(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記送液制御部は、上記複数の流路のうち少なくとも2つの流路を上記反応部の手前の位置で統合するとともに当該2つの流路を流れる溶液を混合する混合部を更に含むことを特徴とする請求項1記載の遺伝子検査方法。
上記送液制御部は、上記複数の流路のうち少なくとも2つの流路を上記反応部の手前の位置で統合するとともに当該2つの流路を流れる溶液を混合する混合部を更に含むことを特徴とする請求項6記載の遺伝子検査装置。
【背景技術】
【0002】
ゲノム解析の進展により、種々の生物の生理反応に関与する生体関連分子が解明されてきた。これら生体関連分子には、DNA、蛋白質、糖鎖、細胞などがあり、機能や構造等が解明されたものは、創薬や臨床検査、食品検査、環境検査などの各種産業用途に利用される。
【0003】
臨床検査を始めとする検査では、以下の方法が一般的によく採用される。すなわち、検出したい生体関連分子(以下、アナライトと呼称する)と特異的に結合するプローブ分子(以下、リガンドと呼称する)を担体上に固定したデバイスに検体を接触させると、検体にアナライトが存在する場合、リガンドと結合してアナライトが担体上に捕捉されるので、この補捉されたアナライトが検出される。
【0004】
上記のような検査方法においても、近年、高速化、自動化が求められ、数百〜数万の生体関連分子を同時に網羅的に計測する検出方法が要望されるようになり、生体関連分子固定の集積化技術、いわゆる、MEMS技術を用いたデバイス設計が可能となり、いわゆるマイクロアレイとして、創薬研究やバイオ研究における網羅的解析に用いられている。なかでも、担体上に核酸分子を固定した所謂DNAマイクロアレイ(DNAチップとも呼ばれる)を用いた遺伝子検査が実用化されている。
【0005】
DNAマイクロアレイを用いた解析では、先ず、DNAマイクロアレイ上に、例えば、蛍光物質で予め蛍光標識を行った検体DNAを接触させ、担体上に固定されたプローブDNAと検体DNAとを特異的にハイブリダイズさせる。その後、DNAマイクロアレイを洗浄し、蛍光物質が発する蛍光シグナルを検出測定することにより検体DNAを同定又は定量する。
【0006】
DNAマイクロアレイは、通常、スライドガラス様の大きさで、専らその上に検体を垂らしプレパラートで覆い反応させる。今後は用途に応じてマイクロアレイを大量に自動処理する必要がある。その場合、マイクロアレイの小型化が望まれ、さらに小型化したマイクロアレイを自動で処理するための効率的な手段の開発が望まれる。
【0007】
DNAマイクロアレイを用いた遺伝子検査装置としては、例えば、特許文献1が挙げられる。特許文献1に開示された遺伝子検査装置は、DNAマイクロアレイのための温度調整部、DNAマイクロアレイからの光学信号を検出する検出部、DNAマイクロアレイへの流体を給排する流体輸送部、全体の動作を制御する制御部を備えている。
【0008】
遺伝子検査装置は、例えば
図8に示すように、DNAマイクロアレイ101と、DNAマイクロアレイ101を固定する担体支持部材102を備え、担体支持体に固定されたDNAマイクロアレイ101を移動自在としている。また、遺伝子検査装置は、
図8に示すように、検査対象の生物から抽出した核酸をとしてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等により所定の領域を増幅する核酸増幅反応部103と、PCR等の核酸増幅反応後の溶液を用いてハイブリダイズ反応を行うハイブリダイズ反応部104、ハイブリダイズ反応後のDNAマイクロアレイ101を洗浄する洗浄部105と、洗浄後のDNAマイクロアレイ101からの蛍光を検出する検出部106とを備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、遺伝子検査装置においては、例えば、核酸増幅反応の工程、ハイブリダイズ反応の工程、洗浄の工程及び検出の工程といった一連の工程を自動化する場合、各工程を実施するための構成が必要となり大型化してしまうといった問題点があった。
【0011】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑み、DNAマイクロアレイを利用して各種工程を自動化することができ、小型化が実現された遺伝子検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的を達成した本発明は以下を包含する。
(1) DNAマイクロアレイを搭載することができる反応部と、
上記反応部に連結された複数の流路と、これら複数の流路を介して上記反応部に溶液を供給する溶液供給機構とを含む送液制御部と、
上記反応部に対向する位置に配設され、DNAマイクロアレイからの光学信号を検出する検出部と
を備え、上記複数の流路を介して上記溶液供給機構から溶液が供給されることで、少なくとも、上記DNAマイクロアレイを用いたハイブリダイズ及びDNAマイクロアレイの洗浄を上記反応部で実施することを特徴とする遺伝子検査装置。
(2) 上記送液制御部は、上記複数の流路のうち少なくとも2つの流路を上記反応部の手前の位置で統合するとともに当該2つの流路を流れる溶液を混合する混合部を更に含むことを特徴とする(1)記載の遺伝子検査装置。
(3) 上記反応部は、上記複数の流路が連通された溶液導入部と、導入された溶液を排出する溶液排出部との間に上記DNAマイクロアレイを搭載する設置部を有し、上記溶液導入部から上記設置部に向かって空間体積が小となることを特徴とする(1)記載の遺伝子検査装置。
(4) 上記反応部は、上記設置部から上記溶液排出部に向かって空間体積が大となることを特徴とする(3)記載の遺伝子検査装置。
(5) 上記反応部に導入された溶液の温度を調整する温度調整部を更に有することを特徴とする(1)記載の遺伝子検査装置。
(6) 上記反応部内の圧力を調整するための圧力調整手段を更に有することを特徴とする(1)記載の遺伝子検査装置。
(7) 上記圧力調整手段は上記反応部内の圧力開放弁であることを特徴とする(6)記載の遺伝子検査装置。
(8) 核酸増幅反応を行う核酸増幅反応部を更に有し、上記複数の流路のうち少なくとも1つは当該核酸増幅反応部と連結され、核酸増幅反応後の溶液を上記反応部に導入することを特徴とする(1)記載の遺伝子検査装置。
(9) 上記複数の流路のうち少なくとも1つは、核酸増幅反応に必要な溶液を供給するための溶液供給機構に連結され、核酸増幅反応に必要な溶液を上記反応部に導入することを特徴とする(1)記載の遺伝子検査装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る遺伝子検査装置は、DNAマイクロアレイを用いた遺伝子検査を、より小型化した構成で実現することができる。したがって、本発明に係る遺伝子検査装置は、設置場所などを省スペースかすることができるとともに、低コスト化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を適用した遺伝子検査装置は、DNAマイクロアレイを用いて遺伝子検査を行うものである。遺伝子検査装置に使用できるDNAマイクロアレイとしては、特に限定されず、例えば、平板状の担体と、担体表面に固定化したDNA断片(プローブと称する)とから構成されるものを挙げることができる。
【0016】
図1に示すように、遺伝子検査装置1は、DNAマイクロアレイを搭載することができ、少なくともDNAマイクロアレイを用いたハイブリダイズ反応工程とDNAマイクロアレイの洗浄工程とを行う反応部2と、反応部2に対して所定の溶液を供給する送液制御部3と、反応部2に搭載されたDNAマイクロアレイと対向する位置に配設され、DNAマイクロアレイからの光学信号を検出する検出部4とを備える。
【0017】
また、遺伝子検査装置1において送液制御部3は、
図2に示すように、反応部2に連結された複数の流路5a、5b、5c及び5dと、これら複数の流路5a、5b、5c及び5dを介して反応部2に溶液を供給する溶液供給機構6a、6b、6c及び6dとを含んでいる。詳細には、溶液供給機構6aは、流路5aに対して第1の洗浄液を供給するための、第1洗浄液タンク7、ポンプ8及び開閉バルブ9を備えている。溶液供給機構6bは、流路5bに対して第2の洗浄液を供給するための、第2洗浄液タンク10、ポンプ11及び開閉バルブ12を備えている。溶液供給機構6cは、流路5cに対してハイブリダイズ用溶液を供給するための、ハイブリダイズ用溶液タンク13、ポンプ14及び開閉バルブ15を備えている。溶液供給機構6dは、流路5dに対して核酸移動用溶液を供給するための、核酸移動用溶液タンク16、ポンプ17及び開閉バルブ18を備えている。
【0018】
遺伝子検査装置1において、送液制御部3は、
図2に示すように、複数の流路5a、5b、5c及び5dのうち少なくとも2つの流路(
図2の例では流路5c及び5d)上に混合部19を有していることが好ましい。混合部19は、詳細は図示しないが、流路5cを流れる溶液と流路5dを流れる溶液とを十分に撹拌して均一な溶液とする混合装置を備えている。
【0019】
混合部19としては、例えば、いわゆるスタティックミキサーを混合装置として使用したものを挙げることができる。スタティックミキサーとは、矩形の板部材を右に例えば180度ねじった形状の右エレメントと、同部材を左に例えば180度ねじった形状の左エレメントが交互に管内に配置された構成を有する装置である。スタティックミキサーは、流路5cと流路5dとの合流箇所の下流に配置される。なお、スタティックミキサーは、右エレメント及び左エレメントの連続構造によって、管内を流れる液体の分割、転換及び反転作用を繰り返すことによって均一に撹拌する。
【0020】
また、混合部19としては、例えば、いわゆるダイナミックミキサーを混合装置として使用したものを挙げることができる。ダイナミックミキサーとは、回転軸と回転軸に取り付けられた撹拌翼とが混合室内に配置された構成を有する装置である。ダイナミックミキサーは、この混合室に流路5cと流路5dとを接続するように配置される。なお、ダイナミックミキサーは、回転軸が回転することで混合室内の溶液を撹拌翼が均一に撹拌する。なお、回転軸の回転駆動は、モータに回転軸を連結したものでも良いし、マグネットカップリングを利用したものでも良い。
【0021】
遺伝子検査装置1において、送液制御部3は、
図2に示すように、流路5d上にサンプル導入部20を有していることが好ましい。サンプル導入部20としては、図示しないシリンジを用いて溶液サンプルを流路5dに導入することができる装置、例えば高速液体クロマトグラフィー装置に使用されるインジェクターを利用することができる。サンプル導入部20は、流路5d上に配置された混合部19に対して、溶液の流動方向の上流に配置されている。
【0022】
送液制御部3においてポンプ8、11、14及び17としては、特に限定されないが、例えばギアポンプ、プランジャーポンプ或いはシリンジポンプ等を適宜使用することができる。なお、ポンプ8、11、14及び17は、ギアポンプ、プランジャーポンプ或いはシリンジポンプ等のうちそれぞれ異なる装置であっても良いし、同じ装置であってもよい。ここでギアポンプとは、2枚以上の歯車を噛み合わせて、歯車の開閉により液体の吸引と吐出とを繰り返す装置である。また、プランジャーポンプとは、プランジャーをエア式シリンダ等により往復させて溶液の吸引と吐出とを行う装置である。さらにシリンジポンプとは、溶液を充填するシリンダとシリンダ内に往復運動可能に収容されるピストンとから構成され、ピストンの往復運動により吸引と吐出とを行う装置である。いずれのポンプ装置を用いても、第1洗浄液、第2洗浄液、ハイブリダイズ用溶液及び核酸移動用溶液を送液することができる。
【0023】
なお、図示していないが、遺伝子検査装置1は、これらポンプ8、11、14及び17並びに開閉バルブ9、12、15及び18の動作を制御する制御部を有している。この制御部が予め設定されたタイミング及び量に従って、第1洗浄液、第2洗浄液、ハイブリダイズ用溶液及び核酸移動用溶液の送液を制御することができる。
【0024】
遺伝子検査装置1において、反応部2は、
図2に示すように、DNAマイクロアレイ21を設置部22に着脱自在に載置している。また、反応部2は、上記複数の流路5a、5b、5c及び5dが連通した溶液導入部23と、導入された溶液を排出する溶液排出部24とを有している。
【0025】
さらに、反応部2は、
図3に示すように、DNAマイクロアレイ21と対向する位置(すなわち、設置部22と対向する位置)に透光性を有する窓25を備えている。窓25は、
図3には示していないが、検出部4と対向している。すなわち、検出部4は、窓25を介してDNAマイクロアレイ21からの光学信号を検出する。なお、反応部2が透光性を有する材料から形成されている場合には、窓25を有している必要はないことは勿論である。
【0026】
特に、反応部2は、
図4(a)及び(b)に示すように、溶液導入部23から溶液排出部24に向かって(
図4(a)及び(b)における矢印A方向に)空間体積が小となる構成であることが好ましい。言い換えると、反応部2は、DNAマイクロアレイ21を搭載する設置部22が幅狭になっており、設置部22から溶液導入部23及び溶液排出部24に向かってそれぞれ幅広となっていることが好ましい。
【0027】
なお、反応部2は、図示しないが、内部に供給された溶液の温度を調整する温度調整部を有していることが好ましい。この温度調整部は、図示しない制御部によって制御される。
【0028】
以上のように構成された遺伝子検査装置1を利用して遺伝子検査を行う場合、先ず、ポリメラーゼ増幅反応(PCR)等の核酸増幅反応により増幅された核酸を含む溶液(核酸増幅反応溶液)を準備する。遺伝子検査装置1では、この核酸増幅反応溶液に含まれる増幅核酸断片とDNAマイクロアレイ21に固定されたプローブDNAとの間のハイブリダイズ反応を行う。
【0029】
ハイブリダイズ反応を行う工程では先ず、溶液供給機構6c及び溶液供給機構6dを駆動して、ハイブリダイズ反応用溶液及び核酸増幅反応溶液を反応部2へ供給する。詳細には、ポンプ14を駆動するとともに開閉バルブ15を開放することで、ハイブリダイズ用溶液タンク13からハイブリダイズ反応用溶液を流路5cに通液させる。同時又は順次に、ポンプ17を駆動するとともに開閉バルブ18を開放することで、核酸移動用溶液タンク16から核酸移動用溶液を流路5dに通液させながら、図示しないシリンジ等により核酸増幅反応溶液をサンプル導入部20から流路5dに供給する。流路5cを流れるハイブリダイズ反応用溶液と、流路5dを流れる核酸増幅反応溶液及び核酸移動用溶液とは、混合部19にて混合され均一な溶液となる。
【0030】
混合部19において、核酸増幅反応溶液にハイブリダイズ反応用溶液を加えることでハイブリダイズ反応に適した組成の溶液となり、反応部2に載置されたDNAマイクロアレイ21と当該溶液とを接触させることとなる。ここでハイブリダイズ反応に適した組成の溶液とは、DNAマイクロアレイ21が有するプローブDNAと、核酸増幅反応により得られた核酸断片との間の特異的なハイブリダイズが形成される反応を意味する。ハイブリダイズ反応は、溶液中の塩濃度、有機溶媒濃度及び温度等の条件によりストリンジェンシーが規定される。高ストリンジェントな条件でハイブリダイズ反応を行うことによって、非特異的なハイブリダイズが防止され、特異的なハイブリダイズが形成される。例えば、溶液中の塩濃度を低くするか、有機溶媒濃度を増加させるか、反応温度を高くすることにより高ストリンジェントな条件とすることができる。なお、このとき、反応部2は、図示しない温度調整部により溶液がハイブリダイズ反応に適した温度(高ストリンジェントな条件)とされることが好ましい。
【0031】
特に、反応部2を
図4(a)及び(b)に示すように、溶液導入部23から溶液排出部24に向かって空間体積が小となる構成とした場合には、反応部2に供給される溶液の体積を小とすることができる。このため、核酸増幅反応溶液が微量であっても確実にハイブリダイズ反応を行うことができる。また、溶液導入部23から溶液排出部24に向かって空間体積が小となる構成とした場合には、反応部2に供給された溶液の温度をより均一に制御することができるため、確実にハイブリダイズ反応を行うことができる。
【0032】
上記のような高ストリンジェントな条件下では、DNAマイクロアレイ21が有するプローブと、核酸増幅反応により得られた核酸断片との間の特異的なハイブリダイズが形成される。特異的なハイブリダイズとは、配列間の一致度が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上を有する場合にハイブリダイズできることを意味する。
【0033】
このとき、ポンプ14及び/又はポンプ17を適宜に制御することによって、核酸増幅反応溶液を含むハイブリダイズ反応に適した組成の溶液をDNAマイクロアレイ21上に滞留させることができる。例えば、ポンプ14及び/又はポンプ17を制御して液輸送を微量(1μL/min)ずつ輸送し、DNAマイクロアレイ21上に溶液が輸送された段階でポンプ14及び/又はポンプ17を停止させる。これにより、DNAマイクロアレイ21が有するプローブDNAと、核酸増幅反応により得られた核酸断片との間の特異的なハイブリダイズ反応を適切に進行させることができる。
【0034】
特に、反応部2を
図4(a)及び(b)に示すように、溶液導入部23から溶液排出部24に向かって空間体積が小となる構成とした場合には、核酸増幅反応溶液を含むハイブリダイズ反応に適した組成の溶液をDNAマイクロアレイ21上に容易に滞留させることができる。
【0035】
次に、遺伝子検査装置1では、DNAマイクロアレイ21の洗浄工程及びDNAマイクロアレイ21から生じる光学信号の検出工程を行う。
【0036】
洗浄工程では、溶液供給機構6a及び溶液供給機構6bを駆動して、第1洗浄液及び第2洗浄液を反応部2へ供給する。詳細には、ポンプ8を駆動するとともに開閉バルブ9を開放することで、第1洗浄液タンク7から第1洗浄液を流路5aに通液させる。次に、ポンプ11を駆動するとともに開閉バルブ12を開放することで、第2洗浄液タンク10から第2洗浄液を流路5bに通液させる。これにより、ハイブリダイズ反応後のDNAマイクロアレイ21に対して第1洗浄液及び第2洗浄液を順次接触させることができる。
【0037】
ここで洗浄液とは、DNAマイクロアレイ21に固定されたプローブと、核酸増幅反応により得られた核酸断片との間の特異的なハイブリダイズが維持され、非特異的にハイブリダイズした核酸断片を洗い流せるものである。また、第1洗浄液及び第2洗浄液をDNAマイクロアレイ21に対して供給することで、DNAマイクロアレイ21に付着した核酸断片や各種成分を洗い流すこともできる。
【0038】
洗浄液としては、ハイブリダイズ反応用の溶液と同じ組成の溶液を使用することができる。具体的には、例えば42℃、5×SSC、0.1%SDSの溶液を使用することができる。また、好ましくは50℃、5×SSC、0.1%SDSの溶液を使用することができる。さらに好ましくは、65℃、5×SSC、0.1%SDSの溶液を使用することができる。また、好ましくは42℃、1×SSC、0.1%SDSの溶液を使用することができる。さらに好ましくは、42℃、0.1×SSC、0.1%SDSの溶液を使用することができる。
【0039】
特に、反応部2を
図4(a)及び(b)に示すように、溶液導入部23から溶液排出部24に向かって空間体積が小となる構成とした場合には、反応部2に供給される第1洗浄液及び第2洗浄液の通液速度を容易に高めることができるため、洗浄効率を上げることができる。
【0040】
洗浄工程の後、検出部4が窓25を介してDNAマイクロアレイ21からの光学信号を検出する検出工程を実行する。具体的に、核酸増幅反応において増幅した核酸断片を蛍光物質で標識しておいた場合には、検出部4において励起光をDNAマイクロアレイ21に照射し、励起した蛍光を検出部4にて検出する。なお、反応部2の筐体が透光性を有する材料からなる場合、検出工程は反応部2の任意の位置で行うことができる。
【0041】
より具体的に、検出部4としては、結像光学系の検出器を用いることが好ましい。結像光学系の検出器は、励起光を担体に照射し、得られる蛍光の強度を検出するものである。結像光学系の検出器は、通常、励起光を照射するためのレーザー、目的の波長の蛍光のみを透過させる蛍光フィルター、蛍光フィルターを透過した蛍光を検出するための光検出部(例えば、CCDカメラ)を有する。通常、レーザーで一度にDNAマイクロアレイ21全体に斜めに励起光を照射し、DNAマイクロアレイ21の正面から蛍光を検出する。励起光をDNAマイクロアレイ21に対して斜めに照射するとは、DNAマイクロアレイ21表面とレーザー光のなす角度が、90°未満であることをさし、通常、30〜70°、好ましくは40〜60°の角度で照射する。結像光学系の検出部4では、DNAマイクロアレイ21の全面にレーザーを走査させる必要がなく、検出を短時間で実施することができる。一度に担体全体に励起光を照射するため、DNAマイクロアレイ21としては、比較的サイズの小さいもの、例えば、寸法が10mm以下、好ましくは5mm以下、さらに好ましくは3mm以下、最も好ましくは1〜5mm四方のサイズとする。
【0042】
特に、反応部2を
図4(a)及び(b)に示すように、溶液導入部23から溶液排出部24に向かって空間体積が小となる構成とした場合には、反応部2に搭載されたDNAマイクロアレイ21と窓25との距離が短くなるため、検出部4がより高感度に光学信号を検出することができる。
【0043】
以上のように、本発明を適用した遺伝子検査装置1では、反応部2において核酸増幅反応後の反応液を用いてハイブリダイズ反応を行い、その後、反応部2において洗浄工程を行うことができる。よって、本発明を適用した遺伝子検査装置1では、ハイブリダイズ反応のための機構と、洗浄のための機構とを別々に用意する必要が無く、装置構成を簡略化することができ小型化を実現できる。
【0044】
ところで、本発明を適用した遺伝子検査装置は、上述した遺伝子検査装置1に限定されず、例えば、
図5に示す遺伝子検査装置30であってもよい。遺伝子検査装置30は、反応部31の内壁面における所定の高さ位置にDNAマイクロアレイ21を搭載する設置部32を有している。遺伝子検査装置30は、反応部31に連結された複数の流路33a、33b及び33cと、これら複数の流路33a、33b及び33cを介して反応部31に溶液を供給する溶液供給機構34a、34b及び34cとを含んでいる。詳細には、溶液供給機構34aは、流路33aに対して核酸増幅反応用の溶液を供給するための、ポンプ35及び開閉バルブ36を備えている。溶液供給機構34bは、流路33bに対してハイブリダイズ用溶液を供給するための、ポンプ37及び開閉バルブ38を備えている。溶液供給機構34cは、流路33cに対して洗浄液を供給するための、ポンプ39及び開閉バルブ40を備えている。さらに、遺伝子検査装置30は、反応部31内に導入された溶液を排出する溶液排出部41を有している。さらにまた、遺伝子検査装置30は、反応部31内に搭載されたDNAマイクロアレイ21と対向する位置に窓42を備えている。
【0045】
以上のように構成された遺伝子検査装置30は、反応部31内において核酸増幅反応を行い、その後、ハイブリダイズ反応を行い、続いて洗浄工程及び検出工程を行うことができる。
【0046】
具体的に、先ず、ポンプ35を駆動するとともに開閉バルブ36を開放することで、核酸増幅反応用の溶液を流路33aに通液させる。核酸増幅反応は、特に限定されず、PCR法やLAMP法など如何なる原理を採用するものでもよい。反応部31において核酸増幅反応を行う場合、例えば、先ず、血液、細胞及び組織などから抽出した核酸、リボ核酸及びタンパク質などと、増幅反応に必要な試薬(基質や、プライマー、ポリメラーゼ等の酵素)を混合して増幅反応用の溶液を調整する。そして、当該溶液を上述のように反応部31に供給し、図示しない温度調整部が予め設定した温度サイクルに従って反応部31の溶液温度を制御することで、反応部31内で増幅反応を行うことができる。具体的に核酸を増幅する場合には、温度調整部は、熱変性温度として例えば94℃を設定し、プライマーのアニーリング温度として例えば55℃を設定し、DNAポリメラーゼによる伸長反応温度として例えば72℃を設定することができる。そして、温度調整部は、熱変性温度、アニーリング温度及び伸長反応温度を1サイクルとして、例えば25〜30サイクル行うように設定することができる。
【0047】
核酸増幅反応の際には、
図5に示すように、核酸増幅反応用の溶液を反応部31に供給したときにDNAマイクロアレイ21が溶液に接触しない高さとすることが好ましい。また、核酸増幅反応用の溶液を反応部31に供給する際には、開閉バルブ38及び/又は開閉バルブ40を開放することで、反応部31の内圧を一定に維持することが好ましい。すなわち、開閉バルブ38及び/又は開閉バルブ40を圧力調整手段として使用することで、核酸増幅反応用の溶液を反応部31に容易に供給することができる。
【0048】
次に、上述した核酸増幅反応の後、ポンプ37を駆動するとともに開閉バルブ38を開放することで、ハイブリダイズ反応用の溶液を流路33bに通液させる。
図6に示すように、ハイブリダイズ反応用の溶液が反応部31に供給されると、反応部31内の核酸増幅反応後の溶液とハイブリダイズ反応用の溶液とが混合し、DNAマイクロアレイ21全体が溶液に浸漬することとなる。これにより、DNAマイクロアレイ21が有するプローブと、核酸増幅反応により得られた核酸断片との間の特異的なハイブリダイズが形成される。
【0049】
なお、核酸増幅反応における最後の温度サイクルにおける伸長反応が終了した段階で開閉バルブ36等を開放して反応部31の内圧を外圧と略同一とし、その後、開閉バルブ36等を閉塞し、反応部31を室温(あるいは保存する場合には−4℃)といった温度に冷却することで、反応部31の内圧を陰圧とすることができる。このように、反応部31内を陰圧とした状態で、ハイブリダイズ反応用の溶液を流路33bに通液すると、反応部31内部において核酸増幅反応後の溶液とハイブリダイズ反応用の溶液とを容易に均一に混合することができる。
【0050】
次に、遺伝子検査装置30では、DNAマイクロアレイ21の洗浄工程及びDNAマイクロアレイ21から生じる光学信号の検出工程を行う。洗浄工程では、ポンプ39を駆動するとともに開閉バルブ40を開放することで、洗浄液を流路33cに通液させる。この洗浄工程においても、洗浄液を反応部31に供給する際には、
図6に示すように、DNAマイクロアレイ21全体が洗浄液に浸漬する高さとなるように供給することが好ましい。
【0051】
なお、ハイブリダイズ反応用の溶液や洗浄液を反応部31に供給する際には、核酸増幅反応用の溶液を供給したときと同様に、開閉バルブ36等を開放することで、反応部31の内圧を一定に維持することができる。すなわち、開閉バルブ36等を圧力調整手段として使用することで、ハイブリダイズ反応用の溶液や洗浄液を反応部31に容易に供給することができる。
【0052】
次に、洗浄工程の後、
図5及び6には図示しないが検出部が窓42を介してDNAマイクロアレイ21からの光学信号を検出する検出工程を実行する。検出部による光学信号の検出は、上述した遺伝子検査装置1と同様である。
【0053】
以上で説明したように、遺伝子検査装置30によれば、特に、反応部2において核酸増幅反応を行うことができるため、核酸増幅反応のための機構と、ハイブリダイズ反応のための機構と、洗浄のための機構とを別々に用意する必要が無い。すなわち、本発明を適用した遺伝子検査装置は、反応部2において核酸増幅反応を行う場合であっても、装置構成が複雑になることはなく小型化を実現することができる。
【0054】
なお、遺伝子検査装置30は、図示しないが、反応部31内に供給された溶液を撹拌するための撹拌手段を有していることが好ましい。撹拌手段としては、特に限定されないが、例えば、撹拌翼を備える機構、磁性体からなる撹拌子と磁性体スターラーとからなる機構、アルゴンガスや窒素等の気体を導入する機構、回転による振動や超音波といった振動を発生する振動発生装置からなる機構を挙げることができる。遺伝子検査装置30が撹拌手段を有する場合には、上述した核酸増幅反応の溶液、ハイブリダイズ反応の溶液を十分に撹拌することができるため、核酸増幅反応の反応効率やハイブリダイズ反応の効率を向上させることができる。また、遺伝子検査装置30が撹拌手段を有する場合には、洗浄液による洗浄効率を向上させることができる。
【0055】
また、遺伝子検査装置30は、核酸増幅反応用の溶液、ハイブリダイズ反応用の溶液及び洗浄液をそれぞれポンプ35、37及び39並びに開閉バルブ36、38及び40を用いて反応部2に供給していた。しかし、反応部2に対する核酸増幅反応用の溶液、ハイブリダイズ反応用の溶液及び洗浄液の供給は、このような装置構成によるものに限定されず、例えばシリンジ等を用いてもよい。この場合、各流路33a、33b及び33cは、例えばセプタムを使用して密閉しておき、溶液の注入時にシリンジ針を用いて開放することができる。
【0056】
ところで、本発明を適用した遺伝子検査装置は、例えば、
図7に示す遺伝子検査装置50であってもよい。遺伝子検査装置50は、DNAマイクロアレイ21を搭載することができ、少なくともDNAマイクロアレイ21を用いたハイブリダイズ反応工程とDNAマイクロアレイ21の洗浄工程とを行う反応部51と、核酸増幅反応を行う核酸増幅反応部52と、ハイブリダイズ用溶液を通液する流路53と、核酸増幅反応部52からの反応液と流路53からのハイブリダイズ用溶液とを混合する混合部54と、洗浄液を通液する流路55とを備えている。
【0057】
核酸増幅反応部52は、図示しないが、核酸増幅反応液を供給するための機構と接続されており、当該機構から核酸増幅反応液が供給される。核酸増幅反応部52は、核酸増幅反応液が通液される配管56と、当該配管56に通液される溶液の温度を調整する複数の温度調整部56a、56bを備える。なお、
図7には、温度調整部56a及び56bを示したが、核酸増幅反応部52は、1つの温度調節部や3つ以上の温度調整部を備えるものでも良い。
【0058】
具体的に温度調整部56a、56bによれば、配管56に通液される溶液を、順次、例えば94℃に設定された熱変性温度、例えば55℃に設定されたアニーリング温度、例えば72℃に設定された伸長反応温度となるように温度調整することができる。
【0059】
なお、遺伝子検査装置50は、図示しないが、核酸増幅反応部52に対して核酸増幅反応液を供給するための機構を備えている。さらに、遺伝子検査装置50は、図示しないが、流路53にハイブリダイズ用溶液を供給するための機構、流路55に洗浄液を供給するための機構を備えている。
【0060】
以上のように構成された遺伝子検査装置50は、配管56内を核酸増幅反応液が通液することで熱変性、アニーリング及び伸長反応を繰り返すことができ、核酸増幅反応部52において核酸増幅反応が行われることとなる。その後、遺伝子検査装置50では、核酸増幅反応後の溶液がハイブリダイズ用溶液と混合部54にて混合され、反応部51に供給される。これにより反応部51では、上述した遺伝子検査装置と同様に、DNAマイクロアレイ21が有するプローブと、核酸増幅反応により得られた核酸断片との間の特異的なハイブリダイズが形成される。その後、遺伝子検査装置50では、流路55を介して反応部51に洗浄液を供給し、DNAマイクロアレイ21が有するプローブと核酸増幅反応により得られた核酸断片との間の特異的なハイブリダイズが維持され、非特異的にハイブリダイズした核酸断片や、DNAマイクロアレイ21に付着した核酸断片や各種成分を洗い流すこともできる。
【0061】
次に、洗浄工程の後、
図7には図示しないが検出部がDNAマイクロアレイ21からの光学信号を検出する検出工程を実行する。検出部による光学信号の検出は、上述した遺伝子検査装置1及び遺伝子検査装置30と同様である。
【0062】
以上で説明したように、遺伝子検査装置50によれば、特に、核酸増幅反応後の反応液を用いてハイブリダイズ反応を行うことができるため、ハイブリダイズ反応のための機構と、洗浄のための機構とを別々に用意する必要が無い。すなわち、本発明を適用した遺伝子検査装置は、反応部51以外の部分で核酸増幅反応を行う場合であっても、装置構成が複雑になることはなく小型化を実現することができる。また、
図7に示した遺伝子検査装置50は、核酸増幅反応を同一装置内において行うことができるため、核酸増幅反応工程、ハイブリダイズ反応工程、洗浄工程及び検出工程を連続して行う自動化に適した構成といえる。