【実施例】
【0098】
実施例1
材料及び方法
ヒト試料
Maisonneuve−Rosemont Hospital(HMR)倫理委員会によるヒト臨床試験実施要項及び同意説明文書の承認、ならびにT1DM罹患患者からの局所硝子体生検標本を得るための患者募集。
動物
【0099】
すべての研究は、視覚と眼科学研究協会会議(ARVO)の眼科視覚研究における動物使用に関する文書に従って実施し、カナダ動物管理協会の合意を得たモントリオール大学動物保護委員会による承認を受けた。C57BI/6野生型は、Jackson Laboratoryから購入した。タモキシフェン誘導(Tam誘導)Creマウス(Tg
Cre−Esr1;no.004682)及びニューロピリン1floxマウス(Nrp1
tm2Ddg/J;no.005247)は、Jackson Laboratoryから購入した。
ストレプトゾトシン(STZ)マウスモデル
【0100】
6〜7週齢のC57BL/6Jマウスの体重を測り、基準血糖を測定した(Accu−Chek,Roche)。マウスにストレプトゾトシン(Sigma−Alderich,St.Lois,MO)を55mg/kgで続けて5日間、腹腔内注入した。同齢の対照には緩衝液のみを注入した。最後のSTZ注入から1週間後に血糖を再度測定し、非絶食状態での血糖が17mM(300mg/dL)より高いマウスを糖尿病とみなした。
リアルタイムPCR分析
【0101】
GenElute(商標)Mammalian Total RNA Miniprep Kit(Sigma)を用いてRNAを単離し、ゲノムDNAの増殖を防ぐためにDNase Iで消化した。M−MLV逆転写酵素を用いて逆転写を実施し、ABI Biosystems(商標)リアルタイムPCR装置のSybrGreen(商標)を用いて遺伝子発現を解析した。βアクチンを標準遺伝子として用いた。
レーザマイクロダイセクション
【0102】
P14のOIR(酸素誘発性網膜症)の仔動物または正常酸素圧の同腹仔から眼球を摘出し、OCTで急速凍結した。Leicaクリオスタットを用いて−20℃で12μm片に切断し、10分間空気乾燥した。レーザマイクロダイセクション用Palm MicroBeam(商標)装置を備えたZeiss Observer顕微鏡を用いて網膜層を切断した。これらの切片からmRNAを単離し、qPCRを上述の通り実施した。
ウエスタンブロット法
【0103】
網膜のタンパク質レベルを評価するために、様々な時点で眼球を摘出し、迅速に切断し、網膜を均質化した。タンパク質濃度は、BCAアッセイ(Sigma)によって評価し、次いで、標準SDS−PAGE法によって各状態について30ugのタンパク質を分析した。ウエスタンブロット法に使用した抗体は、Nrp−1(R&D Systems,#AF566)、pVE−カドヘリン(Invitrogen,#441145G)、Src(Cell Signaling,#2108)、pSRC(Cell Signaling,#2101)、FAK(Cell Signaling,#3285)、pFAK(Cell Signaling,#3281)、b−アクチン(Sigma,#A2228)、Sema3A(Santa Cruz,#sc−1148またはABCAM #ab23393)である。
免疫組織化学
【0104】
タンパク質発現の箇所を特定するために、マウスから眼球を摘出し、4%パラホルムアルデヒド中に室温で4時間固定し、30%スクロース中で一晩インキュベートしてから、OCTコンパウンドで凍結した。次いで、眼球全体をOCTコンパウンド(optimal cutting temperature compound)で−20℃にて包埋し、12umの連続切片にした。免疫組織化学実験を行い、蛍光顕微鏡(Zeiss AxioImager(商標))または共焦点顕微鏡(Olympus confocal FV1000)を用いて切片を視覚化した。免疫組織化学に用いた抗体は、Sema3A(ABCAM #ab23393)、平滑筋アクチン(SMA)(ABMCA,#ab7817)及びβIII−チューブリン(ECM)である。二次抗体は、Alexa594(Invitrogen,#A11005)及びAlexa488(Invitrogen,#A11008)である。
【0105】
網膜全体の血管構造を視覚化するために、網膜血管構造に対して、1mM CaCl
2のPBS中の蛍光標識したイソレクチンB4(Alexa Fluor594−I21413,Molecular Probes)を用いてフラットマウント網膜を染色した。血管透過性を評価するために(エバンスブルー(EB)透過を参照)、EB注入の2時間後に、マウスの硝子体にビヒクルとVEGFを注入し、眼球を摘出し、網膜をフラットマウントのために切断するか、または凍結切片及び蛍光顕微鏡下での視覚化のために処理した。
レンチウイルスの調製
【0106】
以前の記述の通り
40、レンチベクターとパッケージングベクターとをHEK293T細胞(Invitrogen)にトランスフェクトすることにより、伝染性レンチウイルスベクターを作製した。ウイルス上清を超遠心分離(>500倍)で濃縮し、ウイルスのp24抗原についての力価を市販のキットを用いて(Clonetech)ELISAにより決定した。
可溶性組換えNRP1及びマウス抗VEGF
【0107】
STZで処理した糖尿病C57BL/6Jマウスに、STZ投与から6週及び7週後に、プラスミド(Mamluk et al.,2002
17)またはR&D Systemsから得たrmNRP1を硝子体内へ注入した。マウス特異的抗VEGFをR&D Systems(AF−493−NA)から購入し、1μlを80ug/mLで注入した。網膜のエバンスブルー透過アッセイを上述の通りにSTZ処置から8週間後に行った。
統計的分析
【0108】
データは平均値±s.e.m.で表す。異なる群を比較するために、必要に応じて、スチューデントのT検定及びANOVAを用いた。P<0.05であれば、統計的に差異があるとみなした。
実施例2
糖尿病網膜症に罹患しているヒト患者硝子体におけるSema3Aの上昇
【0109】
DRにて観察される浮腫表現型の発生におけるSema3Aの潜在的役割を評価するために、まず、DME罹患患者の硝子体内におけるこの細胞誘導信号の存在を決定することにした。標準的な硝子体手術中に8人の患者から硝子体を採取した。黄斑円孔(MH)または網膜上膜(ERM)の手術を実施して、5つの標本をDMEに罹患しているT1DM患者から取得し、3つの標本を対照患者(血管異常なし)から得た。
【0110】
ウエスタンブロット分析では、DME罹患患者でSema3Aの前駆型(約125kDa)と活性型(約95kDa)の両方が強く誘発されているのがわかった(
図1a、b)。予想されるDMEでの役割と一致して、ELISAによるSema3A検知でも、DME罹患患者の硝子体では、眼血管病変のない場合と比較して大幅な増加がみられた(対照中央値3.79ng/ml[四分位数間範囲{IQR}:25%、75%:2.08ng/ml、5.58ng/ml];DME中央値16.27ng/ml[IQR:25%、75%:5.770ng/ml、35.36ng/ml];p=0.0464)(データ不図示)。スペクトルドメイン光干渉断層計(OCT)を実施して、三次元(3D)マップを作成し、網膜損傷及び浮腫の程度を評価した。対照とは異なり、サンプリングしたDME患者にはかなりの網膜腫脹が、特に、
図1c、dに示すように、黄斑及び黄斑周辺の領域にみられた。DME患者の特徴の詳細を
図1eに示す。
【0111】
これらのデータは、糖尿病誘発性網膜血管障害との関係におけるSema3Aの役割を調査する裏づけを提供するものである。
実施例3
ストレプトゾトシン誘発糖尿病の初期段階における神経性Sema3Aの上方制御
【0112】
DME患者の硝子体内におけるSema3Aのレベル上昇を考慮し、出願人は、1型真性糖尿病(T1DM)のマウスモデルでのSema3A発現の動態とパターンを解明することにした。6週齢のC57BL/6Jマウスにストレプトゾトシン(STZ)を連続5日間にわたって投与し、
図2aに示すスキームに従って血糖を観察した。非絶食状態での血糖が17mM(300mg/dL)より高いマウスを糖尿病とみなした。
【0113】
糖尿病の誘発から4週間という早い時点で、ビヒクルを注入した対照と比較して、STZ処置マウスの網膜内Sema3Aレベルが2倍を超えて高くなった(p=0.0045、n=5)。網膜内Sema3Aレベルは、8週(Sema3A、2.80±0.340;p=0.0011;VEGF、1.236±0.193;p=0.266、n=8)、12週(Sema3A、4.07±0.798;p=0.00846;VEGF、0.923±0.145;p=0.612、n=4)及び14週(Sema3A、2.44±0.593;p=0.0334;VEGF、3.26±0.65;p=0.0253、n=3)で、有意に高い状態が継続した。重要なことは、疾患の初期時点(4〜12週)を通して、これまでに記載されている通り
24、STZ処置マウスのVEGFレベルが、ビヒクル処置同種マウスで観察されたVEGFレベルと類似のレベルを維持したことである(
図2b)。すべての分析時点で、STZ処置マウスは、約30mMの血糖レベルの病的な上昇がみられた(
図2d;糖尿病8週及び4週の両方においてp<0.0001)。重要なことは、Sema3Aの発現上昇が初期事象であり、STZ処置マウスとビヒクル処置マウスとの両方が類似の平滑筋アクチン(SMA、
図2c)レベルを示したように、周皮細胞の損失より先に生じたことである。同様に、密着結合要素であるオクルディン及びクローディン−5の発現レベルが8週の初期でわずかに変化した(
図2e)。最後に、STZ処置マウスとビヒクル処置マウスの両方で、周皮細胞マーカである血小板由来成長因子受容体−b(Pdgfr−b;1.477±0.364;p=0.219、n=11)、NG2プロテオグリカン(Ng2;2.065±0.886;p=0.316、n=4)またはアルファ平滑筋アクチン(a−Sma;1.342±0.441;p=0.494、n=4)の転写レベルに有意な差異はみられなかった。
実施例4
糖尿病網膜症における役割と地図的に一致するSema3Aの発現パターン
【0114】
次に、出願人は、糖尿病網膜内のSema3Aの細胞源を特定することにした。網膜凍結切片の免疫組織化学により、Sema3Aが神経節細胞層(GCL及び内顆粒層(INL))の網膜ニューロンによって強く発現されていることがわかった(
図2f、g)。最も顕著な発現は、RGCマーカのβIII−チューブリンとの共局在化により示すように、網膜神経節細胞(RGC)において認められた。Sema3Aの網膜免疫局在化と一致して、健常マウス及び糖尿病マウスから得た網膜層のレーザマイクロダイセクションに続く定量RT−PCRも、Sema3Aが血管床にごく近接したニューロンに位置することを正確に示した(
図2h)。
実施例5
Sema3Aによる網膜バリア機能の弱体化
【0115】
糖尿病の網膜内Sema3Aのレベル上昇が観察されたことを受け、出願人は、血管バリア機能を破綻させるSema3Aの性質に関する調査を進めた。Sema3Aの硝子体内注入により、エバンスブルー(EB)透過によって決定した網膜血管透過性が約2倍上昇した(
図3a;p<0.01)。この上昇は、VEGFの硝子体内投与(
図3a;p<0.05)またはSema3AとVEGFの両方の組み合わせ(
図3a;p<0.01)で観察されたものと類似した。
図3bは、ビヒクル、VEGF及びSema3Aを注入した網膜断片の共焦点画像であり、代表的なEB漏出パターンの上昇を示す。内皮細胞のバリア機能を弱めるSema3Aの能力をさらに調べるために、出願人は、経内皮電気抵抗のリアルタイム分析を行った。健全な内皮単層をSema3Aで処置すると、添加後の最初の6時間では、VEGFのほうがより低かったが、同様の程度でバリア機能が低下した(
図3c)。
【0116】
次に、出願人は、血管透過性を促進することが知られているシグナル経路をSema3Aが活性化することを確認した。この点に関し、出願人は、ウエスタンブロット分析を用いて、内皮細胞の密着結合を緩めさせる
25−28、細胞外シグナルを伝達することが知られているSrcキナーゼ及び接着斑キナーゼ(FAK)の活性化プロファイルを調べた。Sema3AまたはVEGFのいずれかによるヒト網膜毛細血管内皮細胞(HRMEC)の刺激は、酵素活性を促進することが報告されている
29、キナーゼドメインの活性化ループのTyr416でSrcの強いリン酸化反応をもたらす。さらに、FAKもTyr576及び577でリン酸化された(Srcキナーゼに関する部位)。最終的に、それぞれ、密着結合タンパク質VEカドヘリンはチロシン731でリン酸化された(血管透過性の上昇に関係する部位
30−32)(
図3d)。網膜透過性に関する上記データ(
図3a)と一致して、Sema3AとVEGFとを組み合わせて刺激を行った場合には、付加的な影響も作用の増加も観察されなかった。これは、両方の因子が冗長な経路を介してシグナルを伝達することを示唆している(
図3d)。VE−カドヘリンのウエスタンブロット分析(
図3d)によれば、Sema3AまたはVEGFを注入したフラットマウント網膜では、レクチン染色した網膜血管との共局在において、ビヒクル注入網膜に比べて、Y731(矢印)でのVE−カドヘリンのリン酸化反応が高かった(
図3g)。同様に、STZ注入マウス及びビヒクル注入マウスから得たフラットマウント網膜では、網膜血管との共局在により、VE−カドヘリンのリン酸化反応がみられた(
図3h)。
【0117】
バリア機能を破綻させる役割と一致して、Sema3Aで処置したHRMECの共焦点顕微鏡では、VE−カドヘリン及びファロイジン染色によって決定された血管退縮線維の顕著な形成が認められた(白色矢印;
図3f)。観察された退縮は、VEGF単独またはVEGFとSema3Aの組み合わせの場合と類似した。重要なことは、即時検査(100〜200uM)で使用した用量では、Sema3Aが、カスパーゼ−3の活性化の評価によって決定されたように、細胞死またはアポトーシスを誘導しなかったことである(
図3i)。これらのデータは、Sema3Aの網膜血管透過性への直接作用を際立たせるものである。
実施例6
ニューロン誘導性Sema3Aの阻害によるT1DMの血管透過性の効果的な減少
【0118】
近年の研究によれば、網膜ニューロンが灌流する血管に重要な影響を与える可能性があることが示されている
14,33−35。出願人は、RGC及びINLにおけるSema3Aの強力な発現ならびに血管漏出を促進する能力を鑑み、この細胞誘導信号の産生をこれらの細胞集団で直接阻害しようとした。RGCまたはINLのニューロンでSema3Aの産生をインビトロで特異的に阻害するために、Sema3Aに対するshRNAを保持するレンチウイルス(Lv)ベクターを作製した(TTATTTATAGGAAACACTGGG−配列番号11)。VSVGカプシドを有するこれらのLvベクターは、硝子体内に導入されると、RGC及びONL細胞に高い親和性を呈する
14,35(
図4a)。STZ処置マウスが56.8%の透過性増加を示すのに対し(
図4b;p<0.05、n=4)、糖尿病の5週でLv.shSema3Aを単回硝子体内注入した場合は、網膜内のSema3A発現が有意に62.3%減少し(
図4c;p<0.005、n=3)、血管漏出も比例して49.5%の減少となった(
図4d;p<0.05、n=3)。したがって、糖尿病マウスにおいてSema3Aが最も多量に発現したGCL及びINLのニューロンのSema3A発現(
図2f〜h)を直接標的にすることで、病的な血管漏出が効果的に減少した。
実施例7
Sema3Aの硝子体内中和による網膜血管透過性の減少
【0119】
硝子体内のSema3Aを中和するために、Sema3AとVEGFの両方の二価トラップとして、組換え(r)可溶性Nrp−1を使用した。ニューロピリン−1は、細胞外ドメインが別個のサブドメインにさらに分割された一回膜貫通型受容体であり、セマフォリンの結合するa1a2サブドメインと、VEGFの結合するb1b2サブドメインがある
36(
図4e)。糖尿病誘発から6週及び7週に、STZマウスに対してrNrp−1を硝子体内注入すると、糖尿病の8週で測定された網膜透過性が48.1%減少した(
図4f;p<0.05、n=5)。これはSema3Aの遺伝子サイレンシングによって観察された減少と類似の大きさであった(
図4d)。重要なことは、マウスVEGF
164の中和抗体を用いたVEGFの中和が、糖尿病の初期段階における血管透過性の減少に効果的でなかったことである(ビヒクル対抗VEGF:0.975±0.0707;P=0.7302//rmNRP1対抗mVEGF:P=0.035、n=5、マウス計14匹を用いた個々の実験)。これは、初期時点(8週)の糖尿病網膜において、Sema3Aが強力に誘発されるのに対し(
図2b)、VEGFは上昇しないという事実に起因すると思われる。また、これらのデータは、糖尿病網膜におけるSEMA3Aの中和が血管性浮腫の低減に効果的な手法であることを示している。
実施例8
Nrp−1条件付きノックアウトマウスでのSema3A誘発性網膜バリア機能破綻の阻害
【0120】
Nrp−1がSema3Aの受容体であることを鑑み、出願人は、Nrp−1ノックアウトがSema3A誘発性血管透過性を防止するかどうかを決定することにした。Nrp−1欠失の全生殖細胞系列が胎生致死であるため
37−39、Nrp−1のエクソン2の欠失を誘導するために、全個体のタモキシフェン誘導(Tam誘導)Creマウス(Tg
Cre−Esr1)を作製した。Nrp−1遺伝子座のCre組換えを検証し、かつNrp−1の破壊をインビボで確認するために、Tg
Cre−Esr1;Nrp1
fl/flマウス(iKO)及び同腹仔にTamまたはビヒクル(Veh)を6週齢で投与した。連続5日間にわたるTamの全身投与により、ウエスタンブロット(
図5a)及びqPCR(
図5b:P=0.0012)によって決定されたように、血管系に十分なNrp−1ノックアウトがもたらされ、網膜血管のNRP1はほぼ完全に近い欠如となった(図示しない網膜凍結切片の免疫蛍光法による評価)。重要なことは、Tamで処置したiKO(TamiKO)マウスは、週齢4〜20の同腹仔と比較して、体重、大きさまたはオープンフィールド行動に差異がなかったことである(データ不図示)。予期した通り、Nrp−1が破壊されたTam処置TgCre−Esr1;Nrp1fl/flマウスは、Sema3Aの硝子体内注入後、Sema3a誘発性血管透過性を防止した(1.276±0.2901;P=0.36;n=7、マウス21匹を用いた個別実験)(
図5c;一方、対照のTam処置TgCre−ESR1/Nrp1+/+マウスではSema3Aに応じた血管漏出が3倍高い(2.972±0.2045;P=0.00065;n=3、マウス計9匹を用いた個別実験)。逆に、Nrp1の破壊は、VEGF誘発性血管網膜透過性に影響を与えず(Tam処置TgCre−Esr1/Nrp1fl/fl−ビヒクル対VEGF:1.814±0.1188、P=0.0024、n=3、マウス計9匹を用いた個別実験;Tam処置TgCre−Esr1/Nrp1+/+−ビヒクル対VEGF:1.783+0.2440;P=0.032、n=3、マウス計9匹を用いた個別実験)(
図5d)、VEGF誘発性網膜血管透過性にはNRP1を要しないことを示している。これは、これまでの研究と一致する。shを用いたNrp1ノックダウンの有効性は、qPCRで検証した(データ不図示)。まとめると、これらのデータは、Sema3Aによる内側血液網膜関門の機能破綻がNRP1に依存することを裏づけ、NPR−1がSema3Aによる黄斑浮腫の透過性亢進及び血液脳関門漏出を低減するための良好な標的であることを実証するものである。
【0121】
本発明の各種実施形態を本明細書にて開示したが、当業者の共通一般知識に従った多数の翻案及び変更が本発明の範囲内にて実施可能である。こうした変更には、実質的に同じ方法で同じ結果をもたらすために、本発明の任意の態様に対する既知の均等物の代替も含まれる。特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という語は、非限定的な用語として用いられ、「含むが、これらに限定されない」という語句と実質的に等価である。以下の実施例は、本発明の各種態様を例示するものであり、本明細書にて開示した本発明の広範な態様を限定するものではない。
参考文献
1.Gilbert C,Rahi J,Eckstein M,O’Sullivan J,Foster A.Retinopathy of prematurity in middle−income countries.Lancet.Jul 5 1997;350(9070):12−14.
2.Kempen JH,O’Colmain BJ,Leske MC,et al.The prevalence of diabetic retinopathy among adults in the United States.Arch Ophthalmol.Apr 2004;122(4):552−563.
3.Chen J,Smith L.Retinopathy of prematurity.Angiogenesis.Mar 19 2007;10(2):133−140.
4.Cheung N.Diabetic retinopathy and systemic vascular complications.Progress in Retinal and Eye Research.Mar 1 2008;27(2):161−176.
5.Smith LE.Through the eyes of a child:understanding retinopathy through ROP the Friedenwald lecture.Invest Ophthalmol Vis Sci.Dec 2008;49(12):5177−5182.
6.Wang S,Park JK,Duh EJ.Novel targets against retinal angiogenesis in diabetic retinopathy.Curr Diab Rep.Aug 2012;12(4):355−363.
7.Antonetti DA,Klein R,Gardner TW.Diabetic retinopathy.N Engl J Med.Mar 29 2012;366(13):1227−1239.
8.Moss SE,Klein R,Klein BE.The 14−year incidence of visual loss in a diabetic population.Ophthalmology.Jun 1998;105(6):998−1003.
9.Silva PS,Cavallerano JD,Sun JK,Aiello LM,Aiello LP.Effect of systemic medications on onset and progression of diabetic retinopathy.Nat Rev Endocrinol.Sep 2010;6(9):494−508.
10.Stahl A,Connor KM,Sapieha P,et al.The mouse retina as an angiogenesis model.Invest Ophthalmol Vis Sci.Jun 2010;51(6):2813−2826.
11.Stewart MW.The expanding role of vascular endothelial growth factor inhibitors in ophthalmology.Mayo Clin Proc.Jan 2012;87(1):77−88.
12.Sapieha P,Hamel D,Shao Z,et al.Proliferative retinopathies:angiogenesis that blinds.Int J Biochem Cell Biol.Jan 2010;42(1):5−12.
13.Robinson GS,Ju M,Shih SC,et al.Nonvascular role for VEGF:VEGFR−1,2 activity is critical for neural retinal development.FASEB J.May 2001;15(7):1215−1217.
14.Joyal J−S,Sitaras N,Binet F,et al.Ischemic neurons prevent vascular regeneration of neural tissue by secreting semaphorin 3A.Blood.2011;117(22):6024−6035.
15.Lee P,Goishi K,Davidson AJ,Mannix R,Zon L,Klagsbrun M.Neuropilin−1 is required for vascular development and is a mediator of VEGF−dependent angiogenesis in zebrafish.Proc Natl Acad Sci USA.Aug 6 2002;99(16):10470−10475.
16.Gluzman−Poltorak Z,Cohen T,Shibuya M,Neufeld G.Vascular endothelial growth factor receptor−1 and neuropilin−2 form complexes.J Biol Chem.Jun 1 2001;276(22):18688−18694.
17.Mamluk R,Gechtman Z,Kutcher ME,Gasiunas N,Gallagher J,Klagsbrun M.Neuropilin−1 binds vascular endothelial growth factor 165,placenta growth factor−2,and heparin via its b1b2 domain.J Biol Chem.Jul 5 2002;277(27):24818−24825.
18.Miao HQ,Soker S,Feiner L,Alonso JL,Raper JA,Klagsbrun M.Neuropilin−1 mediates collapsin−1/semaphorin III inhibition of endothelial cell motility:functional competition of collapsin−1 and vascular endothelial growth factor−165.J Cell Biol.Jul 12 1999;146(1):233−242.
19.Klagsbrun M,Eichmann A.A role for axon guidance receptors and ligands in blood vessel development and tumor angiogenesis.Cytokine Growth Factor Rev.Aug−Oct 2005;16(4−5):535−548.
20.Klagsbrun M,Takashima S,Mamluk R.The role of neuropilin in vascular and tumor biology.Adv Exp Med Biol.2002;515:33−48.
21.Soker S,Miao HQ,Nomi M,Takashima S,Klagsbrun M.VEGF165 mediates formation of complexes containing VEGFR−2 and neuropilin−1 that enhance VEGF165−receptor binding.J Cell Biochem.2002;85(2):357−368.
22.Appleton BA,Wu P,Maloney J,et al.Structural studies of neuropilin/antibody complexes provide insights into semaphorin and VEGF binding.EMBO J.Nov 28 2007;26(23):4902−4912.
23.Vieira JM,Schwarz Q,Ruhrberg C.Role of the neuropilin ligands VEGF164 and SEMA3A in neuronal and vascular patterning in the mouse.Novartis Found Symp.2007;283:230−235;discussion235−241.
24.Mima A,Qi W,Hiraoka−Yamomoto J,et al.Retinal not systemic oxidative and inflammatory stress correlated with VEGF expression in rodent models of insulin resistance and diabetes.Invest Ophthalmol Vis Sci.Nov 29 2012.
25.Chen XL,Nam JO,Jean C,et al.VEGF−induced vascular permeability is mediated by FAK.Developmental cell.Jan 17 2012;22(1):146−157.
26.Scheppke L,Aguilar E,Gariano RF,et al.Retinal vascular permeability suppression by topical application of a novel VEGFR2/Src kinase inhibitor in mice and rabbits.The Journal of clinical investigation.2008;118(6):2337.
27.Acevedo LM,Barillas S,Weis SM,Gothert JR,Cheresh DA.Semaphorin 3A suppresses VEGF−mediated angiogenesis yet acts as a vascular permeability factor.Blood.2008;111(5):2674−2680.
28.Eliceiri BP,Paul R,Schwartzberg PL,Hood JD,Leng J,Cheresh DA.Selective requirement for Src kinases during VEGF−induced angiogenesis and vascular permeability.Molecular cell.1999;4(6):915−924.
29.Hunter T.A tail of two src’s:mutatis mutandis.Cell.Apr 10 1987;49(1):1−4.
30.Potter MD,Barbero S,Cheresh DA.Tyrosine phosphorylation of VE−cadherin prevents binding of p120− and beta−catenin and maintains the cellular mesenchymal state.J Biol Chem.Sep 9 2005;280(36):31906−31912.
31.Calalb MB,Polte TR,Hanks SK.Tyrosine phosphorylation of focal adhesion kinase at sites in the catalytic domain regulates kinase activity:a role for Src family kinases.Molecular and cellular biology.Feb 1995;15(2):954−963.
32.Schlaepfer DD,Hanks SK,Hunter T,van der Geer P.Integrin−mediated signal transduction linked to Ras pathway by GRB2 binding to focal adhesion kinase.Nature.Dec 22−29 1994;372(6508):786−791.
33.Kim J,Oh WJ,Gaiano N,Yoshida Y,Gu C.Semaphorin 3E−Plexin−D1 signaling regulates VEGF function in developmental angiogenesis via a feedback mechanism.Genes Dev.Jul 1 2011;25(13):1399−1411.
34.Fukushima Y,Okada M,Kataoka H,et al.Sema3E−PlexinD1 signaling selectively suppresses disoriented angiogenesis in ischemic retinopathy in mice.J Clin Invest.May 2 2011;121(5):1974−1985.
35.Sapieha P,Sirinyan M,Hamel D,et al.The succinate receptor GPR91 in neurons has a major role in retinal angiogenesis.Nature Medicine.2008;14(10):1067−1076.
36.Geretti E,Shimizu A,Klagsbrun M.Neuropilin structure governs VEGF and semaphorin binding and regulates angiogenesis.Angiogenesis.2008;11(1):31−39.
37.Jones EA,Yuan L,Breant C,Watts RJ,Eichmann A.Separating genetic and hemodynamic defects in neuropilin 1 knockout embryos.Development.Aug 2008;135(14):2479−2488.
38.Kitsukawa T,Shimizu M,Sanbo M,et al.Neuropilin−semaphorin III/D−mediated chemorepulsive signals play a crucial role in peripheral nerve projection in mice.Neuron.Nov 1997;19(5):995−1005.
39.Kawasaki T,Kitsukawa T,Bekku Y,et al.A requirement for neuropilin−1 in embryonic vessel formation.Development.Nov 1999;126(21):4895−4902.
40.Dull T,Zufferey R,Kelly M,et al.A third−generation lentivirus vector with a conditional packaging system.Journal of virology.Nov 1998;72(11):8463−8471.
41.Antipenko A et al.(2003) Structure of the semaphorin−3A receptor binding module.Neuron39:589−598.
42.Shirvan A.et al.,(2002).Anti−semaphorin 3A Antibodies Rescue Retinal Ganglion Cells from Cell Death following Optic Nerve Axotomy.JBC277(51):49799−49807.