特許第6437360号(P6437360)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437360
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 57/00 20060101AFI20181203BHJP
   A01D 67/00 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   A01D57/00 Z
   A01D67/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-67056(P2015-67056)
(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2016-185109(P2016-185109A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2017年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】征矢 保
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋也
(72)【発明者】
【氏名】山内 一樹
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−106252(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00553506(EP,A1)
【文献】 特開平08−308313(JP,A)
【文献】 特開平05−015237(JP,A)
【文献】 特開2008−295339(JP,A)
【文献】 特開昭51−129724(JP,A)
【文献】 特開2001−008531(JP,A)
【文献】 特許第2541634(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 57/00−57/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体前部に複数条の植立穀稈を刈り取る刈取部が備えられ、
前記刈取部は、刈取条数に対応した複数の引起し装置と、植立穀稈の株元を切断する切断装置と、刈取穀稈を機体後方に向けて搬送する搬送装置とを備えるとともに、刈幅方向の途中位置にて一方側刈取部分割体と他方側刈取部分割体とに分割形成され、
前記一方側刈取部分割体が、前記他方側刈取部分割体に対して、刈幅方向に一連に並ぶ通常使用状態と、前記一方側刈取部分割体の前面と前記他方側刈取部分割体の前面とが向かい合う状態で折り重なる折り畳み状態とにわたり、前記途中位置に対応する上下向きの回動軸芯まわりで回動自在に支持され
前記引起し装置は、下端側が機体前部側に位置し且つ上端側ほど機体後方側に位置する後倒れ傾斜状態の起立姿勢で備えられ、
前記回動軸芯が前記引起し装置の傾斜面と平行で且つ前記引起し装置よりも機体前方側に設定されているコンバイン。
【請求項2】
前記刈取部に、前記複数の引起し装置の夫々に対応して、機体前後方向に沿って延び且つ前記各引起し装置の下端部に連結される前後向きフレームが備えられ、
前記一方側刈取部分割体に備えられる前記前後向きフレームと、前記他方側刈取部分割体に備えられる前記前後向きフレームとが、前記折り畳み状態において、平面視にて刈幅方向に位置ずれするとともに、側面視にて重複する請求項に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記刈取部に、
前記複数の引起し装置の夫々に対応して、機体前後方向に沿って延び且つ前記各引起し装置の下端部に連結される前後向きフレームと、
複数の引起し装置の夫々の上端部同士にわたって刈幅方向に沿って延び且つ前記各引起し装置の上端部に連結される上部側横向きフレームと、
機体後下部側箇所に位置して刈幅方向略全幅にわたって延びる下部側横向きフレームと、
前記下部側横向きフレームの刈幅方向両端部の夫々と前記上部側横向きフレームの刈幅方向両端部の夫々とを連結する上下向きフレームとが備えられ、
刈幅方向両端部に位置する前後向きフレームと、前記上下向きフレームと、刈幅方向両端部に位置する引起し装置とが、機体側面視で略三角形状に配置され、
前記前後向きフレーム、前記上下向きフレーム、前記上部側横向きフレーム、前記下部側横向きフレーム、及び、前記引起し装置により、前記一方側刈取部分割体及び前記他方側刈取部分割体の夫々におけるフレーム構造体が構成されている請求項1又は2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記刈取部は、前記一方側刈取部分割体及び前記他方側刈取部分割体の夫々において、分割箇所の近傍に、前記上部側横向きフレームと前記前後向きフレームとにわたって上下方向に延びる連結用フレームを備え、
前記各連結用フレームに、前記一方側刈取部分割体を前記他方側刈取部分割体に対して前記回動軸芯まわりに回動自在に支持する回動支持部材が取り付けられている請求項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関し、詳しくは、8条刈り等の刈取条数の多いコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
8条刈り等の刈取条数の多いコンバインは、刈取部による刈幅(横幅)が大きくなり、道路を走行するときの規制幅を越えてしまうので、例えば、運搬車両に積載して運搬するような場合に、そのままでは路上走行することができない等の問題がある。
【0003】
従来では、刈取部の複数の分草具を支持するために機体前後方向に延びる複数の前後向きフレームのうち刈幅方向両端部に位置する両側の前後向きフレームを取り外すとともに、刈幅方向の全幅にわたる長尺の刈刃を取り外して、横幅を所定幅内に収めることができるように構成したものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−278902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来構成は、刈取作業においては、8条分の植立穀稈を一度に刈り取ることができ、作業効率を高めることができるが、作業終了後に路上走行等を行う際には、大型の装置である刈刃を取り外したり、刈幅方向両側端部の前後向きフレームを取り外す必要がある。しかも、それに付随して、刈幅方向両側端部の引起し装置、刈刃を支持するための支持部材、その他の小型の部材も取り外さなければならず、手間のかかる作業が必要となっていた。取り外した各装置をコンバイン本体とは別に保管しなければならず、取り外した装置類の管理も煩わしいものとなっていた。
【0006】
そこで、刈取条数を多くしながらも、煩わしい手間のかかる作業を要することなく、非作業時に横幅を狭くすることが可能なコンバインが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコンバインの特徴構成は、
機体前部に複数条の植立穀稈を刈り取る刈取部が備えられ、
前記刈取部は、刈取条数に対応した複数の引起し装置と、植立穀稈の株元を切断する切断装置と、刈取穀稈を機体後方に向けて搬送する搬送装置とを備えるとともに、刈幅方向の途中位置にて一方側刈取部分割体と他方側刈取部分割体とに分割形成され、
前記一方側刈取部分割体が、前記他方側刈取部分割体に対して、刈幅方向に一連に並ぶ通常使用状態と、前記一方側刈取部分割体の前面と前記他方側刈取部分割体の前面とが向かい合う状態で折り重なる折り畳み状態とにわたり、前記途中位置に対応する上下向きの回動軸芯まわりで回動自在に支持され
前記引起し装置は、下端側が機体前部側に位置し且つ上端側ほど機体後方側に位置する後倒れ傾斜状態の起立姿勢で備えられ、
前記回動軸芯が前記引起し装置の傾斜面と平行で且つ前記引起し装置よりも機体前方側に設定されている点にある。
【0008】
本発明によれば、刈取部は、刈幅方向の途中位置にて一方側刈取部分割体と他方側刈取部分割体とに分割形成されている。そして、刈取作業を実行するときは、一方側刈取部分割体を記他方側刈取部分割体とを刈幅方向に一連に並ぶ通常使用状態として、良好な刈取作業を行える。路上走行等のために車幅を狭くする必要があるときは、一方側刈取部分割体を上下向きの回動軸芯まわりで回動させて、一方側刈取部分割体の前面と他方側刈取部分割体の前面とが向かい合う状態で折り重なる折り畳み状態に切り換えることにより、横幅を狭くさせることができる。
【0009】
このように刈取部を折り畳むときに、一方側刈取部分割体を上下向きの回動軸芯まわりで回動させることにより対応できるので、大型の構成部品等を個別に取り外したり、複数の取り外した装置類を別途管理する等の煩わしい作業は不要である。
【0010】
従って、本発明によれば、刈取条数を多くしながらも、煩わしい手間のかかる作業を要することなく、非作業時に横幅を狭くすることが可能となった。
【0011】
【0012】
また、本構成によれば、一方側刈取部分割体は、後倒れ傾斜状態の起立姿勢で設けられる回動軸芯まわりで回動することにより、通常使用状態と折り畳み状態とにわたって切り換わることになる。
【0013】
その結果、回動軸芯が鉛直方向に沿う軸芯に設定される構成に比べて、一方側刈取部分割体が通常使用状態から折り畳み状態に切り換えられたときに、通常使用状態における刈取部の前端部の位置に対する、折り畳み状態における刈取部の前端部の位置までの機体前方側への突出量を少なくすることができる。
【0014】
従って、折り畳み状態における機体前後方向の全長をできるだけコンパクトにして刈取部を折り畳むことができる。
【0015】
本発明においては、
前記刈取部に、前記複数の引起し装置の夫々に対応して、機体前後方向に沿って延び且つ前記各引起し装置の下端部に連結される前後向きフレームが備えられ、
前記一方側刈取部分割体に備えられる前記前後向きフレームと、前記他方側刈取部分割体に備えられる前記前後向きフレームとが、前記折り畳み状態において、平面視にて刈幅方向に位置ずれするとともに、側面視にて重複すると好適である。
【0016】
本構成によれば、一方側刈取部分割体が折り畳み状態に切り換わると、一方側刈取部分割体に備えられている前後向きフレームと、他方側刈取部分割体に備えられている前後向きフレームとが、平面視にて刈幅方向に位置ずれするとともに、側面視にて重複する状態で位置することになる。
【0017】
すなわち、折り畳み状態において、一方側刈取部分割体と他方側刈取部分割体との夫々に備えられる前後向きフレーム同士が干渉することのない状態で、一方側刈取部分割体の前面と他方側刈取部分割体の前面とが向かい合うように折り重ねることができる。
【0018】
その結果、折り畳み状態に切り換えるときに、前後向きフレームを取り外すといった煩わしい作業が不要である。
【0019】
本発明においては、
前記刈取部に、
前記複数の引起し装置の夫々に対応して、機体前後方向に沿って延び且つ前記各引起し装置の下端部に連結される前後向きフレームと、
複数の引起し装置の夫々の上端部同士にわたって刈幅方向に沿って延び且つ前記各引起し装置の上端部に連結される上部側横向きフレームと、
機体後下部側箇所に位置して刈幅方向略全幅にわたって延びる下部側横向きフレームと、
前記下部側横向きフレームの刈幅方向両端部の夫々と前記上部側横向きフレームの刈幅方向両端部の夫々とを連結する上下向きフレームとが備えられ、
刈幅方向両端部に位置する前後向きフレームと、前記上下向きフレームと、刈幅方向両端部に位置する引起し装置とが、機体側面視で略三角形状に配置され、
前記前後向きフレーム、前記上下向きフレーム、前記上部側横向きフレーム、前記下部側横向きフレーム、及び、前記引起し装置により、前記一方側刈取部分割体及び前記他方側刈取部分割体の夫々におけるフレーム構造体が構成されていると好適である。
【0020】
本構成によれば、複数の引起し装置は、夫々の上端部が上部側横向きフレームに連結され、夫々の下端部が機体前後方向に沿って延びる前後向きフレームに連結される。そして、下部側横向きフレームの刈幅方向両端部の夫々と上部側横向きフレームの刈幅方向両端部の夫々とが上下向きフレームにて連結される。刈幅方向両端部に位置する前後向きフレームと、上下向きフレームと、刈幅方向両端部に位置する引起し装置とが、機体側面視で略三角形状に配置されて、それらが連結される。
【0021】
一方側刈取部分割体及び他方側刈取部分割体の夫々は、前後向きフレームと、上下向きフレームと、引起し装置とが、機体側面視で略三角形状に連結されて、強固なフレーム構造体が構成される。
【0022】
従って、一方側刈取部分割体及び他方側刈取部分割体の夫々が強固なフレーム構造体を備えるので、刈取部は、通常作業状態並びに折り畳み状態のいずれにおいても、安定した状態で姿勢保持することができ、刈取作業や運搬作業等を良好に行える。
【0023】
本発明においては、
前記刈取部は、前記一方側刈取部分割体及び前記他方側刈取部分割体の夫々において、分割箇所の近傍に、前記上部側横向きフレームと前記前後向きフレームとにわたって上下方向に延びる連結用フレームを備え、
前記各連結用フレームに、前記一方側刈取部分割体を前記他方側刈取部分割体に対して前記回動軸芯まわりに回動自在に支持する回動支持部材が取り付けられていると好適である。
【0024】
本構成によれば、分割箇所の近傍に備えられた連結用フレームに回動支持部材が取り付けられ、この回動支持部材により一方側刈取部分割体を他方側刈取部分割体に対して回動自在に支持される。
【0025】
連結用フレームは、上部側横向きフレームと前後向きフレームとにわたって上下方向に延びる状態で設けられるので、上下両側が安定的に支持される。このような連結用フレームにより、一方側刈取部分割体を安定した状態で回動させることができ、姿勢切り換え操作を良好に行える。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】コンバインの全体側面図である。
図2】コンバインの全体平面図である。
図3】刈取部の正面図である。
図4】通常使用状態の刈取部の側面図である。
図5】折り畳み状態の刈取部の側面図である。
図6】通常使用状態の搬送装置の簡略化した平面図である。
図7】折り畳み状態の搬送装置の簡略化した平面図である。
図8】刈取部の伝動構造を示す図である。
図9】引起し装置の一部縦断後面図である。
図10】切断装置の平面図である。
図11】掻き込み部と切断装置の縦断正面図である。
図12】切断装置の一部平面図である。
図13】切断装置の一部縦断正面図である。
図14】折り畳み側の分割支持枠体の斜視図である。
図15】折り畳み側の分割支持枠体の側面図である。
図16】折り畳み側の分割支持枠体の斜視図である。
図17】他の分割支持枠体の斜視図である。
図18】他の分割支持枠体の側面図である。
図19】支持枠体の全体斜視図である。
図20】植立穀稈の分草状態を示す正面図である。
図21】回動支持部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るコンバインの実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
〔全体構成〕
図1,2に示すように、本発明に係るコンバインは、走行機体1と、8条の植立穀稈を刈り取る刈取部2とを備えている。刈取部2は、横軸芯P1まわりで揺動昇降自在に走行機体1に連結され、リフトシリンダ3により駆動昇降可能に設けられている。
【0029】
この実施形態では、機体前後方向を定義するときは、図1,2において刈取部2が備えられる側が機体前部側であり、その反対側が機体後部側であると定義する。機体左右方向を定義するときは、機体前部を前にして進行する前進走行状態で、進行方向を目視する運転者の右手側が機体右側であり、左手側が機体左側であると定義する。従って、機体横幅方向が機体の左右方向に対応している。
【0030】
走行機体1は、左右一対のクローラ走行装置4を備えるとともに、機体前部の右側(横幅方向一方側)に運転部5が備えられ、その後方に、刈取部2にて刈り取られた穀稈を脱穀処理する脱穀装置6と、脱穀処理にて得られた穀粒を貯留する穀粒タンク7とを機体横方向に並ぶ状態で備えている。運転部5はキャビン5aにて覆われる状態で備えられる。
脱穀装置6は、図示はしないが、刈取部2から搬送される刈取穀稈の株元を脱穀フィードチェーン8により挟持して搬送しながら、扱室内部で穂先側を扱き処理し、扱室の下部に備えられた選別部にて穀粒と塵埃に選別処理する。穀粒は穀粒タンク7に貯留し、塵埃は機外に排出する。穀粒タンク7に貯留される穀粒は排出装置7Aにて外部に排出可能である。脱穀処理後の排ワラは細断装置9にて細断したのちに機外に排出する。
【0031】
刈取部2は、刈取対象条の植立穀稈を分草案内する複数(9個)の分草具10を前端部に備えており、その後方に刈取条数に対応した複数(8個)の引起し装置11と、植立穀稈の株元を切断する切断装置12と、刈取穀稈を機体後方に向けて搬送する搬送装置13とを備えている。
【0032】
9個の分草具10のうち、最も機体横外側に位置する2個の分草具10は、植立穀稈を刈取対象と対象外とに分草し、刈取対象穀稈をその分草具10に隣接する引起し経路に導入し、対象外の穀稈をその引起し経路の横外側に案内する。その他の分草具10は、2つの植付条に植立する穀稈をその分草具10の両横側に分草して分草具10の両横側の引起し経路に導入する。
【0033】
刈取部2は、左側(未刈側)のクローラ走行装置4よりも大きく左側に突出する状態となっており、未刈穀稈をクローラ走行装置4により踏み倒すおそれがなく、良好に刈取作業を行うことができる(図6参照)。
【0034】
〔引起し装置〕
図1,4に示すように、引起し装置11は、下端側が機体前部側に位置し且つ上端側ほど機体後方側に位置する後倒れ傾斜状態の起立姿勢で備えられている。そして、図9に示すように、引起し装置11は、フレームを兼用する引起しケース14の内部に、上側に位置する駆動スプロケット15と緊張用スプロケット16、及び、下側に位置する従動スプロケット17の夫々にわたって巻回される無端回動チェーン18が備えられ、その無端回動チェーン18には、長手方向に沿って所定間隔をあけて複数の引起爪19が備えられている。引起爪19は、起立姿勢と倒伏姿勢とに姿勢変更自在に無端回動チェーン18に支持されている。
【0035】
図9に示すように、8個の引起し装置11の上部同士に亘って左右方向に延びる引起し駆動軸20が備えられている。この引起し駆動軸20からの動力が中継伝動ケース21内に備えられた中継伝動軸22を介して駆動スプロケット15に動力が伝達される。図示はしないが、引起し駆動軸20は断面形状が六角形であり、角形嵌合状態で動力を伝達するように構成されている。
【0036】
引起し装置11は、引起爪19が横向きに突出する状態で移動する引起し作用経路H1と、引起爪19が引退した状態で移動する非作用戻し経路H2とを備えている。つまり、無端回動チェーンの左右両側の上下移動経路のうちのいずれかが引起し作用経路H1として設定され、反対側が非作用戻し経路H2として設定されている。図示はしないが、引起し作用経路H1においては、無端回動チェーンが通過する箇所に引起爪19を起立案内するガイド板が備えられている。
【0037】
複数の引起し装置11は、引起し作用経路H1同士が近接するとともに、非作用戻し経路H2同士が近接する状態で、横方向に並ぶように配置されている。そして、各引起し装置11は、引起し作用経路H1において引起爪19が上向きに移動するように回動方向が設定されている。つまり、離接する引起し装置11同士は、無端回動チェーン18の回動方向が互いに逆向きに設定されている。
【0038】
このような構成の引起し装置11は、引起し作用経路H1においては、横向きに突出する引起爪19が穀稈に梳き上げ作用しながら上昇移動し、上昇終端に到達すると、穀稈から外れて引起しケース14の非作用戻し経路H2を下降して引起し作用経路H1側に戻っていく。これにより、各引起し装置11は、引起し経路に導入された植立穀稈を、上昇移動する引起爪19によって引起し処理して切断装置12に供給する。
【0039】
〔切断装置〕
切断装置12は、全ての刈取対象条(8条)の植立穀稈に作用するように左右方向(刈幅方向に対応する)の全幅にわたる長尺状に形成され、周知構造のバリカン型刈刃にて構成されている。
【0040】
切断装置12は、8条の刈取条のうち、左側2条の刈取条に作用する左側切断部12A(折り畳み側の切断部に対応する)と、右側6条の刈取条に作用する右側切断部12B(他の切断部に対応する)とに分割形成されている。
【0041】
右側切断部12Bについて説明する。
図10,11に示すように、右側切断部12Bは、左右方向に並設した2分割された2組のバリカン型の刈刃25と、2組の刈刃25をそれぞれ駆動する左右の刈刃駆動機構26(折り畳み側の動力伝達部の一例)とを備えている。図12に示すように、左右の刈刃25は、それぞれ左右方向に多数の歯27aが並設された固定刃27と、この固定刃27の上側に摺接する状態で多数の歯28aが並設された可動刃28と、固定刃27を受止め支持する受け台29と、可動刃28の浮き上がりを防止する複数のナイフクリップ30とを備えている。
【0042】
図10に示すように、左右の各可動刃28の外側寄り近くに可動刃操作体31を備え、この可動刃操作体31に作用する刈刃駆動機構26の駆動によって、可動刃28を固定刃27に対して機体横幅方向に沿って左右往復駆動するように構成されている。
【0043】
可動刃操作体31には平面視U字状の係入溝32を備えている。刈刃駆動機構26は、可動刃操作体31の係入溝32に係入する操作ローラ33を一端部に備えたアーム34、このアーム34の他端部に一端側が連結された連動ロッド35、この連動ロッド35の他端側に連結されたクランクアームとして機能する駆動回転体36を備えている。そして、駆動回転体36の回転駆動力を往復動力に変換して可動刃28を左右往復駆動する。
【0044】
可動刃28を左右方向に往復スライド駆動することによって、可動刃28と固定刃27との協働により植立穀稈を切断する。左右両側の刈刃25における夫々の可動刃28は、互いに逆向きにスライド移動するように構成され、可動刃28のスライド操作に伴う振動をできるだけ少なくするようにしている。
【0045】
図12,13に示すように、左右両側の刈刃25における左右中間の突き合わせ部には、左右両側の可動刃28の上側に位置する上部側の固定刃37が備えられている。このように突き合わせ部では、固定刃37が上側に位置することで、突き合わせ箇所において、塵埃が固定刃37と可動刃28との間に噛み込まれることを防止している。上部側の固定刃37は、左右の刈刃25に夫々各別に備えられている。
【0046】
左側切断部12Aについて説明する。
図10に示すように、左側切断部12Aは、右側切断部12Bにおける刈刃25と同様な構成のバリカン型刈刃38と、その刈刃38を駆動する刈刃駆動機構39(他の動力伝達部の一例)とを備えている。刈刃38は、刈取条数が異なる点以外は、右側切断部12Bの刈刃25と同じであるから詳細な説明は省略する。刈刃駆動機構39についても、右側切断部12Bの刈刃駆動機構26と同じであるから詳細な説明は省略する。このように、左側切断部12Aと右側切断部12Bは、夫々各別に、刈刃駆動機構26,39を備えている。
【0047】
右側切断部12Bにおける左側刈刃25と、左側切断部12Aの刈刃38との突き合わせ部には、右側切断部12Bにおける突き合わせ部と同様に、可動刃28の上側に位置する上部側の固定刃37が備えられている。この上部側の固定刃37は、右側切断部12Bにおける左側刈刃25と左側切断部12Aの刈刃38とに夫々各別に備えられている。左側切断部12Aの刈刃38における可動刃28は、右側切断部12Bにおける左側刈刃25における可動刃28のスライド移動方向と逆向きにスライド移動するように構成されている。
【0048】
左側切断部12Aと右側切断部12Bとは、可動刃28、固定刃27、受け台29の夫々が、各別に形成されており、突き合わせ状態では近接して並ぶ状態で備えられる。後述する折り畳み状態では、互いに分離可能に設けられている。
【0049】
〔搬送装置〕
図4,6に示すように、搬送装置13は、刈取穀稈を2条分ずつ寄せ集めながら後方に掻き込む複数の掻き込み部40、右側から1番目の条と2番目の条の2条分の刈取穀稈を左後方側の合流箇所に搬送する第1中間搬送部41、右側から3番目の条と4番目の条の2条分の刈取穀稈を後方側の合流箇所に搬送する第2中間搬送部42、右側から5番目の条と6番目の条の2条分の刈取穀稈を合流箇所に搬送する第3中間搬送部43、右側から7番目の条と8番目の条の2条分、すなわち左側端部2条分の刈取穀稈を後方に搬送する第4中間搬送部44、第4中間搬送部44により搬送される刈取穀稈を受け継いで合流箇所に搬送する左側合流搬送部45、合流箇所にて合流した8条の刈取穀稈を脱穀フィードチェーン8の始端部にまで搬送する供給搬送部46、第1中間搬送部41にて搬送される刈取穀稈並びに合流箇所にて合流された刈取穀稈の穂先側に作用して穂先側を係止案内する一方側案内部としての穂先係止搬送装置47とを備えている。
【0050】
図6に示すように、掻き込み部40は、切断装置12の上方近くに機体左右方向に並んで位置して噛み合い回動する一対の穀稈掻き込み用の回転式のパッカー48,49(外形が略星形に形成された掻き込み回転体)からなる下側掻き込み装置50(穀稈掻き込み装置の一例)と、その下側掻き込み装置50よりも上方に位置する一対の突起付き無端回動ベルトからなる上側掻き込み装置52とを備える。そして、このような掻き込み部40が、左右方向(刈幅方向)に並ぶ状態で4組備えられている。
【0051】
下側掻き込み装置50は、切断装置12で刈り取り処理された2条分の刈取穀稈の株元側を一対のパッカー48,49の間に掻き込んでパッカー間から機体後方に向けて送り出す。この下側掻き込み装置50は、一対のパッカー48,49のうちのいずれか一方のパッカー48が動力が伝達される駆動側パッカーとして構成され、他方のパッカー49は、駆動側パッカー48に噛み合って従動する従動側パッカーとして構成されている。
【0052】
上側掻き込み装置52における一対の無端回動ベルト51は、左右のパッカー48,49から夫々動力が伝達されて回動するように構成され、2条分の刈取穀稈の株元側を係止搬送により掻き込み後方に送り出す。
【0053】
図11に示すように、右側に位置する3組の下側掻き込み装置50は、各パッカー48,49が同一の上下高さに位置するように配置してあり、左側端部に位置する1組の下側掻き込み装置50は、他の下側掻き込み装置50よりも低いレベルに位置するように配置している。伝動構造については後述するが、右側に位置する3組の掻き込み部40は、同一の伝動軸からの動力にて駆動されるので、それらは同期回転する。従って、隣り合う下側掻き込み装置50のパッカー48,49同士が平面視で一部重複することがあっても良好な噛み合い状態を維持できる。
【0054】
図6,7,8に示すように、第1中間搬送部41は、最右側の掻き込み部40により掻き込まれた2条分の刈取穀稈の株元を挟持しながら左後方側に向けて搬送する第1株元挟持搬送装置53と、穂先係止搬送装置47の前半部分とで構成される。
【0055】
第1株元挟持搬送装置53は、複数のスプロケットにわたって巻回された無端回動チェーンを備えている。図示はしないが、無端回動チェーンに対向して挟持レールが備えられ、無端回動チェーンと挟持レールとにより刈取穀稈の株元を挟持して合流箇所に搬送する。
【0056】
穂先係止搬送装置47は、複数のスプロケットにわたって巻回された係止突起付きの無端回動チェーン57と、刈取穀稈の穂先部を載置しながら案内する穂先案内板58(図1,4参照)とを備えている。無端回動チェーン57に所定ピッチをあけて係止突起59が備えられ、無端回動チェーン57が回動することで刈取穀稈の穂先側を係止しながら、且つ、刈取穀稈の穂先部を穂先案内板58にて載置案内しながら左後方に搬送するように構成されている。この穂先係止搬送装置47の後半部分は、合流箇所にて合流された8条分の刈取穀稈に対する穂先側の係止搬送を行うように構成されている。
【0057】
第2中間搬送部42は、右端から2番目の掻き込み部40により掻き込まれた2条分の刈取穀稈の株元を挟持しながら後方側の合流箇所に向けて搬送する第2中間株元挟持搬送装置61と、2条分の刈取穀稈の穂先側を係止搬送しながら後方側に向けて搬送する第2中間穂先係止搬送装置62とを備えている。
【0058】
第2中間株元挟持搬送装置60は、複数のスプロケットにわたって巻回された無端回動チェーンを備えている。図示はしないが、無端回動チェーンに対向して挟持レールが備えられ、無端回動チェーンと挟持レールとにより刈取穀稈の株元を挟持して合流箇所に搬送する。
【0059】
第2中間穂先係止搬送装置61は、複数のスプロケットにわたって巻回された係止突起付きの無端回動チェーンを備え、無端回動チェーンが回動することで刈取穀稈の穂先側を係止しながら、後方側の合流箇所に搬送する。
【0060】
第3中間搬送部43は、右端から3番目の掻き込み部40により掻き込まれた2条分の刈取穀稈の株元を挟持しながら後方側の合流箇所に向けて搬送する第3中間株元挟持搬送装置67と、2条分の刈取穀稈の穂先側を係止搬送しながら後方側に向けて搬送する第3中間穂先係止搬送装置68とを備えている。
【0061】
第3中間株元挟持搬送装置67は、複数のスプロケットにわたって巻回された無端回動チェーンを備えている。図示はしないが、無端回動チェーンに対向して挟持レールが備えられ、無端回動チェーンと挟持レールとにより刈取穀稈の株元を挟持して合流箇所に搬送する。
【0062】
第3中間穂先係止搬送装置68は、複数のスプロケットにわたって巻回された係止突起付きの無端回動チェーンを備えている。無端回動チェーンが回動することで刈取穀稈の穂先側を係止しながら、後方側の合流箇所に搬送する。
【0063】
第4中間搬送部44は、最左側の掻き込み部40により掻き込まれた2条分の刈取穀稈の株元を挟持しながら後方に向けて搬送する第4中間株元挟持搬送装置74を備えている。この第4中間株元挟持搬送装置74は、複数のスプロケットにわたって巻回された無端回動チェーンを備えている。図示はしないが、無端回動チェーンに対向して挟持レールが備えられ、無端回動チェーンと挟持レールとにより刈取穀稈の株元を挟持して後方に搬送する。
【0064】
左側合流搬送部45は、第4中間搬送部44により搬送される刈取穀稈を受け継いで、株元を挟持しながら後方側の合流箇所に向けて搬送する左側合流用株元挟持搬送装置77と、刈取穀稈の穂先側を係止搬送しながら後方側に向けて搬送する左側合流用穂先係止搬送装置78とを備えている。
【0065】
左側合流用株元挟持搬送装置77は、複数のスプロケットにわたって巻回された無端回動チェーンを備えている。図示はしないが、無端回動チェーンに対向して挟持レールが備えられ、無端回動チェーンと挟持レールとにより刈取穀稈の株元を挟持して合流箇所に搬送する。
【0066】
左側合流用穂先係止搬送装置78は、複数のスプロケットにわたって巻回された係止突起付きの無端回動チェーンを備えている。無端回動チェーンが回動することで刈取穀稈の穂先側を係止しながら、後方側の合流箇所に搬送する。
【0067】
供給搬送部46は、第1中間搬送部41、第2中間搬送部42、第3中間搬送部43、及び、左側合流搬送部45により搬送されて、合流箇所にて合流した刈取穀稈の株元を挟持して脱穀フィードチェーン8に向けて搬送する扱深さ用搬送装置84と、その扱深さ用搬送装置84から脱穀フィードチェーン8の始端部に刈取穀稈を受け渡す受け渡し供給装置85とを備えている。扱深さ用搬送装置84及び受け渡し供給装置85は、共に、複数のスプロケットにわたって巻回された無端回動チェーンを備えている。図示はしないが、無端回動チェーンに対向して挟持レールが備えられ、無端回動チェーンと挟持レールとにより刈取穀稈の株元を挟持して搬送する。
【0068】
図示はしないが、扱深さ用搬送装置84は、搬送始端側を支点にして搬送終端側が稈長方向に移動するように揺動自在に支持され、合流箇所から受け継いだ刈取穀稈を稈長方向(上下方向)に位置変更して、脱穀装置6に対する入り込み深さを変更調整できるように構成されている。
【0069】
次に、刈取部2のフレーム構造について説明する。
刈取部2は、支持枠体Fにより全体が支持され、横軸芯P1まわりで揺動自在に機体側の支持台90(図4参照)に支持される構成となっている。図19に示すように、支持枠体Fは、以下に説明するような複数のフレームが一体的に連結されて構成されている。
【0070】
図4,19に示すように、刈取部2全体を昇降自在に支持する前後向きの円筒状の支持フレーム91が備えられている。この支持フレーム91は、後上部の基端側に備えられた横向きの枢支部92が機体側の支持台90に横軸芯P1まわりで回動自在に支持されている。支持フレーム91は、支持台90から機体前方下方に向けて延びている。
【0071】
支持フレーム91の前端部に左右方向すなわち刈幅方向に延びる円筒状の下部側横向きフレーム93が連結されている。この下部側横向きフレーム93の機体横幅方向両端部に、機体前方に向けて延びる状態で左右両側の前後向きフレームとしての分草フレーム94が連結されている。これら左右両端部の分草フレーム94の前後途中部同士に亘って架設される状態で、機体横幅方向に延びる角筒状の刈刃支持フレーム95が連結されている。
切断装置12は、この刈刃支持フレーム95に支持されている。
【0072】
左右両端部の分草フレーム94の間に、間隔をあけて複数の分草フレーム94(前後向きフレーム)が備えられ、それら中間部の分草フレーム94は、後端部が刈刃支持フレーム95に連結され、機体前方に向けて片持ち状に延設されている。分草フレーム94は合計9本備えられ、各分草フレーム94の前端部には夫々、分草具10が備えられている。
【0073】
下部側横向きフレーム93の左側端部から上方に向けて円筒状の左側上下向きフレーム96が延設されている。下部側横向きフレーム93の右側端部から上方に向けて棒状の右側上下向きフレーム97が延設されている。そして、左側上下向きフレーム96の上端部と右側上下向きフレーム97の上端部とにわたって上部側横向きフレーム98が連結されている。この上部側横向きフレーム98は、8個の引起し装置11の夫々の上端部同士にわたって左右方向に沿って延び且つ各引起し装置11の上端部に連結されている。
【0074】
8個の引起し装置11は夫々、上側が上部側横向きフレーム98に連結され、下側が分草フレーム94に連結される。従って、各引起し装置11は、連結された状態では、上部側横向きフレーム98と分草フレーム94とを連結するフレーム部材として機能する。
【0075】
各引起し装置11は、詳述はしないが、中継伝動ケース21と一体的に上部側横向きフレーム98に対して横向き軸芯まわりで相対回動自在に支持されている。分草フレーム94に対する連結を解除すると、引起し装置11全体を横向き軸芯まわりで回動させて、刈取部2の前部を大きく開放させることができる。
【0076】
引起し装置11を揺動開放させると、上部側横向きフレーム98に荷重が掛かるので、剛性を確保するために、図17,19に示すように、上部側横向きフレーム98と分草フレーム94とを連結する縦向きの補助連結杆100が複数備えられている。さらに、搬送装置13の上方を迂回する状態で、支持フレーム91の上端部と上部側横向きフレーム98の横方向中間部とを連結する上部迂回フレーム101が備えられている。
【0077】
上述したような複数種のフレームが連結されて刈取部2全体を支持する支持枠体Fが形成されている。そして、この支持枠体Fにおいては、機体横幅方向両端部に位置する分草フレーム94と、左右の上下向きフレーム96,97と、機体横幅方向両端部に位置する引起し装置11とが、機体側面視で略三角形状に配置され、それらが連結されている。その結果、機体横幅方向両端部において強固な支持構造が形成されている。
【0078】
〔伝動構造〕
次に、刈取部2に対する伝動構造について説明する。
図4に示すように、図示しないエンジンの出力を刈取用の無段変速装置102にて変速した後の動力が、支持フレーム91の枢支部92(図17参照)の内部に備えられた横向き伝動軸103に伝達される。そして、図8に示すように、横向き伝動軸103から支持フレーム91の内部に備えられた前後向きの動力伝達軸104を介して動力が伝達される。
【0079】
上述した変速後の動力が、前後向きの動力伝達軸104から下部側横向きフレーム93の内部に備えられた横向きの入力軸105に伝達される。その入力軸105の両側端部及び左右方向中間部に設けられた分岐部106を介して、切断装置12の右側切断部12Bの2組の刈刃25と左側切断部12Aの1組の刈刃38に夫々動力が伝達される。
【0080】
さらに、入力軸105の途中の分岐部107から左側合流搬送部45に動力が伝達され、入力軸105の左側に備えられた分岐部108から左側上下向きフレーム96の内部に備えられた縦向きの中継軸としての縦向き伝動軸109を経由して、8個の引起し装置11、第4中間搬送部44、及び、最左側の掻き込み部40の夫々に動力が伝達される。
【0081】
図8に示すように、縦向き伝動軸109の上下途中から動力が分岐されて、第4中間搬送部44に動力が伝達され、第4中間搬送部44から最左側(右から4番目)の掻き込み部40に動力が伝達される。
【0082】
上部側横向きフレーム98に沿って左右方向の全幅に亘る状態で、引起し装置11の上部同士にわたる横向きの引起し駆動軸20が備えられている。そして、縦向き伝動軸109からの動力が、ギア変速機構111により変速されたのち、引起し駆動軸20に伝達される。引起し駆動軸20から8個の引起し装置11の夫々に動力が伝達される。
【0083】
一方、動力伝達軸104の伝動途中部から、右側に位置する3組の掻き込み部40、第1中間搬送部41、第2中間搬送部42、第3中間搬送部43、供給搬送部46の夫々に動力が伝達される。穂先係止搬送装置47における無端回動チェーン57に対しては、横向き伝動軸103から動力伝達される。
【0084】
図8に示すように、動力伝達軸104の伝動途中部に設けられた第1分岐部112にて第1分岐伝動軸113に動力が分岐伝達され、その第1分岐伝動軸113から第2中間搬送部42における第2中間株元挟持搬送装置60及び第2中間穂先係止搬送装置61夫々に動力が伝達される。そして、第2中間株元挟持搬送装置60の動力が右側から2番目の掻き込み部40に伝達される。
【0085】
第1分岐伝動軸113の途中部から第2分岐伝動軸114に動力が分岐され、第2分岐伝動軸114から第3中間搬送部43における第3中間株元挟持搬送装置67及び第3中間穂先係止搬送装置68夫々に動力が伝達される。そして、第3中間株元挟持搬送装置67の動力が右端から3番目の掻き込み部40に伝達される。
【0086】
動力伝達軸104の伝動途中部に設けられた第2分岐部117にて第3分岐伝動軸118と第4分岐伝動軸119に動力が分岐され、第3分岐伝動軸118から第1中間搬送部41における第1株元挟持搬送装置53に動力が伝達され、第1株元挟持搬送装置53の動力が最右側の掻き込み部40に伝達される。第4分岐伝動軸119から扱深さ用搬送装置84に動力が伝達される。
【0087】
従って、最左側の1組の掻き込み部40は、動力伝達軸104から入力軸105及び縦向き伝動軸109を経由して伝達される動力にて駆動され、右側に位置する3組の掻き込み部40は、同一の伝動軸である動力伝達軸104からの動力にて駆動されることになる。
【0088】
〔刈取部分割構造〕
【0089】
刈取部2は、刈幅方向の途中位置にて一方側刈取部分割体2Aと他方側刈取部分割体2Bとに分割形成され、一方側刈取部分割体2Aが、他方側刈取部分割体2Bに対して、刈幅方向に一連に並ぶ通常使用状態と、一方側刈取部分割体2Aの前面と他方側刈取部分割体2Bの前面とが向かい合う状態で折り重なる折り畳み状態とにわたり、前記途中位置に対応する上下向きの回動軸芯Xまわりで回動自在に支持されている。
【0090】
刈取部2は、8個の引起し装置11のうち、右端から2番目の引起し装置11の非作用戻し経路H2と、右端から3番目の引起し装置11の非作用戻し経路H2とが近接する状態で隣り合う境界Lに設けた軸芯Xまわりで、引起し装置11、切断装置12、及び、搬送装置13が折り畳み可能に構成されている。すなわち、左側2条分に対応する部分が、一方側刈取部分割体としての折り畳み側の刈取部分割体2Aを構成し、右側6条分に対応する部分が、他方側刈取部分割体としての他の刈取部分割体2Bを構成して、折り畳み側の刈取部分割体2Aを他の刈取部分割体2Bに対して折り畳み可能に構成されている。
【0091】
折り畳み側の刈取部分割体2Aは、他の刈取部分割体2Bに対して、左右方向に一連に並ぶ通常使用状態(図1,2,4,6参照)と、折り畳み側の刈取部分割体2Aの前面と他の刈取部分割体2Bの前面とが向かい合う状態で折り重なる折り畳み状態(図5,7参照)とにわたり、境界に設けた軸芯Xまわりで回動自在に支持されている。
【0092】
説明を加えると、刈取部2は、境界L(図2,3参照)に設けた軸芯Xまわりで、引起し装置11、切断装置12、及び、搬送装置13の夫々が一体的に折り畳み可能に構成されている。右端から6番目の引起し装置11と7番目の引起し装置11との間の境界Lに折り畳み用の軸芯Xが設けられ、左側2個の引起し装置11が折り畳み側の刈取部分割体2Aに対応する引起し装置11であり、右側6個の引起し装置11が他の刈取部分割体2Bに対応する引起し装置11に対応する。
【0093】
右端から6番目の引起し装置11と7番目の引起し装置11とは、非作用戻し経路H2同士が近接する状態で隣り合うので、それらの境界Lに設定された軸芯Xまわりで回動させて折り畳むと、引起爪19同士が干渉することなく、円滑に折り畳める。
【0094】
左側切断部12Aと右側切断部12Bとは、夫々、可動刃28及び固定刃27だけでなく受け台29も各別に形成されており、それらが分離可能に構成されている。
【0095】
搬送装置13は、折り畳み側の刈取部分割体2Aに対応する折り畳み側の搬送部13Aと、他の刈取部分割体2Bに対応する他の搬送部13Bとを備えている。すなわち、図7に示すように、第4中間搬送部44及び最左側の掻き込み部40が折り畳み側の搬送部13Aに対応しており、それ以外の搬送用の装置、つまり、左側合流搬送部45、右側に位置する3組の掻き込み部40、第1中間搬送部41、第2中間搬送部42、第3中間搬送部43、供給搬送部46の夫々が、他の搬送部13Bに対応している。
【0096】
図6に示すように、最左側の掻き込み部40より掻き込まれて、第4中間搬送部44により後方に搬送された左側2条分の刈取穀稈は、左側合流搬送部45による受け取り位置まで搬送され、その後は、左側合流搬送部45により合流箇所に向けて搬送される。
【0097】
従って、折り畳み側の搬送部13A(第4中間搬送部44及び最左側の掻き込み部40)は、他の搬送部13Bにて搬送される位置(受け取り位置)まで独立して刈取穀稈を搬送するように構成されている。第4中間搬送部44が折り畳み側の合流用搬送体に対応し、左側合流搬送部45が他の合流用搬送体に対応しており、第4中間搬送部44と左側合流搬送部45とにより、折り畳み側の刈取部分割体2Aにて刈り取られた刈取穀稈を合流箇所まで搬送する合流用搬送部120を構成する。
【0098】
下部側横向きフレーム93、上部側横向きフレーム98、刈刃支持フレーム95の夫々が、フランジ連結等の接続構成を用いて、分離箇所に対応する位置にて互いに分離可能に接続される構成となっており、折り畳み側の刈取部分割体2Aを他の刈取部分割体2Bに対して折り畳むときは、夫々の接続状態を解除することになる。
【0099】
上述したように、刈取部2の支持枠体Fは、機体横幅方向両端部において、分草フレーム94、上下向きフレーム96,97及び引起し装置11が、機体側面視で略三角形状に配置され、それらが連結されることにより、強固な支持構造が形成されている。その結果、支持枠体Fを、上記した分離箇所にて分離しても、折り畳み側の刈取部分割体2A及び他の刈取部分割体2Bの夫々において、強固なフレーム構造体が形成され、支持強度を有する構成となっている。
【0100】
刈取部2の支持枠体Fにおける折り畳み側の刈取部分割体2Aに対応する折り畳み側の分割支持枠体FAと、他の刈取部分割体に対応する他の分割支持枠体FBとは、引起し装置11の傾斜面と平行で且つ引起し装置11よりも機体前方側に設定されている回動軸芯Xまわりで回動自在に連結される構成となっている。
【0101】
図14図19に示すように、折り畳み側の分割支持枠体FA及び他の分割支持枠体FBの夫々において、分割箇所の近傍に、上部側横向きフレーム98と分草フレーム94とにわたって上下方向に延びる連結用フレーム121,122が備えられている。
【0102】
説明を加えると、図17,18に示すように、他の分割支持枠体FB側の連結用フレーム121は、上下方向にわたって延び、上部側横向きフレーム98の分割箇所と、右端から7番目の分草フレーム94とに夫々連結されている。この連結用フレーム121は角筒状に設けられ、側面視で略L字形に形成されている。そして、連結用フレーム121の上部側箇所は、側面視にて引起し装置11の引起しケース14の前面に略平行な後上がり傾斜状態の起立姿勢に形成されている。
【0103】
図14,15,16に示すように、折り畳み側の分割支持枠体FAの連結用フレーム122は、上下方向にわたって延び、上部側横向きフレーム98の分割箇所と、下部側横向きフレーム93から前方に向けて延設された前後向き支持杆123とに夫々連結されている。前後向き支持杆123の前端部と上部側横向きフレーム98とが縦向きの補助連結杆124により連結されている。従って、前後向き支持杆123が前後向きフレームに対応しており、縦向きの補助連結杆124により、前記連結用フレーム122に対する支持強度の補強が行われている。
【0104】
折り畳み側の分割支持枠体FAに備えられる連結用フレーム122も、他の分割支持枠体側の連結用フレーム121と同様に、角筒状に設けられ、側面視で略L字形に形成されている。そして、上部側箇所は、側面視にて引起し装置11の引起しケース14の前面と略平行な後上がり傾斜状態の起立姿勢に形成されている。
【0105】
図15に示すように、前後向き支持杆123は、右端から7番目の分草フレーム94に対して、少し上方に位置する状態で備えられている。このように構成することで、図20に示すように、植立穀稈の株元を分草フレーム94が通過するときに、植立穀稈が前後向き支持杆により大きく踏み倒されるおそれが少なく、切断装置12による刈残しが生じないようにしている。
【0106】
前記各連結用フレーム121,122には、夫々、折り畳み側の分割支持枠体FAを他の分割支持枠体FBに対して前記回動軸芯Xまわりに回動自在に支持する回動支持部材が取り付けられている。回動支持部材は、引起し装置11よりも機体前方側に突出する状態で設けられている。つまり、前記回動軸芯Xが引起し装置11の傾斜面と平行で且つ引起し装置11よりも機体前方側に設定されている。
【0107】
図17,18,21に示すように、他の分割支持枠体側の連結用フレーム121には、上下に間隔をあけて2箇所にブラケット125にて固定された状態で回動支持部材としての上向きの支持ピン126を備えている。図14,17,21に示すように、折り畳み側の分割支持枠体FAの連結用フレーム122には、上下の支持ピン126が嵌まり込む係合孔127が形成された回動支持部材としての側面視L形の係合部材128を備えている。
【0108】
係合部材128の係合孔127に支持ピン126に係合させた状態で、係合部材128をブラケット125にて受止め支持することにより、折り畳み側の分割支持枠体FAが支持ピン126の軸芯Xまわりで回動自在に支持される。
【0109】
図5,7に示すように、折り畳み状態では、折り畳み側の刈取部分割体2Aの前面と、他の刈取部分割体2Bの前面とが向かい合う状態で折り重なる構成となっている。この場合、折り畳み側の刈取部分割体2Aの分草具10は、他の分草具10との干渉を回避するために取り外している。
【0110】
図5,7に示すように、折り畳み側の刈取部分割体2Aに備えられる分草フレーム94と、他の刈取部分割体2Bに備えられる分草フレーム94とが、折り畳み状態において、平面視にて刈幅方向に位置ずれするとともに、側面視にて重複する状態となるように設けられている。
【0111】
次に、伝動軸分割構造について説明する。
下部側横向きフレーム93の内部に備えられる入力軸105と、上部側横向きフレーム98に沿って複数の引起し装置11の上部同士にわたって横方向に延びる引起し駆動軸20は、夫々、折り畳み側の刈取部分割体2Aに対応する折り畳み側の伝動部分と、他の刈取部分割体2Bに対応する他の伝動部分と、それらを接続分離自在な動力接続部とを備えている。
【0112】
すなわち、図8に示すように、入力軸105は、折り畳み側の刈取部分割体2Aと他の刈取部分割体2Cとの分割対応箇所において、折り畳み側の伝動部分としての左側部分105Aと、他の伝動部分としての右側部分105Bとに分割されている。そして、動力接続部としての噛み合い式クラッチ105Cを介して、左側部分105Aと右側部分105Bとが接続分離自在に構成されている。噛み合い式クラッチ105Cは、周知の構成であるから、詳述はしないが、例えば、左側部分105Aと右側部分105Bとを突き合わせた状態で、一体回転自在に噛み合い連動するとともに、突き合わせ方向に弾性的に嵌り合い係合自在な構成となっている。
【0113】
引起し駆動軸20も入力軸105と同様に、左側部分20A(折り畳み側の伝動部分)と右側部分20B(他の伝動部分)とに分割され、動力接続部としての噛み合い式クラッチ20Cを介して、左側部分20Aと右側部分20Bとが接続分離自在に構成されている。
【0114】
従って、刈取部2を通常使用状態から折り畳み状態に切り換えるために、下部側横向きフレーム93と、上部側横向きフレーム98とを接続箇所にて分離させると、入力軸105と引起し駆動軸20はそのまま分離させることができる。刈取部2を折り畳み状態から通常使用状態に切り換えるために、分離している入力軸105と引起し駆動軸20を接近させると、噛み合い式クラッチ105C,20Cにより自動的に接続状態となる。
【0115】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、刈取部2が折り畳み回動する回動軸芯が引起し装置11の傾斜面と平行で且つ引起し装置11よりも機体前方側に設定される構成としたが、この構成に代えて、回転軸芯が鉛直方向に沿う軸芯であってもよい。
【0116】
(2)上記実施形態では、刈幅方向両端部に位置する分草フレーム94と、上下向きフレーム96,97と、刈幅方向両端部に位置する引起し装置11とが、機体側面視で略三角形状に配置されて連結される構成としたが、このような連結構造を備えない構成としてもよい。
【0117】
(3)上記実施形態では、折り畳み状態において、折り畳み側の刈取部分割体2Aの分草具10は、他の分草具10との干渉を回避するために取り外すようにしたが、この構成に代えて、次のように構成してもよい。
折り畳み側の刈取部分割体2Aに備えられる分草フレーム94と、他の刈取部分割体2Bに備えられる分草フレーム94との間の、折り畳み状態における刈幅方向への位置ずれ量を大きくすることで、折り畳み側の刈取部分割体2Aの分草具10を取り外すことなく、折り畳み状態に切り換えることができるようにしてもよい。
【0118】
(4)上記実施形態では、右側に位置する3組の下側掻き込み装置50は、各パッカー48,49が同一の上下高さに位置するように配置する構成としたが、この構成に代えて、右側に位置する3組の下側掻き込み装置50のうちの中間に位置する下側掻き込み装置50を、他の下側掻き込み装置50よりも低いレベルに位置するように配置してもよい。
【0119】
(5)上記実施形態では、8条刈りのコンバインにおいて、刈取部2における左2条分に対応する一方側刈取部分割体2Aと、残り6条分に対応する他方側刈取部分割体2Bとに折り畳み可能な構成としたが、このような構成に限らず、左側の2条分と右端の2条分とを夫々、一方側刈取部分割体とし、中間に位置する4条分に対応する他方側刈取部分割体とに折り畳み可能な構成としてもよい。一方側刈取部分割体は、2条分に限らず、1条あるいは3条以上に構成してもよい。
【0120】
(6)上記実施形態では、8条刈りコンバインを示したが、7条刈りや9条刈り等でもよく、刈取条数は8条に限るものではない。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、8条刈り等の刈取条数の多いコンバインに適用できる。
【符号の説明】
【0122】
2 刈取部
2A 一方側刈取部分割体
2B 他方側刈取部分割体
11 引起し装置
12 切断装置
13 搬送装置
93 下部側横向きフレーム
94 前後向きフレーム
98 上部側横向きフレーム
121,122 連結用フレーム
126,128 回動支持部材
X 軸芯
図1
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