特許第6437358号(P6437358)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437358
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】吸気マニホールド装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/104 20060101AFI20181203BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20181203BHJP
   F02B 29/04 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   F02M35/104 N
   F02M35/10 311C
   F02B29/04 J
   F02B29/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-59378(P2015-59378)
(22)【出願日】2015年3月23日
(65)【公開番号】特開2016-176460(P2016-176460A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2017年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(72)【発明者】
【氏名】諏訪間 貴康
(72)【発明者】
【氏名】小林 勇人
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0326222(US,A1)
【文献】 特開2009−074509(JP,A)
【文献】 特開平07−019133(JP,A)
【文献】 実開昭60−091972(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/104
F02B 29/04
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の複数のシリンダ室にガスを導く吸気マニホールドと、前記吸気マニホールドに内蔵されて前記ガスを冷却する熱交換器と、を備えた吸気マニホールド装置であって、
前記吸気マニホールドは、
前記熱交換器の上流側に位置して第1樹脂材料で構成された第1部位と、
前記熱交換器の下流側に位置して前記第1樹脂材料よりも耐熱性の低い第2樹脂材料で構成された第2部位と、を有し、
前記熱交換器は、金属材料で構成されており、
前記ガスが流通する熱交換器本体と、
前記熱交換器本体の外側面から前記熱交換器本体の前記ガスの流通方向と直交する方向に突出した突出部と、を有し、
前記突出部には、樹脂部材がアウトサート成形され、
前記第1部位及び前記第2部位は、前記熱交換器の側方で前記樹脂部材にそれぞれ溶着されていることを特徴とする吸気マニホールド装置。
【請求項2】
請求項1記載の吸気マニホールド装置において、
前記第1部位及び前記第2部位は、前記熱交換器を挟んで互いに離間していることを特徴とする吸気マニホールド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の複数のシリンダ室にガスを導く吸気マニホールドと、吸気マニホールドに内蔵されてガスを冷却する熱交換器と、を備えた吸気マニホールド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、過給器により圧縮されたガスを吸気マニホールドに内蔵された熱交換器により冷却して複数のシリンダ室に導く吸気マニホールド装置が利用されている。この種の吸気マニホールド装置として、例えば、特許文献1の図6等には、単一部材で構成された吸気マニホールドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−225311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した吸気マニホールド装置では、吸気マニホールドにおける熱交換器の上流側のガス温度は、熱交換器の下流側のガス温度よりも高くなる。そのため、例えば、吸気マニホールドを単一の樹脂材料により構成する場合、上流側のガス温度に適用可能な耐熱性の比較的高い樹脂材料を用いる必要があり、材料コストが高騰化するという課題がある。
【0005】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、材料コストの低廉化を図ることができる吸気マニホールド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る吸気マニホールド装置は、内燃機関の複数のシリンダ室にガスを導く吸気マニホールドと、前記吸気マニホールドに内蔵されて前記ガスを冷却する熱交換器と、を備えた吸気マニホールド装置であって、前記吸気マニホールドは、前記熱交換器の上流側に位置して第1樹脂材料で構成された第1部位と、前記熱交換器の下流側に位置して前記第1樹脂材料よりも耐熱性の低い第2樹脂材料で構成された第2部位と、を有し、前記熱交換器は、金属材料で構成されており、前記ガスが流通する熱交換器本体と、前記熱交換器本体の外側面から前記熱交換器本体の前記ガスの流通方向と直交する方向に突出した突出部と、を有し、前記突出部には、樹脂部材がアウトサート成形され、前記第1部位及び前記第2部位は、前記熱交換器の側方で前記樹脂部材にそれぞれ溶着されていることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、第1樹脂材料よりも耐熱性の低い第2樹脂材料により第2部位を構成しているので、吸気マニホールド全体を第1樹脂材料で構成する場合と比較して、吸気マニホールド装置の材料コストの低廉化を図ることができる。また、熱交換器を吸気マニホールド内に容易に配設させることができる。さらに、熱交換器を吸気マニホールドに対して容易且つ確実に固定することができる。またさらに、熱交換器と吸気マニホールドとの間の隙間(バイパス流路)のガスの流通を突出部により抑制することができるので、熱交換器によるガスの冷却効率を向上させることができる。
【0008】
上記の吸気マニホールド装置において、前記第1部位及び前記第2部位は、前記熱交換器を挟んで互いに離間していてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1樹脂材料よりも耐熱性の低い第2樹脂材料により第2部位を構成しているので、吸気マニホールド装置の材料コストの低廉化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る吸気マニホールド装置の一部縦断面図である。
図2図1のII−II線に沿った断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る吸気マニホールド装置の一部縦断面図である。
図4図3のIV−IV線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る吸気マニホールド装置について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0019】
本発明に係る吸気マニホールド装置は、車両等に搭載される多気筒の内燃機関に適用されるものであって、過給器により圧縮されたガスを冷却して複数のシリンダ室に導く。この吸気マニホールド装置に導かれるガスは、内燃機関の吸気通路から導かれる気体であって、内燃機関の排気ガスと空気とが混合された気体であってもよいし、排気ガスを含まない空気であってもよい。
【0020】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態に係る吸気マニホールド装置10Aは、吸気マニホールド12と、吸気マニホールド12内に内蔵された熱交換器(インタークーラ)14と、吸気マニホールド12と熱交換器14との間に介設された防振部材16とを備えている。吸気マニホールド12は、熱交換器14の上流側に位置する第1部位18と、熱交換器14の下流側に位置する第2部位20とを備えている。
【0021】
第1部位18は、第1樹脂材料により構成されており、図示しない吸気通路に接続される管状の導入部22と、導入部22から導かれたガスを冷却する熱交換器14の上流側を収容する第1ハウジング24とを有している。第1ハウジング24の下流側(第2部位20側)の端部には、環状の第1フランジ部26が設けられている(図2参照)。第1フランジ部26には、防振部材16が配設される環状凹部28が形成されている。
【0022】
第1ハウジング24のうち熱交換器14の上流側には、導入部22から導かれたガスを熱交換器14に導くための上流側空間30が形成されている。すなわち、第1部位18には、過給器により圧縮された比較的高温のガスが流通する。
【0023】
第2部位20は、第1樹脂材料よりも耐熱性の低い第2樹脂材料により構成さており、熱交換器14の下流側を収容する第2ハウジング32と、熱交換器14により冷却されたガスを複数のシリンダ室に導く複数の分岐管34とを有している。なお、各分岐管34の先端部には、図示しないシリンダヘッドに接続される接続フランジ35が設けられている。
【0024】
第2ハウジング32の上流側(第1部位18側)の端部には、第1フランジ部26に対して溶着される環状の第2フランジ部36が設けられている。第2ハウジング32のうち熱交換器14の下流側には、熱交換器14により冷却されたガスを一時的に溜める下流側空間38が形成されている。すなわち、第2部位20には、熱交換器14により冷却された比較的低温のガスが流通する。
【0025】
このような吸気マニホールド12において、第1樹脂材料及び第2樹脂材料としては、例えば、ナイロン6(登録商標)、ガラス繊維入りナイロン6、ナイロン66(登録商標)、及びガラス繊維入りナイロン66等が挙げられる。
【0026】
そして、例えば、第1樹脂材料としてガラス繊維入りナイロン66又はナイロン66(ガラス繊維が含まれていないナイロン66)が用いられる場合、第2樹脂材料として、第1樹脂材料よりも耐熱性の低い樹脂材料が選定される。すなわち、第2樹脂材料として、ガラス繊維入りナイロン6又はナイロン6(ガラス繊維が含まれていないナイロン6)が用いられる。
【0027】
図1及び図2に示すように、熱交換器14は、アルミニウム等の金属材料で構成されており、ガスが流通する直方体形状の熱交換器本体40と、熱交換器本体40の外側面からガスの流通方向と直交する方向に突出した環状の突出部42とを有している。
【0028】
詳細な図示は省略するが、熱交換器本体40には、ガスが流通するガス流路と、ガスを冷却する冷媒が流通する冷媒流路とが形成されている。なお、熱交換器本体40においてガスとの熱交換によって熱せられた冷媒は、図示しない冷媒循環通路に導出され、別の熱交換器により放熱(冷却)された後、熱交換器本体40の冷媒流路に導入される。
【0029】
突出部42は、熱交換器本体40におけるガスの流通方向の略中央に位置し、第1フランジ部26に形成された環状凹部28まで延在して防振部材16を介して第1部位18及び第2部位20に挟持されている。換言すれば、第1フランジ部26及び第2フランジ部36は、熱交換器14の側方(熱交換器14のガスの流通方向の略中央)で互いに溶着されている。これにより、熱交換器14を吸気マニホールド12内に容易に配設させることができる。
【0030】
防振部材16は、例えば、ゴム等で構成された弾性部材であって、突出部42の外表面の全体を覆うように少なくとも一部が環状に設けられている。防振部材16は、熱交換器本体40と第1ハウジング24との間、環状凹部28、及び熱交換器本体40と第2ハウジング32との間に介設されている。これにより、熱交換器14は、吸気マニホールド12に対して確実に位置決め固定される。また、熱交換器本体40へのガスの流通により熱交換器14が振動することを抑制することができる。
【0031】
本実施形態に係る吸気マニホールド装置10Aは、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、吸気マニホールド装置10Aの作用効果について説明する。
【0032】
本実施形態において、熱交換器14を吸気マニホールド12に組み付ける場合、例えば、突出部42に防振部材16が設けられた熱交換器14を第1ハウジング24内に挿入する。このとき、防振部材16を第1部位18の環状凹部28に位置させる。
【0033】
そして、第2フランジ部36が第1フランジ部26に接触するように第2部位20を第1部位18に対して取り付け、第1フランジ部26及び第2フランジ部36を互いに振動溶着(接合)させる。このとき、防振部材16が第1フランジ部26及び熱交換器本体40の間と第2フランジ部36及び熱交換器本体40の間に介在しているため、熱交換器本体40が吸気マニホールド12に対して当たることを抑制することができる。
【0034】
そして、第1フランジ部26及び第2フランジ部36の溶着が完了すると、突出部42が防振部材16を介して第1フランジ部26及び第2フランジ部36に挟持され、熱交換器14が吸気マニホールド12内に位置決め固定されるに至る。
【0035】
本実施形態によれば、吸気マニホールド12が、熱交換器14の上流側に位置して第1樹脂材料で構成された第1部位18と、熱交換器14の下流側に位置して第1樹脂材料よりも耐熱性の低い第2樹脂材料で構成された第2部位20とを有している。すなわち、比較的コストの高い第1樹脂部材により吸気マニホールド12の全体を構成する必要がないため、吸気マニホールド装置10Aの材料コストの低廉化を図ることができる。
【0036】
また、熱交換器14の突出部42を第1フランジ部26及び第2フランジ部36で挟持した状態で第1フランジ部26及び第2フランジ部36を互いに溶着しているので、熱交換器14を吸気マニホールド12に対して容易且つ確実に固定することができる。
【0037】
さらに、突出部42及び防振部材16により熱交換器本体40と吸気マニホールド12の間の隙間(バイパス流路44)のガスの流通が阻止(抑制)されるので、熱交換器本体40にガスを効率的に流通させることができる。これにより、熱交換器14によるガスの冷却効率を向上させることができる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る吸気マニホールド装置10Bについて説明する。なお、第2実施形態に係る吸気マニホールド装置10Bにおいて、第1実施形態に係る吸気マニホールド装置10Aと同一の構成要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0039】
図3及び図4に示すように、本実施形態に係る吸気マニホールド装置10Bでは、吸気マニホールド50を構成する第1部位52の第1フランジ部54と第2部位56の第2フランジ部58との間に環状の樹脂部材60が介設されている。樹脂部材60は、熱交換器14の突出部42にアウトサート成形されており、第1フランジ部54及び第2フランジ部58の両方に対して振動溶着されている。
【0040】
このような構成によれば、熱交換器14を吸気マニホールド50に対して容易且つ確実に固定することができる。また、突出部42によりバイパス流路44のガスの流通が阻止されるので、熱交換器本体40にガスを効率的に流通させることができる。これにより、熱交換器14によるガスの冷却効率を向上させることができる。
【0041】
上述した実施形態は、上記の構成に限定されない。例えば、吸気マニホールド装置10A、10Bにおいて、第1フランジ部54及び第2フランジ部58は、熱交換器14の下流側に位置していてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10A、10B…吸気マニホールド装置
12、50…吸気マニホールド 14…熱交換器
18、52…第1部位 20、56…第2部位
図1
図2
図3
図4