特許第6437400号(P6437400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6437400パターン形成方法、スタンパの製造方法、およびデバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437400
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】パターン形成方法、スタンパの製造方法、およびデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/02 20060101AFI20181203BHJP
   B29C 33/38 20060101ALI20181203BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
   B29C59/02 B
   B29C33/38
   H01L21/30 502D
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-173153(P2015-173153)
(22)【出願日】2015年9月2日
(65)【公開番号】特開2017-47623(P2017-47623A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2017年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】東芝メモリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】沖野 剛史
(72)【発明者】
【氏名】渡部 彰
(72)【発明者】
【氏名】木原 尚子
(72)【発明者】
【氏名】山本 亮介
【審査官】 ▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−050407(JP,A)
【文献】 特表2012−523311(JP,A)
【文献】 特開2012−220714(JP,A)
【文献】 特開2011−210330(JP,A)
【文献】 特開2004−303870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/00− 59/18
B29C 33/00− 33/76
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が先細り形状を有している複数の凸部が一方の主面に設けられた基板を準備することと、
コア部と、該コア部を被覆したシェル部とそれぞれを備える複数の球状粒子であって、径が等しい複数の球状粒子を前記主面に供給して、前記複数の凸部の各々が、隣接した3つの前記球状粒子と前記主面とによって囲まれた領域内に少なくとも部分的に位置するように、前記複数の球状粒子を三角格子状に配列させることと
前記複数の球状粒子を配列させた後に、前記複数の球状粒子の各々の前記コア部が残留するように、前記複数の凸部と前記複数の球状粒子の各々の前記シェル部とを同時に除去することと
を含んだパターン形成方法。
【請求項2】
前記複数の凸部と前記シェル部の除去は、エッチングにより行い、
前記複数の凸部を構成する材料のエッチングレート、及び前記シェル部を構成する材料のエッチングレートはいずれも、前記コア部を構成する材料のエッチングレートより高い請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
残留した前記コア部をマスクとして用いて前記主面を加工することをさらに含んだ請求項1または2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
残留した前記コア部上に、前記コア部よりもエッチングレートが低い材料からなる層を形成し、前記コア部を露出させ、前記層をエッチングマスクとして用いてエッチングを行うことにより、露出した前記コア部と、その下方に位置した前記シェル部の残留部と、前記基板のうち前記コア部の下方に位置した部分とを除去することをさらに含んだ請求項1または2に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記複数の凸部を、それらの各々が三角格子の格子点の何れかの上に位置するように前記主面に設ける請求項1ないし4の何れか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記複数の凸部の2以上を、それらの各々が三角格子の格子点の何れかの上に位置するように前記主面に設け、前記複数の凸部の残りの各々を、前記三角格子の隣り合った格子点を線分で結ぶことにより得られる、第一の向きの三角形および前記第一の向きとは逆向きの第二の向きの三角形のうち、前記第1の向きの三角形の何れかの重心に位置するように前記主面に設ける、請求項1ないし4の何れか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記複数の凸部を、下記式(4)または式(7)により算出される中心間距離dで位置するように前記主面に設ける請求項6に記載のパターン形成方法:
【数1】
(式中、rは球状粒子5の半径であり、h及びi及びjはそれぞれ独立した整数である。)
【数2】
(式中、rは球状粒子5の半径であり、m及びnはそれぞれ独立した整数である。但し、m及びnが同時に0になることはない。)
【請求項8】
前記中心間距離dは4r以上である請求項7に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
前記中心間距離dは20r以下である請求項7または8に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記複数の凸部の各々を錐体形状に形成する請求項1ないし9の何れか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記複数の凸部の各々を円錐体形状に形成する請求項1ないし9の何れか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記複数の凸部を、各々の底面の半径r1と前記複数の球状粒子の各々の半径rとが下記式(9)に示す関係を満たすように前記主面に設ける請求項1ないし11の何れか一項に記載のパターン形成方法。
【数3】
【請求項13】
前記複数の凸部を、各々の高さhにおける半径r2と前記複数の球状粒子の各々の半径rとが下記式(11)に示す関係を満たすように前記主面に設ける請求項1ないし11の何れか一項に記載のパターン形成方法。
【数4】
【請求項14】
前記複数の凸部を、各々が前記複数の球状粒子の半径より低い高さを有するように前記主面に設ける請求項1ないし12の何れか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
前記複数の球状粒子の半径は10nm以上である請求項1ないし14の何れか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項16】
前記複数の凸部をインプリントによって形成する請求項1ないし15の何れか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項17】
請求項1ないし16の何れか一項に記載のパターン形成方法により、基板の一方の主面に凸パターンまたは凹パターンを形成することと、
前記凸パターンまたは前記凹パターンを形成した前記主面に対して電鋳を行って、前記凸パターンまたは前記凹パターンに対応した表面形状を有している金属層を形成することと
を含んだスタンパの製造方法。
【請求項18】
請求項1ないし17の何れか一項に記載のパターン形成方法により、基板の一方の主面に凸パターンまたは凹パターンを形成することと、
他の基板上に樹脂層を形成することと、
前記凸パターンまたは前記凹パターンを前記樹脂層へ転写することと、
を含んだデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、パターン形成方法、スタンパの製造方法、およびデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
凹部または凸部を数十nmから数百nmの周期で規則的に配列してなる微細構造は、半導体デバイス、フォトニックデバイス、反射防止膜等に応用することができる。
【0003】
そのような構造を作製する方法として、電子線描画装置やEUVや紫外線等の露光装置などを用いてレジスト層上にパターンを描画する方法、及び、ジブロックコポリマーや粒子の自己組織化現象を利用する方法がある。前者は、装置が高額であるためコストが高い。後者は、材料の物性を利用したボトムアップ手法によるものであるため、高額な装置を用いることなく実施できる。後者の方法のうち、粒子の自己組織化現象を利用したパターン形成方法では、球状粒子の材料として、レジストやジブロックコポリマーなどの有機材料に限らず、無機材料、金属材料を使用することができる。そのため、その後の転写エッチングプロセスにおけるエッチング選択比が所望の値になる材料を選択することが容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US 2008/0053369A1
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】N. N. Khanh et al., J. AM. CHEM. SOC. 2009, 131, 14228-14230
【非特許文献2】Ion Bita et al., Science 321, 939 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、基板上に複数の球状粒子を高密度に配列させることを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によればパターン形成方法が提供される。該方法は、各々が先細り形状を有している複数の凸部が一方の主面に設けられた基板を準備することを含む。該方法はさらに、径が等しい複数の球状粒子を前記主面に供給して、前記複数の凸部の各々が、隣接した3つの前記球状粒子と前記主面とによって囲まれた領域内に少なくとも部分的に位置するように、前記複数の球状粒子を三角格子状に配列させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る方法において使用する、凸部を備えた基板を模式的に示す斜視図。
図2】実施形態に係る方法において形成する第一パターンを模式的に示す斜視図。
図3図2の第一パターンを模式的に示す平面図。
図4図2の第一パターンを模式的に示す側面図。
図5図2の第一パターンにおいて、基板上に想定される三角格子と球状粒子の位置とを模式的に示す平面図。
図6】(a)及び(b)は、それぞれ、式(4)及び式(7)を説明するための模式図。
図7】(a)ないし(c)は、球状粒子の大きさと凸部の大きさとの関係を示す模式図。
図8】実施形態に係る方法において形成する第二パターンを模式的に示す平面図。
図9図8の第二パターンを模式的に示す断面図。
図10】実施形態に係る方法において形成する凸パターンを模式的に示す斜視図。
図11】実施形態に係る方法において形成するスタンパを模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。実施形態によれば、各々が先細り形状を有している複数の凸部が一方の主面に設けられた基板を準備することと、前記主面に複数の球状粒子を供給して、前記複数の球状粒子が三角格子状に配列し且つ前記複数の凸部の各々が隣接した3つの前記球状粒子と前記主面とによって囲まれた領域内に位置した構造を形成することとを含んだパターン形成方法が提供される。
【0010】
実施形態のパターン形成方法では、まず、図1に示すような凸部2を一方の主面に有する基板1を準備する。基板1として、シリコンウェハ、GaAsやAlGaAsなどの化合物半導体ウェハ、石英基板、サファイア基板、酸化インジウムスズ(ITO)基板、インジウムとガリウムと亜鉛と酸素から構成されるアモルファス半導体(IGZO)基板、スピンオングラスによりコーティングされた基板、カーボン膜スパッタ基板などを使用することができる。基板は、エッチング選択比を向上させるためのハードマスク層を備えていてもよい。なお、凸部2の詳細については、後で説明する。
【0011】
次に、凸部2を有する主面上に径が等しい球状粒子を供給する。ここで、径が等しい球状粒子とは、完全に同じ直径を有する球状粒子に限定されず、ほぼ等しい直径を有する球状粒子を含む。すなわち、「径が等しい」という記載により、不可避的な直径のばらつきを排除するものではない。
【0012】
球状粒子の供給方法として、スピンコート法、ディップコート法、またはラングミュア(L)法等を用いることができる。
スピンコート法では、球状粒子の分散液を基板1の主面上へ滴下し、基板1を回転させて分散媒を乾燥させる。このとき、分散液の球状粒子含有量や回転数を調整することにより膜厚を制御することができる。
【0013】
ディップコート法では、球状粒子の分散液を容器に収容し、容器内の分散液に基板1を浸漬する。基板1を引き上げる際の粘性力および分子間力で基板1に球状粒子を付着させることができる。また、分散液の球状粒子含有量や引き上げの速度を調整することにより膜厚を制御することができる。スピンコート法では余分な分散液は廃棄されるが、ディップコート法では、余分な分散液は容器に戻されるので廃棄分が少ない。
【0014】
L法では、表面に保護基を有している球状粒子を使用するとともに、これを保護基に対する親和性が低い分散媒と混合する。球状粒子および分散媒の種類や混合比は、分散媒の表面に、球状粒子からなりかつ一粒子分の厚さを有している層が浮くよう選定する。これに基板1を浸漬し、続いて基板1を引き上げることにより、基板1に球状粒子を付着させることができる。
【0015】
なお、球状粒子を塗布する前に、基板1の主面上に下地層を形成してもよい。下地層は、例えば、ポリスチレンなどからなる層であってもよい。
【0016】
上記のように、凸部2を有する主面上に球状粒子を供給することにより、球状粒子からなりかつ一粒子分の厚さを有している層を基板1上に形成することができる。このとき、主面上において凸部2が所定の位置に存在していることにより、図2〜4に示すように、球状粒子5が三角格子状に配列しかつ三角格子の位置および方位が凸部2によって制御されたパターン(以降、第一パターンと称する)10を得ることができる。なお、図2〜4には、球状粒子5の一例として、コア部3とシェル部4とを備えたコアシェル粒子を描いている。球状粒子5については、後で詳しく説明する。
【0017】
図2〜4に示すように、第一パターン10において、球状粒子5は、隣り合った3つの球状粒子5の中心を結ぶ線分が正三角形を形成するように、三角格子状に配列している。各球状粒子5は、これを取り囲む6つの球状粒子5と接触していている。なお、球状粒子5の粒径のばらつきなどに起因して、一部の球状粒子5が接触している球状粒子5の数は5以下または7以上になることもある。
【0018】
なお、凸部2の配置等を工夫すれば、球状粒子5を正方格子状に配列させることも可能である。ただし、球状粒子5が三角格子状に配列したパターンは、球状粒子の密度が最も高く、且つ安定性に優れている。
【0019】
第一パターン10において、複数の凸部2の各々は、隣接した3つの球状粒子5と基板1の主面とによって囲まれた領域内に少なくとも部分的に位置している。各凸部2は、その全体が上記領域内に位置していてもよく、その一部が上記領域内に位置し、残りの部分、例えば先端部が上記領域の外側に位置していてもよい。
【0020】
凸部2は、先細り形状を有している。ここで、先細り形状とは、例えば、底面に対して平行な断面の面積が、底面からの距離、すなわち高さの増加に応じて単調減少している形状か、または、底面に対して平行な断面の面積が高さの増加に応じて単調減少している1以上の部分および底面に対して平行な断面の面積が高さにかかわらず一定である1以上の部分からなる形状を指す。このような形状は、底面から先端に向けて断面積が次第に減少する形状、断面積が一定の部分と次第に減少する部分とからなる形状、及び、底面積と同じ断面積を有する下部と底面積より小さい断面積を有する上部とからなる形状を含む。先細り形状は、基板1と接する底面の面積が広い。よって、先細り形状を有する凸部2は、倒壊の可能性が低いと共に、球状粒子5を安定して支えることができる。凸部2の先端は、鋭くとがっていてもよいが、丸みを帯びていてもよい。
【0021】
凸部2は錐体形状を有することが好ましく、円錐体形状を有することがより好ましい。円錐体形状を有することにより、球状粒子5の配列方向によらず球状粒子5を均等に且つ安定して支えることができる。或いは、凸部2は、三角錐や六角錐などの角錐体形状を有してもよい。この場合、球状粒子5を配列させる方向に応じて底面の辺の向きを調整することが好ましい。
【0022】
なお、上記の錐体とは、完全な錐体でなくてもよく、概ね錐体の形状を有するものも包含する。例えば、錐体の頂部を丸めたものや角錐の稜部を丸めたものも、錐体形状を有していることとする。
【0023】
また、凸部2は、錐台形状、例えば、円錐台形状、または、三角錐台形状および六角錐台形状などの角錐台形状を有していてもよい。ここで、錐台は、完全な錐台でなくてもよく、概ね錐台の形状を有するものも包含する。例えば、錐台の稜部を丸めたものも、錐体形状を有していることとする。
【0024】
複数の凸部2のそれぞれは、好ましくは、互いに隣接した3つの球状粒子5の全てと接触し得る寸法に設計する。これにより、球状粒子5の位置を高い精度で制限することができる。凸部2のそれぞれは、隣接する3つの球状粒子5の全てと接触し得る寸法よりも小さな寸法を有していてもよい。凸部2が1つまたは2つの球状粒子5と接触している場合であっても、球状粒子5の位置を制限することができる。
【0025】
各凸部2は、基板1の主面に対して垂直な方向から見た場合に、隣接する3つの球状粒子5のそれぞれの中心点を結ぶ線分によって形成される三角形内に全体が位置することが好ましく、該三角形の重心に底面の中心が位置することがより好ましい。
【0026】
複数の凸部2のそれぞれは、例えば、それらの各々が基板1の主面上において想定される三角格子の格子点の何れかの上に位置するように主面に設ける。図5に、基板1の主面上において想定される三角格子と球状粒子5の位置とを説明するための模式図を示す。三角格子の格子点間の最短距離は、球状粒子5の直径と一致させる。図5では省略しているが、凸部2は、三角格子の格子点7上に設ける。凸部2を三角格子の格子点7上に位置させることにより、主面上で球状粒子5を三角格子状に配列させることができる。なお、凸部2は、三角格子の格子点7の一部の上に設ければよく、全ての格子点7上に設ける必要はない。
【0027】
三角格子の格子点7を線分で結ぶことにより得られる三角形は、第一の向きの三角形と、第一の向きとは逆向きの第二の向きの三角形とを含んでいる。ここで、第一の向きの三角形の重心を第一重心6とし、第二の向きの三角形の重心を第二重心8とする。
【0028】
好ましい態様においては、一部の凸部2を格子点7上に位置するように設け、残りの凸部2を第二重心8上に位置するように設ける。一部の凸部2を格子点7上に位置するように設け、他の一部の凸部2を第一重心6上に位置するように設け、残りの凸部2を第二重心8上に位置するように設けた場合、例えば、球状粒子5が第一重心6上に位置した構造と、球状粒子5が第二重心8上に位置した構造とが混在することになり、球状粒子5の規則的な配列が妨げられる可能性がある。格子点7および第二重心8上にのみ凸部2を設けることにより、球状粒子5が第二重心8上に位置した構造が生じる可能性を排除することができ、球状粒子5が第一重心6上に位置した構造をより確実に得ることができる。
【0029】
図6(a)および(b)に、凸部2の中心間距離dについて説明するための模式図を示す。図6(a)および(b)において、x方向は球状粒子5の配列方向の1つであり、y方向はx方向に垂直な方向である。球状粒子5の半径をrとし、隣接した球状粒子5の中心間距離を2rとする。なお、配列した粒子間に働く引力または斥力、或いは、粒子の個体差により、単独で存在する状態で計測した球状粒子5の半径と、配列した状態で計測した球状粒子5の半径とは一致しない場合があるが、球状粒子5を互いに接触しないように間隔を明けて配列させた場合を除いて、自己集合的に配列させたときの隣接した球状粒子5の中心間平均距離を2rとしたとき、球状粒子5の半径はrとみなすこととする。
【0030】
図6(a)および(b)に示す凸部AおよびBの中心間距離dは、下記式(1)により算出できる。ここで、dは、凸部Aの中心から、この中心を通りかつx方向に平行な直線と凸部Bの中心を通りかつy方向に平行な直線との交点までの距離である。また、dは、凸部Bの中心から先の交点までの距離である。
【0031】
【数1】
【0032】
図6(a)には、凸部Aと凸部Bの一方を図5の格子点7に位置させ、他方を図5の第二重心8に位置させた構造を描いている。また、図6(b)には、凸部AおよびBの双方を図5の格子点7(または双方を第二重心8)に位置させた構造を描いている。
【0033】
凸部AおよびBを図6(a)に示すように配置した場合、距離dおよびdは、それぞれ下記式(2)及び式(3)により表される。
【0034】
【数2】
【数3】
【0035】
よって、図6(a)において、凸部Aと凸部Bとの中心間距離dは、下記式(4)により表される。
【0036】
【数4】
式中、rは球状粒子5の半径であり、h及びi及びjはそれぞれ独立した整数である。
【0037】
一方、凸部AおよびBを図6(b)に示すように配置した場合、距離dおよびdは、それぞれ下記式(5)及び式(6)により表される。
【0038】
【数5】
【数6】
【0039】
よって、図6(b)において、凸部Aと凸部Bとの中心間距離dは、下記式(7)により表される。
【0040】
【数7】
式中、rは球状粒子5の半径であり、m及びnはそれぞれ独立した整数である。但し、m及びnが同時に0になることはない。
【0041】
図5に関する説明などから明らかなように、基板1上に複数の球状粒子5を高密度に配列させるうえでは、複数の凸部2を、それらの中心間距離dが上記の式(4)または式(7)を満たすように基板1の主面上に設けることが好ましい。
【0042】
複数の凸部2の中心間距離dは4r以上であることがより好ましい。このような範囲であることにより、球状粒子5の移動が円滑に行われ、球状粒子5の自己集合的な整列を促進することができる。また、複数の凸部2の中心間距離dは20r以下、より好ましくは10r以下であることが好ましい。このような範囲であることにより、複数の球状粒子を高い精度で所望の位置に配置することができる。
【0043】
凸部2は、主面上の粒子層形成エリアに少なくとも3つ以上あることが好ましい。凸部2が3つ以上である場合、少なくとも1つの凸部2は、他の2以上の凸部2を配置する格子点を通る直線上に位置していないことが好ましい。
【0044】
凸部2は、例えば、主面上に配列させる球状粒子5とほぼ同数になるように設けてもよい。このような場合、球状粒子5を所望の位置に精度よく配置することができる。しかしながら、凸部2の中心間距離が短いと、凸部2の形成が難しく、また、凸部2間の間隔が狭いと、主面上での球状粒子5の移動が凸部2によって過剰に妨げられる可能性がある。
【0045】
主面上には、先細り形状の凸部2の他に、基板1の主面に対して垂直な方向から見た場合に直線または曲線状の形状を有している凸部を形成してもよい。直線または曲線状の凸部は、例えば、球状粒子5が配置される領域の外周を囲むように設置する。先細り形状の凸部と直線または曲線状の凸部とを併用することにより、球状粒子5の配列をより容易に制御することができる。
【0046】
また、球状粒子5が配置される領域と、直線または曲線状の凸部との間に緩衝領域を設けてもよい。緩衝領域において、複数の凸部2の中心間距離dが4r未満となるように、凸部2を設けることが好ましい。これにより、緩衝領域において球状粒子5の位置を容易に制御することができる。
【0047】
次に、図7(a)ないし(c)を参照して、球状粒子5の大きさと凸部2の大きさとの関係について説明する。球状粒子5の半径はrである。3つの隣接する球状粒子5のそれぞれの中心点を線分で結ぶことによって形成される三角形の中心を通る垂線と基板1との交点と、球状粒子5の中心を通る垂線と基板1との交点との間の距離kは、下記式(8)のように表すことができる。
【0048】
【数8】
【0049】
図7(a)に示すように、凸部2の底面の半径rは、下記式(9)により表される関係を満たしていることが好ましい。
【0050】
【数9】
【0051】
なお、複数の凸部2の各々の底面が円形でない場合は、凸部2の底面の外接円の半径を半径rとみなすことができる。
【0052】
図7(b)に示すように、基板1からの高さhにおける球状粒子5の断面を考えた場合、この断面の半径rは、下記式(10)により表すことができる。
【0053】
【数10】
【0054】
そして、基板1からの高さhにおける凸部2の断面を考えた場合、この断面の半径rは、下記式(11)により表される関係を満たしていることが好ましい。
【0055】
【数11】
なお、複数の凸部2の各々の高さhにおける断面が円形でない場合は、該断面の外接円の半径を半径rとみなすことができる。
【0056】
基板1からの高さhが、球状粒子5の半径rと等しいとき、図7(c)に示すように、高さhにおける凸部2の断面の半径rは、下記式(12)により表される関係を満たしていることが好ましい。
【0057】
【数12】
【0058】
複数の凸部2のそれぞれが式(9)及び式(11)に示す関係を満たすことにより、凸部2が球状粒子5の配置を妨げることがないため、球状粒子5をより高密度に配列させることができる。
複数の凸部2のそれぞれは、球状粒子5の半径より低い高さを有することが好ましい。
【0059】
凸部2は、これらに限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、または室温硬化材料により形成することができる。
【0060】
基板1の主面上に複数の凸部2を形成する方法として、例えば、電子線、ArF(フッ化アルゴン)エキシマレーザー光、KrF(フッ化クリプトン)エキシマレーザー光、極端紫外線(EUV)光、または、水銀灯のg線(436nm)もしくはi線(365nm)を用いて、感放射線性樹脂組成物を露光し、現像する方法を用いることができる。
【0061】
基板1の主面上に複数の凸部2を形成する他の方法として、スタンパを用いて基板1にインプリントを施す方法を用いることができる。一つの態様において、凸部2を形成するためのスタンパが提供される。
【0062】
スタンパを用いて基板1の主面上に複数の凸部2を形成する方法は、例えば、基板1の主面上に樹脂層を形成し、この層に凹型形状を有するスタンパを接触させることと、続いてスタンパが接触している樹脂層を硬化させることと、硬化された樹脂層からスタンパを分離して、スタンパに対応する凹凸を有する樹脂層を形成することとを含む。樹脂として、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂を用いることができる。
【0063】
或いは、樹脂の代わりに、スピンオングラス(SOG)または水素シルセスキオキサン(HSQ)などの室温硬化材料を用い、室温ナノインプリント技術によって凸部を形成してもよい。
【0064】
スタンパは、例えば開口部の断面積と比較して底部の断面積が狭い凹部を有する。底部の断面積が狭い凹部を有するスタンパは、石英などのスタンパ基板を、該基板上に設けたハードマスクが後退するようなエッチング条件によりエッチングすることによって製造することができる。
【0065】
基板1の主面上に凸部2を形成する方法の一例を説明する。この方法では、まずスタンパを製造する。初めに、石英基板上に、感光性材料層(レジスト層)としてネガ型レジスト層を形成する。このネガ型レジスト層に電子線描画を施し、次いで、ネガ型レジスト層を現像して、目的とする凸部2の底面積より小さな底面積を有する、レジストからなる凸部を複数形成する。
【0066】
次に、レジストからなる凸部を有する石英基板の表面に、Niを真空蒸着する。その後、レジストからなる凸部を除去する。これにより、レジストからなる凸部が存在していた箇所においてNi層を開口させる。このようにして、ハードマスク層を有する石英基板を得る。
【0067】
続いて、ハードマスク層をエッチングマスクとして用いて、石英基板をエッチングする。このエッチングとしては、反応性イオンエッチングを、十分に高いバイアス電圧のもとで行う。このようなエッチングを行うと、エッチングの進行に伴ってハードマスク層の開口が広がり、その結果、先細りした凹部が石英基板に形成される。このようにして、凹部を有するスタンパ(インプリントモールドとも称する)を得る。
【0068】
このスタンパを用いて、基板1の主面上に凸部2を形成する。まず、基板1の主面上に光硬化性樹脂からなる樹脂層を形成する。この樹脂層に上記で得られたスタンパを接触させる。続いて樹脂層をUV硬化させ、硬化された樹脂層からスタンパを分離する。
以上のような方法により、基板1の主面上に複数の凸部2を形成することができる。
【0069】
次に、球状粒子5について説明する。球状粒子5は、外形が概ね球状であれば良く、完全な球体でなくてよい。球状粒子5は、単一成分からなるものであっても、複数成分からなるものであってもよい。
【0070】
球状粒子5は、図2ないし4、6および7に示すように、コア部3と、該コア部3を被覆しており、コア部3とは異なる成分からなるシェル部4とを備えたコアシェル粒子であることが好ましい。シェル部4は、成分が異なる複数の層を有していてもよい。シェル部4が複数の層を有する場合、最外周のシェルの外形が概ね球状であれば内側の層とコア部3とは、平面を有する粒子であっても良い。
【0071】
球状粒子5の半径は、10nm以上、100nm以下であることが好ましい。より好ましくは30〜80nmで、このような適当な大きさを有しかつ粒径分散が小さいほど、基板1の主面上でそれらをより高い秩序度で配列させることができる。
【0072】
球状粒子5は、凸部2よりエッチングレートが低い材料から形成される。球状粒子5がコアシェル粒子である場合、シェル部4は、凸部2よりエッチングレートが低い材料か、または、凸部2と同等のエッチングレートを有する材料から形成されることが好ましい。コア部3はシェル部4及び凸部2よりエッチングレートが低い材料から形成される。
【0073】
コア部3の材料は、金属、無機物又はそれらの化合物であることが好ましい。具体的には、コア部3の材料は、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Y、Zr、Sn、Mo、Ta、W、Au、Ag、Pd、Cu、及びPtから選択される材料、これらの酸化物、窒化物、硼化物、炭化物または硫化物であることが好ましい。
【0074】
シェル部4の材料は、有機物またはシリカであることが好ましい。有機物として、例えば、炭素原子からなる主鎖を有する有機化合物を用いることができる。該化合物は、単結合のみを含む化合物であってもよく、或いは、二重結合及び/または三重結合を1個以上含む化合物であってもよい。また、有機物として芳香族炭化水素を用いることもできる。
【0075】
また、有機物としてポリマーを用いることもできる。ポリマーの例には、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、およびポリプロピレン等が含まれる。
【0076】
また、有機物として、カルボキシ基を有する化合物を用いることもできる。そのような化合物の例には、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸またはステアリン酸などの飽和炭化水素、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸またはリノレン酸などの不飽和炭化水素が含まれる。
【0077】
また、有機物として、チオール基を有する化合物を用いることもできる。そのような化合物の例には、チオール基を有する飽和炭化水素及びチオール基を有する不飽和炭化水素が含まれる。
【0078】
コアシェル粒子の例には、コア部が金からなる球状粒子であり、シェル部がポリスチレンから成る球状粒子;コア部が金からなる球状粒子であり、シェル部がシリカから成る球状粒子;コア部がシリカからなる球状粒子であり、シェル部がポリスチレンから成る球状粒子;および、コア部がシリカからなる球状粒子であり、シェル部がポリメチルメタクリレートから成る球状粒子が含まれる。
【0079】
以上に説明したように、実施形態のパターン形成方法によれば、凸部2が球状粒子5の配置を妨げないため、球状粒子5が高密度かつ規則的に配列したパターン10を得ることができる。
【0080】
実施形態のパターン形成方法は、さらなる加工工程を含んでもよい。例えば、第一パターン10をエッチング、現像、スパッタリング、化学気相成長(CVD)、原子層堆積(ALD)及び電鋳から選択される加工に供する工程を含んでもよい。
【0081】
例えば、実施形態のパターン形成方法は、第一パターンにおいて、複数の球状粒子5の各々のコア部3が残留するように、複数の凸部2と複数の球状粒子5の各々のシェル部4とを除去する工程を含んでよい。凸部2及びシェル部4の除去は、エッチングにより行うことができる。加工工程を簡略化するために、凸部2及びシェル部4を同時に除去することが好ましい。或いは、凸部2のみを除去し、続いてシェル部4を除去してもよく、その逆であってもよい。
【0082】
凸部2とシェル部4とを同時にエッチングする場合は、それらをエッチングレートがほぼ同じ程度である材料で構成する。これらのエッチングレートは、コア部を構成する材料のエッチングレートより高い値に設定する。
【0083】
凸部2及びシェル部4を除去した後、基板1の主面上には、図8及び図9に示すように球状粒子5のコア部3が残留している。このようにコア部3が残留したパターンを第二パターン20と称することとする。第二パターン20において隣り合ったコア部3間の距離は、球状粒子5のシェル部4の厚さを調整することにより制御することができる。
【0084】
なお、コアシェル構造を有さない球状粒子5を用いた場合は、凸部2のみをエッチングにより除去することにより、複数の球状粒子5が残留した第二パターンを得ることができる。この場合、凸部2の中心間距離dが球状粒子5の配列ピッチと等しくなるように、即ち、球状粒子と凸部とが1対1になるように複数の凸部を設ける。これにより、凸部2の大きさが球状粒子5の間隔と等しくなる。よって、凸部2の大きさを調整することにより、球状粒子5同士の間の間隙の幅を制御することができる。
【0085】
実施形態のパターン形成方法は、さらなる加工工程を含んでもよい。例えば、第二パターン20のコア部3をマスクとして用いて基板1の主面を加工する工程、或いは、コア部3をシード層として用いて加工する工程を含んでもよい。ここで加工とは、エッチング、現像、スパッタリング、CVD、ALD及び電鋳を含む。
【0086】
一例として、コア部3をマスクとして用いた加工について説明する。
まず、コア部3からなる第二パターン20を形成し、コア部3をマスクとして用いて基板1をエッチングする。次いで、コア部3と、その下方に位置したシェル部4の残留部とを除去する。これにより、図10に示すように、円柱状の凸部14を有する凸パターン30を形成することができる。
【0087】
或いは、まず、コア部3からなる第二パターン20を形成する。次に、第二パターン20上に、コア部3よりもエッチングレートが低い材料からなる層を形成する。次いで、この層を必要に応じて平坦化してコア部3を露出させる。その後、先の層をエッチングマスクとして用いてエッチングを行うことにより、コア部3と、その下方に位置したシェル部4の残留部と、基板1のうちコア部3の下方に位置した部分とを除去する。これにより、円柱状の凹部を有する凹パターンを形成することができる。
【0088】
以上のパターン形成方法によれば、円柱状の凸部または凹部が規則的かつ高密度に配列し構造を、コストの高い露光を使用せずに得ることができる。
【0089】
他の実施形態において、スタンパの製造方法が提供される。該方法では、まず、上述したパターン形成方法により、基板の一方の主面に凸パターンまたは凹パターンを形成する。次いで、凸パターンまたは凹パターンを形成した主面に対して電鋳を行って、凸パターンまたは凹パターンに対応した表面形状を有している金属層を形成する。電鋳はNiを用いて行ってよい。
【0090】
主面に凸パターンを有する基板を用いた場合、図11に示すように、円柱状の凹部22を有する金属層21を含むスタンパ40を製造することができる。或いは、凹パターンを有する基板を用いた場合、円柱状の凸部を有する金属層を含むスタンパを製造することができる。スタンパ40は、例えば、金属層21の強度を向上させる支持体を備えていてもよい。
【0091】
以上の方法によれば、円柱状の凸部または凹部が規則的かつ高密度に配列したスタンパを製造することができる。
【0092】
他の実施形態において、上述した方法により形成されたパターンを用いたデバイスの製造方法が提供される。このデバイスの製造方法は、上述したパターン形成方法により、基板の一方の主面に凸パターンまたは凹パターンを形成することと、他の基板上に樹脂層を形成することと、上記凸パターンまたは凹パターンを樹脂層へ転写することとを含む。
【0093】
デバイスの製造は、上述したスタンパの製造方法に従って製造したスタンパを用いて行ってもよい。例えば、上述した製造方法により得られたスタンパを、半導体基板などの基板上に形成した樹脂層に接触させる。この状態で樹脂層を硬化させ、その後、スタンパを分離する。このような工程により、凸パターンまたは凹パターンが転写された樹脂層を有する基板を得る。この基板を、例えばエッチング、電鋳、または、成膜及びリフトオフなどのさらなる加工工程に供する。これにより、基板の一方の主面に凸パターンまたは凹パターンが形成されたデバイスを製造することができる。
【0094】
デバイスとして、これに限定されないが、半導体記憶装置などの半導体装置が挙げられる。半導体記憶装置の例として、半導体三次元メモリ(BiCS:Bit Cost Scalable Memory)が挙げられる。BiCSとは、複数のシリコン電極層と複数の酸化シリコン絶縁層とが交互に積層しており、それらに開けられた貫通孔に円柱電極が挿入されている構造を有する大容量メモリである。実施形態のデバイスの製造方法は、このようなBiCSの製造に好適に用いられる。
【実施例】
【0095】
(実施例1)
石英基板の主面上に、感光性材料層(レジスト層)として、ネガ型レジスト層を形成した。このネガ型レジスト層に電子線描画を施し、次いで、ネガ型レジスト層を現像して、目的とする凸部の底面積より小さな底面積を有する、レジストからなる凸部を複数形成した。
【0096】
次に、レジストからなる凸部を有する石英基板の表面に、Niを真空蒸着した。その後、レジストからなる凸部を除去した。これにより、レジストからなる凸部が存在していた箇所においてNi層を開口させる。このようにして、ハードマスク層を有する石英基板を得た。
【0097】
続いて、ハードマスク層をエッチングマスクとして用いて、石英基板をエッチングした。このエッチングとしては、反応性イオンエッチングを、十分に高いバイアス電圧のもとで行った。このようなエッチングを行うと、エッチングの進行に伴ってハードマスク層の開口が広がり、その結果、先細りした凹部が石英基板に形成される。このようにして、凹部を有するスタンパを得た。
【0098】
このスタンパを用いて、シリコン基板の主面上に凸部を形成した。まず、シリコン基板の主面上に光硬化性樹脂からなる樹脂層を形成した。この樹脂層に上記のようにして得られたスタンパを接触させた。続いて樹脂層をUV硬化させ、硬化された樹脂層からスタンパを分離した。これにより、複数の凸部が三角格子の格子点上に位置し六方格子状に配置された基板を得た。複数の凸部の中心間距離は180nmであった。複数の凸部のそれぞれの高さは約25nmであった。硬化した被インプリント材料の底部には残渣が生じたため、エッチングにより除去した。
【0099】
次に、シリコン基板に以下の表面処理を行った。まず、シリコン基板をUV洗浄機で10分間洗浄した。また、溶媒としてプロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタート(PGMEA)を用い、末端にヒドロキシル基を有する分子量9,800のポリスチレン(PS)を希釈して処理液を調製した。この処理液中のPSの濃度は1質量%とした。
【0100】
シリコン基板の主面に処理液を滴下し、スピンコート法により塗布膜を形成した。その後、真空雰囲気下で、170℃で20時間熱処理を行い、主面上にPSからなる層を形成した。その後、基板にPGMEAを滴下し、余剰なPSを溶解させるとともに、基板の洗浄を行った。続いて、溶媒を基板の高速回転により揮発させ、表面にPSからなる層(吸着層)を有するシリコン基板を得た。
【0101】
表面処理後のシリコン基板に、球状粒子をDip法により塗布した。球状粒子として、コア部が金(Au)で構成され、シェル部がPSで構成されたコアシェル粒子を用いた。用いた球状粒子は以下のように製造した。
【0102】
Aldrich社製のAu球状粒子(粒径約50nm)を水に分散させて分散液を調製した。この分散液を遠心分離に供し、上澄みを除去し、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を添加した。この工程を数回行い、DMF分散液を得た。
【0103】
また、末端にチオール基(−SH基)を有する分子量が11,500のPSを用意し、これをトルエン中に濃度1.0wt%で溶解し、PS溶液を調製した。
【0104】
PS溶液を、DMF分散液に入れ、24時間放置した。その後、遠心分離に供し、上澄みを除去し、続いてトルエンを添加した。この工程を数回行い、トルエン分散液を調製した。このトルエン分散液を遠心分離に供し、上澄みを除去し、2−ブタノン(MEK)を添加した。この工程を数回行い、MEK分散液を調製した。
【0105】
次いで、吸着層を有するシリコン基板にMEK分散液を塗布した。具体的には、得られたMEK分散液に、液面に対してシリコン基板を垂直に浸漬し、浸漬時に発生する液面の振動を抑えるため30秒間静止した。その後、速度1mm/秒の速度でシリコン基板を引き上げた。これにより、主面上に球状粒子を供給した。主面上に供給された球状粒子は、三角格子状に配列していた。なお、シリコン基板をMEK分散液から引き上げたとき、基板の表面処理を行っていない面にも一部の球状粒子が付着するため、付着した球状粒子を除去する工程を任意に設けてもよい。
【0106】
次に、主面上に配列している球状粒子のシェル部と凸部とを、酸素RIEにより除去した。これにより、Au粒子からなるコア部のパターンが形成されたシリコン基板を得た。このシリコン基板を、過酸化水素を含んだフッ酸水溶液に浸してエッチングした。続いて、Au粒子からなるコア部を除去した。これにより、円柱状の凸部を有するパターンが形成されたシリコン基板を得た。
【0107】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0108】
1…基板、2…凸部、3…コア部、4…シェル部、5…球状粒子、6…第一重心、7…格子点、8…第二重心、10…第一パターン、20…第二パターン、21…金属層、22…凹部、30…凸パターン、40…スタンパ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11