(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437350
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】トンネル内の列車風を利用した風力発電方法
(51)【国際特許分類】
F03D 9/46 20160101AFI20181203BHJP
E21F 16/02 20060101ALI20181203BHJP
E21F 17/00 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
F03D9/46
E21F16/02
E21F17/00
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-48922(P2015-48922)
(22)【出願日】2015年3月12日
(65)【公開番号】特開2016-169639(P2016-169639A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2017年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100089635
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 守
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(72)【発明者】
【氏名】仲山 貴司
(72)【発明者】
【氏名】富樫 陽太
(72)【発明者】
【氏名】牛田 貴士
【審査官】
谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−156300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 9/46
E21F 16/02
E21F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル覆工にアーチ状に設置された漏水を導くトンネル樋に、外部に突出した取込口と該取込口に連通する送風ダクトを設け、走行する列車により発生する列車風を前記取込口より取り込み、前記送風ダクトを介して前記トンネル樋内を発電機に導いて電力を得ることを特徴とするトンネル内の列車風を利用した風力発電方法。
【請求項2】
請求項1記載のトンネル内の列車風を利用した風力発電方法において、トンネル内に配置される計測機に供給する電力を確保することを特徴とするトンネル内の列車風を利用した風力発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内の列車風を利用した風力発電方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の既存技術としては、沿岸などの強風地域で用いられる風力発電がある。風力発電は、地球上の大気の流れによる風力でプロペラを回転させ、発電する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−322772号公報
【特許文献2】特開2003−232200号公報
【特許文献3】特開2000−303800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トンネル内を走行する列車により発生する列車風は、新幹線車両の通過時には最大で20m/sとなり、非常に大きなエネルギーを持つ場合がある。東日本大震災以降の日本の電力事情を鑑みると、このような大きなエネルギーを再利用し、電力不足を少しでも補うような技術開発が工学の分野だけでなく日本社会全般で必要とされている。また、トンネルの維持管理の分野でも、トンネル変状を精緻にモニタリングする計測技術が実用化段階に進みつつあり、トンネルの安全を確かなものにするためには、計測の精度も必然的に高める必要がある。高度な計測には大きな電力量が必要であるため、計測機の電力をトンネル内で確実に、継続的に得られる技術開発が必須である。
【0005】
本発明は、上記状況に鑑みて、トンネル内を走行する列車により発生する列車風を利用し
、トンネル内で電力を確実に、継続的に得られるようにした
、トンネル内の列車風を利用した風力発電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕トンネル内の列車風を利用した風力発電方法において、トンネル
覆工にアーチ状に設置された漏水を導くトンネル樋に、外部に突出した取込口と該取込口に連通する送風ダクトを設け、走行する列車により発生する列車風を
前記取込口より取り込み、
前記送風ダクトを介して前記トンネル樋内を発電機に導いて電力を得ることを特徴とする。
【0007】
〔2〕上記〔1
〕記載のトンネル内の列車風を利用した風力発電方法において、トンネル内に配置される計測機に供給する電力を確保することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トンネル内の列車風を有効利用することができる。
【0009】
列車風は非常に大きなエネルギーを持つが、有効利用されている事例は少ない。上記課題で述べたように、近年の電力事情を鑑みると、このような大きなエネルギーを有効利用できる本発明は日本社会にとって極めて有用であると言える。
【0010】
また、トンネル内で確実に、継続的に電力を得ることができる。
【0011】
現状では、トンネル内で安定な電力を得ることは非常に難しいが、本発明によれば、安定的に継続して電力を得ることができる。トンネル覆工の変状調査が高度化している状況を踏まえると、本発明によって高度な計測機に供給する電力を安定して確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るトンネルと樋を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施例を示すトンネル覆工に配置された樋内の列車風の動きを示す模式図である。
【
図3】本発明の実施例を示す列車風の取込口の形状を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施例を示す列車風による発電の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のトンネル内の列車風を利用した風力発電方法は、トンネル
覆工にアーチ状に設置された漏水を導くトンネル樋に、外部に突出した取込口と該取込口に連通する送風ダクトを設け、走行する列車により発生する列車風を
前記取込口より取り込み、
前記送風ダクトを介して前記トンネル樋内を発電機に導いて電力を得る。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明に係るトンネルと樋を示す模式図である。
【0016】
この図において、1はトンネル、3はトンネル1のトンネル覆工2に配置された樋である。
【0017】
図2は本発明の実施例を示すトンネル覆工に配置された樋内の列車風の動きを示す模式図、
図3は本発明の実施例を示す列車風の取込口の形状を示す模式図、
図4は本発明の実施例を示す列車風による発電の模式図である。
【0018】
これらの図において、4は列車風5の取込口、6は送風ダクト、7はプロペラ、8は発電機、9はリード線(送電用)である。
【0019】
漏水が発生するトンネルの場合、
図1のようにトンネル1内にトンネル樋3が設置されることがしばしばある。このトンネル樋3は漏水を導水する効果があるが、本発明では、このトンネル樋3の中に列車風5を、
図2に示すようにトンネル樋3より突出した列車風5の取込口4より取り込む。
取込口4の形状は、図
3に示すように流体力学的に有利なトンネル樋3より外部に突出した
翼型にし、取込口4付近で風速が最大になるように設計する。
【0020】
このように効果的に取り込んだ列車風5を
図3に示すように樋3の内部を伝達させ、発電機8に送風する。
【0021】
このようにして、
図4のように発電機8へ列車風5を送り、トンネル1の列車風5を利用して電力を発電することが可能となる。
【0022】
従って、トンネル内で確実に、継続的に電力を得ることができる。特に、トンネル内はトンネル外よりも大気密度の変動が小さいと考えられ、列車風が安定的に得られる。従って、トンネル内で確実に、継続的に電力を得ることが可能になる。
【0023】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明のトンネル内の列車風を利用した風力発電方法は、トンネル内を走行する列車により発生する列車風を利用したトンネル内で電力を確実に、継続的に得られるようにしたトンネル内の列車風を利用した風力発電方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 トンネル
2 トンネル覆工
3 トンネルの樋
4 列車風の取込口
5 列車風
6 送風ダクト
7 プロペラ
8 発電機
9 リード線(送電用)