特許第6437151号(P6437151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6437151-マルチトイレシステム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6437151
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】マルチトイレシステム
(51)【国際特許分類】
   A47K 17/02 20060101AFI20181203BHJP
【FI】
   A47K17/02
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-89034(P2018-89034)
(22)【出願日】2018年5月7日
【審査請求日】2018年7月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】715008687
【氏名又は名称】廣田 祐次
(72)【発明者】
【氏名】廣田 祐次
【審査官】 大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−268872(JP,A)
【文献】 米国特許第8510881(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00−17/02
E03D 1/00−13/00
A61G 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の下半身周辺部に位置する部材と、一対の下半身周辺部に位置する部材の間にスライド可能に配置された下半身中央部に位置する部材とを備え、車いすに座りながら、あるいはベッドに寝ながら、そのまま便座の上面にストッパーが取り付けられたトイレの便座の中心部に人体の臀部が到達するよう移動することで、ストッパーに下半身中央部に位置する部材があたり、下半身中央部に位置する部材がずれて、臀部と便座が直接対面するようにし、健常者も使うことができ、かつ健常者と同感覚で水洗トイレやウシュレット(登録商標)が使えるようにしたマルチトイレシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本トイレシステムは、一般の健常者も使える水洗トイレであって、車いすに乗った人、ベッドに寝ている人が、トイレの便座に乗り移らなくても、車いすに乗ったまま、あるいはベッドの上にいながら、該水洗トイレを使えるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、車いすの人もベッドで寝ている人も、必要に応じ介助者のアシストを受けて、トイレまで行き、そして便座に乗り換える必要があった。あるいはベッドに寝たままでおむつ交換をする等、排泄をする本人の肉体的・精神的な負担や、介助者の負担が大きく、ごく親しい家族か、プロの介護士・看護師等にしかできない作業となり、家族の介護のために仕事を辞めたり、介護施設に託すか出張介護依頼をしなければならず、大きな経済負担を伴うものであり、その方面へ労働力が割かれ人手不足を招く1因にもなっていた。
それらの問題点を解消するものとして、ベッドに排泄機能を取り付けた物として、特許文献1が出願されているが、排泄用の穴がベッド中央部に設けられており、腰がその陥没に落ち込むことから寝心地は悪い上に、全体の系が複雑な構成であり、実用化には不向きと判断されるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−144032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常のベッドや通常の車椅子として使うことが出来、そのまま便所(トイレ部屋)に移動して、一般者が水洗トイレの便座の上で排泄するのと同感覚となるよう、臀部の中心部のマットレス等の部材が、足元側に移動し、臀部と便器とが直接向き合うようにする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ベッドの寝心地は通常のベッドと変わらず使用出来るものとして、マットレスを上半身部と下半身部とに分け、さらに下半身部は体の縦の方向にマットレスを5分割し、食事や
会話、そして排泄時には、上半身部が背もたれとして起きあがる機構を持たせ、5分割さ
れた下半身部のマットレスの2列目と4列目を下側に傾け、足首がさがり、ひざが曲がり、楽な姿勢が保てるようにする。
そして排泄時には、便所までベッド全体を移動させ、背もたれ側から便座側にベッドを押し込むことで、便座上部の先端に設置されたストッパーによって、ベッドの下半身部の5分割された真ん中のマットレスが足元側にズレていき、臀部に便器に直結する空間がで
きることで、排泄を可能とするものである。

次に、車いすの場合であるが、尻部のシートを縦方向に3列に分け、中央のシートがス
ライドするような機構をもたせ、排泄時には、便所まで車いすで移動し、背もたれ側から便座に向かい、さらに進むと、便座上部の先端に設置されたストッパーによって、中央部のシートが両ひざの間にせり出していき、臀部に便器に直結する空間ができることで、排泄を可能とするものである。

トイレ側の工夫として、ベッド上で排泄する場合は、マットレスの厚み分とマットレスを支える構造物により、通常の便座の位置に比べて、ベッド上では排泄位置が高くなるので、便座は通常よりも長めに設定する。また、ベッドの背もたれとなったマットレスの部分
が、トイレの構造物と干渉をしないよう、便座の蓋を廃止し、流し用の水タンクの位置を便座から離して設置し、また便座と便器を一体型にすることによって、便座を下ろし忘れた場合に、ベッドや車いすの背もたれ部分が、あげられたままの便座にぶつかるような事故が起こらないようにする。
トイレ部屋、すなわち便所の工夫として、ベッドのおかれた部屋から容易にベッドを運べる位置に設置すること、また便所のドアを観音開きにして、ベッドがそのままドアを押しのけて、便所に容易に入れるようにすることを行う。
便所をベッドが収納できる程大きくとると、もったいないので一般者や車いすではドアが閉まるようにしても、ベッドの場合は半分程度が収まるようにし、
ドアはあけたままとする。
また、ベッドが便所に入ったままで、排泄に関するトラブル等があった場合に、介助者が容易に確認できるよう、便所の側面からも入れるようなドアを設定する。尚、このドアは健常者がトイレを使うときの常用のドアとして使ってもよい。

さらに、ウオシュレットの操作に関しての工夫として、トイレにRoLaWAN等の通信チッ
プを搭載し、またスピーカーとマイクとを搭載し、クラウド型AIとの通信によって、音声で「もう少し前側に」「乾燥させて」「止めて」等で、ウオシュレットのノズルの移動等が言葉通りに行われ、リモコン操作が苦手でも、あるいは手が動かせない状況でも、快適にウオシュレットの諸機能が使用できるようになる。
また、排泄の音を消す意味を含め、いま流行のスマートスピーカと同様な機能として、好きな音楽をかけてもらうことが可能となる。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、車いすに乗った人やベッドの生活の方が、便座に乗り換えることなく、健常者と同様な感覚でそのまま水洗トイレが使えるため、いままでのように介助する人が腰を痛めるような動作や、おむつ交換等の匂いをがまんしての汚物処理等での肉体的及び精神的な負担がなくなり、友人やあまり親しくない人でも介助が可能になる。すなわち、近所の中高生がアルバイト感覚で勉強しながら介護したり、近所の主婦や体が動く高齢者たちが介護を楽しみながら行うことが可能になる。
必ずしも身内やプロの介護士を必要とせず、親の介護のために仕事を辞めたり、出張介護を依頼しての出費を大幅に削減することが可能となる。
また、トイレにRoLaWAN等の通信チップと、スピーカーとマイクとを搭載し、クラウド型AIとの通信によって、口頭でのウオシュレット等の諸操作が可能になり、また癒しの音楽
を聴きながら排泄が可能となるため、トイレに行くのが楽しみになるほどに排泄に関するイメージが一変する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ベッド上でそのままトイレをするときの図
図2】車いすのままでトイレをするときの図
図3】音声でウオシュレット等を操作するときの基本構成図
図4】住居におけるトイレの配置設定の図
【発明を実施するための形態】
【0008】
ベッドの寝心地は通常のベッドと変わらず使用出来るものとして、マットレスを上半身部と下半身部とに分け、さらに下半身部は体の縦の方向にマットレスを5分割し、食事や
会話、そして排泄時には、上半身部が背もたれとして起きあがる機構を持たせ、5分割さ
れた下半身部のマットレスの2列目と4列目を下側に傾け、足首がさがり、ひざが曲がり、楽な姿勢が保てるようにする。また、両足の位置が2列目と4列目のマットレスの位置にて
、下側に移動することで、体の中心がベッドのセンターにほぼ一致するようになる。
そして排泄時には、便所までベッド全体を移動させ、背もたれ側から便座側に押し込むことで、便座上部の先端に設置されたストッパーによって、ベッドの下半身部の5分割さ
れた真ん中のマットレスが足元側にズレていき、臀部に便器に直結する空間ができることで、排泄をし、ウオシュレットで洗うことを可能とするものである。

次に、車いすの場合であるが、尻部のシートを縦方向に3列に分け、中央のシートがス
ライドするような機構をもたせ、排泄時には、便所まで車いすで移動し、背もたれ側から便座に向かい、さらに進むと、便座上部の先端に設置されたストッパーによって、中央部のシートが両ひざの間にせり出していき、臀部に便器に直結する空間ができることで、排泄をし、ウオシュレットで洗うことを可能とするものである。

トイレ側の工夫として、ベッド上で排泄する場合は、マットレスの厚み分とマットレスを支える構造物により、通常の便座の位置に比べて、ベッド上では排泄位置が高くなるので、便座は通常よりも長めに設定する。また、ベッドの背もたれとなったマットレスの部分が、トイレの構造物と干渉をしないよう、便座の蓋を廃止し、流し用の水タンクの位置を便座から離して設置し、また便座と便器を一体型にすることによって、便座を下ろし忘れた場合に、ベッドがあげられたままの便座にぶつかるような事故が起こらないようにする。
トイレ部屋、すなわち便所の工夫として、ベッドのおかれた部屋から容易にベッドを運べる位置に設置すること、また便所のドアを観音開きにして、ベッドがそのままドアを押しのけて、便所に容易に入れるようにすることを行う。
便所をベッドが収納できる程大きくとると、もったいないので一般者や車いすではドアが閉まるようにしても、ベッドの場合は半分程度が収まるようにし、
ドアはあけたままとする。
また、ベッドが便所に入ったままで、排泄に関するトラブル等があった場合に、介助者が容易に確認や必要な作業ができるよう、便所の側面からも入れるようなドアを設定する。

さらに、ウオシュレットの操作に関しての工夫として、トイレにRoLaWAN等の通信チッ
プを搭載し、またスピーカーとマイクとを搭載し、クラウド型AIとの通信によって、音声で「もう少し前側に」「乾燥させて」「止めて」等で、ウオシュレットのノズルの移動等が言葉通りに行われ、リモコン操作が苦手でも、あるいは手が動かせない状況でも、快適にウオシュレットの諸機能が使用できるようになる。
また、排泄の音を消す意味を含め、いま流行のスマートスピーカと同様な機能として、会話をしたり、好きな音楽をかけてもらうこと等が可能となる。
【0009】
図1において、通常寝ているときや、背もたれを起こして会話や食事、あるいはTVを見て
いるときは、シーツを敷いたままで過ごすが、トイレに行きたくなったら、シーツをはがし、あるいは介助者からシーツをはがしてもらい、
ベッドの上半身用マットレス1を起こした状態で、トイレまで介助者に運んでもらう。
便座の前で、ベッドを一時止めてもらい、そこで下半身の衣類をひざ下までさげる、あるいは介助者にさげてもらう。このとき、タオルや毛布のようなものを体の上からかけて、保温やプライバシーを守ることは可能である。
次に、ベッド全体を便座一体型便器7に向かってさらに進めると、中央抜き便座ストッパー8に下半身中央部マットレス6があたり、さらにベッドを進めると、該下半身中央部マットレス6がどんどんずれて、臀部に排泄が可能な隙間ができる。排泄ができて、かつウオシュレット11も使用可能となる。
水洗トイレの水タンク2は通常のトイレよりも奥側に配置し、ベッドの上半身用のマットレス1が背もたれとして持ち上がった状態で、干渉しないようにしている。
下半身周辺部マットレス3は固定であるが、下半身用中間部可動マットレス5は、上半身用のマットレス1の動きと連動して、背もたれ設定用駆動モーター10によって、下側に
傾くようになっている。
尚、背もたれ設定用のモーター軸位置9は、下半身周辺部マットレス3の下部あたりに位置しており、便座一体型便器7とは干渉しない。背もたれ設定用駆動モーター10と軸関連は必要な強度でベッド側板4に固定される。

図2において、通常車いすに乗っているときには座布団を敷いて座るようにしているが、トイレに行きたくなったら、座布団を外し、あるいは介助者から座布団を外してもらい、便所まで自力で行くか、あるいは介助者から連れて行ってもらい、便座一体型便器7に対し車いすに座ったまま後ろ向きで一旦停止する。そこで下半身の衣類をひざ下までさげる、あるいは介助者にさげてもらう。このとき、タオルや毛布のようなものを体の上からかけて、保温やプライバシーを守ることは可能である。
次に、車いす全体を便座一体型便器7に向かってさらに進めると、中央抜き便座ストッパー8に車いす座部中央部14があたり、さらに車いすをさらに進めると、該車いす座部中央部14がどんどんずれて、臀部に排泄が可能な隙間ができる。排泄ができて、かつウオシュレット11も使用可能となる。
水洗トイレの水タンク2は通常のトイレよりも奥側に配置し、車いす背もたれ12が干渉しないようにしている。
車いすの二つの座部周辺部13の内側:車いす座部中央部14側には、スライド用みぞ15が切ってあり、車いす座部中央部14に付帯した両サイドにあるスライド用後ろピン16とスライド用前ピン17が該スライド用みぞ15の中で前後に動き、車いす座部中央部
14が車いすに座っている人間の両足の間にせり出してくる。せり出してきた車いす座部中央部14は、車いす座部中央部抜き用ストッパー19と中央抜き便座ストッパー8との接触具合によって、水平状態に近い状態になるか、車いす足置き18に接触するようになるかが決まる。
図3において、トイレ24にLoRaWAN通信チップ22およびマイク&スピーカー機能2
3を搭載し、通信用基地局21を経由して、AIアシストセンター22とつながり、ベッド
25上からの音声での指示を該AIアシストセンター22にて解析し、該AIアシストセンター2から該トイレ24への具体的な作動指示が出され、ウオシュレット11の諸操作を口頭で行えるようにする。

図4において、便座一体型便器7に対し、ベッド25が置かれている部屋とが観音開きドア27を介して直結しており、トイレに行きたくなったら、すぐにトイレに移動してもらえるようになっている。一人で下半身の衣類の着脱ができなくなった場合には、天井吊り下げのリフト滑車28経由にて、上からかぶりベルトを締めるだけで、上半身がホルダー可能なものをロープでつりさげ、ラチェットストッパー機構付き巻き取り機29で巻き上げ、体を少し浮かした状態を作り出し、その状態で下半身の衣類の着脱を、必要に応じ介助者の手伝いにて行う。この際も、下半身にタオルのようなものをかぶせ、プライバシーを守ることができる。
また、健常者がトイレに行くときに便利で、かつベッドでの排泄時等のトラブル対応として、サイドドア30が用意されている。ベッド25や車いす26の移動に関し、アコーディオンカーテン31で隣の部屋へのスムーズな移動、さらに入り口のベッド可搬引き戸33によって、簡単に廊下に出られるようになっている。家具も多目的移動台32を移動するだけで、ベッド25の通り道ができあがるようになっている。
さらに、廊下でベッド25のすれ違いが可能なように、ベッドすれ違いスペース34の設定を長い廊下では行うと便利である。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明により、世界中の病院や介護施設等で、介助者の肉体的な苦痛が解放され、また介助者と被介助者双方で精神的な苦痛から解放される。
今後世界的な超高齢化社会に突入しても、在宅医療・介護における介助者と被介助者双方で精神的・肉体的な苦痛が緩和され、中高生や主婦、元気な高齢者でも介助役が務まるため、相互ケア主体の共同生活の場が生まれてくと考えられる。
【符号の説明】
【0011】

1 上半身用マットレス
2 水洗トイレの水タンク
3 下半身周辺部マットレス
4 ベッド側板
5 下半身用中間部可動マットレス
6 下半身中央部マットレス
7 便座一体型便器
8 中央抜き便座ストッパー
9 背もたれ設定用のモーター軸位置
10 背もたれ設定用駆動モーター
11 ウオシュレット
12 車いす背もたれ
13 車いす座部周辺部
14 車いす座部中央部
15 スライド用みぞ
16 スライド用後ろピン
17 スライド用前えピン
18 車いす足置き
19 車いす座部中央部抜き用ストッパー
20 AIアシストセンター
21 通信用基地局
22 LoRaWAN通信チップ
23 マイク&スピーカー機能
24 トイレ
25 ベッド
26 車いす
27 観音開きドア
28 天井つりさげのリフト用滑車
29 ラチェットストッパー機構付き巻き取り機
30 サイドドア
31 アコーディオンカーティン
32 多目的移動台
33 ベッド可搬引き戸
34 ベッドすれ違いスペース
【要約】
【課題】
従来は、車いすの人もベッドで寝ている人も、必要に応じ介助者のアシストを受けて、トイレまで行き、そして便座に乗り換える必要があった。あるいはベッドに寝たままでおむつ交換をする等、排泄をする本人の肉体的・精神的な負担や、介助者の負担が大きかった。

【解決手段】
通常のベッドや通常の車椅子として使うことが出来、そのまま便所(トイレ部屋)に移動して、一般者が水洗トイレの便座の上で排泄するのと同感覚となるよう、臀部の中心部のマットレス等の部材が、足元側に移動し、臀部と便器とが直接向き合うようにする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4