特許第6437204号(P6437204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437204
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】ロータリ圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/00 20060101AFI20181203BHJP
   F04C 18/356 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   F04C29/00 B
   F04C29/00 C
   F04C18/356 H
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-51615(P2014-51615)
(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2015-175273(P2015-175273A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2017年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(72)【発明者】
【氏名】小川 真
(72)【発明者】
【氏名】三浦 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】江崎 郁男
(72)【発明者】
【氏名】宇野 将成
(72)【発明者】
【氏名】室井 優一
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−156292(JP,A)
【文献】 実開昭63−186988(JP,U)
【文献】 特開2012−122458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/00
F04C 18/356
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源に連結されたクランク軸を介して駆動されるロータリ圧縮機構が、シリンダ室を形成するシリンダ本体と、該シリンダ本体の上下面に各々設置されて前記クランク軸を支持する軸受と、前記クランク軸の偏心部に嵌合されて前記シリンダ室内を回動するロータとを具備し、少なくとも前記シリンダ本体及び前記軸受が前記クランク軸の軸方向に貫通するボルトの締結により一体化されるロータリ圧縮機であって、
前記シリンダ本体のボルト穴周辺領域に、ボルト締結時の変形を半径方向外向き及び円周方向の少なくとも一方へ導く変形吸収部を設け、
前記変形吸収部が、前記ボルト穴より半径方向内側を除く領域に設けられて前記クランク軸の軸方向に貫通する溝であることを特徴とするロータリ圧縮機。
【請求項2】
駆動源に連結されたクランク軸を介して駆動されるロータリ圧縮機構が、シリンダ室を形成するシリンダ本体と、該シリンダ本体の上下面に各々設置されて前記クランク軸を支持する軸受と、前記クランク軸の偏心部に嵌合されて前記シリンダ室内を回動するロータとを具備し、少なくとも前記シリンダ本体及び前記軸受が前記クランク軸の軸方向に貫通するボルトの締結により一体化されるロータリ圧縮機であって、
前記シリンダ本体のボルト穴周辺領域に、ボルト締結時の変形を半径方向外向きへ導く変形吸収部を設け、
前記変形吸収部、前記シリンダ本体の外周面を前記クランク軸の軸方向に貫通して切り欠いた形状をしていて、前記ボルト穴よりも前記半径方向の外側に位置していることを特徴とするロータリ圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリ圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機や冷凍機等における冷凍サイクルを構成する圧縮機として、シリンダと、シリンダ内部でシリンダの軸心から偏心して回転されるロータとを備えるロータリ圧縮機が知られている。このロータリ圧縮機は、シリンダの側壁に接続される吸入管を通じて冷媒回路を循環する低圧冷媒をシリンダ室内に吸入し、ロータの回転に伴ってシリンダ室内で圧縮された高圧冷媒を吐出配管から圧縮機の外部へ送出する。
【0003】
このようなロータリ圧縮機においては、ロータリ圧縮機構を構成するシリンダ本体、上部軸受、下部軸受、マフラ室を形成するマフラ等の部材がボルトにより締結される構造が一般的である。なお、2気筒ロータリ圧縮機構においては、気筒間を仕切るセパレータプレートについても同様に、シリンダ本体等とボルトにより締結されている。
【0004】
また、下記の特許文献1に開示された回転式圧縮機では、シリンダのボルト締結部より内周側(シリンダ室側)となる位置に、すなわち、シリンダ内壁とボルト穴との間に、ボルト締付けによる歪を緩和する溝が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−186988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来のロータリ圧縮機においては、ロータリ圧縮機構を構成するシリンダ本体、軸受及びマフラ等の部材を重ね合わせた状態にしてボルト締付により一体化さする構造を採用しているので、ボルトの締付けによりシリンダ内径に変形を生じることが懸念される。
すなわち、図7に示すように、内ネジを設けたシリンダ本体9のボルト穴9aにボルトを捩じ込んで締結すると、シリンダ本体9では、ボルト締結部の近傍でシリンダ室8の内壁面9bが内側(シリンダ室中心方向)へ膨出するように変形する場合がある。このような変形が生じると、回転するロータ12の外周面とシリンダ室8を形成するシリンダ本体9の内壁面9bとの隙間(面間距離)は、ボルト穴9aの周辺領域で最も小さくなる。なお、図7では、変形を明確に図示する都合上、ボルト締付けによる変形が誇張して大きく示されている。
【0007】
従って、ロータ12の回転軸中心位置は、ロータ12がシリンダ本体9の内壁面9bと接触しないようにするため、最も隙間の小さいボルト穴周辺領域で所定の隙間設定値gを確保するように調整される。すなわち、ロータ12の回転軸中心位置は、変形がない場合のCからC´に変更される。
しかし、このような隙間設定値gの調整は、ボルト穴9aから円周方向に離間している他の領域で隙間寸法を増すことになる。このため、圧縮時においては、高圧側から低圧側へ流出する圧縮流体の漏れ量が大きくなり、この結果、ロータリ圧縮機の圧縮効率が低下する要因となる。従って、ロータリ圧縮機構の一体化にボルト締結を採用したロータリ圧縮機においては、ボルト締付けによるシリンダの内径変化(変形)を抑制し、圧縮時における圧縮流体の漏れ量を低減して高効率化を達成することが望まれる。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ボルト締付けによるシリンダの内径変化を抑制し、圧縮時の圧縮流体漏れ量を低減して高効率化を達成できるロータリ圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係るロータリ圧縮機は、駆動源に連結されたクランク軸を介して駆動されるロータリ圧縮機構が、シリンダ室を形成するシリンダ本体と、該シリンダ本体の上下面に各々設置されて前記クランク軸を支持する軸受と、前記クランク軸の偏心部に嵌合されて前記シリンダ室内を回動するロータとを具備し、少なくとも前記シリンダ本体及び前記軸受が前記クランク軸の軸方向に貫通するボルトの締結により一体化されるロータリ圧縮機であって、前記シリンダ本体のボルト穴周辺領域に、ボルト締結時の変形を半径方向外向き及び円周方向の少なくとも一方へ導く変形吸収部を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
このようなロータリ圧縮機によれば、シリンダ本体のボルト穴周辺領域に、ボルト締結時の変形を半径方向外向き及び円周方向の少なくとも一方へ導く変形吸収部を設けてあるので、ボルト締結によるシリンダ本体の変形は、ボルト締結部からシリンダ本体の外周方向や円周方向に向かうようになる。従って、ボルト締結時において、シリンダ室の内壁面が軸中心側に膨出してシリンダ内径を縮小することを防止または抑制できるようになる。
すなわち、上述した変形吸収部は、ボルト締付けにより生じるシリンダ本体の変形がシリンダ室内側を除く他の方向へ導かれるように、例えばボルト締結部より外周側となるシリンダ本体の半径方向を薄肉化するなどして、剛性を低下させた領域である。
【0010】
上記のロータリ圧縮機において、前記変形吸収部は、前記ボルト穴より半径方向内側を除く領域に設けられて前記クランク軸の軸方向に貫通する溝であることが好ましく、これにより、ボルト締結によるシリンダ本体の変形は、厚さ方向(軸方向)の全域にわたってボルト締結部より半径方向の外側や円周方向へ向かうようになる。このため、シリンダ室の内径が軸中心側に膨出する変形は、シリンダ本体の厚さ方向全域で防止または抑制できるようになる。また、このような貫通溝は、中空の断熱層としても機能するので、外周からの熱が圧縮空間へ伝達されることを抑制できる。
【0011】
上記のロータリ圧縮機において、前記変形吸収部は、前記シリンダ本体の外周面を前記クランク軸の軸方向に貫通して切り欠いてもよい。このような切欠部を設けることにより、シリンダ本体の半径方向寸法は、ボルト締結部の外周側で厚さ方向の全域にわたって小さくなる。従って、ボルト締結によるシリンダ本体の変形は、剛性の低いボルト締結部より半径方向外側へ向かうようになるので、シリンダ室の内径が軸中心側に膨出する変形をシリンダ本体の厚さ方向全域で防止または抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
上述した本発明のロータリ圧縮機によれば、ボルト締結によって生じるシリンダ本体の変形を半径方向内側以外の方向へ導くことができるので、シリンダ室の内壁がシリンダ室内側へ膨出するような変形を防止または抑制できる。このため、ロータの外周面とシリンダ室を形成するシリンダ本体の内壁面との間は、全周にわたって所定の隙間設定値g(図7参照)に均一化できるようになり、従って、ロータリ圧縮機の圧縮時に高圧側から低圧側へ流出する圧縮流体の漏れ量を低減して高効率化を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るロータリ圧縮機の第1の実施形態を示す図であり、(a)は変形吸収部として貫通溝を設けたシリンダ本体の平面図、(b)は図1(a)のA−A断面図である。
図2図1(a)に示した貫通溝の変形後を示すシリンダ本体の平面図である。
図3図1(a)に示した貫通溝の第1変形例を示すシリンダ本体の平面図である。
図4図1(a)に示した貫通溝の第2変形例を示すシリンダ本体の平面図である。
図5】本発明に係るロータリ圧縮機の第2の実施形態を示す図であり、変形吸収部として薄肉部を設けたシリンダ本体の平面図である。
図6】本発明に係るロータリ圧縮機の一例として、密閉型とした単気筒の構成例を示す縦断面図である。
図7】シリンダ本体の従来構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るロータリ圧縮機の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図6は、ロータリ圧縮機の一例として、密閉型とした単気筒の構成例を示す縦断面図である。なお、以下では、便宜上、単気筒のロータリ圧縮機に適用した実施形態を説明するが、2気筒のロータリ圧縮機はもとより、異なる複数の圧縮機構を有する圧縮機のロータリ圧縮機構でも同様に適用可能なことは言うまでもない。
【0015】
密閉型のロータリ圧縮機1は、密閉構造のハウジング2を備えている。このハウジング2は、円筒状のセンターハウジング2Aと、センターハウジング2Aの上部を密閉する上部ハウジング2Bと、センターハウジング2Aの下部を密閉する下部ハウジング2Cとから構成されている。センターハウジング2A内の上部側には、駆動源として、ステータ5とロータ6とから構成される電動モータ4が固定設置されている。
また、ロータ6には、クランク軸(回転軸)7が一体に結合されている。
【0016】
この電動モータ4は、公知の如く、ステータ5とロータ6との間に軸方向オフセット量を有し、ステータ5とロータ6との間に作用する軸方向マグネットプル力を利用して、運転安定時にロータ6及びクランク軸7を上方に引き上げる機能を備えている。この機能により、クランク軸7の偏心部に形成されるスラスト端面と、後述する上部軸受10及び下部軸受11の端面との間に作用するスラスト力を低減するスラスト低減機構が構成されている。
【0017】
電動モータ4の下部には、単気筒のロータリ圧縮機構3が設置されている。このロータリ圧縮機構3は、シリンダ室8が形成されているシリンダ本体9と、シリンダ本体9の上部及び下部に固定設置され、シリンダ室8の上部及び下部を密閉する上部軸受10及び下部軸受11と、クランク軸7の偏心部7Aに嵌合され、シリンダ室8の内周面を回動するロータ12と、シリンダ室8内を吸入側と吐出側とに仕切る図示省略のブレード及びブレード押えバネ等とを備えた構成とされている。
【0018】
このロータリ圧縮機構3は、シリンダ本体9または上部軸受10のいずれかがセンターハウジング2Aの内周面に、円周上の複数箇所で栓溶接またはカシメ固定されることによって固定設置され、他の部材は、その固定設置された部材に対して一体に組み付けられるようになっている。
【0019】
ロータリ圧縮機構3は、吸入管13を介してロータリ圧縮機1と一体に設けられているアキュームレータ14からシリンダ室8内に圧縮流体の低圧冷媒ガスを吸入し、この冷媒ガスをロータ12の回動により圧縮した後、上部軸受10及び下部軸受11を利用して形成されている上部マフラ室15及び下部マフラ室16内に吐出する。こうして圧縮された高圧冷媒ガスは、上部マフラ室15で合流した後、センターハウジング2A内に吐出されるように構成されている。なお、上部マフラ室15及び下部マフラ室16の内部と、センターハウジング2Aの内部とは、実質的に圧力差のない状態となっている。
この高圧冷媒ガスは、電動モータ4の周りに設けられているガス通路孔(図示省略)を流通して電動モータ4の上部空間に導かれ、さらに、吐出配管17を介してロータリ圧縮機1の外部、すなわち冷凍サイクル側へと送り出されるようになっている。
【0020】
さて、上述したロータリ圧縮機構3は、シリンダ本体9と、シリンダ本体9の上下に配設される上部軸受10及び下部軸受11と、下部軸受11の下方に下部マフラ室16を形成する下部マフラ16Aとが、クランク軸7の軸方向に貫通するボルト18の螺合締結により一体化される。
上部マフラ室15及び下部マフラ室16は、いずれも内外の圧力差がない部分である。しかし、図示の構成例では、潤滑油に対するシール性を求められることから、下部マフラ16Aのみをボルト18により締結しているが、上部マフラ15A及び下部マフラ16Aについては、両方をボルト18で締結する構造、あるいは、いずれか一方のみをボルト18で締結する構造など、特に限定されることはない。
【0021】
<第1の実施形態>
上述したように、駆動源の電動モータ4に連結されたクランク軸7を介して駆動されるロータリ圧縮機構3が、シリンダ室8を形成するシリンダ本体9と、シリンダ本体9の上下面に各々設置されてクランク軸7を支持する上部軸受10及び下部軸受11と、クランク軸7の偏心部7Aに嵌合されてシリンダ室8内を回動するロータ12とを具備し、少なくともシリンダ本体9と上部軸受10及び下部軸受11とがクランク軸7の軸方向に貫通するボルト18の締結により一体化される構造のロータリ圧縮機1では、例えば図1に示すように、シリンダ本体9に設けたボルト18を螺合締結するボルト穴9aの周辺領域に設けた変形吸収部の貫通溝20を備えている。
この貫通溝20は、ボルト18の締結時において、シリンダ本体9のボルト穴9aに螺合されたボルト18によるシリンダ本体9の変形が、シリンダ本体9の半径方向外向き及び円周方向の少なくとも一方へ導かれるように低剛性領域を形成するものである。
【0022】
図1に示す実施形態の貫通溝20は、ボルト穴9aの外周側近傍に形成された円弧状の溝であり、シリンダ本体9の厚さtをクランク軸7の軸方向に貫通して向けられている。また、ボルト穴9aの周辺においては、半径方向外周側の寸法L2が内周側の寸法L1よりも小さく(L2<L1)なるように設定されている。
この結果、ボルト穴9aの周辺では、寸法L2を寸法L1より小さくした半径方向外周側の剛性が内周側より低くなるので、ボルト穴9aの半径方向外周側には、周囲より剛性の低い低剛性領域が形成される。
【0023】
このような貫通溝20を設けたロータリ圧縮機1は、ボルト18を捩じ込んで締結する際に生じるボルト穴9aを拡径する方向の入力を受けることにより、シリンダ本体9のボルト穴9a周辺が変形する。この変形は、例えば図2に示すように、ボルト穴9aの周辺で低剛性となる半径方向外周側へ向けて貫通溝20の内部へ膨出するものとなる。なお、この場合においても、変形を明確に図示する都合上、ボルト締付けによる変形が誇張して大きく示されている。
【0024】
すなわち、ボルト18の締結時には、シリンダ本体9の変形をボルト穴9aの半径方向外周側へ逃がして入力を吸収させることにより、貫通溝20のシリンダ室側内壁面20aが溝空間20bの方向へ膨出するように変形して膨出部21を形成するので、シリンダ内径を縮小する方向の変形を防止または抑制できるようになる。換言すれば、本実施形態では、ボルト穴9aとシリンダ本体9の外壁面9cとの間に、ボルト締付けにより生じる変形の逃げとなる貫通溝20を設け、ボルト穴9aの外周側を優先的に変形させるようにしたので、シリンダ室8のシリンダ内径に変形が生じることを抑制できる。
この結果、ロータリ圧縮機構3では、ロータ12の回転軸中心位置をCに設定し、全周にわたって所定の隙間設定値gを確保できるようになるため、高圧側から低圧側へ漏出する圧縮流体の漏出量を低減することができる。
【0025】
また、貫通溝20がクランク軸7の軸方向に貫通して設けられているので、ボルト締結によるシリンダ本体9の変形は、厚さtの全域にわたってボルト穴9aより半径方向外側へ向かうようになる。このため、シリンダ室8の内径が縮小するようなボルト締結時の変形は、シリンダ本体9の厚さ方向全域で防止または抑制できるようになる。
さらに、このような貫通溝20を設けることは、シリンダ室8の外周側に中空の断熱層を形成することにもなるので、高温側となる外周からの入熱が低温のシリンダ室8内へ伝達されることを抑制し、圧縮効率の向上に貢献する。
【0026】
ところで、上述した変形吸収部となる溝は、図1及び図2に示した円弧状の貫通溝20に限定されることはなく、例えば以下に説明するような種々の変形例が可能である。
図3に示した第1変形例では、略半円形状の貫通溝20Aがボルト穴9aより半径方向外周側に形成されている。この貫通溝20Aは、ボルト穴9aより外周側の略半円領域を取り囲むようにして低剛性の領域を形成し、ボルト締結時の変形を半径方向外周側に吸収するだけでなく、円周方向にも変形を吸収するようにしたものであるから、上述した実施形態と同様に、シリンダ室8のシリンダ内径に変形が生じることを抑制できる。
【0027】
さらに、図4に示した第2変形例では、円弧状の貫通溝20L,20Rがボルト穴9aの円周方向両側に形成されている。この貫通溝20L,20Rは、ボルト穴9aの円周方向両側に低剛性の領域を形成することで、ボルト締結時の変形を主に円周方向へ吸収するものであるから、上述した実施形態及び第1変形例と同様に、シリンダ室8のシリンダ内径に変形が生じることを抑制できる。
【0028】
<第2の実施形態>
以下に説明する実施形態では、例えば図5に示すように、シリンダ本体9の外周面をクランク軸7の軸方向に貫通して切り欠いた凹溝部9dを設けて形成される切欠形成部30を変形吸収部とする。なお、上述した実施形態及びその変形例と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図示の凹溝部9dは、シリンダ本体9の外壁面9cに設けた略半円形状の断面を有する厚さ方向の溝であり、シリンダ室8及びボルト穴9aの中心を通る半径方向の延長線上において、厚さtの全域にわたって設けられている。なお、凹溝部9の断面形状については、例えば矩形断面形状や三角形断面形状としてもよく、特に限定されることはない。
【0029】
このような凹溝部9を設けることにより、シリンダ本体9の半径方向寸法は、切欠形成部30においてボルト穴9aの外周側が厚さ方向の全域にわたって内周側よりも小さくなる。すなわち、ボルト穴9aの外周側となる切欠形成部30は、ボルト穴9aの内周側より半径方向の寸法が小さい低剛性領域となるため、ボルト締結によるシリンダ本体9の変形は、ボルト穴9aより半径方向外側へ向かうようになる。この結果、シリンダ室8の内径が軸中心側に膨出する変形は、シリンダ本体9の厚さ方向全域で防止または抑制される。
なお、このような凹溝部9による低剛性領域の形成は、上述した実施形態の貫通溝20やその変形例と適宜組み合わせることも可能である。
【0030】
このように、上述した本実施形態によれば、ボルト締付けにより生じるシリンダ本体9の変形がシリンダ室8の内側を除く他の方向へ導かれるようにした変形吸収部を備えているので、ボルト締結によるシリンダ本体9の変形は、ボルト締結部のボルト穴9aからシリンダ本体9の外周方向(半径方向外向き)や円周方向へ向かうようになる。このような変形吸収部は、例えばボルト締結部となるボルト穴9aより外周側となるシリンダ本体9の半径方向や円周方向の寸法(シリンダ本体9の素材が存在する寸法)を小さくして剛性を低下させた領域であるから、ロータリ圧縮機構3を組み立てる際のボルト締結時においては、低剛性側へ変形を誘導することにより、シリンダ室8の内壁面9bが軸中心側に膨出してシリンダ内径を縮小する変形を防止または抑制できる。
【0031】
このため、ロータ12の外周面とシリンダ室8を形成するシリンダ本体9の内壁面9bとの間は、全周にわたって所定の隙間設定値gに均一化できるようになるので、ロータリ圧縮機1の圧縮時に高圧側から低圧側へ流出する圧縮流体の漏れ量を低減して高効率化を達成できる。このようなロータリ圧縮機1の高効率化は、特に高い圧力で使用される圧縮流体(例えばR32冷媒等)を対象とする場合においてより顕著になる。
【0032】
また、外周側に変形吸収部を設ける本実施形態は、ボルト穴9aより内周側に溝を設けた特許文献1と比較して、ロータリ圧縮機1の小型化や、良好なシール性を確保しやすいという利点も有している。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、たとえばロータリ圧縮機構とスクロール圧縮機構とを組み合わせた圧縮機のロータリ圧縮機構にも適用可能であるなど、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 ロータリ圧縮機
2 ハウジング
2A センターハウジング
3 ロータリ圧縮機構
4 電動モータ
7 クランク軸
7A 偏心部
8 シリンダ室
9 シリンダ本体
9a ボルト穴
9b 内壁面
9c 外壁面
9d 凹溝部
10 上部軸受
11 下部軸受
12 ロータ
15 上部マフラ室
15A 上部マフラ
16 下部マフラ室
16A 下部マフラ
20,20A,20L,20R 貫通溝(変形吸収部)
21 膨出部
30 切欠形成部(変形吸収部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7