(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437354
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】吸収式冷凍機
(51)【国際特許分類】
F25B 15/00 20060101AFI20181203BHJP
【FI】
F25B15/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-52828(P2015-52828)
(22)【出願日】2015年3月17日
(65)【公開番号】特開2016-173196(P2016-173196A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2017年6月16日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度経済産業省「エネルギー使用合理化技術開発等(未利用熱エネルギー革新的活用技術研究開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】川村 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】藤居 達郎
(72)【発明者】
【氏名】武田 伸之
【審査官】
伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭50−125348(JP,A)
【文献】
特開昭51−065458(JP,A)
【文献】
特開2001−133071(JP,A)
【文献】
特開2004−144394(JP,A)
【文献】
特開2004−169988(JP,A)
【文献】
米国特許第04028078(US,A)
【文献】
特開昭63−015048(JP,A)
【文献】
特開昭55−049669(JP,A)
【文献】
特開2001−091084(JP,A)
【文献】
特開2001−317837(JP,A)
【文献】
特開2002−048427(JP,A)
【文献】
特開2003−130486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発器、低圧吸収器及び低圧再生器を含む低圧側サイクルと、高圧吸収器、高圧再生器及び凝縮器を含む高圧側サイクルと、を備え、
2段吸収サイクルと単効用サイクルとの切替えが可能であり、
2段吸収サイクル運転時には、前記低圧再生器から発生する冷媒蒸気が前記高圧吸収器の溶液に吸収される構成とし、
前記高圧吸収器及び前記低圧再生器の底部に溜められている溶液の液面高さが所定の下限値以上に維持されるように制御する構成を有し、
前記低圧再生器と前記高圧吸収器とを仕切る壁には、潜り堰が設けられ、
前記低圧再生器の前記液面高さが前記潜り堰より高くなったときには、前記低圧再生器の溶液が前記高圧吸収器に流入する構成とし、
前記高圧吸収器の前記液面高さが前記潜り堰より高くなったときには、前記高圧吸収器の溶液が前記低圧再生器に流入する構成とし、
前記潜り堰の上方には、ミスト遮断部が付設されている、吸収式冷凍機。
【請求項2】
前記低圧再生器の前記液面高さが所定の上限値以上になったときには、前記高圧吸収器に前記低圧側サイクルを循環する溶液を導入し、
前記高圧吸収器の前記液面高さが所定の上限値以上になったときには、前記低圧再生器に前記高圧側サイクルを循環する溶液を導入する制御をする、請求項1記載の吸収式冷凍機。
【請求項3】
前記低圧再生器の前記液面高さが所定の下限値以下になったときには、前記低圧再生器に前記高圧側サイクルを循環する溶液を導入し、
前記高圧吸収器の前記液面高さが所定の下限値以下になったときには、前記高圧吸収器に前記低圧側サイクルを循環する溶液を導入する制御をする、請求項1記載の吸収式冷凍機。
【請求項4】
前記高圧吸収器及び前記低圧再生器の前記液面高さが所定の範囲内に維持されるように溶液の導入をし、又はその導入を停止する制御をする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収式冷凍機。
【請求項5】
前記所定の範囲は、前記低圧再生器の出口部の溶液ポンプが運転できる下限の液面高さと、前記高圧吸収器の出口部の溶液ポンプが運転できる下限となるときの前記低圧再生器の液面高さとの間、
又は、前記高圧吸収器の出口部の溶液ポンプが運転できる下限の液面高さと、前記低圧再生器の出口部の溶液ポンプが運転できる下限となるときの前記高圧吸収器の液面高さとの間に設定されている、請求項4記載の吸収式冷凍機。
【請求項6】
前記低圧再生器及び前記高圧吸収器の少なくともいずれか一方の底部には、液面高さを検出する液面検出部が付設され、
前記高圧吸収器に前記低圧側サイクルから溶液を導入するバイパス配管、及び、前記低圧再生器に前記高圧側サイクルから溶液を導入するバイパス配管を有し、
前記バイパス配管のそれぞれは、弁を有し、
前記液面検出部により当該液面高さが前記所定の範囲外であることを検出したときには、前記弁のいずれかを開け、所定時間後に閉じる制御をする、請求項5記載の吸収式冷凍機。
【請求項7】
前記低圧再生器及び前記高圧吸収器には、前記液面高さが所定の上限値に達したことを検出する液面検出部を設け、
前記低圧再生器及び前記高圧吸収器のいずれか一方の前記液面高さが前記所定の上限値に達したことを検出したときには、当該一方から他方に溶液を送る前記バイパス配管の弁を開け、所定時間後に閉じる制御をする、請求項6記載の吸収式冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの再生器へ熱源媒体を供給する2段吸収サイクルの吸収式冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
2段吸収サイクルの吸収式冷凍機は、蒸発器、低圧吸収器及び低圧再生器からなる低圧側サイクルと、高圧吸収器、高圧再生器及び凝縮器からなる高圧側サイクルで構成されている。2段吸収サイクルの吸収式冷凍機は、低圧再生器において熱源媒体で溶液を加熱し蒸発した冷媒蒸気を、高圧吸収器の溶液に吸収させることにより、低圧側サイクルと高圧側サイクルを連結したサイクルとなっている。2段吸収サイクルの吸収式冷凍機は、一般に単効用サイクルの吸収式冷凍機に比べて低い温度の熱源で駆動できることが知られている。
【0003】
一方、主に蒸発器、吸収器、再生器及び凝縮器からなる単効用サイクルの吸収式冷凍機は、2段吸収サイクルの吸収式冷凍機より高温の熱源が必要になるが、成績係数(=冷凍能力/入熱量)を約2倍にすることができる。
【0004】
特許文献1には、暖房運転時には2段吸収サイクルとして運転し、冷房運転時には三方切替弁により溶液を、低圧吸収器、低温熱交換器、高温熱交換器、高圧再生器、高温熱交換器、低温熱交換器、低圧吸収器の順に循環させる単効用サイクルとして運転できるようにした吸収式ヒートポンプのフロー図が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−88650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
2段吸収サイクルでは、低圧吸収器と低圧再生器を循環する低圧側サイクルの溶液と、高圧吸収器と高圧再生器を循環する高圧側サイクルの溶液と、が独立して循環している。そのため、冷媒を水、溶液を臭化リチウム水溶液とした場合、運転条件によって溶液濃度が変化しても、低圧側サイクル及び高圧側サイクルのそれぞれにおける臭化リチウムの量は、理論上は変化しない。
【0007】
したがって、2段吸収サイクルの吸収式冷凍機では、運転条件範囲内で問題が生じないように低圧側サイクルと高圧側サイクルとに用いる溶液の量が決定され、封入される。
【0008】
一方、特許文献1に記載の技術では、2段吸収サイクルを単効用サイクルに切替えた場合、低圧再生器及び高圧吸収器内の溶液はそのままとなるが、低圧吸収器及び高圧再生器の内部に注入されている臭化リチウム量で単効用サイクルを運転することになる。このような単効用サイクルの運転の結果、低圧吸収器及び低圧再生器の臭化リチウムの合計量と、高圧吸収器及び高圧再生器の臭化リチウムの合計量は、2段吸収サイクル運転時とは変化してしまう。
【0009】
このまま、再度、単効用サイクルから2段吸収サイクルに切替えると、前回の2段吸収サイクル運転の際における低圧側サイクル(低圧吸収器と低圧再生器)の臭化リチウム量と、高圧側サイクル(高圧吸収器と高圧再生器)の臭化リチウム量とのバランスが合わなくなる。例えば、高圧側サイクルの臭化リチウム量が増加すると、運転条件が前回の2段吸収サイクル運転と同じ溶液濃度の場合でも、臭化リチウム量が多いため、冷媒の割合が多くなってしまい、溶液量が増加する。逆に臭化リチウム量が減少した低圧側サイクルでは、臭化リチウム量が少ないため、冷媒の割合が少なくなってしまい、溶液量が減少する。
【0010】
また、上記の例とは逆に、低圧側サイクルの臭化リチウム量が増加すると、低圧側サイクルの溶液量が増加し、高圧側サイクルの溶液量が減少する。
【0011】
以上のように、臭化リチウム量の変化が一方のサイクル側に偏ると、2段吸収サイクルの運転時に、減少した側の溶液量の減少が過大となり、例えば低圧再生器内の液面が低下すると、低圧再生器出口の溶液ポンプにおけるキャビテーション等の発生を防止し、溶液ポンプを保護するため、溶液ポンプを停止することになり、運転ができなくなることが考えられる。
【0012】
本発明の目的は、運転条件によって効率向上を図れるように2段吸収サイクルと単効用サイクルとの切替えができる吸収式冷凍機において、低圧側サイクルと高圧側サイクルとの間で臭化リチウムの量に不均衡が生じても、これを調整して連続した運転を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の吸収式冷凍機は、蒸発器、低圧吸収器及び低圧再生器を含む低圧側サイクルと、高圧吸収器、高圧再生器及び凝縮器を含む高圧側サイクルと、を備え、2段吸収サイクルと単効用サイクルとの切替えが可能であり、2段吸収サイクル運転時には、低圧再生器から発生する冷媒蒸気が高圧吸収器の溶液に吸収される構成とし、高圧吸収器及び低圧再生器の底部に溜められている溶液の液面高さが所定の下限値以上に維持されるように制御する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、運転条件によって効率向上を図れるように、2段吸収サイクルから単効用サイクルに切替え、さらに、2段吸収サイクルに切替えることによって低圧側サイクルと高圧側サイクルとの間で臭化リチウムの量に不均衡が生じても、これを調整して連続した運転が可能な吸収式冷凍機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1の吸収式冷凍機を示す概略構成図である。
【
図2】実施例2の吸収式冷凍機を示す概略構成図である。
【
図3】実施例3の吸収式冷凍機を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本明細書においては、「吸収式冷凍機」という用語を用いて説明するが、本発明は、「吸収式冷温水機」及び「吸収式ヒートポンプ」と呼ばれるものも含むものとする。
【0017】
以下、本発明の具体的実施例について図面を用いて説明する。なお、各図において同一符号を付した部分は、同一或いは相当する部分を示している。
【実施例1】
【0018】
図1は、実施例1の吸収式冷凍機を示す概略構成図である。
【0019】
先ず、2段吸収サイクル運転について説明する。
【0020】
吸収式冷凍機は、蒸発器1、低圧吸収器9、低温再生器17及び低圧側溶液熱交換器16からなる低圧側サイクルの熱交換器要素と、高圧吸収器24、高圧再生器33、凝縮器41及び高圧側溶液熱交換器31からなる高圧側サイクルの熱交換器要素と、冷媒ポンプ6、溶液ポンプ14、22、29、38などの輸送系要素と、を備えている。また、2段吸収サイクルと単効用サイクルとを切替えるためのバルブ52、53、54、55、56、57を備えている。2段吸収サイクル運転時には、バルブ52、53、54、55を開とし、バルブ56、57を閉とする。
【0021】
蒸発器1では、冷媒ポンプ6で蒸発器1の下部に溜められた冷媒を、冷媒配管7を通って散布装置2(散布器)に導き、熱交換器3の伝熱管外に散布する。散布した冷媒は、熱交換器3の伝熱管内を流れる冷水に加熱され一部冷媒蒸気となり、エリミネータ8を介して低圧吸収器9に導かれる。このときに、冷媒が蒸発する際の蒸発潜熱を利用し熱交換器3の伝熱管内を流れる冷水を冷却する。熱交換器3には、冷水配管4、5が接続され負荷側に冷熱を供給するための冷水が通水される。
【0022】
低圧吸収器9では、低圧再生器17で濃縮された溶液が散布装置10(散布器)から熱交換器11の伝熱管外に散布される。散布した溶液は、蒸発器1からの冷媒蒸気を吸収し濃度が薄くなった後、溶液配管15の途中に設置した溶液ポンプ14で低圧側溶液熱交換器16、バルブ52を通って低圧再生器17に導かれる。熱交換器11の伝熱管内には、溶液が冷媒蒸気を吸収する際に発生する吸収熱を取り除くために冷却水が通水される。熱交換器11には、冷却水配管12、13が接続されている。
【0023】
低圧再生器17では、低圧吸収器9で濃度の薄くなった溶液が散布装置18(散布器)から熱交換器19の伝熱管外に散布される。散布した溶液は、熱交換器19の伝熱管内を流れる熱源媒体で加熱され、濃度の濃い溶液と冷媒蒸気に分離される。濃度の濃い溶液は、溶液配管23の途中に設置した溶液ポンプ22で、バルブ53、低圧側溶液熱交換器16を通って低圧吸収器9に導かれる。濃度の濃い溶液から分離した冷媒蒸気は、エリミネータ32を介して高圧吸収器24に導かれる。熱交換器19には、熱源媒体配管20、21が接続されている。
【0024】
高圧吸収器24では、高圧再生器33で濃縮された溶液が散布装置25(散布器)から熱交換器26の伝熱管外に散布される。散布した溶液は、低圧再生器17からの冷媒蒸気を吸収して濃度が薄くなった後、溶液配管30の途中に設置した溶液ポンプ29でバルブ54、高圧側溶液熱交換器31を通って高圧再生器33に導かれる。熱交換器26の伝熱管内には、溶液が冷媒蒸気を吸収する際に発生する吸収熱を取り除くために冷却水が通水される。熱交換器26には、冷却水配管27、28が接続されている。
【0025】
高圧再生器33では、高圧吸収器24で濃度の薄くなった溶液が散布装置34(散布器)から熱交換器37の伝熱管外に散布される。散布した溶液は、熱交換器37の伝熱管内を流れる熱源媒体で加熱され、濃度の濃い溶液と冷媒蒸気に分離される。濃度の濃い溶液は、溶液配管39の途中に設置した溶液ポンプ38で、高圧側溶液熱交換器31、バルブ55を通って高圧吸収器24に導かれる。濃度の濃い溶液から分離した冷媒蒸気は、バッフル40を介して凝縮器41に導かれる。熱交換器37には、熱源媒体配管35、36が接続されている。
【0026】
凝縮器41では、高圧再生器33で濃度の濃い溶液から分離した冷媒蒸気を、熱交換器42の伝熱管内を流れる冷却水で冷却し、凝縮し液化する。液化した冷媒は、冷媒配管45を通って蒸発器1に導かれる。熱交換器42には、冷却水配管43、44が接続される。
【0027】
次に、単効用サイクル運転について説明する。
【0028】
単効用サイクルでは、分岐点A、Bを結ぶバイパス管50に設けたバルブ56を開とし、分岐点C、Dを結ぶバイパス管51に設けたバルブ57を開とし、バルブ52、53、54、55を閉とする。溶液ポンプ22、29は停止したままとする。高圧吸収器24には、冷却水を通水しない。低圧再生器17には、熱源媒体を供給しない。
【0029】
単効用サイクル運転では、蒸発器1と凝縮器41は2段吸収サイクルと同様に動作する。溶液は、低圧吸収器9で蒸発器1からの冷媒蒸気を吸収して薄くなった溶液が、溶液ポンプ14、低温側溶液熱交換器16、バルブ56、高温側溶液熱交換器31、高圧再生器33の順に循環し、高圧再生器33で熱源媒体に加熱濃縮された溶液が、溶液ポンプ38、高温側溶液熱交換器31、バイパス管51、低温側溶液熱交換器16、低圧吸収器9の順に循環する。
【0030】
以上のように、本実施例の構成は、2段吸収サイクルと単効用サイクルを切替えて運転することができる。なお、本実施例においては、溶液(吸収剤)として臭化リチウム水溶液を使用し、冷媒として水を使用している。
【0031】
次に、本発明に係る構成について
図1で説明する。
【0032】
低圧再生器17と高圧吸収器24とを仕切る壁には、潜り堰58が設けてある。また、潜り堰58を覆い、潜り堰58の上方の隙間部分を介して液滴(溶液ミスト)が低圧再生器17と高圧吸収器24との間で流通しないようにするため、ミスト遮断部59が設けてある。潜り堰58の高さHは、低圧再生器17の下部に溜められる溶液の液面が低下し、溶液ポンプ22が連続運転として許容できる液面高さが下限(下限値)となったときの高圧吸収器24の上昇した液面高さと、高圧吸収器24の下部に溜められる溶液の液面が低下し、溶液ポンプ29が連続運転として許容できる液面高さが下限となったときの低圧再生器17の上昇した液面高さから決定され、このときの上昇した液面高さの低い方を基準に設定される。
【0033】
これにより、2段吸収サイクル、単効用サイクル、2段吸収サイクルと運転を切替えることによって低圧吸収器9及び低圧再生器17で構成される低圧側サイクルと高圧吸収器24及び高圧再生器33で構成される高圧側サイクルとで臭化リチウム量の比率が変化しても、2段吸収サイクル運転時に、低圧再生器17から高圧吸収器24に、又は高圧吸収器24から低圧再生器17に潜り堰58を越えた溶液が流入するようになる。よって、低圧側サイクル及び高圧側サイクルのどちらかの一方の臭化リチウム量が減少し、溶液量が減って液面が低下しても溶液ポンプ22、29が連続運転できる下限となる前に液面が高くなっている側から溶液を流入させることができる。これにより、常に溶液ポンプ22、29が連続運転できる下限以上の液面高さを確保でき、吸収式冷凍機の連続運転が可能になる。
【実施例2】
【0034】
図2は、実施例2の吸収式冷凍機を示す概略構成図である。以下、実施例1と同様の構成については説明を省略する。
【0035】
本図において、低圧再生器17内には、その底部に溜まる溶液の液面高さを検出するフロート式液面センサ64(液面検出部)が設置してある。さらに、溶液ブロー弁61を設けた溶液ブロー配管60が設けてある。この溶液ブロー配管60は、高圧吸収器24と高圧再生器33の散布装置34とを接続する溶液配管30の途中のE点と、低圧再生器17の下部とを接続している。
【0036】
高圧吸収器24内には、その底部に溜まる溶液の液面高さを検出するフロート式液面センサ65(液面検出部)が設置してある。さらに、溶液ブロー弁63を設けた溶液ブロー配管62が設けてある。この溶液ブロー配管62は、低圧再生器17と低圧吸収器9の散布装置10とを接続する溶液配管23の途中のF点と、高圧吸収器24の下部とを接続している。溶液ブロー弁61、63は、通常は閉とする。
【0037】
次に、本発明に係る動作及び効果について説明する。
【0038】
2段吸収サイクル運転中に、低圧再生器17内の底部に溜められる溶液の液面が上昇し第一の所定値になったときは、制御装置(図示せず)によって溶液ブロー弁63を開け、所定時間低圧側サイクルの溶液を高圧吸収器24内に流入させる。一方、低圧再生器17内の底部に溜められる溶液の液面が低下し第二の所定値になったときは、制御装置(図示せず)によって溶液ブロー弁61を開け、所定時間高圧側サイクルの溶液を低圧再生器17内に流入させる。
【0039】
ここで、第一の所定値は、高圧吸収器24の下部に溜められる溶液の液面が低下し、溶液ポンプ29が連続運転として許容できる液面高さが下限となったときの低圧再生器17の上昇した液面高さとする。一方、第二の所定値は、低圧再生器17の下部に溜められる溶液の液面が低下し、溶液ポンプ22が連続運転として許容できる液面高さとする。また、溶液ブロー弁61、63を開ける所定時間は、第一の所定値と第二の所定値との平均値程度になるように流入させるために必要な溶液量と、溶液ブロー配管60、62からの流量から予め設定される。この場合には、第一の所定値及び第二の所定値はともに、低圧再生器17のフロート式液面センサ64により測定される液面高さに基づくものである。
【0040】
第一の所定値については、問題となる高圧吸収器24側の液面低下を直接的に検出するようにするため、高圧吸収器24のフロート式液面センサ65を用いて、許容できる液面高さが下限値に達したときに、低圧再生器17の対応する液面高さに達したと判定してもよい。
【0041】
上記の制御により、2段吸収サイクル、単効用サイクル、2段吸収サイクルと運転を切替えることによって低圧吸収器9及び低圧再生器17で構成される低圧側サイクルと高圧吸収器24及び高圧再生器33で構成される高圧側サイクルとで臭化リチウム量の比率が変化しても、2段吸収サイクル運転時に、低圧再生器17内に溜められる溶液の液面をフロート式液面センサ64で検知し、制御装置(図示せず)によって液面高さに応じた溶液ブロー弁61、63の開閉を制御できる。よって、低圧側サイクル及び高圧側サイクルのどちらかの一方の臭化リチウム量が減少し、溶液量が減って液面が低下しても溶液ポンプ22、29が連続運転できる下限となる前に液面が高くなっている側から溶液を流入させることができる。これにより、常に溶液ポンプ22、29が連続運転できる下限以上の液面高さを確保でき、吸収式冷凍機の連続運転が可能になる。
【0042】
言い換えると、上記のように溶液ブロー弁61、63の開閉を行うことにより、高圧吸収器24及び低圧再生器17の底部に溜められている溶液の液面高さを所定の範囲に保つことができる。ここで、所定の範囲は、低圧再生器17の出口部の溶液ポンプ22が運転できる下限の液面高さと、高圧吸収器24の出口部の溶液ポンプ29が運転できる下限となるときの低圧再生器17の液面高さとの間、又は、高圧吸収器24の出口部の溶液ポンプ29が運転できる下限の液面高さと、低圧再生器17の出口部の溶液ポンプ22が運転できる下限となるときの高圧吸収器24の液面高さとの間に設定されている。
【0043】
なお、フロート式液面センサ65を高圧吸収器24に設置した場合でも、高圧吸収器24内の底部に溜められる溶液の液面が上昇し第一の所定値になったときは、制御装置(図示せず)によって溶液ブロー弁61を開け、所定時間高圧側サイクルの溶液を低温再生器17内に流入させる。一方、高圧吸収器24内の底部に溜められる溶液の液面が低下し第二の所定値になったときは、制御装置(図示せず)によって溶液ブロー弁63を開け、所定時間高圧側サイクルの溶液を高圧吸収器24内に流入させることによって、フロート式液面センサ64を低圧再生器17に設置した場合と同様の効果を得ることができる。
【0044】
さらに、低圧再生器17及び高圧吸収器24の液面高さの下限値だけでなく上限値もフロート式液面センサ64、65により測定可能とし、液面高さが所定の範囲(下限値と上限値との間の範囲)となるように溶液を導入する制御をしてもよい。
【実施例3】
【0045】
図3は、実施例3の吸収式冷凍機を示す概略構成図である。以下、実施例2と同様の構成については説明を省略する。
【0046】
本図において、低圧再生器17内には、第一の所定値の高さ(液面高さの下限値)に電極棒70(液面検出部)を設け、高圧吸収器24内の第三の所定値の高さに電極棒71(液面検出部)を設けた構成とした。ここで、第一の所定値は、実施例2と同じとする。一方、第三の所定値は、低圧再生器17の下部に溜められる溶液の液面が低下し、溶液ポンプ22が連続運転として許容できる液面高さが下限(液面高さの下限値)となったときに高圧吸収器24の液面が上昇して到達した高さとする。
【0047】
次に、本発明に係る動作と効果について説明する。
【0048】
2段吸収サイクル運転中に、低圧再生器17内の底部に溜められる溶液の液面が上昇し第一の所定値になったときは、制御装置(図示せず)によって溶液ブロー弁63を開け、所定時間低圧側サイクルの溶液を高圧吸収器24内に流入させる。一方、高圧吸収器24内の底部に溜められる溶液の液面が上昇し第三の所定値になったときは、制御装置(図示せず)によって溶液ブロー弁61を開け、所定時間高圧側サイクルの溶液を低圧再生器17内に流入させる。
【0049】
上記の制御により、2段吸収サイクル、単効用サイクル、2段吸収サイクルと運転を切替えることによって低圧吸収器9及び低圧再生器17で構成される低圧側サイクルと高圧吸収器24及び高圧再生器33で構成される高圧側サイクルとで臭化リチウム量の比率が変化しても、2段吸収サイクル運転時に、低圧再生器17内に溜められる溶液の液面は電極棒70で、高圧吸収器24内の液面は電極棒71で検知し、制御装置(図示せず)によって溶液ブロー弁61、63の開閉を制御できる。よって、低圧側サイクル及び高圧側サイクルのどちらかの一方の臭化リチウム量が減少し、溶液量が減って液面が低下しても溶液ポンプ22、29が連続運転できる下限となる前に液面が高くなっている側から溶液を流入させることができる。これにより、常に溶液ポンプ22、29が連続運転できる下限以上の液面高さを確保でき、吸収式冷凍機の連続運転が可能になる。
【0050】
本実施例においては、低圧再生器17及び高圧吸収器24の液面高さの下限値に着目して制御を行う構成としているが、電極棒70、71に代えて、液面高さが上限値に達したことを検出する電極棒を用いてもよい。また、電極棒70、71に加えて、液面高さが上限値に達したことを検出する電極棒を用いてもよい。この場合、電極棒は4か所に設置することになる。
【0051】
また、液面を検知する手段としては、
図3においては電極棒を用いたが、液面を検知できれば電極棒に限定されるものではなく、例えば温度センサでも温度の違いによって検知することができ、同様の作用及び効果を得ることができる。
【0052】
なお、上述の実施例においては、低圧再生器17と高圧吸収器24との間で溶液のやり取りをしているが、本発明は、これに限定されるものではなく、低圧側サイクルと高圧側サイクルとで溶液のやり取りをしてもよい。すなわち、高圧吸収器24と低圧吸収器9との間で溶液のやり取りをしてもよいし、低圧再生器17と高圧再生器33との間で溶液のやり取りをしてもよい。
【0053】
これにより、2段吸収サイクルから単効用サイクルへの切替えに伴って生じる臭化リチウムの量に不均衡だけでなく、2段吸収サイクルから単効用サイクルへの切替えの機能を有しない場合でも、溶液ミストの飛散に伴って生じる臭化リチウムの量に不均衡も調整して連続した運転を可能にすることができる。
【符号の説明】
【0054】
1:蒸発器、2、10、18、25、34:散布装置、3、11、19、26、37、42:熱交換器、4、5:冷水配管、6:冷媒ポンプ、7、45:冷媒配管、8、32:エリミネータ、9:低圧吸収器、12、13、27、28、43、44:冷却水配管、14、22、29、38:溶液ポンプ、15、23、30、39:溶液配管、16:低圧側溶液熱交換器、17:低圧再生器、20、21、35、36:熱源配管、24:高圧吸収器、31:高圧側溶液熱交換器、33:高圧再生器、40:バッフル、41:凝縮器、50、51:バイパス管、52、53、54、55、56、57:バルブ、58:潜り堰、59:ミスト遮断部、60、62:溶液ブロー配管、61、63:溶液ブロー弁、64:フロート式液面センサ、70、71:電極棒。