特許第6437133号(P6437133)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437133
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】車載機器
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/27 20150101AFI20181203BHJP
   H04B 17/318 20150101ALN20181203BHJP
【FI】
   H04B17/27
   !H04B17/318
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-549895(P2017-549895)
(86)(22)【出願日】2015年11月10日
(86)【国際出願番号】JP2015081592
(87)【国際公開番号】WO2017081743
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2017年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123434
【弁理士】
【氏名又は名称】田澤 英昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 初音
(74)【代理人】
【識別番号】100199749
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 成
(74)【代理人】
【識別番号】100188880
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 辰哉
(74)【代理人】
【識別番号】100197767
【弁理士】
【氏名又は名称】辻岡 将昭
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】吉田 良和
【審査官】 安藤 一道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−004860(JP,A)
【文献】 特開2009−177588(JP,A)
【文献】 特開2015−142159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/27
H04B 17/318
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の座席及び前記座席と座席の間からなる複数の領域に区割りされた車室内で、複数のアンテナそれぞれで受信した前記車室内に存在する無線接続可能な無線通信機器の電波の強度と前記電波の強度を用いて前記無線通信機器の位置を判定するための強度用閾値との比較結果、及び前記複数のアンテナ間での電波の強度の差分と前記差分を用いて前記無線通信機器の位置を判定するための差分用閾値との比較結果に基づいて、前記無線通信機器が存在する前記複数の領域の中での位置を判定する位置判定部と、
前記位置判定部の判定結果を用いて、前記無線通信機器が存在する前記複数の領域の中での位置を示す画像信号を出力する表示制御部とを備えることを特徴とする車載機器。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記無線通信機器の識別情報も示した前記画像信号を出力することを特徴とする請求項1記載の車載機器。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記位置判定部の判定結果を用いて、無線接続する無線通信機器を選択させるための画像信号を出力することを特徴とする請求項1記載の車載機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室内に持ち込まれた無線通信機器と無線接続可能な車載機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Bluetooth(登録商標)、無線LAN等の近距離無線通信を用いて、車室内に持ち込まれた携帯電話等の無線通信機器と無線接続可能な車載機器が知られている。ユーザは、当該車載機器に接続したい無線通信機器がある場合、車載機器を操作して、接続可能な無線通信機器を検索させる。
ところで、車載機器の周囲に無線接続可能な無線通信機器が複数存在する場合、ユーザには、検索結果として複数の接続候補が表示される。このとき、ユーザは、表示された複数の接続候補の中から接続したい無線通信機器を選択する必要がある。しかし、各接続候補はSSID(Service Set Identifier)等で表示されており、接続したい無線通信機器のSSIDを予め調べてメモするなどしない限り、ユーザは、表示されている複数のSSIDの中から接続したい無線通信機器に対応するものを適切に選択することができない。
従って、表示されている各接続候補が、どの無線通信機器に対応しているのかが分かりやすい状態で、ユーザに表示できると望ましい。
【0003】
例えば特許文献1には、携帯電話が位置する座席を判別可能な車両監視装置が記載されている。各接続候補を、SSID等ではなく存在する位置で表示できれば、ユーザは、表示されている複数の接続候補の中から接続したい無線通信機器に対応した候補を選択しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009―140445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の技術では、無線通信機器が位置する座席を判定するためには、複数の座席のそれぞれと1対1に対応させて設置されたアンテナを介して、携帯電話の電波を受信する必要がある。例えば、座席ごとのドア内部に、アンテナが設置されている必要がある。
このため、判定したい座席の数だけアンテナが必要となる。また、ドア内部にアンテナを設置する場合は、設置コストが高くなることに加え、量販店で購入する後付けタイプの車載機器への適用が難しい。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、必ずしも座席と対応させて設置されたアンテナを用いなくとも、無線通信機器の位置を判定でき、ユーザが表示の中から無線接続したい無線通信機器を選択しやすくなる車載機器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る車載機器は、複数の座席及び座席と座席の間からなる複数の領域に区割りされた車室内で、複数のアンテナそれぞれで受信した車室内に存在する無線接続可能な無線通信機器の電波の強度と電波の強度を用いて無線通信機器の位置を判定するための強度用閾値との比較結果、及び複数のアンテナ間での電波の強度の差分と差分を用いて無線通信機器の位置を判定するための差分用閾値との比較結果に基づいて、無線通信機器が存在する複数の領域の中での位置を判定する位置判定部と、位置判定部の判定結果を用いて無線通信機器が存在する複数の領域の中での位置を示す画像信号を出力する表示制御部とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、複数の座席及び座席と座席の間からなる複数の領域に区割りされた車室内で、複数のアンテナそれぞれで受信した車室内に存在する無線接続可能な無線通信機器の電波の強度と電波の強度を用いて無線通信機器の位置を判定するための強度用閾値との比較結果、及び複数のアンテナ間での電波の強度の差分と差分を用いて無線通信機器の位置を判定するための差分用閾値との比較結果に基づいて、無線通信機器が存在する複数の領域の中での位置を判定する位置判定部を備え、位置判定部の判定結果を用いて無線通信機器が存在する複数の領域の中での位置を示す画像信号を出力する表示制御部を備えたので、無線通信機器が存在する複数の座席及び座席と座席の間からなる複数の領域の中での位置がわかりやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の実施の形態1に係る車載機器の構成を示すブロック図である。
図2】無線通信機器からの電波が、この発明の実施の形態1に係る車載機器の各アンテナで受信される際の様子を示す車室の平面図である。
図3図3A及び図3Bは、この発明の実施の形態1に係る車載機器の制御部のハードウェア構成例を示す図である。
図4】この発明の実施の形態1に係る車載機器の制御部の処理を示すフローチャートである。
図5】無線通信機器の位置判定を行う際の車室の区割り例を示す車室の平面図である。
図6】この発明の実施の形態1に係る車載機器の位置判定部による処理の詳細を示すフローチャートである。
図7】この発明の実施の形態1に係る車載機器の位置判定部による処理の詳細を示すフローチャートである。
図8図6及び図7に示す処理結果を用いてさらに位置判定をした際の判定例である。
図9図9A及び図9Bは、この発明の実施の形態1に係る車載機器の表示部に表示される画像例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
実施の形態1.
図1に、この発明の実施の形態1に係る車載機器1の構成を示す。
車載機器1は、近距離無線通信を用いて、車室内に持ち込まれた携帯電話等の無線通信機器と無線接続可能な機器である。具体的には、例えばカーナビゲーション装置、ディスプレイオーディオ等である。
車載機器1は、アンテナ2と、電波強度検知回路3と、制御部4と、表示部5と、記憶部6と、入力部7とを備える。
【0011】
アンテナ2は、複数設けられており、車室内に持ち込まれた無線通信機器が送信する電波を受信して、受信信号を電波強度検知回路3に出力する。アンテナ2は、車載機器1の不図示の筐体の内部に納められていてもよいし、当該筐体の外部に設けられて、ケーブルを介して電波強度検知回路3と接続していてもよい。複数のアンテナ2それぞれは、互いに異なる場所に設けられている。
電波強度検知回路3は、アンテナ2から受信信号が入力されると、当該受信信号の強度、つまりアンテナ2で受信した電波の強度を、各アンテナ2ごとに検知する。そして、電波強度検知回路3は、アンテナ2から入力された受信信号と当該受信信号の強度の検知結果とを、制御部4に出力する。
【0012】
制御部4は、位置判定部4aと、表示制御部4bと、処理実行部4cとを有する。
位置判定部4aは、電波強度検知回路3が検知した各アンテナ2での電波の強度、又は、当該強度のアンテナ間での差分を用いて、当該電波を送信した無線通信機器の車室内での位置を判定する。位置判定部4aによる位置判定は、車室内に持ち込まれた無線通信機器ごとに行われる。判定結果は、表示制御部4bに出力される。
【0013】
表示制御部4bは、位置判定部4aが出力した判定結果を用いて画像信号を作成し、表示部5に出力する。この画像信号は、無線通信機器の車室内での位置を示し、ユーザに無線接続する無線通信機器を選択させるためのものである。また、表示制御部4bは、処理実行部4cによる処理結果を受けて、目的地までの経路、音楽再生画面等を示す画像信号を作成し、表示部5に出力する処理も行う。
【0014】
処理実行部4cは、入力部7が出力した操作信号に従い、ユーザが選択した無線通信機器と車載機器1との無線接続を確立したり、ユーザが指定する経路検索、音楽再生等をしたりするなど、各種の処理を行う。また、この各種の処理結果を、適宜表示制御部4bに出力する。
【0015】
表示部5は、表示制御部4bが出力した画像信号が示す画像を表示する。表示部5は、例えば液晶ディスプレイである。例えば、後述する図9A及び図9Bに示すような画像を表示する。
記憶部6は、制御部4で行われる処理に必要な情報を記憶する。例えば、記憶部6は、位置判定部4aによる処理で使われる閾値を記憶する。また、記憶部6は、表示制御部4bによる処理で使われる車室モデル画像を記憶する。車室モデル画像とは、例えば車室の概略的な平面図を示した画像である。記憶部6は、各種メモリで構成される。
【0016】
入力部7は、ユーザ操作を受け付け、その操作内容を示す操作信号を、制御部4に出力する。入力部7は、リモコン、表示部5と一体となったタッチパネル等である。
【0017】
ここで、図2のように車室内に3台の無線通信機器10a〜10cが持ち込まれた場合を例に、位置判定部4aによる位置判定の概要を説明する。
車両前方に設置された車載機器1は、アンテナ2aとアンテナ2bの2本のアンテナを有し、アンテナ2aは運転席側、アンテナ2bは助手席側に位置する。アンテナ2a,2bの設置位置は一例であり、図示のものに限らない。
無線通信機器10aは助手席、無線通信機器10bは運転席、無線通信機器10cは後列席の助手席側、つまり後列席において紙面左側に存在している。
図2中の各矢印は、無線通信機器10a〜10cそれぞれが送信した電波が、アンテナ2a,2bに到達するまでの経路を示す。また、図2中の各矢印は、アンテナ2a,2bで受信されるそれらの電波の強度を、その太さで示している。なお、図2に示す電波の経路及び強度は、あくまでも一例であり、無線通信機器10a〜10cの仕様、車室内の環境等によって異なる状態を示すこともある。
【0018】
無線通信機器10aは、アンテナ2a,2bの両方と距離が近いが、特にアンテナ2bとの距離が近い。従って、無線通信機器10aにより送信されてアンテナ2a,2bにより受信される電波は、アンテナ2bでの受信強度が非常に高く、アンテナ2aでの受信強度もアンテナ2b程ではないが高くなる。
無線通信機器10bは、アンテナ2a,2bの両方と距離が近いが、特にアンテナ2aとの距離が近い。従って、無線通信機器10bにより送信されてアンテナ2a,2bにより受信される電波は、アンテナ2aでの受信強度が非常に高く、アンテナ2bでの受信強度もアンテナ2a程ではないが高くなる。
【0019】
無線通信機器10cは、運転席及び助手席のシートシャーシによりアンテナ2a,2bへの電波が遮断される。このため、無線通信機器10cからの電波はアンテナ2a,2bで直接受信されず、車両のボディシャーシ等で反射した後にアンテナ2a,2bで受信される。直接受信されないことに加え、アンテナ2a,2bまでの電波の到達経路が無線通信機器10a,10bに比べて長いため、無線通信機器10cが送信した電波のアンテナ2a,2bでの受信強度は、無線通信機器10a,10bのものよりも低い。また、アンテナ2aまでの電波の到達経路がアンテナ2bまでの電波の到達経路より長いので、アンテナ2aでの受信強度が特に低くなる。
【0020】
このように、車室内に持ち込まれた無線通信機器10a〜10cが送信する電波のアンテナ2a,2bでの受信強度は、無線通信機器10a〜10cが存在する位置によって、様々な値を示す。このことを利用して、位置判定部4aは、無線通信機器により送信されて複数のアンテナ2それぞれにより受信された電波の強度、または、無線通信機器により送信されて複数のアンテナ2それぞれにより受信された電波の強度のアンテナ間での差分に基づき、車室内に持ち込まれた無線通信機器の位置を判定する。
【0021】
制御部4の位置判定部4a、表示制御部4b、処理実行部4cの各機能は、処理回路により実現される。当該処理回路は、専用のハードウェアであっても、メモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)であってもよい。CPUは、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)とも呼ばれる。
【0022】
図3Aは、制御部4の各部の機能を、専用のハードウェアである処理回路100で実現した場合のハードウェア構成例を示す図である。処理回路100は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。位置判定部4a、表示制御部4b、処理実行部4cの各部の機能を別個の処理回路100を組み合わせて実現してもよいし、各部の機能を1つの処理回路100で実現してもよい。
【0023】
図3Bは、制御部4の各部の機能を、メモリ101に格納されるプログラムを実行するCPU102で実現した場合のハードウェア構成例を示す図である。メモリ101は、記憶部6を構成するものであってもよい。この場合、位置判定部4a、表示制御部4b、処理実行部4cの各部の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組合せにより実現される。ソフトウェア及びファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ101に格納される。CPU102は、メモリ101に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、制御部4の各部の機能を実現する。すなわち、制御部4は、後述する図4のフローチャートで示すステップST1,2、あるいは後述する図6のフローチャートで示すステップST10〜ステップST22、あるいは後述する図7のフローチャートで示すステップST30〜ステップST34が結果的に実行されることになるプログラム等を格納するためのメモリ101を有する。また、これらのプログラムは、制御部4の各部の手順又は方法をコンピュータに実行させるものであるとも言える。ここで、メモリ101は、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disc)等が該当する。
【0024】
なお、制御部4の各部の機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。例えば、表示制御部4b、処理実行部4cについては専用のハードウェアとしての処理回路でその機能を実現し、位置判定部4aについては処理回路がメモリに格納されたプログラムを読み出して実行することによってその機能を実現することが可能である。
【0025】
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組合せによって、上記の制御部4の各機能を実現することができる。
【0026】
次に、上記のように構成された車載機器1が、車室内に持ち込まれた無線通信機器と無線接続する際の処理について説明する。
無線通信機器が複数持ち込まれた状態で、ユーザが入力部7を介して車載機器1に無線通信機器の検索を指示すると、処理実行部4cが、アンテナ2を介して無線通信機器に応答要求信号を送信する。応答要求信号を受信した各無線通信機器は、自身のSSID等の識別情報を含めた信号を作成し、電波として送信する。
【0027】
複数のアンテナ2はそれぞれ、無線通信機器が送信する電波を受信して、受信信号を電波強度検知回路3に出力する。電波強度検知回路3は、入力された受信信号の強度を検知して、検知結果と共に受信信号を制御部4に出力する。この受信信号には、送信元となった無線通信機器のSSID等、無線通信機器を識別可能な識別情報が含まれている。
【0028】
ここで、制御部4による処理を、図4に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、位置判定部4aは、無線通信機器の位置を、当該無線通信機器が送信した電波のアンテナ2での受信強度を用いて判定する(ステップST1)。このとき、位置判定部4aは、電波の受信強度そのもの、又は、電波の受信強度のアンテナ間での差分を用いて判定を行う。また、電波強度検知回路3が検知結果と共に出力した受信信号が示す識別情報によって、どの無線通信機器からの電波の強度であるかが識別可能であり、位置判定部4aによる位置判定は無線通信機器ごとに行われる。位置の判定結果は、表示制御部4bに出力される。
【0029】
次に、表示制御部4bは、位置判定部4aが出力した判定結果を用いて、各無線通信機器の車室内での位置を示しユーザに無線接続する無線通信機器を選択させるための画像信号を作成して、表示部5に出力する(ステップST2)。
ユーザは、表示部5に表示された画像を見て、接続したい無線通信機器を選択する。ユーザの選択は、入力部7により操作信号として処理実行部4cに入力されて、処理実行部4cは、ユーザが選択した無線通信機器と車載機器1との無線接続を確立する処理を行う。
【0030】
ステップST1での処理について、図5に示すように、車室内を領域A〜Iの9つに区割りして処理を行う場合を例に以下詳細に説明する。車室内をいくつに区割りするかは、車両の大きさ、座席数等を考慮して、適宜決定するのが好ましい。
まず、図6に示すフローチャートを用いて、電波の強度そのものを用いて位置判定をする場合の一例について説明する。この位置判定は、無線通信機器それぞれについて順次行われ、それぞれの無線通信機器の位置が判定される。
位置判定部4aは、現在判定対象としている無線通信機器について、アンテナ2a,2bでの受信強度がどちらも第1の閾値a以上であるかを判定する(ステップST10)。
アンテナ2a,2bでの受信強度がどちらも第1の閾値a以上である場合(ステップST10;YES)、位置判定部4aは、現在判定対象としている無線通信機器が、領域A又は領域B又は領域Cに存在すると判定する(ステップST11)。第1の閾値aは、アンテナ2a,2bに近く、アンテナ2a,2bまで電波が直接到達する領域A,B,Cに無線通信機器が存在している場合に、アンテナ2a,2bで受信するであろう電波の強度を考慮して、適宜設定される。
【0031】
アンテナ2a,2bの少なくとも一方での受信強度が、第1の閾値a未満である場合(ステップST10;NO)、位置判定部4aは、アンテナ2aでの受信強度のみが第1の閾値a以上であるかを判定する(ステップST12)。
アンテナ2aでの受信強度のみが第1の閾値a以上である場合(ステップST12;YES)、位置判定部4aは、無線通信機器が領域C又は領域Eに存在すると判定する(ステップST13)。これは、アンテナ2aでの受信強度のみが第1の閾値a以上なら、運転席側つまり図5の紙面右側の領域C,F,Iに存在する可能性がまず浮上するが、領域F,Iの場合は運転席のシートシャーシによりアンテナ2aへの電波が遮られて、アンテナ2aでの受信強度は高くならないと考えられるからである。また、無線通信機器の送信アンテナの指向性がたまたまアンテナ2aに向けられて領域Eに存在すると、運転席と助手席の間を電波が通ってアンテナ2aでの受信強度が第1の閾値a以上となる可能性も考えられるからである。なお、領域A,Bに無線通信機器が存在するなら、アンテナ2bでの受信強度も第1の閾値a以上となるはずなので、ステップST13での判定結果に領域A,Bは含まれていない。
【0032】
アンテナ2aでの受信強度が第1の閾値a未満である場合(ステップST12;NO)、位置判定部4aは、アンテナ2bでの受信強度のみが第1の閾値a以上であるかを判定する(ステップST14)。
アンテナ2bでの受信強度のみが第1の閾値a以上である場合(ステップST14;YES)、位置判定部4aは、無線通信機器が領域A又は領域Eに存在すると判定する(ステップST15)。これは、ステップST13で既に述べたのと同様の理由が考えられるからである。
【0033】
アンテナ2a,2bでの受信強度がどちらも第1の閾値a未満である場合(ステップST14;NO)、位置判定部4aは、アンテナ2a,2bでの受信強度がどちらも第2の閾値b以下であるかを判定する(ステップST16)。なお、第2の閾値bは、第1の閾値aよりも小さい値である。
アンテナ2a,2bでの受信強度がどちらも第2の閾値b以下である場合(ステップST16;YES)、位置判定部4aは、無線通信機器が領域D又は領域F又は領域G又は領域H又は領域Iに存在すると判定する(ステップST17)。第2の閾値bは、アンテナ2a,2bから遠かったり、電波が車両のボディシャーシ等で反射してから到達したりする領域D,F,G,H,Iに無線通信機器が存在している場合にアンテナ2a,2bで受信するであろう電波の強度を考慮して、適宜設定される。領域Eは、運転席と助手席の間を電波が通ってアンテナ2a,2bに到達する可能性も考えられるので、ステップST17での判定結果には含まれていない。
【0034】
アンテナ2a,2bの少なくとも一方での受信強度が、第1の閾値a未満で第2の閾値bより大きい場合(ステップST16;NO)、位置判定部4aは、アンテナ2aでの受信強度のみが第2の閾値b以下であるかを判定する(ステップST18)。
アンテナ2aでの受信強度のみが第2の閾値b以下である場合(ステップST18;YES)、位置判定部4aは、無線通信機器が領域D又は領域G又は領域Hに存在すると判定する(ステップST19)。これは、アンテナ2aでの受信強度のみが第2の閾値b以下なら、助手席側つまり図5の紙面左側の領域A以外の領域D,Gに存在する可能性が高いと考えられるからである。また、無線通信機器の送信アンテナの指向性がたまたまアンテナ2bに向けられて領域Hに存在すると、運転席と助手席の間を電波が通ってアンテナ2bでの受信強度は第2の閾値bより大きく、アンテナ2aでの受信強度は第2の閾値b以下になる可能性も考えられるからである。
【0035】
アンテナ2aでの受信強度が第1の閾値a未満で第2の閾値bより大きい場合(ステップST18;NO)、位置判定部4aは、アンテナ2bでの受信強度のみが第2の閾値b以下であるかを判定する(ステップST20)。
アンテナ2bでの受信強度のみが第2の閾値b以下である場合(ステップST20;YES)、位置判定部4aは、無線通信機器が領域F又は領域H又は領域Iに存在すると判定する(ステップST21)。これは、ステップST19で既に述べたのと同様の理由が考えられるからである。
【0036】
アンテナ2a,2bでの受信強度がどちらも第1の閾値a未満で第2の閾値bよりも大きい場合(ステップST20;NO)、位置判定部4aは、無線通信機器が領域E又は領域Hに存在すると判定する(ステップST22)。これは、領域E,Hに無線通信機器が存在すると、アンテナ2a,2bまでの距離が必ずしも近い訳ではないのでアンテナ2a,2bでの受信強度が第1の閾値a以上にはならないが、運転席と助手席の間を電波が通ってアンテナ2a,2bでの受信強度が第1の閾値aより小さい第2の閾値bよりは大きくなる可能性が考えられるからである。
【0037】
このように、位置判定部4aは、アンテナ2a,2bでの受信強度そのものを用いることで、無線通信機器の車室内でのおおよその位置を判定することができる。
【0038】
次に、受信強度そのものではなく、受信強度のアンテナ間での差分を用いて位置判定をする場合の一例について、図7に示すフローチャートを用いて説明する。この位置判定は、無線通信機器それぞれについて順次行われ、それぞれの無線通信機器の位置が判定される。
位置判定部4aは、現在判定対象としている無線通信機器について、アンテナ2bでの受信強度がアンテナ2aでの受信強度よりも第3の閾値α以上大きいかを判定する(ステップST30)。
アンテナ2bでの受信強度がアンテナ2aでの受信強度よりも第3の閾値α以上大きい場合(ステップST30;YES)、位置判定部4aは、現在判定対象としている無線通信機器が、助手席側つまり図5の紙面左側の領域A又は領域D又は領域Gに存在すると判定する(ステップST31)。
【0039】
アンテナ2bでの受信強度がアンテナ2aでの受信強度よりも第3の閾値α以上大きくはない場合(ステップST30;NO)、位置判定部4aは、アンテナ2aでの受信強度がアンテナ2bでの受信強度よりも第3の閾値α以上大きいかを判定する(ステップST32)。
アンテナ2aでの受信強度がアンテナ2bでの受信強度よりも第3の閾値α以上大きい場合(ステップST32;YES)、位置判定部4aは、無線通信機器が運転席側つまり図5の紙面右側の領域C又は領域F又は領域Iに存在すると判定する(ステップST33)。このように、第3の閾値αは、運転席側の領域C,F,Iに無線通信機器が存在している場合のアンテナ2aでの受信強度とアンテナ2bでの受信強度に表れるであろう差、及び、助手席側の領域A,D,Gに無線通信機器が存在している場合のアンテナ2aでの受信強度とアンテナ2bでの受信強度に表れるであろう差を考慮して、適宜設定される。
【0040】
アンテナ2aでの受信強度がアンテナ2bでの受信強度よりも第3の閾値α以上大きくはない場合(ステップST32;NO)、位置判定部4aは、無線通信機器が領域B又は領域D又は領域E又は領域F又は領域Hに存在すると判定する(ステップST34)。これは、領域B,E,Hに無線通信機器が存在すると、アンテナ2aでの受信強度とアンテナ2bでの受信強度との間にあまり差が生じないと考えられるからである。また、領域D,Fに無線通信機器が存在する場合でも、ユーザの足元に無線通信機器が存在していたり、鞄の中に無線通信機器が存在していたりすると、アンテナ2a,2b両方で受信強度が大きく下がり、アンテナ2aとアンテナ2b間で受信強度の差があまり表れない可能性が考えられるからである。
【0041】
このように、位置判定部4aは、受信強度のアンテナ間での差分を用いることでも、無線通信機器の車室内でのおおよその位置を判定することができる。
【0042】
なお、図6で示した受信強度そのものを用いて位置判定をした結果と、図7で示した受信強度のアンテナ間での差分を用いて位置判定をした結果とを用いて、位置判定部4aはさらに無線通信機器の位置を絞り込んでもよい。つまり、位置判定部4aは、図6のフローにより算出された領域と図7のフローにより算出された領域との論理積を導くものとしてもよい。この場合に絞り込まれる領域を、図8に表として示す。図8中の黒塗り部分は、理論上成立しない組合せを表す。また、図8中の組合せP1及びP2では、図6のフローにより算出された領域と図7のフローにより算出された領域との論理積が存在しない。このような場合は、図6のフローによる判定結果を優先させることが考えられる。つまり、図6のフローにより領域E又は領域Hという領域が算出され、図7のフローにより領域A又は領域D又は領域Gという領域が算出された際の組合せP1では、領域E又は領域Hという図6のフローによる判定結果に従う。これは、図6に示すフローでは、アンテナ2a,2bでの受信強度そのものという絶対値を用いて判定をしているのに対して、図7に示すフローでは、受信強度のアンテナ間での差分という相対値を用いて判定をしているために、図6のフローによる判定結果の方が確度が高いと考えられるからである。
【0043】
図9A及び図9Bには、ステップST2で表示制御部4bが出力した画像信号により、表示部5に表示される画像の一例を示している。なお、これらの画像は、3台の無線通信機器が車室内に持ち込まれており、ステップST1の処理によってそのうちの1台が領域Aに、別の1台が領域Cに、更に別の1台が領域D又は領域Gに存在すると判定された場合のものである。
【0044】
表示制御部4bは、位置判定部4aによる判定結果を受けて、記憶部6に記憶されている車室モデル画像に各無線通信機器の位置情報を重畳した画像を作成し、画像信号として出力する。この場合に表示部5で表示される画像は、例えば図9Aのようなものである。3台の無線通信機器それぞれの位置を示すように、領域Aに円形のアイコンが1つ、領域Cに円形のアイコンが1つ、領域Dと領域Gをまたぐように楕円形のアイコンが1つ表示されている。各アイコンは、識別しやすいように、互いに異なる表示色で表示されている。
入力部7が表示部5と一体となったタッチパネルである場合、ユーザは、接続したい無線通信機器が存在する場所に対応する領域に表示されているアイコンをタッチする。これにより、処理実行部4cは、ユーザが選択した無線通信機器との接続処理を開始する。入力部7がリモコンである場合は、画像上に現れるカーソルをリモコンで操作するなどして、ユーザが接続したい無線通信機器に対応するアイコンを選択できるように構成すればよい。位置判定部4aでの判定で領域が1つに絞り込めず、領域Dと領域Gをまたぐように楕円形のアイコンが表示されたとしても、当該アイコンが持ち込まれた3台の無線通信機器のうちどれに対応しているかは、ユーザにとって容易に判断可能である。
【0045】
また、表示制御部4bは、位置判定部4aによる判定結果を受けて、車室モデル画像に各無線通信機器の位置情報を重畳した画像と無線通信機器のリスト画像とを合わせた画像を作成し、画像信号として出力する。この場合に表示部5で表示される画像は、例えば図9Bのようなものである。無線通信機器の車室内での位置を示しながら、それぞれの位置にある無線通信機器の識別情報例えばSSIDをリスト表示している。このようにすれば、ユーザは、無線通信機器の識別情報を確認しながら接続したい無線通信機器の選択作業を行うことができる。
図9Bのような画像が表示された場合、ユーザは、タッチ操作、リモコン操作等により、接続したい無線通信機器に対応する選択アイコンSを選択する。これにより、処理実行部4cに、選択した無線通信機器との接続処理を開始させる。または、図9Aのときと同様に、接続したい無線通信機器が存在する場所に対応する領域に表示されているアイコンを選択してもよい。なお、図9Bでは、各無線通信機器の識別情報はリスト表示されているが、リスト表示に代えて、無線通信機器が存在すると判定された領域に、当該無線通信機器の識別情報が重畳表示されてもよい。
【0046】
ユーザが接続したい無線通信機器が、他の無線通信機器と近接して存在している場合、位置判定部4aによる位置判定では、複数の無線通信機器が同じ領域に存在すると判定されることになる。すると、表示部5には、例えば、それらの無線通信機器をそれぞれ示したアイコンが同じ領域内に複数個重なった状態で画像が表示される。このときユーザは、接続したい無線通信機器が存在している位置から、重なって表示されている複数のアイコンのうちのどれかが、当該無線通信機器に対応したアイコンであるということまでは判断できる。この状態から、接続したい無線通信機器に対応したアイコンを特定するためには、接続したい無線通信機器をユーザが移動させればよい。すると、表示部5に表示された画像上で、接続したい無線通信機器に対応したアイコンも移動するので、ユーザは選択すべきアイコンを知ることができる。
このような処理は、ユーザがいずれかのアイコンを選択するまで、位置判定部4a及び表示制御部4bがステップST1及びST2の処理を繰り返し行うことで可能となる。あるいは、接続したい無線通信機器をユーザが移動させて他の無線通信機器と離してから、再度ステップST1及びST2の処理を行うよう入力部7を介して車載機器1に指示を与えることでも、対応可能である。
【0047】
なお、上記では、アンテナ2が2本設けられた場合を例に説明をした。しかしながら、アンテナ2を3本以上設けてもよい。アンテナ2の本数が多いほど、位置判定部4aは、各無線通信機器が存在する場所を絞り込んで判定することが可能になる。例えば車室に設けられた既存のアンテナを、3本目のアンテナ2として用いてもよい。もちろん、車載機器1に3本目のアンテナを備えてもよい。車載機器1に全てのアンテナ2を備えるようにすれば、車両内に別途アンテナを追加すること、既存のアンテナと車載機器1との配線作業を行うこと等が不要になって、コストダウンが図れる。
【0048】
また、上記では、位置判定部4a及び表示制御部4bを、カーナビゲーション装置、ディスプレイオーディオ等の装置と一体的に設けた場合を例に説明をした。しかしながら、位置判定部4a及び表示制御部4bは、電波強度検知回路3、表示部5及び記憶部6との間で信号の送受信が可能に設けてあればよく、位置判定部4a及び表示制御部4bだけで1つの車載機器を構成していてもよい。
【0049】
以上のように、この実施の形態1に係る車載機器1によれば、位置判定部4aは、無線通信機器により送信されて複数のアンテナ2それぞれにより受信された電波の強度、または、無線通信機器により送信されて複数のアンテナ2それぞれにより受信された電波の強度のアンテナ間での差分に基づき、車室内に持ち込まれた複数の無線通信機器それぞれの位置を判定するので、アンテナ2が座席と対応して設置されていなくとも、各無線通信機器の位置を判定できる。そして、表示制御部4bは、位置判定部4aが出力した判定結果を用いて、複数の無線通信機器それぞれの車室内での位置を示しユーザに無線接続する無線通信機器を選択させるための画像信号を、表示部5に出力するので、ユーザが表示の中から無線接続したい無線通信機器を選択しやすくなる。
【0050】
また、位置判定部4aは、電波の強度及び当該強度の複数のアンテナ間での差分を用いて、位置を判定することとした。従って、無線通信機器の位置が、さらに絞り込まれて判定される。
【0051】
また、表示制御部4bは、複数の無線通信機器それぞれの識別情報をも示した画像信号を出力することとした。従って、ユーザは、無線通信機器の識別情報を確認しながら、接続したい無線通信機器の選択作業を行うことができる。
【0052】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、この発明に係る車載機器は、アンテナが座席と対応して設置されていなくとも、無線通信機器の位置を判定でき、ユーザが表示の中から無線接続したい無線通信機器を選択しやすくなるため、座席と対応してアンテナを設置することが難しい車両に搭載して用いるのに適している。
【符号の説明】
【0054】
1 車載機器、2,2a,2b アンテナ、3 電波強度検知回路、4 制御部、4a 位置判定部、4b 表示制御部、4c 処理実行部、5 表示部、6 記憶部、7 入力部、10a,10b,10c 無線通信機器、100 処理回路、101 メモリ、102 CPU。
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