(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
導電性を有するシートフレームとクッションパッドとをトリムカバーにより被覆してなり、着座者の生体電位に応じた電気信号を検出するセンサを備え、該センサから検出された前記電気信号に基づいて前記着座者の心拍を計測可能な車両用シートであって、
前記トリムカバーの少なくとも一部を、前記トリムカバーの外側であって前記着座者に接触する面に配設した導電性部材を備えた複数層構造とし、
前記導電性部材の前記シートフレームに接触させる側を自由端として該自由端に鉤状部材を取り付け、
前記導電性部材を前記シートバック内に吊り込んで前記鉤状部材を前記シートフレームのうち左右方向に配設されたフレーム架設部の上端に掛止することにより、
前記導電性部材の一部を前記シートフレームに接触させて前記導電性部材と前記シートフレームとを通電可能とし、
前記導電性部材は、その長手方向が前記センサの長手方向に沿って配置されていることを特徴とする車両用シート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る車両用シートの実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。
本実施形態は、シートバックに取り付けられるシート状センサを備え、シート状センサから検出された着座者の生体電気信号に基づいて着座者の心拍を計測可能な車両用シートであって、静電気によるノイズを除去して、着座者の心拍を安定して計測することができることを特徴とする車両用シートの発明に関するものである。
なお、車両用シートのシートバックに対して乗員が着座する側がシート前方側となる。
【0019】
本実施形態の車両用シートSは、
図1及び
図2に示すように、着座者が着座する部位となるシートクッション1と、シートクッション1の後方部分に回動可能に取り付けられ、着座者の背もたれに当たる部位となるシートバック2と、シートバック2内部に取り付けられる複数のシート状センサ20を有する心拍計測装置3と、から主に構成されており、シートクッション1及びシートバック2は、シートフレームF(F1,F2)にクッションパッドP(P1,P2)を載置して、トリムカバーC(C1,C2)で被覆されている。
【0020】
シートフレームFは、
図2に示すように、導電性を有する金属材料によって形成された車両用シートSの骨格部であり、シートクッション1の骨格を形成するシートクッションフレームF1と、シートバック2の骨格を形成するシートバックフレームF2とから主に構成されている。
シートクッションフレームF1とシートバックフレームF2とは、リクライニング機構Lを介して連結されている。
【0021】
シートクッションフレームF1は、後方側が開口された略U字型の枠体であるフレーム1aと、フレーム1aの後端側を連結する架橋部材としての連結パイプ1bと、フレーム1aにより囲われた内側領域に配置されクッションパッドP1を下方から支持するSバネ1cとから主に構成されている。
シートクッションフレームF1は、脚部(不図示)で支持されており、この脚部には、図示しないインナレールが取り付けられ、車体フロアに設置されるアウタレールとの間で、前後に位置調整可能なスライド式に組み立てられている。
【0022】
シートバックフレームF2は、略矩形状の枠体となっており、サイドフレーム2aと上部フレーム2bと下部フレーム基礎部2c(メンバーサイド)と、下部フレーム架設部2d(メンバーセンター)と、受圧部材2eとから主に構成されている。
2本(一対)のサイドフレーム2aは、シートバック幅を構成するため、左右方向に離間して配設され、上下方向に延在するように配設されており、シートバックフレームF2の側面を構成する延伸部材である。
上部フレーム2bは、一対のサイドフレーム2aの上端部側を連結する部材であり、サイドフレーム2aから上方に延出している。この上部フレーム2bは、一方のサイドフレーム2aから上方に延設された後、屈曲し、他方のサイドフレーム2aまで延設されている。
【0023】
下部フレーム基礎部2cは、左右方向に離間して一対設けられており、それぞれは、車両用シートSの高さ方向においてシートクッションフレームF1とサイドフレーム2aとの間に配設されている。また、下部フレーム基礎部2cは、サイドフレーム2aの下側に連結されており、サイドフレーム2aの下方を延長するように形成されている。
下部フレーム架設部2dは、左右方向に離間して配設された一対の下部フレーム基礎部2cを連結するように形成され、下部フレーム基礎部2cに対して当接して配設されている。
【0024】
受圧部材2eは、サイドフレーム2aの間に形成される内側領域に配設され、クッションパッドP2を後方から支えるための部材である。
受圧部材2eは、樹脂を板状の略矩形状に形成した部材であり、クッションパッドP2と接する側の表面には滑らかな凹凸が形成されており、ワイヤ2fを介してサイドフレーム2aに掛着され支持されている。
【0025】
シートクッションフレームF1とシートバックフレームF2とを連結するリクライニング機構Lは、少なくともリクライニング機構Lの回動軸に沿ったリクライニングシャフトL1を備えている。
このリクライニングシャフトL1は、シートバックフレームF2(より詳細には、一対のサイドフレーム2a)の下方に延設された一対の下部フレーム基礎部2cに設けられたシャフト挿通孔(不図示)からシートバックフレームF2の側部に突出するように嵌通して配設されている。
【0026】
シートクッション1は、着座者を下部から支持するものであり、
図1及び
図2に示すように、シートクッションフレームF1の上面側にクッションパッドP1を載置して、それらをトリムカバーC1で被覆することにより構成されている。
また、着座者の臀部に対向する位置であって、クッションパッドP1とトリムカバーC1との間には、グランド電極10が配設されている。
【0027】
シートバック2は、着座者の背中を後方から支持するものであり、
図1及び
図2に示すように、シートバックフレームF2にクッションパッドP2を載置して、トリムカバーC2で被覆することにより構成されている。
また、シートバック2において着座者の背部を支持する部分であって、クッションパッドP2とトリムカバーC2との間には、着座者の生体電位に応じた電気信号を検出するシート状センサ20が複数配設されている。このシート状センサ20についての詳細は後述する。
【0028】
クッションパッドP2の正面側には、
図3に示すように、上記シート状センサ20を貼り付けた部分と異なる位置においてトリムカバーC2を吊り込むための吊り込み溝21が複数形成されている。
この吊り込み溝21は、トリムカバーC2の端末等を吊り込むための溝であって、シート幅方向に長尺な断面略長方形状の2つの溝21a,21bと、上下方向に長尺な断面略長方形状の2つの溝21c,21dとからなり、シート状センサ20とは異なる位置に配置されている。
【0029】
なお、クッションパッドP2には、シート前後方向に貫通した不図示の貫通穴が形成されており、シート状センサ20に接続された配線ケーブルがクッションパッドP2の正面側からこの貫通穴を通過するように延びて、クッションパッドP2の背面側に設置された計装アンプ30と接続される構成となっている。
また、シート状センサ20が取り付けられたクッションパッドP2とトリムカバーC2との間には不図示のクッションスラブをさらに配設させても良い。このように構成することで、着座者がシートバック2にもたれかかったときに違和感が抑制される。
【0030】
シートクッション1及びシートバック2に被覆されるトリムカバーCは、
図1に示すように、表皮22によってワディング23を外側から被覆することによって構成されている。
表皮22とワディング23とは、縁等の一部分を適宜縫製したり、又は、接着剤等で接着することによって、積層状態に一体化されている。
【0031】
表皮22には、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂等からなる樹脂製シート材や、天然繊維や合成繊維からなる織布、編布、不織布などが採用される。
トリムカバーCを被覆したシートクッション1及びシートバック2において、この表皮22の外表面が着座者に接触する面となる。
【0032】
ワディング23は、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)フォーム、TPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)フォーム、PP(ポリプロピレン)フォーム、PE(ポリエチレン)フォーム等からなる。
ワディング23をトリムカバーCに具備することによって、このトリムカバーCを被覆したシートクッション1及びシートバック2の着座感が向上する。
【0033】
トリムカバーCは、この表皮22とワディング23とを積層した複数枚のパーツを、シートクッション1及びシートバック2の形状に合わせて縫合して、シートクッション1用及びシートバック2用ごとにそれぞれ袋状のトリムカバーC1,C2を形成している。
トリムカバーCは、浮き上がり抑制やデザイン性向上のため、トリムカバーCの端末部分や縫合部24で吊り込みを行っているが、このトリムカバーCの縫合部24は、シートクッション1又はシートバック2に被覆させたときに、上述のクッションパッドPに形成された吊り込み溝21と合致する位置となる。
【0034】
本実施例に係るトリムカバーCにおいては、
図3乃至
図5に示すように、シートバック2に被覆されるトリムカバーC2の表皮22の外表面であって着座者の背部に接触する面の一部分に、導電性部材である導電布25が配設されている。
具体的には、トリムカバーC2においてシート幅方向の略中央部分を、上方側に形成された横方向の吊り込み溝21aに沿う縫合部24aと、下方側に形成された縫合部24cであってクッションパッドP2に被覆した際にシートバック2の下端部に位置する部分と、を結ぶ縦方向に幅約20mmの帯状に配設されている。
【0035】
導電布25は、ポリエステル等の合成繊維から成る織物や不織布の表面に銅やニッケル等の金属被膜を形成した繊維素材から成る長尺の帯状部材であり、裁断や縫製等の加工性、柔軟性、伸縮性等に富むものである。
上記素材からなる導電布25は、トリムカバーC2の外表面及び縫合部24に縫い付けられることによって、トリムカバーC2と一体となり配設されている。
なお、導電布は、従来既知の方法にて容易に表皮22及びワディング23に縫合することができる。
【0036】
図4に示すように、導電布25を配設した部分、すなわち、縫合部24aから縫合部24cとの間におけるトリムカバーC2のA−A端面は、外側(着座側)から、導電布25、表皮22、ワディング23の3層構造となっている。
なお、縫合部24aより上方部分は、導電布25が配設されていないので、表皮22及びワディング23の2層構造となっている。
【0037】
導電布25の上端側は、縫合部24aを介してシートバック2内のクッションパッドP2に形成された吊り込み溝21aに、表皮22及びワディング23と共に引き込まれており、縫合部24aにてそれらの表皮22及びワディング23と一緒に縫合されている。
導電布25は、その縫合部24aから表皮22の外表面に沿ってシートバック2の下方向に延出している。
【0038】
導電部25は、シートバック2の下方に向かう途中、縫合部24aと縫合部24cとの間にある縫合部24b、すなわち、吊り込み溝21aとシートバック2の下端部との略中間に形成された吊り込み溝21bに、表皮22及びワディング23と共に引き込まれている。
このとき、導電布25は、吊り込み溝21b内で折り曲げて再度表皮22の外表面側に引き出された状態で縫合部24bにて表皮22及びワディング23と一緒に縫合されている。
導電布25は、その縫合部25bから表皮22の外表面に沿ってさらにシートバック2の下方向に延出している。
【0039】
導電部25は、クッションパッドP2の下端部、すなわち、トリムカバーC2を装着した際にシートバック2の下端部となる位置から、シートバック2とシートクッション1との空隙内に、表皮22及びワディング23と共に引き込まれており、その空隙内の縫合部24cにて表皮22及びワディング23と一緒に縫合されている。
導電布25は、その縫合部24cからさらに約150mm〜200mm程の長さ分シートバック2内に延伸しており、曲折自在な自由端となっている。
【0040】
導電布25のその自由端の先端部分付近には、掛止具としての鉤状部材であるJフック26が取り付けられている。
Jフック26は、取付部26aと掛止部26bとから成り、その取付部26aを導電布25の自由端に縫合することにより取り付けられている。
【0041】
また、
図5に示すように、導電布25は、表皮22の外表面においては、その両側縁部分に形成された縫い代部25aを内側(表皮22側)に折り込んだ状態で、縫合糸27にて表皮22に縫い付けられている。
これにより、トリムカバーC2に導電布25を配設した部分は、外側(着座側)から、導電布25、表皮22、ワディング23の3層構造となっている。
なお、このとき、ワディング23も一緒に縫い付ける構成としても良い。
【0042】
シートバック2とシートクッション1との空隙内に引き込んだ導電布25の自由端は、シートフレームFの一部にJフック26を掛止することによって、その一部がシートフレームFと接触している。
シートフレームFは導電性を有する金属材料から成るので、この構成により、導電布25とシートフレームFとは通電可能な状態となる。
【0043】
具体的には、
図6に示すように、Jフック26の掛止部26bがシートバックフレームF2の下部フレーム架設部2dの上端面に掛止されており、導電布25の一部が下部フレーム架設部2dに接触しており、導電布25と下部フレーム架設部2dとは通電可能な状態となっている。
【0044】
上述の通り、導電布25は、トリムカバーC2の着座者と接触する面に配設されているので、摩擦や接触等により着座者とシートバック2の間に発生した静電気を、着座者との接触面より吸収することができる。
そして、この導電布25は、その一端で下部フレーム架設部2dと接触して通電しているので、その下部フレーム架設部2dがアースとなり、導電布25に吸収された静電気は、シートバックフレームF2に逃がされることになる。
すなわち、着座者に帯電した静電気は、導電布25を伝わって着座者と接触している部分からシートバックフレームF2に逃がされることにより、除去される。
【0045】
なお、本実施例では、Jフック26をシートバックフレームF2の下部フレーム架設部2dに掛止することにより導電布25と接触させているが、導電布25とシートフレームFとの接触箇所や接触方法については、これに限らない。
例えば、Jフック26を掛止する部材及び導電布25を接触させる部材は、本実施例のように下部フレーム架設部2dに限定されることなく、シートバックフレームF2、シートクッションフレームF2いずれのシートフレームFでも構わないし、シートフレームFを構成するどの部材であっても良い。
【0046】
また、Jフック26により掛止した際に、Jフック26自体を導電性部材として、Jフック26を介して導電布25とシートフレームFとが通電する構成としても良い。
また、導電布25とシートフレームFとの接触方法は、トリムカバーC2と共に吊り込み部材(図示略)によりシートバックフレームF2等に吊り込んで接触させる構成としても良いし、ボルトやアンカー等にてシートフレームFに固定する方法でも良い。
【0047】
次に、心拍計測装置3について説明する。
心拍計測装置3は、着座者の生体電気信号を検出し、検出した生体電気信号に基づいて着座者の心拍を計測可能な装置であって、
図1に示すように、シートクッション1内部に設けられたグランド電極10と、シートバック2内部に設けられたシート状センサ20と、計装アンプ30と、DC成分除去回路40と、反転増幅器50と、帯域フィルタ60と、A/D変換回路70と、演算装置80と、ディスプレイDと、から主に構成されている。
【0048】
グランド電極10は、導電布テープからなり、シート状センサ20が検出する生体電気信号に含まれるオフセット信号を除去するときの基準電位を取得するものであって、シートクッション1における着座者の臀部に対向する部位に配置されている。
グランド電極10は、着座者の人体に、トリムカバーC1及び着衣を介して静電容量結合することで、着座者の生体電気信号を検出する機能を有する。
グランド電極10は、グランド電極用ケーブルで抵抗を介して計装アンプ30に電気的に接続されている。
【0049】
シート状センサ20は、導電布テープからなり、
図7に示すように、着座者の人体に、トリムカバーC及び着衣を介して静電容量結合することで、着座者の生体電位に応じた電気信号を検出するセンサである。
シート状センサ20は、クッションパッドP2の正面側には、
図3に示すように、シートバック2を構成するクッションパッドP2の正面側に複数貼付けられており、本実施例においては、クッションパッドP2においてシート幅方向の略中央部分に配置された第1センサ20a及び第2センサ20bと、第1センサ20a及び第2センサ20bよりも上方に配置された第3センサ20c及び第4センサ20dと、から構成されている。
クッションパッドP2(シートバック2)の裏面側においては、図示しない配線ケーブルによってそれぞれ計装アンプ30と電気的に接続されており、シート状センサ20から検出された生体電気信号は計装アンプ30に伝達される。
【0050】
なお、このシート状センサ20の貼付け位置は、クッションパッドP2にトリムカバーC2を被覆したときに、上述した導電布25とは重複しない位置に配置されることが好ましい。
例えば、本実施例においては、クッションパッドP2に貼り付けられた第1センサ20aと第2センサ20bの間、及び、第3センサ20cと第4センサ20dとの間に、導電布25が配設されている。
重複しない位置であれば、シート状センサ20と導電布25とが互いに干渉することなく、着座者との接触面を十分に確保でき、静電気を好適に除去しつつ生体電気信号を検出することができる。
【0051】
また、シート状センサ20は、吊り込み溝21が形成された部分と異なる位置に配置されることが好ましい。
シート状センサ20と吊り込み溝21とが異なる位置に配置されていれば、クッションパッドP2にトリムカバーC2を被覆するときに、シート状センサ20と吊り込み溝21とが互いに干渉しないため、トリムカバーC2の端末を効率よく吊り込み溝21に吊り込むことができる。
【0052】
ここで、クッションパッドP2に取り付けられるシート状センサ20の高さ位置について、
図3及び
図8に基づいて説明する。
まず、体格差のある着座者について、小柄な女性と大柄な男性を
図8に例示する。小柄な着座者として想定される女性は約150cmの人であって、大柄な着座者として想定される男性は約190cmの人である。
女性の心臓は、女性がシートクッション1に着座した状態において、シートクッション1の上面に相当するクッション座面から高さHFの位置にあり、男性の心臓は、クッション座面から高さHMの位置にある。高さHFは、約150cmの女性の場合、約37cmとなり、高さHMは、約190cmの男性の場合、約55cmとなる。
【0053】
シートバック2に取り付けられるシート状センサ20は、体格差による心臓位置の違いに応じて高さ方向の配置が設定されている。
具体的には、
図3に示すように、第1センサ20a及び第2センサ20bが、その中心部におけるクッション着座面からの高さが女性の心臓の高さHFに一致するように配置されている。また、第3センサ20c及び第4センサ20dは、その中心部におけるクッション着座面からの高さが男性の心臓の高さHMに一致するように配置されている。
【0054】
このように配置されたシート状センサ20においては、着座する着座者から見たときに左側の第1センサ20aと右側の第2センサ20bとが、女性の心臓を斜めに挟み込むように配置される。そして、第1センサ20aを左下の角、第2センサ20bを右上の角として画定される領域が、女性の心電位を検出するときに好適な電位差が得られる領域となる。
同様に、着座する着座者から見たときに左側の第3センサ20cと右側の第4センサ20dとが、男性の心臓を斜めに挟み込むように配置される。そして、第3センサ20cを左下の角、第4センサ20dを右上の角として画定される領域が、男性の心電位を検出するときに好適な電位差が得られる領域となる。
【0055】
心臓の拡縮の際に生じる心起電力ベクトルは、一般的な人の場合、凡そ右肩から左脚に向かう方向であり、第2センサ20bと第1センサ20aとを結ぶ方向、又は、第4センサ20dと第3センサ20cとを結ぶ方向が心起電力ベクトルの方向に沿うような配置となる。
そのため、シート状センサ20を上記のように配置することにより、心臓の収縮に応じて生じる大きな電位差信号(心電図のR波に対応する電位差信号)が検出されることとなる。
【0056】
このとき、本実施例においては、第1センサ20aと第2センサ20bの間、及び、第3センサ20cと第4センサ20dとの間に上下方向に配設された導電布25が、着座者の背骨付近に着衣を介して接触し、着座者に帯電した静電気を好適に除去している。
そのため、静電気によるノイズを除去して、着座者の生体電気信号をより正確に取得することができる。
【0057】
次に、心電信号検出のための回路構成及び演算装置の構成について、
図9を参照して説明する。
計装アンプ30は、オペアンプ31、32、33から構成される。
オペアンプ31、32は、シート状センサ20が検出した生体電気信号を増幅してオペアンプ33に出力するものである。
【0058】
オペアンプ33は、差動増幅器からなり、オペアンプ31、32からそれぞれ出力された生体電気信号の差信号を増幅するものである。
また、オペアンプ33のプラス側の入力端子に、グランド電極10の電位が基準電位として印加されている。
ここで、グランド電極10は、シートバック2に設けられたシート状センサ20よりも、着座者の心臓から離れたシートクッション1に設けられて着座者の臀部と静電容量結合している。
このため、グランド電極10からは、心電信号の影響の少ない電位が得られることとなる。
【0059】
DC成分除去回路40としてのコンデンサ41は、オペアンプ33から出力された電位差信号における直流成分を含む低周波成分を除去する機能を有し、オペアンプ33の出力端と、反転増幅器50のマイナス側の入力端子とをACカップリングしている。
【0060】
反転増幅器50は、直流成分が除去された電位差信号の極性を反転し、更に増幅する機能を有し、マイナス側の入力端子が抵抗を介してコンデンサ41に接続され、プラス側の入力端子にグランド電極10の電位が基準電位として印加されている。
【0061】
帯域フィルタ60は、反転増幅器50から出力された電位差信号から、心電信号の周波数ではないとみなされる低周波成分及び高周波成分を除去するために設けられている。
帯域フィルタ60によって、心電信号に係る周波数を有する電位差信号がA/D変換回路70に限定的に入力されることとなる。
【0062】
A/D変換回路70は、演算装置80の入力信号とするために、反転増幅器50から帯域フィルタ60を介して入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するものである。
【0063】
演算装置80は、演算制御用のCPU81と、RAM82と、ROM83と、を備える。
また、演算装置80に入力されるものは、上記のデジタル信号に変換された電位差信号であって、出力されるものは、ディスプレイDに表示するための電気信号である。
【0064】
RAM82は、演算制御中の信号及び入出力される信号を含むパラメータを一時記憶するもので、デジタル信号に変換された電位差信号その他の信号を格納する格納部82aとして機能を有する。
【0065】
ROM83は、CPU81が実行するプログラム及び所定値のパラメータを記憶するものである。
ROM83には、シート状センサ20から得られた電位差信号から電圧波形データを生成する波形生成部83aと、心臓の収縮に対応して周期的に振幅している電圧波形データを選択する選択部83bと、がプログラムとして記録されている。
【0066】
波形生成部83aは、格納部82aに格納された第1センサ20aと第2センサ20bとの電位差信号を基にして、
図10(a)に示すような、電位差信号を縦軸V、時間を横軸tとする電圧波形データV1を生成すると共に、第3センサ20cと第4センサ20dとの電位差信号を基にして、
図10(b)に示すような、電位差信号を縦軸V、時間を横軸tとする電圧波形データV2を生成する機能を有する。
【0067】
選択部83bは、電圧波形データV1、V2から心臓の収縮に対応する電圧波形データを選択し、心電波形データVHとして設定する機能を有する。
例えば、第1センサ20aと第2センサ20bとの電位差信号を基にして、
図10(a)に示された電圧波形データV1が生成されると共に、第3センサ20cと第4センサ20dとの電位差信号を基にして、
図10(b)に示された電圧波形データV2が生成された場合を想定する。
この場合、選択部83bは、周期性を有するR波が明確に現れ、且つ、振幅の大きい電圧波形データV1を選択し、心電波形データVHとして設定する。
【0068】
ただし、上記のように生成した電圧波形データV1,V2や選択された心電波形データVHには、一般的には種々のノイズが混入していることが多い。
特に、走行中の微振動、着座者がシートバックにもたれかかったときの着衣とシートバックとの摩擦、又は、着座者の運転中の動作による着座者とハンドル・フットレスト等との接触等を原因とした静電気によるノイズは顕著である。
本実施例においては、シートバック2に被覆するトリムカバーC2に導電布25を配設して静電気をアースして除去しているので、心拍計測装置3にて特別な演算処理等をすることなく、電圧波形データV1,V2や心電波形データVHに混入する静電気によるノイズも好適に除去できる。
【0069】
例えば、走行中の微振動や着座者(着衣)とシートバックとの摩擦により静電気が発生すると、従来のように静電気を除去する機能を有しない場合、心電波形データVHにはこの静電気によるノイズNが混入して、
図11(a)に示すような波形となる。
このように、ノイズNが混入すると、R波等の心電波形を正確に読み取ることが困難になる場合がある。
【0070】
これに対し、
図11(b)に示す本実施例の心電波形データVHによれば、導電布25により静電気を除去しているので、心電波形に混入する静電気によるノイズNも大幅に除去されていることがわかる。
【0071】
また、
図12(a)に示すように、例えば、着座者の足がフットレストに着いたり離れたりする度に、その接触により静電気が発生すると、従来のように静電気を除去する機能を有しない場合、心電波形データVHには、その静電気によりR波と紛らわしい大きなノイズNが混入する。
このように、ノイズNが混入すると、R波等の心電波形を正確に読み取ることが困難になる場合がある。
【0072】
これに対し、
図12(b)に示す本実施例の心電波形データVHによれば、導電布25により静電気を除去しているので、心電波形に混入する静電気によるノイズNも大幅に除去されていることがわかる。
【0073】
<心拍計測処理>
次に、この心拍計測装置3による心拍計測方法について、
図13に基づいて説明する。
シート状センサ20は、車両のエンジンを始動又はスタートスイッチの押下に応じて、着座者の人体から生体電位に応じた電気信号を検出する。
【0074】
第1センサ20a及び第2センサ20bによって検出された生体電気信号は、計装アンプ30、DC成分除去回路40、反転増幅器50、帯域フィルタ60及びA/D変換回路70を介して、演算装置80の格納部82aに、電位差データとして格納される。
第3センサ20c及び第4センサ20dによって検出された生体電気信号も同様にして、電位差データとして格納される。
つまり、演算装置80が、第1センサ20a及び第2センサ20bにおける電位差データと、第3センサ20c及び第4センサ20dにおける電位差データとを、それぞれ取得する(ステップS01)。
【0075】
次に、波形生成部83aが、取得された第1センサ20a及び第2センサ20bにおける電位差データに基づき、電位差と時間とを軸とする電圧波形データV1を生成する。同様に、第3センサ20c及び第4センサ20dにおける電位差データに基づき、電圧波形データV2を生成する(ステップS02)。
【0076】
次に、選択部83bは、2つの電圧波形データV1、V2のうち、心拍に同期し、かつ、R波の振幅が大きいデータを選択して、心電波形データVHを設定する(ステップS03)。
【0077】
次に、演算装置80は、心電波形データVHに、QRS波に対応する波形を強調するデジタルフィルタをかけて、設定した閾値を越える電圧(R波電位)が検出されるピーク間隔を演算する。
演算装置80は、ピーク間隔の逆数を瞬時心拍数(1秒当たりの心拍数)とし、更に1分間当たりの検出される数を算出する。つまり、演算装置80は、演算によって心拍数を算出する。
次に、演算装置80は、心電波形データVH及び心拍数に係る信号をディスプレイDに送信し、ディスプレイDに心電波形データVH及び心拍数を表示させる(ステップS04)。
【0078】
次に、演算装置80は、停止スイッチ等による心拍計測終了の指示があるかどうかを判断する(ステップS05)。心拍計測終了の指示がある場合は処理を終了し、指示がない場合には、ステップS01〜S05を繰り返す。
【0079】
<第2実施例>
次に、本発明の第2実施例に係る導電布の配置について
図14に基づいて説明する。
なお、以下の説明において、特徴の差異を明確にするため、上記実施形態と重複する内容については説明を省略する。
【0080】
この第2実施例においては、上記第1実施例とは導電布の配設位置が異なることに特徴を有する。
第2実施例に係る導電布125は、
図14に示すように、トリムカバーC2の表皮22の外表面において、シート幅方向の略中央部分を、シートバック2の下端部と吊り込み溝21bとの略中間地点から、シートバック2の上端側のヘッドレスト(図示略)が取り付けられる位置と、を結ぶ縦方向に幅約20mmの帯状に配設されている。
【0081】
導電布125の下端側は、トリムカバーC2の表皮22に縫い付けられており、その下端部125aから表皮22の外表面に沿ってシートバック2の上方向に延出している。
【0082】
導電部125は、シートバック2の上端側に向かう途中、縫合部24bと縫合部24a、すなわち、吊り込み溝21bと吊り込み溝21aに、表皮22及びワディング23と共に引き込まれている。
このとき、導電布125は、上記第1実施例と同様、吊り込み溝21b,21a内で折り曲げて再度表皮22の外表面側に引き出された状態で縫合部24b,24aにて表皮22と一緒に縫合されている。
導電布125は、その縫合部24b,24aを経て、表皮22の外表面に沿ってさらにシートバック2の上方向に延出している。
【0083】
導電部125は、クッションパッドP2の上端部、すなわち、トリムカバーC2を装着した際にシートバック2の上端部となる位置から、すなわち、ヘッドレストの裏側からシートバック2内に引き込まれている。
導電布125は、そこからさらに約150mm〜200mm程の長さ分シートバック2内に延伸しており、曲折自在な自由端(図示略)となっている。
【0084】
上記第1実施例と同様、導電布125の自由端の先端部分付近には、掛止具としてのJフック26が取り付けられおり、シートバック2内に引き込んだ導電布25の自由端は、シートフレームFの一部にJフック26を掛止することによって、その一部がシートフレームFと接触している。
ここでは、Jフック26は上部フレーム2bに掛止されており、導電布125の一部がその上部フレーム2bに接触して通電可能な状態となっている。
【0085】
上記第1実施例においては、導電布25は、シートバック2の下端部となる位置からシートバック2とシートクッション1との空隙内に、表皮22及びワディング23と共に引き込まれているが、この第2実施例のように、導電布125は、シートバック2の上方側からシートバック2内引き込んでシートフレームFに接触させることもできる。
【0086】
<第3実施例>
次に、本発明の第3実施例に係る導電布の配置について
図15に基づいて説明する。
この第3実施例においては、上記第1実施例とは導電布の配設位置が異なり、且つ、導電布を複数配置したことに特徴を有する。
第3実施例に係る導電布225は、
図15に示すように、トリムカバーC2の表皮22の外表面の左右のサイドエリア部分において、上方側に形成された斜方向の吊り込み溝21eに沿う縫合部24eと、シートバック2の下端部に位置する部分とを結ぶ縦方向に幅約20mmの帯状に、左右それぞれ1本ずつ(合計2本)配設されている。
【0087】
導電布225の上端側は、縫合部24eを介してシートバック2内のクッションパッドP2に形成された吊り込み溝21eに、表皮22及びワディング23と共に引き込まれており、縫合部24eにてそれらの表皮22及びワディング23と一緒に縫合されている。
導電布225は、その縫合部24eから表皮22の外表面に沿ってシートバック2の下方向に延出している。
【0088】
導電部225は、クッションパッドP2の下端部、すなわち、トリムカバーC2を装着した際にシートバック2の下端部となる位置から、シートバック2とシートクッション1との空隙内に、表皮22及びワディング23と共に引き込まれており、その空隙内の縫合部24cにて表皮22及びワディング23と一緒に縫合されている。
導電布225は、その縫合部24cからさらに約150mm〜200mm程の長さ分シートバック2内に延伸しており、曲折自在な自由端(図示略)となっている。
【0089】
導電布125の自由端の先端部分付近には、掛止具としてのJフック26が取り付けられおり、シートバック2とシートクッション1との空隙内に引き込んだ導電布25の自由端は、シートフレームFの一部にJフック26を掛止することによって、その一部がシートフレームFと接触している。
ここでは、第1実施例と同様、Jフック26は下部フレーム架設部2dに掛止され、導電布225の一部が下部フレーム架設部2dに接触しており、この下部フレーム架設部2dを介して導電布225とシートフレームFとは通電可能な状態となっている。
【0090】
<第4実施例>
次に、本発明の第4実施例に係る導電布の配置について
図16に基づいて説明する。
この第4実施例においては、上記第1実施例とは導電布の配設位置が異なり、且つ、導電布の両端でシートフレームと接触することに特徴を有する。
第4実施例に係る導電布325は、
図16に示すように、トリムカバーC2の表皮22の外表面において、シート幅方向の略中央部分を、シートバック2の上端側のヘッドレスト(図示略)が取り付けられる位置と、下方側に形成された縫合部24cであってクッションパッドP2に被覆した際にシートバック2の下端部に位置する部分と、を結ぶ縦方向に幅約20mmの帯状に配設されている。
【0091】
導電部325は、クッションパッドP2の上端部、すなわち、トリムカバーC2を装着した際にシートバック2の上端部となる位置から、すなわち、ヘッドレストの裏側からシートバック2内に引き込まれている。
導電布325は、そこからさらに約150mm〜200mm程の長さ分シートバック2内に延伸しており、曲折自在な自由端となっている。
導電布325は、そのシートバック2内に引き込まれた位置から表皮22の外表面に沿ってシートバック2の下方向に延出している。
【0092】
導電布325は、上述の通り、トリムカバー3の外表面に縫い付けられており、シートバック2の下端側に向かう途中、縫合部24aと縫合部24b、すなわち、吊り込み溝21aと吊り込み溝21bでは、表皮22及びワディング23と共に引き込まれている。
このとき、導電布325は、上記第1実施例と同様、吊り込み溝21b,21a内で折り曲げて再度表皮22の外表面側に引き出された状態で縫合部24b,24aにて表皮22及びワディング23と一緒に縫合されている。
導電布325は、その縫合部24a,24bを経て、表皮22の外表面に沿ってさらにシートバック2の下方向に延出している。
【0093】
導電部325は、クッションパッドP2の下端部、すなわち、トリムカバーC2を装着した際にシートバック2の下端部となる位置から、シートバック2とシートクッション1との空隙内に、表皮22及びワディング23と共に引き込まれており、その空隙内の縫合部24cにて表皮22及びワディング23と一緒に縫合されている。
導電布325は、その縫合部24cからさらに約150mm〜200mm程の長さ分シートバック2内に延伸しており、曲折自在な自由端となっている。
【0094】
この第4実施例においては、導電布325の上下両端が自由端となっており、その両自由端の先端部分付近には、掛止具としてのJフック26がそれぞれ取り付けられおり、シートバック2内に引き込んだ導電布325の両自由端は、それぞれシートフレームFの一部にJフック26を掛止することによって、その一部がシートフレームFと接触している。
【0095】
ここでは、上側の自由端に取り付けられたJフック26は、第2実施例と同様、上部フレーム2bに掛止され、導電布325の一部がその上部フレーム2bに接触しており、導電布325と上部フレーム2bとは通電可能な状態となっている。
一方、下側の自由端に取り付けられたJフック26は、第1実施例と同様、下部フレーム架設部2dに掛止され、導電布325の一部が下部フレーム架設部2dに接触しており、導電布325と下部フレーム架設部2dとは通電可能な状態となっている。
この第4実施例のように、導電布325は、シートバック2の上方側及び下方側の両方からシートバック2内引き込んで、その両端をシートフレームFに接触させることもできる。
【0096】
<第5実施例>
次に、本発明の第5実施例に係る導電布の配置について
図17に基づいて説明する。
この第5実施例においては、上述の第1実施例と第3実施例とを組み合わせたものであり、導電布を複数配置したことに特徴を有する。
導電布25,225の構成、配置、及び、シートフレームFとの接触方法については、上記と同様である。
【0097】
<第6実施例>
次に、本発明の第6実施例に係る導電布の配置について
図18に基づいて説明する。
この第6実施例においては、上述の第2実施例と第3実施例とを組み合わせたものであり、導電布を複数配置したことに特徴を有する。
導電布125,225の構成、配置、及び、シートフレームFとの接触方法については、上記と同様である。
【0098】
<第7実施例>
次に、本発明の第7実施例に係る導電布の配置について
図19に基づいて説明する。
この第7実施例においては、上述の第3実施例と第4実施例とを組み合わせたものであり、導電布を複数配置したことに特徴を有する。
導電布225,325の構成、配置、及び、シートフレームFとの接触方法については、上記と同様である。
【0099】
<第8実施例>
次に、本発明の第8実施例に係る導電布の配置について
図20に基づいて説明する。
この第8実施例においては、上記第1実施例とは導電布の配設位置が異なり、且つ、導電布をシートの上下方向からではなく、シートの左右方向からシートフレームに接触させることに特徴を有する。
【0100】
第8実施例に係る導電布425は、
図20に示すように、トリムカバーC2の表皮22の外表面において、シート幅方向の略中央部分を、シートバック2の下端部と吊り込み溝21bとの略中間地点から、吊り込み溝21aとシートバック2の上端部との略中間地点と、を結ぶ縦方向に幅約20mmの帯状に配設されている。
また、吊り込み溝21aとシートバック2の上端部との略中間地点において、シートバック2の左右両端向けて横方向に同じく幅約20mmの帯状に配設されている。
【0101】
導電部425は、クッションパッドP2の左右両端部、すなわち、トリムカバーC2を装着した際にシートバック2の左右両端部となる位置からシートバック2内に引き込まれている。
導電布425は、そこからさらに約150mm〜200mm程の長さ分シートバック2内に延伸しており、曲折自在な自由端(図示略)となっている。
【0102】
上記第1実施例等と同様、導電布125の自由端の先端部分付近には、掛止具としてのJフック26が取り付けられおり、シートバック2内に引き込んだ導電布25の自由端は、シートフレームFの一部にJフック26を掛止することによって、その一部がシートフレームFと接触している。
ここでは、シートバック2の左右両端から内側に引き込まれたJフック26は、上部フレーム2b(又はサイドフレーム2a)に掛止され、導電布425の一部がその上部フレーム2bに接触しており、導電布425と上部フレーム2bとは通電可能な状態となっている。
【0103】
上記第1実施例等においては、導電布25は、シートバック2の下端部や上端部となる位置からシートバック2とシートクッション1との空隙内に、表皮22及びワディング23と共に引き込まれているが、この第8実施例のように、導電布425は、シートバック2の左右方向からシートバック2内引き込んでシートフレームFに接触させることもできる。
なお、本実施例のように導電布425をシートバック2の左右方向からシートフレームFに接触させる場合、導電布425は少なくとも左右のどちらか一方に設けることとしてもよい。すなわち、シートバック2の左右のどちらか片方側から導電布425をシートバック2内に引き込む構成としてもよい。
【0104】
<第9実施例>
次に、本発明の第9実施例に係る導電布の配置について
図21に基づいて説明する。
この第9実施例においては、上記第1実施例とは導電布の配設位置及び数が異なり、且つ、導電布をシートの上下方向からではなく、シートの左右方向からシートフレームに接触させることに特徴を有する。
【0105】
第9実施例に係る導電布525は、
図21に示すように、トリムカバーC2の表皮22の外表面において、シート幅方向の略中央部分を、上方側に形成された横方向の吊り込み溝21aに沿う縫合部24aと、シートバック2の下端部と吊り込み溝21bとの略中間地点と、を結ぶ縦方向に幅約20mmの帯状に配設されている。
また、トリムカバーC2の表皮22の外表面の左右のサイドエリア部分において、上方側に形成された斜方向の吊り込み溝21eに沿う縫合部24eと、シートバック2の下端部と吊り込み溝21bとの略中間地点とを結ぶ縦方向に幅約20mmの帯状に、左右それぞれ1本ずつ(合計2本)配設されている。
さらに、吊り込み溝21bとシートバック2の下端部との略中間地点において、シートバック2の左右両端向けて横方向に同じく幅約20mmの帯状に配設されている。
【0106】
導電部525は、クッションパッドP2の左右両端部、すなわち、トリムカバーC2を装着した際にシートバック2の左右両端部となる位置からシートバック2内に引き込まれている。
導電布525は、そこからさらに約150mm〜200mm程の長さ分シートバック2内に延伸しており、曲折自在な自由端(図示略)となっている。
【0107】
上記第1実施例等と同様、導電布125の自由端の先端部分付近には、掛止具としてのJフック26が取り付けられおり、シートバック2内に引き込んだ導電布25の自由端は、シートフレームFの一部にJフック26を掛止することによって、その一部がシートフレームFと接触している。
ここでは、シートバック2の左右両端から内側に引き込まれたJフック26は、サイドフレーム2aに掛止され、導電布525の一部がそのサイドフレーム2aに接触しており、導電布525とサイドフレーム2aとは通電可能な状態となっている。
【0108】
この第9実施例においても、上記第8実施例と同様、導電布525は、シートバック2の左右方向からシートバック2内引き込んでシートフレームFに接触させている。
なお、本実施例のように導電布525をシートバック2の左右方向からシートフレームFに接触させる場合、導電布525は少なくとも左右のどちらか一方に設けることとしてもよい。すなわち、シートバック2の左右のどちらか片方側から導電布525をシートバック2内に引き込む構成としてもよい。
【0109】
以上、本発明を実施形態及びその変形例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態及びその変形例に限定されるものではない。その要旨を逸脱しない範囲内で、各特長を組み合わせる等種々の変更が可能である。
【0110】
例えば、上記実施例に示す態様以外にも、導電布25は、シートバック2の表面の着座者に接触する部分に配設し、その一端又は両端をシートフレームFに接触してシートフレームFと通電する構成であれば、導電布25の配置及びシートフレームFとの接触箇所について、種々のバリエーションが可能である。
【0111】
上記実施形態において、グランド電極10及びシート状センサ20は、導電布テープからなるものとして説明したが、これに限定されることなく、導電性を有する金属導体であれば適宜変更可能であって、例えば導電性繊維等であっても良い。
【0112】
上記実施形態において、シート状センサ20は、センサ本体となる導電線と、導電線を保護するための導電シートとから構成されているが、これに限定されることなく、導電線を不要として導電シートのみから構成されても良い。
なお、導電線として、例えば高い導電性を有する金ペースト、銀ペースト又は銅ペースト等を用いることが可能であって、また、導電シートとして、例えば酸化に強く、導電性を有するカーボンペースト等を用いることが可能である。
【0113】
上記実施形態において、シート状センサ20は、クッションパッドP2と表皮22との間に配設されているが、これに限定されることなく、例えば表皮22に取り付けられていても良い。
上記実施形態において、シート状センサ20の数量は4つから構成されているが、この数量に限定されることなく、電位差検出の安定性と製造コストとのバランスを考慮したうえで、シート状センサ20の数量を適宜調整して設けるようにしても良い。
また、シート状センサ20の大きさは全て等しく均等な感覚で配置されているが、これに限定されることなく、第1センサ20a、第二センサ22、第3センサ20c、第4センサ20dの大きさを其々変更しても良いし、例えば、第2センサ20bを第1センサ20aより上方に配置する等、配置位置を変更しても良い。
【0114】
上記実施形態において、心拍計測装置3は、心電波形を示すディスプレイDを構成品として備えているが、その他、着座者の覚醒を維持する機器である振動モータ、アラーム音を発する発信器又は光を発する発光器を備えた構成としても良い。
さらに、本実施形態に係る車両用シートSは、心臓に病を持つ人の監視のための用途にも利用可能である。この場合、病を持つ人の他の乗員が心臓の作動状態を監視できる位置にディスプレイDが配置されていると良い。また、心拍計測装置3が設けられているシートの他のシートに振動モータを備えるように構成し、心臓の機能低下を検知した場合には、他のシートを振動させるようにして他の乗員への報知させる構成としても良い。
【0115】
上記実施形態において、想定される小柄な着座者として150cmの人、また、想定される大柄な着座者として190cmの人を例に説明したが、この想定は任意である。例えば、成人の米国人のみの着座が想定される場合、又は、子供のみの着座が想定される場合等には、その想定に応じた体格を基準とするようにすると良い。そして、基準とされた体格の者が着座した状態において、その心臓を挟み込むようにして、シートバック2正面に向かって複数のシート状センサ20の位置を決定することで同様の効果が得られる。
【0116】
上記実施形態では、具体例として自動車に用いられる収納可能な車両用シートについて説明したが、これに限定されることなく、電車、バス等の車両用シートのほか、飛行機、船等の乗物用シートとしても利用することができる。
【0117】
本実施形態では、主として本発明に係る車両用シートSに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
特に、シートバック2を構成するクッションパッドP2に取り付けられるシート状センサ20の形状、配置、及び構成について、上記の実施形態にて説明したものは、あくまで一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。