(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記相対移動は、前記端面の長さ方向の一端から他端まで行われ、該一端から他端までの相対移動を1回として、前記端面に対して複数回行われる、請求項1に記載の方法。
前記第2工程において前記端面は、複数回の相対移動のうち、最後の相対移動により切削される前記端面の奥行き方向の切削深さが0.01mm以上0.1mm以下となるように切削加工される、請求項2又は3に記載の方法。
前記第2工程において、前記偏光板積層体1個に対して前記切削工具を2個用いて、前記偏光板積層体の向かい合う2つの端面が同時に切削加工される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<端面加工偏光板の製造方法>
本発明に係る端面加工偏光板の製造方法は、下記工程:
〔a〕(メタ)アクリル系樹脂フィルムを保護フィルムとする方形状の偏光板を複数枚積み重ねて、偏光板積層体を得る第1工程、及び
〔b〕得られた偏光板積層体の端面の長さ方向に沿って、偏光板積層体に対して、回転軸を中心に回転する、切削刃を有する切削工具を相対移動させることにより偏光板積層体の端面を切削加工する第2工程
を含む。以下、各工程について詳細に説明する。
【0022】
〔第1工程〕
本工程は、方形状の偏光板を複数枚積み重ねて偏光板積層体を得る工程である。「方形状」とは、正方形又は長方形であり、そのサイズは特に限定されない。積み重ねられる偏光板の枚数も特に限定されないが、本発明によれば、偏光板積層体が相当な高さを有する場合であっても、良好な仕上げ状態で、各偏光板の端面をまとめて加工することができ、加工効率に優れる。
【0023】
本発明で用いる偏光板は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムとその上に接着剤を介して積層される(メタ)アクリル系樹脂フィルムとを少なくとも備える偏光板である。偏光板のより詳細な構成については後述する。本発明で用いる偏光板は通常、長尺の偏光板を裁断して得られるものである。
【0024】
偏光板積層体の端面を切削加工する後述の第2工程を説明するための図である
図1を参照して、偏光板を複数枚積み重ねて得られる偏光板積層体Wは、4つの露出した端面を有しており、各端面は、積み重ねられた各偏光板の露出した端面で構成されている。複数枚の偏光板は、それらの4辺が揃うように積み重ねられる。偏光板の積み重ねは、自動又は手動で行うことができる。
【0025】
〔第2工程〕
本工程は、第1工程で得られた偏光板積層体の端面を切削工具により切削加工して、端面加工偏光板を得る工程である。
図1は、本発明に係る偏光板積層体端面を切削加工する第2工程及びこの工程に用いる端面加工装置の一例を説明するための概略斜視図である。
【0026】
図1を参照して、偏光板積層体端面の切削加工に用いる端面加工装置についてまず説明する。端面加工装置は、例えば
図1に示されるように、偏光板積層体Wを上下から押圧して、切削加工中に偏光板積層体W自体が移動しないように及び積み重ねられた偏光板がずれないように固定するための上押さえ具20及び下押さえ具21;下押さえ具21を支持し、偏光板の積層方向zと平行な中心軸を中心に回転可能な回転テーブル31;上押さえ具20に付設され、回転テーブル31と同期して、これと同方向に回転可能な押し具30;偏光板積層体Wの端面を切削加工するための2つの切削工具(切削回転体)10,11を備えるものであることができる。
【0027】
切削工具10,11は、
図1に示されるように、偏光板積層体Wの端面に平行で、かつ当該端面の長さ方向に略直交する方向の回転軸を回転中心として回転可能な回転体であり、その外形形状は、例えば円柱状であることができる。「端面の長さ方向」とは、偏光板の積層方向zに直交する方向である。「略直交」とは、切削工具10,11の回転軸と偏光板の積層方向zとのなす角度αが25度以下(0度を含む)であることを意味する。円柱状である切削工具10,11の直径は、例えば5〜20cm程度である。
【0028】
切削工具10,11の回転軸が偏光板の積層方向zに対して傾斜していると、切削刃10a,11aの寿命向上又は偏光板が粘着剤層を備える場合における切削刃10a,11aへの粘着剤の付着抑制の観点で好ましいことがある。ただし、上記角度αが25度を超えると、切削工具10,11の有効切削範囲が狭くなり、積み重ねられる偏光板の枚数が制約される。
【0029】
2つの切削工具10,11はそれぞれ、n枚(nは1以上の整数)の切削刃10a,11aを有している。切削工具10,11を回転させて、切削刃10a,11aの刃先を偏光板積層体Wの露出した端面に当接させることにより当該端面を削り取り、端面加工を行う。
図1に示される例において、切削工具10,11が有する切削刃10a,11aの数はそれぞれ4枚である。切削刃10a,11aは、偏光板積層体Wの端面に当接される回転体の側面において、切削工具10,11の回転軸の方向に(例えば回転軸と平行に)延在するように配置される。切削刃10a,11aの刃渡りは、積み重ねられたすべての偏光板の端面をまとめて切削加工できるよう、偏光板積層体Wの高さと同じか又はそれより長いものとする。切削刃10a,11aが延在する方向を、切削工具10,11の回転軸に対して傾斜させることもできる。
【0030】
切削工具10,11が2枚以上の切削刃10a,11aを有する場合、これらの切削刃10a,11aは、切削工具10,11の側面上において、均等に配置されることが好ましい。
【0031】
図1に示される端面加工の様子を上から(z方向)から見た図に相当する
図2(a)を併せ参照して本工程における端面加工方法について説明すると、まず、上述のような端面加工装置を用い、偏光板積層体Wを下押さえ具21上に配置し、上押さえ具20と下押さえ具21とで上下から押圧して固定した後、2つの切削工具10,11を偏光板積層体Wの向かい合う2つの端面41,42(勿論、端面43,44でもよい。)の外側にそれぞれ配置する。次いで、切削工具10,11のy方向の位置を適切に調整したうえで、切削工具10,11をそれらの回転軸を中心に回転させつつ、偏光板積層体Wの端面41,42の長さ方向に沿って(当該長さ方向に対して平行に)、偏光板積層体Wに対して切削工具10,11を相対移動させることにより、切削刃10a,11aを端面41,42に当接させて当該端面を削り取る切削加工を行う。
【0032】
図1及び
図2(a)に示される例では、切削工具10,11の位置を固定した状態で、図示しない移動手段を用いて、偏光板積層体Wをx方向に水平移動させることによって、上記の相対移動を行っている。このとき、切削工具10,11の回転方向は通常、偏光板積層体Wの移動方向と逆向きである。すなわち、
図2(a)を参照して、偏光板積層体Wの進行方向に対して、切削工具10は反時計回り、切削工具11は時計周りに回転される。これにより、各偏光板の端面を良好な仕上げ状態に切削加工することができる。
【0033】
図3に示されるように、上記の相対移動は、偏光板積層体Wの位置を固定した状態で、図示しない移動手段を用いて、切削工具10,11をx方向に水平移動させることによっても行うことができる。この場合、
図3に示されるように、切削工具10は反時計回り、切削工具11は時計周りに回転させながら、偏光板積層体Wの端面41,42に沿って切削工具10,11を左方向に移動させればよい。ただし、端面加工装置の駆動制御の観点から、切削工具10,11の位置を固定し、偏光板積層体Wをx方向に水平移動させながら切削加工を行う方法が好ましい。
【0034】
図1及び
図2(a)に示される例のように、1個の偏光板積層体Wに対して2個の切削工具10,11を用いて、偏光板積層体Wの向かい合う2つの端面41,42を同時に切削加工することは、加工効率の点で極めて有利である。ただし、1個の偏光板積層体Wに対して1個の切削工具を用いて切削加工を行うこともできる。
【0035】
上記の相対移動は通常、偏光板積層体Wの端面41,42の一端から他端まで行われ、これにより端面41,42の全面を切削加工することができる。当該一端から他端までの相対移動を1回とするとき、同じ端面について、上記の相対移動を複数回行う、すなわち、端面加工を複数回に分けて行うことは、(メタ)アクリル系樹脂フィルムと偏光フィルムとの剥離を抑制しつつ、表面状態の良好な端面加工仕上げを得るうえで、また、(メタ)アクリル系樹脂フィルムの剥離が生じにくい端面加工偏光板を得るうえで、好ましい方法である。
【0036】
切削される端面41,42の奥行き方向の切削深さ(削り取られる偏光板端面の厚み)は、図示しない移動手段によって、切削工具10,11のy方向における位置を調整することによって容易に制御できる。
【0037】
端面41,42の切削加工を終えた後、引き続き、端面43,44(先に端面43,44の端面加工を行った場合には端面41,42)の端面加工を行う。端面43,44の端面加工は、回転テーブル31及び押し具30により偏光板積層体Wを90度回転させた後、
図2(b)に示されるように、端面41,42の場合と同様にして、切削工具10,11をそれらの回転軸を中心に回転させつつ、偏光板積層体Wの端面43,44の長さ方向に沿って(当該長さ方向に対して平行に)、偏光板積層体Wに対して切削工具10,11を相対移動させることにより行うことができる。
【0038】
本発明において、偏光板積層体Wの端面41,42,43,44の切削加工は、次の条件:
(a)n枚の切削刃が偏光板積層体Wの端面に当接する回数(n枚の切削刃の合計回数であり、以下、「当接回数」ともいう。)が、当該端面の長さ方向の長さ100mmあたり200回以上1500回以下である、及び
(b)1回の相対移動により切削される端面の奥行き方向の切削深さ(以下、「1回の切削深さ」ともいう。)が、0.3mm以下である、
を満たすように行われる。
【0039】
条件(a)に関し、当接回数を200回以上とすることは、十分に表面状態の良好な端面仕上げを得るうえで必要である。また、当接回数を1500回以下とすることにより、上記条件(b)を満たすことを前提に、切削加工中における(メタ)アクリル系樹脂フィルムと偏光フィルムとの剥離を効果的に抑制することができる。また、端面の耐衝撃性の低下が抑制されていることによって(メタ)アクリル系樹脂フィルムの剥離が生じにくく、端面が良好な状態で仕上げられた端面加工偏光板を得ることができる。当接回数が1500回を上回る場合には、偏光板積層体Wと切削刃との間の摩擦熱により、偏光板積層体Wの端部に焼き付けが生じることもある。当接回数は、好ましくは700回以下である。当接回数は、偏光板積層体Wと切削工具10,11との間の相対移動速度、及び/又は、切削工具10,11の回転速度の調整によって制御することができる。
【0040】
条件(b)に関し、1回の切削深さを0.3mm以下、好ましくは0.28mm以下とすることにより、上記条件(a)を満たすことを前提に、切削加工中における(メタ)アクリル系樹脂フィルムと偏光フィルムとの剥離を効果的に抑制することができる。また、端面の耐衝撃性の低下が抑制されていることによって(メタ)アクリル系樹脂フィルムの剥離が生じにくく、端面が良好な状態で仕上げられた端面加工偏光板を得ることができる。相対移動が1回のみである場合、1回の切削深さは、好ましくは0.2mm以上である。1回の切削深さが0.2mm未満であると、相対移動が1回のみである場合、十分に表面状態の良好な端面仕上げを達成できないことがある。
【0041】
上述のように、偏光板積層体Wの同じ端面について、上記の相対移動を複数回行うことは好ましい実施形態である。この場合、複数回の相対移動により切削される端面の奥行き方向の総切削深さ(以下、「総切削深さ」ともいう。)は、0.2mm以上1.5mm以下とすることが好ましく、0.5mm以上1.2mm以下とすることがより好ましい。総切削深さが0.2mm未満であると、十分に表面状態の良好な端面仕上げを達成できないことがある。また、総切削深さが1.5mmを超える場合には、切削刃の劣化が著しくなるとともに、加工時間が長くなり加工効率が低下し得る。また、偏光板端面にかかる衝撃数が過度に増加して、偏光板の端部にクラック等の不具合を生じ得る。
【0042】
1回の切削深さは、切削工具10,11のy方向における位置の調整によって制御することができ、総切削深さは、1回の切削深さと相対移動回数によって制御することができる。
【0043】
上記の相対移動を複数回行う場合において、最後の相対移動により切削される端面の奥行き方向の切削深さ(以下、「仕上げ時の切削深さ」ともいう。)は、0.01mm以上0.1mm以下とすることが好ましく、0.02mm以上0.06mm以下とすることがより好ましい。0.01mm未満の精度で切削加工を行うことは一般的に難しい。仕上げ時の切削深さが0.1mmを上回ると、得られる端面加工偏光板において、端面の耐衝撃性の低下が有意に低下し得る。
【0044】
偏光板積層体Wと切削工具10,11との間の相対移動速度及び切削工具10,11の回転速度は、上記条件(a)を満たすように調整される。相対移動速度は、例えば200〜2000mm/分の範囲(より典型的には、500〜2000mm/分の範囲)から選択することができる。相対移動速度があまりに小さいと、当接回数が上記所定の上限を超える。また、偏光板積層体Wと切削刃との間の摩擦熱により、偏光板積層体Wの端部に焼き付けが生じることもある。一方、相対移動速度があまりに大きいと、当接回数が上記所定の下限を下回る。また、端面の仕上げが不十分となったり、偏光板の端部にクラック等の不具合が生じたりすることがある。
【0045】
切削工具10,11の回転速度は、例えば2000〜8000rpmの範囲(より典型的には、2500〜6000rpmの範囲)から選択することができる。回転速度があまりに小さいと、当接回数が上記所定の下限を下回る。また、端面の仕上げが不十分となったり、偏光板の端部にクラック等の不具合が生じたりすることがある。一方、回転速度があまりに大きいと、当接回数が上記所定の上限を超える。また、偏光板積層体Wと切削刃との間の摩擦熱により、偏光板積層体Wの端部に焼き付けが生じることもある。
【0046】
<偏光板>
次に、偏光板積層体Wを構成する偏光板について説明する。本発明で用いる偏光板は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムとその上に接着剤を介して積層される(メタ)アクリル系樹脂フィルムとを少なくとも備えるものである。
【0047】
〔偏光フィルム〕
偏光フィルムとしては、特に限定されるものではないが、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程;ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、二色性色素を吸着させる工程;二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程;及び、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程、を経て製造されるものを用いることができる。
【0048】
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体の例は、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類及びアンモニウム基を有するアクリルアミド類等を含む。
【0049】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は通常、85〜100mol%程度であり、98mol%以上が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール及びポリビニルアセタール等を用いることもできる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は通常、1000〜10000程度であり、1500〜5000程度が好ましい。
【0050】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法が採用される。ポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚は、例えば10〜150μm程度である。
【0051】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素の染色前、染色と同時、又は染色の後に行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前又はホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行ってもよい。
【0052】
一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤を用い、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は通常、3〜8倍程度である。
【0053】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色する方法としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素が含有された水溶液に浸漬する方法が採用される。二色性色素として、具体的には、ヨウ素や二色性染料が用いられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
【0054】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は通常、水100重量部あたり0.01〜1重量部程度である。また、ヨウ化カリウムの含有量は通常、水100重量部あたり0.5〜20重量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は通常、20〜40℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は通常、20〜1800秒程度である。
【0055】
一方、二色性色素として二色性染料を用いる場合は、通常、水溶性二色性染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性染料の含有量は通常、水100重量部あたり1×10
-4〜10重量部程度であり、1×10
-3〜1重量部程度が好ましい。この水溶液は、硫酸ナトリウム等の無機塩を染色助剤として含有していてもよい。染色に用いる二色性染料水溶液の温度は通常、20〜80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は通常、10〜1800秒程度である。
【0056】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は通常、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬することにより行うことができる。
【0057】
ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の量は通常、水100重量部あたり、2〜15重量部程度であり、5〜12重量部が好ましい。二色性色素としてヨウ素を用いる場合には、このホウ酸含有水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの量は通常、水100重量部あたり、0.1〜15重量部程度であり、5〜12重量部程度が好ましい。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は通常、60〜1200秒程度であり、150〜600秒程度が好ましく、200〜400秒程度がより好ましい。ホウ酸含有水溶液の温度は通常、50℃以上であり、50〜85℃が好ましく、60〜80℃がより好ましい。
【0058】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行うことができる。水洗処理における水の温度は通常、5〜40℃程度である。また、浸漬時間は通常、1〜120秒程度である。
【0059】
水洗後は乾燥処理が施されて、偏光フィルムが得られる。偏光フィルムの厚みは通常、5〜40μm程度である。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は通常、30〜100℃程度であり、50〜80℃が好ましい。乾燥処理の時間は通常、60〜600秒程度であり、120〜600秒が好ましい。
【0060】
乾燥処理によって、偏光フィルムの水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は通常、5〜20重量%であり、8〜15重量%が好ましい。水分率が5重量%を下回ると、偏光フィルムの可撓性が失われ、偏光フィルムがその乾燥後に損傷したり、破断したりする場合がある。また、水分率が20重量%を上回ると、偏光フィルムの熱安定性に劣る場合がある。
【0061】
〔(メタ)アクリル系樹脂フィルム〕
(メタ)アクリル系樹脂フィルムを構成する(メタ)アクリル系樹脂とは、メタクリル系樹脂及び必要に応じて添加される添加剤等を混合し、溶融混練して得られる材料のことを意味する。かかる(メタ)アクリル系樹脂フィルムを保護フィルムとして用いることにより、偏光板及びこれを液晶セルに貼合して得られる液晶パネルの耐湿熱性及び機械的強度をより向上させることができるとともに、液晶パネルのさらなる薄肉化を達成することが可能となる。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとはメタクリル及び/又はアクリルをいい、(メタ)アクリレートとはメタクリレート及び/又はアクリレートをいい、(メタ)アクリル酸とはメタクリル酸及び/又はアクリル酸をいう。
【0062】
上記メタクリル系樹脂とは、メタクリル酸エステルを主体とする重合体である。メタクリル系樹脂は、1種類のメタクリル酸エステルの単独重合体であってもよいし、メタクリル酸エステルと他の重合性モノマーとの共重合体であってもよい。他の重合性モノマーとしては、主体とは異なる他のメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル等が挙げられる。メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキルが挙げられ、そのアルキル基の炭素数は通常1〜4程度である。
【0063】
アクリル酸エステルとしては、アクリル酸アルキルが好ましく、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられ、そのアルキル基の炭素数は通常1〜8程度であり、好ましくは1〜4である。このアルキル基は、例えば2−ヒドロキシエチル基のように、それを構成する少なくとも1つの水素がヒドロキシル基で置換されていてもよい。(メタ)アクリル系樹脂において、アクリル酸エステルは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
これらの他、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも1個有する化合物もメタクリル酸エステルと共重合可能な他の重合性モノマーとなることができる。このような化合物としては、例えば、分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を1個有する単官能モノマーや、分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有する多官能モノマーを挙げることができるが、単官能モノマーが好ましく用いられる。単官能モノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ハロゲン化スチレン、ヒドロキシスチレンのような芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルのようなビニルシアン化合物;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸のような不飽和酸;N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドのようなマレイミド;メタリルアルコール、アリルアルコールのようなアリルアルコール;酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン、メチルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0065】
また、多官能モノマーの例としては、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートのような多価アルコールのポリ不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルのような不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートのような多塩基酸のポリアルケニルエステル、ジビニルベンゼンのような芳香族ポリアルケニル化合物等が挙げられる。
【0066】
以上に説明した他の重合性モノマーは、1種のみを単独で共重合させてもよいし、2種以上を併用して共重合させてもよい。
【0067】
(メタ)アクリル系樹脂は、重合に使用する全モノマー量を基準に、好ましくはメタクリル酸アルキルエステルが50〜100重量%、他の重合性モノマーが0〜50重量%であり、より好ましくはメタクリル酸アルキルエステル50〜99.9重量%、他の重合性モノマーが0.1〜50重量%である。
【0068】
また(メタ)アクリル系樹脂は、フィルムの耐久性を高め得ることから、高分子主鎖に環構造を有していてもよい。環構造は、環状酸無水物構造、環状イミド構造及びラクトン環構造等の複素環構造であることが好ましい。具体的には、無水グルタル酸構造及び無水コハク酸構造等の環状酸無水物構造、グルタルイミド構造及びコハク酸イミド構造等の環状イミド構造、ブチロラクトン及びバレロラクトン等のラクトン環構造が挙げられる。高分子主鎖における環構造の含有量を高くすると、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度を高くすることができる。
【0069】
(メタ)アクリル系樹脂の高分子主鎖への環状酸無水物構造及び環状イミド構造の導入は、無水マレイン酸やマレイミド等の環状構造を有するモノマーを共重合させる方法、重合後脱水・脱メタノール縮合反応により環状酸無水物構造を導入する方法、環状構造にアミノ化合物を反応させて環状イミド構造を導入する方法等、公知の方法によって行うことができる。
【0070】
また、(メタ)アクリル系樹脂の高分子主鎖へのラクトン環構造の導入は、高分子鎖にヒドロキシル基とエステル基とを有する(メタ)アクリル系樹脂を調製した後、この樹脂におけるヒドロキシル基とエステル基とを、加熱により、必要に応じて有機リン化合物のような触媒の存在下に環化縮合させる方法によって行うことができる。高分子鎖にヒドロキシル基とエステル基とを有する(メタ)アクリル系樹脂の調製は、例えば、2−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリル酸n−ブチル、2−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリル酸tert−ブチルのようなヒドロキシル基とエステル基とを有する(メタ)アクリル酸エステルを(メタ)アクリル系樹脂の共重合に使用することにより得ることができる。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂のより具体的な調製方法は、例えば特開2007−254726号公報に記載されている。
【0071】
以上に説明したメタクリル酸エステル、又は主体となるメタクリル酸エステルと他の重合性モノマーとを含む単量体組成物をラジカル重合させることにより、(メタ)アクリル系樹脂を調製することができる。(メタ)アクリル系樹脂の調製に際し、必要に応じて溶剤や重合開始剤を使用してもよい。
【0072】
(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、上記した(メタ)アクリル系樹脂に加え、それ以外の他の樹脂を含んでいてもよい。当該他の樹脂の含有率は、樹脂の総量を基準に、好ましくは0〜50重量%、より好ましくは0〜25重量%、さらに好ましくは0〜10重量%である。当該他の樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)のようなオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂のような含ハロゲン系ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体のようなスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートのようなポリエステル;芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸からなるポリアリレート;ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートのような生分解性ポリエステル;ポリカーボネート;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610のようなポリアミド;ポリアセタール;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルニトリル;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド等であることができる。
【0073】
(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、フィルムの耐衝撃性や製膜性の点で、アクリルゴム粒子を含有することが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂に含まれ得るアクリルゴム粒子の量は、(メタ)アクリル系樹脂100重量%に対して、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上である。アクリルゴム粒子の量の上限は臨界的ではないが、アクリルゴム粒子の量があまり多いと、フィルムの表面硬度が低下し、またフィルムに表面処理を施す場合、表面処理剤中の有機溶剤に対する耐溶剤性が低下する。従って、(メタ)アクリル系樹脂に含まれ得るアクリルゴム粒子の量は、80重量%以下であることが好ましく、より好ましくは60重量%以下である。
【0074】
上記アクリルゴム粒子は、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を必須成分とする粒子であり、実質的にこの弾性重合体のみからなる単層構造のものであってもよいし、この弾性重合体を1つの層とする多層構造のものであってもよい。この弾性重合体として、具体的には、アクリル酸アルキル50〜99.9重量%と、これと共重合可能な他のビニル系単量体を少なくとも1種類0〜49.9重量%と、共重合性の架橋性単量体0.1〜10重量%とからなる単量体の重合により得られる架橋弾性共重合体が好ましく用いられる。
【0075】
上記アクリル酸アルキルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル等が挙げられ、そのアルキル基の炭素数は通常1〜8程度である。また、上記アクリル酸アルキルと共重合可能な他のビニル系単量体としては、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を1個有する化合物を挙げることができ、より具体的には、メタクリル酸メチルのようなメタクリル酸エステル、スチレンのような芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物等が挙げられる。また、上記共重合性の架橋性単量体としては、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有する架橋性の化合物を挙げることができ、より具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートやブタンジオールジ(メタ)アクリレートのような多価アルコールの(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリルや(メタ)アクリル酸メタリルのような(メタ)アクリル酸のアルケニルエステル、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0076】
(メタ)アクリル系樹脂フィルムには、上記アクリルゴム粒子以外に、通常の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、有機系染料、顔料、無機系色素、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤等を含有させてもよい。中でも紫外線吸収剤は、耐候性を高めるうえで好ましく用いられる。紫外線吸収剤の例としては、2,2’−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールのようなベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−クロロベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンのような2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤;p−tert−ブチルフェニルサリチル酸エステル、p−オクチルフェニルサリチル酸エステルのようなサリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。(メタ)アクリル系樹脂フィルムに紫外線吸収剤が含まれる場合、その量は、(メタ)アクリル系樹脂100重量%に対して、通常0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上であり、また好ましくは2重量%以下である。
【0077】
(メタ)アクリル系樹脂フィルムの作製には従来公知の製膜方法を採用することができる。(メタ)アクリル系樹脂フィルムは多層構造を有していてもよく、多層構造の(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、フィードブロックを用いる方法、マルチマニホールドダイを用いる方法等、一般に知られる種々の方法を用いることができる。中でも、例えばフィードブロックを介して積層し、Tダイから多層溶融押出成形し、得られる積層フィルム状物の少なくとも片面をロール又はベルトに接触させて製膜する方法は、表面性状の良好なフィルムが得られる点で好ましい。とりわけ、(メタ)アクリル系樹脂フィルムの表面平滑性及び表面光沢性を向上させる観点からは、上記多層溶融押出成形して得られる積層フィルム状物の両面をロール表面又はベルト表面に接触させてフィルム化する方法が好ましい。この際に用いるロール又はベルトにおいて、(メタ)アクリル系樹脂と接するロール表面又はベルト表面は、(メタ)アクリル系樹脂フィルム表面への平滑性付与のために、その表面が鏡面となっているものが好ましい。
【0078】
(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、所望の光学特性や機械特性を有するフィルムを得るため、以上のようにして作製されたフィルムに対して延伸処理を施したものであってもよい。延伸処理としては、一軸延伸や二軸延伸等が挙げられる。延伸方向としては、未延伸フィルムの機械流れ方向(MD)、これに直交する方向(TD)、機械流れ方向(MD)に斜交する方向等が挙げられる。二軸延伸は、2つの延伸方向に同時に延伸する同時二軸延伸でもよく、所定方向に延伸した後で他の方向に延伸する逐次二軸延伸であってもよい。
【0079】
延伸処理は、例えば出口側の周速を大きくした2対以上のニップロールを用いて、長手方向(機械流れ方向:MD)に延伸したり、未延伸フィルムの両側端をチャックで把持して機械流れ方向に直交する方向(TD)に広げたりすることで行うことができる。
【0080】
延伸処理は、下記式:
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
より求められる延伸倍率が、0%より大きく300%以下であることが好ましく、100〜250%であることがより好ましい。延伸倍率が300%を上回ると、膜厚が薄くなりすぎて破断しやすくなったり、取扱性が低下したりする。
【0081】
また、所望の光学特性や機械特性を付与するために、延伸処理に代えて、又はこれとともに、熱収縮性フィルムを(メタ)アクリル系樹脂フィルムに貼合し、フィルムを収縮させる処理を行ってもよい。
【0082】
(メタ)アクリル系樹脂フィルムの厚みは、薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し加工性に劣るものとなり、一方で厚すぎると透明性が低下したり、偏光板の重量が大きくなったりする。そこで、そのフィルムの適当な厚みは、例えば5〜200μm程度であり、好ましくは10〜150μm、より好ましくは20〜100μmである。
【0083】
〔透明樹脂フィルム〕
偏光板は、偏光フィルムにおける(メタ)アクリル系樹脂フィルムとは反対側の面に接着剤を介して積層される透明樹脂フィルムを有することができる。透明樹脂フィルムは、保護フィルム又は他の光学フィルムであり得るが、これが液晶セル側に配置される場合は、液晶表示モード(TNモード、VAモード、IPSモード等)にもよるが、無配向フィルム又は位相差特性を示す光学補償フィルム(位相差フィルム)であることが好ましい。透明樹脂フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂フィルムであってもよいし、(メタ)アクリル系樹脂フィルムとは異なる透明樹脂フィルムであってもよい。
【0084】
透明樹脂フィルムは、上記した(メタ)アクリル系樹脂フィルムの他に、例えば環状オレフィン系樹脂フィルム、セルロース系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、鎖状ポリオレフィン系樹脂フィルム(ポリエチレン系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルム等)、ポリエステル系樹脂フィルム(ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム等)等であることができる。
【0085】
環状オレフィン系樹脂フィルムは、環状オレフィン系樹脂からなるフィルムである。環状オレフィン系樹脂とは、例えば、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーのような、環状オレフィンからなるモノマーのユニットを有する熱可塑性樹脂である。環状オレフィン系樹脂は、上記環状オレフィンの開環重合体や2種以上の環状オレフィンを用いた開環共重合体の水素添加物であることができる他、環状オレフィンと鎖状オレフィンやビニル基を有する芳香族化合物との付加共重合体であってもよい。また、極性基が導入されているものも有効である。
【0086】
環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと鎖状オレフィンやビニル基を有する芳香族化合物との共重合体である場合、鎖状オレフィンの例としては、エチレンやプロピレン等が挙げられ、ビニル基を有する芳香族化合物の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、核アルキル置換スチレン等が挙げられる。このような共重合体において、環状オレフィンからなるモノマーのユニットは50モル%以下、例えば15〜50モル%程度であってもよい。特に、環状オレフィンと鎖状オレフィンとビニル基を有する芳香族化合物との三元共重合体とする場合、環状オレフィンからなるモノマーのユニットは、このように比較的少ない量であることができる。かかる三元共重合体において、鎖状オレフィンからなるモノマーのユニットは、通常5〜80モル%程度、ビニル基を有する芳香族化合物からなるモノマーのユニットは、通常5〜80モル%程度である。
【0087】
市販の熱可塑性環状オレフィン系樹脂として、「Topas」(TOPAS ADVANCED POLYMERS GmbH社製、ポリプラスチックス(株)から入手できる)、「アートン」(JSR(株)製)、「ゼオノア(ZEONOR)」(日本ゼオン(株))、「ゼオネックス(ZEONEX)」(日本ゼオン(株)製)、「アペル」(三井化学(株)製)等(いずれも商品名)がある。
【0088】
環状オレフィン系樹脂フィルムは、延伸することで任意の位相差値を付与することができる。これにより、適切な光学補償機能が付与され、液晶表示装置の視野角拡大に寄与することができる。延伸された環状オレフィン系樹脂フィルムの面内位相差値R
0は、40〜100nmであることが好ましく、40〜80nmであることがより好ましい。面内位相差値R
0が40nm未満又は100nmを超えると、液晶パネルに対する視野角補償能が低下する傾向にある。また、延伸された環状オレフィン系樹脂フィルムの厚み方向位相差値R
thは、80〜300nmであることが好ましく、100〜250nmであることがより好ましい。厚み方向位相差値R
thが80nm未満又は300nmを超えると、上記と同様に液晶パネルに対する視野角補償能が低下する傾向にある。
【0089】
延伸された環状オレフィン系樹脂フィルムの面内位相差値R
0及び厚み方向位相差値R
thは、それぞれ下記式(1)及び(2):
R
0=(n
x−n
y)×d (1)
R
th=[(n
x+n
y)/2−n
z]×d (2)
で表され、例えばKOBRA21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて測定することができる。上記式(1)、(2)において、n
xは延伸された環状オレフィン系樹脂フィルムの面内遅相軸方向の屈折率、n
yは面内進相軸方向(面内遅相軸方向と直交する方向)の屈折率、n
zは延伸された環状オレフィン系樹脂フィルムの厚み方向の屈折率、dは延伸された環状オレフィン系樹脂フィルムの厚みである。
【0090】
環状オレフィン系樹脂フィルムの延伸は通常、フィルムロールを巻き出しながら連続的に行われ、加熱炉にて、ロールの進行方向あるいは進行方向と垂直の方向へ延伸される。加熱炉の温度は、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度近傍からガラス転移温度よりも100℃程度高い範囲が、通常採用される。延伸の倍率は、通常1.1〜6倍、好ましくは1.1〜3.5倍である。製膜、延伸された環状オレフィン系樹脂フィルムも市販されており、いずれも商品名で、「エスシーナ」(積水化学工業(株)製)、「SCA40」(積水化学工業(株)製)、「ゼオノアフィルム」(日本ゼオン(株)製)等がある。
【0091】
環状オレフィン系樹脂フィルムは、一般に表面活性が劣るため、偏光フィルムと接着される表面には、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理のような表面処理を行うのが好ましい。中でも、比較的容易に実施可能なプラズマ処理やコロナ処理が好適である。
【0092】
環状オレフィン系樹脂フィルムの厚みは、薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し加工性に劣るものとなり、一方で厚すぎると透明性が低下したり、偏光板の重量が大きくなったりする。そこで、そのフィルムの適当な厚みは、例えば5〜200μm程度であり、好ましくは10〜150μm、より好ましくは20〜100μmである。
【0093】
セルロース系樹脂フィルムは通常、セルロースの部分又は完全酢酸エステル化物であるセルロース系樹脂からなるものであり、例えばトリアセチルセルロースフィルムやジアセチルセルロースフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム等が挙げられる。トリアセチルセルロースフィルムの市販品には、いずれも商品名で、「フジタックTD80」(富士フイルム(株)製)、「フジタックTD80UF」(富士フイルム(株)製)、「フジタックTD80UZ」(富士フイルム(株)製)、「フジタックTD40UZ」(富士フイルム(株)製)、「KC8UX2M」(コニカミノルタオプト(株)製)、「KC4UY」(コニカミノルタオプト(株)製)、「KC8UY」(コニカミノルタオプト(株)製)等がある。
【0094】
セルロース系樹脂フィルムの表面には、用途に応じて、防眩処理、ハードコート処理、帯電防止処理、反射防止処理のような表面処理が施されてもよい。セルロース系樹脂フィルムにも、延伸することで任意の位相差値を付与することができる。
【0095】
セルロース系樹脂フィルムは、偏光フィルムとの接着性を高めるため、通常はケン化処理が施される。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に浸漬する方法が採用できる。
【0096】
セルロース系樹脂フィルムの厚みは、薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し加工性に劣るものとなり、一方で厚すぎると透明性が低下したり、偏光板の重量が大きくなったりする。そこで、そのフィルムの適当な厚みは、例えば5〜200μm程度であり、好ましくは10〜150μm、より好ましくは20〜100μmである。
【0097】
〔接着剤〕
上記の(メタ)アクリル系樹脂フィルムや透明樹脂フィルムは、接着剤を介して偏光フィルムに貼合される。偏光フィルムと(メタ)アクリル系樹脂フィルムとの接着に用いる接着剤、及び偏光フィルムと透明樹脂フィルムとの接着に用いる接着剤は、異種であってもよいし、同種であってもよい。施工の容易性等を考慮すると、両面とも同じ接着剤を用いるのが有利である。
【0098】
接着剤としては、接着剤層を薄くする観点からは、水系のもの、すなわち、接着剤成分を水に溶解したもの又は水に分散させたものが挙げられる。例えば、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂又はウレタン樹脂を用いた組成物が好ましい接着剤として挙げられる。
【0099】
接着剤の主成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、当該ポリビニルアルコール系樹脂は、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコールの他、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコールのような変性されたポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。この場合、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液が接着剤として用いられる。接着剤中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、水100重量部に対して、通常1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部である。
【0100】
ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる接着剤には、接着性を向上させるために、グリオキザール、水溶性エポキシ樹脂等の硬化性成分や架橋剤を添加することが好ましい。水溶性エポキシ樹脂としては、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンのようなポリアルキレンポリアミンと、アジピン酸のようなジカルボン酸との反応で得られるポリアミドアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られるポリアミドポリアミンエポキシ樹脂を好適に用いることができる。かかるポリアミドポリアミンエポキシ樹脂の市販品としては、「スミレーズレジン650」(住化ケムテックス(株)製)、「スミレーズレジン675」(住化ケムテックス(株)製)、「WS−525」(日本PMC(株)製)等が挙げられる。これら硬化性成分や架橋剤の添加量(硬化性成分及び架橋剤として共に添加する場合にはその合計量)は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部である。上記硬化性成分や架橋剤の添加量がポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して1重量部未満である場合には、接着性向上の効果が小さくなる傾向にあり、また、上記硬化性成分や架橋剤の添加量がポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して100重量部を超える場合には、接着剤層が脆くなる傾向にある。
【0101】
また接着剤の主成分としてウレタン樹脂を用いる場合、適当な接着剤組成物の例として、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物を挙げることができる。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とは、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。かかるアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系の接着剤として好適である。
【0102】
ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂それ自体は公知であり、例えば特開平7−97504号公報には、フェノール系樹脂を水性媒体中に分散させるための高分子分散剤の例として記載されており、また特開2005−70140号公報、特開2005−208456号公報には、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物を接着剤として、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムに環状オレフィン系樹脂フィルムを接合する形態が示されている。
【0103】
偏光フィルムに、上述した(メタ)アクリル系樹脂フィルムや透明樹脂フィルムを貼合する方法としては、通常一般に知られているものでよく、例えば流延法、マイヤーバーコート法、グラビアコート法、カンマコーター法、ドクターブレード法、ダイコート法、ディップコート法、噴霧法等によって偏光フィルム及び/又はそこに貼合されるフィルムの接着面に接着剤を塗布し、両者を重ね合わせる方法が挙げられる。流延法とは、被塗布物であるフィルムを、概ね垂直方向、概ね水平方向、又は両者の間の斜め方向に移動させながら、その表面に接着剤を流下して拡布させる方法である。
【0104】
上述した方法にて接着剤を塗布した後、偏光フィルムとそれに貼合されるフィルムをニップロール等により挟んで貼り合わせる。また、偏光フィルムとそれに貼合されるフィルムとの間に接着剤を滴下した後、この積層体をロール等で加圧して均一に押し広げる方法も好適に使用することができる。この場合、ロールの材質としては金属やゴム等を用いることが可能である。さらに、偏光フィルムとそれに貼合されるフィルムとの間に接着剤を滴下した後、この積層体をロールとロールとの間に通し、加圧して押し広げる方法も好ましく採用される。この場合、これらロールは同じ材質であってもよく、異なる材質であってもよい。
【0105】
偏光フィルムに対して(メタ)アクリル系樹脂フィルム及び透明樹脂フィルムを積層させる順序は、特に限定されるものではなく、いずれか一方のフィルムを偏光フィルムに積層させた後に他方のフィルムを積層させる方法を採用してもよいし、両フィルムを実質的に同時に偏光フィルムに積層させる方法を採用してもよい。
【0106】
また、接着剤層の表面には、接着性を向上させるために、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理のような表面処理を適宜施してもよい。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に浸漬する方法が挙げられる。
【0107】
上記水系接着剤を介して接合された積層体は通常、乾燥処理が施され、接着剤層の乾燥、硬化が行われる。乾燥処理は、例えば熱風を吹き付けることにより行うことができる。乾燥温度は、40〜100℃程度、好ましくは60〜100℃の範囲から適宜選択される。乾燥時間は、例えば20〜1200秒程度である。乾燥後の接着剤層の厚みは、通常0.001〜5μm程度であり、好ましくは0.01μm以上、また好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。接着剤層の厚みが大きくなりすぎると、偏光板の外観不良となりやすい。
【0108】
乾燥処理の後、室温以上の温度で少なくとも半日、通常は数日間以上の養生を施して十分な接着強度を得てもよい。かかる養生は、典型的には、ロール状に巻き取られた状態で行われる。好ましい養生温度は、30〜50℃の範囲であり、さらに好ましくは35〜45℃である。養生温度が50℃を超えると、ロール巻き状態において、いわゆる「巻き締まり」が起こりやすくなる。なお、養生時の湿度は、特に限定されないが、相対湿度が0〜70%RH程度の範囲となるように選択されることが好ましい。養生時間は、通常1〜10日程度、好ましくは2〜7日程度である。
【0109】
また接着剤としては、活性エネルギー線硬化性接着剤を用いることもできる。活性エネルギー線硬化性接着剤の硬化に用いられる活性エネルギー線は、例えば、X線、紫外線、可視光線である。中でも、取扱いの容易さ、接着剤組成物の調製の容易さ及びその安定性、並びに、その硬化性能の観点から、紫外線が好ましく用いられる。活性エネルギー線硬化性接着剤を用いると、上記の水系接着剤を用いた場合に比べ、乾燥処理を行う必要がないので工程が短くエネルギー効率が高くなる。乾燥時間は、(メタ)アクリル系樹脂フィルムを用いた場合、長くなる傾向にあるので、(メタ)アクリル系樹脂フィルムを含む本発明の偏光板において接着剤層に活性エネルギー線硬化性接着剤を採用することは特に有効である。
【0110】
光硬化性接着剤としては、例えば光硬化性エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤等との混合物(すなわち、エポキシ系の光硬化性接着剤)、光硬化性(メタ)アクリル系樹脂と光ラジカル重合開始剤等との混合物(すなわち、(メタ)アクリル系の光硬化性接着剤)等が挙げられる。これらの光硬化性接着剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。光硬化性接着剤は、活性エネルギー線を照射することによって硬化させることができる。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する活性エネルギー線(紫外線)が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が好ましい。
【0111】
光硬化性接着剤への光照射強度は、該光硬化性接着剤の組成によって適宜決定され、特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜6000mW/cm
2であることが好ましい。該照射強度が0.1mW/cm
2以上であることで、反応時間が長くなりすぎず、6000mW/cm
2以下であることで、光源から輻射される熱及び光硬化性接着剤の硬化時の発熱によるエポキシ樹脂の黄変や偏光フィルムの劣化を生じるおそれが少ない。光硬化性接着剤への光照射時間は、硬化させる光硬化性接着剤ごとに制御されるものであって特に制限されないが、上記照射強度と照射時間との積として表される積算光量が10〜10000mJ/m
2となるように設定されることが好ましい。光硬化性接着剤への積算光量が10mJ/m
2以上であることで、重合開始剤由来の活性種を十分量発生させて硬化反応をより確実に進行させることができ、また、10000mJ/m
2以下であることで、照射時間が長くなりすぎず、良好な生産性を維持できる。なお、活性エネルギー線照射後の接着剤層の厚みは、通常0.001〜5μm程度であり、好ましくは0.01μm以上2μm以下であり、さらに好ましくは0.01μm以上1μm以下である。
【0112】
活性エネルギー線の照射によって光硬化性接着剤を硬化させる場合、上記偏光フィルムの偏光度、透過率及び色相、並びに(メタ)アクリル系樹脂フィルム及び透明樹脂フィルムの透明性等の偏光板の諸機能が低下しない条件で硬化を行うことが好ましい。
【0113】
〔粘着剤層〕
偏光板は、透明樹脂フィルムの外側(すなわち偏光フィルム側とは反対側の表面)に、当該偏光板を液晶セルに貼合するための粘着剤層を備えることができる。粘着剤層に用いられる粘着剤としては、従来公知の適宜の粘着剤を特に制限なく用いることができ、例えばアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。中でも、透明性、粘着力、信頼性、リワーク性等の観点から、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。粘着剤層は、粘着剤を、例えば有機溶剤溶液の形態で用い、それを透明樹脂フィルム上にダイコーターやグラビアコーター等によって塗布し、乾燥させる方法によって設けることができる他、離型処理が施されたプラスチックフィルム(セパレートフィルムと呼ばれる。)上に形成されたシート状粘着剤を透明樹脂フィルムに転写する方法によっても設けることができる。いずれの方法をとっても、粘着剤層の表面にセパレートフィルムが貼着されていることが好ましい。粘着剤層の厚みについても特に制限はないが、一般に2〜40μmの範囲内であることが好ましい。
【0114】
セパレートフィルムの構成材料は、ポリエチレンのようなポリエチレン系樹脂、ポリプロピレンのようなポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂等であることができる。中でも、ポリエチレンテレフタレートの延伸フィルムが好ましい。
【0115】
セパレートフィルムに付与される離型処理層は、離形性を有するものであれば特に限定されるものではなく、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよいが、それらの中でも、硬化型シリコーン樹脂を主成分としたタイプが好ましい。
【0116】
〔表面保護フィルム〕
偏光板は、(メタ)アクリル系樹脂フィルムの外面に積層される表面保護フィルム(プロテクトフィルムと呼ばれる。)を備えることができる。この表面保護フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂フィルムの損傷やほこりの付着を防ぐためのものであり、通常、粘着剤層を介して(メタ)アクリル系樹脂フィルム上に積層される。
【0117】
表面保護フィルムの構成材料としては、ポリエチレンのようなポリエチレン系樹脂、ポリプロピレンのようなポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂等が挙げられるが、その中でも、透湿性や機械的強度の観点からポリエチレンテレフタレートの延伸フィルムが好ましい。
【0118】
表面保護フィルムを貼着するための粘着剤層についての具体的な説明は、前述した粘着剤層についての記載が引用される。表面保護フィルムに付与される離型処理層についての具体的な説明についても、前述したセパレートフィルムに付与される離型処理層についての記載が引用される。
【実施例】
【0119】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0120】
<製造例:端面加工用偏光板の作製>
次の手順で(メタ)アクリル系樹脂フィルムを備える端面加工用偏光板を作製した。平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬した。引き続き、8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを得た。延伸は、主に、ヨウ素染色及びホウ酸処理の工程で行い、トータル延伸倍率は5.3倍であった。
【0121】
得られた偏光フィルムの一方の面に、厚み80μmの(メタ)アクリル系樹脂フィルム(樹脂組成物全体に対してアクリル型ゴム粒子を30重量%添加したアクリル樹脂フィルム)を、他方の面に、厚み50μmの環状オレフィン系樹脂からなる光学補償フィルムを、それぞれその貼合面にコロナ処理を施した後、光硬化型接着剤(エポキシ系の光硬化性接着剤)を介して接着して、偏光板を得た。
【0122】
次いで、得られた偏光板の(メタ)アクリル系樹脂フィルムの外面に、アクリル系粘着剤層を有する表面保護フィルム(延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)を、また、環状オレフィン系樹脂からなる光学補償フィルムの外面には、厚み20μmのアクリル系粘着剤層を設け、さらに、その粘着剤層の外面に離型処理が施されたセパレートフィルム(延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)を貼り合わせた。その後、1031mm×588mmのサイズに裁断して端面加工用偏光板を得た。
【0123】
<実施例1>
上記製造例で得られた400枚の端面加工用偏光板を4辺を揃えて積層して、偏光板積層体Wを得た。次に、
図1に示される端面加工装置を用い、偏光板積層体Wを端面加工装置に固定した後、
図2(a)、次いで(b)に示す端面加工方法にて4つの端面41,42,43,44のすべてについて切削加工を行った。4つの端面41,42,43,44の加工条件はすべて同じとした。
【0124】
具体的には、切削工具10,11をそれらの回転軸を中心に回転させつつ、切削工具10,11の位置を固定した状態で偏光板積層体Wをx方向に水平移動させることによって、偏光板積層体Wの端面41,42の長さ方向に対して平行に、偏光板積層体Wに対して切削工具10,11を相対移動させ、切削刃10a,11aを端面41,42に当接させて当該端面を削り取る切削加工を行った。偏光板積層体Wの移動方向及び切削工具10,11の回転方向は、
図2(a)のとおりとした。上記相対移動は、各端面の一端から他端まで行い、当該相対移動(切削加工)を同じ端面について合計5回繰り返した。
【0125】
次いで、回転テーブル31及び押し具30により偏光板積層体Wを90度回転させた後、端面41,42の場合と同様にして、切削工具10,11をそれらの回転軸を中心に回転させつつ、切削工具10,11の位置を固定した状態で偏光板積層体Wをx方向に水平移動させることによって、偏光板積層体Wの端面43,44の長さ方向に対して平行に、偏光板積層体Wに対して切削工具10,11を相対移動させ、切削刃10a,11aを端面43,44に当接させて当該端面を削り取る切削加工を行った。偏光板積層体Wの移動方向及び切削工具10,11の回転方向は、
図2(b)のとおりとした。上記相対移動は、各端面の一端から他端まで行い、当該相対移動(切削加工)を同じ端面について合計5回繰り返した。
【0126】
端面加工装置の構成及び端面加工の各種条件は次のとおりである。
・切削工具10,11:側面に1枚の切削刃を有する円柱状回転体、
・切削工具10,11の回転軸と切削刃の延在方向とがなす角度:0度、
・切削工具10,11の回転軸と偏光板の積層方向zとがなす角度α:0度、
・切削工具10,11の回転速度:下記表1のとおり(5000rpm)、
・相対移動の回数:各端面について5回、
・偏光板積層体Wと切削工具10,11との間の相対移動速度:下記表1のとおり(500mm/分)、
・上で定義される当接回数:1000回、
・上で定義される1回の切削深さ:下記表1のとおり、
・上で定義される総切削深さ:下記表1のとおり(1.00mm)、
・上で定義される仕上げ時の切削深さ:下記表1のとおり(0.04mm)。
【0127】
いずれの切削加工中においても、各偏光板の端部に(メタ)アクリル系樹脂フィルムの剥離は認められず、また、良好な仕上げ状態で、各偏光板の端面をまとめて加工することができた。
【0128】
<比較例1>
相対移動の回数、1回の切削深さ及び仕上げ時の切削深さを表1のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして端面41,42,43,44のすべてについて切削加工を行った。いずれの切削加工中においても、各偏光板の端部に(メタ)アクリル系樹脂フィルムの剥離は認められず、また、良好な仕上げ状態で、各偏光板の端面をまとめて加工することができた。
【0129】
(端面加工偏光板の耐衝撃性の評価)
実施例1で得られた端面加工偏光板について、偏光板端部において(メタ)アクリル系樹脂フィルムの剥離が生じない最大の衝撃エネルギー(以下、「最大衝撃エネルギー」という。)を測定し、端面加工偏光板端部の耐衝撃性を評価した。結果を表1に示す。具体的な測定手順は次のとおりである。
【0130】
端面加工偏光板を25mm(MD)×50mm(TD)のサイズにカットし、測定サンプルとした。この測定サンプルを、断面衝撃試験機(ステフネステスター)〔熊谷理機工業(株)社製「No.2049−M」〕の試験台に固定した後、重りを付けた振子を、振子の最下点に位置する測定サンプルのMDの端面に落下させて当該端面に衝撃を加え、当該端面を光学顕微鏡で観察して、(メタ)アクリル系樹脂フィルムと偏光フィルムとの間の剥離の有無を確認した。同じ衝撃量での試験を5回繰り返し、そのうち2回剥離が生じた場合を「剥離有り」とした。そして、振子による衝撃量を種々変更して同様の試験を行い、上記の最大衝撃エネルギー(mJ)を求めた。振子による衝撃量は、振子に付ける重りの重量、振子の回転軸から重りまでの距離、振子の落下開始位置の調整によって変化させた。用いた断面衝撃試験機が測定できる衝撃エネルギーの上限は19.4mJである。
【0131】
比較例1で得られた端面加工偏光板は、実施例1に比べて極めて小さい最大衝撃エネルギーを示した。
【0132】
【表1】
【0133】
<実施例2〜4、比較例2>
当接回数及び相対移動速度を表2のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして端面41,42,43,44のすべてについて切削加工を行った。相対移動の回数はいずれも5回である。いずれの切削加工中においても、各偏光板の端部に(メタ)アクリル系樹脂フィルムの剥離は認められず、また、良好な仕上げ状態で、各偏光板の端面をまとめて加工することができた。表2には、参照のため、実施例1も併せて示している。
【0134】
【表2】
【0135】
表2中、「>19.4」とあるのは、用いた断面衝撃試験機が測定できる衝撃エネルギーの上限19.4mJにおいても、剥離が生じなかったことを意味する。