(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記かご内負荷がゼロで前記かごが最下階に位置する第1のかご状態のときの第1のかご重量と、前記かご内負荷がゼロで前記かごが最上階に位置する第2のかご状態のときの第2のかご重量との第1の重量差を記憶する記憶装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記第1のかご状態のときの前記距離を第1の距離として測定し、前記第2のかご状態のときの前記距離を第2の距離として測定するように前記レーザ変位計を制御し、前記第1の距離に対応する前記ロープ伸び量を第1のロープ伸び量として計算し、前記第2の距離に対応する前記ロープ伸び量を第2のロープ伸び量として計算し、前記第1のロープ伸び量と、前記第2のロープ伸び量と、前記記憶装置に記憶される前記第1の重量差とから、ロープ伸び量とかご重量とが関連付けられるマップを生成して前記記憶装置に記憶するマップ生成処理を実行し、
前記記憶装置に記憶される前記マップに従って、前記ロープ伸び量から前記かご内負荷を計算する
請求項1に記載のエレベータの秤装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明によるエレベータの秤装置を、好適な実施の形態にしたがって図面を用いて説明する。なお、図面の説明においては、同一部分または相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1におけるエレベータの秤装置を備えたエレベータ装置を示す構成図である。
図2は、本発明の実施の形態1におけるエレベータの秤装置の正面図である。
【0012】
昇降路内には、かご1および釣合錘3が、駆動シーブ5およびそらせ車6に巻き掛けられている主索4により吊り下げられている。主索4の一端部は、かご枠2のかご枠上梁9に設けられているシャックル13に接続されている。駆動シーブ5は、巻上機(図示せず)の駆動力により回転する。かご1および釣合錘3は、駆動シーブ5の回転により昇降路内を上下方向へ移動する。
【0013】
釣合鎖7は、かご1側と釣合錘3側との間の重量バランスを調整するために設けられており、一端部がかご1側に接続され、他端部が釣合錘3側に接続されて吊り下げられている。制御ケーブル8は、かご1の各種機器および後述するレーザ変位計10を制御装置12が制御するために設けられており、一端部がかご1側に接続され、他端部が制御装置12側に接続されて吊り下げられている。
【0014】
エレベータの秤装置は、かご1を吊り下げる主索4に設けられているレーザ変位計10および反射板11と、制御装置12とを備える。
【0015】
レーザ変位計10は、非接触式のレーザ変位計であり、レーザ光を投光するための投光面と、反射板11からの反射光を受光するための受光面とを有する。レーザ変位計10は、投光面からレーザ光を反射板11に投光して反射板11からの反射光を受光面で受光することで反射板11までの距離Lを測定し、その測定結果を、制御ケーブル8を介して制御装置12に出力する。
【0016】
レーザ変位計10は、投光面および受光面を下に向けて、主索4の一端部側、すなわち、主索4のシャックル13側に設けられている。このように、投光面および受光面が下に向けられてレーザ変位計10が主索4に設けられることで、埃の堆積および汚れに起因したレーザ変位計10の誤作動を防止することができる。
【0017】
反射板11は、レーザ変位計10の投光面から投光されるレーザ光を反射してレーザ変位計10の受光面に入射するために設けられており、主索4の一端部側に設けられている。反射板11は、レーザ変位計10とシャックル13との間であって、レーザ変位計10から一定距離分離れて位置している。
【0018】
制御装置12は、例えば、メモリ等の記憶装置に記憶されたプログラムを実行するCPUと、システムLSI等の処理回路によって実現される。制御装置12は、レーザ変位計10の動作を制御するとともに、かご1の昇降といったエレベータ装置全体の動作を制御する。
【0019】
制御装置12は、レーザ変位計10から入力された距離Lに対応するロープ伸び量Δεを計算し、そのロープ伸び量Δεから、かご1の積載重量に相当するかご内負荷を計算する。また、制御装置12は、計算されたロープ伸び量Δεの大きさから、かご1の過積載を検出する。
【0020】
次に、制御装置12がかご内負荷を計算する方法について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、本発明の実施の形態1における制御装置12がかご内負荷を計算する方法を示す説明図である。
【0021】
なお、
図3では、横軸をロープ伸び量Δε、縦軸をかご重量Wとしている。ロープ伸び量Δεは、あらかじめ決められた基準値に対する距離Lの変化量、すなわち、距離Lと基準値との差を示す。つまり、レーザ変位計10によって測定された距離Lと、基準値との差を計算することで、距離Lに対応するロープ伸び量Δεを計算することができる。また、かご重量Wは、かご1の自重と、かご1のかご内負荷と、釣合鎖7の重量と、制御ケーブル8の重量との和を示す。かご重量Wが大きいほど、主索4が引っ張られるので、距離Lが大きくなり、その結果、ロープ伸び量Δεが大きくなる。
【0022】
まず、制御装置12は、かご内負荷を計算するにあたって、ロープ伸び量Δεとかご重量Wとが関連付けられるマップを生成する以下のマップ生成処理を実行する。例えば秤装置を据え付けた後の秤装置の調整時に、マップ生成処理がはじめて実行される。
【0023】
制御装置12は、かご内負荷がゼロでかご1が最下階に位置する状態(以下、第1のかご状態と称す)のときの距離Lを第1の距離L1として測定するようにレーザ変位計10を制御する。具体的には、制御装置12は、かご内負荷がゼロのときにかご1を最下階に移動させ、レーザ変位計10を制御することで、第1のかご状態に対応する第1の距離L1を取得する。また、制御装置12は、第1の距離L1に対応する第1のロープ伸び量Δε1を計算する。
【0024】
続いて、制御装置12は、かご内負荷がゼロでかご1が最上階に位置する状態(以下、第2のかご状態と称す)のときの距離Lを第2の距離L2として測定するようにレーザ変位計10を制御する。具体的には、制御装置12は、かご内負荷がゼロのときにかご1を最上階に移動させ、レーザ変位計10を制御することで、第2のかご状態に対応する第2の距離L2を取得する。また、制御装置12は、第2の距離L2に対応する第2のロープ伸び量Δε2を計算する。
【0025】
ここで、かご1の自重およびかご1のかご内負荷は、かご1の位置によらず同じである。一方、釣合鎖7の重量は、かご1の位置に応じてかご1へ吊り下がっている釣合鎖7の長さが変化するので、かご1の位置によって変化する。同様に、制御ケーブル8の重量は、かご1の位置に応じてかご1へ吊り下がっている制御ケーブル8の長さが変化するので、かご1の位置によって変化する。
【0026】
したがって、第1のかご状態のときの第1のかご重量W1と、第2のかご状態のときの第2のかご重量W2との第1の重量差ΔW1は、第1のかご状態と第2のかご状態との間における釣合鎖7の重量差と、第1のかご状態と第2のかご状態との間における制御ケーブル8の重量差との和に相当する。ここで、かご1へ吊り下がっている釣合鎖7および制御ケーブル8のそれぞれの長さは、かご1の位置ごとに既知であり、釣合鎖7および制御ケーブル8のそれぞれの単位長さ当たりの重量も既知である。そのため、第1の重量差ΔW1をあらかじめ求めることができ、その第1の重量差ΔW1は、記憶装置(図示せず)に記憶されている。
【0027】
続いて、制御装置12は、第1のロープ伸び量Δε1と、第2のロープ伸び量Δε2と、記憶装置に記憶される第1の重量差ΔW1とから、マップを生成し、そのマップを記憶装置に記憶する。具体的には、ロープ伸び量Δεとかご重量Wとの関係が線形であると仮定し、第1のかご状態に対応する第1のロープ伸び量Δε1および第1のかご重量W1と、第2のかご状態に対応する第2のロープ伸び量Δε2および第2のかご重量W2とを線形近似することで、マップを生成するように構成されている。なお、
図3では、第1のかご状態に対応する第1のロープ伸び量Δε1および第1のかご重量W1を点A(Δε1,W1)として図示し、第2のかご状態に対応する第2のロープ伸び量Δε2および第2のかご重量W2を点B(Δε2,W2)として図示している。
【0028】
このように、制御装置12は、マップ生成処理において、点Aおよび点Bをロープ伸び量Δεの実測値から求め、それらの点Aおよび点Bの2点を用いて線形近似することで、ロープ伸び量Δεとかご重量Wとが関連付けられるマップを生成するように構成されている。
【0029】
制御装置12は、レーザ変位計10から入力された距離Lに対応するロープ伸び量Δεを計算し、記憶装置に記憶されるマップに従って、そのロープ伸び量Δεからかご内負荷を計算する。
【0030】
具体的には、一例として、以下のようにかご内負荷が計算される。制御装置12は、かご1が最下階に位置するときにレーザ変位計10から入力された距離Lを取得し、取得された距離Lに対応するロープ伸び量Δε、すなわち、かご1が最下階に位置するときのロープ伸び量Δεを計算する。ここで、かご1が最下階に位置するときのかご重量Wと、第1のかご重量W1との重量差がかご内負荷に相当する。そこで、制御装置12は、計算されたロープ伸び量Δεを用いて、その重量差をマップから計算し、その計算値をかご内負荷の値とする。
【0031】
また、別例として、以下のようにかご内負荷が計算される。制御装置12は、かご1が最上階に位置するときにレーザ変位計10から入力された距離Lを取得し、取得された距離Lに対応するロープ伸び量Δε、すなわち、かご1が最上階に位置するときのロープ伸び量Δεを計算する。ここで、かご1が最上階に位置するときのかご重量Wと、第2のかご重量W2との重量差がかご内負荷に相当する。そこで、制御装置12は、計算されたロープ伸び量Δεを用いて、その重量差をマップから計算し、その計算値をかご内負荷の値とする。
【0032】
このように、制御装置12は、レーザ変位計から入力された距離Lに対応するロープ伸び量Δεを計算し、計算されたロープ伸び量Δεからかご内負荷を計算するように構成されている。
【0033】
次に、制御装置12がマップを補正する方法について説明する。ここで、マップを用いてロープ伸び量Δεからかご内負荷を計算するように構成されているので、主索4の経年劣化および主索4のロープテンションのばらつきの変化等の要因によって、かご内負荷の検出精度が悪くなる可能性がある。したがって、制御装置12は、このような要因を考慮して、マップを補正することが望ましい。
【0034】
そこで、制御装置12は、定期的にまたは保守点検時といったあらかじめ決められた時期にマップ生成処理を再度実行することで、記憶装置に記憶されるマップを補正する。このように構成することで、補正後のマップを用いてかご内負荷が計算されるので、かご内負荷の検出精度の劣化を抑制することができる。
【0035】
次に、制御装置12がかご1の過積載を検出する方法について、先の
図3を参照しながら説明する。
【0036】
ここで、第1のかご状態と、かご内負荷が最大許容値でかご1が最下階に位置する状態(以下、第3のかご状態と称す)とを考える。なお、最大許容値は、かご1が過積載状態であるか否かを判定するための閾値であり、あらかじめ決められるものである。
【0037】
この場合、第1のかご状態および第3のかご状態のいずれもかご1が最下階に位置するので、第1のかご状態と第3のかご状態との間における釣合鎖7の重量差と、第1のかご状態と第3のかご状態との間における制御ケーブル8の重量差とは、ともにゼロである。したがって、第1のかご状態のときの第1のかご重量W1と、第3のかご状態のときの第3のかご重量W3との第2の重量差ΔW2は、最大許容値に相当するので、あらかじめ求めることができ、その第2の重量差ΔW2は、記憶装置に記憶されている。
【0038】
制御装置12は、マップに従って、記憶装置に記憶される第2の重量差ΔW2から、第3のかご状態のときのロープ伸び量Δεを第3のロープ伸び量Δε3として計算する。なお、
図3では、第3のかご状態に対応する第3のロープ伸び量Δε3および第3のかご重量W3を点C(Δε3,W3)として図示している。このように構成することで、かご内負荷が最大許容値となるようにかご1へ実際に積載物を積載しなくても、第2の重量差ΔW2を用いて、マップから第3のロープ伸び量Δε3を容易に計算することができる。
【0039】
制御装置12によって計算された第3のロープ伸び量Δε3は、かご内負荷が最大許容値であるときにとりうるロープ伸び量Δεに対応する。また、ロープ伸び量Δεが第3のロープ伸び量Δε3よりも大きい場合、かご内負荷が最大許容値よりも大きく、かご1が過積載状態であることが分かる。そこで、制御装置12は、ロープ伸び量Δεが第3のロープ伸び量Δε3よりも大きい場合、かご1が過積載状態であると判定する。このように構成することで、ロープ伸び量Δεの大きさから、かご1の過積載を検出することができる。
【0040】
以上、本実施の形態1によれば、かごを吊り下げる主索に設けられる反射板と、主索に設けられ、反射板までの距離を測定して出力するレーザ変位計と、レーザ変位計から入力された距離に対応するロープ伸び量を計算し、計算されたロープ伸び量からかご内負荷を計算する制御装置とを備えてエレベータの秤装置が構成されている。
【0041】
これにより、既存のエレベータに対して秤装置を追加する際にシャックル等の部品の交換を必要としないので、容易に後付けすることができ、秤装置を追加するための工期を従来よりも短縮することができる。また、従来のシャックルバネの変位量ではなく、既存の主索の伸び量を、非接触式のレーザ変位計によって測定するので、その他の部品に対して影響を与えることなく、秤装置を追加することができる。
【0042】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2では、先の実施の形態1とは異なるマップ生成処理を実行する制御装置12を備えたエレベータの秤装置について説明する。なお、本実施の形態2では、先の実施の形態1と同様である点の説明を省略し、先の実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
【0043】
図4は、本発明の実施の形態2における制御装置12がかご内負荷を計算する方法を示す説明図である。なお、
図4では、先の
図3と同様に、横軸をロープ伸び量Δε、縦軸をかご重量Wとしている。
【0044】
制御装置12は、先の実施の形態1と同様に、第1の距離L1に対応する第1のロープ伸び量Δε1と、第2の距離L2に対応する第2のロープ伸び量Δε2とを計算する。
【0045】
制御装置12は、第3のかご状態のときの距離Lを第3の距離L3として測定するようにレーザ変位計10を制御する。この場合、かご内負荷が最大許容値となるようにかご1へ実際に積載物を積載する必要がある。制御装置12は、かご内負荷が最大許容値のときにかご1を最下階に移動させ、レーザ変位計を制御することで、第3のかご状態に対応する第3の距離L3を取得する。また、制御装置12は、第3の距離L3に対応する第3のロープ伸び量Δε3を計算する。
【0046】
続いて、制御装置12は、第1のロープ伸び量Δε1と、第2のロープ伸び量Δε2と、第3のロープ伸び量Δε3と、記憶装置に記憶される第1の重量差ΔW1および第2の重量差ΔW2とから、マップを生成する。具体的には、ロープ伸び量Δεとかご重量Wとの関係が線形であると仮定し、第1のかご状態に対応する第1のロープ伸び量Δε1および第1のかご重量W1と、第2のかご状態に対応する第2のロープ伸び量Δε2および第2のかご重量W2と、第3のかご状態に対応する第3のロープ伸び量Δε3および第3のかご重量W3とを線形近似することで、マップを生成するように構成されている。なお、
図4では、第1のかご状態に対応する第1のロープ伸び量Δε1および第1のかご重量W1を点A(Δε1,W1)として図示し、第2のかご状態に対応する第2のロープ伸び量Δε2および第2のかご重量W2を点B(Δε2,W2)として図示し、第3のかご状態に対応する第3のロープ伸び量Δε3および第3のかご重量W3を点C(Δε3,W3)として図示している。
【0047】
このように、制御装置12は、マップ生成処理において、点Aおよび点Bに加えて、さらに点Cをロープ伸び量Δεの実測値から計算し、それらの点A、点Bおよび点Cの3点の実測値を用いて線形近似しているので、先の実施の形態1と比べて、マップをより精度良く生成することができる。
【0048】
なお、本実施の形態2では、3点の実測値を用いて線形近似することでマップを生成する場合について説明したが、3点以上の複数点の実測値を用いて線形近似することでマップを生成するように構成してもよい。
【0049】
以上、本実施の形態2によれば、先の実施の形態1の構成に対して、マップ生成処理において、レーザ変位計から入力された第3の距離に対応するロープ伸び量を第3のロープ伸び量としてさらに計算し、第1のロープ伸び量と、第2のロープ伸び量と、第3のロープ伸び量と、記憶装置に記憶される第1の重量差および第2の重量差とから、マップを生成するように構成されている。これにより、先の実施の形態1と比べて、ロープ伸び量とかご重量とが関連付けられるマップをより精度良く生成することができる。
【0050】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3では、先の実施の形態1、2の各構成に対して、レーザ変位計10および反射板11の設置個所が異なるエレベータの秤装置について説明する。なお、本実施の形態3では、先の実施の形態1、2と同様である点の説明を省略し、先の実施の形態1、2と異なる点を中心に説明する。
【0051】
図5は、本発明の実施の形態3におけるエレベータの秤装置の正面図である。ここで、先の実施の形態1では、ローピング方式が1:1ローピングであるエレベータに秤装置を設けている。ローピング方式が1:1ローピングであるエレベータでは、先の実施の形態1で説明したとおり、かご枠2のかご枠上梁9にシャックル13が設けられている。
【0052】
これに対して、本実施の形態3では、先の実施の形態1とは異なり、ローピング方式が2:1ローピングであるエレベータに秤装置を設けている。ローピング方式が2:1ローピングであるエレベータでは、
図5に示すように、綱止め梁14にシャックル13が設けられている。この場合、主索4に設けられているレーザ変位計10および反射板11のそれぞれの位置がシャックル13の下側になるように構成する。
【0053】
以上、本実施の形態3によれば、ローピング方式が2:1ローピングであるエレベータに秤装置を設ける場合であっても、レーザ変位計および反射板のそれぞれの位置をローピング方式に合わせて調整することで、先の実施の形態1、2と同様の効果が得られる。
【0054】
なお、本実施の形態1〜3について個別に説明してきたが、本実施の形態1〜3のそれぞれで開示した構成例は、任意に組み合わせることが可能である。