(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437461
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】磁力を用いた積層物の圧縮
(51)【国際特許分類】
B29C 70/40 20060101AFI20181203BHJP
B29C 43/36 20060101ALI20181203BHJP
B29C 43/32 20060101ALI20181203BHJP
B29C 43/02 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
B29C70/40
B29C43/36
B29C43/32
B29C43/02
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-556942(P2015-556942)
(86)(22)【出願日】2014年1月3日
(65)【公表番号】特表2016-506884(P2016-506884A)
(43)【公表日】2016年3月7日
(86)【国際出願番号】US2014010211
(87)【国際公開番号】WO2014123645
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2016年12月12日
(31)【優先権主張番号】13/762,024
(32)【優先日】2013年2月7日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チルドレス, ジェームズ ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】ベイカー, アラン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】クルウィーダ, マーク
【審査官】
田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−151649(JP,A)
【文献】
特開2002−172697(JP,A)
【文献】
特開2011−83975(JP,A)
【文献】
特表2012−532760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/40
B29C 43/36
B29C 43/02
B29C 43/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合プライ(30a)を圧縮するための装置(40)であって、
強磁性材料で形成され、積層物チャージ(30)がツール(26)に対して圧縮されるツール(26)であって、前記ツール(26)は少なくとも1つの内角を有し、前記積層物チャージ(30)は任意の数の未硬化の複合積層プライを含む、ツール(26)と、
前記プライ(30a)に対して配置されるように適合された本体(46)であって、前記本体(46)は前記ツール(26)の内角(28)と一致する角度をつけられた面(50)を有し、常磁性材料を含む、本体(46)と、
前記ツール(26)に対して前記内角(28)の方へ局所的に前記プライを圧縮する磁力を発生させるように適合された、前記本体(46)上の少なくとも一つの磁石(44)と、
前記ツール(26)上にシールされた真空バッグであって、前記真空バッグ(26)は第1の圧縮圧力を加えるように構成され、前記第1の圧縮圧力は前記積層物チャージ(30)全体を前記ツール(26)へ圧縮するとともに、前記本体(46)が前記積層物チャージ(30)前記内角の中に第2の圧縮圧力で圧縮するように前記本体を前記内角の方へ推し進める、真空バッグ(26)と、
を含む装置(40)。
【請求項2】
前記ツール(26)が強磁性材料から形成され、前記本体(46)が常磁性材料を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記磁石(44)が、磁力(F)の調節を可能にするように、前記本体(46)上に調整可能に取付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記本体(46)が、常磁性材料から形成される面(50)を含み、前記面(50)が、前記複合プライ(30a)を係合し、前記ツール(26)の角(28)の中に前記複合プライ(30a)を圧縮するように適合される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記磁石(44)が、ネオジム磁石及びサマリウムコバルト磁石のうちの一つである、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
内角径を有する複合積層物を形成する方法であって、
積層物チャージをツールの上に配置すること(34)、
複合プライを圧縮するための装置(40)を前記内角径において前記積層物に対して配置すること(35)、
圧縮圧力を用いて、前記積層物を前記ツールの内角径の中へ圧縮することを含む、前記ツールの上に前記積層物を形成すること(36)、及び
磁力を用いて、圧縮圧力を増強すること(38)を含み、
前記装置(40)は、
前記本体(46)は前記ツール(26)の内角(28)と一致する角度をつけられた面(50)を有し、前記プライ(30a)に対して配置されるように適合された本体(46)と、
前記ツール(26)に対して前記内角(28)の方へ局所的に前記プライを圧縮する磁力を発生させるように適合された、前記本体(46)上の少なくとも一つの磁石(44)と、
前記ツール(26)上にシールされた真空バッグであって、前記真空バッグ(26)は第1の圧縮圧力を加えるように構成され、前記第1の圧縮圧力は前記積層物チャージ(30)全体を前記ツール(26)へ圧縮するとともに、前記本体(46)が前記積層物チャージ(30)を前記内角の中に第2の圧縮圧力で圧縮するように前記本体を前記内角の方へ推し進める、真空バッグ(26)と、
を含み、
前記本体(46)が、前記プライ(30a)を係合し、圧縮するように適合された面(50)を有する常磁性部材(48)を含み、
前記磁石(44)が、空隙(G)によって前記常磁性部材(48)から隔てられており、
前記磁石(44)と前記常磁性部材(48)との間の前記空隙(G)の大きさが、調整可能である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、複合部品の製造に関し、より詳細には、複合プライをツールに対して圧縮するための方法及び装置を扱う。
【背景技術】
【0002】
繊維強化ポリマーレジンを含む複合部品が、幾つかの技法のうちの任意の技術を用いて製造されうる。一つの技法において、多プライの繊維プリプレグチャージが、ツールの上でレイアップされ、ドレープ形成され、その後、形成されたチャージが、圧縮され、硬化される。他の技法において、乾燥した繊維プリフォームが、型の中に配置され、真空バッグされ、その後、レジンを注入され、所望の部品形状を作る。レジンを注入されたプリフォームは、その後、オートクレーブ処理又は脱オートクレーブ処理を用いて、硬化される。
【0003】
使用される製造技術及び部品の幾何学形状に応じて、形成された複合チャージの十分な圧縮を達成することは、課題を提起しうる。例えば、チャージの幾つかの領域を覆う真空バッグのブリッジングは、十分な圧縮圧力がこれらの領域に加えられるのを妨げうる。同様に、形成ツールが、比較的鋭い内角などの特徴を有する場合には、多プライチャージをこれらの角に完全に形成することは困難でありうる。レジン注入技法が用いられる場合、繊維プリフォームに加えられる圧縮圧力は、レジンが導入されているとき、失われうる。製造技法にかかわらず、加えられる圧縮圧力が不十分であると、その結果、完成部品は、所望の繊維割合より少ないレジンリッチなゾーンを示すことがあり、これは部品性能に潜在的に影響を与える。
【0004】
複合チャージの局所領域に加えられる圧縮圧力の大きさを増強するために、増圧装置が開発されたが、各々が、短所を有する。例えば、ねじ状のクランプタイプの増圧装置は、チャージが圧縮処理の間に動く(圧縮する)ときに、力を失う。同様に、ばね力に依存する増圧装置は、チャージが動くときに、2方向にしか動かない。幾つかの応用において、ツール又は部品の幾何学形状は、既知の増圧装置の使用を不可能にしうる。
【0005】
従って、形成された複合チャージに加えられる圧縮圧力を局所的に増強する装置及び方法に対する必要性が存在する。簡単で、使用が容易で、かつ所望の一定の圧縮圧力を維持するために、圧縮中に部品チャージと共に動くように適合される、上記のタイプの装置及び方法に対する必要性もまた存在する。
【発明の概要】
【0006】
開示される実施形態は、一つ又は複数の磁石によって供給される磁力を用いて、形成された複合積層物チャージに加えられる圧縮圧力を局所的に増強するために用いられうる磁気増圧装置を提供する。磁力の大きさ、従って圧縮圧力のレベルは、装置上の磁石の位置を変えることによって調整されうる。装置は、減量、圧縮又は硬化の間中、一定の圧縮圧力を加え、チャージが圧縮されているときに、チャージと共に3次元のうちの任意の次元に動く。装置は、構造が簡単であり、容易に据付けられ、現存の複合積層物製造プロセスと相性が良い。装置は、タイトな半径を有する、部品の領域で、ブリッジングを減らし、繊維割合を増加させるのに有効である。装置はまた、組立ての間、取付け具の中に部品を保持するために用いられうる。
【0007】
一つの開示される実施形態によれば、複合プライをツールに対して圧縮するための装置が、提供される。装置は、プライに対して置かれるように適合された本体と、プライをツールに対して圧縮する磁力を発生させるように適合された本体上の少なくとも一つの磁石を含む。ツールは、強磁性材料から形成され、本体は、常磁性材料を含む。磁石が、磁力の調節を可能にするように、本体上に取付けられうる。本体は、常磁性材料から形成される面を含み、面は、複合プライを係合し、ツールの角の中に複合プライを圧縮するように適合される。磁石は、空隙によって常磁性部材から隔てられており、磁石と常磁性部材の間の空隙の大きさは、調整可能である。磁石は、ネオジム磁石及びサマリウムコバルト磁石のうちの一つであってよい。
【0008】
他の実施形態によれば、複合部品に対して局所的な圧縮力を加えるための装置が、提供される。装置は、磁力を用いて部品に圧力を加えるように適合された常磁性部材と、磁力を発生させるように常磁性部材と磁気的に連結された磁石を含む。装置は、常磁性部材と磁石が取付けられる本体を更に含んでもよい。常磁性部材と磁石は、互いから隔てられている。常磁性部材は、複合部品の中に半径を形成するように構成された面を含む。磁石は、磁力の調節を可能にするように、調整可能である。
【0009】
別の実施形態によれば、複合積層物部品の角に加えられる圧縮力を増強するための装置が、提供される。装置は、角の形と実質的に一致するように構成された面を有する本体と、本体上の少なくとも一つの磁石を含み、磁石は、面を磁化するように面と磁気的に連結されている。本体は、常磁性部材を含み、面は、常磁性部材上に位置している。磁石と常磁性部材は、互いから隔てられており、その間に空隙を形成し、磁石は、空隙の大きさの調整を可能にするように、本体上に可動に取付けられる。
【0010】
更に別の実施形態によれば、部品上に磁化可能な装置を配置し、磁力を用いて、部品に対して装置を引き寄せることを含む、複合部品を圧縮する方法が提供される。本方法は、装置上で磁石の位置を調整することによって磁力を調整することを更に含む。磁化可能な装置を部品上に配置することは、装置の面を部品の一つの領域と接触させることを含む。
【0011】
別の開示される実施形態によれば、複合積層物のアールが形成された角に加えられる圧縮圧力を増強する方法が、提供される。本方法は、アールが形成された角において複合積層物に対して磁力増圧装置を配置し、磁力増圧装置によって発生される磁場を用いて、アールが形成された角において複合積層物に対して磁力増圧装置を押すことを含む。
【0012】
更に別の実施形態によれば、内角径を有する複合積層物を形成する方法が提供され、本方法は、複合積層物チャージを形成ツールの上に配置し、複合積層物を形成ツールの上に形成することを含み、圧縮圧力を用いて複合積層物をツールの内角径の中に圧縮し、磁力を用いて圧縮圧力を増強することを含む。
【0013】
本開示の一態様によれば、プライに対して配置されるように適合された本体と、ツールに対してプライを圧縮する磁力を発生させるように適合された、本体上の少なくとも一つの磁石を含む、ツールに対して複合プライを圧縮するための装置が提供される。有利には、装置は、ツールが強磁性材料から形成され、本体が常磁性材料を含む、装置である。有利には、装置は、磁石が、磁力の調節を可能にするように本体上に調整可能に取付けられる装置である。有利には、装置は、本体が、常磁性材料から形成される面を含み、面が、複合プライを係合し、ツールの角の中に複合プライを圧縮するように適合される、装置である。有利には、装置は、本体が、プライを係合し圧縮するように適合された面を有する常磁性部材を含み、磁石が、空隙によって常磁性部材から隔てられており、磁石と常磁性部材の間の空隙の大きさは調整可能である、装置である。有利には、装置は、磁石がネオジム磁石及びサマリウムコバルト磁石のうちの一つである、装置である。
【0014】
本開示の別の態様によれば、磁力を用いて部品に圧力を加えるように適合された常磁性部材と、磁力を発生させるように常磁性部材と磁気的に連結された磁石とを含む、複合部品に対して局所的な圧縮力を加えるための装置が提供される。有利には、装置は、常磁性部材と磁石が取付けられる本体を更に含む。有利には、装置は、常磁性部材と磁石が互いから隔てられている装置である。有利には、装置は、常磁性部材が、複合部品の中にアールを形成するように構成された面を含む、装置である。有利には、装置は、磁石が、磁力の調節を可能にするように調整可能である、装置である。
【0015】
本開示の更に別の態様によれば、角の形と実質的に一致するように構成された面を有する本体と、本体上の少なくとも一つの磁石であって、面を磁化するように面と磁気的に連結される磁石とを含む、複合積層物部品の角に加えられる圧縮圧力を増強するための装置が提供される。有利には、装置は、本体が常磁性部材を含み、面が常磁性部材上に位置している、装置である。有利には、装置は、磁石と常磁性部材が互いから隔てられており、その間に空隙を形成する、装置である。有利には、装置は、磁石が、空隙の大きさの調整を可能にするように本体上に可動に取付けられる、装置である。本開示の更に別の態様によれば、部品上に磁化可能な装置を配置し、磁力を用いて、部品に対して装置を引くことを含む、複合部品を圧縮する方法が提供される。有利には、本方法は、装置上で磁石の位置を調整することによって磁力を調節することを更に含む。有利には、本方法は、磁化可能な装置を部品上に配置することが、装置の面を部品の一つの領域と接触させることを含む、方法である。
【0016】
本開示の更に別の態様によれば、アールが形成された角において複合積層物に対して磁力増圧装置を配置し、磁力増圧装置によって発生される磁場を用いて、アールが形成された角において複合積層物に対して磁力増圧装置を押すことを含む、複合積層物のアールが形成された角に加えられる圧縮圧力を増強する方法が提供される。
【0017】
本開示の更に別の態様によれば、内角径を有する複合積層物を形成する方法が提供され、本方法は、複合積層物チャージを形成ツールの上に配置し、複合積層物を形成ツールの上に形成することを含み、圧縮圧力を用いて複合積層物をツールの内角径の中に圧縮し、磁力を用いて圧縮圧力を増強することを含む。
【0018】
特徴、機能及び利点が、本開示の様々な実施形態において独立に達成されることができ、または更に別の実施形態において組み合わせることができ、更なる詳細が、下記の説明及び図面を参照して理解することができる。
【0019】
例示的な実施形態を特徴付けると考えられる新規の特徴が、添付の特許請求の範囲に述べられる。しかしながら、例示的な実施形態と、好適な使用形態と、それの更なる目的及び利点とは、添付図面と併せて、本開示の例示的な実施形態の下記の詳細な説明を読むことにより、最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】形成ツールの上に形成されようとしている複合積層物チャージの端面図である。
【
図2】
図1と類似の図であるが、複合積層物チャージが形成ツール上に形成されているのを示す図である。
【
図3】開示された磁力増圧装置を用いて複合積層物チャージを圧縮する方法のフロー図である。
【
図4】磁力増圧装置を用いて形成ツールの内角に形成されようとしている複合積層物チャージの図式的端面図である。
【
図5】
図4と類似の図であるが、形成ツールの内角に完全に形成された複合積層物チャージを示す図である。
【
図6】
図4と類似の図であるが、磁力増圧装置の追加の詳細を示す図である。
【
図8】
図7に示された磁力増圧装置の端面図である。
【
図9】
図8の線9−9に沿って切り取った断面図である。
【
図10】その中に複合チャージが形成されている形成ツールの断面図であり、磁力増圧装置の代替的実施形態を示す。
【
図12】航空機の生産および保守方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1、
図2及び
図3を先ず参照すると、多プライの未硬化の複合積層物チャージ30が、雄ツール26の上に形成されうる。チャージ30は、プリプレグの積層を含みうるが、後述されるように、チャージ30は、その後に型の中でレジンを注入される(図示せず)乾燥した繊維プリフォームを含みうる。
図1と
図2に示される例において、形成される部品は、3本の支柱20、21、22及び1対の外に向かって曲げられたフランジ24を含む、ハット型の縦通材(stringer)25である(
図2)。フランジ24の各々が、ツール26の90°の内角28の中に形成される内側径32を通って支柱21、22の一つに移行する。各内側径32を内角28に形成するために、圧縮圧力Pが、内角28において積層物チャージ30に加えられる。より詳細に以下で記載されるように、開示される実施形態によれば、必要な圧縮圧力Pが、磁力増圧装置40によって発生される磁力を用いて、加えられる。
【0022】
図3は、磁力増圧装置40を用いて、ツール26の内角28などの所望の領域で圧縮圧力を局所的に増強する、
図2に示された縦通材25などの複合積層物部品を製造する方法の全ステップを示す。ステップ34から始まり、複合積層物チャージ30が、形成ツール26の上に配置される。35で、磁力増圧装置40が、ツール26の内角28に対して配置され、ステップ36で、任意選択的に、装置40上の磁石44の位置が、内角28における圧縮圧力の所望の増強を達成するように調整されうる。ステップ37で、複合積層物チャージ30が、形成ツール26の上に形成される。形成された積層物チャージ30が、ツール26に対して圧縮され、圧縮圧力が、ツール26の内角28に複合チャージを形成するために、内側径32に加えられる。38で、磁石44によって発生された磁力が、ツール26の内角28における圧縮圧力Pを増強するために用いられる。
【0023】
次に
図4と
図5を参照すると、複数のプライ30aを含む複合積層物チャージ30が、内角28を有するツールに対して圧縮される。図面に示されていないが、チャージをツール26に対して圧縮する圧縮圧力を働かせるために、真空バッグが、複合チャージ30とツール26の上にシールされてもよい。オートクレーブが、部品を硬化させるために用いられる場合、追加の圧縮圧力が加えられうる。ツール26は、磁性材料、すなわち、比較的高い透磁率を有する材料、から形成される。例えば、ツール26は、アンバ又は類似のニッケル鉄合金などの強磁性材料から形成されてもよい。複合積層物チャージ30を内角28の中に圧縮するために、磁力増圧装置40が、内角28の領域にチャージ30に対して配置される。
【0024】
装置40は、永久磁石44が取付けられる本体46を含む。より詳細に以下で論じられるように、本体46の形状は、応用、及び形成される部品の幾何学形状に依存するであろう。示されている例において、本体46は、内角28においてツール26の表面と実質的に一致する直角表面を有する。磁石44は、応用にとって適切な、複合積層物チャージ30が形成及び/又は硬化される温度に少なくとも部分的に依存しうる、キュリー温度を有する磁性材料から形成される。例えば、限定しないが、磁石44は、SHグレードのネオジム磁石又はサマリウムコバルト磁石を含んでよい。SHグレードのネオジム磁石は、150℃までの形成/硬化温度での使用にとって適切でありえ、他方、サマリウムコバルト磁石は、300℃までの形成/硬化温度での使用にとって適切でありうる。
【0025】
磁石44は、
図5において最もよく理解されるように、電磁気力Fを発現させ、電磁気力Fは、強磁性ツール26を磁気的に引きつけ、装置40が、ツール26の方に引っ張られ、積層物チャージ30をツール26の内角28の中に圧縮する。積層物チャージ30がツール26に対して圧縮し始めるとき、装置40が、積層物チャージ30と一緒に一つ又は複数(3まで)の次元で動き、内角28における圧縮圧力Pの増強を維持する。また、磁石44がツール26に近付くにつれて、磁石44とツール26の間の磁気引力が増加するので、積層物チャージ30が圧縮するにつれ、装置40によって加えられる圧縮圧力Pの大きさが増加する。
【0026】
開示される磁力増圧装置40は、複合部品を製造するために用いられる幾つかの異なるプロセスのうちの任意のプロセスを用いて圧縮圧力を局所的に増加させるために用いられうる。上記の例において、増圧装置は、ドレープ形成又は類似の技法を用いて形作られるプリプレグ積層に加えられる圧縮圧力を局所的に増強するために用いられる。しかしながら、同様に、磁力増圧装置40は、乾燥した繊維プリフォームが、レジン注入プロセスの間にレジンを注入されているときに、乾燥した繊維プリフォームに対する局所的な圧縮圧力を維持及び/又は圧縮圧力を増強するために用いられうる。レジン注入の間、レジンは大気圧又は大気圧付近でプリフォームを包含する型の中に注入されているので、真空バッグによって通常供給される圧縮圧力は失われる。磁力増圧装置40は、圧縮圧力を発生させるのに、真空圧よりむしろ、磁力に依存するので、レジン注入の間、必要な圧縮圧力を維持する。装置40は、複合積層物の減量を達成し、複合積層物の脱オートクレーブ硬化を実行するために、用いられることができる。装置40はまた、真空バギングを伴う又は伴わない、複合積層物のオーブン硬化を実行するためにも、組立て工程の間、複合部品を取付け具の中に保持するためにも、用いられうる。
【0027】
図6は、
図4及び
図5に示す磁力増圧装置40の一実施形態の追加の詳細を示す。この例において、本体46は、実質的に非磁性の材料から形成される。常磁性材料から形成される形成部材48が、本体46上に取付けられ、ツール26の内角28などの局所的な領域でツール26に対して積層物チャージ30を形成するのに適切な幾何学形状を有する面50を含む。磁石44が、常磁性形成部材48と磁気的に連結し、それを磁化するように、常磁性形成部材48に近接して本体46上に取付けられる。常磁性形成部材48によって発生される磁力Fは、磁石44への近接度に依存するであろう。
【0028】
磁力増圧装置40の一実施形態の追加の詳細を示す
図7、
図8及び
図9に、次に注意を向ける。この例において、装置40は、前述の装置40と類似の概して三角形の形状を有する。任意の適当な非磁性材料から形成される本体46は、一対の非磁性外板49の間に挟まれる。本体46は、ツール26に対して複合チャージ30を係合し圧縮するように適合された二つの概して直角をなす側面45を含む。適当な常磁性部材から形成される形成部材48は、本体46の中の空洞55の中に固定され、複合チャージ30をツール26の内角28の中に圧縮するために用いられる圧力Pを増強するように適合される小さなアールを有する面50を含む。適当な磁石44もまた、空洞55の中に取付けられるが、形成部材48と間隔が空いており、常磁性形成部材48と磁石44の間に空隙Gを形成する。磁石44は、空洞55の中で形成部材48に向かって及び形成部材48から離れて変位可能である。調整ねじ52が、本体46の中でねじ状スリーブ53を通り抜けて、一対の固定器具56によって磁石44に留められる。調整ねじ52を回すと、磁石44は形成部材48に向かって又は形成部材48から離れて変位し、空隙Gの大きさを変化させる。空隙Gの大きさが、磁石44による常磁性部材48の磁化の程度を決定する。このように、装置42によって複合チャージ30に加えられる圧縮圧力Pは、調整ねじ52を用いて変更できる。
【0029】
上記の実施形態において、1個の磁石44のみが用いられているが、他の実施形態において、各々の装置40の中で2個以上の磁石44を用いることが、必要又は望ましいかもしれないということに、ここで留意すべきである。
【0030】
上記の実施形態において、磁力増圧装置40が、アール領域の中で複合チャージ30に加えられる圧縮圧力を増強する。しかしながら、装置40は、実質的に平坦で真っ直ぐな領域などの、アールがないかもしれない領域で複合チャージ30に圧縮圧力を加えるために用いられうる。例えば、次に
図10と
図11を参照すると、複合チャージ30が、アンバなどの磁性材料から形成されるメスツール60の空洞62に形成される。ツール60は、真っ直ぐな長さ66によって隔てられた、二つの離れた内角64を含む。この例において、空洞62の底部の全領域で複合チャージ30に加えられる圧縮圧力を増強するために、二つの概して三角形の「角」装置40aが、台形の中央装置40bと結合される。角装置40aが、角64において複合チャージ30に加えられる圧縮圧力を増強し、他方、中央装置40bが、真っ直ぐな長さ66に沿って複合チャージ30に圧縮圧力を加える。
【0031】
本開示の実施形態は、例えば航空宇宙、船舶、自動車の応用、及び複合部品の製造中に複合積層物の圧縮を伴う他の応用を含む様々な潜在的な応用において、特に運輸産業で、用途を見出しうる。したがって、
図12及び
図13に示すように、本開示の実施形態は、
図12に示す航空機の製造及び保守方法68、及び
図13に示す航空機70に関して使用されうる。開示される実施形態の航空機への応用には、例えば、限定されないが、縦通材、翼桁、ビーム、及び補強材が含まれうるが、これらはほんの少しの例をあげたにすぎない。製造前の段階では、例示的な方法68は、航空機70の仕様及び設計72と、材料の調達74とを含みうる。製造段階では、航空機70の、部品及びサブアセンブリの製造76と、システムインテグレーション78とが行われる。その後、航空機70は、認可及び納品80を経て、運航82に供されうる。顧客によって運航される間、航空機70には、改造、再構成、改修なども含みうる、定期的な整備及び保守84が予定される。
【0032】
方法68の各工程は、システムインテグレータ、第三者、及び/又はオペレータ(例えば顧客)によって実施又は実行されうる。本明細書では、システムインテグレータは、限定しないが、任意の数の航空機製造者、及び主要システム下請業者を含み、第三者は、限定しないが、任意の数のベンダー、下請業者、及び供給業者を含み、オペレータは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関などでありうる。
【0033】
図13に示すように、例示的な方法68によって製造された航空機70は、複数のシステム88及び内装90を備えた機体86を含みうる。高レベルのシステム88の例には、推進システム92、電気システム94、油圧システム96、および環境システム98のうちの一または複数が含まれる。任意の数の他のシステムが、含まれてもよい。航空宇宙産業の例を示したが、本開示の原理は、船舶および自動車産業などの他の産業に適用されうる。
【0034】
本明細書に具現化されたシステムおよび方法は、製造および保守方法68の一又は複数の任意の段階で用いられうる。例えば、製造工程76に対応する部品又はサブアセンブリが、航空機70の運航中に製造される部品又はサブアセンブリと類似の方法で作製又は製造されうる。また、一又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、或いはそれらの組み合わせが、例えば、航空機70の組立てを実質的に効率化するか、又は航空機70のコストを実質的に削減することにより、製造段階76及び78の間に利用することができる。同様に、装置の実施形態、方法の実施形態、或いはそれらの組み合わせのうちの一又は複数を、航空機70の運航中に、例えば限定しないが、整備及び保守84に利用することができる。
【0035】
上述した種々の例示的な実施形態の記載は、例示及び説明を目的とするものであり、完全な説明であること、又は開示された形の実施形態に限定することを意図していない。当業者には、多数の修正例及び変形例が明らかであろう。更に、異なる例示的な実施形態が、他の例示的な実施形態とは異なる利点を提供することがありうる。選択された一又は複数の実施形態は、実施形態の原理、実際の用途を最もよく説明するため、及び他の当業者に対し、様々な実施形態と、考慮される特定の用途に適した様々な修正例との開示の理解を促すために選択され記述されている。