(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部が、前記回転軸から前記砥石と前記ワークの接触点までの距離が所定の距離以上の場合に、前記回転数が前記回転軸から前記砥石と前記ワークの接触点までの距離が小さくなる程大きくなり、前記送り速度が前記回転軸から前記砥石と前記ワークの接触点までの距離が小さくなる程大きくなり、且つ、単位時間内に前記砥石が前記ワークに接触する面積が前記回転軸から前記砥石と前記ワークの接触点までの距離が小さくなる程大きくなるよう前記ワークスピンドル及び前記移動手段を制御する請求項1記載の研削装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
実施形態の研削装置は、ワークを回転軸の周りに所望の回転数で回転させるワークスピンドルと、ワークを研削する砥石を回転させる砥石スピンドルと、砥石スピンドルが固定され、砥石を回転軸に対し直交する方向に所望の送り速度で移動させる移動手段と、回転数が回転軸から砥石とワークの接触点までの距離が小さくなる程大きくなり、送り速度が回転軸から砥石とワークの接触点までの距離が小さくなる程大きくなり、且つ、単位時間内に砥石がワークに接触する面積が回転軸から砥石とワークの接触点までの距離が小さくなる程大きくなるようワークスピンドル及び移動手段を制御する制御部と、を備える。
【0018】
実施形態の研削装置は、ワークを軸対称非球面の形状に加工する際に、特に有用である。実施形態の研削装置は、上記構成により、ワークを軸対称非球面の形状に加工する際に、ワークの外周部と中心付近の加工条件の差異を小さくし、ワークの表面粗さや形状誤差を抑制し、加工品質を向上させることが可能となる。また、加工品質を向上させつつ、加工時間を短縮することが可能となる。
【0019】
図1は、実施形態の研削装置の一例を示す概略図である。実施形態の研削装置は、直交3軸加工機である。実施形態の直交3軸加工機は、NC超精密非球面研削盤である。
【0020】
図1に示すように、実施形態の研削加工装置100は、その主要な構成として、機台10、X軸テーブル(移動手段)12、Y軸テーブル14、Z軸テーブル16、ワークスピンドルユニット18、ワークスピンドル18a、ワークスピンドルモータ18b、ジグ18c、工具スピンドルユニット20、工具スピンドル20a、工具スピンドルモータ20b、砥石22、数値制御部24、Y軸カラム26を備える。
【0021】
X軸テーブル12は、機台10上に設けられる。X軸テーブル12は、X軸方向に直線移動が可能である。X軸テーブル12は、例えば、図示しないサーボモータにより駆動される。
【0022】
Z軸テーブル16は、機台10上に設けられる。Z軸テーブル16は、Z軸方向に直線移動が可能である。Z軸テーブル16は、例えば、図示しないサーボモータにより駆動される。
【0023】
Z軸テーブル16上には、ワークスピンドルユニット18が搭載されている。ワークスピンドルユニット18は、ワークスピンドル18a、ワークスピンドルモータ18b、及び、ジグ18cを備える。
【0024】
ワークスピンドル18aは、空気軸受けにより回転軸Aの周りに回転可能である。ワークスピンドル18aは、ワークスピンドルモータ18bにより回転駆動される。
【0025】
ジグ18cは、ワークスピンドル18aの先端部に固定される。ジグ18cは、ワークWを保持する。ワークスピンドル18aは、ワークWを回転軸Aの周りに所望の回転数で回転させる。
【0026】
Y軸カラム26は、X軸テーブル12上に固定される。Y軸カラム26は、Y軸テーブル14を支持している。Y軸テーブル14は、Y軸方向(鉛直方向)に直線移動が可能である。Y軸テーブル14は、例えば、図示しないサーボモータにより駆動される。
【0027】
Y軸テーブル14には、工具スピンドルユニット20が固定されている。工具スピンドルユニット20は、工具スピンドル20a、及び、工具スピンドルモータ20bを備える。
【0028】
工具スピンドル20aは、空気軸受けにより回転軸Bの周りに回転可能である。工具スピンドル20aは、工具スピンドルモータ20bにより回転駆動される。
【0029】
工具スピンドル20aの先端に、工具としての砥石22が取付られる。工具スピンドル20aにより砥石22が回転される。回転する砥石22により、ワークWが研削される。
【0030】
工具スピンドル20aは、X軸テーブル(移動手段)12に間接的に固定される。X軸テーブル12は、砥石22を回転軸Aに対し直交する方向に所望の送り速度で移動させる。
【0031】
砥石22は、例えば、円盤状のV型砥石である。砥石22は、例えば、ダイヤモンド砥粒が樹脂で固められたレジンボンド系砥石である。
【0032】
ワークWは、例えば、半径が3mm以上30mm以下の非球面レンズ、又は、非球面レンズ用の硝材である。
【0033】
数値制御部24は、例えば、マイクロコントローラである。数値制御部24を構成するマイクロコンピュータは、例えば、CPU、メモリを備える。メモリには、NC加工プログラムが記憶される。
【0034】
数値制御部24は、X軸テーブル12、Y軸テーブル14、及び、Z軸テーブル16をNC加工プログラムに従って制御する。数値制御部24は、X軸、Y軸、及び、Z軸の同時3軸制御を行う。
【0035】
X軸、Y軸、及び、Z軸の各制御軸に関しては、図示しないリニアスケール等が設けられ、フルクローズド方式による位置フィードバック制御が行われる。
【0036】
X軸テーブル12、Y軸テーブル14、及び、Z軸テーブル16の位置を、1nm以下の精度で制御することが、非球面の加工精度を向上させる観点から望ましい。
【0037】
また、数値制御部24は、NC加工プログラムに従って、ワークスピンドルユニット18、及び、工具スピンドルユニット20を制御する。数値制御部24は、ワークスピンドルモータ18bの回転を制御することで、ワークWの回転数を制御する。また、数値制御部24は、工具スピンドルモータ20bの回転を制御することで、砥石22の回転数を制御する。
【0038】
ワークWの回転数は、例えば、10rpm以上300rpm以下である。ワークWの回転数は、回転軸Aから砥石22とワークWの接触点(加工点)までの距離を関数として制御することが可能である。ワークWの回転数を、0.01rpm以下の精度で制御することが、非球面の加工精度を向上させる観点から望ましい。
【0039】
砥石22の回転数は、例えば、200rpm以上7000rpm以下である。
【0040】
図2は、実施形態の研削装置の制御を説明する図である。以下、ワークWが非球面レンズ用の硝材であり、凸レンズを製造する場合を例に説明する。
【0041】
実施形態の研削装置100は、
図2に示すように、ワークWを回転軸A(Z軸)の周りに所望の回転数で回転させる。また、砥石22を回転軸Bの周りに回転させる。
【0042】
次に、砥石22の外周を、ワークWの凸部の外周縁部に接触させる。そして、砥石22を凸部表面に沿って凸部の中心部まで所望の送り速度で移動させながらワークWの研削加工を行う。砥石22の送り速度は、例えば、1mm/min以上15mm/min以下である。砥石22によるワークWの切り込み深さ(研削厚み)は、例えば、0.25μm以上10μm以下である。
【0043】
ワークWと砥石22の相対移動は、数値制御部24によるXステージ12、及び、Zステージ16の制御により行われる。
【0044】
砥石22とワークWの接触点(加工点)を、図中Pで表す。また、時間tにおける回転軸Aから砥石22とワークWの接触点Pまでの距離を図中R(t)で示す。
【0045】
実施形態の研削装置100は、数値制御部24が、回転軸Aから砥石22とワークWの接触点Pまでの距離R(t)が小さくなる程、ワークWの回転数が大きくなるようワークスピンドル18aを制御する。また、数値制御部24が、回転軸Aから砥石22とワークWの接触点Pまでの距離R(t)が小さくなる程、砥石22の送り速度が大きくなるようXステージ12を制御する。更に、数値制御部24が、回転軸Aから砥石22とワークWの接触点Pまでの距離が小さくなる程、単位時間内に砥石22がワークWに接触する面積が大きくなるようワークスピンドル18a及びXステージ12を制御する。言い換えれば、回転軸Aから砥石22とワークWの接触点Pまでの距離が小さくなる程、単位時間内に砥石22がワークWを研削する面積が大きくなるようワークスピンドル18a及びXステージ12を制御する。
【0046】
図3は、実施形態の研削装置の制御の一具体例の説明図である。この具体例では、数値制御部24が、ワークWの回転数が、回転軸Aから砥石22とワークWの接触点Pまでの距離R(t)に反比例するようワークスピンドル18aを制御する。また、数値制御部24が、砥石22の送り速度が回転軸Aから砥石22とワークの接触点Pまでの距離R(t)に反比例するようXステージ12を制御する。
【0047】
この具体例では、時間tにおける砥石22の送り速度をVf(t)、回転数をT(t)とすると、
Vf(t)=a/R(t) ・・・(1)
T(t)=b/R(t) ・・・(2)
が成立する。ここで、aとbは定数である。
【0048】
時間tにおけるワークWの周速度をVw(t)とすると、
Vw(t)=2πR(t)×T(t)=2πb ・・・(3)
となる。したがって、周速度Vw(t)は、回転軸Aから砥石22とワークWの接触点Pまでの距離R(t)に依存せず一定となる。
【0049】
また、ワークWの一回転当たりの砥石22の送り量(ピッチ)であるVf(t)/T(t)は、
Vf(t)/T(t)=a/b ・・・(4)
となる。したがって、送り量Vf(t)/T(t)は、回転軸Aから砥石22とワークWの接触点Pまでの距離R(t)に依存せず一定となる。
【0050】
また、単位時間内に砥石22がワークWに接触する面積S(t)は、Vf(t)及びVw(t)がΔt秒間の平均速度とすると、近似的に、
S(t)=Vf(t)Δt×Vw(t)Δt ・・・(5)
と表される。
【0051】
実施形態の研削装置の制御では、ワークWの内周部の回転数T
inside、ワークWの外周部の回転数T
outside、ワークWの内周部の送り速度Vf
inside、ワークWの外周部の送り速度Vf
outside、ワークWの内周部で単位時間内に砥石22がワークWに接触する面積S
inside、ワークWの外周部で単位時間内に砥石22がワークWに接触する面積S
outsideが、下記式(6)、(7)、(8)を充足するようワークスピンドル18a及びXステージ12が制御される。
T
inside>T
outside ・・・(6)
Vf
inside>Vf
outside ・・・(7)
S
inside>S
outside ・・・(8)
【0052】
更に、
図3に示す具体例の場合には、ワークWの内周部の周速度Vw
inside、ワークWの外周部の周速度Vw
outsideが、下記式(9)を充足するようワークスピンドル18a及びXステージ12が制御される。
Vw
inside=Vw
outside ・・・(9)
【0053】
次に、実施形態の研削方法について簡単に説明する。実施形態の研削方法は、
図1に示す研削装置100を用いて実施される。以下、
図1乃至
図3を参照しつつ説明する。
【0054】
実施形態の研削方法は、ワークWを回転軸Aの周りに所望の回転数T(t)で回転させる。そして、回転する砥石22をワークWに接触させてワークWを研削し、砥石22を回転軸Aに対し直交する方向に所望の送り速度Vf(t)で移動させる。ここで、回転数T(t)が回転軸Aから砥石22とワークWの接触点までの距離R(t)が小さくなる程大きくなり、送り速度Vf(t)が回転軸Aから砥石22とワークWの接触点Pまでの距離が小さくなる程大きくなり、且つ、単位時間内に砥石22がワークWに接触する面積S(t)が回転軸Aから砥石22とワークWの接触点Pまでの距離R(t)が小さくなる程大きくなるよう、ワークWを回転し、砥石22を移動させる。
【0055】
上記研削方法において、回転数T(t)が回転軸Aから砥石22とワークWの接触点Pまでの距離R(t)に反比例するよう、ワークWを回転させることが望ましい。
【0056】
また、上記研削方法において、送り速度Vf(t)が回転軸Aから砥石22とワークWの接触点Pまでの距離R(t)に反比例するよう、砥石22を移動させることが望ましい。
【0057】
次に、実施形態の研削装置及び研削方法の作用及び効果について説明する。
図4は、第1の比較形態の研削装置の制御の説明図である。
図5は、第2の比較形態の研削装置の制御の説明図である。
【0058】
第1の比較形態の研削装置の制御は、実施形態の研削装置の制御とは異なり、時間tにおける砥石22の送り速度Vf(t)、及び、回転数T(t)が、時間に依存せず一定である。
【0059】
第1の比較形態の研削装置の制御では、T
inside、T
outside、Vf
inside、Vf
outside、S
inside、S
outside、Vw
inside、Vw
outsideが下記式(10)〜(13)を充足する。
T
inside=T
outside ・・・(10)
Vf
inside=Vf
outside ・・・(11)
S
inside<S
outside ・・・(12)
Vw
inside<Vw
outside ・・・(13)
【0060】
第1の比較形態の研削装置の制御では、研削条件がワークWの内周部と外周部で、異なることから加工品質の不均一が生じる。具体的には、ワークWの内周部と外周部で表面粗さや形状誤差が大きくなる。ここで、形状誤差とは、設計上の形状と、実際の加工形状との差分である。
【0061】
加工品質の不均一が生じる要因として、ワークWの内周部で単位時間内に砥石22がワークWに接触する面積S
insideと、ワークWの外周部で単位時間内に砥石22がワークWに接触する面積S
outsideが異なることが考えられる。
【0062】
そこで、第2の比較形態の研削装置の制御は、単位時間内に砥石22がワークWに接触する面積S(t)が一定となるよう、砥石22の送り速度Vf(t)を制御する。すなわち、下記式(14)が充足されるよう制御する。式(14)が充足されることにより、ワークWの内周部の送り速度Vf(t)が外周部の送り速度Vf(t)よりも大きくなる。
Vf(t)=a/R(t) ・・・(14)
【0063】
単位時間内に砥石22がワークWに接触する面積S(t)は、Vf(t)及びVw(t)がΔt秒間の平均速度とすると、近似的に、
S(t)=Vf(t)Δt×Vw(t)Δt ・・・(15)
と表される。
【0064】
ここで、
Vf(t)=a/R(t) ・・・(16)
Vw(t)=2πR(t)×T(t) ・・・(17)
であるため、Vf(t)×Vw(t)は常に一定値となる。
【0065】
任意の時間、t
1及びt
2における面積S(t)は、それぞれ、
S(t
1)=Vf(t
1)Δt×Vw(t
1)Δt ・・・(18)
S(t
2)=Vf(t
2)Δt×Vw(t
2)Δt ・・・(19)
となる。
【0066】
Vf(t
1)×Vw(t
1)=Vf(t
2)×Vw(t
2)=p ・・・(20)
とすると、式(18)及び式(19)は、それぞれ、
S(t
1)=p(Δt)
2 ・・・(21)
S(t
2)=p(Δt)
2 ・・・(22)
となる。
【0067】
式(21)、(22)より、
S(t
1)=S(t
2)・・・(23)
となり、第2の比較形態の制御では、式(14)が充足されることにより、単位時間内に砥石22がワークWに接触する面積S(t)が一定となることが分かる。
【0068】
第2の比較形態の研削装置の制御では、T
inside、T
outside、Vf
inside、Vf
outside、S
inside、S
outside、Vw
inside、Vw
outsideが下記式(24)〜(27)を充足する。
T
inside=T
outside ・・・(24)
Vf
inside>Vf
outside ・・・(25)
S
inside=S
outside ・・・(26)
Vw
inside<Vw
outside ・・・(27)
【0069】
ワークWの内周部の送り速度Vf(t)を外周部の送り速度Vf(t)よりも大きくすることで、単位時間内に砥石22がワークWに接触する面積S(t)が、ワークWの内周部と外周部で等しくなる。しかしながら、第2の比較形態の制御では、第1の比較形態と比較して、ワークWの内周部の加工品質が劣化することが明らかになっている。
【0070】
実施形態の研削装置の制御は、送り速度Vf(t)の制御に加え、周速度Vw(t)も制御する。具体的には、まず、第2の比較形態同様、ワークWの内周部の送り速度Vf(t)を外周部の送り速度Vf(t)よりも大きくする。
【0071】
加えて、ワークWの内周部の回転数T(t)を外周部の回転数T(t)よりも大きくする。仮に、ワークWの外周部の周速度Vw(t)が第2の比較形態と等しいとすると、ワークWの内周部の周速度Vw(t)が第2の比較形態よりも大きくなる。更に、ワークWの内周部の単位時間内に砥石22がワークWに接触する面積S(t)が、ワークWの外周部の単位時間内に砥石22がワークWに接触する面積S(t)よりも大きくなるよう制御する。
【0072】
実施形態の研削装置の制御は、上記構成により、ワークWの内周部の研削条件と、外周部の研削条件との均質性が高まる。したがって、加工品質の均一性が向上する。具体的には、ワークWの表面粗さや形状誤差が小さくなる。
【0073】
また、実施形態の研削装置の制御は、ワークWの内周部の送り速度Vf(t)を外周部の送り速度Vf(t)よりも大きくし、且つ、ワークWの内周部の回転数T(t)を外周部の回転数T(t)よりも大きくすることで、例えば、第1の比較形態に比べ、加工品質を向上させつつ、加工時間を短縮することが可能となる。
【0074】
なお、
図3の具体例で示すように、回転数T(t)が回転軸Aから砥石22とワークWの接触点Pまでの距離R(t)に反比例するよう制御することが、ワークWの表面粗さや形状誤差を小さくする観点から望ましい。また、送り速度Vf(t)が回転軸Aから砥石22とワークの接触点Pまでの距離R(t)に反比例するよう制御することが、ワークWの表面粗さや形状誤差を小さくする観点から望ましい。
【0075】
図3の具体例では、上述のように、ワークWの周速度Vw(t)が一定となり、且つ、ワークWの一回転当たりの砥石22の送り量Vf(t)/T(t)が一定となる。この加工条件で加工することにより、更に、ワークWの表面粗さや形状誤差が小さくなる。
【0076】
なお、実施形態の制御において、例えば、
図3の具体例のように、
Vf(t)=a/R(t) ・・・(28)
T(t)=b/R(t) ・・・(29)
を、充足させようとする場合、砥石22がワークWの中心部近傍に来ると、送り速度Vf(t)や、回転数T(t)が極めて大きくなり、安定した加工制御が困難となる。このため、加工品質が劣化する恐れがある。
【0077】
したがって、数値制御部24が、回転軸Aから砥石22とワークWの接触点Pまでの距離R(t)が所定の距離以上の場合に、回転軸Aから砥石22とワークWの接触点Pまでの距離R(t)が小さくなる程、ワークWの回転数が大きくなり、回転軸Aから砥石22とワークWの接触点Pまでの距離R(t)が小さくなる程、砥石22の送り速度が大きくなり、回転軸Aから砥石22とワークWの接触点Pまでの距離が小さくなる程、単位時間内に砥石22がワークWに接触する面積が大きくなるようワークスピンドル18a及びXステージ12を制御することが望ましい。
【0078】
例えば、距離R(t)が0.5mm以上、より望ましくは1mm以上の場合に、ワークスピンドル18a及びXステージ12を上記条件で制御することが望ましい。また、例えば、距離R(t)が0.5mm以上、より望ましくは1mm以上の場合に、ワークWの回転数及び砥石22の送り速度が一定値となるよう、ワークスピンドル18a及びXステージ12を上記条件で制御することが望ましい。
【0079】
(第1の変形例)
図6は、実施形態の第1の変形例の制御を説明する図である。ワークWが非球面レンズ用の硝材であり、凹レンズを製造する場合である。砥石22の外周を、ワークWの凹部の外周縁部に接触させる。そして、砥石22を凹部表面に沿って凹部の中心部まで所望の送り速度で移動させながらワークWの研削加工を行う。上記以外の制御は、実施形態と同様である。
【0080】
(第2の変形例)
図7は、実施形態の第2の変形例の制御を説明する図である。ワークWが非球面レンズ用の超硬合金の金型であり、凸レンズ用の金型を製造する場合である。砥石22の外周を、ワークWの凹部の外周縁部に接触させる。そして、砥石22を凹部表面に沿って凹部の中心部まで所望の送り速度で移動させながらワークWの研削加工を行う。上記以外の制御は、実施形態と同様である。
【0081】
(第3の変形例)
図8は、実施形態の第3の変形例の制御を説明する図である。ワークWが非球面レンズ用の超硬合金の金型であり、凹レンズ用の金型を製造する場合である。ワークWが異なる以外は、実施形態と同様の制御を行う。
【実施例】
【0082】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0083】
(実施例)
実施形態の研削方法を用いて、半径15mmの非球面レンズ用の硝材を研削加工し、凸レンズを製造した。砥石22の送り速度が、ワークWの回転軸Aから砥石22とワークWの接触点Pまでの距離(以下、中心からの距離)に反比例するように制御した。また、ワークWの回転数が、中心からの距離に反比例するように制御した。
【0084】
図9は、実施例の加工条件を示す図である。
図9(a)は中心からの距離と、送り速度の関係を示す図である。
図9(b)は中心からの距離と、ワークWの回転数の関係を示す図である。
【0085】
図9(a)に示すように、送り速度は、1mm/minから15mm/minの範囲で変化させた。中心近傍の加工を安定させるため、中心からの距離が1mmまでは、送り速度は15mm/minで一定とした。
【0086】
図9(b)に示すように、ワークWの回転数は、10rpmから150rpmの範囲で変化させた。中心近傍の加工を安定させるため、中心からの距離が1mmまでは、ワークWの回転数は150rpmで一定とした。
【0087】
砥石22の回転数は、7000rpmとした。また、X軸テーブル12、Y軸テーブル14、及び、Z軸テーブル16の位置を、1nm以下の精度で制御した。また、ワークWの回転数を、0.01rpm以下の精度で制御した。
【0088】
(比較例1)
第1の比較形態の研削方法を用いて、半径15mmの非球面レンズ用の硝材を研削加工し、凸レンズを製造した。砥石22の送り速度は、1mm/minで一定とした。ワークWの回転数は、10rpmで一定とした。砥石22の回転数は、7000rpmとした。また、X軸テーブル12、Y軸テーブル14、及び、Z軸テーブル16の位置を、1nm以下の精度で制御した。また、ワークWの回転数を、0.01rpm以下の精度で制御した。
【0089】
(比較例2)
第2の比較形態の研削方法を用いて、半径15mmの非球面レンズ用の硝材を研削加工し、凸レンズを製造した。砥石22の送り速度が、中心からの距離に反比例するように制御した。送り速度は、1mm/minから6mm/minの範囲で変化させた。中心近傍の加工を安定させるため、中心からの距離が2.5mmまでは、送り速度は6mm/minで一定とした。ワークWの回転数は、10rpmで一定とした。砥石22の回転数は、7000rpmとした。また、X軸テーブル12、Y軸テーブル14、及び、Z軸テーブル16の位置を、1nm以下の精度で制御した。また、ワークWの回転数を、0.01rpm以下の精度で制御した。
【0090】
図10は、実施例と比較例1の表面粗さの測定結果を示す図である。表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)である。実施例は比較例1とくらべ、ワークの外周部でのRaが小さくなっている。実施例のRaの平均値は4.2nmであった。比較例1のRaの平均値は4.8nmであった。なお、Raが小さくなることによって、形状誤差も小さくなる。
【0091】
図11は、比較例1と比較例2の表面粗さの測定結果を示す図である。比較例2は、比較例1に比べ、ワークの内周部の表面粗さが極めて大きくなった。比較例2のRaの平均値は、28.5nmであった。
【0092】
以上の結果より、実施例により、ワークの表面粗さや形状誤差が抑制できることが明らかになった。また、実施例の加工時間は240分、比較例1の加工時間は378分、比較例2の加工時間は243分であった。実施例の加工時間は、比較例1の加工時間から37%短縮された。したがって、実施例により、ワークの表面粗さや形状誤差を抑制しつつ、加工時間も短縮できることが明らかになった。
【0093】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態及び実施例について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。実施形態においては、研削装置、研削方法等で、本発明の説明に直接必要としない部分については記載を省略したが、必要とされる研削装置、研削方法等に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0094】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての研削装置、研削方法は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物の範囲によって定義されるものである。
【0095】
例えば、実施形態では、ワークWとして、非球面レンズ用の硝材や非球面レンズ用の超硬合金の金型である場合を例に説明した。ワークWは、非球面レンズ用のプラスチックであっても構わない。