(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、管理装置の各実施形態を詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る管理装置の構成について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る管理装置が適用された管理システムの構成例を示す図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係る管理システム1は、センターサーバ90と病院内システム91とを有する。センターサーバ90と病院内システム91とは、ネットワーク92を介して互いに通信を行うことが可能なように接続されている。
【0010】
センターサーバ90は、病院内システム91や病院内システム91以外の複数の病院内システムにおいて臨床ワークフローの実施中に発生したインシデント(現象)を一元管理するサーバである。例えば、センターサーバ90は、インシデントDB(Data Base)90aを有し、リアルタイムで、病院内システム91や病院内システム91以外の複数の病院内システムにおいて発生したインシデントを収集し、収集したインシデントに関する情報と、収集したインシデントが発生した臨床ワークフローとを対応付けたインシデント情報を生成し、生成したインシデント情報をインシデントDB90aに登録する。なお、インシデントDB90aは、第1の記憶部の一例である。
【0011】
図2は、インシデント情報のデータ構造の一例を示す図である。
図2の例に示すように、インシデント情報は、「日時」、「タイプ」、「事象」、「リスク」、「臨床ワークフロー」、「該当プロセス」、「該当部門」、「該当条件」、「コメント」及び「重要度」の各項目を有する。「日時」の項目には、インシデントが発生した日時が含まれる。「タイプ」の項目には、インシデントのタイプが含まれる。「事象」の項目には、インシデントの内容が含まれる。「リスク」の項目には、インシデントの発生により生じるリスクの内容が含まれる。「臨床ワークフロー」の項目には、インシデントが発生した臨床ワークフローのID(Identification)が含まれる。「該当プロセス」の項目には、インシデントが発生した臨床ワークフローのプロセスのIDが含まれる。「該当部門」の項目には、インシデントが発生した部門が含まれる。「該当条件」の項目には、インシデントが発生した条件が含まれる。「コメント」の項目には、インシデントにより生ずるリスクの対処方法などのコメントが含まれる。「重要度」の項目には、インシデントにより生じるリスクの大きさを示す重要度が含まれる。
【0012】
換言すると、インシデント情報は、インシデントが発生した日時、インシデントのタイプ及び内容、インシデントの発生により生じるリスク、インシデントが発生した部門、インシデントが発生した条件、インシデントにより生ずるリスクの対象方法などのコメント、及び、インシデントにより生じるリスクの大きさを示す重要度を含むインシデントに関する情報と、インシデントが発生した臨床ワークフロー及びインシデントが発生した臨床ワークフローのプロセスとを対応付けられた情報である。
【0013】
また、インシデントの発生により生じるリスクは、インシデントが発生した場合にインシデントが発生した臨床ワークフローの実行に及ぼす影響ともいえる。また、リスクの対処方法は、この影響に対する対処方法ともいえる。また、インシデントにより生じるリスクの大きさを示す重要度は、インシデントが発生した場合にインシデントが発生した臨床ワークフローの実行に及ぼす影響の度合いを示す影響度ともいえる。
【0014】
図2の例に示すようなデータ構造のインシデント情報がインシデントDB90aに登録される。以下、センターサーバ90が、インシデントDB90aを有し、インシデントDB90aには、病院内システム91や病院内システム91以外の複数の病院内システムにおいて臨床ワークフローの実施中に発生したインシデントが登録される場合について説明するが、インシデントDB90aはこれに限られない。例えば、インシデントDB90aは、特定の利用者がどこからでもアクセスできるように、特定の利用者にアクセス権限を付与した上で、インシデントDB90aが、クラウドコンピューティングの形態で、外部公開されてもよい。また、病院内システム91内に、インシデントDB90aが設けられていても良い。病院内システム91内に、インシデントDB90aが設けられている場合には、インシデントDB90aには、病院内システム91が設けられた病院内で発生したインシデントに係るインシデント情報のみが登録される。
【0015】
また、インシデント情報は、実際に発生したインシデントに関する情報だけではなく、実際に発生する寸前までいった、いわゆるヒヤリハットのインシデントに関する情報を含んでもよい。また、インシデント情報は、患者(被験者)にはデメリットはないが、病院内でデメリットが発生するようなインシデント(例えば、余計なコストがかかるといったインシデント)に関する情報を含んでもよい。
【0016】
また、インシデント情報は、テキスト化された結果の情報だけではなく、実際のインシデントが発生した際の画像や音声を含んでもよい。また、インシデント情報は、PDF(Portable Document Format)化された手書き文などを含んでもよい。また、インシデント情報は、
図2の例に示すような各種の内容が記述されたファイルを読み出すための、このファイルのパスを含んでもよい。
【0017】
また、インシデント情報は、検査を行う患者の身体的情報や、検査に携わる医療従業者などのメンバー(例えば、インシデント発生時に立ち会った医療事業者)の特徴などを含んでもよい。
【0018】
病院内システム91は、1つの病院内におけるシステムであり、管理装置10と、X線CT(Computed Tomography)装置21と、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置22と、ワークステーション(workstation;WS)23と、電子カルテであるEMR(Electronic Medical Records)24と、ワークフロー管理システム25とを備える。
【0019】
なお、病院内システム91は、X線CT装置21やMRI装置22等の医用画像診断装置だけでなく、他の種類の医用画像診断装置(例えば、超音波診断装置や核医学診断装置など)も備えてもよい。
【0020】
ワークステーション23は、例えば、X線CT装置21やMRI装置22等の医用画像診断装置で得られた患者の医用画像を解析し、レポートの作成を支援する機能を有する。
【0021】
EMR24は、電子カルテであり、EMR24には、各種の患者情報などが登録されている。
【0022】
ワークフロー管理システム25は、検査の目的に応じて、臨床ワークフローを決定するシステムであり、例えば、1台のサーバである。
【0023】
管理装置10は、臨床ワークフローを実行する装置(X線CT装置21やMRI装置22、ワークステーション23等の装置)に表示されるインシデント情報を管理する装置である。
【0024】
図3は、第1の実施形態に係る管理装置及びワークフロー管理システムの構成例を示すブロック図である。
図3の例に示すように、ワークフロー管理システム25は、臨床フロー決定部25aと、臨床フローDB25bとを有する。
【0025】
臨床フローDB25bは、検査の目的に対応付けられた臨床ワークフローを複数記憶する。すなわち、臨床フローDB25bは、検査の目的に対して、最適な臨床ワークフローを対応付けて記憶する。
【0026】
臨床フロー決定部25aは、実施対象の検査の目的に対応する臨床ワークフローを臨床フローDB25bから取得し、取得した臨床ワークフローを、実行対象の臨床ワークフローとして決定する。そして、臨床フロー決定部25aは、実行対象の臨床ワークフローを、後述のインシデント適用部10bに送信する。また、臨床フロー決定部25aは、実行対象の臨床ワークフローのIDを後述のインシデント収集部10aに送信する。
【0027】
図3の例に示すように、管理装置10は、インシデント収集部10aと、インシデント適用部10bと、インシデント表示制御部10cとを有する。
【0028】
インシデント収集部10aは、インシデントDB90aから、実行対象の臨床ワークフローに対応するインシデント情報を取得する。例えば、インシデント収集部10aは、臨床ワークフロー決定部24aから送信された、実行対象の臨床ワークフローのID「冠動脈サブストラクション」を受信すると、インシデントDB90aの全レコードの中から、受信したID「冠動脈サブストラクション」が登録されたレコードを検索する。そして、インシデント収集部10aは、検索の結果得られたレコードを、実行対象の臨床ワークフローに対応するインシデント情報として取得する。
【0029】
図4は、実行対象の臨床ワークフローのID「冠動脈サブストラクション」が「臨床ワークフロー」の項目に含まれるインシデント情報の一例を示す図である。
図4の例に示すインシデント情報は、「事象」の項目に、インシデントの内容である「呼吸過多確認」が含まれ、「リスク」の項目に、インシデントの発生により生じるリスクである「再検査による被曝」が含まれ、「臨床ワークフロー」の項目に、インシデントが発生した臨床ワークフローのID「冠動脈サブストラクション」が含まれ、「該当プロセス」の項目に、インシデントが発生した臨床ワークフローのプロセスのID「超低線量位置決めScan」が含まれ、「コメント」の項目に、インシデントにより生ずるリスクの対象方法などのコメント「撮影前には患者の呼吸数を必ず確認しましょう!」が含まれる。
【0030】
なお、インシデントDB90aに登録されたインシデント情報に、検査を行う患者の身体的情報や、検査に携わる医療従業者などのメンバーの特徴が含まれている場合には、インシデント収集部10aは、臨床ワークフロー決定部24aから送信された実施対象の臨床ワークフローのIDに加えて、検査を行う患者の身体的情報や、検査に携わる医療従業者などのメンバーの特徴をキーにして、インシデントDB90aの全レコードの中から該当するレコードを検索してもよい。これにより、更に適切なインシデント情報を絞り込んで取得することができる。
【0031】
また、インシデント収集部10aは、インシデント情報を取得した後に、インシデント情報が示すインシデントに関する各種の統計情報を取得してもよい。例えば、インシデント収集部10aは、EMR24、又は、図示しないEHR(Electronic Health Records)から、インシデントに関する統計情報を取得してもよい。ここで、EHRは、病院内システム91が設けられている病院内の各部門間のみならず、複数の病院間で共有される患者情報などの各種の医療に関する情報が登録されているデータベースである。インシデントに関する統計情報の一例としては、特定期間における病院ごと、時間帯ごとのインシデントの発生数や、同一の患者さんにおけるインシデントの発生数がある。
【0032】
そして、インシデント収集部10aは、取得したインシデント情報を、インシデント適用部10bに送信する。なお、インシデント収集部10aは、収集部の一例である。
【0033】
インシデント適用部10bは、インシデント収集部10aから送信されたインシデント情報と、臨床フロー決定部25aから送信された実行対象の臨床ワークフローとを関連付ける。なお、インシデント適用部10bは、関連付部の一例である。
【0034】
図5は、実行対象の臨床ワークフローの一例を示す図である。
図5の例に示す臨床ワークフロー30は、患者の冠動脈の検査を目的とする臨床ワークフローである。臨床ワークフロー30は、超低線量のX線による撮影により得たCT画像から、患者の冠動脈の石灰化領域を抽出し、抽出した石灰化領域に基づく指標(スコア)を算出する解析を含む。また、臨床ワークフロー30は、患者の冠動脈が明瞭に描出された画像を得るために、造影剤が注入された後のCT画像から、造影剤が注入される前のCT画像をサブストラクションし、冠動脈が明瞭に描出された画像を解析する処理を含む。臨床ワークフロー30は、X線CT装置21が主体となって行われる。なお、臨床ワークフロー30のIDは、「冠動脈サブストラクション」である。
【0035】
臨床ワークフロー30では、業務内容が定義されたプロセス31〜41が実行される順番に並べられている。プロセス31は、位置決め画像としての患者の2次元スキャノ像の撮影に関する内容が定義されたプロセスである。プロセス32は、位置決め撮影と同程度の超低線量でCT画像の撮影に関する内容が定義されたプロセスである。プロセス33は、患者の冠動脈の石灰化スコアの算出に関する内容が定義されたプロセスである。プロセス34は、算出された石灰化スコアの解析に関する内容が定義されたプロセスである。
【0036】
プロセス35は、患者に投影剤を投与する前の患者の関心領域のCT画像の撮影に関する内容が定義されたプロセスである。プロセス36は、患者の関心領域(冠動脈)に投影剤が到達したか否かの監視に関するプロセスである。プロセス37は、患者の関心領域に投影剤が到達した状態での関心領域のCT画像の撮影に関する内容が定義されたプロセスである。プロセス38は、複数の位相で撮影された投影剤を投与する前の患者の関心領域のCT画像の位相と、複数の位相で撮影された患者の関心領域に投影剤が到達した状態での関心領域のCT画像の位相とのペアの決定に関する内容が定義されたプロセスである。プロセス39は、位相が決定された患者の関心領域に投影剤が到達した状態での関心領域のCT画像から、位相が決定された投影剤を投与する前の患者の関心領域のCT画像をサブストラクションすることに関する内容が定義されたプロセスである。プロセス40は、サブストラクションにより得られた冠動脈の画像に対する画像処理に関する内容が定義されたプロセスである。プロセス41は、冠動脈の石灰化のレポートの作成に関する内容が定義されたプロセスである。
【0037】
プロセス31〜プロセス40は、X線CT装置21により実行され、プロセス41は、ワークステーション23により実行される。なお、ワークステーション23がプロセス34を実行してもよい。
【0038】
ここで、インシデント適用部10bに、
図4の例に示すインシデント情報がインシデント情報収集部10aから送信され、
図5の例に示す臨床ワークフロー30が臨床ワークフロー決定部25から送信された場合について説明する。
図6は、インシデント適用部10bに、
図4の例に示すインシデント情報が送信され、
図5の例に示す臨床ワークフロー送信された場合について説明するための図である。
【0039】
インシデント適用部10bは、
図4の例に示すインシデント情報の「事象」の項目に含まれるインシデントの内容「呼吸過多確認」を取得する。また、インシデント適用部10bは、
図4の例に示すインシデント情報の「該当プロセス」の項目に含まれるプロセスのID「超低線量位置決めScan」を取得する。また、インシデント適用部10bは、
図4の例に示すインシデント情報の「コメント」の項目に含まれるリスクの対処方法のコメント「撮影前には患者の呼吸数を必ず確認しましょう!」を取得する。そして、インシデント適用部10bは、
図6に示すように、取得したプロセスのID「超低線量位置決めScan」が示すプロセス32に、取得したインシデントの内容「呼吸過多確認」42を関連付ける。また、インシデント適用部10bは、プロセス32に、取得したコメント「撮影前には患者の呼吸数を必ず確認しましょう!」43を関連付ける。
【0040】
また、インシデント適用部10bは、インシデント情報の「リスク」の項目に含まれるインシデントの発生により生じるリスクの内容をプロセスに対応付けてもよい。
図7は、リスクの内容をプロセスに対応付ける場合の一例を説明するための図である。例えば、インシデント情報の「コメント」の項目に、リスクの対処方法のコメント「β遮断薬を関連づける」が含まれ、「リスク」の項目に、リスクの内容「CTAで撮影が難しくなる」が含まれている場合について説明する。
【0041】
かかる場合、インシデント適用部10bは、インシデント情報の「コメント」の項目に含まれるコメント「β遮断薬を関連づける」を取得し、「リスク」の項目に含まれるリスクの内容「CTAで撮影が難しくなる」を取得する。そして、インシデント適用部10bは、
図7の例に示すように、プロセス32に、コメント「β遮断薬を関連づける」及びリスクの内容「CTAで撮影が難しくなる」44を関連付ける。
【0042】
また、インシデント適用部10bは、インシデント収集部10aにより取得された上述の統計情報を、プロセスに関連付けてもよい。
図8は、統計情報をプロセスに対応付ける場合の一例を説明するための図である。例えば、インシデント収集部10aにより、対象のインシデントの特定期間における病院ごとの発生数と、対象のインシデントの同一の患者における発生数とが取得された場合について説明する。
【0043】
かかる場合、インシデント適用部10bは、プロセス32に、対象のインシデントの特定期間における病院ごとの発生数を示す画像45を関連付ける。また、インシデント適用部10bは、プロセス32に、対象のインシデントの同一の患者における発生数46を関連付ける。
【0044】
また、インシデント適用部10bにより、
図9の例に示すように、プロセス34に、コメント「○○確認」47が関連付けられ、プロセス40に、コメント「△△確認」48が関連付けられた場合について説明する。この場合には、プロセス31〜37は、A病院のX線CT装置により実行され、プロセス38〜41は、読影センターであるB病院のワークステーションにより実行される。本実施形態では、A病院のX線CT装置がプロセス34を実行する場合に、後述のインシデント表示制御部10cにより、このX線CT装置の表示装置にコメント「○○確認」47が表示される。また、本実施形態では、B病院のワークステーションがプロセス40を実行する場合に、後述のインシデント表示制御部10cにより、このワークステーションの表示装置にコメント「△△確認」48が表示される。
【0045】
また、インシデント適用部10bは、インシデント情報を関連付けた臨床ワークフローを臨床フローDB25bに格納させるために、インシデント情報を関連付けた臨床ワークフローをワークフロー管理システム25に送信してもよい。インシデント情報を関連付けた臨床ワークフローを受信すると、ワークフロー管理システム25の臨床フロー決定部25aは、受信した臨床ワークフローを臨床フローDB25bに格納する。これにより、インシデント適用部10bは、再び、この臨床ワークフローを実行対象の臨床ワークフローをワークフロー管理システム25から取得した場合には、この臨床ワークフローに最後にインシデント情報を関連付けてから現在までの差分のインシデント情報を、この臨床ワークフローに関連付ければよい。これにより、最初から臨床ワークフローにインシデント情報を関連付けなくてもよいので、関連付けに要する処理時間を短縮することができる。
【0046】
インシデント表示制御部10cは、実行対象の臨床ワークフローに関連付けられたインシデント情報を表示させる。
【0047】
例えば、インシデント表示制御部10cは、実行中のプロセスに関連付けられたインシデント情報を、このプロセスを実行している装置の表示部に表示させる。ここで、
図6の例に示すように、プロセス32に、インシデントの内容「呼吸過多確認」42及びコメント「撮影前には患者の呼吸数を必ず確認しましょう!」43が関連付けられおり、X線CT装置21がプロセス32を実行中である場合について説明する。この場合には、インシデント表示制御部10cは、X線CT装置21の表示装置に、コメント「撮影前には患者の呼吸数を必ず確認しましょう!」を表示させる。
図10は、インシデント情報をTipsとして表示させる場合の一例を示す図である。例えば、X線CT装置21の表示装置には、受け取ったデータをTipsとして表示させるアプリケーションが常駐しており、インシデント表示制御部10cは、このアプリケーションに、コメント「撮影前には患者の呼吸数を必ず確認しましょう!」を送信する。すると、アプリケーションは、
図10の例に示すように、表示装置の画面60に、Tips「撮影前には患者の呼吸数を必ず確認しましょう!」61を表示する。これにより、プロセス32を実行中のX線CT装置21のユーザに、発生するインシデントによるリスクの対処方法を把握させることができる。したがって、適切な人物に、適切なタイミングでリスクの発生及びリスクの対処方法を把握させることができる。よって、インシデントの発生を抑制することができる。
【0048】
また、プロセス40に、コメント「患者に声をかけましょう!」が関連付けられおり、X線CT装置21がプロセス40を実行中である場合について説明する。この場合には、インシデント表示制御部10cは、X線CT装置21の表示装置に、コメント「患者に声をかけましょう!」を表示させる。
図11は、インシデント情報をTipsとして表示させる場合の一例を示す図である。例えば、インシデント表示制御部10cは、受け取ったデータをTipsとして表示させるアプリケーションに、コメント「患者に声をかけましょう!」を送信する。すると、アプリケーションは、
図11の例に示すように、表示装置の画面60に、Tips「患者に声をかけましょう!」62を表示する。これにより、プロセス40を実行中のX線CT装置21のユーザに、発生するインシデントによるリスクの対処方法を把握させることができる。したがって、適切な人物に、適切なタイミングでリスクの発生及びリスクの対象方法を把握させることができる。よって、インシデントの発生を抑制することができる。
【0049】
また、インシデント表示制御部10cは、ワークフロー管理システム25の表示装置に、臨床ワークフローとともに臨床ワークフローに関連付けられたインシデント情報を表示させてもよい。
図12は、ワークフロー管理システムの表示装置に、臨床ワークフローとともに臨床ワークフローに関連付けられたインシデント情報を表示させる場合の一例を説明するための図である。例えば、インシデント表示制御部10cは、プロセス51〜54が順番に並んだ臨床ワークフロー50とともに、プロセス51に関連付けられたコメント55を、ワークフロー管理システム25の表示装置に表示させてもよい。これにより、ワークフロー管理システムの管理者は、発生するインシデントによるリスクの対処方法などを把握して、プロセスを実行中の装置の操作者に、リスクの対処方法などを伝えることができる。
【0050】
また、インシデント表示制御部10cは、インシデント情報により各種の情報が示されるインシデントが、このインシデント情報に関連付けられているプロセスよりも後のプロセスに影響を及ぼす場合には、インシデント情報を、ユーザやフェーズに関わらず優先的に表示させてもよい。
【0051】
また、インシデント表示制御部10cは、インシデント情報に含まれる重要度に応じて、表示させるインシデント情報の表示態様を異ならせてもよい。例えば、インシデント表示制御部10cは、重要度が大きいほど、視認が容易になるように、表示させるインシデント情報のフォントサイズを大きくしたり、表示させるインシデント情報の色を濃い赤い色に近づけたりしてもよい。インシデント表示制御部10cは、重要度が小さいほど、表示させるインシデント情報のフォントサイズを小さくしたり、表示させるインシデント情報の色を薄い黒色に近づけたりしてもよい。これにより、重要度に応じた適切な表示を行うことができる。
【0052】
また、インシデント表示制御部10cは、ユーザの装置の操作の熟練度などに応じて、表示させるインシデント情報を変更してもよい。例えば、検査オーダーを行ったユーザの熟練度がスコア化されて登録された定義されたDBを管理装置10が保持し、インシデント表示制御部10cは、このDBから熟練度を取得する。ここで、熟練度が高いユーザに対して、重要度が低いインシデント情報を確認させてもあまり意味がないように考えられる。そこで、インシデント表示制御部10cは、熟練度が高いユーザが操作する装置の表示装置には、重要度が所定の基準以下のインシデント情報については表示させないようにしてもよい。
【0053】
また、インシデント表示制御部10cは、インシデントの発生により生じるリスク、リスクの対処方法、及び、インシデントに関する統計情報の少なくとも1つを、プロセスを実行中の装置の表示装置に表示させてもよい。
【0054】
図13は、第1の実施形態に係るインシデント情報表示制御処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図13に示すように、臨床フロー決定部25aは、検査オーダーを取得する(ステップS101)。
【0055】
そして、臨床フロー決定部25aは、検査オーダーが示す実施対象の検査の目的に対応する臨床ワークフローを臨床フローDB25bから取得し、取得した臨床ワークフローを、実行対象の臨床ワークフローとして決定する。そして、臨床フロー決定部25aは、実行対象の臨床ワークフローを、インシデント適用部10bに送信し、また、実行対象の臨床ワークフローのIDをインシデント収集部10aに送信する(ステップS102)。
【0056】
そして、インシデント収集部10aは、臨床ワークフロー決定部24aから送信された、実行対象の臨床ワークフローのIDを受信すると、インシデントDB90aの全レコードの中から、受信したIDが登録されたレコードを検索する(ステップS103)。
【0057】
そして、インシデント収集部10aは、検索の結果得られたレコードを、実行対象の臨床ワークフローに対応するインシデント情報として取得する(ステップS104)。
【0058】
そして、インシデント適用部10bは、インシデント収集部10aから送信されたインシデント情報と、臨床フロー決定部25aから送信された実行対象の臨床ワークフローとを関連付ける(ステップS105)。
【0059】
そして、インシデント表示制御部10cは、実行対象の臨床ワークフローに関連付けられたインシデント情報を表示させ(ステップS106)、インシデント情報表示制御処理を終了する。
【0060】
以上、第1の実施形態に係る管理装置10について説明した。管理装置10によれば、上述したように、インシデントの発生を抑制することができる。
【0061】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る管理装置について説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
図14は、第2の実施形態に係る管理装置の構成例を示すブロック図である。
図14の例に示すように、第2の実施形態に係る管理装置80は、インシデント監視部80a、臨床フロー制御部80b、監視条件DB80cを更に有する点が、第1の実施形態に係る管理装置10と異なる。また、管理装置80に、ログDB99が接続されている点も、第1の実施形態と異なる。ここで、管理装置80は、第1の実施形態に係る管理装置10が実行可能な全ての処理を実行することができる。
【0062】
ログDB99は、リアルタイムで、病院内システム91や病院内システム91以外の複数の病院内システムに含まれる各種の医用画像診断装置やワークステーションなどの装置が生成したログが次々と登録されるデータベースである。例えば、図示しないサーバが、複数の病院内システムにおいて発生したログをリアルタイムで収集し、収集したログをログDB99に次々に登録する。
【0063】
ログについて説明する。例えば、あるインシデントが発生したタイミングで生成されるログや、あるインシデントが発生する数秒や数分などの所定時間前に、生成されるログなどがある。すなわち、あるインシデントが発生したことを検知したい場合には、このインシデントの発生とともに生成されるログの有無を監視すればよい。そこで、監視条件DB80cには、検知対象のインシデントが発生したタイミングで生成されるログや、検知対象のインシデントが発生する所定時間前に生成されるログが、ユーザにより登録される。このように、すなわち、インシデント監視制御部80aは、ユーザからログを登録する指示を受け付けると、指示にしたがって、監視条件であるログを監視条件DB80cに登録する。このように、ユーザから指示を受けて、監視条件であるログを監視条件DB80cに登録することを、インシデントの監視条件を監視条件DB80cに設定するという。
【0064】
インシデント監視部80aは、検知対象のインシデントの発生を検知する。例えば、インシデント監視部80aは、監視条件DB80cに登録されたログが、ログDB99に新たに登録されたか否かを繰り返し判定する。ここで、インシデント監視部80aが、監視条件DB80cに登録されたログが、ログDB99に新たに登録されたと判定した場合について説明する。新たに登録されたと判定したログが、検知対象のインシデントが発生したタイミングで生成されるログである場合には、インシデント監視部80aは、発生した検知対象のインシデントの種類を検知する。
【0065】
一方、新たに登録されたと判定したログが、検知対象のインシデントが発生するタイミングよりも所定時間前に生成されるログである場合には、インシデント監視部80aは、発生するであろう検知対象のインシデントの種類を検知する。
【0066】
そして、インシデント監視部80aによりインシデントの発生及び発生したインシデントの種類が検知されると、臨床フロー制御部80bは、臨床フローDB25bから、実施中の検査の目的、及び、発生したインシデントの種類のパターン(インシデントの発生パターン)に対応する臨床ワークフロー(推奨臨床ワークフロー)を取得する。
【0067】
ここで、第2の実施形態に係る臨床フローDB25bは、同一の検査の目的に対して、インシデントの発生パターンと、このインシデントの発生パターンに最適な臨床ワークフローとの組合せを予め複数記憶する。
図15は、第2の実施形態に係る臨床フローDB25bの一部のデータ構造の一例を示す図である。
図15の例に示すように、臨床フローDB25bは、同一の検査の目的「XXX」に対して、種類が「インシデント1」であるインシデント、種類が「インシデント2」であるインシデント、及び、その他の種類のインシデントの発生パターンと、この発生パターンに対して最適な臨床ワークフローとの組合せを複数記憶する。ここで、インシデントの発生パターンに対して最適な臨床ワークフローとは、発生したインシデントによるリスクを最小化する臨床ワークフローを指す。
【0068】
なお、
図15の例において、「×」は、該当する種類のインシデントが発生していないことを示し、「○」は、該当する種類のインシデントが発生していることを示す。
図15の例に示す臨床フローDB25bの1番目のレコードには、臨床ワークフロー81が登録されている。臨床ワークフロー81は、単純撮影の2つのプロセスと、造影撮影のプロセスと、再構成のプロセスと、画像診断の2つのプロセスと、レポートのプロセスとを含む。2番目のレコードには、臨床ワークフロー82が登録されている。臨床ワークフロー82は、単純撮影のプロセスと、造影撮影のプロセスと、再構成のプロセスと、画像診断のプロセスと、レポートのプロセスとを含む。3番目のレコードには、臨床ワークフロー83が登録されている。臨床ワークフロー83は、単純撮影のプロセスと、造影撮影のプロセスと、再構成のプロセスと、画像診断の2つのプロセスと、レポートのプロセスとを含む。これらの臨床ワークフロー81〜83は、検査の目的は同一であるが、対応するインシデントの発生パターンが異なる。
【0069】
図14に戻り、臨床フロー制御部80bは、取得した推奨臨床ワークフローを、プロセスを実行中の装置の表示装置に表示させる。そして、臨床フロー制御部80bは、実行中の臨床ワークフローを推奨臨床ワークフローに変更して、プロセスを実行中の装置に、実行中の臨床ワークフローに代えて推奨臨床ワークフローを実行させる。これにより、インシデントが発生した場合であっても、このインシデントのリスクを最小化する臨床ワークフローが実行されるので、インシデントの発生を抑制することができる。
【0070】
また、臨床フロー制御部80bは、複数の推奨臨床ワークフローを取得した場合には、複数の推奨臨床ワークフローを、プロセスを実行中の装置の表示装置に表示させ、実行させる推奨臨床ワークフローをユーザに選択させてもよい。
【0071】
ここで、第2の実施形態に係る臨床フローDB25bのデータ構造は、
図15の例に示したデータ構造に限定されない。
図16は、第2の実施形態に係る臨床フローDB25bのデータ構造の他の一例を示す図である。
図16の例に示すように、臨床フローDB25bは、同一の検査の目的に対して、インシデントの発生パターンと、このインシデントの発生パターンに最適な臨床ワークフローと検査を依頼するユーザ(検査依頼科医)との組合せを予め複数記憶する。
図16では、検査の目的に加え、インシデントの発生パターンが同一であっても、検査依頼科医「AAA」と、検査依頼科医「BBB」と、検査依頼科医「CCC」とでは、推奨臨床ワークフローが異なる場合が例示されている。
【0072】
第2の実施形態に係る臨床フローDB25bのデータ構造が
図16の例に示すようなデータ構造である場合には、臨床フロー制御部80bは、推奨臨床ワークフローを取得する方法の一例について説明する。臨床フロー制御部80bは、臨床フローDB25bから、実施中の検査の目的、発生したインシデントのパターン、及び、検査を依頼した検査依頼科医に対応する推奨臨床ワークフローを取得する。
【0073】
図17は、第2の実施形態に係る臨床ワークフロー変更処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図17に示すように、ユーザから指示を受けて、インシデントの監視条件を監視条件DB80cに設定する(ステップS201)。
【0074】
そして、インシデント監視部80aは、監視条件として設定されたログが、ログDB99に新たに登録されているか否かの監視を開始する(ステップS202)。
【0075】
そして、X線CT装置21やMRI装置22などの医用画像診断装置やワークステーションなどの装置は、検査を開始(再開)する(ステップS203)。
【0076】
そして、インシデント監視部80aは、監視条件として設定されたログが、ログDB99に新たに登録されたか否かを判定することにより、検知対象のインシデントが発生したか否かを判定する(ステップS204)。
【0077】
監視条件として設定されたログが、ログDB99に新たに登録された場合(ステップS204;Yes)には、臨床フロー制御部80bは、臨床フローDB25bから、実施中の検査の目的、及び、発生したインシデントの種類のパターンに対応する推奨臨床ワークフローを取得する(ステップS208)。
【0078】
臨床フロー制御部80bは、取得した推奨臨床ワークフローを、プロセスを実行中の装置の表示装置に表示させる(ステップS209)。そして、臨床フロー制御部80bは、実行中の臨床ワークフローを推奨臨床ワークフローに変更して、プロセスを実行中の装置に、実行中の臨床ワークフローに代えて推奨臨床ワークフローを実行させ(ステップS210)、ステップS201に戻る。
【0079】
一方、監視条件として設定されたログが、ログDB99に新たに登録されていない場合(ステップS204;No)には、インシデント監視部80aは、検査を終了するか否かを判定する(ステップS205)。検査を終了しない場合(ステップS205;No)には、インシデント監視部80aは、ステップS204に戻る。一方、検査を終了する場合(ステップS205;Yes)には、インシデント監視部80aは、検査を終了する(ステップS206)。そして、インシデント監視部80aは、監視条件として設定されたログが、ログDB99に新たに登録されたか否かの監視、すなわち、検知対象のインシデントの発生の監視を終了し(ステップS207)、臨床ワークフロー変更処理を終了する。
【0080】
以上、第2の実施形態に係る管理装置80について説明した。管理装置80によれば、上述したように、インシデントの発生を抑制することができる。
【0081】
なお、上記の実施形態において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0082】
また、上記の実施形態で説明した管理方法は、予め用意された管理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。この管理プログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、この管理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD、USBメモリ及びSDカードメモリ等のFlashメモリ等、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録され、コンピュータによって非一時的な記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0083】
以上述べた少なくとも1つの実施形態の管理装置によれば、インシデントの発生を抑制することができる。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。