特許第6437120号(P6437120)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6437120-チリングユニット 図000002
  • 特許6437120-チリングユニット 図000003
  • 特許6437120-チリングユニット 図000004
  • 特許6437120-チリングユニット 図000005
  • 特許6437120-チリングユニット 図000006
  • 特許6437120-チリングユニット 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437120
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】チリングユニット
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20181203BHJP
   F25B 43/00 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   F25B1/00 351Z
   F25B1/00 351N
   F25B1/00 385Z
   F25B43/00 L
   F25B1/00 387A
   F25B1/00 391
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-532319(P2017-532319)
(86)(22)【出願日】2015年8月5日
(86)【国際出願番号】JP2015072254
(87)【国際公開番号】WO2017022101
(87)【国際公開日】20170209
【審査請求日】2017年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正紘
(72)【発明者】
【氏名】田中 航祐
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】大越 靖
【審査官】 山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−82653(JP,A)
【文献】 特開2014−119161(JP,A)
【文献】 特開平11−83212(JP,A)
【文献】 特開2003−240368(JP,A)
【文献】 特開2001−91023(JP,A)
【文献】 特開2001−141324(JP,A)
【文献】 特開2014−222145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、流路切替装置、空気熱交換器、第1の絞り装置および熱媒体熱交換器が配管で順に接続され、冷媒が流れる冷媒回路と、
前記第1の絞り装置と前記熱媒体熱交換器との間と、前記第1の絞り装置と前記空気熱交換器との間とにおいて、前記冷媒回路と並列に接続するバイパス回路とを備え、
前記流路切替装置は、前記熱媒体熱交換器が蒸発器となって熱媒体を冷却する冷却運転モードとなる流路と前記熱媒体熱交換器が凝縮器となって前記熱媒体を加熱する加熱運転モードとなる流路とに切り替えることができ、
前記バイパス回路は、
前記バイパス回路に設けられ、前記バイパス回路を流れる冷媒の流量を制御する流量調整装置、前記バイパス回路に設けられ、前記バイパス回路を流れる冷媒を前記流量調整装置と連携して調整する第2の絞り装置、および前記バイパス回路の前記流量調整装置と前記第2の絞り装置の間に設けられ、前記流量調整装置または前記第2の絞り装置とを通過した液冷媒を溜める冷媒タンクを有し、
前記熱媒体の温度、外気の温度および前記冷媒タンク内の前記液冷媒の量から、少なくとも前記冷却運転モードの開始または前記加熱運転モード開始の前に、前記冷媒タンクに前記液冷媒を溜めるか否かを判定する判定装置をさらに備えるチリングユニット。
【請求項2】
前記熱媒体の温度を検出する熱媒体温度センサーと、
前記外気の温度を検出する外気温度センサーと、
前記冷媒タンク内の前記液冷媒の量を検出する冷媒量検出センサーと
さらに備える請求項1に記載のチリングユニット。
【請求項3】
前記加熱運転モード開始前に、前記空気熱交換器側から前記第1の絞り装置側に冷媒が流れるように前記流路切替装置を切り替えて前記空気熱交換器側から流入する前記液冷媒を前記冷媒タンクに溜め、
前記冷却運転モード開始前に、前記熱媒体熱交換器側から前記第1の絞り装置側への冷媒の流れるように前記流路切替装置を切り替えて前記熱媒体熱交換器側から流入する前記液冷媒を前記冷媒タンクに溜める運転を行う請求項1または請求項2に記載のチリングユニット。
【請求項4】
前記冷媒タンクは、
タンク本体と、
前記タンク本体の上部に設置され、前記第1の絞り装置と前記熱媒体熱交換器との間の配管と、前記タンク本体とをつなぐ第1の配管が接続される第1の配管接続部と、
前記タンク本体の下部に設置され、前記第1の絞り装置と前記空気熱交換器との間の配管と、前記タンク本体とをつなぐ第2の配管が接続される第2の配管接続部と、
前記タンク本体内に設置され、前記第2の配管接続部と連通して、前記タンク本体の上部に向けて前記第2の配管を延長する延長配管と、
該延長配管の下部に形成され、前記タンク本体に溜まった冷凍機油を前記冷媒回路に戻す返油穴と
を備える請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のチリングユニット。
【請求項5】
前記冷媒タンクは、
タンク本体と、
前記タンク本体の上部に設置され、前記第1の絞り装置と前記熱媒体熱交換器との間の配管と、前記タンク本体とをつなぐ第1の配管が接続される第1の配管接続部と、
前記タンク本体の上部に設置され、前記第1の絞り装置と前記空気熱交換器との間の配管と、前記タンク本体とをつなぐ第2の配管が接続される第2の配管接続部と、
前記タンク本体の下部と前記第2の配管とを接続して前記タンク本体に溜まった冷凍機油を前記冷媒回路に戻す返油配管と、
該返油配管を流れる前記冷凍機油の量を調整する油調整装置と
を備える請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のチリングユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチリングユニットに関するものである。特に液バック防止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、冷媒回路において、余剰冷媒を溜めておくアキュムレーターを有する冷凍サイクル装置がある。アキュムレーターは、余剰冷媒を液状の冷媒(液冷媒)として溜めておく容器である。ここで、たとえば、停止した冷媒回路を起動させる際、蒸発器、圧縮機の吸入側の配管などに溜まった液冷媒が、圧縮機に流入する液バックが発生する。圧縮機に多くの液冷媒が流入すると故障原因となる。そこで、液バックを抑制するため、従来、アキュムレーターに液冷媒を溜めるようにして、圧縮機に液冷媒が戻らないようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−290371号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、冷媒をアキュムレーターに溜めて液バックを防ごうとすると、アキュムレーターの容器を大きくして、容積を確保しなければならなくなる。このため、コンパクト化および低コスト化の要請に応えることができないことになる。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、アキュムレーターによらずとも液バックの発生を防止することができるチリングユニットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るチリングユニットは、圧縮機、流路切替装置、空気熱交換器、第1の絞り装置および熱媒体熱交換器が配管で順に接続され、冷媒が流れる冷媒回路と、第1の絞り装置と熱媒体熱交換器との間と、第1の絞り装置と空気熱交換器との間とにおいて、冷媒回路と並列に接続するバイパス回路とを備え、流路切替装置は、熱媒体熱交換器が蒸発器となって熱媒体を冷却する冷却運転モードとなる流路と熱媒体熱交換器が凝縮器となって熱媒体を加熱する加熱運転モードとなる流路とに切り替えることができ、バイパス回路は、バイパス回路に設けられ、バイパス回路を流れる冷媒の流量を制御する流量調整装置、バイパス回路に設けられ、バイパス回路を流れる冷媒を流量調整装置と連携して調整する第2の絞り装置、およびバイパス回路の流量調整装置と第2の絞り装置の間に設けられ、流量調整装置または第2の絞り装置とを通過した液冷媒を溜める冷媒タンクを有し、熱媒体の温度、外気の温度および冷媒タンク内の液冷媒の量から、少なくとも冷却運転モードの開始または加熱運転モード開始の前に、冷媒タンクに液冷媒を溜めるか否かを判定する判定装置をさらに備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るチリングユニットによれば、運転制御装置の制御に基づいて、チリングユニットが、少なくとも通常の加熱運転モードまたは冷却運転モードを行う前に、冷媒タンクに液冷媒が溜まった状態にすることで、通常運転開始時における液バックを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態1に係るチリングユニット100の構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態1に係るチリングユニット100における冷媒タンク83の構成を示す図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る冷房前ポンプダウン運転における動作などを説明する図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る暖房前ポンプダウン運転における動作などを説明する図である。
図5】本発明の実施の形態2に係る運転前ポンプダウン運転の判定に係る説明を行うための図である。
図6】本発明の実施の形態3に係るチリングユニット100における冷媒タンク83の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係るチリングユニットについて図面などを参照しながら説明する。以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、以下に記載する実施の形態の全文において共通することとする。そして、明細書全文に表されている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、明細書に記載された形態に限定するものではない。特に構成要素の組み合わせは、各実施の形態における組み合わせのみに限定するものではなく、他の実施の形態に記載した構成要素を別の実施の形態に適用することができる。また、添字で区別などしている複数の同種の機器などについて、特に区別したり、特定したりする必要がない場合には、添字を省略して記載する場合がある。そして、図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。そして、温度、圧力などの高低については、特に絶対的な値との関係で高低などが定まっているものではなく、各システム、各装置などにおける状態、動作などにおいて相対的に定まるものとする。
【0010】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係るチリングユニット100の構成を示す図である。図1に基づいて、チリングユニット100の構成、動作などについて説明する。本実施の形態におけるチリングユニット100は、冷媒を循環させる冷媒回路を構成し、冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)を利用して、熱を搬送する媒体となる熱媒体を冷却および加熱する運転を通常運転として行う。ここでは、水を熱媒体として用いるものとして説明する。また、本実施の形態では、水が搬送する熱によって対象空間を空気調和するものとする。このため、チリングユニット100の加熱運転を暖房運転とし、冷却運転を冷房運転として説明する。冷房運転は、後述するように、圧縮機10の吐出側と空気熱交換器30とが、四方弁20を介して接続される場合、および水の温度が下降する場合の少なくとも一方を満たした運転である。また、暖房運転は、後述するように、圧縮機10の吐出側と水熱交換器60とが四方弁20を介して接続される場合、および水の温度が上昇する場合の少なくとも一方を満たした運転である。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態のチリングユニット100は、圧縮機10、四方弁20、空気熱交換器30、分配キャピラリー40、主膨張弁50、水熱交換器60およびアキュムレーター70を有し、主となる冷媒回路を構成する。また、冷媒回路の構成機器の制御などを行う制御装置200を有している。
【0012】
圧縮機10は吸入した冷媒を圧縮して吐出する。ここで、圧縮機10は、たとえばインバータ駆動装置などを有するようにしてもよい。制御装置200からの指示に基づいて、駆動周波数を任意に変化させることにより、圧縮機10の容量(単位時間あたりの冷媒を送り出す量)を細かく変化させることができる。また、流路切替装置となる四方弁20は、制御装置200からの指示に基づいて、実行する運転によって冷媒の流れを切替える。たとえば、冷房運転などのときには、四方弁20は圧縮機10が吐出した高温高圧の冷媒が空気熱交換器30に流入するように冷媒が流れるようにする。また、暖房運転などのときには、圧縮機10の吐出した高温高圧の冷媒が水熱交換器60に流入するように冷媒が流れるようにする。
【0013】
空気熱交換器30は、複数の伝熱管を有し、伝熱管を通過する冷媒と空気(たとえば、外気)との熱交換を行う。空気熱交換器30は、暖房運転時においては蒸発器として機能し、主膨張弁50(分配キャピラリー40)側から流入した低圧の冷媒と空気との熱交換を行い、冷媒を蒸発させて気化させる。また、冷房運転時においては凝縮器として機能し、圧縮機10側から流入した低圧の冷媒と空気との熱交換を行い、冷媒を凝縮させて液化させる。分配器となる分配キャピラリー40は、たとえばキャピラリーチューブなどを有している。分配キャピラリー40は、空気熱交換器30が有する複数の伝熱管に、主膨張弁50側から流れてきた冷媒を分配する。
【0014】
熱媒体熱交換器となる水熱交換器60は、冷媒と水との熱交換を行う。水熱交換器60は、たとえば暖房運転時においては凝縮器として機能し、圧縮機10側から流入した冷媒と水との熱交換を行い、冷媒を凝縮させて液化(または気液二相化)させ、水を加熱する。一方、冷房運転時においては蒸発器として機能し、主膨張弁50側から流入した冷媒と水との熱交換を行い、冷媒を蒸発させて気化させ、水を冷却する。第1の絞り装置となる主膨張弁50は、たとえば開度を変化させることで、水熱交換器60における冷媒の圧力などを調整をする。主膨張弁50は、冷媒の温度に基づいて開度を変化する感温式膨張弁などであってもよいが、本実施の形態では、制御装置200からの指示に基づいて開度を変化させる電子式膨張弁で構成する。アキュムレーター70は、圧縮機10の吸入側に設けられており、冷媒回路において余剰となる冷媒を貯留する。
【0015】
また、本実施の形態のチリングユニット100は、主膨張弁50と並列に接続されるポンプダウン流路80を有している。ポンプダウン流路80は、第1の分岐配管81、第2の分岐配管82、冷媒タンク83、電磁弁84およびポンプダウン膨張弁85により構成する。
【0016】
第1の配管となる第1の分岐配管81は、主膨張弁50と水熱交換器60との間の配管と、冷媒タンク83(後述するタンク本体91)とをつなぐ分岐配管である。流量調整装置となる電磁弁84は、第1の分岐配管81に設置される。電磁弁84は、制御装置200からの指示に基づいて弁を開放または閉止し、ポンプダウン流路80に冷媒を通過させるか否かを制御する。ここでは、流量調整装置を電磁弁84で構成するが、流路を開閉して冷媒を通過させるか否かを制御することができれば、たとえば膨張弁などを流量調整装置として用いてもよい。
【0017】
第2の配管となる第2の分岐配管82は、主膨張弁50と分配キャピラリー40(空気熱交換器30)との間の配管と、冷媒タンク83(後述するタンク本体91)とをつなぐ分岐配管である。第2の絞り装置となるポンプダウン膨張弁85は、制御装置200からの指示に基づいて開度を変化させることができ、冷媒タンク83に流入出する冷媒量を調整する。
【0018】
図2は本発明の実施の形態1に係るチリングユニット100における冷媒タンク83の構成を示す図である。本実施の形態の冷媒タンク83は、タンク本体91、第1の配管接続部92、第2の配管接続部93、延長配管94および返油穴95を有している。タンク本体91は液冷媒を溜める容器である。第1の配管接続部92は、タンク本体91の上部に設置される。第1の配管接続部92には第1の分岐配管81が接続される。また、第2の配管接続部93は、タンク本体91の下部に設置される。第2の配管接続部93には第2の分岐配管82が接続される。
【0019】
延長配管94は、タンク本体91内に突出し、上部に開口部を有している。延長配管94は、第2の配管接続部93を介して第2の分岐配管82と連通することで、タンク本体91内まで第2の分岐配管82を延長している。返油穴95は、延長配管94の下部に形成され、冷媒とともにタンク本体91に溜まった冷凍機油を冷媒回路に戻す。冷凍機油は、圧縮機10の焼き付きなどを防ぐ油である。たとえば液冷媒よりも密度が高く、非相溶の冷凍機油(冷媒に溶け込まない油)は、液冷媒と分離して、タンク本体91内において液冷媒よりも下部に溜まる。そこで、返油穴95は、タンク本体91内のできる限り下部の位置(望ましくは底面との境界部分)に設けることが望ましい。
【0020】
また、外気温度センサー211、水温センサー212および液面検知器213を有している。外気温度センサー211は、空気熱交換器30における冷媒との熱交換対象となる外気の温度を検出する。熱媒体温度センサーとなる水温センサー212は、水熱交換器60における冷媒との熱交換対象となる水の温度を検出する。液面検知器213は、冷媒タンク83内に溜まった液冷媒の液面を検知する。たとえば、冷媒タンク83内の液冷媒の状態(たとえば満液の状態)にあるか否かを検知する。ここで、本実施の形態では、液面検知器213が冷媒タンク83が満液であるかどうかに関する検知を行うが、これに限定するものではない。たとえば冷媒タンク内の液冷媒量を検知するセンサーなどを有していてもよい。
【0021】
制御装置200は、チリングユニット100の制御を行う。本実施の形態の制御装置200は、少なくとも運転制御装置210および判定装置220を有している。運転制御装置210は、チリングユニット100全体の運転制御を行う。本実施の形態の運転制御装置210は、特に通常運転(冷房運転と暖房運転とを切り替えて運転を行う場合も含む)を行う前段階において、冷媒タンク83に液冷媒を溜める運転前ポンプダウン運転を行う。運転前ポンプダウン運転を行う際には、通常運転と同様の圧縮機10、主膨張弁50などの機器だけでなく、電磁弁84およびポンプダウン膨張弁85などを制御する。また、判定装置220は、たとえば外気温度センサー211、水温センサー212の検出に係る温度、液面検知器213の検知などに基づいて、運転停止など、各種判定を行う。
【0022】
ここで、たとえば本実施の形態における制御装置200の運転制御装置210および判定装置220を、たとえばそれぞれ異なるハードウェアで装置構成することができる。また、CPU(Central Prosessing Unit)のような演算制御手段(コンピュータ)で構成する一方、その処理手順をあらかじめプログラム化し、ソフトウェア、ファームウェアなどで構成することもできる。演算制御手段がそのプログラムを実行し、そのプログラムに基づく処理を行い、上記の各装置が行う処理を実現する。これらのプログラムのデータはたとえば記憶装置(図示せず)に記憶するようにしてもよい。
【0023】
本実施の形態のチリングユニット100は、少なくとも通常運転を開始する際、その前段階として運転前ポンプダウン運転を行うものである。ここで、運転前ポンプダウン運転については、冷房運転を行う前に行う冷房前ポンプダウン運転と暖房運転を行う前に行う暖房前ポンプダウン運転とに分かれる。
【0024】
図3は本発明の実施の形態1に係る冷房前ポンプダウン運転における動作などを説明する図である。冷房運転では、水熱交換器60側からアキュムレーター70(圧縮機10)に冷媒が流れる。このため、冷房運転開始時に、水熱交換器60に寝込んだ液冷媒がアキュムレーター70(圧縮機10)側に流れる量をできる限り少なくしたい。そこで、冷房運転前に、水熱交換器60などの液冷媒を冷媒タンク83に溜め、アキュムレーター70側に流れる液冷媒量を抑える。
【0025】
冷房前ポンプダウン運転を行う際、運転制御装置210は、冷媒の流れが、暖房運転と同様になるように四方弁20における流路を設定する。そして、圧縮機10を起動前は、電磁弁84を閉止しておく。また、ポンプダウン膨張弁85は開放しておく。また、主膨張弁50は閉止しておく(図3(a))。
【0026】
そして、電磁弁84を開放する。また、ポンプダウン膨張弁85を少し開放(微開放)する。また、主膨張弁50を開放する(図3(b))。そして、圧縮機10を起動する。主膨張弁50を閉止した状態で運転前ポンプダウン運転を、冷媒タンク83に液冷媒が溜まりやすくなるが、運転が安定しない。そこで、冷媒回路を安定させつつ運転前ポンプダウン運転を行うために、主膨張弁50の開度を制御しながら行う。
【0027】
圧縮機10を起動すると、水熱交換器60などにある冷媒が水熱交換器60側から流出し、主膨張弁50側を流れるとともに、一部の冷媒はポンプダウン流路80側に流れる。ポンプダウン流路80側に流れた冷媒は、第1の分岐配管81(電磁弁84)を通過して冷媒タンク83に流入する。このとき、冷媒タンク83(タンク本体91)のガス状の冷媒(ガス冷媒)は、押し出される形で、延長配管94の開口部を介して冷媒タンク83から流出し、第2の分岐配管82(ポンプダウン膨張弁85)を通過して主となる冷媒回路に合流する。
【0028】
冷媒タンク83に流入した冷媒のうち、液冷媒はタンク本体91内に貯留する。このとき、冷媒とともに流入した冷凍機油は、タンク本体91の下部に滞留するが、返油穴95を介してガス冷媒とともに冷媒タンク83から流出し、第2の分岐配管82を通過して主となる冷媒回路に合流する。
【0029】
判定装置220は、液面検知器213からの信号に基づいて、冷媒タンク83が満液になったものと判定すると、運転制御装置210に冷房前ポンプダウン運転を終了させる。運転制御装置210は、電磁弁84および主膨張弁50を閉止する(図3(c))。そして圧縮機10を停止して、冷房前ポンプダウン運転を終了する。そして、運転制御装置210は、冷房運転の制御に移行する。
【0030】
図4は本発明の実施の形態1に係る暖房前ポンプダウン運転における動作などを説明する図である。暖房運転では、空気熱交換器30側からアキュムレーター70(圧縮機10)に冷媒が流れる。このため、暖房運転開始時に、空気熱交換器30に寝込んだ液冷媒がアキュムレーター70(圧縮機10)側に流れる量をできる限り少なくしたい。そこで、暖房運転前に、空気熱交換器30などの液冷媒を冷媒タンク83に溜め、アキュムレーター70側に流れる液冷媒量を抑える。
【0031】
暖房前ポンプダウン運転を行う際、運転制御装置210は、冷媒の流れが、冷房運転と同様になるように四方弁20における流路を設定する。そして、圧縮機10を起動前は、電磁弁84を開放しておく。また、ポンプダウン膨張弁85は閉止しておく。また、主膨張弁50は閉止しておく(図4(a))。
【0032】
そして、電磁弁84を開放する。また、ポンプダウン膨張弁85を少し開放(微開放)する。また、主膨張弁50を開放する(図4(b))。そして、圧縮機10を起動する。
【0033】
圧縮機10を起動すると、空気熱交換器30などにある冷媒が空気熱交換器30側から流出し、主膨張弁50側を流れるとともに、一部の冷媒はポンプダウン流路80側に流れる。ポンプダウン流路80側に流れた冷媒は、第2の分岐配管82(ポンプダウン膨張弁85)を通過して冷媒タンク83に流入する。このとき、冷媒タンク83(タンク本体91)のガス状の冷媒(ガス冷媒)は、押し出される形で、第1の配管接続部92を介して冷媒タンク83から流出し、第1の分岐配管81(電磁弁84)を通過して主となる冷媒回路に合流する。冷媒タンク83に流入した冷媒のうち、液冷媒はタンク本体91内に貯留する。
【0034】
判定装置220は、液面検知器213からの信号に基づいて、冷媒タンク83が満液になったものと判定すると、運転制御装置210に暖房前ポンプダウン運転を終了させる。運転制御装置210は、ポンプダウン膨張弁85および主膨張弁50を閉止する(図4(c))。そして圧縮機10を停止して、暖房前ポンプダウン運転を終了する。そして、運転制御装置210は、暖房運転の制御に移行する。
ここで、冷凍機油については、冷媒タンク83が満液になることで、液冷媒と混合した冷凍機油が、冷媒タンク83から流出する。
【0035】
以上のように、実施の形態1のチリングユニット100によれば、たとえば、通常運転(暖房運転または冷房運転)を行う前段階において、運転前ポンプダウン運転を行い、液バックの危険がある液冷媒を冷媒タンク83に溜めてから通常運転を行うようにしたので、アキュムレーター70の容積を少なくすることができる。このため、チリングユニット100の小型化をはかることができる。たとえばアキュムレーター70の容積を約1/3程度にすることが期待できる。
【0036】
実施の形態2.
図5は本発明の実施の形態2に係る運転前ポンプダウン運転の判定に係る説明を行うための図である。上述した実施の形態1では特に規定しなかったが、たとえば、実施の形態1で示した運転前ポンプダウン運転を行うタイミングで、運転前ポンプダウン運転を行うか否かを判定するようにしてもよい。本実施の形態における判定は、制御装置200の判定装置220が行うものとする。
【0037】
図5に示すように、本実施の形態では、チリングユニット100の状態、温度関係および冷媒タンク83の状態に基づいて判定を行う。判定装置220は、チリングユニット100の状態については、冷房運転前の停止状態かまたは暖房運転前の停止状態かを基準として判定する。また、判定装置220は、温度関係については、空気温度(外気温度センサー211の検出に係る温度)が水温(水温センサー212の検出に係る温度)以上かまたは未満(水温に対して空気温度が低い)かを基準として判定する。判定装置220は、冷媒タンク83の状態については、満液かまたは満液以外かを基準として判定する。本実施の形態では、判定装置220は、チリングユニット100の状態、温度関係および冷媒タンク83の状態の順序で判定を行うが、順序について限定するものではない。
【0038】
判定装置220は、冷房運転前の停止状態かまたは暖房運転前の停止状態かを判定する。冷房運転前の停止状態であると判定すると、NO.01〜NO.08のいずれかとなる。冷房運転前の停止状態であると判定すると、NO.09〜NO.16のいずれかとなる。
【0039】
まず、冷房運転前の停止状態であると判定した場合について説明する。判定装置220は、空気温度が水温以上かまたは未満かを判定する。たとえば空気温度が水温未満である(NO.05〜NO.08)と判定すると、空気熱交換器30側において、液冷媒が溜まることになり、このとき、水熱交換器60の冷媒は移動して寝込む。したがって、空気温度が水温未満の状態で、チリングユニット100が冷房運転を開始したとしても、空気熱交換器30における液冷媒は、水熱交換器60において蒸発されることになるので、液バックが発生する危険が少ない。したがって、判定装置220は、冷房前ポンプダウン運転を行う必要がないと判定する。運転制御装置210は、判定装置220の判定に基づいて、冷房前ポンプダウン運転は行わない。
【0040】
一方、判定装置220は、空気温度が水温以上である(NO.01〜NO.04)と判定すると、さらに、液面検知器213の検知に基づいて、満液かまたは満液以外かを判定する。判定装置220は、満液である(NO.01、NO.03)と判定すると、液冷媒の大部分が冷媒タンク83に貯留されており、液バックが発生する危険が少ないとする。したがって、判定装置220は、冷房前ポンプダウン運転を行う必要がないと判定する。
【0041】
判定装置220は、満液以外である(NO.02、NO.04)と判定すると、水熱交換器60に冷媒が寝込むことで、液冷媒が多量に溜まっており、液バックが発生する可能性があるとする。したがって、判定装置220は、運転前ポンプダウン運転を行う必要があると判定する。運転制御装置210は、判定装置220の判定に基づいて、冷房前ポンプダウン運転を行う。
【0042】
次に暖房運転前の停止状態であると判定した場合について説明する。判定装置220は、空気温度が水温以上かまたは未満かを判定する。たとえば空気温度が水温以上である(NO.09〜NO.12)と判定すると、水熱交換器60側において、液冷媒が溜まることになり、このとき、空気熱交換器30の冷媒は移動して寝込む。したがって、空気温度が水温以上の状態で、チリングユニット100が暖房運転を開始したとしても、水熱交換器60における液冷媒は、空気熱交換器30において蒸発されることになるので、液バックが発生する危険が少ない。したがって、判定装置220は、暖房前ポンプダウン運転を行う必要がないと判定する。運転制御装置210は、判定装置220の判定に基づいて、暖房前ポンプダウン運転は行わない。
【0043】
一方、判定装置220は、空気温度が水温未満である(NO.13〜NO.16)と判定すると、さらに、液面検知器213の検知に基づいて、満液かまたは満液以外かを判定する。判定装置220は、満液である(NO.13、NO.15)と判定すると、液冷媒の大部分が冷媒タンク83に貯留されており、液バックが発生する危険が少ないとする。したがって、判定装置220は、暖房前ポンプダウン運転を行う必要がないと判定する。
【0044】
判定装置220は、満液以外である(NO.14、NO.16)と判定すると、空気熱交換器30に冷媒が寝込むことで、液冷媒が多量に溜まっており、液バックが発生する可能性があるとする。したがって、判定装置220は、暖房前ポンプダウン運転を行う必要があると判定する。運転制御装置210は、判定装置220の判定に基づいて、暖房前ポンプダウン運転を行う。
【0045】
以上のように、実施の形態2のチリングユニット100によれば、判定装置220が運転前ポンプダウン運転を行うかどうかを判定するようにしたので、不要な運転前ポンプダウン運転を行わずにすむ。
【0046】
実施の形態3.
図6は本発明の実施の形態3に係るチリングユニット100における冷媒タンク83の構成を示す図である。本実施の形態は、実施の形態1において、図2を用いて説明した冷媒タンク83とは別の構成例の冷媒タンク83を示すものである。
【0047】
図6において、実施の形態1において図2を用いて説明した冷媒タンク83と異なる部分を中心に説明する。図2の第2の配管接続部93は、タンク本体91の下部に設置されていたが、本実施の形態の冷媒タンク83では、第1の配管接続部92と同様にタンク本体91の下部に設置されている。
【0048】
また、本実施の形態の冷媒タンク83は、第3の配管接続部96、返油配管97および返油調整装置となる返油キャピラリー98を有している。第3の配管接続部96は、タンク本体91の下部に設置されている。また、返油配管97は、端部の一方が第3の配管接続部96に接続され、他方が第2の分岐配管82に接続されている。返油配管97は、タンク本体91内の下部に溜まる冷凍機油を第2の分岐配管82に流す配管である。返油キャピラリー98は、返油配管97を流れる冷凍機油の量を調整する。
【0049】
実施の形態4.
上述した実施の形態1〜実施の形態3のチリングユニット100では、通常運転を行う前段階において運転前ポンプダウン運転を行うようにしたが、特に限定するものではない。たとえば、通常運転前の他に、さらに定期的(周期的)に運転前ポンプダウン運転を行うようにしてもよい。また、判定装置220が、実施の形態2において説明した判定を定期的に行い、運転前ポンプダウン運転が必要であると判定すれば、運転制御装置210が運転前ポンプダウン運転の制御を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 圧縮機、20 四方弁、30 空気熱交換器、40 分配キャピラリー、50 主膨張弁、60 水熱交換器、70 アキュムレーター、80 ポンプダウン流路、81 第1の分岐配管、82 第2の分岐配管、83 冷媒タンク、84 電磁弁、85 ポンプダウン膨張弁、91 タンク本体、92 第1の配管接続部、93 第2の配管接続部、94 延長配管、95 返油穴、96 第3の配管接続部、97 返油配管、98 返油キャピラリー、100 チリングユニット、200 制御装置、210 運転制御装置、211 外気温度センサー、212 水温センサー、213 液面検知器、220 判定装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6