特許第6437387号(P6437387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝メモリ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6437387-基板平坦化方法 図000002
  • 特許6437387-基板平坦化方法 図000003
  • 特許6437387-基板平坦化方法 図000004
  • 特許6437387-基板平坦化方法 図000005
  • 特許6437387-基板平坦化方法 図000006
  • 特許6437387-基板平坦化方法 図000007
  • 特許6437387-基板平坦化方法 図000008
  • 特許6437387-基板平坦化方法 図000009
  • 特許6437387-基板平坦化方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437387
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】基板平坦化方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20181203BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   H01L21/30 502D
   B29C59/02 B
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-105129(P2015-105129)
(22)【出願日】2015年5月25日
(65)【公開番号】特開2016-219679(P2016-219679A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2017年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】東芝メモリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高畑 和宏
(72)【発明者】
【氏名】曽田 栄一
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−529626(JP,A)
【文献】 特開2007−287951(JP,A)
【文献】 特開2013−211450(JP,A)
【文献】 特表2006−524919(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0032083(US,A1)
【文献】 特開平07−221006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B29C 59/02
G03F 7/20−7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定領域内の非平面偏差であるトポグラフィを有した基板上から、前記トポグラフィに起因する凹部の容積に応じた量のレジストを滴下する滴下ステップと、
平坦な押印面を有したブランクテンプレートと前記基板との間の距離が所定距離となるよう、前記ブランクテンプレートまたは前記基板を移動させる移動ステップと、
前記ブランクテンプレートの押印面を前記レジストに押し当てる押し当てステップと、
前記レジストを硬化させる硬化ステップと、
前記ブランクテンプレートを前記レジストから離型する離型ステップと、
前記レジスト上から前記基板を全面エッチングするエッチングステップと、
を含み、
前記基板上に滴下される前記レジストのレジスト量は、前記基板のショット毎に調整され
かつ前記レジストの単位面積あたりの滴下密度は、1つのショット上で少なくとも2種類が設定され、
かつ前記ブランクテンプレートの押印面は、前記基板の複数ショットを含む領域以上の大きさを有しており、前記ブランクテンプレートの押印面を前記レジストに押し当てる際には、一度の押し当て処理の際に、前記複数ショットに対して前記押印面が押し当てられ、
かつ前記全面エッチングの際の前記レジストと前記基板上の被エッチング膜との間のエッチング選択比は、1.5以下である、
基板平坦化方法。
【請求項2】
前記レジストの滴下位置は、前記トポグラフィに起因する凹凸の位置に応じて設定される、
請求項1に記載の基板平坦化方法。
【請求項3】
前記レジスト量は、前記凹部の容積と、前記トポグラフィに起因する凹凸よりも上部側に配置される上部側レジストの容積と、に基づいて算出される、
請求項1に記載の基板平坦化方法。
【請求項4】
所定領域内の非平面偏差であるトポグラフィを有した基板上から、前記トポグラフィに起因する凹部の容積に応じた量のレジストを滴下する滴下ステップと、
平坦な押印面を有したブランクテンプレートと前記基板との間の距離が所定距離となるよう、前記ブランクテンプレートまたは前記基板を移動させる移動ステップと、
前記ブランクテンプレートの押印面を前記レジストに押し当てる押し当てステップと、
前記レジストを硬化させる硬化ステップと、
前記ブランクテンプレートを前記レジストから離型する離型ステップと、
前記レジスト上から前記基板を全面エッチングするエッチングステップと、
を含み、
前記レジストの単位面積あたりの滴下密度は、前記基板の1つのショット上で少なくとも2種類が設定され、
かつ前記ブランクテンプレートの押印面は、前記基板の複数ショットを含む領域以上の大きさを有しており、前記ブランクテンプレートの押印面を前記レジストに押し当てる際には、一度の押し当て処理の際に、前記複数ショットに対して前記押印面が押し当てられ
かつ前記全面エッチングの際の前記レジストと前記基板上の被エッチング膜との間のエッチング選択比は、1.5以下である、
基板平坦化方法。
【請求項5】
前記レジストの滴下位置は、前記トポグラフィに起因する凹凸の位置に応じて設定される、
請求項4に記載の基板平坦化方法。
【請求項6】
前記レジストのレジスト量は、前記凹部の容積と、前記トポグラフィに起因する凹凸よりも上層側に配置される上部側レジストの容積と、に基づいて算出される、
請求項4に記載の基板平坦化方法。
【請求項7】
前記基板の前記全面エッチングでは、前記基板の前記凹部のみに前記レジストが埋められるように、前記基板の表面の一部が露出するまで前記レジストをエッチバックし、前記レジストがすべて除去されるように、さらに前記レジストをエッチバックする、
請求項1または4に記載の基板平坦化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板平坦化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント技術は、テンプレートの表面に形成されているテンプレートパターンを、基板上のレジストに転写する技術である。レジストは、例えば、UV硬化材などの光硬化性樹脂である。
【0003】
ナノインプリントが行われる際には、テンプレートが、基板上のレジストに押し当てられて、テンプレートパターン内にレジストが充填される。そして、充填されたレジストが硬化させられ、その後、基板からテンプレートが離型される。これにより、基板上のレジストに凹凸パターンが形成される。
【0004】
しかしながら、基板の段差(トポグラフィ)が大きい場合、段差の近傍でテンプレートの追随性が悪化するので、パターン不良を引き起こす原因となる。また、トポグラフィが大きい場合には、テンプレートと基板との間のレジストの厚み(RLTと呼ぶ)に膜厚差が生じるので、テンプレートのせん断力が高くなる。このため、RLTに膜厚差が生じると、アライメントに影響を及ぼす。この結果、基板とインプリントパターンとの間の重ね合わせ精度が悪化する原因となる。また、光露光が行われる際に基板の段差が大きいと、ショット内の結像位置が段差の上部と下部とで揃わないので、パターニング不良が発生する。
【0005】
基板の段差を平坦化するためには、塗布膜形成などの平坦化技術が提案されているが、ナノスケールでの基板の段差においては平坦化が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−211450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、基板表面を容易かつ精度良く平坦化することができる基板平坦化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、基板平坦化方法が提供される。前記基板平坦化方法では、所定領域内の非平面偏差であるトポグラフィを有した基板上から、前記トポグラフィに起因する凹部の容積に応じた量のレジストが滴下される。そして、平坦な押印面を有したブランクテンプレートと前記基板との間の距離が所定距離となるよう、前記ブランクテンプレートまたは前記基板が移動させられる。これにより、前記ブランクテンプレートの押印面が前記レジストに押し当てられる。そして、前記レジストが硬化させられる。その後、前記ブランクテンプレートが前記レジストから離型される。そして、前記レジスト上から前記基板が全面エッチングされる。さらに、前記基板上に滴下される前記レジストのレジスト量は、前記基板のショット毎に調整されている。前記レジストの単位面積あたりの滴下密度は、1つのショット上で少なくとも2種類が設定される。また、前記ブランクテンプレートの押印面は、前記基板の複数ショットを含む領域以上の大きさを有しており、前記ブランクテンプレートの押印面を前記レジストに押し当てる際には、一度の押し当て処理の際に、前記複数ショットに対して前記押印面が押し当てられる。また、前記全面エッチングの際の前記レジストと前記基板上の被エッチング膜との間のエッチング選択比は、1.5以下である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、ウエハ上に設定されるショット位置と、ショット内でのウエハ表面の凹凸と、を説明するための図である。
図2図2は、実施形態に係るレジスト滴下処理を説明するための図である。
図3図3は、実施形態に係る押印処理を説明するための図である。
図4図4は、実施形態に係るエッチバック処理を説明するための図である。
図5図5は、ショット毎のレジスト滴下位置を説明するための図である。
図6図6は、実施形態に係るレジスト滴下量算出装置の構成を示す図である。
図7図7は、実施形態に係るレジスト滴下量の算出処理手順を示すフローチャートである。
図8図8は、複数ショットずつの押印処理を説明するための図である。
図9図9は、レジスト滴下量算出装置のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、実施形態に係る基板平坦化方法および滴下量算出方法を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0011】
(実施形態)
図1は、ウエハ上に設定されるショット位置と、ショット内でのウエハ表面の凹凸と、を説明するための図である。図1の(a)は、ウエハ10上に設定されるショット11の位置を示している。また、図1の(b)は、ショット11内でのウエハ表面の凹凸を示している。なお、図1の(b)では、1つのショットの凹凸を示しており、周囲のショットの凹凸は図示省略している。
【0012】
インプリントリソグラフィが行われる際には、トポグラフィを有したウエハ10に対してレジストが滴下される。そして、レジストがブランクテンプレート(平坦な基板)で押印されたうえで、レジストが硬化させられる。この後、レジストがエッチバックされる。これにより、レジストとともにウエハ10上の凸部分が削られて、ウエハ10が平坦化される。
【0013】
本実施形態では、ウエハ10上に滴下されるレジストのレジスト量が、ウエハ10のショット毎に調整される。ウエハ10は、半導体ウエハなどの基板(被転写基板)であり、ウエハ上へはインプリントリソグラフィなどを用いて半導体装置が形成される。ウエハ10へは、複数のショット11がマトリクス状に配置されている。そして、ウエハ10上では、ショット毎に回路パターンなどが形成される。
【0014】
各ショット11では、半導体装置(基板上パターン)が形成される側の面(一方の主面)に、面内の平面度を示すトポグラフィを有している。トポグラフィは、空間波長成分が約0.2mm〜20mmのウエハ表面に存在する凹凸であり、FQA(Fixed Quality Area)内の非平面偏差である。トポグラフィは、ウエハ表面上のディップ、バンプ、波などを含んでいる。これらのディップ、バンプ、波などは、谷の高さのピークが数ナノメートル〜数百ナノメートルまで変化している。本実施形態のトポグラフィは、所定領域内(例えば、ショット11内)における、所定の空間波長範囲内かつFQA内の非平面偏差である。
【0015】
半導体装置が形成されるウエハ10は、工程(レイヤ)ごとに種々のトポグラフィを有している。このため、ウエハ10では、レイヤ毎のトポグラフィに応じた平坦化処理が行われる。
【0016】
例えば、ウエハ10は、第M(Mは自然数)の工程では第Mのトポグラフィを有している。本実施形態では、第Mのトポグラフィに対しては、第Mの滴下位置にレジスト(インプリント材料)が滴下される。このとき、レジストの滴下位置は、トポグラフィに起因する凹凸の位置に応じて設定される。したがって、レジストの単位面積あたりの滴下密度は、1つのショット上で少なくとも2種類が設定される。
【0017】
また、ウエハ10は、ショット毎に異なるトポグラフィを有している場合がある。このため、本実施形態では、ウエハ10のショット毎にレジスト量が算出される。レジストは、例えば、UV硬化材などの光硬化性樹脂などである。レジストが滴下されてレジストが平坦化された後に、ウエハ10がエッチバックされる。
【0018】
つぎに、ウエハ10への平坦化処理について説明する。ウエハ10への平坦化処理が行われる際には、レジスト滴下処理と、レジストへのテンプレートの押印処理と、レジストのエッチバック処理と、が行われる。
【0019】
図2は、実施形態に係るレジスト滴下処理を説明するための図である。ウエハ10の各ショット11に対して、インクジェット方式でレジストの滴下処理が行われる。図2では、ショット11−1〜11−N(Nは自然数)に対してレジストの滴下処理が行われる場合を示している。
【0020】
ショット11−1〜11−Nにおけるレジスト滴下位置の設定方法はそれぞれのショットで同様である。したがって、ここではショット11−1に対するレジスト滴下位置の設定方法について説明する。
【0021】
ショット11−1内にはトポグラフィがあるので、ショット11−1の表面は凹凸(段差)を有している。この凹凸は、基板上パターンなどの凹凸パターンではなく、ショット内において所望されたものではない。したがって、ショット内のトポグラフィ(凹凸)に対して短時間でレジスト15Aが充填されるよう、レジスト15Aの滴下位置が設定される。
【0022】
ショット11−1内では、凹凸の高さに応じた密度でレジスト15Aが滴下される。例えば、凹凸の高さが低い位置ほど高い配置密度でレジスト15Aが滴下され、凹凸の高さが高い位置ほど低い配置密度でレジスト15Aが滴下される。換言すると、レジスト15Aの滴下量は、凹凸の深さに応じて調整される。
【0023】
例えば、ショット11−1内において、凸部61〜63へは、所定値よりも低い配置密度でレジスト15Aが滴下される。また、ショット11−1内において、凹部51,52へは、所定値よりも高い配置密度でレジスト15Aが滴下される。換言すると、凹部51,52は、凸部61〜63よりも高い密度でレジスト15Aが滴下される。
【0024】
具体的には、ショット11−1へのレジスト15Aの滴下量は、ショット11−1に堆積させるレジスト15Aのレジスト容積である。このレジスト容積は、ショット11−1内の段差が形成する容積(段差部容積)と、段差よりも上側に配置されるレジスト15Aの容積(上部側容積)と、の和である。
【0025】
上部側容積は、ショット11−1の面積(押印面の面積)と必要膜厚(上部側レジストの膜厚であるRLT:Residual Layer Thickness)とを乗じることによって算出される。また、段差部容積(凹部の容積)は、凹凸のうちの凹部の深さおよび面積に基づいて算出される。
【0026】
本実施形態では、上部側容積に段差部容積が加算されることによって、レジスト容積であるレジスト滴下量が算出される。そして、レジスト滴下量と、凹凸の位置および高さと、に基づいて、ショット11−1内におけるレジスト滴下位置が設定される。
【0027】
このように、ショット11−1内の段差に基づいてレジスト滴下量およびレジスト滴下位置が設定されることによって、凹部51,52では、レジスト15Aが厚くなり、凸部61〜63では、レジスト15Aが薄くなる。この結果、ショット11−1内でのレジスト15Aの表面が略平坦になる。
【0028】
図3は、実施形態に係る押印処理を説明するための図である。ショット11−1〜11−Nにレジスト15Aが滴下された後、レジスト15A上からテンプレート(ブランクテンプレート)20が押し当てられる。具体的には、ウエハ10とテンプレート20との間の距離が所定距離となるよう、ウエハ10またはテンプレート20が移動させられる。
【0029】
本実施形態のテンプレート20は、レジスト15Aに押し当てられる側の面(テンプレートパターン面)が平坦な面となっている。例えば、テンプレート20は、押印面が平坦なメサ領域を有している。
【0030】
まず、ショット11−1上のレジスト15Aに対してテンプレート20が押し当てられた後、ウエハ10とレジスト15Aとが所定時間だけ接触させられる。これにより、レジスト15Aが、ショット11−1内に充填される。そして、レジスト15Aの上面がテンプレート20の押印面と同様の平坦面となる。
【0031】
この状態でテンプレート20の底面(レジスト15Aに押し当てられる面とは反対側の面)側からUV光などが照射される。これにより、レジスト15Aが硬化し、テンプレート20の平坦面がレジスト15Aにパターニングされる。この結果、ショット11−1上では、レジスト15Aが、上面の平坦なレジスト15Bとなる(S1)。この後、ショット11−1上のテンプレート20がレジスト15Bから離型される。
【0032】
また、ショット11−2に対してもショット11−1と同様の押印処理が行われる。これにより、ショット11−2上では、レジスト15Aが、上面の平坦なレジスト15Bとなる(S2)。この後、ショット11−2上のテンプレート20がレジスト15Bから離型される。
【0033】
さらに、ショット11−Nに対してもショット11−1と同様の押印処理が行われる。これにより、ショット11−N上では、レジスト15Aが、上面の平坦なレジスト15Bとなる(S3)。この後、ショット11−3上のテンプレート20がレジスト15Bから離型される。これらのショット11−1〜11−Nへのインプリント処理によって、レジスト15Bの表面がウエハ10のトポグラフィによらず平坦となる。
【0034】
なお、ここでは全てのショットにレジスト15Aが滴下された後に、押印処理が実行される場合について説明したが、1ショットずつレジスト15Aの滴下と押印処理とが実行されてもよい。この場合、レジスト15Aの滴下と押印処理とが、1ショットずつ順番に繰り返される。
【0035】
図4は、実施形態に係るエッチバック処理を説明するための図である。全てのショット11−1〜11−Nに対して押印処理が実行された後、ウエハ10へのエッチバック処理が実行される。このとき、ウエハ10の全面に対してレジスト15B上からエッチバック処理が実行される。これにより、レジスト15Bは、ウエハ10の表面の一部が露出するまで削られる。この結果、図4の(a)に示すように、ショット11−1〜11−N上では、レジスト15Bが、レジスト15Cとなる。レジスト15Cは、ウエハ10上の凹部領域のみに埋められたレジストである。
【0036】
この後、さらにエッチバック処理が継続されると、図4の(b)に示すように、レジスト15Cは、全て除去される。そして、ショット11−1〜11−Nは、略平面となる。この結果、ウエハ10上のトポグラフィが無くなる。
【0037】
ウエハ10へのエッチバック処理に対しては、レジスト15B,15Cと、ウエハ10の表面材料と、の間のエッチング選択比が近くなるようにエッチング条件が最適化されている。例えば、エッチバック処理が実行される際のレジスト15B,15Cと、ウエハ10の表面材料(被エッチング膜)と、の間のエッチング選択比は、1.5以下である。これにより、ウエハ10上の凸部がレジスト15B,15Cとともにエッチングされるので、ウエハ10の段差が低減する。このように、本実施形態では、上述した図2図4の処理が行わることによってウエハ10の平坦化が行われる。
【0038】
本実施形態では、ウエハ10上に滴下するレジスト15Aは、ショット毎に変更されている。ウエハ10は、例えば、ショット毎に異なるトポグラフィを有している場合がある。このため、ショット毎に、トポグラフィに応じたレジスト滴下位置が設定される。
【0039】
図5は、ショット毎のレジスト滴下位置を説明するための図である。ウエハ10は、例えば、ウエハ10の中心からの距離に応じたトポグラフィを有している。このような場合、各ショットへは、ウエハ10の中心からの距離に応じたレジスト滴下位置が設定される。
【0040】
例えば、ウエハ10上の第1の領域31に配置されているショット群は、ウエハ10の中心からの距離が0〜L1である。この場合、第1の領域31に配置されているショットに対しては、第1のレジスト滴下位置が設定される。
【0041】
また、ウエハ10上の第2の領域32に配置されているショット群は、ウエハ10の中心からの距離がL2〜L3(L1<L3)である。この場合、第2の領域32に配置されているショットに対しては、第2のレジスト滴下位置が設定される。
【0042】
また、ウエハ10上の第3の領域33に配置されているショット群は、ウエハ10の中心からの距離がL4〜L5(L3<L5)である。この場合、第3の領域33に配置されているショットに対しては、第3のレジスト滴下位置が設定される。
【0043】
図6は、実施形態に係るレジスト滴下量算出装置の構成を示す図である。レジスト滴下量算出装置40は、ウエハ10へのレジスト15Aの滴下量を算出するコンピュータなどである。本実施形態のレジスト滴下量算出装置40は、ウエハ10のショット毎にレジスト15Aの滴下量を算出する。
【0044】
レジスト滴下量算出装置40は、入力部41、段差部容積算出部42、上部側容積算出部43、滴下量算出部44、出力部45を備えている。入力部41へは、ショット毎のトポグラフィに関するトポグラフィ情報と、トポグラフィの上部側に成膜するレジスト15Aのショット毎のレジスト膜厚(RLT)に関する膜厚情報と、が入力される。入力部41は、トポグラフィ情報を段差部容積算出部42に送る。また、入力部41は、膜厚情報を、上部側容積算出部43に送る。
【0045】
段差部容積算出部42は、トポグラフィ情報に基づいて、トポグラフィの凹凸に対応する段差部容積を算出する。換言すると、段差部容積算出部42は、トポグラフィ情報に基づいて、トポグラフィに起因する凹部の容積を算出する。このとき、段差部容積算出部42は、ショット毎に段差部容積を算出する。段差部容積算出部42は、算出した段差部容積を滴下量算出部44に送る。
【0046】
上部側容積算出部43は、膜厚情報に基づいて、トポグラフィの凹凸部分(段差)よりも上側に配置されるレジスト15Aの上部側容積を算出する。上部側容積算出部43は、ショット毎に上部側容積を算出する。上部側容積算出部43は、算出した上部側容積を滴下量算出部44に送る。
【0047】
滴下量算出部44は、段差部容積に上部側容積を加算することによって、レジスト容積であるレジスト滴下量を算出する。なお、滴下量算出部44は、レジスト滴下量としてレジスト15Aの滴下数を算出してもよい。滴下量算出部44は、算出したレジスト滴下量を出力部45に送る。出力部45は、レジスト滴下量をインプリント装置などの外部装置に出力する。
【0048】
図7は、実施形態に係るレジスト滴下量の算出処理手順を示すフローチャートである。ウエハ10のトポグラフィに関するトポグラフィ情報が取得されると、入力部41へは、トポグラフィ情報が入力される。また、入力部41へは膜厚情報が入力される。
【0049】
段差部容積算出部42は、トポグラフィ情報に基づいて、ショット毎に段差部容積を算出する(ステップS10)。具体的には、段差部容積算出部42は、凹部の深さおよび面積に基づいて算出する。
【0050】
上部側容積算出部43は、膜厚情報に基づいて、ショット毎に上部側容積を算出する(ステップS20)。具体的には、上部側容積算出部43は、押印面の面積と、上部側レジストの膜厚と、に基づいて算出する。
【0051】
そして、滴下量算出部44は、ショット毎に、段差部容積に上部側容積を加算することによって、レジスト滴下量(レジスト容積)をショット毎に算出する(ステップS30)。この後、必要に応じて、出力部45が、レジスト滴下量をインプリント装置などの外部装置に出力する。
【0052】
なお、本実施形態では、1ショットずつテンプレート20の押印処理が実行される場合について説明したが、複数ショットずつテンプレート20の押印処理が実行されてもよい。この場合、テンプレートの押印面が、ウエハ10上の複数ショットを含む領域以上の大きさとなるようテンプレートを形成しておく。そして、一度の押し当て処理の際に、複数ショットに対して押印面が押し当てられる。
【0053】
図8は、複数ショットずつの押印処理を説明するための図である。複数ショット(例えば4ショット)を含む領域12に対してレジスト15Aが滴下された後、レジスト15A上からテンプレート21が押し当てられる。具体的には、ウエハ10とテンプレート21との間の距離が所定距離となるよう、ウエハ10またはテンプレート21が移動させられる。
【0054】
テンプレート21は、4ショット分のテンプレートパターン面を有している。そして、テンプレート21は、テンプレートパターン面(押印面)が平坦な面となっている。押印処理が行われる際には、領域12上の各ショットにレジスト15Aが滴下される。そして、領域12上のレジスト15Aに対してテンプレート21が押し当てられる。換言すると、一度の押し当て処理の際に、ウエハ10上の複数ショットに対してテンプレート21の押印面が押し当てられる、この後、ウエハ10とレジスト15Aとが所定時間だけ接触させられる。これにより、レジスト15Aが、領域12内の全ショット内に充填される。そして、レジスト15Aの上面がテンプレート21の押印面と同様の平坦面となる。
【0055】
この状態でテンプレート21の底面側からUV光などが照射される。これにより、レジスト15Aが硬化し、テンプレート21の平坦面がレジスト15Aにパターニングされる。この結果、領域12内のショット上では、レジスト15Aが、上面の平坦なレジスト15Bとなる。この後、領域12上のテンプレート21がレジスト15Bから離型される。
【0056】
ウエハ10上では、次の領域12に対して、テンプレート21を用いた押印処理が実行される。ウエハ10上では、テンプレート21を用いた1〜複数回の押印処理によって、ウエハ10の全ショットが平坦化される。なお、テンプレート21は、3ショット以下のテンプレートパターン面を有していてもよいし、5ショット以上のテンプレートパターン面を有していてもよい。テンプレート21は、例えば、ウエハ10の全面と同じ大きさのテンプレートパターン面を有していてもよい。この場合、一度の押印処理でウエハ10を平坦化することが可能となる。
【0057】
ウエハ10への平坦化処理は、例えばウエハプロセスのレイヤ毎に行われる。具体的には、ウエハ10に対して上述した平坦化処理が行われ、その後、ウエハ10にレジストが配置(滴下または塗布)される。そして、レジストの配置されたウエハ10にマスクを用いてリソグラフィプロセスが行われる。このときの、リソグラフィプロセスは、インプリントリソグラフィであってもよいし、フォトリソグラフィなどの他のリソグラフィであってもよい。ここでは、フォトリソグラフィが行われる場合について説明する。
【0058】
レジストが塗布されたウエハ10に対して露光処理が行なわれる。その後、ウエハ10が現像処理されることによって、ウエハ10上にレジストパターンが形成される。そして、レジストパターンをマスクとしてレジストパターンよりも下層側の膜がエッチング処理される。これにより、レジストパターン対応する実パターンがウエハ10上に形成される。半導体装置(半導体集積回路)を製造する際には、上述した平坦化処理、露光処理、現像処理、エッチング処理などがレイヤ毎に繰り返される。
【0059】
つぎに、レジスト滴下量算出装置40のハードウェア構成について説明する。図9は、レジスト滴下量算出装置のハードウェア構成を示す図である。レジスト滴下量算出装置40は、CPU(Central Processing Unit)91、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random Access Memory)93、表示部94、入力部95を有している。レジスト滴下量算出装置40では、これらのCPU91、ROM92、RAM93、表示部94、入力部95がバスラインを介して接続されている。
【0060】
CPU91は、コンピュータプログラムである滴下量算出プログラム97を用いてパターンの判定を行う。滴下量算出プログラム97は、コンピュータで実行可能な、レジスト15Aの滴下量をショット毎に算出するための複数の命令を含むコンピュータ読取り可能かつ非遷移的な記録媒体(nontransitory computer readable recording medium)を有するコンピュータプログラムプロダクトである。滴下量算出プログラム97では、前記複数の命令が滴下量を算出することをコンピュータに実行させる。
【0061】
表示部94は、液晶モニタなどの表示装置であり、CPU91からの指示に基づいて、ウエハ10のショットマップ、トポグラフィ、段差部容積、上部側容積、レジスト容積、レジスト滴下量などを表示する。入力部95は、マウスやキーボードを備えて構成され、使用者から外部入力される指示情報(レジスト滴下量の算出に必要なパラメータ等)を入力する。入力部95へ入力された指示情報は、CPU91へ送られる。
【0062】
滴下量算出プログラム97は、ROM92内に格納されており、バスラインを介してRAM93へロードされる。図9では、滴下量算出プログラム97がRAM93へロードされた状態を示している。
【0063】
CPU91はRAM93内にロードされた滴下量算出プログラム97を実行する。具体的には、レジスト滴下量算出装置40では、使用者による入力部95からの指示入力に従って、CPU91がROM92内から滴下量算出プログラム97を読み出してRAM93内のプログラム格納領域に展開して各種処理を実行する。CPU91は、この各種処理に際して生じる各種データをRAM93内に形成されるデータ格納領域に一時的に記憶させておく。
【0064】
レジスト滴下量算出装置40で実行される滴下量算出プログラム97は、段差部容積算出部42、上部側容積算出部43、滴下量算出部44を含むモジュール構成となっており、これらが主記憶装置上にロードされ、これらが主記憶装置上に生成される。
【0065】
本実施形態では、ウエハ10が平坦化されるので、この後のウエハ10への処理の際にウエハ10の段差に対する影響を受けにくくなる。例えば、平坦化された後のウエハ10に対してインプリントプロセスを用いてパターン形成が行われる場合がある。このインプリントプロセスでは、レジストの滴下されたウエハ10上にテンプレートが接近させられる。そして、ウエハ10上のレジストが毛細管現象によってテンプレートのテンプレートパターン内に充填される。この後、UV光の照射によってレジストが固化させられ、その後、テンプレートが離型される。
【0066】
この場合において、段差(トポグラフィ)が大きいウエハ10X(図示せず)では、段差付近でテンプレートの押印がウエハ10Xの形状に追随しない。この結果、ウエハ10Xでパターニング不良が生じてしまう。一方、本実施形態では、ウエハ10のトポグラフィが小さいので、テンプレートの押印がウエハ10の形状に追随する。この結果、ウエハ10におけるパターニング不良を防止することができる。
【0067】
また、ウエハ10Xのトポグラフィが大きい場合、テンプレートとウエハ10Xとの間のレジストの厚みであるRLTに膜厚差が生じる。このため、テンプレート面内において、テンプレートの横方向の移動に要する力であるせん断力に差が生じる。その結果、ウエハ10Xとインプリントパターンとの間の重ね合わせ精度が悪化する。一方、本実施形態では、ウエハ10のトポグラフィが小さいので、テンプレート面内におけるせん断力の差が小さい。このため、ウエハ10とインプリントパターンとの間の重ね合わせ精度が向上する。
【0068】
ところで、ウエハ10Xに対して塗布膜を形成し、塗布膜によってウエハ10Xの表面を平坦化する方法がある。この方法では、mm単位の幅とnm単位の深さで形成されるトポグラフィに対しては、塗布膜の膜厚が段差の上部および下部とで変化しない。このため、塗布膜上にトポグラフィによる段差がそのまま残っていた。一方、本実施形態の平坦化方法では、mm単位の幅とnm単位の深さで形成されるトポグラフィに対しても、トポグラフィに起因する段差を解消することが可能となる。
【0069】
上述したように、本実施形態では、ウエハ10の表面段差の深さに対応した分量のレジスト15Aが滴下される。そして、ブランクテンプレートであるテンプレート20でレジスト15Aが押印される。この後、平坦化された状態で硬化したレジスト15Bがエッチバック処理される。これにより、レジスト15Bとともにウエハ10の凸部分が削られる。この結果、表面段差量が大きいウエハ10の表面が平坦化される。
【0070】
このように実施形態によれば、ウエハ10上に滴下されるレジスト15Aのレジスト量が、ウエハ10のショット毎に調整されているので、ウエハ10の表面を容易かつ精度良く平坦化することが可能となる。
【0071】
また、本実施形態では、テンプレート21の押印面が、複数ショット分の押印面を有し、一度の押し当て処理の際に複数ショットに対して押印面が押し当てられる。したがって、ウエハ10の表面を容易かつ精度良く平坦化することが可能となる。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
10…ウエハ、11…ショット、15A〜15C…レジスト、20,21…テンプレート、31〜33…領域、40…レジスト滴下量算出装置、42…段差部容積算出部、43…上部側容積算出部、44…滴下量算出部、51,52…凹部、61〜63…凸部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9