(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0013】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0014】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0015】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0016】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0017】
(実施の形態1)
<関連技術の説明>
まず、実施の形態1における技術的思想を説明する前に、関連技術における再配線構造について説明し、この関連技術に存在する改善の余地を説明する。
【0018】
図1は、関連技術における再配線構造を示す模式的な断面図である。
図1において、層間絶縁膜ILの下層には、例えば、多層配線層が形成され、さらに、多層配線層の下層には、電界効果トランジスタが形成された半導体基板が存在するが、
図1では省略している。
【0019】
図1に示すように、層間絶縁膜IL上には、パッドPDが形成されており、このパッドPDを覆う層間絶縁膜IL上には、表面保護膜PASが形成されている。そして、表面保護膜PASには、開口部OP1が形成されており、開口部OP1からパッドPDの表面が露出している。続いて、
図1に示すように、表面保護膜PAS上には、保護絶縁膜として機能するポリイミド樹脂膜PI1が形成されており、このポリイミド樹脂膜PI1には、開口部OP2が形成されている。このとき、ポリイミド樹脂膜PI1に形成されている開口部OP2は、表面保護膜PASに形成されている開口部OP1と連通している。
【0020】
次に、
図1に示すように、開口部OP1から露出するパッドPDの表面上から、開口部OP1の側面と開口部OP2の内壁(底面と側面)とポリイミド樹脂膜PI1上とにわたって再配線RDLが形成されている。この再配線RDLは、例えば、バリア膜BFとシード層(銅膜)SLと銅膜CUFとから構成されている。そして、再配線RDLの表面の一部領域上には、例えば、ニッケル膜と金膜とからなるAu/Ni積層膜ANFが形成されており、このAu/Ni積層膜ANFおよび再配線RDLの表面を覆うようにポリイミド樹脂膜PI2が形成されている。さらに、ポリイミド樹脂膜PI2には、開口部OP3が形成されており、この開口部OP3から露出するAu/Ni積層膜ANF上にワイヤWが接続されている。以上のようにして、関連技術における再配線構造が形成されている。
【0021】
<改善の余地>
続いて、関連技術に存在する改善の余地について説明する。
図2は、関連技術に存在する第1の改善の余地を説明するための図であり、互いに隣り合うように配置された再配線RDL1と再配線RDL2とを示す図である。
図2に示すように、関連技術では、例えば、再配線RDL1の側面に、銅の拡散を防止するバリア膜BFが存在しないことから、ポリイミド樹脂膜PI1とポリイミド樹脂膜PI2との界面に沿って銅のマイグレーションMG1が生じやすくなる。同様に、再配線RDL2の側面にも、銅の拡散を防止するバリア膜BFが存在しないことから、ポリイミド樹脂膜PI1とポリイミド樹脂膜PI2との界面に沿って銅のマイグレーションMG2が生じやすくなる。この結果、再配線RDL1と再配線RDL2との絶縁距離は、再配線RDL1と再配線RDL2との間の距離よりも狭い距離L1となる。このことは、再配線RDL1と再配線RDL2との間の耐圧が低下することを意味する。したがって、関連技術においては、ポリイミド樹脂膜PI1とポリイミド樹脂膜PI2との界面に沿った銅のマイグレーションによって、互いに隣り合う再配線RDL1と再配線RDL2との間での絶縁耐圧が低下することになる。この結果、関連技術では、半導体装置の信頼性低下を招くことになる。
【0022】
次に、関連技術に存在する第2の改善の余地について説明する。
図1において、関連技術では、再配線RDLは、主に銅膜CUFから形成されている。このとき、例えば、安価な銅からなるワイヤWを使用する場合、銅からなるワイヤWと再配線RDLを構成する銅膜CUFとは、密着性が低いことから、ワイヤWを再配線RDLに直接接続することは困難となる。このため、例えば、関連技術においては、
図1に示すように、再配線RDL上にAu/Ni積層膜ANFを形成し、このAu/Ni積層膜ANFに銅からなるワイヤWを接続する構成が採用されている。これにより、ワイヤWの接続信頼性(密着性)を向上することができるが、Au/Ni積層膜ANFに高価な金膜が使用されているため、半導体装置の製造コストが上昇することになる。つまり、製造コストを削減する観点から、高価な金からなるワイヤWに替えて、安価な銅からなるワイヤWを採用しても、関連技術では、再配線RDLにAu/Ni積層膜ANFを形成する必要があるため、半導体装置の製造コストを充分に削減することが困難なのである。
【0023】
さらに、関連技術においては、再配線構造の製造工程にフォトリソグラフィ技術を多用することからも、半導体装置の製造コストを削減することが難しくなる。
【0024】
以下に、この点について具体的に説明する。
図3および
図4は、関連技術における再配線構造の製造工程の流れを示すフローチャートである。
図3に示すように、まず、層間絶縁膜IL上に導体膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、導体膜をパターニングして、パッドPDを形成する(S1001)。
【0025】
その後、パッドPDを覆うように、表面保護膜PASを形成した後(S1002)、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、表面保護膜PASに開口部OP1を形成する(S1003)。
【0026】
そして、開口部OP1内を含む表面保護膜PAS上に、感光性のポリイミド樹脂膜PI1を形成し(S1004)、フォトリソグラフィ技術を使用することにより、ポリイミド樹脂膜PI1に開口部OP2を形成する(S1005)。
【0027】
続いて、スパッタリング法を使用することにより、パッドPDの表面から開口部OP1の側面と開口部OP2の内壁(底面と側面)とポリイミド樹脂膜PI1の表面とにわたってバリア膜BFを形成する(S1006)。
【0028】
次に、スパッタリング法を使用することにより、バリア膜BF上にシード層SLを形成し(S1007)、このシード層SL上に第1レジスト膜を形成する(S1008)。
【0029】
そして、フォトリソグラフィ技術を使用することにより、第1レジスト膜に第1開口領域を形成し(S1009)、例えば、電解めっき法を使用することにより、この第1開口領域内に再配線RDLを形成する(S1010)。
【0030】
続いて、第1レジスト膜を除去した後、再配線RDLを覆うように第2レジスト膜を形成する(S1011)。そして、
図4に示すように、フォトリソグラフィ技術を使用することにより、第2レジスト膜に第2開口領域を形成する(S1012)。
【0031】
次に、例えば、電解めっき法を使用することにより、第2開口領域内にAu/Ni積層膜ANFを形成した後(S1013)、第2レジスト膜を除去する(S1014)。そして、露出したバリア膜BFを除去した後(S1015)、再配線RDLおよびAu/Ni積層膜ANFを覆うように、感光性のポリイミド樹脂膜PI2を形成する(S1016)。
【0032】
続いて、フォトリソグラフィ技術を使用することにより、ポリイミド樹脂膜PI2に開口部OP3を形成する(S1017)。
【0033】
このようにして、関連技術における再配線構造を製造することができる。ここで、関連技術における再配線構造の製造工程では、フォトリソグラフィ技術が多用されることから、半導体装置の製造コストを削減することが困難となる。
【0034】
以上のことから、関連技術においては、互いに隣り合う再配線の間で絶縁耐圧が低下するという第1の改善の余地が存在し、かつ、Au/Ni積層膜ANFを使用する点と製造工程でフォトリソグラフィ技術を多用する点との相乗要因によって製造コストが上昇するという第2の改善の余地が存在する。つまり、関連技術では、半導体装置の信頼性を向上する観点と半導体装置の製造コストを削減する観点との両観点から改善の余地が存在するのである。そこで、本実施の形態1では、上述した関連技術に存在する改善の余地に対する工夫を施している。以下では、この工夫を施した本実施の形態1における技術的思想について説明することにする。
【0035】
<実施の形態1におけるデバイス構造>
図5は、本実施の形態1における半導体装置のデバイス構造の一例を示す断面図である。
図5に示すように、例えば、シリコンからなる半導体基板1Sの主面には、集積回路を構成する複数の電界効果トランジスタQが形成されている。そして、この電界効果トランジスタQを覆うように層間絶縁膜が形成されており、この層間絶縁膜を貫通して、電界効果トランジスタQと電気的に接続されるプラグPLGが形成されている。そして、プラグPLGを形成した層間絶縁膜上には、例えば、ダマシン法によって、配線WL1が形成されている。この配線WL1は、プラグPLGを介して、電界効果トランジスタQと電気的に接続されている。ここで、
図5では、図示を省略するが、配線WL1上には、多層配線が形成されており、この多層配線層を覆うように最上層の層間絶縁膜ILが形成されている。
【0036】
そして、
図5に示すように、層間絶縁膜IL上には、例えば、アルミニウム合金膜からなるパッドPDが形成されている。すなわち、半導体基板1Sの上方には、パッドPDが形成されており、このパッドPDを覆うように、例えば、酸化シリコン膜や窒化シリコン膜からなる表面保護膜PASが形成されている。この表面保護膜PASには、開口部OP1が形成されており、この開口部OP1の底部からは、パッドPDの表面の一部が露出している。
【0037】
続いて、
図5に示すように、表面保護膜PAS上には、ポリイミド樹脂膜PIが形成されており、このポリイミド樹脂膜PIには、再配線溝WDと開口部OP2が一体的に形成されている。このとき、ポリイミド樹脂膜PIに形成されている開口部OP2は、表面保護膜PASに形成されている開口部OP1と連通するように形成されており、かつ、ポリイミド樹脂膜PIに形成されている再配線溝WDとも連通している。
【0038】
次に、開口部OP1から露出するパッドPDの表面から、開口部OP1の側面と開口部OP2の内壁(底面と側面)と再配線溝WDの内壁(底面と側面)とにわたって、バリア膜BFが形成されている。そして、このバリア膜BF上に密着膜CFが形成され、さらに、この密着膜CF上に形成され、かつ、開口部OP1と開口部OP2と再配線溝WDとを埋め込むように銀膜AGFが形成されている。このように、開口部OP1と開口部OP2と再配線溝WDの内部にわたって、バリア膜BFと密着膜CFと銀膜AGFからなる再配線RDLが形成されていることになる。そして、再配線RDLの表面には、例えば、銅を主成分とするワイヤWが接続されている。
【0039】
ここで、本明細書でいう「主成分」とは、部材を構成する構成材料のうち、最も多く含まれている材料成分のことをいい、例えば、「銅を主成分とする材料」とは、部材の材料が銅を最も多く含んでいることを意味している。本明細書で「主成分」という言葉を使用する意図は、例えば、部材が基本的に銅から構成されているが、その他に不純物を含む場合を排除するものではないことを表現するために使用している。
【0040】
続いて、再配線RDLの材料について説明する。再配線RDLは、バリア膜BFと密着膜CFと銀膜AGFから形成されているため、それぞれの膜の材料について説明する。
【0041】
まず、バリア膜BFは、再配線RDLを構成する配線材料のポリイミド樹脂膜PI中へのマイグレーションを抑制する機能を有する膜から形成されている。例えば、バリア膜BFは、チタン(Ti)膜、窒化チタン(TiN)膜、チタンタングステン(TiW)膜、クロム(Cr)膜、タンタル(Ta)膜、タングステン(W)膜、窒化タングステン(WN)膜、高融点金属膜、貴金属膜(Pd、Ru、Pt、Niなど)から形成することができる。
【0042】
このとき、チタン膜の場合の膜厚は、100nm以上であることが望ましく、窒化チタン膜やチタンタングステン膜の場合の膜厚は、50nm以上であることが望ましい。また、クロム膜の場合の膜厚は、50nm以上であることが望ましく、タンタル膜、タングステン膜、窒化タングステン膜の場合の膜厚は、20nm以上であることが望ましい。さらに、高融点金属膜や貴金属膜の場合の膜厚は、50nm以上であることが望ましい。
【0043】
次に、密着膜CFは、バリア膜BFと銀膜AGFとの密着性を向上する機能を有し、例えば、銅を主成分とする銅膜や、銅合金膜から形成することができる。また、銀膜AGFは、銀を主成分とする銀膜や、銀合金膜(Sn系、Au系、Pd系)から形成できる。
【0044】
なお、再配線RDLの膜厚は、例えば、3μm〜20μm程度であり、再配線RDLの配線幅は、4μm〜100μm程度である。
【0045】
<実施の形態1における特徴(デバイス構造)>
続いて、本実施の形態1における特徴点について説明する。まず、本実施の形態1における第1特徴点は、
図5に示すように、単層のポリイミド樹脂膜PIに開口部OP2と再配線溝WDとが一体的に形成されている点にある。これにより、単層のポリイミド樹脂膜PIに再配線RDLを形成することができるため、再配線RDLを構成する配線材料(銀)のマイグレーションを抑制することができる。なお、本明細書において、再配線RDLを構成する「配線材料」とは、特に、明示した場合を除き、再配線RDLの主要な膜である銀膜AGFの配線材料(銀)を示している。
【0046】
図1に示す関連技術においては、再配線RDLがポリイミド樹脂膜PI1とポリイミド樹脂膜PI2の積層膜に形成されている。この場合、必然的に、ポリイミド樹脂膜PI1とポリイミド樹脂膜PI2との間の界面が存在するため、再配線RDLを構成する配線材料(銅)が、この界面に沿って拡散(マイグレーション)するポテンシャルが高くなる。すなわち、関連技術においては、ポリイミド樹脂膜PI1とポリイミド樹脂膜PI2の積層膜に再配線RDLが形成されているという構造に起因して、界面に沿った配線材料のマイグレーションが改善の余地として顕在化するのである。
【0047】
これに対し、本実施の形態1では、
図5に示すように、単層のポリイミド樹脂膜PIに再配線RDLが形成されている。このことは、本実施の形態1における再配線構造によれば、複数層のポリイミド樹脂膜を採用することに起因する「界面の存在」が無くなることを意味し、これによって、「界面」に沿って配線材料のマイグレーションが生じるポテンシャルを無くすことができる。つまり、本実施の形態1におけるポリイミド樹脂膜PIには、再配線溝WDの底面から延在する「界面」は存在しないため、「界面」に沿って配線材料のマイグレーションが生じるポテンシャルを無くすことができるのである。このことから、本実施の形態1によれば、再配線RDLを構成する配線材料のマイグレーションによって、互いに隣り合う再配線RDL間の絶縁耐圧を向上させることができる。この結果、本実施の形態1によれば、半導体装置の信頼性を向上することができる。
【0048】
次に、本実施の形態1における第2特徴点は、
図5に示すように、再配線溝WDの側面にまでバリア膜BFが形成されている点にある。本実施の形態1では、上述したように、単層のポリイミド樹脂膜PIに開口部OP2と再配線溝WDとを一体的に形成するという第1特徴点によって、配線材料のマイグレーションが生じる「界面」自体が存在しなくなることから、互いに隣り合う再配線RDL間の絶縁耐圧を向上させることができる。
【0049】
ただし、再配線RDLの配線材料がポリイミド樹脂膜PIと直接接触している場合には、「界面」自体が存在しなくても、再配線RDLの配線材料がポリイミド樹脂膜PIの内部にマイグレーションするポテンシャルが存在する。この場合、再配線RDLを構成する配線材料のマイグレーションによって、互いに隣り合う再配線RDL間の絶縁耐圧が低下するおそれがある。特に、関連技術においては、
図1に示すように、ポリイミド樹脂膜PI1とポリイミド樹脂膜PI2との間に「界面」が存在するとともに、再配線RDLの側面がポリイミド樹脂膜PI2と直接接触している。言い換えれば、再配線RDLの側面にバリア膜BFが形成されていない。このことから、関連技術では、ポリイミド樹脂膜PI1とポリイミド樹脂膜PI2との間に「界面」が存在するという第1要因と、再配線RDLの側面にバリア膜BFが形成されていないという第2要因によって、互いに隣り合う再配線RDL間の絶縁耐圧が低下するポテンシャルが高まるのである。
【0050】
この点に関し、本実施の形態1では、
図5に示すように、単層のポリイミド樹脂膜PIに開口部OP2と再配線溝WDとを一体的に形成するという第1特徴点に加えて、再配線溝WDの側面にもバリア膜BFが形成されているという第2特徴点も備えている。これにより、本実施の形態1によれば、第1特徴点と第2特徴点との相乗効果によって、再配線RDLを構成する配線材料のポリイミド樹脂膜PI中へのマイグレーションを効果的に抑制することができる。このことから、本実施の形態1によれば、互いに隣り合う再配線RDL間の絶縁耐圧を向上できることになり、これによって、半導体装置の信頼性を大幅に向上することができる。したがって、本実施の形態1における技術的思想を車載用の半導体装置に適用した場合、例えば、60Vを超える高電圧動作の信頼性を確保できる。
【0051】
さらに、本実施の形態1における第3特徴点は、
図5に示すように、再配線溝WDの側面が順テーパ状に傾斜している点にある。これにより、本実施の形態1によれば、互いに隣り合う再配線RDL間の絶縁耐圧を向上できる。例えば、
図6は、本実施の形態1において、互いに隣り合うように配置された再配線RDL1と再配線RDL2とを示す図である。
図6に示すように、再配線溝WDの側面が順テーパ状に傾斜している結果、再配線RDL1と再配線RDL2との間の距離L2を大きくすることができる。つまり、本実施の形態1における第3特徴点によれば、再配線溝WDの側面が垂直形状に加工されている場合よりも、再配線RDL1と再配線RDL2との間の距離L2を大きくすることができる。そして、再配線RDL1と再配線RDL2との間の距離L2が大きくなるということは、互いに隣り合う再配線RDL1と再配線RDL2との間の絶縁耐圧を向上できることを意味することから、本実施の形態1における第3特徴点によれば、半導体装置の信頼性を向上することができる。以上のことから、本実施の形態1によれば、第1特徴点と第2特徴点と第3特徴点との相乗効果によって、半導体装置の絶縁耐圧を向上することができ、この結果、半導体装置の信頼性を向上することができる。なお、本実施の形態1における第3特徴点は、再配線RDL1と再配線RDL2のレイアウトを変更することなく、再配線溝WDの側面を順テーパ状に傾斜させることにより、再配線溝WDの側面が垂直形状に加工されている場合よりも、再配線RDL1と再配線RDL2との間の距離L2を大きくすることができる点にある。この場合、上述したように、互いに隣り合う再配線RDL1と再配線RDL2との間の絶縁耐圧を向上できる。裏を介せば、本実施の形態1における第3特徴点によれば、再配線溝WDの側面が垂直形状に加工されている場合と同等の絶縁耐圧で充分な場合には、再配線RDL1と再配線RDL2のレイアウトをシュリンクすることができることになり、これによって、半導体装置の小型化を図ることができる。つまり、本実施の形態1における第3特徴点によれば、再配線RDL1と再配線RDL2のレイアウト配置を変更することなく絶縁耐圧を向上することができることになる構成を実現できる一方、現状の絶縁耐圧を確保できれば充分な場合には、再配線RDL1と再配線RDL2のレイアウト配置をシュリンクすることができる構成を実現することができる。
【0052】
続いて、本実施の形態1における第4特徴点は、
図5に示すように、再配線RDLにおいて、バリア膜BFと銀膜AGFとの間に密着膜CFが介在している点にある。これにより、再配線RDLの密着性が向上するため、再配線RDLとポリイミド樹脂膜PIとの間に、再配線RDLの剥離に基づく隙間が生じることを防止できる。このことは、隙間に水分などが浸入することによる再配線RDLの腐食や水分を介した配線材料のマイグレーションを抑制できることを意味し、これによって、本実施の形態1における第4特徴点によれば、半導体装置の信頼性を向上することができる。
【0053】
続いて、本実施の形態1における第5特徴点は、
図5に示すように、再配線RDLの表面SUR(RDL)の高さが、ポリイミド樹脂膜PIの表面SUR(PI)の高さよりも低くなっている点にある。具体的には、
図5に示すように、再配線RDLの表面SUR(RDL)の高さとポリイミド樹脂膜PIの表面SUR(PI)の高さとの差LAが500nm程度となっている。これにより、再配線RDLの表面SUR(RDL)からポリイミド樹脂膜PIの表面SUR(PI)への配線材料のマイグレーションを抑制することができる。つまり、本実施の形態1における第5特徴点によれば、再配線RDLの表面SUR(RDL)とポリイミド樹脂膜PIの表面SUR(PI)との間に段差(障壁)が形成されることになる。この結果、再配線RDLの表面SUR(RDL)からポリイミド樹脂膜PIの表面SUR(PI)への配線材料のマイグレーションが段差によって阻害されるのである。これにより、本実施の形態1によれば、配線材料のマイグレーションに起因する半導体装置の絶縁耐性の低下(信頼性低下)を抑制することができるのである。
【0054】
次に、本実施の形態1における第6特徴点は、
図5に示すように、再配線RDLの表面SUR(RDL)がポリイミド樹脂膜PIから露出している点にある。この場合、再配線RDLの表面SUR(RDL)の任意領域にワイヤWを接続することができる。このことは、ワイヤWの接続自由度が向上することを意味し、これによって、半導体装置のフレキシビリティを向上することができることになる。つまり、本実施の形態1における第5特徴点によれば、ワイヤWの接続位置に左右されずに、再配線RDLのレイアウト設計を実施することができる。すなわち、本実施の形態1における第5特徴点によれば、再配線RDLのレイアウト設計の自由度を向上することができ、これによって、ワイヤWの接続位置にほとんど関係なく、半導体装置の性能向上に特化したレイアウト配置や半導体装置の小型化(シュリンク)に特化したレイアウト配置のように、目的に応じたレイアウト設計の自由度を拡大することができる。
【0055】
続いて、本実施の形態1における第7特徴点は、再配線RDLを構成する主要な膜が、銀膜AGFから形成されている点にある。これにより、再配線RDLの表面に露出する銀膜AGFに、例えば、銅を主成分とするワイヤWを直接接続することができる。つまり、銀膜AGFの主成分である銀と銅を主成分とするワイヤWとは密着性が良好であることから、関連技術のように、再配線RDLとワイヤWとの間にAu/Ni積層膜ANFを形成する必要がないのである。この結果、本実施の形態1によれば、安価な銅を主成分とするワイヤWを使用できる点、Au/Ni積層膜ANFに含まれる金膜を使用しない点、および、Au/Ni積層膜ANFの製造工程を追加する必要がなくなる点との相乗効果によって、半導体装置の製造コストを削減できる。
【0056】
さらに、本実施の形態1における第7特徴点によれば、再配線RDLの表面に露出する膜を銀膜AGFとすることにより、銅を主成分とするワイヤWだけでなく、金を主成分とするワイヤWや銀を主成分とするワイヤWとも直接接続することができる。このため、本実施の形態1における第7特徴点によれば、銅を主成分とするワイヤWだけでなく、金を主成分とするワイヤWや銀を主成分とするワイヤWを使用する場合であっても、再配線RDLとワイヤWとを直接接続できる。このことから、本実施の形態1における第7特徴点によれば、再配線RDLとワイヤWとの接続信頼性を向上するために、再配線RDLとワイヤWとの間にワイヤ接続用導体膜を介在させる必要がなく、半導体装置の製造コストの上昇を抑制しながら、ワイヤWの選択自由度を向上することができる。
【0057】
以上のことから、本実施の形態1における第6特徴点と第7特徴点によって、本実施の形態1によれば、半導体装置のレイアウト自由度の向上とワイヤWの選択自由度の向上を図ることができる。つまり、本実施の形態1によれば、様々な用途(種類)の半導体装置に適用される再配線構造を低コストで提供できる点で汎用性の高い技術であり、本実施の形態1における技術的思想は、汎用性に優れた有用な技術的思想であることがわかる。
【0058】
<実施の形態1における半導体装置の製造方法>
本実施の形態1における半導体装置は、上記のように構成されており、以下にその製造方法について図面を参照しながら説明する。以下では、まず、フローチャートを使用して、本実施の形態1における半導体装置の製造方法の概要について説明し、その後、模式的な断面図を使用して、本実施の形態1における半導体装置の製造方法について説明する。
【0059】
図7は、本実施の形態1における半導体装置の製造工程の流れを示すフローチャートである。
図7に示す本実施の形態1における半導体装置の製造方法では、まず、例えば、アルミニウム膜やアルミニウム合金膜から形成されるパッドPDを形成する(S101)。その後、パッドPDを覆うように、例えば、酸化シリコン膜や窒化シリコン膜からなる表面保護膜PASを形成し(S102)、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、この表面保護膜PASに開口部OP1を形成する(S103)。このとき、開口部OP1の底部には、パッドPDの表面の一部領域が露出することになる。
【0060】
次に、開口部OP1内を含む表面保護膜PAS上に、ポリイミド樹脂膜PIを形成する(S104)。ここでのポリイミド樹脂膜PIは、感光性のポリイミド樹脂膜PIである必要はない、そして、インプリント技術を使用することにより、ポリイミド樹脂膜PIに開口部OP2と再配線溝WDとを一体的に形成する(S105)。具体的には、第1凸部と第2凸部とが形成された型PATをポリイミド樹脂膜PIに押し付けて、ポリイミド樹脂膜PIに、第1凸部に対応した開口部OP2であって、開口部OP1と連通した開口部OP2と、第2凸部に対応した再配線溝WDであって、開口部OP2と連通した配線溝WDとを一体的に形成する。
【0061】
続いて、開口部OP1から露出するパッドPDの表面から、開口部OP1の側面と開口部OP2の内壁(底面および側面)と再配線溝WDの内壁(底面および側面)とポリイミド樹脂膜PIの表面上とにわたって、バリア膜BFを形成する(S106)。その後、印刷法を使用することにより、バリア膜BF上であって、開口部OP1と開口部OP2と再配線溝WDとを埋め込むように、銀ペーストPSTを形成する(S107)。そして、半導体基板を加熱(ベーク)することにより、銀ペーストPSTから銀膜AGFを形成する。以上のようにして、本実施の形態1における再配線構造を形成することができる。ここで、例えば、関連技術における再配線構造を形成する製造工程の流れを示すフローチャート(
図3および
図4)と、本実施の形態1における再配線構造を形成する製造工程の流れを示すフローチャート(
図7)とを比較する。この場合、
図3および
図4と
図7から明らかなように、本実施の形態1における再配線構造の製造工程は、関連技術における再配線構造の製造工程に比べて、大幅に工程数が削減されている。具体的には、
図3および
図4に示すように、関連技術では、再配線構造の製造に17工程が必要とされるのに対し、
図7に示すように、本実施の形態1では、再配線構造の製造では8工程となっている。すなわち、本実施の形態1の工程数は、関連技術の工程数の半分以下に削減されている。これにより、本実施の形態1における半導体装置の製造方法によれば、半導体装置の製造コストを削減することができる。特に、本実施の形態1では、フォトリソグラフィ技術(露光・現像)に替えて、インプリント技術および印刷技術を使用することにより、工程数の削減を図っている。この結果、本実施の形態1によれば、関連技術に比べて、大幅に工程数を削減することが可能となり、これによって、半導体装置の製造コストを削減できる。
【0062】
以下では、本実施の形態1における半導体装置の製造工程について模式的な断面図を使用しながら説明する。まず、例えば、シリコンからなる半導体基板を用意し、この半導体基板に複数の電界効果トランジスタを形成する。その後、複数の電界効果トランジスタを形成した半導体基板上に多層配線層を形成する。
図8では、多層配線層の最上層に形成されている層間絶縁膜ILが図示されている。
図8に示すように、層間絶縁膜IL上に、例えば、アルミニウム膜やアルミニウム合金膜(AlSi膜やAlSiCu膜など)からなる導体膜を形成し、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用して、導体膜をパターニングすることにより、パッドPDを形成する。
【0063】
次に、
図9に示すように、パッドPDを覆う層間絶縁膜IL上に表面保護膜PASを形成する。表面保護膜PASは、例えば、酸化シリコン膜や窒化シリコン膜から形成され、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を使用することにより形成することができる。その後、
図10に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、表面保護膜PASに開口部OP1を形成する。このとき、開口部OP1の底面にパッドPDの一部領域が露出する。
【0064】
続いて、
図11に示すように、開口部OP1を形成した表面保護膜PAS上にポリイミド樹脂膜PIを形成する。ここでのポリイミド樹脂膜PIは、感光性を有するものである必要はない。そして、
図12に示すように、インプリント技術を使用することにより、ポリイミド樹脂膜PIに開口部OP2と再配線溝WDとを一体的に形成する。具体的には、凸部CVX1と凸部CVX2とが形成された型PATをポリイミド樹脂膜PIに押し付けて、ポリイミド樹脂膜PIに、凸部CVX1に対応し、かつ、開口部OP1と連通した開口部OP2と、凸部CVX2に対応し、かつ、開口部OP2と連通した配線溝WDとを一体的に形成する。このとき、
図12に示すように、型PATの凸部CVX1および凸部CVX2には、テーパ形状が形成されており、この結果、ポリイミド樹脂膜PIに形成される開口部OP2の側面は、順テーパ状に傾斜することになるとともに、再配線溝WDの側面も、順テーパ状に傾斜することになる。なお、開口部OP1から露出するパッドPDの表面領域上には、ポリイミド樹脂膜PIの残渣が残存している。
【0065】
その後、型PATをポリイミド樹脂膜PIから離型し、ポリイミド樹脂膜PIに対して、加熱処理(ベーク処理)を施す。これにより、開口部OP2および再配線溝WDを一体的に形成したポリイミド樹脂膜PIが硬化する。そして、
図13に示すように、酸素プラズマによるアッシング技術により、パッドPDの表面に残存しているポリイミド樹脂膜PIの残渣を除去する。これにより、開口部OP1の底面からパッドPDの表面の一部領域が露出することになる。
【0066】
続いて、
図14に示すように、スパッタリング法を使用することにより、開口部OP1から露出するパッドPDの表面から、開口部OP1の側面と開口部OP2の内壁(底面および側面)と再配線溝WDの内壁(底面および側面)とポリイミド樹脂膜PIの表面とにわたってバリア膜BFを形成する。このバリア膜BFは、例えば、再配線を構成する配線材料のポリイミド樹脂膜PI中へのマイグレーションを抑制する機能を有する膜から構成される。具体的に、バリア膜BFは、チタン膜、窒化チタン膜、チタンタングステン膜、クロム膜、タンタル膜、タングステン膜、窒化タングステン膜、高融点金属膜、貴金属膜、あるいは、これらの膜の組み合わせから形成することができる。
【0067】
そして、バリア膜BF上に、密着膜CFを形成する。密着膜CFは、例えば、銅を主成分とする銅膜や銅合金膜から形成され、例えば、スパッタリング法を使用することにより形成することができる。
【0068】
次に、
図15に示すように、開口部OP1と開口部OP2と再配線溝WDとの内部に、スキージSJを使用して、銀ペーストPSTを印刷する。その後、
図16に示すように、銀ペーストPSTに対して加熱処理(ベーク処理)を実施する。この加熱処理によって、銀ペーストPSTに含まれる溶剤が蒸発することにより、銀膜AGFが形成される。このときの加熱処理によって、銀ペーストPSTが収縮することにより、銀膜AGFの表面の高さは、ポリイミド樹脂膜PIの表面の高さよりも低くなる。
【0069】
続いて、
図17に示すように、ポリイミド樹脂膜PIの表面上に露出している密着膜CFおよびバリア膜BFを除去する。このようにして、バリア膜BFと密着膜CFと銀膜AGFとからなる本実施の形態1の再配線構造を形成することができる。
【0070】
<実施の形態1の特徴(製造方法)>
上述した本実施の形態1における半導体装置の製造方法の第1特徴点は、例えば、
図12に示すように、インプリント技術を使用することにより、ポリイミド樹脂膜PIに開口部OP2と再配線溝WDとを一体的に形成する点にある。これにより、本実施の形態1における第1特徴点によれば、開口部OP2および再配線溝WDの形成にフォトリソグラフィ技術(露光・現像処理)を使用しなくても済むため、製造コストを削減できる。
【0071】
さらに、本実施の形態1における半導体装置の製造方法の第2特徴点は、例えば、
図15に示すように、安価な印刷技術を使用することにより、再配線RDLの構成膜となる銀膜AGFを形成している点にある。これにより、本実施の形態1における第2特徴点によれば、製造工程数を削減できることから、半導体装置の製造コストを削減することができる。このように、本実施の形態1における半導体装置の製造方法では、マスクの形成および露光・現像工程に伴うコストのかかるフォトリソグラフィ技術に替えて、簡素なインプリント技術や印刷技術を使用することにより、工程数の削減を図ることができ、これによって、半導体装置の製造コストを削減することができる。さらには、本実施の形態1では、インプリント技術によってポリイミド樹脂膜PIに開口部OP2および再配線溝WDを形成している。このため、フォトリソグラフィ技術を使用して開口部OP2および再配線溝WDを形成するときのように、コストのかかる感光性のポリイミド樹脂膜を使用する必要はなく、通常の感光性を有さないポリイミド樹脂膜PIを使用することができるため、この点からも、本実施の形態1における半導体装置の製造方法によれば、半導体装置の製造コストを削減することができる。
【0072】
以上のように、本実施の形態1では構造上(デバイス構造上)の特徴点として、第1特徴点から第7特徴点を有し、かつ、製法上の特徴点として、第1特徴点と第2特徴点とを有する。これにより、本実施の形態1における技術的思想は、再配線構造の信頼性向上と汎用性の向上とを実現しながらも、工程数の大幅な削減によって、大幅な製造コストの削減を図ることができる点で、非常に有用性の高い技術的思想であることがわかる。すなわち、本実施の形態1における技術的思想は、構造上の観点と製法上の観点とのいずれの観点においても、関連技術に比べて、非常に優れているということができる。
【0073】
<変形例>
上述した実施の形態1では、例えば、
図5に示すように、ポリイミド樹脂膜PIに開口部OP2と再配線溝WDとを一体的に形成する例について説明している。この場合、再配線RDLの下層の構造設計の自由度を拡大する利点を得ることができる。ただし、本実施の形態1における技術的思想は、これに限らず、例えば、変形例として、ポリイミド樹脂膜PIに開口部OP2を形成せずに、再配線溝WDだけを形成して、この再配線溝WDと、表面保護膜PASに形成されている開口部OP1とを直接連通させるように構成することもできる。特に、表面保護膜PASの機械的強度の向上対策が実施されている場合や、表面保護膜PASの膜厚が厚い場合には、本変形例の構成が有用である。
【0074】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、再配線RDLの配線材料として銀膜AGFを使用する例について説明したが、本実施の形態2では、再配線RDLの配線材料として銅膜CUFを使用する例について説明する。本実施の形態2における半導体装置のデバイス構造は、前記実施の形態1における半導体装置のデバイス構造とほぼ同様の構成をしているため、相違点を中心に説明することにする。
【0075】
<実施の形態2におけるデバイス構造>
図18は、本実施の形態2における半導体装置のデバイス構造を示す模式的な断面図である。
図18において、再配線RDLは、バリア膜BFと密着膜CFと銅を主成分とする銅膜CUFとから構成されている。そして、再配線RDLを構成する銅膜CUFの表面の一部領域上にワイヤ接続用導体膜WCFが形成されており、このワイヤ接続用導体膜WCF上にワイヤWが接続されている。なお、ワイヤ接続用導体膜WCFは、例えば、銀膜や銀合金膜から形成することができる。
【0076】
本実施の形態2によれば、再配線RDLを安価な銅膜CUFから構成することにより、半導体装置の製造コストを削減できる。一方、再配線RDLを構成する銅膜CUF上に、例えば、銅を主成分とするワイヤWを直接接続することは、密着性の観点から困難であるため、本実施の形態2においては、
図18に示すように、再配線RDLを構成する銅膜CUF上にワイヤ接続用導体膜WCFを形成し、このワイヤ接続用導体膜WCFを介して、再配線RDLとワイヤWとを接続している。これにより、本実施の形態2においても、再配線RDLとワイヤWとの接続信頼性を向上することができる。
【0077】
<実施の形態2における半導体装置の製造方法>
本実施の形態2における半導体装置は、上記のように構成されており、以下に、その製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0078】
まず、
図8〜
図14までの工程は、前記実施の形態1と同様である。続いて、
図19に示すように、開口部OP1と開口部OP2と再配線溝WDとを埋め込み、かつ、ポリイミド樹脂膜PI上に形成された密着膜CF上にわたって、銅を主成分とする銅膜CUFを形成する。銅膜CUFは、例えば、電解めっき法を使用することにより形成することができる。その後、
図20に示すように、ポリイミド樹脂膜PI上に形成されている不要な銅膜CUFを、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法により研磨して除去する。これにより、開口部OP1と開口部OP2と再配線溝WDとにだけ銅膜CUFを埋め込むことができる。なお、本実施の形態2では、銅膜CUFを電解めっき法とCMP法を使用して形成したが、これに限らず、例えば、銅ペーストを使用した印刷法によって、銅膜CUFを形成することもできる。
【0079】
次に、
図21に示すように、ポリイミド樹脂膜PI上に露出する密着膜CFとバリア膜BFとを、例えば、ウェットエッチングにより除去する。このとき、再配線溝WDに埋め込まれた銅膜CUFの表面もエッチングされ、銅膜CUFの表面の高さが、ポリイミド樹脂膜PIの表面の高さよりも低くなる。その後、
図22に示すように、銅膜CUFの表面の一部領域上にワイヤ接続用導体膜WCFを形成する。このワイヤ接続用導体膜WCFは、例えば、銀膜や錫(Sn)膜から形成され、例えば、印刷法により形成することができる。ただし、ワイヤ接続用導体膜WCFの製造方法は、これに限らず、例えば、スパッタリング法およびフォトリソグラフィ技術によるパターニング技術を使用することもできる。その後の工程は、前記実施の形態1と同様であり、
図18に示すように、ワイヤ接続用導体膜WCF上に、例えば、銅を主成分とするワイヤWを接続する。以上のようにして、本実施の形態2における半導体装置を製造することができる。
【0080】
<変形例1>
続いて、本実施の形態2の変形例1について説明する。
図23は、本変形例1における再配線構造を模式的に示す断面図である。
図23に示すように、本変形例1においては、再配線RDLを構成する銅膜CUFの表面の全体にわたって、ワイヤ接続用導体膜WCFが形成されている。この場合、ワイヤWの接続位置にフレキシビリティを持たせることができる。この場合も、ワイヤ接続用導体膜WCFは、印刷法を使用して形成することができるが、これに限らず、例えば、無電解めっき法を使用することもできる。
【0081】
<変形例2>
次に、本実施の形態2の変形例2について説明する。
図24は、本変形例2における再配線構造を模式的に示す断面図である。
図24に示すように、本変形例2においては、再配線RDLを構成する銅膜CUFの表面の一部領域上にワイヤ接続用導体膜WCFが形成されており、このワイヤ接続用導体膜WCF上にワイヤWが接続されている。一方、銅膜CUFの表面の一部領域以外のその他の領域は、絶縁膜IF1で覆われている、これにより、絶縁膜IF1によって、再配線RDLの表面を保護することができるとともに、再配線RDLの表面に導電異物が付着することによって、互いに隣り合う再配線RDL間にショート不良が発生することを抑制できる効果も得ることができる。
【0082】
絶縁膜IF1は、例えば、ポリイミド樹脂膜から形成することができ、印刷法を使用することにより形成することができる。
【0083】
<変形例3>
続いて、本実施の形態2の変形例3について説明する。
図25は、本変形例3における再配線構造を模式的に示す断面図である。
図25に示すように、本変形例3においても、変形例2と同様に、再配線RDLを構成する銅膜CUFの表面の一部領域以外の他の領域を覆うように絶縁膜IF1が形成されている。そして、本変形例3においては、銅膜CUFの表面の一部領域から絶縁膜IF1上の部分領域にわたって延在するようにワイヤ接続用導体膜WCFが形成されており、このワイヤ接続用導体膜WCFにワイヤWが接続している。このとき、ワイヤ接続用導体膜WCFは、例えば、スパッタリング法およびフォトリソグラフィ技術によるパターニング技術を使用することにより形成できる。
【0084】
(実施の形態3)
本実施の形態3では、前記実施の形態1および前記実施の形態2で説明した再配線構造の適用例について説明する。
図26は、本実施の形態3における半導体チップCHPの模式的なレイアウト構成を示す図である。
図26において、本実施の形態3における半導体チップCHPは、矩形形状をしており、矩形形状をした半導体チップCHPの内部領域に複数のパッドPDが形成されている。そして、
図26に示すように、複数のパッドPDの一部と接続するように再配線RDLが形成されている。このような再配線RDLによって、半導体チップCHPの外縁領域でワイヤWと再配線RDLとを接続することができる。つまり、再配線RDLには、ワイヤWとの接続位置を再配置する機能を有し、再配線RDLの再配置機能によって、ワイヤWと再配線RDLとを半導体チップCHPの外縁領域で接続することができる。また、この再配置を内部配線よりも幅の広い再配線RDLで実現することにより、半導体チップCHPのオン抵抗も低減することができる。さらには、再配線RDLのいずれの位置においてもワイヤWと接続することが可能なため、ワイヤWの接続位置のフレキシビリティを実現することができる。このことは、本実施の形態3における再配線RDLを使用することにより、同一の半導体チップCHPを様々なパッケージ形態で実装することができることを意味し、これによって、半導体チップCHPの汎用性を高めることができる。
【0085】
<変形例1>
図27は、本変形例1における半導体チップCHPのレイアウト構成を示す図である。
図27において、本変形例1では、パッケージの形態に合わせた再配置を再配線で行なう例が示されている。具体的には、例えば、電源電位が供給されるラインを再配線RDL(VDD)で束ねることによって、電源ラインの強化を図ることができる。同様に、例えば、基準電位(GND電位)が供給されるラインを再配線RDL(GND)で束ねることによって、グランドラインの強化を図ることができる。さらには、
図27に示すように、再配線RDL(VDD)および再配線RDL(GND)によって、パッドフリー化が実現されており、ワイヤW1およびワイヤW2の接続自由度が高まる結果、半導体装置のピン数を削減することができる。また、本変形例1によれば、再配線RDL(VDD)に複数のワイヤW1を接続できるため、電源ラインの抵抗低減を図ることができる。同様に、本変形例1によれば、再配線RDL(GND)に複数のワイヤW2を接続できるため、グランドラインの抵抗低減を図ることができる。
【0086】
<変形例2>
図28は、本変形例2における積層半導体チップのレイアウト構成を示す図である。
図28に示すように、本変形例2では、再配線構造を形成した半導体チップCHP1〜CHP3を積層配置する例が示されている、具体的に、半導体チップCHP1には、電源電位が供給される再配線RDL(VDD)と、基準電位が供給される再配線RDL(GND)とが配置されている。同様に、半導体チップCHP2にも、電源電位が供給される再配線RDL(VDD)と、基準電位が供給される再配線RDL(GND)とが配置され、半導体チップCHP3にも、電源電位が供給される再配線RDL(VDD)と、基準電位が供給される再配線RDL(GND)とが配置されている。そして、
図28に示すように、半導体チップCHP1の再配線RDL(VDD)と半導体チップCHP2の再配線RDL(VDD)がワイヤW1(VDD)で接続され、半導体チップCHP1の再配線RDL(GND)と半導体チップCHP2の再配線RDL(GND)がワイヤW1(GND)で接続されている。同様に、半導体チップCHP2の再配線RDL(VDD)と半導体チップCHP3の再配線RDL(VDD)がワイヤW2(VDD)で接続され、半導体チップCHP2の再配線RDL(GND)と半導体チップCHP3の再配線RDL(GND)がワイヤW2(GND)で接続されている。また、半導体チップCHP3の再配線RDL(VDD)とワイヤW3(VDD)が接続され、半導体チップCHP3の再配線RDL(GND)とワイヤW3(GND)が接続されている。
【0087】
このように、本変形例2における再配線構造は、例えば、半導体チップCHP1〜CHP3を積層配置した半導体装置にも適用することができる。すなわち、本変形例2における再配線構造は、COC(Chip On Chip)の半導体装置にも応用することができる。
【0088】
さらに言えば、半導体チップの裏面への再配線構造の形成も同一製法で対応することが可能であるため、変形例1および変形例2を含む実施の形態3における技術的思想によれば、安価にSIP(System In Package)や3D−PKGに適した半導体チップの構造を半導体ウェハのレベルで作成可能な利点も得られる。さらに、変形例1および変形例2を含む実施の形態3における再配線構造は、受動素子集積チップ(IPD)やMEMS用チップの配線としても適用することができる。なお、実施の形態1〜実施の形態3では、再配線RDLにワイヤWを接続する構成例について説明したが、実施の形態1〜実施の形態3で説明した再配線構造は、ワイヤWとの接続だけでなく、バンプ電極を使用したフリップチップ接続にも適用することができる。
【0089】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。