(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記X線の前記開口に対応する照射範囲において前記X線検出部に検出された信号と、前記X線の他の照射範囲において前記X線検出部に検出された信号とに基づいて、前記画像発生部により発生されたX線画像の、前記開口に対応する範囲のデータと他の範囲のデータとに対して、それぞれ異なる画像処理を実行する画像処理部をさらに具備すること、
を特徴とする請求項9記載のX線診断装置。
前記画像処理部は、前記画像発生部により発生されたX線画像の、前記開口に対応する範囲の画像レベルと他の範囲の画像レベルとが一致するように、前記画像発生部により発生されたX線画像の、前記開口に対応する範囲のデータと他の範囲のデータとに対して、それぞれ異なる画像処理を実行すること、
を特徴とする請求項11記載のX線診断装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態におけるX線診断装置の一例を示す概略図である。
【0011】
第1実施形態におけるX線診断装置1(以下、単にX線診断装置1と呼ぶ)は、被検体Pに対してX線を曝射するX線源10と、X線を検出するX線検出部12と、X線源10を制御するX線源制御部13と、絞り部11と、絞り部11を制御する絞り制御部14と、システム制御部20と、画像発生部21と、画像処理部22と、操作部23と、表示部15と、注目位置特定部16とを有する。
【0012】
X線源10は、例えば高電圧発生部(図示せず)により印加される高電圧によってX線を発生させるX線管を有する。そしてX線源10とX線検出部12は、対向配置されるように例えばC形アーム等の保持具によって保持される。
【0013】
X線検出部12は、X線源10から曝射され被検体Pを透過したX線を検出する。そしてX線検出部12にて検出されたX線は、そのX線量に相当する信号に変換される。
【0014】
システム制御部20は、X線源制御部13、絞り制御部14、そして表示部15における表示等を制御する。
【0015】
絞り部11は、例えば複数枚の鉛の板(絞り羽根)が用いられ、X線を遮る。そして絞り部11である複数枚の鉛の板は、絞り制御部14によって各々移動制御される。即ち絞り部11は、X線源10から照射されるX線の照射範囲内に位置することによって、X線の照射範囲を制限する。そして絞り部11は、注目位置特定部16によって認識された術者Oの視線に基づいて、制限するX線の照射範囲を変更する。このとき、絞り部11によって制限されたX線の照射範囲を照射野と呼ぶ。ここで、術者Oとは、被検体Pに対して手技及び治療等を行っている医師に限定されない。例えば、術者Oは、被検体Pに対して手技及び治療等を行うのに関わる人であれば、看護師等の観察者であってもよい。
【0016】
絞り制御部14は、システム制御部20による制御に基づいて、絞り部11の動作を制御する。これに関し、
図3を用いて後述する。
【0017】
X線源制御部13は、システム制御部20による制御に基づいて、X線源10を制御する。ここでのX線源制御部13によるX線源10の制御とは、例えば管電圧値や管電流値の制御、パルスレートの制御等である。
【0018】
画像発生部21は、X線検出部12によって検出されたX線のデータに基づいて、被検体PのX線画像を生成する。
【0019】
画像処理部22は、画像発生部21によって生成されたX線画像におけるウィンドウ条件の変更や高周波数成分の除去等の画像処理を行う。
【0020】
操作部23は、術者Oによって操作され、X線曝射のON/OFFの切替や表示部15における表示切替等を行う。
【0021】
表示部15は、画像発生部21によって生成された被検体PのX線画像の表示を行う。そして表示部15は、リアルタイムでX線画像を連続的に表示された動画を表示する。以下、この動画のことをX線透視動画として記載する。
【0022】
注目位置特定部16は、例えば赤外線LEDとCMOSカメラを有しており、表示部15を確認している術者Oの視線を認識する。
【0023】
注目位置特定部16は、赤外線LEDから近赤外線を術者Oに対して照射し、術者Oの眼球の角膜反射をCMOSカメラで撮影する。そして注目位置特定部16は、例えば強膜(白目)と角膜(黒目)の光の反射率の差を利用して眼球運動を測定するリンバストラッキング法(強膜反射法)等を用いて視線認識を行う。
【0024】
そして注目位置特定部16は、認識した術者Oの視線角度等の視線の情報をシステム制御部20へと送る。此処で言う視線の情報とは、例えば上述のリンバストラッキング法による眼球運動の測定によって得られ、表示部15上のどの位置に術者Oの視線があるかを示す情報である。表示部15上の術者Oの視線の位置を注目位置とも呼ぶ。
【0025】
図2は、第1実施形態におけるX線診断装置が備わる診断室を示す概略図である。
【0026】
図2は、寝台30上に被検体Pが載置され、その横には手技を行う術者Oが立っている。そして表示部15及び注目位置特定部16は、例えば術中に術者Oが少し顔を上げるだけで確認することができるような位置に設けられる。注目位置特定部16は表示部15に内蔵されていてもよいし、表示部15上部等に付加されるか、又は表示部15近傍に備わっていてもよい。
【0027】
図3は、第1実施形態における視線に応じた絞り部11の制御方法を示す概略図である。
【0028】
術者Oは、例えばtaVI(transcatheter aortic Valve Implantation:経カテーテル大動脈弁留置術)を行う場合など、被検体に対してX線透視を行い
図3(a)に示すような表示部15の表示で血管の走行を確認しながらカテーテル等のデバイスを被検体の血管内に挿入する。このとき注目位置特定部16は、表示部15を確認している術者Oの視線を認識する。即ち注目位置特定部16は、表示部15におけるどの部分に術者Oの視線があるのかを認識する。そして注目位置特定部16は、認識した術者Oの視線の情報をシステム制御部20へと送る。
【0029】
システム制御部20は、注目位置特定部16によって認識された術者Oの視線の情報を用い、X線源制御部13又は絞り制御部14のうち少なくともいずれか一方を制御する。例えば
図3(b)に示すように、絞り制御部14は、術者Oの視線近傍に対応する範囲にのみX線を照射するように絞り部11の移動制御を行い、照射野を変化させる。このとき表示部15は、絞り部11によってX線が遮られる範囲はLIH(Last Image Hold)画像を表示するのが好ましい。LIH画像とは、絞り部11によってX線が遮られる前にX線透視を行っていたときに得られた最後の画像である。LIH画像に関しては既知技術のため、詳細な説明は省略する。
【0030】
図3(c)は、
図3(b)の状態から術者Oの視線が移動したときの表示を示す概略図である。
【0031】
図3(b)の状態から、例えばカテーテル等のデバイスの進入とともに術者Oの視線(注目位置)が移動することに基づいて、絞り制御部14は
図3(c)のように絞り部11をX線の照射範囲から退避するように移動制御を行う。又は、絞り制御部14は、
図3(c)のようにX線の照射範囲から絞り部11を退避させるのではなく、例えば
図3(d)のように術者Oの視線近傍に対応する範囲を追跡するように絞り部11の移動制御を行い、照射野を変化させてもよい。
【0032】
注目位置特定部16による術者Oの視線認識に基づいた絞り部11の移動制御は、ある領域において術者Oの視線が一定時間固定された場合に行うことが好適である。即ち、絞り制御部14は、術者Oがあるピクセル上をピンポイントで注視している場合にのみ絞り部11の移動制御を行うわけではなく、ある程度の視線のブレを考慮した移動制御を行う。そしてそのブレの考慮範囲内において、例えば1〜2秒等の予め設定された一定時間視線が固定された場合に、絞り制御部14が絞りの移動制御を行う。
【0033】
なお第1実施形態において、絞り部11がX線照射範囲内にある場合にX線を遮る例を説明したが、これに限ることはない。例えば絞り部11として、X線を減衰させるアルミ等のX線フィルタを用いてもよい。絞り部11としてこのX線フィルタを用いる例を、
図4を用いて説明する。なお、第1実施形態のX線診断装置は、例えば鉛を用いてX線を遮蔽する第1絞り部11と、例えばアルミを用いてX線を減衰させる第2絞り部11とを備えていてもよい。その場合、術者Oがどちらを用いるか選択できるようにしてもよいし、被検体Pの年齢等の予め決められた条件に応じた制御を行ってもよい。
【0034】
図4は、第1実施形態における、絞り部11としてX線を減衰させるX線フィルタを用いる一例を示す概略図である。
【0035】
注目位置特定部16による術者Oの視線認識に基づいて、
図3(b)と同様に、絞り制御部14は術者Oの視線近傍に対応する範囲に絞り部11が挿入されるように絞り部11の移動制御を行う。このとき絞り部11はX線を完全に遮るわけではなく、減衰させる。故に表示部15は、絞り部11が挿入された範囲においてもリアルタイムでのX線透視動画を表示する。
【0036】
なお、絞り部11が挿入された範囲aにおけるX線透視動画(以下、X線透視動画a)におけるX線画像(以下、X線画像a)と、絞り部11が挿入されていない範囲BにおけるX線透視動画(以下、X線透視動画B)におけるX線画像(以下、X線画像B)とで、照射されるX線線量の相違に起因して、画像レベルが異なる(
図4(a))。即ち、絞り部11の挿入の有無に起因するX線検出部12で変換される電気信号の相違によって、X線画像aとX線画像Bとの画像レベルが異なる。
【0037】
そこで画像処理部22は、X線画像aとX線画像Bとの画像レベルを揃えるような処理を施してもよい。例えば画像処理部22は、X線画像a及びX線画像Bにおける高周波数成分を除去し、それぞれ低周波数成分のX線画像a‘及びX線画像B’を生成する。そして画像処理部22は範囲aにおける画像レベルの平均値amと範囲Bにおける画像レベルの平均値Bmを算出し、am÷Bmの値をX線画像B‘の画像レベルに乗じる。これにより、表示部15は範囲aと範囲Bとの間で明るさのムラが無いX線透視動画を表示する(
図4(b))。
【0038】
なお此処で言う画像レベルとは、例えば画像を構成する画素の輝度のことを指す。
【0039】
次に、術者Oが視線を表示部15外に移動させたときのケースを説明する。
【0040】
図5は、術者Oの視線が表示部15外にあるときの表示部15の表示例を示す概略図である。
【0041】
注目位置特定部16が、術者Oの視線が表示部15内に無いということを認識することに基づいて、システム制御部20は例えば以下のような各種制御を行ってもよい。
【0042】
(1)絞り制御部14に、X線照射範囲を全て覆うように絞り部11の移動制御を行わせる。即ち表示部15には、表示領域全体にLIH画像が表示される。(
図5(a))
(2)X線源制御部13に、例えば管電流値を低下させ、X線の照射線量を減少させる制御を行わせる。即ち表示部15には、低線量におけるノイジーなX線透視動画が表示される。(
図5(b))
(3)X線源制御部13に、例えばパルスレートを低下させ、X線の照射線量を減少させる制御を行わせる。即ち表示部15には、更新頻度が鈍いあまり滑らかでない動画が表示される。(
図5(c))
(2)及び(3)はそれぞれ独立に行ってもよいし、同時に行っても良い。そしてこれら例えば3つの制御方法をいかに使用するかは、予め任意のタイミングにて術者Oが設定しておいてもよいし、段階的に行ってもよい。段階的に行う場合、システム制御部20は、例えばある時刻tに術者Oの視線が表示部15内に無い場合に上記(1)の制御を行う。そして時刻tより後の時刻であるt’になるまでずっと術者Oの視線が表示部15に無い場合は、上記(2)や(3)の制御を行う。
【0043】
次に、視線認識と合わせて例えば術者識別を行う例を説明する。
【0044】
図6は、注目位置特定部16であるカメラの撮影範囲内に人物が2人存在する一例を示す概略図である。
【0045】
注目位置特定部16は、どちらの人物が術者Oであるかを識別し、術者Oの視線のみを認識する。このとき、例えば注目位置特定部16は以下のような方法にて術者Oの認識を行う。
【0046】
(1)予め記憶された術者Oの顔と注目位置特定部16に備わるカメラの撮影範囲内に存在する人物の顔とのマッチングを行う
注目位置特定部16は、顔検出技術を用い、予め記憶部(図示なし)が記憶している術者Oの顔を検出する(
図6点線四角)。そして注目位置特定部16は、その術者Oの視線を認識する。
【0047】
(2)予め記憶された、術者Oによる特定の動作を検出する
注目位置特定部16は、例えばピースサインを検出する。そして注目位置特定部16は、そのピースサインを行った人物(術者)の視線を認識する。
【0048】
なお、第1実施形態において術者Oの視線を利用して各種制御を行う例を示したが、これらは従来のフットスイッチ等の操作部23による操作と連動させてもよい。そして術者Oがフットスイッチ等の操作部23を操作することにより、術者Oの視線を利用して各種制御を行う機能のON/OFFを切り替えられるようにしてもよい。
【0049】
なお、第1実施形態において「視線が表示部15内にある状態」とは、
図7(a)に示すような、表示部15の範囲内に術者Oの視線が送られている状態である。一方、「視線が表示部15外にある状態」とは、
図7(b)に示すような、表示部15の範囲外に術者Oの視線が送られている状態である。
【0050】
以上、X線源10及びX線検出部12がそれぞれ1つずつ備わるシングルプレーン方式のX線診断装置に関して説明したが、これに限ることはない。例えばX線源10及びX線検出部12が2セット存在するバイプレーン方式のX線診断装置であっても、第1実施形態を適用することができる。
【0051】
以下、バイプレーン方式のX線診断装置における第1実施形態の一例を説明する。
【0052】
バイプレーン方式のX線診断装置において、表示部15は、それぞれのX線検出部12から得られたX線に基づいたX線透視動画を2種類表示する。このとき、例えば表示部15が2つ備わっていてもよいし、1つの表示部15内における分割された領域に2つのX線透視動画を表示させてもよい。
【0053】
術者Oは、手技の最中、2種類表示されたうちのいずれか一方のX線透視動画を確認する。又は、術者OはいずれのX線透視動画も確認せず、表示部15ではなく例えば被検体Pに視線を送っている場合もある。いずれにせよ、術者Oが2種類表示されたX線透視動画をそれぞれ同時に確認することはあまり無い。
【0054】
そこでシステム制御部20は、注目位置特定部16にて認識した術者Oの視線の情報を用い、X線源制御部13又は絞り制御部14のうち少なくともいずれか一方を制御する。例えばシステム制御部20は、術者Oが確認していないX線透視動画を生成するためのX線源10におけるX線条件を変化させる。此処で言うX線条件の変化とは、管電圧/管電流/パルスレートのうち少なくともいずれか1つの条件の変化のことである。即ちこのとき、術者Oの視線が送られていないX線透視動画を生成するためのX線源10から照射されるX線量は、術者Oの視線が送られているX線透視動画を生成するためのX線源10から照射されるX線量と比較して減少する。
【0055】
一方、例えばシステム制御部20は、術者Oが確認していないX線透視動画を生成するためのX線源10から照射されるX線の照射範囲内に絞り部11を移動させるべく、絞り制御部14を制御する。これにより、絞り部11として鉛を用いた場合には、絞り部11で覆われた範囲内において被検体PにX線が照射されることを防ぐ。また、絞り部11としてアルミ等のX線フィルタを用いる場合には、該X線フィルタによりX線が減衰することにより、被検体Pに照射されるX線量が低減される。
【0056】
また第1実施形態において、表示部15内に一杯となるようにX線透視動画が表示される例を示したが、X線透視動画は表示部15において分割されたある領域に表示させてもよい。
【0057】
以下、第1実施形態における効果を説明する。
【0058】
第1実施形態によると、注目位置特定部が認識した術者の視線の位置に基づいて、X線源制御部13(/絞り制御部14)が、X線照射線量の制御(/絞り部11の移動制御)を行う。これにより、術中に術者が視線を送っているポイントの近傍に対応する照射野以外の範囲における、被検体に対するX線被曝線量を低下させることができる。即ち、術者は術中において被曝低減を積極的に意識することなく、手技に集中した状態のまま被曝低減を行うことが可能になる。
【0059】
そして絞り部11としてX線を減衰させるX線フィルタを用いることにより、表示部は、術者が視線を送っているポイントの近傍に対応する範囲以外においてもX線透視動画を表示する。これにより、被曝低減を行うとともに、術者は照射野以外の範囲における状態をリアルタイムで確認しつつ手技を行うことができる。
【0060】
また、術者の視線が送られていないX線透視動画を生成するためのX線源10のX線条件を変化させることにより、被検体の余計な被曝を低減することが可能になるとともに、消費電力の低減にも寄与する。
【0061】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態に係るX線診断装置について説明する。
図8は、第2実施形態におけるX線診断装置2の一例を示す概略図である。
【0062】
第2実施形態に係るX線診断装置2(以下、単にX線診断装置2と呼ぶ)は、X線源10と、X線検出部12と、X線源制御部13と、絞り部11と、絞り制御部14と、システム制御部20と、画像発生部21と、画像処理部22と、操作部23と、表示制御部27と、注目位置入力部24と、計算部25と、比較部26とを有する。
【0063】
X線源10は、高電圧発生部(図示せず)からの高電圧(管電圧)の印加及び管電流の供給を受けて、焦点からX線を発生する。発生されたX線は、X線源10の放射窓から放射され、X線フィルタ(図示せず)、絞り部11を通過し、被検体Pに対して術者により照射される。X線源制御部13は、システム制御部20の制御に従って、高電圧発生部を制御する。そして、X線源制御部13は、X線源10に印加する管電圧値及び管電流値を制御する。また、X線源制御部13は、X線源10に対して管電圧と管電流を印加するタイミング、すなわち、パルスレートを制御する。
【0064】
絞り部11は、X線源10の放射窓から放射されX線の、照射範囲を絞る絞り羽根を有する。絞り部11は、例えば、複数の絞り羽根を有し、開口を形成する。絞り羽根は、絞り制御部14の制御に従って移動される。これにより、絞り部11の有する開口の大きさ及び開口の位置は可変される。絞り制御部14の詳細説明は後述する。
【0065】
X線源10及び絞り部11からなるX線照射系は、例えば、C形アーム(図示せず)の一端に保持される。そして、C形アームの他端には、X線照射系と対向するように、X線検出部12が保持される。
【0066】
X線検出部12は、例えば、C形アーム(図示せず)の一端に保持される。X線検出部12は、複数のX線検出素子を有する。複数のX線検出素子は、2次元のアレイ状に配列される。2次元のアレイ状の検出器はFPD(Flat Panel Display:平面検出器)と呼ばれる。FPDの各素子は、X線照射系から放射され被検体Pを透過したX線を検出する。FPDの各素子は、検出したX線強度に対応した電気信号を出力する。
【0067】
画像発生部21は、X線検出部12からの出力に基づいて、被検体Pに関するX線画像のデータを発生する。X線画像を構成する各画素に割り付けられた画素値は、X線の透過経路上の物質に関するX線減弱係数に応じた値等である。
【0068】
画像処理部22は、画像発生部21により発生されたX線画像のデータに対して、画像処理を実行する、画像処理とは、例えば、ウィンドウ条件の変更や高周波数成分の除去等の画像処理である。
【0069】
表示制御部27は、画像発生部21によって発生された被検体PのX線画像のデータを外部モニタ115に対して出力する。外部モニタ115は、表示制御部27からの出力に従って、被検体PのX線画像を表示する。具体的には、表示制御部27は、画像発生部21により発生された時系列を構成する複数のX線画像のデータを外部モニタ115対して出力する。外部モニタ115には、表示制御部27から、被検体Pに関するX線画像が連続的に入力され、X線透視動画として表示される。後述の自動絞り処理において、表示制御部27は、絞り部11の開口に対応する(モニタ115上の術者Oの注視範囲に対応する)透視画像を、LIH画像上に、解剖学的位置を整合させてモニタ115に表示する。LIH画像は、自動絞り処理において、絞る前の開口に対応するX線画像であり、開口を絞る直前の画像である。なお、X線診断装置2は、第1実施形態に係るX線診断装置1のように、画像発生部21により発生されたX線画像を表示するモニタ115を装置の構成要素として有してもよい。
【0070】
操作部23は、第2実施形態に係るX線診断装置2に対して、術者Oによる指示情報を入力するための、インターフェースとして機能する。指示情報とは、例えば、X線条件の設定指示及び撮影方向の設定指示等である。操作部23は、例えば、X線源10及びX線検出部12を備えるC形アームを撮影に応じて移動させるための操作コンソールを有する。操作コンソールは、ボタン、ハンドル、及びトラックボール等を有する。ユーザは、操作コンソールを操作することにより、C形アームを所望の撮影位置に移動させることができる。また、操作部23は、後述の自動絞り機能、自動追跡機能、及び自動拡大機能のON/OFFを切り替えるための切り替えスイッチ等を有してもよい。好適には、切り替えスイッチはふっとスイッチである。
【0071】
注目位置入力部24は、外部の注目位置特定部16から出力された術者Oのモニタ115上の注目位置に関する情報の入力をくり返し受け付ける。術者Oのモニタ115上の注目位置に関する情報とは、モニタ115の画像表示面を平面とする2次元座標系(以下、モニタ115座標系と呼ぶ)における術者Oの注目位置の座標情報(以下、モニタ注目位置と呼ぶ)である。
【0072】
外部の注目位置特定部16は、注目位置を特定するためのデバイスを有する。デバイスは、例えば、赤外線LEDとCMOSカメラである。これらのデバイスは、例えば、モニタの上部に取り付けられる。注目位置特定部16は、これらのデバイスを用いたリンバストラッキング法(強膜反射法)等により、術者Oのモニタ注目位置を特定する。具体的には、CMOSカメラで撮影した画像に基づいて、術者Oの瞳孔の中心位置を特定する。また、赤外線LEDから近赤外線が術者Oに対して照射される。そして、CMOSカメラで撮影した画像に基づいて、眼球表面(角膜)での反射の位置を特定する。瞳孔の中心位置は、術者Oの視線の動きに影響される。一方、角膜反射の位置は、術者Oの視線の動きに影響されない。そのため、注目位置特定部16は、瞳孔の中心位置と角膜反射の位置とに基づいて、術者Oの視線(視線角度)を特定することができる。術者Oの位置及び視線角度は、CMOSカメラの座標系により表される。そのため、CMOSカメラの座標系とモニタ115座標系とが整合されていることにより、術者Oのモニタ注目位置を特定することができる。CMOSカメラの座標系及びモニタ115座標系は、例えば、CMOSカメラ及び赤外線LEDの、モニタ115に対する取り付け位置が、X線診断装置2に登録されていることにより整合できる。また、CMOSカメラの位置、赤外線LEDの位置、及びモニタ115の位置を整合するための校正が検査前に実施されることにより、CMOSカメラの座標系とモニタ115座標系とを整合させてもよい。この校正では、例えば、これらのデバイスが動作している状態で、術者Oが自分の注目位置を操作部23を介してモニタ115上に入力することにより可能である。注目位置特定部16は、所定の周期で術者Oのモニタ注目位置をくり返し特定し、注目位置入力部24に対して出力する。即ち、注目位置入力部24は、時系列を構成する複数のモニタ注目位置のデータの入力を受けつける。なお、X線診断装置2は、第1実施形態に係るX線診断装置1のように、注目位置特定部16を構成要素として有してもよい。また、注目位置特定部16は、術者Oの視線(視線角度)に関するデータとモニタ115に対する術者Oの距離のデータとを注目位置入力部24に出力してもよい。術者Oのモニタ115に対する距離は、例えば、赤外線LEDから照射された時間と、被検体Pにより反射された赤外線を受光した時間とに基づいて特定できる。このとき、計算部25は、術者Oの視線、術者Oのモニタ115に対する距離、及びモニタ115の位置に基づいて、術者Oのモニタ注目位置を計算してもよい。
【0073】
絞り制御部14は、モニタ115座標系で表されるモニタ注目位置を、モニタ115に表示されたX線画像の座標系(以下、単に画像座標系と呼ぶ)における注目位置(以下、画像注目位置と呼ぶ)に変換する。モニタ注目位置のデータは、外部の注目位置特定部16から、特定の周期で注目位置入力部24に対して繰り返し入力される。絞り制御部14は、時系列を構成する複数のモニタ注目位置をそれぞれ対応する複数の画像注目位置に変換する。また、絞り制御部14は、時系列を構成する複数の画像注目位置に基づいて、絞り部11の開口の大きさ及び開口の中心位置を決定する。そして、決定した開口の大きさ及び開口の中心位置に従って、絞り部11を制御する。絞り制御部14の詳細は後述する。
【0074】
計算部25は、2つの画像注目位置の間の移動量を特定する。そして、時系列を構成する複数の画像注目位置のうち、連続する所定数の画像注目位置の総移動量を計算する。所定数とは、後述の比較部26において、術者Oが注視しているか否かを判定するための画像注目位置の数を指す。したがって、所定数は、時間で指定されてもよい。この時、計算部25は、所定の時間内の複数の画像注目位置の総移動量を計算する。
【0075】
比較部26は、自動絞り処理において、計算部25から出力された総移動量のデータを閾値に対して比較する。比較した結果、総移動量が閾値未満の場合、比較部26は、術者Oが注視していると判定する。一方、総移動量が閾値以上の場合、比較部26は、術者Oが注視していないと判定する。
【0076】
システム制御部20は、X線診断装置2に入力された情報を受け取り、一時的にメモリ回路に入力情報を記憶する。そして、システム制御部20は、この入力情報に基づいてX線診断装置2の各部を制御する。
【0077】
(自動絞り機能)
自動絞り機能は、モニタ115に表示されたX線画像上の術者Oの画像注目位置に従って、自動的に絞り部11の開口を狭め、開口の中心位置を移動させる機能である。以下、自動絞り機能に係る処理(自動絞り処理)について、
図9を参照して説明する。
図9は、第2実施形態に係るX線診断装置2が備える自動絞り処理を説明するためのフローチャートである。
(ステップS11)
絞り制御部14により、モニタ注目位置が画像注目位置に変換される。この処理により、術者Oの画像注目位置が特定される。
【0078】
(ステップS12)
計算部25により、連続する所定数の画像注目位置の総移動量が計算される。連続する所定数の画像注目位置について、
図10を参照して説明する。
図10は、計算部25が総移動量を計算する所定数の画像注目位置を説明するための説明図である。
図10は、注目位置入力部24に対して、外部の注目位置特定部16から、モニタ注目位置が入力されるタイミングを示している。例えば、
図10において、注目位置入力部24は、時刻t1から周期L毎に、モニタ注目位置のデータを受信している。この時、注目位置特定部16では、周期Lでモニタ注目位置が特定されてもよいし、周期Lよりも短い周期でモニタ注目位置が特定されてもよい。
図10では、所定数Mは4つとしている。したがって、計算部25は、時刻t1から時刻t4までの画像注目位置の総移動量、時刻t2から時刻t5までの画像注目位置の総移動量といったように、所定数M毎に、総移動量を計算する。なお、所定数Mは操作部23を介した術者Oの指示に従って、適宜変更が可能である。また、所定数Mを、術者Oは時間で指定してもよい。
【0079】
(ステップS13)
比較部26により術者Oが注視したかが判定される。注視していると判定された場合は、処理がステップS14に移行される。一方、注視していないと判定された場合は、処理がステップS11に戻される。計算部25及び比較部26の処理について、
図11を参照して説明する。
【0080】
図11A、
図11B、
図11C、
図11Dは、それぞれ第2実施形態に係るX線診断装置2の計算部25及び比較部26の処理を説明するための第1、第2、第3、第4の説明図である。
図11A、
図11B、
図11C、及び
図11Dは、時刻t1から時刻t4までの画像注目位置の移動の遷移を示している。計算部25は、2つの画像注目位置の間の移動量を特定する。
【0081】
例えば、
図11A及び
図11Bに示すように、計算部25は、時系列で隣り合う2つの時刻にそれぞれ対応する2つの画像注目位置の間の移動量を特定する。具体的には、計算部25は、時刻t1に対応する画像注目位置の座標と時刻t2に対応する画像注目位置の座標とに基づいて、移動量k1を計算する。そして、計算部25は、時刻t1から時刻t4まで、上述の処理をくり返し実行することにより総移動量ks(k1、k2、及びk3の総和)を計算する。比較部26は、総移動量ksを閾値ktに対して比較する。比較した結果、
図11Aに示すように、総移動量ksが閾値kt未満のとき、時刻t4の時点で、術者Oが注視している判定する。総移動量ksが閾値kt未満のときは、画像注目位置が大きく移動していないことを示している。つまり、術者Oは、注視していることを示している。一方、
図11Bに示すように、総移動量ksが閾値kt以上のとき、時刻t4の時点で、術者Oが注視していないと判定する。総移動量ksが閾値kt以上のときは、画像注目位置が大きく移動していることを示している。つまり、術者Oは、注視していないことを示している。
【0082】
また、例えば、
図11C及び
図11Dに示すように、所定数Mの開始時点に対応する画像注目位置と他の画像注目位置との間の移動量を計算してもよい。具体的には、時刻t1が開始時点とすれば、計算部25は、時刻t1に対応する画像注目位置に対する、時刻t2に対応する画像注目位置の距離g1を計算する。同様に、時刻t1に対応する画像注目位置に対する、時刻t3に対応する画像注目位置の距離g2を計算する。同様に、時刻t1に対応する画像注目位置に対する、時刻t4に対応する画像注目位置の距離g3を計算する。比較部26は、総移動量s(g1、g2、及びg3の総和)を閾値ktに対して比較する。比較した結果、
図11Cのように、総移動量gsが閾値kt未満のとき、つまり、画像注目位置が大きく移動していない場合、時刻t4の時点で、術者Oが注視している判定する。一方、
図11Dに示すように、総移動量gsが閾値kt以上、つまり、画像注目位置が大きく移動している場合、時刻t4の時点で、術者Oが注視していないと判定する。
【0083】
(ステップS14)
絞り制御部14により、所定数の画像注目位置に基づいて、画像座標系の注視中心位置が特定される。注視中心位置について、
図12A,
図12B、及び
図12Cを参照して説明する。
図12A、
図12B,及び
図12Cは、それぞれ絞り制御部14により設定される注視中心位置の第1、第2、及び第3の例を示した図である。所定数の画像注目位置は4つであり、それぞれp1,p2,p3、及びp4である。p1,p2,p3、及びp4は、時系列の順である。
図12Aに示すように、絞り制御部14は、所定数の画像注目位置で定まる重心位置g1を注視中心位置c1とする。また、
図12Bに示すように、絞り制御部14は、所定数の画像注目位置のうち、最初に特定された画像注目位置p1を注視中心位置c1とする。また、
図12Cに示すように、絞り制御部14は、所定数の画像注目位置のうち、最新の画像注目位置p4を注視中心位置c1とする。なお、所定数の画像注目位置の一注目位置を注視中心位置とする場合、
図12B及び
図12Cで説明したp1やp4だけではなく、絞り制御部14は、他の画像注目位置を注視中心位置としてもよい。注視中心位置を、所定数の画像注目位置のうち、どの画像注目位置にするかは、操作部23を介した術者Oの指示に従って、適宜変更が可能である。
【0084】
(ステップS15)
絞り制御部14により、画像座標系の注視範囲が設定される。注視範囲の設定方法には、(1)注視中心位置を用いる方法と(2)所定数の画像注目位置を用いる方法とがある。以下、
図13A及び
図13Bを用いて(1)の方法を説明する。
【0085】
図13Aは、絞り制御部14により設定される注視範囲の第1の例を示した図である。
図13Aに示すように、絞り制御部14は、注視中心位置c1を中心とした注視範囲a1を設定する。注視範囲a1の縦の幅t1と横の幅w1とは、予め設定された大きさである。t1とw1は、同じ幅であってもよい。また、t1とw1は、操作部23を介した術者Oの指示に従って、適宜変更が可能である。
【0086】
図13Bは、絞り制御部14により設定される注視範囲の第2の例を示した図である。
図13Bに示すように、絞り制御部14は、注視中心位置c2を中心とした注視範囲a2を設定する。注視範囲a2の縦の幅t2は、注視中心位置c2から縦方向に最も遠い画像注目位置に基づいて決定される。同様に、注視範囲の横の幅w2は、注視中心位置c2から横方向に最も遠い画像注目位置に基づいて決定される。
図13Bに示すように、注視中心位置c1から縦方向に最も遠い画像注目位置はp1であり、その距離はd1である。一方、注視中心位置c2から横方向に最も遠い画像注目位置はp4であり、その距離はd2である。すなわち、t2は2×d1となり、w2は2×d2となる。なお、t2及びw2は、同じ幅であってもよい。この時、t2及びw2は、注視中心位置c2から最も遠い画像注目位置に基づいて決定される。例えば、
図13Bに示した例であれば、注視中心位置c2から最も遠い画像注目位置p4に基づいて決定される。t2及びw2は、2×d2となる。
【0087】
次に、
図14A及び
図14Bを用いて(2)の方法を説明する。
図14A及び
図14Bは、それぞれ絞り制御部14により設定される注視範囲の第3及び第4の例を示した図である。
図14Aに示すように、絞り制御部14は、画像注目位置p1、p2、p3及びp4を含む最小の矩形範囲a3を注視範囲に設定する。したがって、注視範囲a3の縦t3は、p1とp3とに基づいて設定される。一方、注視範囲a3の横w3は、p2とp4とに基づいて設定される。なお、矩形範囲a3は、最小の矩形形状ではなく、正方形でもよい。この時、正方形の形状を有する注視範囲の1辺は、縦の辺と横の辺とのうち、例えば、長い方となる。また、
図14Bに示すように、絞り制御部14は、
図14Aで設定した注視範囲a3から、四方に所定のマージンLを加えた範囲a4を注視範囲として設定してもよい。所定のマージンLは予めX線診断装置2に登録されている。なお、所定のマージンLは、画像上の縦方向と横方向とで、異なってもよい。
【0088】
(ステップS16)
ステップS15とで設定された注視範囲に対応する開口の範囲になるように、絞り羽根が移動される。絞り制御部14による絞り羽根の移動方法について、
図15A及び
図15Bを参照して説明する。
【0089】
図15Aは、ステップS13で術者Oが注視していると判定される前にモニタ115に表示されているX線画像と絞り部11の開口とを示した図である。
図15Aに示すように、画像座標系と絞り部11の座標系(以下、絞り座標系と呼ぶ)とが整合している。即ち、例えば、X線画像a5の中心位置c5(x5、z5)と開口A5の中心位置C5(X5、Z5)とが対応している。この時、X線画像a5は、リアルタイムに更新される透視画像である。また、X線画像a5の縦t5及び横w5は、それぞれ開口A5の縦T5及び横W5に対応している。
【0090】
図15Bは、ステップS13で術者Oが注視していると判定された後にモニタ115に表示されるX線画像と絞り部11の開口とを示した図である。絞り制御部14により、注視中心位置c6(x6、z6)と注視範囲a6の縦の幅t6と横の幅w6とが設定されている。
図15Aに示したように、すでに、画像座標系と絞り座標系とが整合しているため、絞り制御部14は、注視範囲a6の注視中心位置c6(x6、z6)を開口A6の中心位置C6(X5,Z5)に変換できる。同様に、絞り制御部14は、注視範囲a6の縦の幅t6と横の幅w6とを、それぞれ開口A6の縦の幅T6と横の幅W6に変換できる。即ち、例えば、X線画像の注視範囲a6は開口A6に対応している。モニタ115には、LIH画像上に、透視画像が重ねて表示される。X線画像の注視範囲a6以外の範囲は、LIH画像が表示され、注視範囲a6に対応する範囲は、リアルタイムに更新される透視画像が表示される。開口A6の中心位置C6、縦の幅T6、及び横の幅W6に基づいて、絞り制御部14は、絞り部11の有する絞り羽根を移動させる。
ステップS11からステップS16までの処理により、自動絞り処理が終了される。なお、開口が狭められた後、モニタ115には、LIH画像上に絞り部11の開口に対応する範囲の透視画像が重ねて表示される。LIH画像は、開口が狭められる直前の被検体Pに関するX線画像である。
【0091】
(自動追跡機能)
自動追跡機能は、既に述べた自動絞り機能により、絞り部11の開口が狭められた後に、モニタ115に表示されたX線画像上の術者Oの画像注目位置に従って、自動的に絞り部11の開口の位置を移動させる機能である。以下、自動追跡機能に係る処理(自動追跡処理)について、
図16A及び
図16Bを参照して説明する。
【0092】
図16Aは、自動追跡処理を説明するための第1の説明図である。
図16Aにおいて、c7は時刻t7時の術者Oの注視中心位置を示している。a7は、c7に対応する注視範囲を示している。同様に、c8は、時刻t7よりも遅い時刻t8時の術者Oの注視中心位置を示している。a8は、c8に対応する注視範囲を示している。すなわち、
図16Aは、術者Oの注視中心位置が、c7からc8に変化した状態を示している。
【0093】
絞り制御部14は、注視中心位置がc7からc8に移動したのを契機に、自動的に絞り部11の開口の中心位置が、注視中心位置c7に対応する位置から、注視中心位置c8に対応する位置に移動するように、絞り部11を制御する。また、絞り制御部14は、開口の大きさが注視範囲a7に対応する大きさから、注視範囲a8に対応する大きさになるように、絞り部11を制御する。この時、絞り制御部14は、注視範囲a7に対応する開口の大きさを保持したまま、開口の中心位置のみを移動させるように、絞り部11を制御してもよい。以上の処理により、モニタ115に表示されたX線画像上の術者Oの画像注目位置に従って、自動的に絞り部11の開口の位置を移動させることができる。
【0094】
なお、自動追跡処理において、画像注目位置の移動量に応じて、絞り制御部14は自動追跡処理を実行するか否かを決定してもよい。
【0095】
図16Bは、自動追跡処理を説明するための第2の説明図である。
図16Bにおいて、c9は時刻t9時の術者Oの注視中心位置を示している。a9は、c9に対応する注視範囲を示している。c10は、時刻t9よりも遅い時刻t10時の術者Oの注視中心位置を示している。c11は、時刻t10よりも遅い時刻t11時の術者Oの注視中心位置を示している。a11は、c11に対応する注視範囲を示している。すなわち、
図16Bは、術者Oの注視中心位置が、c9からc10,c10からc11に変化した状態を示している。
【0096】
計算部25は、注視中心位置の移動量を計算する。また、比較部26は、注視中心位置の移動量を閾値に対して比較する。絞り制御部14は、比較部26の比較結果に従って、絞り部11を制御する。具体的には、
図16Bに示すように、注視中心位置がc9からc10に変化したとき、計算部25は、c9とc10との間の移動量b10を計算する。比較部26は、移動量b10を閾値に対して比較する。そして、移動量b10が閾値未満のとき、絞り制御部14は、開口の大きさと開口の位置とを保持する。つまり、移動量b10が閾値未満のとき、絞り制御部14は、自動追跡処理を実行しない。この時、閾値は、例えば、注視中心位置から注視範囲の端までの距離で定義される。これにより、術者Oの注視中心位置が移動しても、その移動先が注視範囲内であるので、自動追跡処理を実行しなくても、術者Oは引き続き透視動画を見ることができる。絞り制御部14による絞り部11の制御回数を減らすことができるので、絞り部11の機構への負担を軽減することができる。
【0097】
一方、注視中心位置がc10からc11に変化したとき、計算部25は、c9とc11との間の移動量b11を計算する。ここで、計算部25は、c10とc11との間の移動量ではなく、c9とc11との間の移動量を計算する。これは、現在の開口の位置及び開口の大きさは、それぞれ注視中心位置c9及び注視範囲a9に対応しているからである。そのため、計算部25は、注視中心位置c9から他の注視中心位置の移動量を計算する。比較部26は、移動量b10を閾値に対して比較する。この時、閾値は、例えば、注視中心位置から注視範囲の端までの距離で定義される。これにより、術者Oの注視中心位置が移動し、その移動先が注視範囲外であれば、自動追跡処理を実行する必要があるとわかる。そして、移動量b10が閾値以上のとき、絞り制御部14は、自動追跡処理を実行する。具体的には、絞り制御部14は、注視中心位置がc10からc11に移動したのを契機に、自動的に絞り部11の開口の中心位置が、注視中心位置c9に対応する位置から、注視中心位置c11に対応する位置に移動するように、絞り部11を制御する。また、絞り制御部14は、開口の大きさが注視範囲a9に対応する大きさから、注視範囲a11に対応する大きさになるように、絞り部11を制御する。この時、絞り制御部14は、注視範囲a9に対応する開口の大きさを保持したまま、開口の中心位置のみを移動させるように、絞り部11を制御してもよい。
【0098】
(自動拡大機能)
自動拡大機能は、既に述べた自動絞り機能により、絞り部11の開口が狭められた後に、モニタ115に表示されたX線画像上の術者Oの画像注目位置に従って、自動的に絞り部11の開口を広げる機能である。以下、自動拡大機能に係る処理(自動拡大処理)について、
図17A、
図17B、及び
図17Cを参照して説明する。
【0099】
図17Aは、自動拡大処理を説明するための第1の説明図である。
図17Aにおいて、c12は時刻t12時の術者Oの注視中心位置を示している。a12は、c12に対応する注視範囲を示している。c13は、時刻t12よりも遅い時刻t13時の術者Oの注視中心位置を示している。すなわち、
図17Aは、術者Oの注視中心位置が、c12からc13に変化した状態を示している。計算部25は、注視中心位置c12とc13との間の移動量k13を計算する。比較部26は、移動量k13を閾値に対して比較する。絞り制御部14は、移動量k13が閾値以上のとき、絞り部11の開口を広げるように、絞り部11を制御する。例えば、
図17Aに示すように、絞り制御部14は、注視中心位置がc12からc13に移動されたのを契機に、照射範囲がX線画像の全範囲Sに対応するように、開口を広げ、開口の中心位置を移動させる。
【0100】
図17Bは、自動拡大処理を説明するための第2の説明図である。
図17Bにおいて、モニタ115には、X線画像上に、マークが表示されている。また、c14は時刻t14時の術者Oの注視中心位置を示している。a14は、c14に対応する注視範囲を示している。c15は、時刻t14よりも遅い時刻t15時の術者Oの注視中心位置を示している。
図17Bは、術者Oの注視中心位置が、c14からc15に変化した状態を示している。絞り制御部14は、モニタ115に表示されたマークが術者Oにより注視されたのを契機に、すなわち、注視中心位置がモニタ115に表示されたマーク上に特定されたのを契機に、絞り部11の開口を広げるように、絞り部11を制御する。
図17Bに示すように、例えば、絞り制御部14は、照射範囲がX線画像の全範囲Sに対応するように、開口を広げ、開口の中心位置を移動させる。
【0101】
図17Cは、自動拡大処理を説明するための第3の説明図である。
図17Cにおいて、c16は時刻t16時の術者Oの注視中心位置を示している。a16は、c16に対応する注視範囲を示している。c17は、時刻t16よりも遅い時刻t17時の術者Oの注視中心位置を示している。注視中心位置c17はX線画像上にない。
図17Cは、術者Oの注視中心位置が、c16からc17に変化した状態を示している。
図17Cに示すように、絞り制御部14は、モニタ115に表示されたX線画像上に注視中心位置がないとき、絞り部11の開口を広げるように、絞り部11を制御する。
図17Cに示すように、例えば、絞り制御部14は、注視中心位置がc16からc17に移動されたのを契機に、照射範囲がX線画像の全範囲Sに対応するように、開口を広げ、開口の中心位置を移動させる。
【0102】
自動拡大機能により、術者Oは、注視中心位置をX線画像上からはずしたり、モニタ115上のマークを注視したり、注視中心位置を大きく移動させたりするだけで、一旦、照射範囲全体の様子を見ることができる。
【0103】
なお、自動拡大処理が実行される契機となる術者Oの注視位置の移動は、他の処理の契機としてもよい。
例えば、X線源制御部13は、X線源10に供給する管電圧値、管電流値、及びX線源10で発生されるパルスレートのうち、少なくとも1つを下げるために、X線源10を制御してもよい。また、絞り制御部14は、絞り部11の開口を閉じるように、絞り部11を制御しても良い。したがって、術者Oは、注視中心位置をX線画像上からはずしたり、モニタ115上のマークを注視したり、注視中心位置を大きく移動させたりするだけで、被検体Pへの余計な被ばくを低減することができる。
【0104】
以下、第2実施形態における効果を説明する。
第2実施形態の自動絞り機能によると、術者OがX線画像上で注目している画像注目位置に従って、自動的に絞り部11の開口の位置及び開口の大きさが変更される。具体的には、絞り部11の開口の位置及び開口の大きさは、術者Oが注目しているX線画像の部分に対応するように変更される。この時、X線は開口に対応する範囲にしか照射されない。モニタ115に、絞り部11の開口に対応する範囲のX線画像しか表示されないと画像注目位置以外の部分を確認することができない。そのため、モニタ115には、自動絞り処理直前のLIH画像上に、絞り部11の開口に対応する透視画像が表示制御部27により表示される。これにより、術者Oは、注目している部分に対応する透視画像を見ながら、注目している部分以外は、LIH画像にて確認することができる。また、自動追跡機能により、自動絞り処理後、術者Oの注目している部分が移動されるとともに、自動的に絞り部11の開口の位置を移動させることができる。即ち、術者Oは術中において被曝低減を積極的に意識することなく、手技に集中した状態のまま被曝低減を行うことが可能になる。
【0105】
また、術者のX線画像上を見ていないとき、X線透視画像を発生するためのX線源10のX線条件を変更させることにより、被検体への余計な被曝を低減することが可能になるとともに、消費電力の低減にも寄与することができる。
【0106】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態に係るX線診断装置について、第2実施形態との差異を中心に説明する。
図18は、第3実施形態におけるX線診断装置3の一例を示す概略図である。第2実施形態のX線診断装置2は、複数の画像注目位置に従って、絞り部11の開口の大きさ及び絞り部11の開口の位置のうち、少なくとも一方が変更されるために、絞り制御部14により絞り部11が制御されていた。一方、第3実施形態のX線診断装置3は、複数の画像注目位置に従って、X線フィルタ17の開口の位置を移動させるために、X線フィルタ制御部18によりX線フィルタ17が制御される。
【0107】
第3実施形態のX線診断装置3が有するX線フィルタ17は、被検体のX線被曝量の低減や画質の向上等を目的に、X線の線質を変更するもので、放射窓から放射されたX線の連続スペクトルに関して、診断に必要のない長波長成分を除去する。X線フィルタ17は、X線検出部12のX線検出面(以下、単にX線検出面と呼ぶ)に対して照射されるX線の線量を、部分的に低減する。X線フィルタ17は、X線フィルタ制御部18の制御に従って、移動される。
図19A、
図19B、及び
図19Cは、それぞれ第3実施形態のX線診断装置3が有するX線フィルタ17の第1、第2、及び第3の例を示した図である。
【0108】
図19Aに示す第1の例に係るX線フィルタ17は、減弱係数Aを有する金属板で形成されており、開口を有する。開口は、例えば、その開口の中心位置がX線フィルタ17全体の中心位置に重なるように形成される。開口は、例えば、
図19Aに示すように矩形形状を有する。しかしながら、開口の形状は、他の形状、例えば、円状等であってもよい。
図19Aに示す第1の例に係るX線フィルタ17を通過したX線による照射範囲は、X線フィルタ17の開口に対応する照射範囲と、他の照射範囲とで構成される。開口に対応する照射範囲は、X線フィルタ17を通過していないX線により発生される。一方、他の照射範囲は、X線フィルタ17を通過したX線により発生される。そのため、他の照射範囲のX線の線量は、開口に対応する照射範囲のX線の線量に比べて、低減される。なお、第1の例に係るX線フィルタ17は、それ自体が、開口を有する1つの部品であってもよい。また、第1の例に係るX線フィルタ17は、複数の部品で構成することにより、開口を形成してもよい。この場合、複数の部品のうち、少なくとも1つの部品を術者Oが交換することで、開口の大きさ、形状等を変更することができる。
【0109】
図19Bに示す第2の例に係るX線フィルタ17は、第1の例に係るX線フィルタ17を、他のX線フィルタ17に組み合わせた構成である。他のX線フィルタ17は、減弱係数Bを有する金属板で構成される。
図19Bに示す第2の例に係るX線フィルタ17を通過したX線による照射範囲は、X線フィルタ17の開口に対応する照射範囲と、他の照射範囲とで構成される。開口に対応する照射範囲は、他のX線フィルタ17を通過したX線により発生される。一方、他の照射範囲は、第1の例に係るX線フィルタ17と、他のX線フィルタ17とを通過したX線により発生される。そのため、開口に対応する照射範囲のX線の線量は、X線フィルタ17がない時のX線の線量よりも低減される。さらに、他の照射範囲のX線の線量は、開口に対応する照射範囲のX線の線量に比べて、低減される。なお、
図19Bでは、他のX線フィルタ17は1枚であるが、他のX線フィルタ17は複数枚であってもよい。
【0110】
図19Cに示す第3の例に係るX線フィルタ17は、金属平板で形成されており、同一平面上に減弱係数の異なる複数の部分を有する。第3の例に係るX線フィルタ17は、例えば、
図19Cに示すように、同一平面上に減弱係数Aを有する第1部分と、第1部分の周囲と接し、減弱係数Bを有する第2部分とを有する。第1部分に対応する照射範囲は、減弱係数Aを通過したX線により発生される。一方、第2部分に対応する照射範囲は、減弱係数Bを通過したX線により発生される。そのため、第3の例に係るX線フィルタ17は、照射範囲の全体に対して、異なる線量を有する2つの照射範囲を構成する。減弱係数Aと減弱係数Bとに応じて、その2つの照射範囲のそれぞれの線量が決定される。例えば、減弱係数Bが減弱係数Aよりも大きい場合、第3の例に係るX線フィルタ17は、照射範囲の全体に対して、第2部分に対応する照射範囲のX線の線量は、第2部分に囲まれる第1部分に対応する照射範囲のX線の線量に比べて低減される。なお、第3の例に係るX線フィルタ17は、減弱係数の異なる複数の部分を有していればよく、複数の部分は、2つの部分、3つの部分等であってもよい。また、第3の例に係るX線フィルタ17は、照射範囲の全体に対して、部分的に、X線の線量を低減できるのであれば、他の構成であってもよい。例えば、第3の例に係るX線フィルタ17は、部分的に金属板の厚みが異なっていてもよい。
図19Cを利用して説明すると、第1部分の金属の厚みに比べて、第2部分の金属の厚みを厚くしてもよい。また、X線フィルタ17中心位置からX線フィルタ17端に向かって、厚みを段階的に厚くするようにしてもよい。
また、X線フィルタ17は、その開口の大きさ及び開口の位置が可変な構造を有してもよい。
図20A及び
図20Bは、それぞれ開口の大きさ及び開口の位置が可変可能な構造を有するX線フィルタ17の第1及び第2の例を示した図である。
【0111】
図20Aに示すように、X線フィルタ17は、第1部品と第2部品とで構成される。第1部品と第2部品とは、同一の減弱係数を有するL字型の金属平板で形成される。
図20Aに示すように、第1部品と第2部品とが、互いに噛み合わされることにより、X線フィルタ17の開口が形成される。
図20Aに示したX線フィルタ17は、X線フィルタ制御部18により、第1部品と第2部品とが移動されることにより、X方向に開口の大きさ及び開口の位置が変更可能である。
【0112】
図20Bに示すように、X線フィルタ17は、同一の減弱係数を有する金属平板で形成された4つの部品が噛み合わされることにより、開口を形成する。
図20Bに示したX線フィルタ17は、X線フィルタ制御部18により、上述の4つの部品が移動されることにより、X方向及びZ方向のうち、少なくとも一方の方向に開口の大きさ及び開口の位置が変更可能である。
【0113】
X線フィルタ制御部18は、モニタ115座標系で表されるモニタ注目位置を、画像座標系で表される画像注目位置に変換する。モニタ注目位置のデータは、外部の注目位置特定部16から、特定の周期で注目位置入力部24に対して繰り返し入力される。X線フィルタ制御部18は、時系列を構成する複数のモニタ注目位置をそれぞれ対応する複数の画像注目位置に変換する。また、X線フィルタ制御部18は、時系列を構成する複数の画像注目位置に基づいて、X線フィルタ17の開口の中心位置を決定する。そして、決定した開口の中心位置に従って、X線フィルタ17を制御する。
【0114】
図21は、第3実施形態に係るX線診断装置3が備えるX線フィルタ17を用いたときのX線の照射範囲を説明するための説明図である。なお、
図21では、
図19BのX線フィルタ17を例に説明する。
【0115】
図21は、X線源10から発生され、X線フィルタ17を透過したX線の照射範囲を示している。X線フィルタ17は、開口のない第1X線フィルタ17Aと開口を有する第2X線フィルタ17Bとで構成される。
図21に示すように、X線の照射範囲Eは、線量の異なる2つの照射範囲を有する。第2X線フィルタ17Bの開口に対応する照射範囲EHは、他の照射範囲ELに比べてX線の線量が多い。第2X線フィルタ17BがX線フィルタ制御部18により、XZ方向に移動されることにより、第2X線フィルタ17Bの開口に対応する照射範囲EHの位置を移動させることができる。また、第2X線フィルタ17BがX線フィルタ制御部18により、Y方向に移動されることにより、第2X線フィルタ17Bの開口に対応する照射範囲EHの大きさを変更することができる。また、第2X線フィルタ17Bの開口の大きさ及び第2X線フィルタ17Bの開口の位置は、
図20A及び
図20Bで示したX線フィルタ17を構成する部品がX線フィルタ制御部18により移動されることにより、それぞれ変更されてもよい。
【0116】
操作部23は、開口を有するX線フィルタ17(以下、開口フィルタと呼ぶ)の使用のON/OFFの切り替えを術者Oから受け付ける。
表示制御部27は、モニタ115に透視画像を表示する。モニタ115に表示される画像について、
図22A及び
図22Bを参照して説明する。
【0117】
図22Aは、第3実施形態に係るX線診断装置3が備える開口フィルタの使用OFF時にモニタ115に表示されるX線画像の一例を示す図である。
図22Aに示すように、モニタ115には、X線透視画像S1が表示される。
図22Aでは、開口フィルタの使用がOFFされているため、X線発生部により発生されるX線透視画像S1は、一様の画像レベルを有する。画像レベルとは、SN比、輝度等の画質を指す。
【0118】
図22Bは、第3実施形態に係るX線診断装置3が備える開口フィルタの使用ON時にモニタ115に表示されるX線画像の一例を示す図である。
図22Bに示すように、モニタ115には、X線透視画像S2が表示される。
図22Bでは、開口フィルタの使用がONされているため、X線発生部により発生されるX線透視画像S2は、異なる画像レベルの2つの範囲を有する。
図22Bに示すように、X線透視画像S2は、開口フィルタの開口に対応する範囲fa1と開口フィルタの他の部分に対応する範囲fa2を有する。範囲fa1の中心位置fc1は、開口フィルタの開口の中心位置に対応する。また、範囲fa1の大きさは、開口フィルタの開口の大きさに対応する。X線透視画像の範囲fa1は、線量の多い照射範囲に対応し、X線透視画像の範囲fa2は、線量の少ない照射範囲に対応する。そのため、X線透視画像の範囲fa1の画像レベルは、範囲fa2の画像レベルよりも高い。画像処理部22は、第1実施形態で説明したように、X線透視画像の範囲fa1の画像レベルと範囲fa2の画像レベルとを一致するように、範囲fa1に対応するX線透視画像のデータと範囲fa2に対応するX線透視画像のデータとに対して、異なる画像処理を実行してもよい。画像処理部22は、X線フィルタ17の開口に対応する照射範囲における、X線検出部12の検出された信号と、X線フィルタ17の他の部分に対応する照射範囲における、X線検出部12の検出された信号とに基づいて、画像処理を実行する。
【0119】
なお、開口フィルタOFF時、X線フィルタ制御部18は、X線が開口フィルタを通過しないように、自動的に開口フィルタを移動させてもよい。また、開口の大きさが自動的に可変な場合、X線フィルタ制御部18は、X線が開口フィルタを通過しないように、自動的に開口を大きくしてもよい。また、開口フィルタのON/OFFは、術者Oにより、開口フィルタの挿入の有無により切り替わっても良い。
【0120】
第2実施形態に係るX線診断装置2は、術者Oの画像注目位置に従って、自動的に絞り部11の開口の位置及び開口の大きさを変更することで、被検体Pの被ばくを低減していた。この時、モニタ115には、LIH画像上に、絞り部11の開口に対応する透視画像が重ねて表示されている。術者Oは、注目している部分のみを透視することができる。
なお、必要に応じて、特定された注目位置の総移動量を計算し、これを閾値と比較して、総移動量が前記閾値以上のとき、開口フィルタの使用をOFFにするようにしてもよい。
【0121】
第3実施形態に係るX線診断装置3は、第2実施形態と同様に、術者Oの画像注目位置に従って、自動的にX線フィルタ17の開口の位置及び開口の大きさのうち、少なくとも一方を変更することができる。したがって、第2実施形態と同じように、被検体Pの被ばくを低減することができる。X線フィルタ制御部18によるX線フィルタ17の制御方法については、第2実施形態に係るX線診断装置2の絞り制御部14による絞り部11の制御方法と同様である。ただし、X線フィルタ17の開口の位置しか変更できない、
図19A、
図19B、及び
図19CのX線フィルタ17が使用されている場合、X線フィルタ制御部18は、X線フィルタ17の開口の位置の移動制御のみを行う。
【0122】
以下、第3実施形態における効果を説明する。
第3実施形態の自動絞り機能によると、術者OがX線画像上で注目している画像注目位置に従って、自動的にX線フィルタ17の開口の位置及び開口の大きさが変更される。具体的には、X線フィルタ17の開口の位置及び開口の大きさは、術者Oが注目しているX線画像の部分に対応するように変更される。この時、X線照射範囲は、X線フィルタ17の開口を通過した線量の多い範囲とX線フィルタ17の開口以外を通過した線量の少ない範囲とを有する。モニタ115には、透視画像が表示される。透視画像は、画像レベルの異なる2つの範囲を有する。X線フィルタ17の開口の以外に対応する範囲の画像レベルは、X線フィルタ17の開口に対応する範囲の画像レベルよりも低い。しかしながら、術者Oが注目している部分は、X線フィルタ17の開口に対応する。そのため、モニタ115には、術者Oが注目している部分の透視画像と、注目していない部分の透視画像が表示されている。術者Oは、注目していない部分に画像の変化があった時も、すぐに対処することができる。また、自動追跡機能により、自動絞り処理後、術者Oの注目している部分が移動されるとともに、自動的にX線フィルタ17の開口の位置を移動させることができる。即ち、術者Oは術中において被曝低減を積極的に意識することなく、手技に集中した状態のまま被曝低減を行うことが可能になる。
【0123】
(第4実施形態)
第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態では、X線源10及びX線検出部12のX線撮影系のセットを1つ備えるシングルプレーン方式のX線診断装置に関して説明した。第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態は、これに限定されない。例えば、X線撮影系を複数セット備えるX線診断装置であっても、第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態を適用することができる。
【0124】
図23は、第4実施形態におけるX線診断装置4の一例を示す概略図である。
図23に示す第4実施形態に係るX線診断装置4は、2つの撮影系を有するバイプレーン方式のX線診断装置を示している。なお、複数の撮影系を有する装置であれば、ステレオX線撮影装置等であってもよい。以下、シングルプレーン方式のX線診断装置との差異を中心に、システム制御部20、絞り制御部14、X線フィルタ制御部18、及び表示制御部27による各処理について説明する。第4実施形態は、第2実施形態に係るX線診断装置2をバイプレーン方式に適用した例である。
【0125】
第4実施形態に係るバイプレーン方式のX線診断装置4(以下、単にバイプレーンX線診断装置4と呼ぶ)は、2つの撮影系を有する。2つのXは、例えば、正面系(フロンタル:F)の第1撮影系5と、側面系(ラテラル:L)の第2撮影系6とで構成される。2つの撮影系は、アイソセンタが一致するように構成される。そして、2つの撮影系は、2つの撮影系にそれぞれ対応する2つの撮影方向が互いに直交するように構成されることが多い。
図24は、第1撮影系5及び第2撮影系6の一例を示すブロック図である。
第1撮影系5は、第1X線源51、第1絞り部52、及び第1X線検出部53を有する。第2撮影系6は、第2X線源61、第2絞り部62、及び第2X線検出部63を有する。第1X線源51から発生されたX線は、第1X線検出部53により検出される。第1X線検出部53のX線検出面上の照射範囲は、第1絞り部52により、その大きさ及び中心位置が限定される。同様に、第2X線源61から発生されたX線は、第2X線検出部63により検出される。第2X線検出部63のX線検出面上の照射範囲は、第2絞り部62により、その大きさ及び中心位置が限定される。第1X線源51及び第2X線源61は、X線源制御部13により制御される。X線源制御部13による第1X線源51及び第2X線源61の制御とは、例えば管電圧値や管電流値の制御、パルスレートの制御等である。第1絞り部52及び第2絞り部62は、絞り制御部14により制御される。絞り制御部14は、時系列を構成する複数の画像注目位置に基づいて、第1絞り部52の開口の大きさ及び開口の中心位置を決定する。また、絞り制御部14は、時系列を構成する複数の画像注目位置に基づいて、第2絞り部62の開口の大きさ及び開口の中心位置を決定する。そして、それぞれ決定した開口の大きさ及び開口の中心位置に従って、第1絞り部52及び第2絞り部62を制御する。
【0126】
画像発生部21は、第1X線検出部53によって検出されたX線のデータに基づいて、被検体Pの第1X線画像を生成する。画像発生部21は、第2X線検出部63によって検出されたX線のデータに基づいて、被検体Pの第2X線画像を生成する。第1X線画像と第2X線画像は、被検体Pを2つの撮影方向から撮影したX線画像である。第1X線画像は第1撮影系5の撮影方向に対応し、第2X線画像は、第2撮影系6の撮影方向に対応する。
【0127】
表示制御部27は、第1X線画像と第2X線画像とをモニタ115に表示する。モニタ115は、第1X線画像を表示するモニタと、第2X線画像を表示するモニタとを有してもよい。また、モニタ115は、1つであってもよい。このとき、モニタ115には、例えば、第1X線画像と第2X線画像とが並列して表示される。
【0128】
以下、図面を参照して第4実施形態に係るバイプレーンX線診断装置4の絞り制御部14の処理について説明する。
図25Aは、第4実施形態に係るバイプレーンX線診断装置4の絞り制御部14の処理を説明するための第1説明図である。
【0129】
図25Aでは、モニタ115に第1X線画像S1と第2X線画像S2とが表示制御部27により表示されている。現在、術者Oの注視中心位置は第2X線画像上のc20にある。このとき、絞り制御部は、注視範囲a20を決定する。そして、絞り制御部14は、第2絞り部62の開口の中心位置がc20に対応するように、また、第2絞り部62の開口の大きさが注視範囲a20に対応するように、第2絞り部62を制御する。また、絞り制御部14は、第1絞り部52の開口を閉じるように、第1絞り部52を制御する。以上の絞り制御部14の処理により、モニタ115には、第1撮影系5に対応するLIH画像が表示される。また、第2撮影系6に対応するLIH画像上に、第2絞り部62の開口に対応する透視画像が重ねて表示される。術者Oは、現在注目しているX線画像の注視範囲の透視画像を確認することができる。このとき、第1撮影系5による被検体Pの被ばくはほとんどない。また、第2撮影系6においても、注視範囲にのみX線が照射されるため、照射範囲全体にX線が照射される場合に比べて、被検体Pの被ばくを低減することができる。
【0130】
なお、上述の説明では、絞り制御部14は、第1絞り部52の開口を閉じるようにと記載したが、以下のように、X線源制御部13が第1X線源51を制御してもよい。例えば、X線源制御部13は、第1X線源51に供給する管電圧値、管電流値、及び第1X線源51で発生されるパルスレートのうち、少なくとも1つを下げるために、第1X線源51を制御してもよい。また、X線源制御部13は、第1X線源51の動作を停止するように第1X線源51を制御してもよい。
【0131】
図25Bは、第4実施形態に係るバイプレーンX線診断装置4の絞り制御部14の処理を説明するための第2説明図である。
図25Aでは、第2X線画像S2上の注視中心位置c20に従って、絞り制御部14により、第2X線画像S2上の注視範囲a20が決定されていた。
図25Bでは、第2X線画像S2上の注視中心位置c20に従って、絞り制御部14により、第2X線画像S2上の注視範囲a20が決定された後、絞り制御部14により、第2X線画像S2上の注視範囲a20に基づいて、第1X線画像S1上の注視範囲a21が決定される。
【0132】
図25Cは、第4実施形態に係るバイプレーンX線診断装置4の絞り制御部14の処理を説明するための第3説明図である。
図25Cでは、
図25Bと同様に、絞り制御部14により、第2X線画像S2上の注視範囲a20に基づいて、第1X線画像S1上の注視範囲a22が決定される。注視範囲a22は、
図25Bの注視範囲a21と異なる、その範囲が矩形の形状ではない。一方のX線画像上の注視範囲に従って、他のX線画像上の注視範囲の決定方法について、
図26を参照して説明する。
【0133】
図26は、一方のX線画像上の注視範囲に従って、他のX線画像上の注視範囲の決定方法を説明するための説明図である。
図26は、被検体Pを第1撮影系5と第2撮影系6とで撮影している様子を表している。第1撮影系5によりX線が照射されている範囲はT1である。一方、第2撮影系6によりX線が照射されている範囲はT2である。照射範囲T1及びT2にそれぞれ対応するX線画像が
図25におけるS1及びS2である。
【0134】
まず、注視範囲a20が決定されると、絞り制御部14は、注視範囲a20に対応する照射範囲A20を特定する。そして、絞り制御部14により第2絞り部62が制御され、照射範囲A20にX線が照射されるように、第2絞り部62の絞り羽根が移動される(ステップS40)。
【0135】
次に、絞り制御部14により、第1撮影系5による被検体Pの撮影角度、第2撮影系6による被検体Pの撮影角度、及び第2撮影系4によるX線の照射範囲に基づいて、被検体Pの注視領域PFが特定される。注視領域PFは、第1撮影系5によるX線の照射範囲とステップS40後の第2撮影系6によるX線の照射範囲が重なる範囲である。
【0136】
そして、絞り制御部14により、注視領域PFが少なくとも含まれ、照射範囲が矩形形状になるように、第1絞り部52が制御され、第1絞り部52の絞り羽根が移動される(ステップS41a)。これにより、第1撮影系5によるX線の照射範囲がA21となる。
図25Bに示すように、照射範囲A21に対応するX線画像S1上の範囲a21が、注視範囲となって、透視画像が表示される。
【0137】
なおステップS41aは、以下説明するステップS41bであってもよい。ステップS41bでは、絞り制御部14により、注視領域PFに照射範囲が一致するように、第1絞り部52を制御され、第1絞り部52の絞り羽根が移動される。これにより、第1撮影系5によるX線の照射範囲がA22となる。照射範囲A22が台形の形状を有する。
図25Cに示すように、照射範囲A22に対応するX線画像S1上の範囲a22が、注視範囲となって、透視画像が表示される。
【0138】
図27は、ステップS41bにおける第1絞り部52の絞り羽根の位置の一例を示した図である。
図27に示すように、ステップS41bにおいて、第1絞り部51の各絞り羽根は、開口AO22が、照射範囲A22に一致するように、絞り制御部14により移動される。その結果、2対の絞り羽根のうち、一対の絞り羽根が、X軸及びZ軸に対して、斜めになるように配置される。
【0139】
以上の処理により、
図25B及び
図25Cのように、第2X線画像S2上の注視中心位置c20に従って、第2X線画像S2上の注視範囲a20と第1X線画像S1上の注視範囲a21とが決定され、各注視範囲にそれぞれ対応する透視画像がモニタ115に表示される。
【0140】
以上のように、第4実施形態に係るバイプレーンX線診断装置4は、第2実施形態に係るX線診断装置2と同様の効果を得ることができる。さらに、第4実施形態に係るバイプレーンX線診断装置4は、モニタ115に表示された2つのX線画像のうち、一方のX線画像上の注視中心位置に従って、2つのX線画像の注視範囲を決定することができる。これにより、術者Oは、現在注目している部分を異なる方向から透視することができる。
【0141】
本実施形態ではいくつかの例を挙げて説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。第1実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。