い濃度で注射した場合、脂肪組織溶解がさらに著しかった。
【
図13】胆汁塩を投与した以後、マウス脂肪パッドで観察される組織学的変化を図示した一連のイメージである。脂肪組織を切開し、パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィンブロックに含浸させた後、1.5% CA、1.5% HDCA及び1.5% UDCA溶液の注射後に、スライドガラスに断片化した。多形核(PMN:polymorphonuclear)細胞の脂肪パッド組織内への浸潤(infiltration)が、H&E染色したHDCA処理またはUDCA処理された組織で観察された。
【
図14】3T3−L1脂肪細胞において、多様な胆汁塩が細胞溶解効果を示す一連のチャートを図示したものである。分化された3T3−L1脂肪細胞を、タウロコレート(TCA)、グリココレート(GCA)、CA、タウロデオキシコレート(TDCA)、グリコデオキシコレート(GDCA)、DCA、タウロケノデオキシコレート(TCDCA)及びCDCA(
図14A−
図14C)に1時間曝露させ、細胞生存度をMTT分析法によって測定した。全ての界面活性剤は、用量依存的細胞溶解効果を示した。タウリン、グリシンの接合(conjugation)は、CA、DCA及びCDCAの細胞溶解活性に影響を及ぼさない。実験は、各処理当たり3回反復して行った。結果は、未処理対照群対比の生存細胞の総百分率でもって表示した。
【
図15】CA、GCA、TCA溶液及びビヒクル(PBS)の多様なpH条件(pH6.0、6.5、7.0、8.0、9.0)中に曝露されたマウス鼠蹊部脂肪パッドの組織生存度を示した一連のイメージである。95〜100mgの脂肪組織を、多様なpH条件で、0.1% GCA、TCA及びCAで培養した。脂肪組織の生存度は、MTT分析により、光学密度(
図15A)及び相対吸光度(
図15B)としてモニタリングした。実験は、各処理当たり5回反復して行った。
【
図16】DCA、CA及びPBSの注射後14日経過時点で、マウス尾に対する組織学的検査を示したイメージである。H&E染色は、処理された尾において、皮下脂肪の懐死を示している。また、筋肉及び皮膚層の組織構造も、処理された尾で観察される。
【
図18】DCA、CA及びPBSを多様な濃度で(pH7.4溶液において0.5〜1.5%)皮下注射した後、マウス皮膚の外形(
図18A)及び皮膚病変の重症度(
図18B)を示した一連のイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、in vivoにおけるコレートの脂肪溶解効果がin vitro及びex vivoで観察されるコレートの活性からは予測可能ではないという予期せぬ発見に基づいたものである。すなわち、in vitroではコレートがデオキシコレート及びケノデオキシコレートに比べて低い溶解活性を示したにもかかわらず、in vivoではコレートが卓越した結果を示した。例えば、in vivoでコレートを処理した場合、デオキシコレートを処理した場合と比較して、皮膚で著しく低減した有害事象(adverse events)を示した。特に、in vitro及びex vivoの結果から予測できない濃度で、in vivoで低減した有害事象を有するコレートが予期せぬ脂肪溶解効果を示すことは、脂肪溶解注射においてコレートを活性成分として使用できることを裏付ける。
【0025】
本発明は、脂肪沈着を減少させるための非手術的方法を提供することにより、動物で局所化された脂肪蓄積の問題点を解決する。一実施形態において、本発明は、薬学的に許容される製剤において、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上を、脂肪溶解濃度の有効量で投与する段階を含む。
【0026】
本発明は、動物、好ましくは哺乳類、さらに好ましくは人間において、脂肪を減少させるための、胆汁酸またはその塩の使用に関する。一実施形態において、前記胆汁酸またはその塩は、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上である。
【0027】
一実施形態において、本発明は、薬学的に許容される製剤を標的部位に局所的に投与することにより、哺乳類における皮下脂肪蓄積を減少させるためのコレート及びケノデオキシコレートのうち1以上の使用に関するものである。一実施形態において、前記製剤は、脂肪溶解注射形態である。
【0028】
本発明は、脂肪沈着をコレート及びケノデオキシコレートのうち1以上を含む製剤と接触させる段階を含む、哺乳類における脂肪沈着を減少させる方法に関する。
【0029】
他の実施形態において、本発明は、セルライト及び余分脂肪沈着に関連する脂肪細胞を溶解するために、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上でセルライト及び余分脂肪沈着を処理する方法に関する。
【0030】
他の実施形態において、本発明は、製剤のpHを調節し、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上の活性を向上させることにより、脂肪除去する方法に関する。一実施形態において、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上を含む前記製剤は、約9未満の適当なpHを有するように製剤化される。
【0031】
定義
別段定義されない限り、本明細書で使用された全ての技術的及び科学的な用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって、一般的に理解されるものと同一の意味を有する。本発明の実施にあたり本明細書に記載されるものと類似するか等価ないかなる方法および材料が用いられてもよいが、好ましい方法および材料を記載する。
【0032】
本明細書では、下記の用語はそれぞれ本項においてこれに関連する意味を有する。
【0033】
冠詞「a」及び「an」は、前記冠詞の文法的対象において、1以上(すなわち、少なくとも一つ)を示すために、本明細書で使用される。例えば、「要素(an element)」は、1つの要素、またはそれ以上の要素を意味する。
【0034】
量、時間的長さのような測定可能な数値を指す場合、本明細書で使用されているような「約(about)」は、変移が開示された方法を遂行するために適切であるように、明示された数値から、±20%、±10%、±5%、±1%または±0.1%の変移を含むことを意味する。
【0035】
疾病または障害の症状の深刻度、患者が経験するかような症状の頻度、または両者がいずれも低下する場合、疾病または障害は、「軽減して(alleviated)」いる。
【0036】
本明細書で使用される用語「胆汁酸(bile acid)」は、ステロイド酸(及び/またはそのカルボン酸陰イオン)及びその塩を含み、動物(例えば、人間)の胆汁で発見されるものであり、それに係わる非制限的な例としては、コール酸(cholic acid)、コレート、デオキシコール酸(deoxycholic acid)、デオキシコレート、ヒオデオキシコール酸(hyodeoxycholic acid)、ヒオデオキシコレート、グリコール酸、グリココレート、タウロコール酸(taurocholic acid)、タウロコレート、ケノデオキシコール酸(chenodeoxycholic acid)、ケノデオキシコレート、リトコール酸(lithocholic acid)、リトコレートなど(及びその塩)を挙げることができる。
【0037】
用語「患者(patient)」、「対象(subject)」、「個体(individual)」などは、本明細書において、互いに交換可能に使用され、本明細書に記載された方法に順応するin vitroでもin situでも、任意の動物またはその細胞を指す。特定非制限的な実施形態において、前記患者、対象または個体は、人間である。
【0038】
本明細書で使用される用語「組成物(composition)」または「薬剤組成物(pharmaceutical composition)」は、本発明の少なくとも1つの化合物と、担体(carriers)、安定化剤、希釈剤、分散剤、懸濁液剤、増粘剤(thickening agents)、及び/または賦形剤(excipients)のような他の化学成分の混合物を意味する。前記薬剤組成物は、前記化合物の有機体(organism)への投与を促進する。
【0039】
本明細書で使用される用語「有効量(effective amount)」、「薬学的に有効な量(pharmaceutically effective amount)」及び「治療上有効な量(therapeutically effective amount)」は、非毒性であるが、所望する生物学的結果を提供するに十分な量を示す。前記結果は、兆候、症状、または疾病原因の減少及び/または軽減、または生物学的システムの任意の他の所望する変化(alteration)でもある。任意の個別的事案において、適する治療量(therapeutic amount)は、通常の実験を使用して、通常の技術者によって決定されてもよい。
【0040】
本明細書で使用される用語「効能(efficacy)」は、分析方法内で達成される最大効果(E
max)を示す。
【0041】
本明細書で使用される「指示的物質(instructional material)」は、本明細書に言及された多様な疾病または障害の軽減を発揮するためのキットにおいて、本発明の化合物、組成物、ベクターまたは伝達システムの有用性を伝達するのに使用される刊行物、記録(recording)、ダイヤグラム、または任意の他の表現媒体を含む。選択的には、または代案として、前記指示的物質は、哺乳類の細胞内または組織内において、疾病または障害の軽減に対する1以上の方法を記載することができる。本発明の前記キットの前記指示的物質は、例えば、本発明の前記確認された化合物、組成物、ベクターまたは伝達システムを含む容器に付着することができるか、または前記確認された化合物、組成物、ベクターまたは伝達システムを含む容器と共に出荷(ship)される。
【0042】
代案的には、前記指示的物質は、前記指示的物質及び前記化合物が、収容体によって協同して使用されることを意図し、前記容器とは別途に出荷されてもよい。
【0043】
「局所的投与(local administration)」は、薬剤学的成分を非全身的経路によって、患者の筋肉または皮下位置(subdermal location)に、またはその周辺に投与することを意味する。従って、局所的投与は、静脈投与または口腔投与のような全身的経路を介した投与を排除する。
【0044】
「末梢投与(peripheral administration)」は、局所的投与とは反対に、症状的位置(symptomatic location)から離れた位置に投与することを意味する。
【0045】
「薬学的に許容される(pharmaceutically acceptable)」は、組成、製剤、安定性、患者受容性及び生物利用可能性について、薬理学的/毒性学的な観点、及び物理的/化学的な観点で製造する薬剤学的化学者に、受容可能な特性及び/または物質を示す。「薬学的に許容される担体」は、活性成分の生物学的活性の有効性(effectiveness)を妨害せずに投与されるホストに毒性を示さない媒体を示す。
【0046】
「治療的(therapeutic)」治療(treatment)は、兆候または症状を低減させたり除去したりするための目的で、病理の兆候または症状を示す対象に投与される治療である。
【0047】
本明細書で使用される用語「治療(treatment)」または「治療する(treating)」は、本明細書で考慮された状態、本明細書で考慮された状態の症状、または本明細書で考慮された状態に進む潜在性を、治療(cure)、治癒(heal)、軽減(alleviate)、緩和(relieve)、変化(alter)、救済(remedy)、改善(ameliorate)、向上(improve)したり、影響を与えたりするために、治療的作用剤、すなわち、本発明の化合物(単独、または他の薬剤学的成分作用剤との組み合わせ)を患者に適用または投与すると定義されるか、または(例えば、診断またはex vivo適用のため)患者から分離された組織または細胞株に、治療的作用剤を適用または投与すること(例えば、診断またはex vivo適用のため)と定義され、前記本明細書で考慮された状態、本明細書で考慮された状態の症状(symptoms)、または本明細書で考慮された状態に進む潜在性を有している。前記治療は、薬理学分野から得られた知識に基づいて、具体的に合わせられるか、あるいは変形されもする。
【0048】
「治療上有効な量(therapeutically effective amount)」は、患者に投与される場合、疾病の症状を改善する本発明の化合物の量である。「治療上有効な量」を構成する本発明の化合物の量は、前記化合物、疾病状態及びその深刻性、治療される患者の年齢などによって変化する。治療的に有効な量は、自分の知識、及び本開示を考慮し、当分野で当業者によって一般的に決定される。
【0049】
範囲:本開示全般にわたって、本発明の多様な様相が範囲形式によって提案される。範囲形式の記載は、単に、便宜性及び簡略性のためのものであり、本発明の範囲に係わる融通性ない制限(inflexible limitation)として解釈されるものではないと理解されなければならない。従って、範囲の記載は、前記範囲内の個別的な数値だけではなく、全ての可能な下部範囲(subrange)を具体的に開示したものであると考慮されなければならない。例えば、1ないし6のような範囲の記載は、前記範囲内の個別的数値、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6だけではなく、1ないし3、1ないし4、1ないし5、2ないし4、2ないし6、3ないし6のような下部範囲を具体的に開示したものであると見なされなければならない。それは、範囲の幅にかかわらず適用される。
【0050】
説明
胆汁塩の安定性及び活性は、そのpH条件によって大きく影響を受ける。本発明は、pH条件を調整することで胆汁塩注入の安定性が向上するという観察と部分的に関連する。
【0051】
本発明は、有害事象を減少させることによる所望する治療的結果の達成において、適切なpH範囲における胆汁塩の適切な濃度範囲の組み合わせが重要であるという発見と関連がある。例えば、pH条件が低いほうが胆汁塩の細胞溶解活性を向上させるため、低いpH製剤内では低濃度の胆汁塩が使用される。好ましくは、使用されるpHが低いほうが、胆汁塩製剤の有害効果を増大させない。従って、有害効果は、適したpH条件において、細胞溶解活性から区別されうる。従って、一部の場合において、さらに低いpH製剤において、より低濃度の胆汁塩を使用することにより、胆汁塩の細胞溶解活性が低下することなく、有害効果を低減させることができる。
【0052】
デオキシコレートの場合、デオキシコレートの沈澱は、より低いpH溶液で観察された。結果として、デオキシコレートに対して、より高いpHの緩衝溶液が求められる。しかし、生理的pHより高いpH溶液は、有害事象を示す。従って、本発明は、デオキシコレート製剤と比較して、有害事象の減少等のさらなる利点を提供する、生理的pHかつ低濃度のコレート溶液及びケノデオキシコレート溶液のうち1以上の製剤を提供する。
【0053】
本発明は、他のデオキシコレートが有害効果を示す濃度ではコレートがレシピエントに対して有害効果を示さない、in vivoでのコレートの予期しない脂肪溶解効果に基づくものである。従って、本発明は、デオキシコレート濃度より高いコレート濃度であるが、患者において低減された有害効果を示す、コレートを含む製剤を提供する。他の様態において、本発明は、デオキシコレート濃度と同一のコレート濃度はであるが、患者においてさらに高い脂肪溶解効果を示しながらも低減された有害効果を示す、コレートを含む製剤を提供する。従って、本発明は、デオキシコレートを使用する場合に比べ、有害効果を示さないコレートを有効濃度として含む、さらに安全な脂肪溶解注射剤(lipolysis injection)を提供する。
【0054】
一実施形態において、本発明は、哺乳類において、脂肪減少のための活性成分として、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上を使用する組成物及び方法を提供する。一実施形態において、本発明は、脂肪溶解注射剤において、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上を使用する組成物及び方法を提供する。
【0055】
一実施形態において、本発明は、局所化された脂肪沈着の非手術的減少を必要とする患者に、局所化された脂肪沈着の非手術的減少に有用な組成物及び方法を提供し、前記方法は、薬理学的に活性である胆汁酸またはその塩、例えば、コレート及びケノデオキシコレートを含む組成物を使用する段階を含む。本発明の組成物は、抗炎症剤、鎮痛剤、分散剤、及び薬学的に許容される賦形剤のような他の作用剤をさらに含んでもよい。本発明の組成物は、哺乳類の臀部、ふくらはぎ、背、太股、足首、または胃だけではなく、目、あご、または腕の下の脂肪沈着を含む、脂肪の局所化された蓄積の治療に有用である。他の実施形態において、本発明の方法は、例えば、眼瞼脂肪ヘルニア、脂肪腫、脂肪異栄養症、バッファローハンプ脂肪異栄養症(buffalo hump lipodystrophy)、またはセルライト関連性脂肪沈着のような脂肪沈着の特定タイプを低減させることができる。一実施形態において、前記脂肪減少は、脂肪吸引のような手術的過程を必要としない。
【0056】
一実施形態において、本発明の組成物は、手術的介入の必要性なしに、脂肪減少を必要とする患者の治療部位内に直接注射するのに適して製剤化されもする。
【0057】
一実施形態において、脂肪除去の非手術的方法は、脂肪吸引術、脂肪整形術または吸引切除術を含まない。
【0058】
一実施形態において、本発明は、弛緩した皮膚の引き締め(tightening loose skin)と同様に皮下脂肪沈着を減少させるための組成物、方法、及びキットを提供する。
【0059】
組成物
本発明は、局所化された脂肪沈着の非手術的な減少または除去を必要とする患者において、局所化された脂肪沈着の非手術的な減少または除去に有用な組成物を提供する。一実施形態において、前記組成物は、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上の有効脂肪溶解量を含む。一実施形態において、本発明の組成物は、他のものうちでも、下眼瞼脂肪ヘルニア、脂肪異栄養症及びセルライト関連性脂肪沈着を含む局所化された脂肪蓄積の治療に有用である。好ましくは、本発明の組成物は、脂肪吸引のような手術的過程を必要としないために使用される。
【0060】
一実施形態において、本発明は、水性ビヒクルのうち、1以上の、薬理学的に活性である胆汁酸及びその塩、及び薬学的に許容される賦形剤を含む、生物学的に適合する胆汁酸及びその塩の組成物を提供する。特に、薬理学的に活性である胆汁酸またはその塩が脂肪の溶解に使用されることは、本発明の範囲内である。
【0061】
いくつかの胆汁酸及びその塩が本発明に含まれる。例えば、本発明に含まれる前記胆汁酸及びその塩は、コール酸、ケノデオキシコール酸、及びその任意の塩から選択される。多様な態様において、任意の胆汁酸または胆汁酸接合(conjugate)は、生理的に許容可能な塩、例えば、コール酸またはケノデオキシコール酸のナトリウム塩、またはタウリンまたはグリシンとの接合の形態でもある。一態様において、用語「コール酸(cholic acid)」は、コール酸のナトリウム塩を示す。一実施形態において、コール酸(コレート)は、本発明の製剤において、活性成分である。他の態様において、用語「ケノデオキシコール酸(chenodeoxycholic acid)」は、ケノデオキシコール酸のナトリウム塩を示す。一実施形態において、ケノデオキシコール酸(ケノデオキシコレート)は、本発明の製剤において、活性成分である。
【0062】
一部の場合において、用語コレート化合物、コレート及びコール酸は、相互変換可能に使用される。一部の場合において、用語ケノデオキシコレート化合物、ケノデオキシコレート及びケノデオキシコール酸は、相互変換可能に使用される。
【0063】
一実施形態において、定義された薬剤学的組成物として適する胆汁酸の適合量(adequate quantities)が本明細書で提供される。一態様において、特定のコレート薬剤学的組成物及びケノデオキシコレート薬剤学的組成物は、動物起源の全ての残基(moieties)、及び哺乳類及び/またはバクテリアの発熱性物質(pyrogens)が存在しない。他の態様において、定義された薬剤学的組成物として適する1以上のコレート及びケノデオキシコレートの適合量が提供され、それは、関連組成物と共に、局所化された脂肪除去のための注射可能な薬剤組成物として使用される。本発明の定義された1以上のコレート注射物及びケノデオキシコレート注射物(injectates)は、脂肪死滅を引き起こす分子と組み合わされる。
【0064】
一部の実施形態において、前記胆汁酸は、ナトリウム(Na
+)、カリウム(K
+)、リチウム(Li
+)、マグネシウム(Mg
2+)、カルシウム(Ca
2+)、バリウム(Ba
2+)、ストロンチウム(Sr
2+)及びアンモニウム(NH
4+)からなる群より選択される陽イオンを含む。一実施形態において、界面活性剤は、胆汁酸と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である陽イオンとを含む。好ましくは、前記アルカリ金属は、ナトリウム(Na
+)、カリウム(K
+)またはリチウム(Li
+)であり、前記アルカリ土類金属は、マグネシウム(Mg
2+)、カルシウム(Ca
2+)、バリウム(Ba
2+)またはストロンチウム(Sr
2+)である。特定の実施形態において、本明細書で記載される前記方法及び組成物に使用される胆汁酸塩は、非制限的な例であり、そのナトリウム塩及びカリウム塩を含む、薬学的に許容される塩である。
【0065】
特定の実施形態において、本発明の1以上のコレート組成物及びケノデオキシコレート組成物の濃度は、本発明の組成物において、重量または体積で、約0.5%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%、またはそれらに由来する任意の範囲でもある。従って、前記コレート組成物及びケノデオキシコレート組成物のうち1以上は、任意の組み合わせまたは百分率範囲において、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上を含んでもよいと考慮される。
【0066】
一実施形態において、本明細書の前記組成物は、溶液である。好ましくは、前記溶液は、水性である。
【0067】
一実施形態において、本発明は、(i)1以上の薬理学的に活性であるコレート及びケノデオキシコレートの治療上有効な量、及び(ii)薬剤学的、獣医学的または美容的な賦形剤を含む、皮下注射のための溶液に関する。
【0068】
一部の実施形態において、前記溶液は、抗微生物剤、血管収縮剤、抗血栓剤、抗凝集剤、泡抑制剤、抗炎症剤、鎮痛剤、分散剤、抗分散剤、透過強化剤、ステロイド、鎭静剤、筋肉弛緩剤、及び抗下痢剤からなる群より選択される第2治療剤をさらに含んでもよい。
【0069】
一部の実施形態において、溶液は、500mLまで溶液を含む容器内に存在する。前記容器は、注射器、または注射器搭載可能な容器でもある。
【0070】
前記組成物(例えば、溶液)は、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上の治療上有効量を含む。前記治療上有効量は、皮下脂肪沈着を減少させるか、または有害効果を有する弛緩された皮膚領域を引き締めるのに効果的である。
【0071】
本発明の溶液のうち1以上のコレート及びケノデオキシコレートは、約0.001ないし10、0.01ないし5、または0.1ないし2%w/w、w/vまたはv/vの濃度でもある。好ましくは、前記溶液のうち1以上のコレート及びケノデオキシコレートは、約0.1ないし5%w/w、またはさらに好ましくは、約1%w/wの濃度でもある。
【0072】
一実施形態において、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上は、前記コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上が脂肪溶解に効果的であるように、約9未満のpHに製剤化されている。一実施形態において、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上は、前記コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上が、脂肪溶解に効果的であるように、約8未満のpHに製剤化されている。一実施形態において、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上は、前記コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上が、脂肪溶解に効果的であるように、約7.5未満のpHに製剤化されている。一実施形態において、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上は、前記コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上が、脂肪溶解に効果的であるように、約7.0未満のpHに製剤化されている。好ましくは、前記製剤は、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上が、25℃で安定した形態である液体製剤である。本明細書で使用されるように、安定した形態は、ゲル化形態または沈澱形態ではない。
【0073】
一実施形態において、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上は、約0.5%ないし約4.0%であるように製剤化されている。一実施形態において、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上は、約0.5%ないし約2.0%であるように製剤化されている。好ましくは、前記製剤は、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上が、25℃で安定した形態である液体製剤である。本明細書で使用されるように、安定した形態は、ゲル化形態または沈澱形態ではない。
【0074】
一実施形態において、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上は、約9未満のpH緩衝溶液において、約0.5%ないし約4.0%の濃度に製剤化されている。一実施形態において、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上は、約8未満のpH緩衝溶液において、約0.5%ないし約4.0%の濃度に製剤化されている。一実施形態において、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上は、約7.5未満のpH緩衝溶液において、約0.5%ないし約4.0%の濃度に製剤化されている。一実施形態において、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上は、約7未満のpH緩衝溶液において、約0.5%ないし約4.0%の濃度に製剤化されている。好ましくは、前記製剤は、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上が、25℃で安定した形態である液体製剤である。本明細書で使用されているように、安定した形態は、ゲル化形態または沈澱形態ではない。
【0075】
一実施形態において、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上は、約9未満のpH緩衝溶液において、約0.5%ないし約2.0%の濃度に製剤化されている。一実施形態において、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上は、約8未満のpH緩衝溶液において、約0.5%ないし約2.0%の濃度に製剤化されている。一実施形態において、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上は、約7.5未満のpH緩衝溶液において、約0.5%ないし約2.0%の濃度に製剤化されている。一実施形態において、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上は、約7未満のpH緩衝溶液において、約0.5%ないし約2.0%の濃度に製剤化されている。好ましくは、前記製剤は、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上が、25℃で安定した形態である液体製剤である。本明細書で使用されるように、安定した形態は、ゲル化形態または沈澱形態ではない。
【0076】
一実施形態において、本発明は、25℃で安定した形態であり、約8未満のpH緩衝溶液において、約0.5%ないし約2.0%の濃度を有するコレート及びケノデオキシコレートのうち1以上の製剤を提供する。本発明の製剤の利点は、生理的pHであり低濃度である前記胆汁塩溶液が、より高いpH溶液およびより高濃度の胆汁塩溶液を使用する場合の有害効果を低減させることができる点にある。
【0077】
方法
本発明の組成物は、多様な臨床的状況に適用されてもよい。本発明は、かような製剤を、標的部位に局所的に投与することにより、哺乳類において、皮下脂肪蓄積を減少させるための薬理学的に活性であるコレート及びケノデオキシコレートのうち1以上の使用に関する。該組成物に係る他の使用は、脂肪腫、脂肪の溶解、メゾセラピー(mesotherapy)、組織分離、腫瘍減少、癌減少、癌治療、および、身体の部分または領域から、ワックス、脂肪、タンパク質または炭水化物を、弛緩し、除去し、身体消費または溶解を補助するのに使用することを所望する任意の他の臨床的状況が含まれる。例えば、脂肪腫の治療において、前記組成物は、脂肪腫と接触して皮下に注射され、脂肪腫を溶解させることができる。脂肪腫に対する他の適する適用方法も使用される。
【0078】
一実施形態において、本発明の組成物は、対象において、脂肪沈着を減少させるために使用される。一部の場合において、脂肪沈着は、肥満、脂肪再分配症侯群、下眼瞼脂肪ヘルニア、脂肪腫、ダーカム病(Dercum’s disease)、脂肪異栄養症、バッファローハンプ脂肪異栄養症、後頚部脂肪(dorsocervical fat)、内臓脂肪過多症(visceral adiposity)、乳房拡大症、高度肥満症(hyperadiposity)、わき腹周辺及び腕周辺の拡散された身体脂肪、及びセルライトに関連する脂肪沈着からなる群より選択される状態と関連がある。好ましい実施形態において、本発明の方法は、対象に手術を行うことを含まない。
【0079】
本発明の組成物は、肉芽腫(granulomas)、傷痕、腫瘍、にきび嚢胞(acnecysts)、皮脂嚢胞(sebaceous cysts)、皮脂過形成(sebaceous hyperplasia)、皮脂の疾患、にきび関連皮膚病、皮下脂肪の疾患、腫瘍、入墨除去、感染及びバイオフィルム、セルライト、脂肪沈着、脂肪組織、及び関連状態の治療に有用である。また、本発明の組成物は、皮膚輪郭欠陥(例えば、皮膚フィラで過多矯正した後、または注射に対する身体の過多反応後の乳房非対称または唇非対称)を広げるのに(even out)使用されてもよい。前記過程は、生きている組織において、身体から分離された組織において、または病理的検査もしくは欠陥検査の補助のために遂行されてもよい。前記過程は、組織、血清、または任意の他の身体部分に対しても遂行される。ヒト医療に加え、前記組成物は、動物医療にも適用可能である。
【0080】
一実施形態において、本発明は、対象において脂肪を減少させるための方法に関する。前記方法は、本発明の組成物を、標的領域に局所的に(locally)投与する段階を含む。
【0081】
一部の実施形態において、前記投与段階は、本発明の組成物を、皮下注射または経皮注射を介して伝達する段階を含む。
【0082】
一部の実施形態において、前記投与段階は、本発明の組成物を皮膚パッチ、ポンプ、または皮下層保存(subdermal depot)を介して伝達する段階を含む。
【0083】
一部の実施形態において、前記投与段階は、本発明の組成物を局所的に(topically)または皮下に伝達する段階を含む。
【0084】
一部の実施形態において、治療される標的部位の領域は、目の下、あごの下、腕の下、臀部、頬、額、ふくらはぎ、背、太股、足首または胃である。
【0085】
一部の実施形態において、対象において脂肪を減少させるために使用される前記組成物は、皮膚緊張溶液(skin tightening solution)と共に製剤化されている。前記皮膚緊張溶液は、抗微生物剤、血管収縮剤、抗血栓剤、抗凝集剤、泡抑制剤、抗炎症剤、鎮痛剤、分散剤、抗分散剤、透過強化剤、ステロイド、鎭静剤、筋肉弛緩剤及び抗下痢剤からなる群より選択される第2治療剤をさらに含んでもよい。
【0086】
一部の実施形態において、本発明の方法は、対象に対する手術を行う段階を含まない。
【0087】
特定の実施形態において、本発明の第1治療と第2治療との時間間隔は、少なくとも1週、少なくとも2週、少なくとも1月、少なくとも2月、少なくとも12週、少なくとも13週、少なくとも14週、少なくとも15週、少なくとも16週、少なくとも17週、少なくとも18週、少なくとも19週、少なくとも20週、少なくとも21週、少なくとも22週、少なくとも23週、少なくとも24週、少なくとも25週、少なくとも26週、少なくとも27週、少なくとも28週、少なくとも29週、少なくとも30週、少なくとも31週、少なくとも32週、少なくとも33週、少なくとも34週、少なくとも35週、少なくとも36週、少なくとも37週、少なくとも38週、少なくとも39週、少なくとも40週、少なくとも41週、少なくとも42週、少なくとも43週、少なくとも44週、少なくとも45週、少なくとも46週、少なくとも47週、少なくとも48週、少なくとも49週、少なくとも50週、少なくとも51週、少なくとも52週またはそれ以上である。
【0088】
薬剤組成物
一実施形態において、本発明は、約9未満、約8未満、約7.5未満または約7未満のpH緩衝溶液において、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上を含む液体薬剤組成物を提供する。一実施形態において、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上は、25℃で、液体薬剤組成物中で安定している。一実施形態において、25℃で、液体薬剤組成物中で安定しているということは、コレート及びケノデオキシコレートのうち1以上がゲル化された形態または沈澱形態ではないということを意味する。
【0089】
本明細書に記載された前記薬剤組成物の製剤は、薬理学分野で知られた、またはその後開発された任意の方法によって製造されてもよい。一般的に、前記製造方法は、活性成分を、担体、または1以上の他の付随成分と結合させる段階の後、必要に応じてまたは所望する場合には、産物を所望する単一または多重の投与単位で、成形または包装する段階を含む。
【0090】
本明細書で提供された薬剤組成物の記載が、主に人間への倫理的投与に適する薬理学的組成物に係るものであるとしても、かような組成物が、全種の動物への投与にも一般的に適することは、当業者によって理解されるであろう。
【0091】
人間への投与に適する薬剤組成物を変形し、多様な動物への投与に適する組成物を製造することは周知であり、通常の技術を有する獣医薬物学者であれば、必要に応じて単なる普通の実験を介して、かような変形を考案及び遂行することができるであろう。本発明の薬剤組成物投与が考慮される対象は、これらに制限されるものではないが、人間及び他の霊長類、非人間霊長類、家畜、豚、馬、羊、猫及び犬のような商業的に関連性ある哺乳類を含む哺乳動物を含む。
【0092】
本発明の方法において有用な薬剤組成物は、目(ophthalmic)、口、直腸、膣、非経口、局所、肺、鼻腔内、頬(buccal)、または他の投与経路に適する製剤として、製造、包装または販売されてもよい。他の考慮された製剤は、突出したナノ粒子(projected nanoparticle)、リポソーム製剤、活性成分を含む再密封された赤血球、及び免疫学的に基づく製剤を含む。
【0093】
本発明の薬剤組成物は、単一ユニット用量、または複数の単一ユニット用量でもって、製造、包装またはバルクで販売されてもよい。本明細書で使用される「ユニット用量(unit dose)」は、既定量の活性成分を含む薬剤組成物の区別される量(discrete amount)である。前記活性成分の量は、一般的に、対象に投与される活性成分の投与量(dosage)、または例えば、かような投与量の半分または3分の1のような投与量の便利な分画と一般的に同一である。
【0094】
本発明の薬理組成物において、活性成分、薬学的に許容される担体、及び任意の追加的成分の相対的量は、治療される対象の特性(identity)、大きさ及び状態によって、また前記組成物が投与される経路によって変わる。例えば、前記組成物は、0.1%ないし100%(w/w)の活性成分を含んでもよい。
【0095】
本発明の薬剤組成物の調節された(または、持続された)放出製剤は、一般的な技術を使用して製造される。
【0096】
前記薬剤組成物は、滅菌注射可能な水性または油性の懸濁液または溶液の形態で製造、包装または販売される。該懸濁液または溶液は、周知の技術によって製剤化され、活性成分に加え、本明細書で記載された分散剤、湿潤剤または懸濁液剤のような追加成分を含んでもよい。前記殺菌注射可能製剤は、例えば、水または1,3−ブタンジオールのような非毒性非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒を使用して製造される。他の許容可能な希釈剤及び溶媒は、これらに制限されるものではないが、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液、及び合成モノグリセリドまたはジグリセリドのような固定されたオイルを含む。有用な他の非経口的に投与可能な製剤は、活性成分を微細結晶形態内、リポソーム製剤内、または生分解可能なポリマーシステムの成分として含むものなどを含む。持続した放出または移植(implantation)のための組成物は、エマルジョン、イオン交換樹脂、難溶性ポリマーまたは難溶性塩のような薬学的に許容されるポリマー性または疎水性物質を含んでもよい。
【0097】
本発明の薬剤組成物は、頬(buccal)投与に適する製剤として製造、包装または販売される。前記製剤は、例えば、一般的な方法を使用して製造された錠剤(tablets)形態またはロゼンジ(lozenges)形態であってもよく、例えば、0.1ないし20%(w/w)の活性成分、口腔溶解可能であるか、あるいは分解可能な組成(composition)を含む残分(balance)、及び必要に応じて、本明細書に記載される1以上の追加的成分であってもよい。あるいは、頬投与に適する製剤は、前記活性成分を含む粉末、またはエアゾール化されたり霧化(atomized)されたりする溶液、または懸濁液を含んでもよい。前記粉末化、エアゾール化またはエアゾール化された製剤は、分散される場合、好ましくは、約0.1ないし約200nm範囲の平均粒子サイズまたは平均液滴サイズを有し、本明細書に記載される1以上の追加的な成分をさらに含んでもよい。
【0098】
本明細書で使用される「追加的成分(additional ingredients)」は、これらに制限されるものではないが、賦形剤、表面活性剤、分散剤、非活性希釈剤、顆粒化剤及び崩壊剤(granulating and disintegrating agents)、結合剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、着色剤、保存剤、ゼラチンのような生理的に分解可能な組成物、水性ビヒクル及び溶媒、油性ビヒクル及び溶媒、懸濁液剤、分散または湿潤剤(dispersing or wetting agents)、乳化剤、粘滑剤(demulcents)、緩衝剤、塩、増粘剤(thickening agents)、フィラ、抗酸化剤、抗生物質、抗真菌剤、安定化剤、及び薬学的に許容されるポリマーまたは疎水性物質のうち1以上を含む。本発明の薬剤組成物に含まれる他の「追加的な成分(additional ingredients)」は、当技術分野において周知であり、例えば、援用によって本明細書に含まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1985, Genaro ed., Mack Publishing Co., Easton, PA)に記載されている。
【実施例】
【0099】
本発明は、下記実施例を参照し、詳細にさらに説明される。下記実施例は、単に説明の目的で提供されるものであり、別段明示されない限り、本発明の範囲を制限する意図ではない。従って、本発明は、決して下記実施例にのみ制限されるものであると解釈されるものではなく、むしろ本明細書で提供される教示の結果として明白になる任意及び全ての変形を含むものであると解釈されなければならない。
【0100】
さらなる説明が無くとも、当業者であれば、前述の記載及び下記の例示的な実施例を使用して、本発明の化合物を製造及び利用し、請求項に係る方法を実施できると考えられる。従って、下記実施例は、本発明の望ましい実施形態を具体的に指し、決して前記開示の残りを制限するものであると解釈されるものではない。
【0101】
実施例1:脂肪減少のための胆汁酸及び塩
本実施例で示される結果は、コレートの脂肪溶解効果により、コレートが脂肪溶解注射の活性成分として、特にin vitro及びex vivoの結果からは予想されない濃度で使用されうるという予期しない発見を立証するものである。
【0102】
下記実験において採用された物質及び方法を以下に記載する。
【0103】
in vitroでの、細胞培養及び脂肪細胞分化
3T3−L1細胞を、37℃において、5% CO
2/95%加湿雰囲気(humidified atmosphere)下、10%ウシ胎児血清を添加したDMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s media)内でコンフルエントに達するまで培養した。脂肪細胞分化を誘導するために、3T3−L1前駆脂肪細胞(pre−adipocyte)を、96ウェルプレートに接種し(5X10
3細胞/ウェル)、コンフルエント以後2日目(day 0)まで成長させ、成長培地プラスMDI(0.5μΜメチルイソブチルキサンチン、1μΜデキサメタゾン及び10μg/mlインシュリン;全ての物質は、Sigma−Aldrich Chemical,St.Louis,MO、米国から購入)で2日間処理し、続けて10μg/mlインシュリンのみを含む培地で2日間処理した。培地は、その後8日間で2日ごとに交換した。
【0104】
Oil Red O染色
分化誘導後、7日ないし10日目に、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で2回リンスし、10%ホルマリンで1時間固定した後、PBSで3回洗浄した。細胞を、濾過されたOil Red O(0.3%)作業溶液で20分間染色させた後、染色された細胞を蒸溜水で3回洗浄した。イメージは、オリンパスデジタルカメラを搭載したオリンパス逆相顕微鏡を使用して収集した。
【0105】
in vitroでの界面活性剤による細胞溶解効果
96ウェルプレート中の分化した脂肪細胞をPBSで2回洗浄し、多様な濃度の胆汁塩の無血清DMEM中でインキュベーションした。37℃で1時間インキュベーションした後、培地を変え、20μlのMTT溶液(PBS中の5mgMTT/ml)を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベーションした。結果物であるホルマザン産物を、100μlのDMSO/ウェル内で溶解させ、細胞生存度は、マイクロプレートリーダーを使用して、570nm(OD
570)での光学的密度を測定することによって決定した。
【0106】
マウスからの脂肪細胞組織の採取及びex vivo脂肪溶解分析
鼠蹊部脂肪パッド(皮下脂肪)を、食餌誘導された肥満マウスから切開し、ほぼ同一サイズに切った。100mg組織サンプルを48ウェルプレートに移し、多様な濃度及びpHのDCA、CDCA、CA及びリン酸緩衝溶液350μlと共に、10分間インキュベーションした。70μlのMTT溶液(PBSにおいて5mg/ml)をそれぞれのウェルに添加し、37℃で一晩インキュベーションした。溶液を除去し、沈澱したホルマザン産物を300μlのDMSOに溶解させた。組織生存度は、マイクロプレートリーダーを使用して、570nmでの光学的密度(OD
570)を測定することによってモニタリング(観察)した。
【0107】
マウスの食餌誘導肥満の誘導
4週齢の雄C57BL/6NマウスをOrient Bio(Sungnam、韓国)から購入した。マウスに、4週齢から18週まで、高脂肪食餌(カロリーの58%は脂肪から、カロリーの16.4%はタンパク質から、およびカロリーの25.5%は炭水化物からなり、主にスクロースからなるD 12331;Research Diets, New Brunswick, NJ、米国)を供給した。マウスは、気候調節された環境(22.8±2.0℃、45〜50%湿度)で、12時間明/12時間暗のサイクルで飼育した。水、及び指定された食餌は、自由に(ad libitum)供給した。それぞれのマウスの体重を隔週でモニタリングした。
【0108】
胆汁塩誘導された脂肪減少のin vivoモニタリング
雄C57BL/6Nマウスをケージに閉じこめ、12週間その脂肪食餌を供給した。胆汁塩のin vivo効果は、皮下脂肪組織に胆汁塩に直接注射することによってモニタリングした。要約すれば、食餌誘導された肥満以後、マウスをケタミン及びジャイルラジン(それぞれ60mg/kg及び12.5mg/kg;腹腔内注射によって投与)で麻酔した。マウスの注射部位を電気バリカンで剃り落とした。100μlの胆汁塩(DCA、CDCA及びCA、1%w/v)を肥満マウスの右側鼠蹊部脂肪パッド内に注射した。注射は、2週間で4回繰り返した。マウスの左側鼠蹊部脂肪パッドには、対照として、同一体積のPBSを注射した。最終注射後、4日経過時点でマウスを剖検した。各グループマウスの体重及び鼠蹊部脂肪パッド重量を測定した。注射された領域の脂肪組織を切開し、10%ホルマリンで固定し、組織学検査のために、パラフィンブロック内に含浸(embedded)させた。
【0109】
in vivo懐死領域の定量化
食餌誘導肥満の誘導後、マウスをケタミン及びジャイルラジン(それぞれ60mg/kg及び12.5mg/kg;腹腔内注射によって投与)で麻酔した。マウスの注射部位を電子クリッパで剃り落とした。多様な濃度の胆汁塩(DCA、CDCA及びCA)のPBS100μl溶液を肥満マウスの鼠蹊部脂肪パッドに注射した。マウスは、注射1日経過後に剖検した。マウス鼠蹊部脂肪パッドを、PBSにおいて2% TTC(Sigma−Aldrich Chemical、St.Louis,MO、米国)で2時間染色させることによって非懐死領域及び懐死領域を確認し、続けて対照を明らかにするために、10%ホルマリン内に浸漬させた。懐死領域は、TTCによって染色されていない領域として表示された。懐死脂肪領域の出現及び面積をキャプチャした後、スキャナで映像化した。DCA、CDCA、CA及びPBSで処理された脂肪パッドの懐死領域は、ImageJによって計算した。
【0110】
水性溶液における胆汁塩の安定性
胆汁塩の溶解度及び安定性を試験するために、多様なpHのリン酸緩衝溶液(10mM;pH6.5,6.7,7.0,7.2,7.4,7.6,7.8,8.0,8.3)を、二価塩基リン酸ナトリウム(dibasic sodium phosphate)及び一価塩基リン酸ナトリウム(monobasic sodium phosphate)を水に溶解させて製造した。0.01gの胆汁酸(UDCA、DCA、CDCA及びCA)を1mlのリン酸緩衝溶液に溶解させ、室温で10日間放置した。
【0111】
胆汁塩の組織特異的効果に対するin vivoモニタリング
100μlのDCA及びCA(1%、0.5%及び0.25%)及びPBSを、雌ICRマウスの尾内に(根側に1cmの尾部)注射した。マウスは、その後14日経過時点で剖検し、その際、注射部位の組織を収集し、4%ホルマリン内に固定させた。標準組織学断片を、注射部位5mm以内において、尾の長軸方向に垂直に切断した。続けて、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色するために、サンプルを製造した。オリンパスデジタルカメラを搭載したOlympus顕微鏡でイメージをキャプチャした。
【0112】
皮膚に対する有害事象(adverse events)のin vivoモニタリング
皮膚に対する胆汁塩の有害事象をモニタリングするために、多様な濃度(100μl体積中で、1.5%、1%及び0.5%)のDCA、CA及びPBSをマウスの脇腹に皮下注射した。注射は、最初の注射後、3日経過時点で1回さらに反復した。最終注射後、4日経過時点でマウスを剖検した。皮膚病変の深刻度を下記基準によって検査した。総皮膚重症度点数は、病変の下記特性それぞれ及び長さに係わる個別点数の和で定義した。病変の長さは、確認された最大病変の最大径を測定することによって決定した。測定される長さは、病変のみを含まなければならず、臨床的に正常である皮膚を横切ってはならない。それぞれの注射部位内の病変包含長さは、0ないし3で採点し、ここで「0」は影響が無い(no involvement);「1」は≦0.2cm、「2」は0.2〜0.5cm、「3」は>0.5cmである。病変の特性は、0ないし3で採点し、ここで、「0」は病変無し、「1」は1ヵ所のみの擦過傷または1つの小さい斑点皮(<2mm)、「2」は多重の小さい斑点皮(punctuate crust)または複合皮(coalescing crust)(>2mm)、「3」はただれまたは潰瘍である。
【0113】
胆汁酸誘導された足部浮腫(paw edema)
雄SDラット(6週齢)は、Koatech Co.(Seoul、韓国)から購入し、1週適応後に使用した。ラット(200〜230g)は、無作為に選択し、完全なラット足部の体積は、全てのグループでデジタルカリパス(Bluebird,Seoul、韓国)を使用して測定した。足部浮腫を誘導させる前に、ラットをケタミン及びジャイルラジン(それぞれ60mg/kg及び12.5mg/kg;腹腔内注射によって投与)で麻酔した。浮腫を誘導するために、ラットの後足足裏部位内に、多様な胆汁酸及びPBSを100μl投与した。足部体積の測定は、胆汁酸注射直前及び注射後4時間経過時点で、カリパスによって行った。
【0114】
実験結果を以下に記載する。
【0115】
胆汁酸及び塩の生物学的活性
胆汁酸分子の生物学的活性は、ヒドロキシル基の数、及び配向またはそのコンジュゲーションなど、その化学的特性と強く係わっている。かような変数は、毒性、及び界面活性剤強度の周知の予測因子(predictor)である、その疎水性に直接的に影響を及ぼす。胆汁酸の親水性指数は、ヒドロキシル基の数に比例するだけではなく、両側のステロール環におけるそれらの位置によっても影響される。
【0116】
胆汁塩の界面活性剤能は、それらの毒性に直接的な影響を及ぼす。一般的に、高洗浄性(high detergent)であるほど高毒性を示す。DCAは、胆汁塩系のうち最も強い界面活性剤のうち一つとして知られているため、細胞を溶解し(lyse)、その細胞成分を溶解させる(solubilize)ための生物学的界面活性剤として、しばしば使用されている。体内脂肪除去のためにDCAを使用することは、著しい有害事象と関連する。深刻な副作用を回避するために、DCAを代替するさらに安全な胆汁塩を使用することが望ましい。しかし、低毒性である胆汁塩は、弱い洗浄性及び生物学的活性であると予想される。
【0117】
この理由から、細胞生存度を測定する単純な定量的分析を使用して、DCAに対する多様な胆汁塩の細胞溶解活性を比較する実験を行った。脂肪細胞溶解活性をモニタリングするために、分化した3T3−L1脂肪細胞株を使用した(
図1)。細胞生存度は、MTT分析を使用してモニタリングした。予備実験において、TUDCA、CDCA、CA、HDCA、UDCA及びDCAを含む胆汁酸の細胞溶解効果を多様な濃度で比較した。低濃度(例えば、0.1%未満)では、DCA、CDCAの2種の胆汁酸のみが脂肪細胞の生存度を低下させた(
図2A)。CDCAは、類似の濃度で、DCAと類似の細胞溶解活性を示した。高濃度において、残りの胆汁塩の溶解効果を試験するために、2%以下の濃度のCA及びTUDCAを使用して実験を行った。TUDCA処理は、脂肪細胞の生存度を低下させなかった。しかし、CAは、かような高濃度で細胞死滅を示した(
図2B)。HDCA及びHDCAは、類似の濃度において、CAに比べ、若干高い細胞死滅効果を示した(
図2C)。CA、HDCA及びUDCAの細胞溶解活性は、DCA及びCDCAよりはるかに低かった。各胆汁酸の相対的細胞溶解活性を比較するために、DCA、CDCA、HDCA、UDCA及びCAのEC
50(細胞の50%を死滅させる濃度)を測定した。DCA、CDCA、HDCA、UDCA及びCAのEC
50はそれぞれ0.051%、0.060%、0.42%、0.25%及び0.42%であった(表1参照)。CAのEC
50は、DCA及びCDCAより約7ないし8倍高かった。
【0118】
【表1】
【0119】
in vitro条件からの結果より、DCA及びCDCAが効果的に脂肪細胞を溶解でき、ゆえに脂肪溶解注射の成分とみなされることが示唆される。任意の特定理論にとらわれることなしに、TUDCAが細胞溶解効果を示さない点は、多分に界面活性が低いからであり、それは、TUDCAが脂肪溶解注射としては適さないということを示している。in vitro条件下において、CA、HDCA及びUDCAの非常に低い溶解活性は、脂肪溶解注射成分として、CA、HDCA及びUDCAの非常に高濃度を必要とするということを示している。従って、本実施例で提示されたin vitro結果から、脂肪溶解注射において、ただCDCAだけが効果的にDCAを代替すると判断される。
【0120】
しかし、本実施例において提示された結果は、in vitro結果が常に実際のin vivo状況を代表するものではないということを立証する。例えば、培養細胞の単層(monolayer)は、完全な組織構造を反映することができない。完全な組織内に透過することは、胆汁塩の細胞溶解活性に影響を及ぼすことがあるために、多様な濃度において、DCA、CDCA、HDCA及びCAのex vivo脂肪細胞組織溶解効果を試験するための実験を行った。皮下脂肪組織は、12週間高脂肪食餌を供給したC57BL/6Nマウスからすぐに(freshly)分離した。脂肪組織は、多様な濃度の胆汁塩溶液において、10分間インキュベーションした。組織溶解活性は、MTT分析によって測定した(
図3)。全4種の胆汁塩溶液は、脂肪細胞組織溶解効果を示した。DCA及びCDCAは、培養細胞からの結果と類似した組織溶解活性を示した。ex vivo条件下において、それぞれの胆汁塩の相対溶解活性を比較するために、DCA、CDCA、HDCA及びCAのEC
50を計算した。DCA、CDCA、HDCA及びCAのEC
50濃度は、それぞれ0.0179%、0.0180%、0.0250%及び0.0727%であった(表2)。CA、HDCAの溶解活性は、DCAまたはCDCAよりはるかに低かった。しかし、in vitro細胞培養実験において、CAのEC
50はDCA及びCDCAに比べて約7〜8倍高かったのに対し、CAのEC
50はDCAまたはCDCAに比べて4倍高いだけであった。さらに、in vitro細胞培養実験において、HDCAのEC
50はDCA及びCDCAに比べて約4〜5倍高かったのに対し、HDCAのEC
50はDCAまたはCDCAに比べて1.4倍高いだけであった。
【0121】
【表2】
【0122】
ex vivo研究の結果は、胆汁塩の溶解活性が、in vitro結果から単純に推定されないことを示している。ex vivo条件は、in vitro条件に比べてより複雑である。例えば、組織の構造は各胆汁塩の脂肪細胞透過に影響を与えうるし、組織内内部構造の存在も胆汁塩の溶解活性に影響を与えうる。in vitro結果と比較することで、ex vivo結果から、比較的低濃度のCAまたはHDCAでも脂肪組織を溶解させるのに十分であることが示唆される。しかし、DCAまたはCDCAと類似した程度の脂肪溶解活性を得るためには、CAの4倍高い用量が要求されるであろう。
【0123】
前記ex vivo結果に基づけば、in vitroよりin vivoまたはex vivoの条件でCAがDCAまたはCDCAと類似する脂肪組織の溶解活性を有するならば、周辺組織の損傷によって引き起こされる有害事象は、DCA処理またはCDCA処理から区別されると仮定した。これを試験するために、DCA、CDCA及びCAのin vivo脂肪組織溶解活性を検査するための実験を行った。in vitro条件及びex vivo条件とは異なり、in vivo条件は、投与された薬物の分配、排泄及び代謝のようなさらに複雑な様相、並びに多くの変数を有する。胆汁塩溶液は、肥満マウスの皮下脂肪組織に直接適用した。マウスの肥満は、60%高脂肪含有食餌をC57BL/6Nマウスに供給することによって誘導された。高脂肪を12週間食べさせた後、マウスの体重は、おおよそ50グラムに逹した(
図4)。一実験において、1%の胆汁塩溶液を鼠蹊部脂肪組織に2週間で5回適用した。食塩水が注射されたマウスと比較して、胆汁塩が注射されたマウスは、減少した体重及び皮下脂肪含量を示した。興味深いことに、減少した体重及び脂肪含量は、全3種の胆汁塩について類似している(
図5A、
図5B)。
【0124】
胆汁塩の組織溶解活性を確証するために、皮下脂肪組織の注射部位を観察した(
図6)。食塩水注射されたマウスからの脂肪組織においては、明らかな非正常病変が観察されなかった。胆汁塩のうち一つ(例えば、DCA、CDCA及びCA)が注射されたマウス由来の脂肪組織は、投与領域内に黄色病変を示し、これは懐死炎症部位を表す。組織組織学(tissue histology)に対する胆汁塩の効果は、注射領域をH&E染色することによってモニタリングした。食塩水の場合と比較して、全3種の胆汁塩の注射により、脂肪組織構造(organization)の著しい破壊が誘導された。DCA、CDCA及びCAが注射された領域において、線維性領域(fibrotic area)が観察された。いかなる特定の理論にとらわれることなく、胆汁塩の反復投与が、反復炎症(recurrent inflammation)による組織線維症(fibrosis)を引き起こすと考えられる。
【0125】
これらの結果は、全3種の胆汁塩が生存しているマウスにおいて脂肪溶解活性を有し、DCA、CDCA及びCAのin vivo効果が、同一濃度において類似しているということを示す。in vitro条件またはex vivo条件とは対照的に、in vivo条件において、CAで反復投与することによって得られる脂肪溶解効果は、DCAまたはCDCAの効果と両立可能である。
【0126】
たとえマウスにおいて体重及び脂肪質量の減少が、胆汁塩処理に起因したものであったとしても、注射された胆汁塩からの有害効果及び麻酔過程も、胆汁塩処理されたマウスでの体重減少に影響を与えると判断される。胆汁塩のin vivo効果を検証するために、生きているマウスにおいて、胆汁塩の組織溶解活性を直接モニタリングした(
図7ないし
図9)。
【0127】
脂肪組織の懐死領域を定量するために、TTC溶液を使用する新しい実験方法を開発した。TTCは、特に、虚血性ショック後に、梗塞領域を示す、生物学的実験において、一般的に使用される酸化還元指示子(redox indicator)である。TTCは、多様なヒドロゲナーゼの活性によって、生きている組織のうち、赤色1,3,5−トリフェニルホルマザンで酵素的に還元される一方、懐死領域では、白色に残っている。TTC染色後、懐死性白色領域と、生きている赤色領域との間で区別される境界が形成された(
図7)。白色懐死領域は、映像分析プログラムによって容易に測定される。かような新たな方法は、胆汁塩のような化学物質の組織懐死効果のさらに正確な計算法を提供し、多様な物質の組織溶解効果の比較を可能にする。
【0128】
多様な用量のDCA、CDCAまたはCAを、肥満C57BL/6Nマウスの鼠蹊部脂肪に注射した。胆汁塩注射後1日経過時点で、注射されたマウスの皮下脂肪のうち、懐死領域を測定した(
図8及び
図9)。注射された胆汁塩の濃度を増加させると、懐死領域も比例して増大した。DCA及びCDCAは、in vitroデータ及びex vivoデータを反映する同一投与量において、類似の組織懐死を示した。同一濃度において、CA処理されたマウスの懐死領域は、DCAまたはCDCAに比べて小さかった。しかし、およそ2倍高い濃度のCAは、DCAまたはCDCAと類似した懐死効果を示すのに十分であった。DCA、CA、CDCA注射後の代表的イメージを
図9に図示した。
【0129】
総括すると、DCAまたはCDCAに対するCAの相対的組織溶解効果は、in vitro条件、ex vivo条件及びin vivo条件で異なっていた。一般的に、活性試薬(active reagent)からのin vivo投与量効果は、in vitro実験またはex vivo実験によって推測される。しかし、多くの場合において、体内の予期せぬ効果が、試薬の実際の生物学的活性に影響を与える。従って、in vitro結果またはex vivo結果が、in vivo条件に対するものであると容易に解釈されない。本実施例で提示されたin vitroデータ及びex vivoデータは、CAが組織を溶解するためには、DCAまたはCDCAと比較して4倍高い用量が要求されるということを示している。
【0130】
しかし、in vivoデータは、実際の脂肪溶解効果を示すために、かようにさらに高い用量のCAは、必要ではないということを立証する。胆汁塩の界面活性剤活性は、脂肪またはタンパク質の可溶化力(solubilizing power)を示す。従って、細胞溶解活性は、界面活性剤の活性と比例すると予想される。DCA及びCDCAは、CAよりはさらに強い界面活性剤活性を有するために、それらもさらに高い細胞溶解活性を示す。それにもかかわらず、胆汁塩のin vivo細胞溶解活性は、単に胆汁塩の界面活性剤能を示すものではない。かようなCAの予期しない脂肪溶解効果は、特に、in vitro結果及びex vivo結果から予測されなかった濃度で、脂肪溶解注射の活性成分としてのCAの使用を可能にする。
【0131】
溶液の塩濃度も、胆汁塩の界面活性剤活性に影響を与える。胆汁塩の脂肪溶解活性に対する塩化ナトリウム濃度の影響を試験した。食餌誘導された肥満マウスからの鼠蹊部脂肪組織を、異なる濃度の塩化ナトリウムを含む多様な溶液において、インキュベーションした。各胆汁塩の濃度は、pH7.4において、EC
50で調節した。しかし、ナトリウム塩の多様な濃度の処理は、個別的な胆汁塩の脂肪溶解活性にいかなる違いも引き起こさなかった(
図10)。
【0132】
界面活性剤溶液のpHは、ミセル形成及び界面活性剤活性に影響を与える。脂肪溶解活性に対する胆汁塩のpH効果を試験するために、食餌誘導された肥満マウスからの鼠蹊部脂肪組織を、DCA、CDCA、HDCA及びCAの多様なpH条件(pH6.0〜pH9.0)内でインキュベーションした。胆汁塩溶液のpHは、リン酸塩緩衝溶液で調整した。各胆汁塩の濃度は、pH7.4において、EC
50で調整した。興味深いことに、溶液のpHが上昇すると、CDCA、HDCA及びCAの脂肪溶解活性が大きく低下した(
図11)。DCAの場合、低pHの溶液では、DCAの沈澱が観察された。結果的には、CA、HDCAまたはCDCAの場合と比較して、DCAの高pHの緩衝液では、脂肪溶解活性は大きく低下しなかった。pH9超過のCA溶液及びCDCA溶液は、脂肪溶解活性をほぼ喪失した。従って、CA溶液またはCDCA溶液を使用して、効果的に脂肪を溶解させるためには、9未満のpHが求められる。
【0133】
胆汁塩の安定性は、溶液のpHに影響を受ける。多様なリン酸塩緩衝溶液(10mM;25℃において、pH6.5、6.7、7.0、7.2、7.4、7.6、7.8、8.0、8.3)条件において、1%(w/v)胆汁塩の安定性を試験するために、実験を行った。これより低いpHでは、胆汁塩の沈澱またはゲル化が観察された。
【0134】
DCA、CDCA、HDCA、UDCA及びCAの水溶液は、それぞれ8.3、7.4、7.4、7.8及び7.0より低いpHでは、安定して維持された(表3)。一般的に、注射部位での不快感または痛症は、正常な生理的pHより低いまたは高いpHの溶液によって引き起こされる。CDCA、HDCA及びCAは正常pHで安定した特性を有するため、それらを注射成分として使用することで、DCA及びUDCAのような他の胆汁塩を使用した場合に比べて不快感及び痛症が低減されると予測される。
【0135】
【表3】
【0136】
DCA溶液が生理的pHでは安定していないという点を考慮すれば、脂肪溶解注射のためのDCA溶液の製剤は、pH8.3より高くなければならない。高いpHを有する胆汁塩溶液は低い組織溶解活性を示す。CA、CDCA、UDCA及びHDCAの溶液は低いpHで安定しているため、少量のCA、CDCA、UDCA及びHDCAであっても、高pHのDCA溶液と類似した組織溶解効果を示すのに十分であると予想される。それを試験するために、pH8.3条件の1% DCA溶液と類似した組織溶解活性を示す濃度を、多様な濃度のCA(pH7.0)及びCDCA(pH7.4)で注射した後、組織懐死領域をモニタリングすることによって選択した。pH8.3条件のDCA溶液の組織溶解活性は、pH7.4条件のDCA製剤の活性に比べ、さらに低いと観察された。同一pH条件(pH7.4)において、約2%CA溶液または約1%CDCA溶液の注射は、1%DCA溶液の注射と類似した組織溶解活性を示した。しかし、1.5%CA(pH7.0)または0.6%CDCA(pH7.4)の濃度は、さらに高いpH(pH8.3)を有する1%DCAと類似した組織溶解効果を示すのに十分であった(
図12A)。生理的pH、及び低濃度の胆汁塩溶液は、有害事象の低減のようなさらなる利点を提供することができる。
【0137】
CDCA及びCAとは異なり、UDCAまたはHDCAの組織溶解効果は、その濃度を増加させても比例的に増大しなかった(
図12B及び12C)。興味深いことに、UDCAまたはCDCAを皮下脂肪に1回注射することにより、注射された部位において黄色構造が誘導された(
図13A)。H&E染色は、多量の多形核(PMN:polymorphonuclear)細胞が注射部位に浸潤されるということを示す(
図13B)。黄色構造は、UDCA注射後またはHDCA注射後に、PMNリッチ浸出物(PMN−rich exudates)(うみ)形成の結果物として予測された。UDCA注射またはHDCA注射によるPMN細胞の浸潤及び炎症は、UDCAまたはHDCAの懐死活性に影響を与える要因でもある。UDCAまたはHDCAを皮下脂肪に注射した後、深刻な炎症が観察されることは、UDCAまたはHDCAが、脂肪溶解注射の成分として使用されるのに適さないということを示す。
【0138】
胆汁塩は、肝臓において、タウリンまたはグリシンとコンジュゲーションされる。タウリンまたはグリシンが胆汁塩にコンジュゲーションされることが、脂肪細胞溶解活性にいかなる影響を及ぼすかについて、実験を行った。グリシンまたはタウリンとコンジュゲーションされた形態のCA、CDCA及びDCAを、分化した脂肪細胞に処理した(
図14及び
図15)。グリシンまたはタウリンがコンジュゲーションされた胆汁塩の細胞溶解活性は、コンジュゲーションされていない胆汁塩の細胞溶解活性とほぼ同一であった。かような結果は、グリシンまたはタウリンが、胆汁塩とコンジュゲーションされることが細胞溶解活性にほとんど影響を及ぼさないことを示している。
【0139】
多様な条件下において、脂肪溶解の他の様相が他の組織でも発生する。たとえin vitro条件下において、脂肪細胞の分解効果と筋肉細胞の分解効果に大きな差異が存在しないとしても、個別的な組織溶解活性は、in vivo条件下で異なる。従って、もし脂肪組織に比べて一部の胆汁塩が低下した皮膚または筋肉の溶解活性をもたらすことができるのであれば、向上した安全性を有する脂肪分解試薬が開発される。それを試験するために、pH7.4溶液における多様な濃度のDCA及びCAをマウス尾に注射し、尾の組織完全性(tissue integrities)を評価した(
図16)。尾は、脂肪、筋肉及び皮膚から構成されるために、個別的な組織層の完全性は、一回で容易にモニタリングされる。尾の脂肪層は、食塩水注射と比較して、DCA注射及びCA注射のいずれによっても破壊された。興味深いことに、同一濃度のCAが注射された尾に比べ、DCA注射された尾において、筋肉の損傷が著しかった。DCA注射またはCA注射されたマウスの皮膚層は、2つの場合いずれにおいても、深刻に損傷されていない。
【0140】
浮腫(edema)は、DCA注射によって引き起こされる典型的な有害事象の一つである。浮腫の深刻度は、胆汁塩注射後、ラット足の厚みによってモニタリングした(
図17)。胆汁塩溶液の製剤は、類似した組織溶解効果を示す濃度及びpHによって調整された(
図17A及び
図17B)。同一体積のPBSを注射しても、足厚みの増加は示さなかった。対照的に、胆汁塩の注射により、ラット足の厚みが増大した。たとえ全ての胆汁塩組成において組織懐死活性が類似しているとしても、浮腫の深刻性は各胆汁塩において異なっていた。DCA投与された足が最も深刻な浮腫表現型を示した。DCAと比較と比較して、UDCA、HDCA及びCDCAは注射後に若干低い症状を示した。最も驚くべきことに、CA注射によって誘導されたはれ(swelling)は、DCAと比較して非常に穏健な程度であった。CAによる足厚みの増大は、DCAの場合に比べ、半分未満であった。かような結果は、同一pH(pH7.4)の胆汁塩溶液の処理によって再現された(
図17C及び
図17D)。以前の実験とほぼ同一の結果は、pHが胆汁酸注射後の浮腫に影響を及ぼす要因ではないということを示す(
図17E)。
【0141】
次に、皮膚層における胆汁塩の有害効果について試験した。多様な濃度の胆汁塩(pH7.4に調整)及びPBSを、生きているマウスの皮膚下に注射し、前記皮膚に対して観察される損傷をモニタリングした(
図18)。PBS処理されたマウスの皮膚では、検出可能な病変が観察されなかった。DCAで処理することで、注射された領域で深刻な皮膚病変が引き起こされた。最も低い用量(0.5%)でDCAを処理した場合でも、皮膚上で小さい斑点病変が誘導された。さらに高濃度でDCAが注射された部位では、大きい病変、膿み(erosion)及び潰瘍が観察された。DCAとは対照的に、CAで注射した場合には、注射された領域において、著しく少ない病変が形成された。CAの高用量(1.5%)で、小さい斑点病変のみが観察された。さらに低い用量では、CA処理されたマウスの皮膚においていかなる検出可能な病変も観察されなかった。皮膚損傷は、胆汁塩の注射部位上に形成された病変の大きさ及び深刻度によって点数を付けた。最も高い用量でCAを処理した場合でも(1.5%)、最も低い用量でDCAを処理した場合に比べ(0.5%)、さらに低い損傷点数を示した。かような結果は、CA処理がDCA処理に比べて皮膚において著しく低減された有害事象を引き起こすということを示す。
【0142】
興味深いことに、唯一商業的に購入可能な脂肪溶解注射の成分であるDCAのみが、生理的pHで不安定性を示し、他の胆汁塩に比べて注射後により深刻な有害事象を引き起こした。試験された胆汁塩のうち、TUDCAは、in vitro試験において、細胞溶解活性を有さず、追加分析から排除された。UDCA及びCDCAはin vitro試験及びex vivo試験で穏健な細胞溶解活性を示したが、in vivo試験で適した組織溶解活性を示さなかった。また、これらの化合物は注射部位で深刻な炎症を示した。結果として、CDCA及びCAが、それら試験された胆汁塩のうち脂肪溶解注射に適した成分として選択された。これらの実験の要約を下記表4に示す。
【0143】
【表4】
【0144】
本実施例で提示された結果は、個々の胆汁塩による脂肪溶解効能を評価した最初の研究であると判断される。界面活性剤の強度は胆汁塩の脂肪溶解効果の核心的決定因子(critical determinant)であるが、in vitro条件、ex vivo条件及びin vivo条件における異なる用量反応は、個々の胆汁塩の溶解効果がその環境によって調節されるということを暗示する。CAがin vivoにおいて予期せぬ高い溶解活性を示し、注射された領域において低減された有害事象を示すということは、さらに安全な脂肪溶解注射の開発を促進する。
【0145】
本実施例で提示された結果から、低いpHは胆汁塩の細胞溶解活性を向上させるため、本実施例で開示された実験で使用されたような低いpHでは、低濃度の胆汁塩が使用されうることが立証される。しかし、本実験で使用された低いpHは、胆汁塩製剤の有害効果を増大させなかった。かような結果から、適したpH条件において、有害効果が細胞溶解活性から区分されることが立証される。従って、低濃度かつ低pHの胆汁塩を使用することで、細胞溶解活性を低下させることなく、有害効果を低減させることができる。さらに、中性pHは、注射痛症に関連する有害効果を低減させることができる。
【0146】
本明細書で引用されるそれぞれのまたは全ての特許、特許出願及び刊行物の開示は、それ全体として援用によって、本明細書に組み込まれる。たとえ本発明が特定の実施形態を参照して開示されているとしても、他の当業者によって本発明の他の実施形態及び変形物が本発明の真の精神及び範囲から外れることなく考案されうることは明白である。特許請求の範囲は、かような全ての実施形態、及び均等な変形物を含むものであると解釈されなければならない。