特許第6437467号(P6437467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6437467線維化疾患治療において有用な分子標的及び化合物、並びにこれらの同定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437467
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】線維化疾患治療において有用な分子標的及び化合物、並びにこれらの同定方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20181210BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20181210BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20181210BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20181210BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20181210BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20181210BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALI20181210BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20181210BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALN20181210BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALN20181210BHJP
   A61K 31/713 20060101ALN20181210BHJP
   A61P 11/00 20060101ALN20181210BHJP
   A61P 9/00 20060101ALN20181210BHJP
   A61P 17/00 20060101ALN20181210BHJP
   A61P 11/06 20060101ALN20181210BHJP
   A61P 13/12 20060101ALN20181210BHJP
   A61P 9/12 20060101ALN20181210BHJP
   A61P 1/16 20060101ALN20181210BHJP
   A61P 17/02 20060101ALN20181210BHJP
   A61P 25/00 20060101ALN20181210BHJP
   A61P 9/10 20060101ALN20181210BHJP
【FI】
   C12Q1/02ZNA
   C12Q1/68
   C12N15/12
   C12N15/113 140Z
   C07K14/705
   C07K16/28
   C12N5/0786
   !A61K39/395 N
   !A61K31/7088
   !A61K31/7105
   !A61K31/713
   !A61P11/00
   !A61P9/00
   !A61P17/00
   !A61P11/06
   !A61P13/12
   !A61P9/12
   !A61P1/16
   !A61P17/02
   !A61P25/00
   !A61P9/10
   !A61P9/10 101
【請求項の数】33
【全頁数】70
(21)【出願番号】特願2015-562041(P2015-562041)
(86)(22)【出願日】2014年3月7日
(65)【公表番号】特表2016-521114(P2016-521114A)
(43)【公表日】2016年7月21日
(86)【国際出願番号】EP2014054441
(87)【国際公開番号】WO2014139883
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2017年3月2日
(31)【優先権主張番号】61/781,220
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504064364
【氏名又は名称】ガラパゴス・ナムローゼ・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Galapagos N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】リチャード アントニウス ジョゼフ ジャンセン
(72)【発明者】
【氏名】アンマリ ニコレテ レケルケルケル
(72)【発明者】
【氏名】トーマス バン エス
(72)【発明者】
【氏名】ジョハネス メルチオル ペトルス スタレン
【審査官】 市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−123539(JP,A)
【文献】 特開2004−123537(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/044587(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/087051(WO,A1)
【文献】 Am. J. Respr. Crit. Care Med.,2006年,Vol.173,pp.781-792
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00−3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維症の治療に有用な化合物を同定する方法であって:
a)被験化合物を、配列番号:26アミノ酸配列を含むポリペプチドと接触させる工程;
b)被験化合物の該ポリペプチドへの結合親和性を決定する工程;
c)被験化合物を、マクロファージ細胞集団と接触させる工程;
d)マクロファージの代替活性化マクロファージへの分化に関連した特性を測定する工程;並びに
e)マクロファージの代替活性化マクロファージへの分化を減少又は阻害し、且つ該ポリペプチドへの結合親和性を示すことが可能な化合物を同定する工程:を含む、前記方法。
【請求項2】
線維症の治療に有用な化合物を同定する方法であって:
a)被験化合物を、配列番号:26アミノ酸配列を含むポリペプチドと接触させる工程;
b)該ポリペプチドの活性を測定する工程;
c)被験化合物を、マクロファージ細胞集団と接触させる工程;
d)マクロファージの代替活性化マクロファージへの分化に関連した特性を測定する工程;並びに
e)マクロファージの代替活性化マクロファージへの分化を減少又は阻害し、且つ該ポリペプチドの活性を阻害することが可能な化合物を同定する工程:を含む、前記方法。
【請求項3】
線維症の治療に有用な化合物を同定する方法であって:
a)被験化合物を、配列番号:26アミノ酸配列を含むポリペプチドを発現するマクロファージ細胞集団と接触させる工程;
b)該細胞中の該ポリペプチドの発現、及び/又は性を測定する工程;
c)マクロファージの代替活性化マクロファージへの分化に関連した特性を測定する工程;並びに
d)該ポリペプチドの発現、及び/又は性の減少を生じ、且つマクロファージの代替活性化マクロファージへの分化を減少又は阻害することが可能な化合物を同定する工程:を含む、前記方法。
【請求項4】
マクロファージの代替活性化マクロファージへの分化を減少又は阻害するのに有用な化合物を同定する方法であって:
a)被験化合物を、配列番号:26アミノ酸配列を含むポリペプチドと接触させる工程;
b)該ポリペプチドの活性を測定する工程;
c)被験化合物を、マクロファージ細胞集団と接触させる工程
d)マクロファージの代替活性化マクロファージへの分化に関連した特性を測定する工程;並びに
e)マクロファージの代替活性化マクロファージへの分化を減少又は阻害し、且つ該ポリペプチドの活性を阻害することが可能な化合物を同定する工程:を含む、前記方法。
【請求項5】
マクロファージの代替活性化マクロファージへの分化を減少又は阻害するのに有用な化合物を同定する方法であって:
a)被験化合物を、配列番号:26アミノ酸配列を含むポリペプチドと接触させるか、又は配列番号:26アミノ酸をコードしている核酸と接触させる工程;
b)該ポリペプチドの発現又は活性を測定する工程;
c)該ポリペプチドの発現又は活性を阻害することが可能な化合物を同定し、これにより、該ポリペプチドの発現又は活性の阻害が、マクロファージの代替活性化マクロファージへの分化の減少又は阻害を生じる工程:を含む、前記方法。
【請求項6】
前記核酸が、配列番号:1である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記試験される化合物を対照と比較する工程を追加的に含む、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記ポリペプチドが、検出可能な標識と結合されている、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記工程(a)及び(b)の前記ポリペプチド配列が、インビトロ無細胞調製物中に存在する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項10】
前記工程(a)及び(b)の前記ポリペプチド配列が、細胞内に存在する、請求項1、2、4又は5のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記細胞が、前記ポリペプチドを天然に発現する、請求項10又は3記載の方法。
【請求項12】
前記細胞が、前記ポリペプチドを発現するように操作されている、請求項10又は3記載の方法。
【請求項13】
前記細胞が、哺乳類細胞である、請求項10〜12のいずれか記載の方法。
【請求項14】
前記細胞が、マクロファージ細胞である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記特性が、代替活性化マクロファージのマーカーの放出又は発現の阻害である、請求項1〜4のいずれか記載の方法。
【請求項16】
前記特性が、CCL18、CCL13、TGFβ、CCL22、CCL17、可溶性フィブロネクチン、葉酸受容体β、CD206、及びCD163からなる群から選択されるマーカーの発現又は放出である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記マーカーが、CCL18又はCD206である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記細胞が、代替活性化マクロファージへのマクロファージ分化を誘導する因子により誘発されている、請求項1〜4のいずれか記載の方法。
【請求項19】
前記細胞が、IL4、IL10、IL13、免疫複合体及びリポ多糖からなる群から選択される1以上の代替活性化マクロファージ誘導性因子により誘発されている、請求項1〜4のいずれか記載の方法。
【請求項20】
前記細胞が、IL10及びIL4の組合せにより誘発されている、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記方法が:
マクロファージの古典的活性化(M1)マクロファージへの分化に関連した特性を測定し、且つ該分化を阻害しない化合物を同定する工程:を追加的に含む、請求項1〜5のいずれか記載の方法。
【請求項22】
前記特性が、M1マクロファージ表現型のマーカーのレベル及び/又は発現であり、並びに該マーカーのレベルを増加しない化合物が、同定される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記マーカーが、TNFαである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記被験化合物が、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、短ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、及びマイクロRNA(miRNA)からなる群から選択される、請求項3記載の方法。
【請求項25】
前記被験化合物が、配列番号:1核酸配列の約17〜約30の近接ヌクレオチドの天然に存在するポリヌクレオチド配列に相補的な、又はこれから操作された核酸配列を含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
哺乳類細胞中のベクターが、前記化合物を発現する、請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記ベクターが、アデノウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス又はセンダイウイルスのベクターである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記アンチセンスポリヌクレオチド、前記siRNA又は前記shRNAが、センス鎖に相補的な17-25ヌクレオチドのアンチセンス鎖を含み、ここで該センス鎖が、配列番号:1核酸配列の17-25の連続ヌクレオチドから選択される、請求項24記載の方法。
【請求項29】
前記化合物が、抗体又は抗体断片である、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
マクロファージの代替活性化マクロファージへの分化を減少又は阻害するインビトロ方法であって、マクロファージ細胞を含む哺乳類細胞の集団を、配列番号:26アミノ酸配列を含むポリペプチドの活性又は発現のインヒビターと、接触させる工程を含む、前記インビトロ方法。
【請求項31】
前記インヒビターが、抗体である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項30記載の方法。
【請求項33】
前記インヒビターが、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)及び短ヘアピンRNA(shRNA)からなる群から選択され、ここで該インヒビターが、該ポリペプチドをコードしている核酸の約17〜約30の近接ヌクレオチドの天然に存在するポリヌクレオチド配列に相補的な、又はこれから操作された核酸配列を含む、請求項30記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、分子生物学及び生化学の分野である。本発明は、線維化疾患の治療に有用な物質、特に代替活性化(M2)表現型へのマクロファージ分化を減少又は阻害する物質を同定する方法に関する。代替活性化(M2)表現型への分化の減少又は阻害は、代替活性化(M2)マクロファージが役割を果たす線維化状態及び他の疾患の予防及び/又は治療において有用である。特に本発明は、線維化疾患の予防及び/又は治療において使用するための物質を同定する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
線維症は、線維芽細胞による瘢痕組織の過剰な沈着を特徴とし、これは現在、それに対し治療法のない最大の疾患群の一つである。線維症は、肺、心臓、腎臓、肝臓及び皮膚が冒される様々な慢性疾患における、臓器不全に関連した罹患及び死亡の原因である。先進国での全死亡例のほぼ45%は、心臓血管疾患、肺線維症、糖尿病性腎症及び肝硬変を含む、線維化状態により引き起こされるか又はこれに関連していると推定される(Wynnらの文献、2004)。
【0003】
線維症、特に特発性肺線維症(IPF)は、注目が増しつつある疾患である。線維症の病因は、あまり確定されておらず、最近になってやっとこの疾患に寄与する様々な細胞プロセス及び分子プロセスが、明らかになってきている。全般的見解は、線維症は、感染症及び/又は組織損傷後の免疫及び修復反応の不均衡の結果であるということである(Lekkerkerkerらによる総説、2012)。これらの反応は、上皮細胞、線維芽細胞、マクロファージ、線維細胞、平滑筋細胞及び内皮細胞などの様々な細胞型の間の複雑な相互作用の結果である。これらの細胞型の1種以上の活性における不均衡は、線維症に寄与すると予想される。
【0004】
マクロファージは、免疫監視機構及び組織ホメオスタシスに係わっている。これらは、病原体認識受容体(PRR)の広いレパートリーを使用し、病原体を貪食し、且つリソソーム内での分解によりそれらを破壊することができる。組織ホメオスタシスプロセス内で、マクロファージは、死滅した細胞及び死滅しつつある細胞並びに毒性物質を除去する上で不可欠の役割を果たす。更に、マクロファージは、創傷治癒プロセスの調和のとれた統合(orchestration)において極めて重要である。これらの重要な機能を実行するために、マクロファージは、体中に戦略的に配置されている様々な亜集団からなる(Mantovaniらの文献、2004)。
【0005】
免疫応答時に、単球は、組織中の循環血から動員され、マクロファージへ分化する。組織損傷及び/又は感染後、マクロファージは、最初に前-炎症性表現型を示し、且つTNFα及びIL-1などの前-炎症性メディエーターを分泌する。これらの前-炎症性マクロファージは、古典的活性化マクロファージ又はM1マクロファージと呼ばれることが多い。例えば関節リウマチなどの、様々な慢性炎症性疾患及び自己免疫疾患は、M1マクロファージの活性化に関連している(Murphyらの文献、2003)。
【0006】
増悪された免疫応答及び周辺組織への付随的損傷を防止するために、M1マクロファージ反応は、厳密に制御されることが必要である。創傷治癒において中心的役割を果たすマクロファージは、代替活性化マクロファージと、そうでなければM2マクロファージと呼ばれている。このマクロファージのサブセットは、抗炎症性メディエーターを分泌し、且つTh2媒介性炎症と強力に関連し、且つM1マクロファージを拮抗し、免疫応答を調節する。
【0007】
線維症の主要な開始因子は、病原体又は組織損傷に対する外来性及び内在性刺激の持続である(Meneghinらの文献、2007)。古典的活性化(M1)及び代替活性化(M2)マクロファージの両方が、線維症プロセスに関与している。それにもかかわらず、M2マクロファージは、線維症に寄与する支配的なマクロファージ亜型であると考えられる(Songらの文献、2000;Murrayらの文献、2011;Wynnの文献、2004)。更に、IPF患者から単離された肺胞マクロファージは、M2マクロファージ表現型の支配的なものである(Thannickalらの文献、2004)。
【0008】
多くの線維化疾患の重要な特徴は、細胞外マトリクス分解(ECM)の異常な又は拡大された沈着である(Coxらの文献、2011)。M2マクロファージは、メタロプロテイナーゼの組織インヒビターなどの、前-線維症性メディエーターを排出し、これによりECMターンオーバーを直接阻害することにより、線維症に直接作用することができる(Duffieldらの文献、2005)。M2マクロファージはまた、ECMの重要な成分であるフィブロネクチンを生成し、結果的に過剰なECMの集積に直接寄与する。M2マクロファージの線維症への直接作用に加えて、M2マクロファージはまた、T細胞、線維芽細胞、及び内皮細胞などの、他の細胞型の活性化を通じて、線維症に間接的に寄与し、これにより線維症を増悪する(Wynnの文献、2008)。
【0009】
M2マクロファージの顕著な特徴は、肺活性化-関連ケモカイン(PARC)としても公知であり、且つIPF患者の肺胞マクロファージにおいて高度に発現される、CCL18の生成である(Prasseらの文献、2006、2007、2009)。M2マクロファージの他のマーカー、とりわけCD206及びCD163も、同定されている(Mantovaniらの文献、2004)。Prasseらは、特発性肺線維症(IPF)患者の血清中のCCL18濃度は、IPFの重症度と強く相関し、且つ死亡率の予測値であることを示した(Prasse及びProbstらの文献、2009)。加えて、CCL18生成は、肺線維症患者の肺において強力に増大され、且つ線維芽細胞などの細胞に影響を及ぼし、前-線維症性因子として直接機能する(Atamasらの文献、2003)。CCL18がM2マクロファージにより主に生成されるとすると、恐らくM2マクロファージを優先するM1マクロファージとM2マクロファージの間の不均衡が、線維症に関与しているであろう。最近の研究は、M1マクロファージは、M2マクロファージへ転換することを示し、このことは両方のマクロファージ亜型間の動的均衡を示唆している(Duffieldらの文献、2005)。従って、特にM2表現型の発生を妨害する、M1/M2均衡の干渉は、線維症プロセスに介入する戦略を提供する。
【0010】
過去数十年にわたり、線維症プロセスを調節する分子機序を解明するインビトロ及びインビボモデルの開発に、多くの努力が払われてきた。初代細胞、及び好ましくは線維症患者に由来するものの利用は、線維化疾患に関与した分子プロセスのより良い洞察を提供するであろう。しかし、生理的条件下及び疾患-関連状況において、これらの細胞を使用することは重要である。機能ゲノムと組み合わせた、線維症に関連した機能アッセイにおけるマクロファージの研究は、線維症に寄与する可能性のある分子機序への極めて貴重な洞察をもたらし、且つ線維症の治療のための新規遺伝子標的を同定することができる。従って、線維症に関連した分子プロセス及び細胞プロセスを理解し、且つ標的を同定する新規方法、線維症の治療に有用な新規標的、及び化合物を提供する、明確な必要性が存在する。
【発明の概要】
【0011】
(発明の概要)
本発明は、本明細書に開示された標的物(TARGET)の発現及び/又は活性を阻害する物質は、M2マクロファージのマーカーの発現及び/又は放出の阻害、特にCCL18及び/又はCD206の放出又は発現の抑制により示されるように、マクロファージの代替活性化マクロファージ(M2マクロファージ)への分化を減少又は阻害することが可能であるという発見を基にしている。従って、本発明は、マクロファージのM2マクロファージへの分化において役割を果たす標的物、標的物の発現及び/又は活性をダウンレギュレートすることが可能な物質のスクリーニング方法、並びにマクロファージのM2マクロファージへの分化を阻害することによる、線維症、特に代替活性化マクロファージに関連した疾患の予防及び/又は治療におけるこれらの物質の使用を提供する。本発明は、特に線維症及び線維化疾患による、M2マクロファージの形成及び生物学に関与している標的物を提供する。特定の態様において、本発明は、線維症の発症に関与しているかそうでなければ関連している標的物を提供する。
【0012】
本発明は、線維症の治療に有用な化合物を同定する方法であって:被験化合物を、標的物ポリペプチド、それらの断片及び構造的機能性誘導体と接触させる工程;被験化合物の該ポリペプチドへの結合親和性又は該ポリペプチドの活性を決定する工程;被験化合物を、マクロファージ細胞集団と接触させる工程;マクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した特性を測定する工程;並びに、マクロファージのM2マクロファージへの分化を減少又は阻害することが可能であり、且つ該ポリペプチドへの結合親和性を示すか、又は該ポリペプチドの活性を阻害することができるかのいずれかの化合物を同定する工程:を含む、方法に関連している。
【0013】
本発明は更に、線維症の治療に有用な化合物を同定する方法であって:被験化合物を、マクロファージ細胞の集団と接触させ、且つ標的物ポリペプチドを発現させる工程;該細胞中の該ポリペプチドの発現及び/又は量を測定する工程;マクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した特性を測定する工程;並びに、該ポリペプチドの発現及び/又は量を減少させ、且つマクロファージのM2マクロファージへの分化を減少又は阻害することが可能な化合物を同定する工程:を含む、方法に関連している。
【0014】
本発明は、マクロファージのM2マクロファージへの分化を減少又は阻害することが可能な化合物を同定する方法であって:被験化合物を、標的物ポリペプチド、それらの断片及び構造的機能性誘導体と接触させる工程;被験化合物の該ポリペプチドへの結合親和性又は該ポリペプチドの活性を決定する工程;被験化合物を、マクロファージ細胞集団と接触させる工程;マクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した特性を測定する工程;並びに、マクロファージのM2マクロファージへの分化を阻害することが可能であり、且つ該ポリペプチドへの結合親和性を示し、及び/又は該ポリペプチドの活性を阻害することができる化合物を同定する工程:を含む、方法に関連している。
【0015】
本発明は、マクロファージのM2マクロファージへの分化を減少又は阻害することが可能な化合物を同定する方法であって:被験化合物を、標的物ポリペプチド、それらの断片又は構造的機能性誘導体と接触させる工程;被験化合物の該ポリペプチドへの結合親和性、又は該ポリペプチドの発現若しくは活性を決定する工程;並びに、該ポリペプチドへの結合親和性を示し、及び/又は該ポリペプチドの発現若しくは活性を阻害することができる化合物として、マクロファージのM2マクロファージへの分化を阻害することが可能な化合物を同定する工程:を含む、方法を提供する。
【0016】
本発明はまた:
a)線維化状態の治療において使用するための、標的物ポリペプチドへ特異的に結合する、抗体又はそれらの断片を含む、医薬組成物、
b)線維化状態の治療において使用するための、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、低分子干渉RNA(siRNA)、及び短ヘアピンRNA(shRNA)からなる群から選択される物質を含む、医薬組成物であって、ここで該物質が、線維化状態の治療において使用するための、標的物ポリペプチドをコードしている選択された核酸配列の約17〜約30の近接ヌクレオチドの天然に存在するポリヌクレオチド配列に相補的な核酸配列、又はこれから操作された核酸配列を含む、医薬組成物:に関する。
【0017】
別の本発明の態様は、マクロファージの代替活性化(M2)マクロファージへの分化を減少又は阻害するインビトロ方法であって、マクロファージ細胞の集団を、標的物ポリペプチドの活性又は発現のインヒビターと接触させる工程を含む方法に関連している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
(図面の簡単な説明)
図1図1は、一次スクリーンのプレートレイアウトを示す。ライブラリープレートのレイアウトは、縦列13及び14の陰性対照ウイルス(N1、N2、及びN3)並びに陽性対照ウイルス(P1、P2、P3、P4、及びP5)を伴う。このプレートの残りは、アデノウイルスライブラリー由来のランダムウイルス(試料)からなる。
【0019】
図2図2は、一次スクリーンの設定を描く。
【0020】
図3図3は、一次スクリーンにおける個々の対照及び試料のB-スコア値を示す。これらのグラフは、完全スクリーン(A)及び4つの個別に分析されたプレート(B)に関する、陰性対照(N1、N2、及びN3)、陽性対照(P1、P2、P3、P4、及びP5)、及び試料(S)のB-スコアを示す。破線は、ヒットコーリングに使用したカットオフ値を示す。
【0021】
図4図4は、再スクリーンのプレートレイアウトを示す。ライブラリープレートのレイアウトは、プレート全体に分散された陰性対照ウイルス及び陽性対照ウイルスを伴う。このプレートの残りは、一次スクリーンにおいてヒットとして同定されたランダムに分散されたウイルスからなる。外側ウェルは、使用しなかった。
【0022】
図5図5は、再スクリーンにおける個々の対照及び試料のB-スコア値を示す。これらのグラフは、陰性対照、陽性対照、及び試料のB-スコアを示す。破線は、ヒットコーリングに使用したカットオフ値を示す。
【0023】
図6図6は、M1対比スクリーンの実験設定を示す。
【0024】
図7図7は、M1対比スクリーンのプレートレイアウトを示す。384-ウェルプレートのレイアウトは、陰性対照ウイルス(N1、N2、及びN3)、TNF_v12陽性対照(P3)、他の陽性対照ウイルス(P1及びP2)、及びアデノウイルスライブラリーからのランダムウイルス(試料)を伴う。外側ウェルは、空のまま残した。
【0025】
図8図8は、M2バリデーションスクリーンの概略図を示す。
【0026】
図9図9は、M2バリデーションスクリーンのプレートレイアウトを示す。バリデーションスクリーンソースプレートのレイアウトは、陰性対照ウイルス(N1、N2、及びN3)、陽性対照ウイルス(P1、P2、P3、P4、P5、及びP6)、非ウイルスウェル、及びアデノウイルスライブラリー由来の候補標的物(残りのウェル)を含む。様々な濃度のスタウロスポリン(stauroporin)が添加された一つの縦列を示したウェル以外は、プレートの端は、空のまま残した。
【0027】
図10図10は、M2バリデーションスクリーンの結果を示す。これらのグラフは、CD206スクリーン(A)及びCTBスクリーン(B)において、陽性対照と比較した、無ウイルス対照及び陰性対照の性能を表す。CD206スクリーンに関するヒットコーリングカットオフ値(-3)及びCTBスクリーンに関するそれ(-10)は、破線で記した。描かれた全ての値は、ロバストZスコアを使用し、正規化されたデータ点である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(詳細な説明)
(定義)
下記の用語は、以下に提示された意味を有することが意図され、且つ本発明の説明及び意図された範囲を理解する上で有用である。
【0029】
用語「物質(agent)」は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、天然の生成物及び小型分子を含む、任意の分子を意味する。特に用語物質は、被験化合物又は薬物候補化合物などの化合物を含む。
【0030】
用語「活性阻害性物質」又は「活性阻害する物質」は、細胞内で又は細胞により通常発現される特定のポリペプチド又はタンパク質の活性と選択的に干渉するか又は干渉することが可能であるように設計された物質、例えばポリペプチド、小型分子、化合物などを意味する。
【0031】
用語「アゴニスト」とは、最も広い意味で、物質であって、該物質が結合する受容体を刺激する物質をいう。
【0032】
本明細書において使用される用語「アンタゴニスト」は、受容体への結合時に生物学的反応それ自体は誘起しないが、アゴニスト-媒介性反応をブロックするか又は鈍らせる物質、或いはアゴニスト結合を防止するか又は減少させ、これによりアゴニスト-媒介性反応を防止するか又は減少させる物質を説明するように使用される。
【0033】
用語「アッセイ」は、化合物を含む物質の特異的特性を測定するために使用される任意のプロセスを意味する。「スクリーニングアッセイ」は、化合物の集合から化合物の活性を基に化合物を特徴づけるか又は選択するために使用されるプロセスを意味する。
【0034】
用語「結合親和性」は、2種以上の化合物が非共有的関係でどの程度強力に互いに会合するかを説明する特性である。結合親和性は、定性的(「強」、「弱」、「高」若しくは「低」など)又は定量的(KDの測定など)に特徴づけることができる。
【0035】
用語「担体」は、医薬組成物に媒体、バルク及び/又は使用に適した形状を提供するために、医薬組成物の製剤に使用される無毒の物質を意味する。担体は、賦形剤、安定剤、又は水性pH緩衝液などの1以上の然る物質を含むことができる。生理的に許容し得る担体の例としては、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸を含む水溶性又は固形の緩衝成分;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む、単糖、二糖、及び他の糖類;EDTAなどのキレート剤;マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;及び/又は、TWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(登録商標)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0036】
用語「複合体」は、2種以上の化合物が互いに結合、接触又は会合した場合に作製された実体を意味する。
【0037】
用語「化合物」は、本発明のアッセイ及び方法に結びつけて説明される「被験化合物」又は「薬物候補化合物」の文脈で、本明細書において使用される。従って、これらの化合物は、合成により又は天然の給源から誘導された、有機化合物又は無機化合物を含む。本化合物は、無機化合物、又はポリヌクレオチド(例えば、siRNA若しくはcDNA)、脂質、又はホルモン類縁体などの有機化合物を含む。他の被験バイオポリマー性有機化合物は、ポリペプチドリガンド、酵素、受容体、チャネル、抗体又は抗体複合体を含む、約2〜約40個のアミノ酸からなるペプチド、及び約40〜約500個のアミノ酸からなるより大きいポリペプチドが挙げられる。
【0038】
用語「状態」又は「疾患」は、症状(すなわち、病気)の顕性の提示又は異常な臨床指標(例えば、生化学指標又は細胞指標)の出現を意味する。あるいは、用語「疾患」は、そのような症状若しくは異常な臨床指標の遺伝リスク若しくは環境リスク又はそれらを発症する素因をいう。
【0039】
用語「接触」又は「接触する」は、インビトロシステム又はインビボシステムのいずれかにおいて、少なくとも2つの部分を一緒にすることを意味する。
【0040】
用語「ポリペプチドの誘導体」は、例えば該ポリペプチドの天然に存在する形のアミノ酸配列と比べアミノ酸変異を有するポリペプチドなどの、該ポリペプチドの近接アミノ酸残基の部分配列を含み、且つタンパク質の生物活性を維持する、それらのペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質及び酵素に関する。誘導体は更に、該ポリペプチドの天然に存在する形のアミノ酸配列と比べ、追加の天然の、改変された、グリコシル化された、アシル化された又は天然に存在しないアミノ酸残基を含むことができる。これはまた、例えば該アミノ酸配列に共有的又は非共有的に結合されたリポーター分子又は他のリガンドなどの、該ポリペプチドの天然に存在する形のアミノ酸配列と比べ、1以上の非-アミノ酸置換基、又は異種アミノ酸置換基を含むこともできる。
【0041】
用語「ポリヌクレオチドの誘導体」は、例えば該ポリヌクレオチドの天然に存在する形の核酸配列に比べ核酸変異を有し得るポリヌクレオチドなど、該ポリヌクレオチドの核酸残基の部分配列を含む、DNA-分子、RNA-分子、及びオリゴヌクレオチドに関する。誘導体は更に、PNA、ポリシロキサン、及び2'-O-(2-メトキシ)エチル-ホスホロチオエートなど修飾された骨格、天然に存在しない核酸残基、又はメチル-、チオ-、スルフェート、ベンゾイル-、フェニル-、アミノ-、プロピル-、クロロ-、及びメタノカルバヌクレオシドなどの1以上の核酸置換基、又はその検出を促進するためのリポーター分子を伴う核酸を含むことができる。
【0042】
用語「内在性」とは、哺乳類が天然に生成する物質を意味するものとする。用語「酵素」、「プロテアーゼ」、「キナーゼ」又は「G-タンパク質共役受容体(‘GPCR’)」に関して内在性は、それが哺乳類(例えば、ヒトであるが、これに限定されるものではない)により天然に生成されることを意味するものとする。対照的に、この文脈において用語非-内在性は、それが哺乳類(例えば、ヒトであるが、これに限定されるものではない)により天然に生成されないことを意味するものとする。両方の用語は、インビボ及びインビトロの両システムを説明するために使用することができる。例えば、非限定的に、スクリーニングアプローチにおいて、内在性又は非-内在性標的物は、インビトロスクリーニングシステムに関してであってよい。非限定的な更なる例として、哺乳類のゲノムが非-内在性標的物を含むように操作される場合、インビボシステムによる候補化合物のスクリーニングが実行可能である。
【0043】
用語「発現可能な核酸」は、タンパク質性分子、ペプチド又はポリペプチドをコードしている又はコードすることが可能である核酸を意味し、且つRNA分子、又はDNA分子を含むことができる。
【0044】
用語「発現」は、形質導入による過剰発現を含む、内在性発現及び非-内在性発現の両方を含む。
【0045】
用語「発現阻害性物質」又は「発現阻害する物質」は、例えば、細胞内で又は細胞により通常発現される特定のポリペプチド又はタンパク質の転写、翻訳及び/又は発現と選択的に干渉するか又は干渉することが可能であるように設計されたポリヌクレオチドなどの、物質を意味する。より特定の及び例として、「発現阻害性物質」は、特定のポリペプチド又はタンパク質をコードしているポリリボヌクレオチド配列内の少なくとも約15〜30個、特に少なくとも17個の連続ヌクレオチドと同一又は相補的なヌクレオチド配列を含むDNA又はRNA分子を含む。そのような発現阻害性分子の例としては、リボザイム、マイクロRNA、二本鎖siRNA分子、自己相補的一本鎖siRNA分子、遺伝子アンチセンス構築体、及び、修飾され安定化された骨格を伴う合成RNAアンチセンス分子が挙げられる。
【0046】
用語「RNAiインヒビター」とは、細胞又は生物において、RNA干渉機能又は活性をダウンレギュレート、減少又は阻害することができる任意の分子をいう。RNAiインヒビターは、RISCなどのタンパク質成分、又はmiRNA若しくはsiRNAなどの核酸成分を含む、RNAi経路の任意の成分の機能と相互作用又は干渉することにより、RNAiをダウンレギュレート、減少又は阻害する(例えば、RNAiが媒介した標的ポリヌクレオチドの切断、翻訳阻害、又は転写サイレンシング)ことができる。RNAiインヒビターは、細胞又は生物において、RISC、miRNA、若しくはsiRNA又はRNAi経路の他の成分の機能と相互作用するか又は干渉する、siNA分子、アンチセンス分子、アプタマー、又は小型分子であることができる。RNAiの阻害(例えば、RNAiが媒介した標的ポリヌクレオチドの切断、翻訳阻害、又は転写サイレンシング)により、本発明のRNAiインヒビターは、標的遺伝子の発現を調節する(例えば、ダウンレギュレートする)ために使用することができる。
【0047】
本明細書で使用される用語「マイクロRNA」又は「miRNA」又は「miR」は、当該技術分野において一般に受け容れられたその意味をいう。より詳細には、この用語は、mRNA切断、翻訳抑制/阻害、又はヘテロクロマチンのサイレンシングのいずれかによる、標的メッセンジャーRNAの発現を調節する小型の二本鎖RNA分子をいう(例えば、Ambrosの文献、2004, Nature, 431, 350-355;Barrelの文献、2004, Cell, 116, 281-297;Cullenの文献、2004, Virus Research., 102, 3-9;Heらの文献、2004, Nat. Rev. Genet., 5, 522-531;Yingらの文献、2004, Gene, 342, 25-28;及び、Sethupathyらの文献、2006, RNA, 12:192-197参照)。本明細書において使用されるこの用語は、天然に存在することができる成熟一本鎖miRNA、前駆体miRNA(pre-miR)、及びそれらの変種を含む。場合によっては、用語「miRNA」はまた、miRNA一次転写物及び二重鎖miRNAを含む。
【0048】
用語「ポリヌクレオチドの断片」は、完全配列と実質的に類似しているが、必ずしも同一ではない活性を示す、近接核酸残基の部分配列を含むオリゴヌクレオチドに関する。特定の態様において、「断片」は、該完全配列の核酸配列の少なくとも5個の核酸残基(好ましくは、少なくとも10個の核酸残基、少なくとも15個の核酸残基、少なくとも20個の核酸残基、少なくとも25個の核酸残基、少なくとも40個の核酸残基、少なくとも50個の核酸残基、少なくとも60個の核酸残基、少なくとも70個の核酸残基、少なくとも80個の核酸残基、少なくとも90個の核酸残基、少なくとも100個の核酸残基、少なくとも125個の核酸残基、少なくとも150個の核酸残基、少なくとも175個の核酸残基、少なくとも200個の核酸残基、又は少なくとも250個の核酸残基)の核酸配列を含むオリゴヌクレオチドをいうことができる。
【0049】
用語「ポリペプチドの断片」は、近接アミノ酸残基の部分配列を含み、且つ完全配列と実質的に類似しているが、必ずしも同一ではない機能又は発現活性を示す、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、モノマー、サブユニット及び酵素に関する。特定の態様において、「断片」は、該完全配列のアミノ酸配列の少なくとも5個のアミノ酸残基(好ましくは、少なくとも10個のアミノ酸残基、少なくとも15個のアミノ酸残基、少なくとも20個のアミノ酸残基、少なくとも25個のアミノ酸残基、少なくとも40個のアミノ酸残基、少なくとも50個のアミノ酸残基、少なくとも60個のアミノ残基、少なくとも70個のアミノ酸残基、少なくとも80個のアミノ酸残基、少なくとも90個のアミノ酸残基、少なくとも100個のアミノ酸残基、少なくとも125個のアミノ酸残基、少なくとも150個のアミノ酸残基、少なくとも175個のアミノ酸残基、少なくとも200個のアミノ酸残基、又は少なくとも250個のアミノ酸残基)のアミノ酸配列を含む、ペプチド又はポリペプチドをいうことができる。
【0050】
用語「ハイブリダイゼーション」は、それにより核酸鎖が、塩基対合を介して相補鎖と結合する任意のプロセスを意味する。用語「ハイブリダイゼーション複合体」とは、相補塩基間の水素結合の形成により、2つの核酸配列の間で形成された複合体をいう。ハイブリダイゼーション複合体は、溶液中に形成される(例えば、C0t又はR0t分析)か、又は溶液中に存在する1つの核酸配列と固相(例えば、紙、メンブレン、フィルター、チップ、ピン若しくはガラススライド、又は細胞若しくはそれらの核酸が固定されている任意の他の好適な基板)上に固定された別の核酸配列の間に形成されることができる。用語「ストリンジェント条件」とは、ポリヌクレオチドとこの請求されたポリヌクレオチドの間のハイブリダイゼーションを可能にする条件をいう。ストリンジェント条件は、塩濃度、有機溶媒、例えばホルムアミドの濃度、温度、及び当該技術分野において周知の他の条件により規定することができる。特に、塩濃度の低下、ホルムアミド濃度の増加、又はハイブリダイゼーション温度の上昇は、ストリンジェンシーを増大することができる。用語「標準ハイブリダイゼーション条件」とは、ハイブリダイゼーション及び洗浄の両方について、5×SSC及び65℃と実質的に同等の塩及び温度の条件をいう。しかし当業者は、そのような「標準ハイブリダイゼーション条件」は、緩衝液中のナトリウム及びマグネシウムの濃度、ヌクレオチド配列長さ及び濃度、ミスマッチの割合、ホルムアミドの割合などを含む特定の条件によって決まることを理解するであろう。また「標準ハイブリダイゼーション条件」の決定において重要なものは、ハイブリダイズする2つの配列が、RNA-RNA、DNA-DNA又はRNA-DNAのいずれであるかである。そのような標準ハイブリダイゼーション条件は、周知の方式に従い当業者により容易に決定され、ここでハイブリダイゼーションは、典型的には予測又は決定されたTm以下の10-20NCで、望ましいならば、比較的高ストリンジェンシーの洗浄を伴う。
【0051】
用語「反応」と関連する用語「阻害する」又は「阻害している」とは、反応が、化合物の非存在下とは対照的に、化合物の存在下で減少又は妨害されることを意味する。
【0052】
用語「阻害」とは、タンパク質又はポリペプチドの発現又は活性の非存在又は最小化を生じるような、プロセスの減少、ダウンレギュレーション、又はプロセスの刺激の排除をいう。
【0053】
用語「誘導」とは、タンパク質又はポリペプチドの発現、増強された発現、活性、又は増大された活性を生じる、プロセスの誘導、アップレギュレーション、又は刺激をいう。
【0054】
用語「リガンド」は、内在性の天然に存在する受容体に特異的な内在性の天然に存在する分子を意味する。
【0055】
用語「医薬として許容し得る塩」とは、本明細書に開示された標的物の発現又は活性を阻害する化合物の無毒の無機及び有機の酸付加塩、及び塩基付加塩をいう。これらの塩は、本発明において有用な化合物の最終の単離及び精製期間に、現場で調製され得る。
【0056】
用語「ポリペプチド」は、タンパク質(標的物など)、タンパク質性分子、タンパク質の断片、高分子タンパク質のモノマー又は一部、ペプチド、オリゴペプチド及び酵素(キナーゼ、プロテアーゼ、GPCRなど)に関する。
【0057】
用語「ポリヌクレオチド」は、一本鎖又は二本鎖の形状の、及びセンス方向又はアンチセンス方向のポリ核酸、ストリンジェント条件下で特定のポリ核酸とハイブリダイズする相補性ポリ核酸、並びにその塩基対の少なくとも約60%が相同である、及びより特定するとその塩基対の70%が、特に80%、最も特定すると90%、及び特定の実施態様においてその塩基対の100%が共通である、ポリヌクレオチドを意味する。ポリヌクレオチドは、ポリリボ核酸、ポリデオキシリボ核酸、及びそれらの合成類縁体を含む。これはまた、ペプチド核酸(PNA)、ポリシロキサン、及び2'-O-(2-メトキシ)エチルホスホロチオエートなどの、修飾された骨格を持つ核酸も含む。ポリヌクレオチドは、約10から約5000塩基、特に約100から約4000塩基、より特定すると約250から約2500塩基の範囲で、長さが変動する配列により説明される。一つのポリヌクレオチド実施態様は、長さ約10から約30の塩基から構成される。ポリヌクレオチドの特別な実施態様は、より一般的には低分子干渉RNA(siRNA−二本鎖siRNA分子又は自己相補性一本鎖siRNA分子(shRNA))として説明される、約17から約22ヌクレオチドのポリリボヌクレオチドである。別の特別な実施態様は、ペプチド核酸(PNA)、ポリシロキサン、及び2'-O-(2-メトキシ)エチル-ホスホロチオエートなど修飾された骨格を伴う核酸、又は天然に存在しない核酸残基、又はメチル-、チオ-、スルフェート、ベンゾイル-、フェニル-、アミノ-、プロピル-、クロロ-、及びメタノカルバヌクレオシドなどの1以上の核酸置換基、若しくはその検出を促進するためのリポーター分子を含む核酸である。本明細書のポリヌクレオチドは、特定の標的DNA配列の異なる鎖に対し「実質的に」相補的であるように選択される。このことは、これらのポリヌクレオチドは、それらの各鎖とハイブリダイズするのに十分に相補性でなければならないことを意味する。従って、必要なポリヌクレオチド配列は、標的配列の正確な配列を反映しない。例えば、非-相補的ヌクレオチド断片は、該ポリヌクレオチドの5'末端に結合され、該ポリヌクレオチド配列の残りは、この鎖と相補的である。あるいは、ポリヌクレオチド配列は、ストリンジェント条件下でそれらとハイブリダイズするか、又は伸長生成物の合成のための鋳型を形成するために、鎖の配列と十分な相補性を有することを条件として、非-相補的塩基又はより長い配列が、このポリヌクレオチドへ散在されることができる。
【0058】
用語「予防する」又は「予防」とは、疾患-原因物質に曝露され得る対象、又は疾患発症の前に疾患の素因のある対象において、疾患又は障害を獲得又は発症するリスクの低下(すなわち、疾患の臨床症状の少なくとも一つが発症しないことを引き起こす)をいう。
【0059】
用語「発症予防」は、用語「予防」に関連し、且つこれを包含しており、その目的が、疾患の治療若しくは治癒よりもむしろ予防である方策又は手順をいう。発症予防的方策の非限定的例は、ワクチン投与;例えば不動状態(immobilization)に起因した血栓症のリスクのある入院患者への低分子量ヘパリンの投与;並びに、マラリアが風土病であるか又はマラリアとの接触リスクの高い地理的領域を訪問する前の、クロロキンなどの抗-マラリア薬の投与を含み得る。
【0060】
用語「対象」は、ヒト及び他の哺乳類を含む。
【0061】
用語「標的物」又は「標的物(複数)」は、本明細書記載のアッセイにより同定され、且つそうでなければ代替活性化マクロファージとも称されるM2マクロファージへのマクロファージの分化に関与することが決定されたタンパク質を意味する。用語「標的物」又は「標的物(複数)」は、代替の種の形状、アイソフォーム、並びにスプライシング変種、対立遺伝子変種、選択的インフレームエクソン、及び選択部位若しくは中途終止部位若しくは開始部位などの変種を含むか又は企図し、これは、表1に記されたような、それらの既知の若しくは認められたアイソフォーム若しくは変種を含む。NCBI寄託番号は、当業者が転写物及びポリペプチドを同定するのを補助するために提供されている。しかし用語「標的物」又は「標的物(複数)」は、これらの配列の特定の型に限定されず、且つこれらの配列に対応する核酸及びポリペプチドの機能的変種を包含している。
【0062】
「治療的有効量」又は「有効量」は、医師又は他の臨床従事者により考えられるか又は容認される、対象において又は対象の生物学的反応又は医学的反応を引き起こす化合物又は物質の量を意味する。
【0063】
用語任意の疾患又は障害を「治療する」又は「治療」とは、一実施態様において、疾患又は障害を改善する(すなわち、疾患を阻止するか、又はそれらの臨床症状の少なくとも一種の出現、程度若しくは重症度を軽減する)ことをいう。従って「治療する」とは、治療的処置及び発症予防的若しくは予防的方策の両方をいう。治療を必要とするものは、既に障害を伴うものに加え、障害が予防されるべきものを含む。本明細書で使用される関連用語「治療」とは、障害、症状、疾患又は状態を治療する行為をいう。別の実施態様において、「治療する」又は「治療」とは、対象により認識されるものではない、少なくとも一つの理学的パラメータの改善をいう。更に別の実施態様において、「治療する」又は「治療」とは、理学的(例えば、認識できない症状の安定化)、生理学的(例えば、理学的パラメータ又は生理学的に測定可能なパラメータの安定化)、又は両方のいずれかで、疾患又は障害を調節することをいう。更なる実施態様において、「治療する」又は「治療」とは、疾患の進行を遅らせることに関係する。
【0064】
用語「ベクター」はまた、プラスミドに加え、組換えウイルスなどのウイルスベクター又は組換えウイルスをコードしている核酸に関係する。
【0065】
用語「脊椎動物細胞」は、魚類、鳥類、爬虫類、両生類、有袋類及び哺乳類の種を含む、脊椎構造を有する動物由来の細胞を意味する。好ましい細胞は、哺乳類種に由来し、最も好ましい細胞は、ヒト細胞である。哺乳類の細胞は、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、マウス及びラットなどのマウス類、並びにウサギを含む。
【0066】
本明細書において使用される用語「線維化疾患」とは、特に細胞外マトリクスの過剰な若しくは異常な生成、沈着に起因した、過剰な又は持続性の瘢痕化により特徴づけられる疾患をいい、且つ細胞及び/若しくはフィブロネクチン及び/若しくはコラーゲンの異常な蓄積、並びに/又は増大した線維芽細胞動員に関連しているものであり、且つ例えば心臓、腎臓、肝臓、関節、肺、胸膜組織、腹膜組織、皮膚、角膜、網膜、骨格筋及び消化管などの、個々の臓器又は組織の線維症を含むが、これらに限定されるものではない。特定の態様において、用語線維化疾患とは、特発性肺線維症(IPF)、嚢胞性線維症、医原性薬剤誘発性線維症を含む様々な病因の他のびまん性実質性肺疾患、職業及び/又は環境が誘導した線維症、肉芽腫性疾患(サルコイドーシス、過敏肺炎)、膠原血管病、肺胞タンパク症、ランゲルハンス細胞肉芽腫症、リンパ脈管筋腫症、遺伝性疾患(ハーマンスキー・パドラック症候群、結節硬化症、神経線維腫症、代謝性蓄積症、家族性間質性肺疾患)、放射線誘導性線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、強皮症、ブレオマイシン誘導性肺線維症、慢性喘息、珪肺、アスベスト誘導性肺線維症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、腎線維症、尿細管間質性線維症、糸球体腎炎、巣状分節性糸球体硬化症、IgA腎症、高血圧、アルポート症候群、消化管線維症、肝線維症、肝硬変、アルコール誘導性肝線維症、毒物/薬物誘導性肝線維症、ヘモクロマトーシス、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、胆管損傷、原発性胆汁性肝硬変症、感染症誘導性肝線維症、ウイルス誘導性肝線維症、自己免疫肝炎、角膜瘢痕化、肥厚性瘢痕化、デュピュイトラン病、ケロイド、皮膚線維症、皮膚強皮症、全身性硬化症、脊髄損傷/線維症、骨髄線維症、血管再狭窄、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化、ヴェーゲナー肉芽腫症及びペイロニー病をいう。より特定すると、用語「線維化疾患」は、特発性肺線維症(IPF)をいう。
【0067】
用語「M2マクロファージ表現型」又は「代替活性化マクロファージ」又は「M2マクロファージ」は、インターロイキン-4(IL-4)、IL-10、又はそれらの組合せにより活性化され、特定のマーカー、例えばCCL-18、CD206及びCD163を発現する能力を示している(Mantovaniらの文献、2004, Prasse 2007)、マクロファージの亜型をいうように全体を通して使用され、M2表現型の多くの亜型が、この用語により対象とされている。これらは、当業者には公知であろう(例えば、Mantovaniらの文献、2004、2012に説明されている)。
【0068】
用語「M1マクロファージ表現型」又は「古典的活性化マクロファージ」又は「M1マクロファージ」は、細菌性リポ多糖(LPS)及びインターフェロン-γ(IFN-γ)により活性化されるマクロファージの亜型をいうように全体を通して使用され、これは、大量の前-炎症性シグナル伝達分子及びTNFαなどのエフェクター分子の生成を含むことを特徴とすることを示している。
【0069】
用語「M0マクロファージ表現型」又は「M0マクロファージ」とは、CCL18及びTNFαの非存在により特徴づけられる、M1又はM2マクロファージのいずれにも未だ分化していない、単球由来のナイーブマクロファージをいう。
【0070】
(標的物)
本出願人の発明は、特に増加した数のM2マクロファージ又は増強されたマクロファージのM2マクロファージへの分化に関連された、線維化状態及び障害の治療、予防及び緩和に関連している。
【0071】
本発明は、マクロファージ分化の天然に存在するインビボプロセスの科学的に実証された代替物を提供するのに適したインビトロ(無細胞又は細胞ベース)アッセイシステムを開発するための、本発明者らの集中的な研究を基にしている。マクロファージのM2マクロファージへの分化のプロセスは、線維症に関与することがわかっているが、これは複雑なプロセスである。本発明は、マクロファージのM2マクロファージへの分化を阻害することができる化合物の同定、従って線維症の治療及び/又は予防に有用である化合物の同定に適した、個別の及び定量可能なインビトロパラメータを使用する、天然のシステムの人工モデルを提供する。
【0072】
本発明は、本化合物を標的物を発現している細胞と接触させること、並びに本化合物の存在及び/又は非存在下で、マクロファージのM2マクロファージへの分化の阻害の相対量又は程度を決定することを含む、線維化状態を治療するのに有用な、特にマクロファージのM2マクロファージへの分化を減少又は阻害するのに有用な、薬物候補化合物をアッセイする方法を提供する。本発明は、本化合物を標的物を発現している細胞と接触させること、並びに標的物の発現又は活性の阻害の相対量又は程度を決定することを含み、これにより標的物の発現又は活性の阻害は、本化合物の存在及び/又は非存在下で、マクロファージのM2マクロファージへの分化の阻害又は減少に関連しているか又はこれを生じる線維化状態を治療するのに有用な、特にマクロファージのM2マクロファージへの分化を減少又は阻害するのに有用な、薬物候補化合物をアッセイする方法を提供する。そのような方法は、該分化を阻害するように作用する標的タンパク質を同定するために使用することができ;或いは、これらは、標的物タンパク質の発現又は活性をダウンレギュレート若しくは阻害する化合物を同定するために使用することができる。本発明は、標的物の発現又は活性が測定され得る条件下で、本化合物を標的物と接触させること、並びに標的物の発現又は活性が、本化合物の存在下で変更されたかどうかを決定すること、マクロファージ細胞の集団を、該被験化合物と接触させること、並びにマクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した特性を測定することを含む、線維症を治療するのに有用な薬物候補化合物をアッセイする方法を提供する。そのような方法の例は、当業者により設計され且つ決定され得る。特定のそのような例証的方法が、本明細書に提供されている。
【0073】
本発明は、「実施例」において以下に説明されるスクリーンの結果として同定される、標的物ポリペプチド及びそれらをコードしている核酸は、線維症、特にマクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した因子であるという、本発明者らの発見を基にしている。標的物ポリペプチド及び/又はそれらをコードしているポリヌクレオチドの低下した活性又は発現は、低下又は阻害されたマクロファージのM2マクロファージへの分化の原因となるか、これと相関又は関連している。或いは、標的物ポリペプチド及び/又はそれらをコードしているポリヌクレオチドの低下した活性又は発現は、M2マクロファージのマーカーの減少の原因となるか、これと相関又は関連している。
【0074】
本発明の特定の実施態様において、標的物ポリペプチドは、表1に列記された配列番号:26-50からなる群から選択されたアミノ酸配列を含む。
【表1】
【0075】
本発明の特定の実施態様は、配列番号:26及び38-41として同定されるGPCR標的物を含む。本発明の特定の実施態様は、配列番号:27及び50として同定されるプロテアーゼ標的物を含む。本発明の特定の実施態様は、配列番号:28として同定されるホスファターゼ標的物を含む。本発明の特定の実施態様は、配列番号:29、30-35、36及び43-44として同定される分泌型/細胞外標的物を含む。本発明の特定の実施態様は、配列番号:37、45-47として同定される受容体標的物を含む。本発明の特定の実施態様は、配列番号:42として同定されるイオンチャネル標的物を含む。本発明の特定の実施態様は、配列番号:48として同定されるキナーゼ標的物を含む。本発明の特定の実施態様は、配列番号:49として同定される輸送体標的物を含む。
【0076】
(発明の方法)
一態様において、本発明は、線維症の治療に有用な化合物を同定する方法であって:
a)被験化合物を、配列番号:26-50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、それらの断片及び機能性誘導体と接触させる工程;
b)被験化合物の該ポリペプチドへの結合親和性を測定する工程;
c)被験化合物を、マクロファージ細胞集団と接触させる工程;
d)マクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した特性を測定する工程;並びに
e)マクロファージのM2マクロファージへの分化を減少又は阻害し、且つ該ポリペプチドへの結合親和性を示すことが可能な化合物を同定する工程:を含む、方法に関する。
【0077】
更なる態様において、本発明は、マクロファージのM2マクロファージへの分化を減少又は阻害する化合物を同定する方法であって:
a)被験化合物を、配列番号:26-50からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードしている核酸、又はそれらの断片及び機能性誘導体と接触させる工程;
b)被験化合物の該核酸への結合親和性を同定及び/又は測定する工程;
c)被験化合物を、マクロファージ細胞集団と接触させる工程;
d)マクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した特性を測定する工程;並びに
e)マクロファージのM2マクロファージへの分化を減少又は阻害し、且つ該ポリペプチドへの結合親和性を示すことが可能な化合物を同定する工程:を含む、方法に関する。
【0078】
一態様において、本発明は、マクロファージのM2マクロファージへの分化を減少又は阻害する化合物を同定する方法であって:
a)被験化合物を、配列番号:26-50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、それらの断片及び機能性誘導体と、又は配列番号:26-50からなる群から選択されるアミノ酸をコードしている核酸又はその機能性誘導体と接触させる工程;
b)被験化合物の該ポリペプチド又は核酸への結合親和性を同定及び/又は測定する工程;
c)被験化合物を、マクロファージ細胞集団と接触させる工程;
d)マクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した又は指標とする特性を測定する工程;並びに
e)マクロファージのM2マクロファージへの分化を阻害又は減少し、且つ該ポリペプチド又は核酸への結合親和性を示すことが可能な化合物を同定する工程:を含む、方法に関する。
【0079】
前記方法の更なる態様において、配列番号:26-50からなる群から選択されるアミノ酸をコードしている核酸又はその機能性誘導体は、配列番号:1-25からなる群から選択され得る。
【0080】
これらの測定を行う順番は、本発明の実践に重要であるとは考えられず、これは、任意の順番で実践することができる。本方法の特定の態様において、工程(c)及び(d)は、工程(a)及び(b)を実践する前に行うことができる。例えば、最初に、ポリペプチドに対する化合物の結合親和性に関する情報が分かっていないような化合物のセットのスクリーニングアッセイを行うことができる。或いは、ポリペプチドドメインについて結合親和性を有すると同定された化合物のセット、又はポリペプチドのインヒビターであると同定された化合物のクラスを、スクリーニングすることができる。
【0081】
別の態様において、工程(a)-(d)の方法はまた、被験化合物をマクロファージの集団と接触させ、被験化合物の標的物ポリペプチドへの結合親和性及びマクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した特性を測定し、並びにマクロファージのM2マクロファージへの分化を阻害することが可能であり且つ該ポリペプチドへの結合親和性を示す化合物を同定することにより、細胞-ベースのアッセイにおいて同時に行うこともできる。
【0082】
化合物のポリペプチド標的物との結合親和性は、表面プラズモン共鳴バイオセンサー(Biacore(登録商標))の使用、標識された化合物による飽和結合分析により(例えば、Scatchard及びLindmo分析)、示差UV分光計、蛍光偏光アッセイ、蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR(登録商標))システム、蛍光共鳴エネルギー移動、及び生物発光共鳴エネルギー移動によるなどの、当該技術分野において公知の方法により測定することができる。化合物の結合親和性はまた、解離定数(Kd)で又はIC50若しくはEC50として表すこともできる。IC50は、別のリガンドの該ポリペプチドへの結合の50%阻害に必要とされる化合物の濃度を表す。EC50は、標的物機能を測定する任意のアッセイにおいて最大効果の50%を得るのに必要とされる濃度を表す。解離定数Kdは、リガンドがどの程度良好にポリペプチドへ結合するかの測定値であり、これは、該ポリペプチドの結合部位の正確に半分を飽和するのに必要とされるリガンド濃度と等しい。高親和性結合を持つ化合物は、例えば100nM〜1pMの範囲である、低いKd、IC50及びEC50値を有し;中等度-から低-結合親和性は、例えばマイクロモル範囲の、高いKd、IC50及びEC50値に関連している。
【0083】
一態様において、アッセイ方法は、標的物ポリペプチドを、マイクロモル範囲の結合親和性を示す化合物と接触させることを含む。ある態様において、示された結合親和性は、少なくとも10マイクロモルである。ある態様において、結合親和性は、少なくとも1マイクロモルである。ある態様において、結合親和性は、少なくとも500ナノモルである。
【0084】
特定の態様において、被験化合物は、標的物クラスに結合するその能力を基に、又は標的物クラスに結合する能力を有する化合物の公知のライブラリーから、選択される。
【0085】
更なる態様において、本発明は、線維症の治療に有用な化合物を同定する方法であって:
a)被験化合物を、配列番号:26-50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、それらの機能性断片及び機能性誘導体と接触させる工程;
b)該ポリペプチドの活性を測定する工程;
c)被験化合物を、マクロファージ細胞集団と接触させる工程;
d)マクロファージの代替活性化マクロファージへの分化に関連した特性を測定する工程;並びに
e)マクロファージのM2マクロファージへの分化を減少又は阻害すること、及び該ポリペプチドの活性を阻害することが可能な化合物を同定する工程:を含む、方法に関する。
【0086】
追加の態様において、本発明は、マクロファージのM2マクロファージへの分化を減少又は阻害する化合物を同定する方法であって:
a)被験化合物を、配列番号:26-50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、それらの機能性断片及び機能性誘導体と、接触させる工程;
b)該ポリペプチドの活性を測定する工程;
c)被験化合物を、マクロファージ細胞の集団と接触させる工程;
d)マクロファージの代替活性化マクロファージへの分化に関連している特性を測定する工程;並びに
e)マクロファージのM2マクロファージへの分化を減少又は阻害し、且つ該ポリペプチドの活性を阻害することが可能な化合物を同定する工程:を含む、方法に関する。
【0087】
更なる態様において、本発明は、マクロファージのM2マクロファージへの分化を減少又は阻害する化合物を同定する方法であって:
a)被験化合物を、配列番号:26-50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、それらの機能性断片及び機能性誘導体と、又は配列番号:26-50からなる群から選択されるアミノ酸をコードしている核酸若しくはそれらの機能性誘導体と、接触させる工程;
b)該ポリペプチドの発現又は活性を測定する工程;
c)該ポリペプチドの発現又は活性を阻害することが可能な化合物を同定し、これにより、該ポリペプチドの発現又は活性の阻害が、マクロファージのM2マクロファージへの分化の減少又は阻害を生じるか又はこれに関連している工程:を含む、方法に関する。
【0088】
前記方法の追加の態様において、配列番号:26-50からなる群から選択されるアミノ酸をコードしている核酸又はそれらの機能性誘導体は、配列番号:1-25からなる群から選択され得る。
【0089】
これらの測定を行う順番は、本発明の実践に重要であるとは考えられず、これは、任意の順番で実践することができる。本方法の特定の態様において、工程(c)及び(d)は、工程(a)及び(b)を実践する前に行うことができる。例えば、最初に、ポリペプチドに対する化合物の結合親和性に関する情報が分かっていないような化合物のセットのスクリーニングアッセイを行うことができる。或いは、ポリペプチドドメインについて結合親和性を有すると同定された化合物のセット、又はポリペプチドのインヒビターであると同定された化合物のクラスを、スクリーニングすることができる。
【0090】
表1は、同定されたポリペプチドのクラスを含む、出願者の本明細書に例示されたM2分化アッセイにおけるノックダウンライブラリーを用い同定された標的物を列挙している。標的物は、例えばキナーゼ、プロテアーゼ、酵素、イオンチャネル、GPCR、及び細胞外タンパク質を含む、ポリペプチドクラスにおいて同定されている。当業者は、無細胞調製に加え、細胞-ベースのアッセイの両方においてそれらのクラスの活性を測定する様々な方法を知っているであろう。様々な方法が存在し、且つ特定の標的に適合されている。それらの適合は、慣習的実験に関する問題であり、現存する技術及び方法に頼っている。いくつかの例証的方法を、本明細書に記載している。
【0091】
イオンチャネルは、膜タンパク質複合体であり、且つそれらの機能は、生体膜を超えたイオンの拡散を促進することである。膜、又はリン脂質二重層は、親水性で帯電した分子に対し、疎水性低誘電性障壁を構築する。イオンチャネルは、膜の疎水性内部を超える高伝導性の親水性経路を提供する。イオンチャネルの活性は、古典的パッチクランプ法を用い、測定することができる。ハイスループット蛍光-ベースの又はトレーサー-ベースのアッセイも、イオンチャネル活性を測定するために、広範に利用可能である。これらの蛍光-ベースのアッセイは、イオンチャネルを開閉するいずれかのそれらの能力を基に、膜を超える特異的蛍光色素の濃度の変化により、化合物をスクリーニングする。トレーサー-ベースのアッセイの場合、細胞内又は細胞外のトレーサーの濃度の変化は、放射能測定又はガス吸収分析により測定される。
【0092】
プロテアーゼであるポリペプチドによる基質の切断を測定することにより、化合物による阻害を決定する具体的方法は、当該技術分野において周知である。伝統的に、標的プロテアーゼにより切断され得る基質であるペプチド配列を介して、蛍光基が消光物質に連結されている基質が使用される。リンカーの切断は、蛍光基と消光物質を分離し、蛍光の増加を生じる。
【0093】
G-タンパク質共役受容体(GPCR)は、エフェクタータンパク質を活性化することが可能であり、結果的に細胞内のセカンドメッセンジャーレベルの変化を生じる。配列番号:26、38-41により表される標的物は、GPCRである。GPCRの活性は、そのようなセカンドメッセンジャーの活性レベルを測定することにより、測定することができる。細胞内の2種の重要で有用なセカンドメッセンジャーは、サイクリックAMP(cAMP)及びCa2+である。それらの活性レベルは、ELISA若しくは放射能技術によるか、又はCa2+と接触した場合に蛍光若しくは化学発光シグナルを生じる基質を使用することにより直接的に、或いはレポーター遺伝子分析により間接的にのいずれかで、当業者に公知の方法により、測定することができる。1種以上のセカンドメッセンジャーの活性レベルは通常、プロモーターにより制御されるレポーター遺伝子により決定され、ここでプロモーターは、該セカンドメッセンジャーに反応する。そのような目的で当該技術分野において公知で使用されるプロモーターは、細胞内のサイクリック-AMPレベルに反応するサイクリック-AMP反応性プロモーター、及び細胞内の細胞質Ca2+-レベルに感受性があるNF-AT反応性プロモーターである。レポーター遺伝子は通常、容易に検出可能な遺伝子産物を有する。レポーター遺伝子は、宿主細胞において安定して感染されるか又は一過性にトランスフェクションされるかのいずれかであることができる。有用なレポーター遺伝子は、アルカリホスファターゼ、増強された緑色蛍光タンパク質、不安定化された緑色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ及びβ-ガラクトシダーゼがある。
【0094】
別の態様において、本関連(the present relation)は、線維症治療に有用な化合物を同定する方法であって:
a)被験化合物を、配列番号:26-50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを発現するマクロファージ細胞の集団と接触させる工程;
b)該細胞中の該ポリペプチドの発現、活性及び/又は量を測定する工程;
c)マクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した特性を測定する工程;並びに
d)該ポリペプチドの発現、活性及び/又は量の減少を生じ、且つマクロファージのM2マクロファージへの分化を減少又は阻害することが可能な化合物を同定する工程:を含む、方法に関係する。
【0095】
更なる態様において、本関連は、マクロファージのM2マクロファージへの分化を減少又は阻害する化合物を同定する方法であって:
a)被験化合物を、配列番号:26-50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを発現するマクロファージ細胞の集団と接触させる工程;
b)該細胞中の該ポリペプチドの発現、活性及び/又は量を測定する工程;
c)マクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した特性を任意に測定する工程;並びに
d)該ポリペプチドの発現、活性及び/又は量の減少を生じ、且つマクロファージのM2マクロファージへの分化を減少又は阻害することが可能な化合物を同定する工程:を含む、方法に関係する。
【0096】
特定の態様において、標的物への結合又は活性の測定に関連した本発明の方法工程は、該標的物ポリペプチドを発現するように操作された哺乳類細胞、特にヒト細胞の集団で行われる。代替の態様において、本発明の方法は、該標的物ポリペプチドを発現するように操作されたマクロファージの集団を用いて行われる。これは、当業者に公知の好適な技術を使用し、細胞内の標的物ポリペプチドの発現により達成され得る。具体的実施態様において、これは、当業者に公知の好適な技術を使用し、細胞における標的物ポリペプチドの過剰発現により達成され得る。或いは、本発明の方法は、該標的物ポリペプチドの天然の発現が分かっているマクロファージの集団により行われてもよい。
【0097】
特定の態様において、標的物ポリペプチドの発現及び/又は量の測定と、マクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した特性の測定は、マクロファージ細胞の異なる集団を用い、個別の工程において行うことができる。工程(b)及び(c)における測定はまた、逆順で行うことができる。これらの測定を行う順番は、本発明の実践に重要であるとは考えられず、これは、任意の順番で実践することができる。
【0098】
ポリペプチドの活性又は発現を測定する一つの特定の手段は、抗体などのポリペプチド結合物質を使用し、該ポリペプチドの量を決定すること、又は生物学的測定若しくは生化学的測定において該ポリペプチドの活性を、例えばキナーゼポリペプチドの標的のリン酸化の量を決定することである。
【0099】
標的物遺伝子発現(mRNAレベル)は、当業者に周知の技術を用い、測定することができる。そのような技術の特定例は、ノーザン分析又はリアルタイムPCRを含む。それらの方法は、試料中の標的物をコードしている核酸の存在の指標であり、これによりポリヌクレオチドからの転写物の発現と相関させる。
【0100】
細胞集団は、例えば培地内の直接インキュベーションによるか、又は細胞への核酸導入によるなど、異なる手段により、化合物へ又は化合物の混合物へ曝露することができる。そのような導入は、例えば、裸の単離されたDNA又はRNAの直接トランスフェクションによるか、又は組換えベクターなどの送達システムの手段によるなど、多種多様な手段により達成されてよい。リポソーム、又は他の脂質-ベースのベクターなどの他の送達手段も、使用されてよい。特に、核酸化合物は、組換えウイルスなどの、(組換え)ベクターにより、送達される。
【0101】
インビボにおける標的物調節の更なる評価を含む、本発明において同定された物質又は化合物の更なる又は追加のスクリーニング、評価及び/又は検証のために、線維症のインビボ動物モデルを、当業者は利用することができる。そのような動物モデルは、肺線維症モデル(例えば、ブレオマイシンモデル、照射モデル、シリカモデル、(誘導性)トランスジェニックマウスモデル、FITCモデル、養子移入モデルなど)、腎線維症モデル(例えば、COL4A3-欠損モデル、腎毒性血清腎炎モデル;一側性尿管閉塞モデルなど)及び肝線維症モデル(例えば、CCL4中毒モデルなど)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0102】
本発明の方法におけるマクロファージ細胞の集団は、純粋でなければならないことはなく、特定程度の純度が要求される。該細胞の一部がマクロファージ細胞である哺乳類細胞の集団は、本発明の方法の実践に十分である。マクロファージ細胞の数又は量は、M1マクロファージなどの他の型との対比を含み、M2マクロファージへの分化において又はM2マクロファージの相対量において、有意な又は関連する変化が存在するかどうかを決定するのに十分でなければならないか、或いはマクロファージマーカー又は因子における有意な減少又は増加などの、差異を評価するのに十分でなければならない。特定の態様において、該マーカーはCCL18である。一態様において、そのようなマクロファージ細胞の集団は、別の細胞型(例えば単球)から、又はマクロファージ細胞へと分化する可能性があり得る任意の他の細胞から誘導され得る。マクロファージ細胞の集団はまた、臓器から直接得るか、或いは好適な培地を用い成長させることができることは理解されるべきである。マクロファージ細胞の集団を作製する技術は、当業者に公知である。そのような技術の一部は、本発明の実施例に提供されている。
【0103】
具体的実施態様において、本方法は、試験される化合物を対照と比較する工程を追加的に含むことができる。好適な対照は、偽陽性又は陰性の読み値を防ぐことを確実にするために適所に常に配置される。本発明の特定の実施態様において、スクリーニング法は、化合物を好適な対照と比較する追加工程を含む。一実施態様において、対照は、被験化合物と接触されない細胞又は試料であってよい。代替の実施態様において、対照は、標的物を発現しない細胞であってよく;例えば、そのような実施態様の一態様において、被験細胞は、標的物を天然に発現し、且つ対照細胞は、例えば標的の発現を阻害又は妨害するsiRNAなどの物質と接触されてよい。或いは、そのような実施態様の別の態様において、細胞は、その未変性状態では、標的物を発現せず、且つ被験細胞は、標的物を発現するように操作され、その結果この実施態様において、対照は、形質転換されない未変性細胞であることができる。対照はまた、代わりにマクロファージのM2マクロファージへの分化の公知のインヒビター又はM2マクロファージに対しいかなる有意な作用も有さないことがわかっている化合物を利用することもできる。対照の例は本明細書に記載されているが、これは限定としてとらえられるべきではなく;当業者の範囲内で、使用される実験条件に関して適した対照が選択される。
【0104】
陰性対照の例は、任意の化合物により処理されていない細胞、マクロファージのM2マクロファージへの分化のインヒビターではないことが分かっている化合物、マクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した経路と干渉しないことがわかっている化合物により処理された細胞を含むが、これらに限定されるものではない。陽性対照の例は、STAT6、IL4R、JAK1若しくはCCL18の活性又は発現を阻害することがわかっている化合物と接触された細胞、マクロファージのM2マクロファージへの分化を阻害することがわかっている化合物と接触された細胞を含むが、これらに限定されるものではない。
【0105】
特定の実施態様において、本発明の方法における結合及び活性の試験は、インビトロ無細胞調製物中で行われる。
【0106】
代替の実施態様において、本発明の方法における結合及び活性の試験は、細胞中で行われる。
【0107】
本発明の方法の特定の態様において、活性及び結合の試験は、哺乳類細胞、特にヒト細胞において行われる。より詳細には、これらの工程は、マクロファージ細胞において行われる。
【0108】
ポリペプチドを発現している細胞は、該ポリペプチドを天然に発現する細胞であってよいか、又は細胞は、該ポリペプチドを発現するようにトランスフェクトされてよいことは理解されなければならない。また、細胞は、該ポリペプチドを過剰発現するように形質導入されてよいか、又は異なる様にアッセイ又は評価され得る該ポリペプチドの非-内在型を発現するようにトランスフェクトされてよい。
【0109】
細胞において標的物ポリペプチドを発現しているポリヌクレオチドは、ベクター内に含まれてよい。ポリ核酸は、核酸配列の発現を可能にするシグナルに機能的に連結され、且つ特に組換えベクター構築体を利用し、細胞へ導入され、一旦ベクターが細胞へ導入されると、該核酸を発現するであろう。アデノウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス又はセンダイウイルスのベクターシステムを含む、様々なウイルス-ベースのシステムが利用可能である。全ては、標的細胞において標的物ポリペプチドを導入し発現するために使用することができる。
【0110】
特定の実施態様において、本発明のアッセイ方法は、代替活性化マクロファージのマーカー(M2マクロファージマーカー)の放出又は発現の阻害の測定に関与している。
【0111】
多くのM2マクロファージマーカーが、当業者に公知である。そのようなマーカーの選択は、具体的アッセイデザインに関連した、試薬の利用可能性、実践されるアッセイ方法の規模及び他の因子によって決まる。具体的実施態様において、M2マクロファージマーカーは、CCL18、CCL13、TGFβ、CCL22、CCL17、可溶性フィブロネクチン、葉酸受容体β、CD206、及びCD163からなる群から選択される。具体的実施態様において、M2マクロファージマーカーは、CCL18又はCD206である。
【0112】
アッセイ設定及びスループットに応じて左右される、そのようなマーカーを測定する手段は、当業者に公知である。ヒトELISAは市販されているが、それらの感度は、低レベルのこれらのマーカーを常には検出しない。従って、アッセイは、シグナル伝達分子が、抗体により特異的に捕獲され且つ検出されるサンドイッチイムノアッセイとして、メソスケールディスカバリープラットフォーム(MSD)(Meso Scale Discovery社、メリーランド州、米国)上で最適化され得る。MSD技術は、プレートの底に一体化された炭素電極を備えたマイクロ-プレートを利用し;生物学的試薬は、単純に受動吸着によりその炭素へ固定され、高い生物活性を維持する。MSDアッセイは、超高感度検出のために、電気-化学発光標識を使用する。この検出プロセスは、マイクロ-プレートの底に配置された電極で始まる。電極の近傍の標識のみが励起され、低下したバックグラウンドシグナルが検出される。そのようなアッセイのための抗体は、様々な製造業者から購入することができ、当業者は、アッセイを行うための正確な抗体を選択する立場にある。
【0113】
或いは、M1及びM2表現型マーカーの発現レベルは、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Q-PCR/qPCR/qrt-PCR)を含む公知の方法を用いて、測定することができる。qPCRは、PCRを基にした実験技術であり、これは標的化されたDNA分子を増幅し且つ同時に定量するために使用される。DNA試料中の1以上の特異的配列に関して、リアルタイムPCRは、検出及び定量の両方を可能にする。この量は、コピーの絶対数又はDNAインプット又は追加の規準化遺伝子に対し規準化された場合の相対量のいずれかであることができる。
【0114】
具体的実施態様において、本発明の方法は、マクロファージのM2マクロファージへの分化を誘導する因子(M2誘導性因子)により誘発された細胞を利用する。そのような因子の多くは、文献に記載されており、且つこれらは当業者に周知である。特定の実施態様において、本発明の方法は、IL4、IL10、IL13、免疫複合体、及びリポ多糖からなる群から選択される1以上のM2誘導性因子により誘発された細胞を利用する。免疫複合体は、抗体の可溶性抗原への一体型結合から形成される。結合された抗原及び抗体は、特異的エピトープとして作用し、単独の免疫複合体と称される。
【0115】
より特定の実施態様において、アッセイ方法は、IL10及びIL4の組合せにより誘発される細胞を使用し、行われる。
【0116】
特定の実施態様において、アッセイ方法は、以下の追加工程により補充されてよい:マクロファージの古典的活性化(M1)マクロファージへの分化に関連した特性を測定する工程、及び該分化を阻害しない化合物を同定する工程。具体的実施態様において、該特性は、M1マクロファージ表現型のマーカー(M1マクロファージマーカー)のレベル及び/又は発現であり、且つ該マーカーのレベルを増加しない化合物が、同定される。
【0117】
特定の実施態様において、TNFαは、M1マクロファージ表現型のマーカーとして使用される。多くの他の代替M1マクロファージマーカーが、文献に記載されており、当業者は公知であろう。
【0118】
(候補化合物)
(発現阻害性物質)
本発明の方法の特定の実施態様において、被験化合物は、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、短ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)及び低分子干渉RNA(siRNA)からなる群から選択される。
【0119】
これらの方法の特別な実施態様は、アンチセンスRNA、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、配列番号:26-50をコードしているポリリボヌクレオチドを切断するリボザイム、配列番号:1-25に対応するポリリボヌクレオチドの一部に十分に相同である低分子干渉RNA(siRNA)又はマイクロRNA(miRNA)からなる群から選択される発現-阻害性物質を含み、その結果この発現阻害性物質は、標的物ポリリボヌクレオチドの標的物ポリペプチドへの翻訳を妨害する。
【0120】
アンチセンス核酸を使用する遺伝子発現のダウンレギュレーションは、翻訳又は転写レベルで達成され得る。本発明のアンチセンス核酸は、特に、標的物ポリペプチドをコードしている核酸又は対応するメッセンジャーRNAの全て又は一部と特異的にハイブリダイズすることが可能な核酸断片である。加えて、その一次転写物のスプライシングを阻害することにより、標的物ポリペプチドをコードすることが可能な核酸配列の発現を減少するアンチセンス核酸が、設計され得る。任意の長さのアンチセンス配列が、標的物をコードしている核酸の発現をダウンレギュレート又はブロックすることが可能である限りは、これが本発明の実践に適している。特に、このアンチセンス配列は、長さが少なくとも約15〜30、特に少なくとも17ヌクレオチドである。アンチセンス核酸の調製及び使用、アンチセンスRNAをコードしているDNA、並びにオリゴ及び遺伝子アンチセンスの使用は、当該技術分野において公知である。
【0121】
より具体的実施態様において、被験化合物は、標的物ポリヌクレオチドの約17〜約30近接ヌクレオチドの天然に存在するポリヌクレオチド配列に相補的であるか又はこれから操作された核酸配列を含む。
【0122】
当業者は、標的物の阻害及びマクロファージの代替活性化マクロファージへの分化において効果的なアンチセンス核酸及びオリゴヌクレオチドの選択プロセスを促進し且つ簡略化するために、いくつかの戦略のいずれかを容易に利用することができる。オリゴヌクレオチドとmRNA分子の相補的配列の間の結合エネルギーの予測又は熱力学指数の計算を、利用することができる(Chiangらの文献、(1991) J. Biol. Chem. 266:18162-18171;Stullらの文献、(1992) Nucl. Acids Res. 20:3501-3508)。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、二次構造を基に選択することができる(Wickstromらの文献、(1991) 「癌及びAIDSのアンチセンス核酸療法の展望(Prospects for Antisense Nucleic Acid Therapy of Cancer and AIDS)」、Wickstrom編集、Wiley-Liss社、ニューヨーク、7-24頁;Limaらの文献、(1992) Biochem. 31:12055-12061)。Schmidt及びThompson(米国特許第6,416,951号)は、RNAをオリゴヌクレオチドとハイブリダイズすること、及びインターカレーション色素の存在下でハイブリダイズすることによりハイブリダイゼーションのキネティックスをリアルタイムに測定すること、又は標識を組込み且つ非標識オリゴヌクレオチドの存在下での色素又は標識のシグナルの分光学的特性を測定することを含む、機能的アンチセンス物質を同定する方法を説明している。加えて、例えば、自己相補性の非存在、ヘアピンループの非存在、安定したホモ二量体及び二重鎖形成の非存在(kcal/molで予測されたエネルギーにより評価される安定性)を含む、当業者により認められた様々な基準を利用し、好適なアンチセンスオリゴヌクレオチド配列又はアンチセンス標的を予測する、様々なコンピュータプログラムのいずれかを利用することができる。そのようなコンピュータプログラムの例は、容易に利用可能であり、当業者に公知であり、且つOLIGO 4又はOLIGO 6プログラム(Molecular Biology Insights社、Cascade, CO)及びOligo Techプログラム(Oligo Therapeutics社、Wilsonville, OR)を含む。加えて、本発明に適したアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション条件下でのオリゴヌクレオチドライブラリー、又は核酸分子のライブラリーのスクリーニング、並びに標的RNA又は核酸にハイブリダイズするものの選択により同定されることができる(例えば、米国特許第6,500,615号参照)。Mishra及びToulmeもまた、標的に結合するオリゴヌクレオチドの選択的増幅を基に選択手順を開発した(Mishraらの文献、(1994) Life Sciences 317:977-982)。オリゴヌクレオチドはまた、RNAse Hによる標的RNAの切断を媒介するそれらの能力による、切断断片の選択及び特徴づけによっても、選択することができる(Hoらの文献、(1996) Nucl Acids Res 24:1901-1907;Hoらの文献、(1998) Nature Biotechnology 16:59-630)。オリゴヌクレオチドの作製及びRNA分子のGGGAモチーフへの標的化も、説明されている(米国特許第6,277,981号)。
【0123】
アンチセンス核酸は、特にオリゴヌクレオチドであり、専らデオキシリボ-ヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、又はそれら両方の組合せからなり得る。アンチセンス核酸は、合成オリゴヌクレオチドであることができる。オリゴヌクレオチドは、望ましいならば、安定性及び/又は選択性を向上するために、化学修飾されることができる。本発明のために想定されたいくつか特定のオリゴヌクレオチドの具体例は、修飾された骨格、例えば、ホスホロチオエート、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、短鎖アルキル若しくはシクロアルキル糖間連結、又は短鎖ヘテロ原子式若しくは複素環式糖間連結を含むものを含む。オリゴヌクレオチドは、細胞内ヌクレアーゼにより分解されやすいので、これらの修飾は、例えば、ホスホジエステル結合の遊離酸素の代わりのイオウ基の使用を含むことができる。この修飾は、ホスホロチオエート連結と称される。ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドは、水溶性で、ポリアニオン性であり、且つ内在性ヌクレアーゼに対し抵抗性である。加えて、ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドがその標的物部位にハイブリダイズする場合、RNA-DNA二重鎖は、内在性酵素リボヌクレアーゼ(RNase)Hを活性化し、これはハイブリッド分子のmRNA成分を切断する。オリゴヌクレオチドはまた、1以上の置換された糖部分を含むことができる。特定のオリゴヌクレオチドは、2'位に下記の1つを含む:OH、SH、SCH3、F、OCN、ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリル;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ;置換シリル;RNA切断基;レポーター基;インターカレーター;オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善する基;又は、オリゴヌクレオチドの薬力学特性を改善する基及び同様の特性を有する他の置換基。同様の修飾を、オリゴヌクレオチドの他の位置に、特に3'末端ヌクレオチド上の糖の3'位及び5'末端ヌクレオチドの5'位に行うことができる。
【0124】
加えて、ホスホロアミダイト及びポリアミド(ペプチド)連結を伴うアンチセンスオリゴヌクレオチドを、合成することができる。これらの分子は、ヌクレアーゼ分解に対し非常に抵抗性である。更に、アンチセンスオリゴヌクレオチドのその標的物部位への結合の安定性を増強し且つこれを促進するために、化学基を糖部分の2'炭素及びピリミジンの5炭素(C-5)に付加することができる。修飾は、2'-デオキシ、O-ペントキシ、O-プロポキシ、O-メトキシ、フルオロ、メトキシエトキシホスホロチオエート、修飾された塩基に加え、当業者に公知の他の修飾を含むことができる。
【0125】
標的物のレベルを低下する発現-阻害性物質の別の型は、リボザイムである。リボザイムは、触媒ドメインと基質結合ドメインとを個別に有する触媒的RNA分子(RNA酵素)である。基質結合配列は、ヌクレオチド相補性により、及び恐らくその標的物配列との非水素結合相互作用により一緒にされる。触媒部分は、標的物RNAを特異的部位で切断する。リボザイムの基質ドメインは、特定されたmRNA配列へこれを向けるように操作することができる。リボザイムは、標的物mRNAを認識し、その後これに相補的塩基対合により結合する。一旦これが正確な標的物部位へ結合されたならば、リボザイムは、酵素のように働き、標的物mRNAを切断する。リボザイムによるmRNAの切断は、対応するポリペプチドの合成を指示するその能力を破壊する。一旦リボザイムがその標的物配列を切断したならば、これは放出され、且つ他のmRNAで結合及び切断を繰り返すことができる。
【0126】
リボザイム型の例は、ハンマーヘッドモチーフ、ヘアピンモチーフ、デルタ型肝炎ウイルス、グループIイントロン又はRNaseP RNA(RNAガイド配列に会合されている)モチーフ又はニューロスポラVS RNAモチーフを含む。ハンマーヘッド構造又はヘアピン構造を有するリボザイムは、これらの触媒RNA分子は、真核プロモーターから細胞内で発現され得るので、容易に調製される(Chenらの文献、(1992) Nucleic Acids Res. 20:4581-9)。本発明のリボザイムは、好適なDNAベクターから、真核細胞において発現され得る。望ましいならば、リボザイムの活性は、第二のリボザイムによる、一次転写物からのその放出により増強される(Venturaらの文献、(1993) Nucleic Acids Res. 21:3249-55)。
【0127】
リボザイムは、転写後に標的物mRNAへハイブリダイズする配列が側方に位置したリボザイム触媒ドメイン(20ヌクレオチド)と、オリゴデオキシリボヌクレオチドを組合せることにより、化学合成することができる。オリゴデオキシリボヌクレオチドは、基質結合配列をプライマーとして使用することにより、増幅される。この増幅産物は、真核発現ベクターへクローニングされる。
【0128】
リボザイムは、DNA、RNA、又はウイルスベクターへ挿入された転写単位から発現される。リボザイム配列の転写は、真核RNAポリメラーゼI(pol I)、RNAポリメラーゼII(pol II)、又はRNAポリメラーゼIII(pol III)のプロモーターから駆動される。pol II又はpol IIIプロモーター由来の転写物は、全ての細胞において高レベルで発現され;所与の細胞型における所与のpol IIプロモーターのレベルは、近くの遺伝子調節配列により左右されるであろう。原核RNAポリメラーゼ酵素が、好適な細胞において発現される場合には、原核RNAポリメラーゼプロモーターも使用される(Gao及びHuangの文献、(1993) Nucleic Acids Res. 21:2867-72)。これらのプロモーターから発現されたリボザイムは、哺乳類細胞において機能し得ることが示されている(Kashani-Sabetらの文献、(1992) Antisense Res. Dev. 2:3-15)。
【0129】
特定の実施態様において、本発明の方法は、センス鎖と相補的な17-25ヌクレオチドのアンチセンス鎖を含むアンチセンスポリヌクレオチド、siRNA又はshRNAを用いて実践され、ここで該センス鎖は、標的物ポリヌクレオチドの17-25連続ヌクレオチドから選択される。
【0130】
特定の阻害性物質は、低分子干渉RNA(siRNA、特に低分子ヘアピンRNA、“shRNA”)である。siRNA、特にshRNAは、サイレンシングされるRNAと配列が相同である二本鎖RNA(dsRNA)により、遺伝子サイレンシングの転写後プロセスを媒介する。本発明のsiRNAは、配列番号:1-25に記載された配列の群から選択された、より特定すると配列番号:64-109に記載された配列の群から選択された、近接17-25ヌクレオチド配列に相補的又は相同である、センス鎖15-30、特に17-30、最も特定すると17-25ヌクレオチド、並びに該センス鎖に相補的なアンチセンス鎖15-30、特に17-30、最も特定すると17-25、より具体的には19-21ヌクレオチドを含む。より特定すると、本発明のsiRNAは、配列番号:64-109を含む配列の群から選択されるセンス鎖を含む。最も特定のsiRNAは、互いに100%相補的であるセンス鎖及びアンチセンス鎖並びに標的物ポリヌクレオチド配列を含む。特にsiRNAは更に、センス鎖及びアンチセンス鎖を連結するループ領域を含む。
【0131】
本発明の自己相補性一本鎖shRNA分子ポリヌクレオチドは、ループ領域リンカーにより接続されたセンス部分とアンチセンス部分を含む。特にループ領域配列は、長さ4-30ヌクレオチド、より特定すると長さ5-15ヌクレオチド、及び最も特定すると長さ8又は12ヌクレオチドである。最も特定の実施態様において、リンカー配列は、
【化1】
である。自己相補性一本鎖siRNAは、ヘアピンループを形成し、通常のdsRNAよりもより安定している。加えて、これらはベクターからより容易に作製される。
【0132】
アンチセンスRNAと類似したsiRNAは、核酸分解に対する抵抗性を確実にするか、又は活性を増強するか、又は細胞分布を増強するか、又は細胞取り込みを増強するように修飾されることができ、そのような修飾は、修飾されたヌクレオシド間の連鎖、修飾された核酸塩基、修飾された糖及び/又はsiRNAの1以上の部分若しくは複合体への化学連鎖からなることができる。ヌクレオチド配列は、siRNA設計則に従わないヌクレオチド配列と比べ標的物配列の改善された減少をもたらすという、siRNA設計則に従い選択される(これらの規則の考察及びsiRNAの調製例について、WO 2004/094636及びUS 2003/0198627が引用により本明細書中に組み込まれている)。
【0133】
特定の阻害性物質は、マイクロRNA("miRNA"と称す)を含む。miRNAは、低分子の非コードRNAであり、標的メッセンジャーRNA(mRNA)転写物上の相補部位への結合により遺伝子発現を制御する多くの真核種において認められる調節分子のクラスに属する。
【0134】
インビボにおいて、miRNAは、およそ70ヌクレオチドのpre-miRNAへ核内でプロセッシングされるより大型のRNA前駆体(pre-miRNAと称される)から作製され、pre-miRNAは、不完全なステムループ構造へフォールドされる。これらのpre-miRNAは、細胞質内で追加のプロセッシング工程を受け、ここで長さ18-25ヌクレオチドの成熟miRNAが、RNaseIII酵素によりpre-miRNAヘアピンの片側から切断される。
【0135】
miRNAは、2つの様式で遺伝子発現を調節することが示されている。第一に、miRNAと正確に相補性であるタンパク質-コードしているmRNA配列に結合するmiRNAは、RNA-媒介型干渉(RNAi)経路を誘導する。メッセンジャーRNA標的は、RISC複合体中のリボヌクレアーゼにより切断される。第二の機序においては、mRNA転写物上の不完全な相補性部位に結合するmiRNAは、転写後レベルで遺伝子調節を指示するが、それらのmRNA標的は切断しない。植物及び動物の両方において同定されたmiRNAは、それらの遺伝子標的に対し翻訳制御を発揮するためにこの機序を使用する。
【0136】
(低分子量化合物)
特定の薬物候補化合物は、低分子量化合物である。例えば分子量500ダルトン以下の低分子量化合物は恐らく、生物学的システムにおいて良好な吸収及び浸透を有し、且つ結果的に分子量500ダルトンを上回る化合物よりも成功する薬物候補である可能性がより大きい(Lipinskiらの文献、2001)。ペプチドは、別の特定の薬物候補化合物クラスを構成する。ペプチドは、優れた薬物候補であることができ、妊娠促進ホルモン及び血小板凝集阻害剤などの、商業的に価値のあるペプチドの複数の例が存在する。天然の化合物は、薬物候補化合物の別の特定のクラスである。そのような化合物は、天然の供給源中に発見され、且つそこから抽出され、これはその後合成されることができる。脂質は、別の特定の薬物候補化合物のクラスである。
【0137】
(抗体)
別の薬物候補化合物の好ましいクラスは、抗体である。本発明はまた、標的物に対して向けられた抗体も提供する。これらの抗体は、細胞内の標的物へ結合するように内在性に産生されるか、又は細胞の外側に存在する標的物ポリペプチドに結合するように組織に添加されてよい。これらの抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であってよい。本発明は、キメラ抗体、単鎖抗体及びヒト化抗体、更にはFAb断片及びFAb発現ライブラリーの産物、並びにFv断片及びFv発現ライブラリーの産物も含む。
【0138】
いくつかの実施態様において、ポリクローナル抗体が、本発明の実践において使用され得る。当業者は、ポリクローナル抗体の調製方法を知っている。ポリクローナル抗体は、例えば免疫化物質及び望ましいならばアジュバントの1回以上の注射により、哺乳類において産生され得る。通常、免疫化物質及び/又はアジュバントは、哺乳類に、皮下若しくは腹腔内の反復注射により注射されるであろう。抗体はまた、無傷の標的物タンパク質若しくはポリペプチドに対して、又は標的物タンパク質若しくはポリペプチドの断片、複合体を含む誘導体、若しくは細胞膜に包埋された標的物など他のエピトープに対して、又は抗体可変領域のライブラリー、例えばファージディスプレイライブラリーなどに対しても産生され得る。
【0139】
免疫化物質を、免疫化される哺乳類において免疫原性であることが公知であるタンパク質に複合することも有用であり得る。そのような免疫原性タンパク質の例としては、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、及び大豆トリプシンインヒビターが挙げられるが、これらに限定されるものではない。使用することができるアジュバントの例は、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノミコラート)を含む。当業者は過度の実験を行うことなく、免疫化プロトコールを選択することができる。
【0140】
一部の実施態様において、抗体は、モノクローナル抗体であることができる。モノクローナル抗体は、当該技術分野において公知の方法を用い、調製することができる。本発明のモノクローナル抗体は、該抗体に対する免疫応答の開始(mounting)から宿主を保護するために「ヒト化」されてよい。「ヒト化抗体」は、その相補性決定領域(CDR)並びに/又は軽鎖及び/若しくは重鎖可変ドメインフレームワークの他の部分が、非-ヒト免疫グロブリンに由来するが、その分子の残余部分は、1以上のヒト免疫グロブリンに由来するものである。ヒト化抗体はまた、ドナー又はアクセプターの非修飾軽鎖又はキメラ軽鎖に会合されたヒト化重鎖、又はその逆を特徴とする抗体も含む。抗体のヒト化は、当該技術分野において公知の方法により達成することができる(例えば、Mark及びPadlanの文献、(1994)「実験薬理学ハンドブック(The Handbook of Experimental Pharmacology)」、113号の「第4章 モノクローナル抗体のヒト化」、Springer-Verlag社、New York参照)。トランスジェニック動物を使用し、ヒト化抗体を発現することができる。
【0141】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリーを含む当該技術分野において公知の様々な技術を使用し、作製することができる(Hoogenboom及びWinterの文献、(1991) J. Mol. Biol. 227:381-8;Marksらの文献、(1991) J. Mol. Biol. 222:581-97)。Coleらの技術及びBoernerらの技術も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である(Coleらの文献、(1985) 「モノクローナル抗体及び癌療法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)」、Alan R. Liss、77頁;Boernerらの文献、(1991). J. Immunol., 147(1):86-95)。
【0142】
単鎖抗体の作製のための当該技術分野において公知の技術は、標的物に対する単鎖抗体を作製するために適応させることができる。これらの抗体は、一価抗体であることができる。一価抗体の調製方法は、当該技術分野において周知である。例えば、一つの方法は、免疫グロブリン軽鎖及び修飾された重鎖の組換え発現に関与している。重鎖は、重鎖の架橋を防止するために、一般にFc領域の任意のポイントで切断される。あるいは、関連のあるシステイン残基は、架橋を防止するために、別のアミノ酸残基により置換されるか、又は欠失される。
【0143】
二重特異性抗体は、少なくとも2種の異なる抗原に、好ましくは細胞-表面タンパク質又は受容体又は受容体サブユニットに結合特異性を持つ、モノクローナル性であり、好ましくはヒト又はヒト化された抗体である。存在する場合、この結合特異性の一つは、標的物の一つのドメインについてであり;他方は、標的物の別のドメインについてである。
【0144】
二重特異性抗体の作製方法は、当該技術分野において公知である。従来、二重特異性抗体の組換え作製は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現を基にしており、ここで2つの重鎖は、異なる特異性を有する(Milstein及びCuelloの文献、(1983) Nature 305:537-9)。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダム類別のために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10種の異なる抗体分子の可能性のある混合物を作製し、そのただ一種のみが、正確な二重特異性構造を有する。アフィニティクロマトグラフィー工程は、通常この正確な分子の精製を実現する。同様の手順が、Trauneekerらの文献、(1991) EMBO J. 10:3655-9において明らかにされている。
【0145】
本発明の方法の特別な態様は、標的物ポリペプチドと選択的に相互作用することが可能である細胞内結合タンパク質をコードしているポリヌクレオチドの誘導された発現により、標的物ポリペプチドの発現をダウンレギュレーション又はブロックすることに関連している。細胞内結合タンパク質は、そこで発現され且つポリペプチドの機能を中和する細胞内のポリペプチドと選択的相互作用又は結合することがが可能である活性阻害性物質及び任意のタンパク質を含む。特に細胞内結合タンパク質は、配列番号:26-50の標的物ポリペプチドのエピトープへの結合親和性を有する抗体、特に中和抗体、又は抗体若しくは中和抗体の断片である。より特定すると、細胞内結合タンパク質は、単鎖抗体である。
【0146】
(医薬組成物、関連した使用及び方法)
標的物ポリペプチドへ特異的に結合する抗体又は断片、並びにアンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)及び短ヘアピンRNA(shRNA)からなる群から選択される発現阻害性物質は、マクロファージのM2マクロファージへの分化に因果関係があるか又はこれに起因する哺乳類における状態の治療のために治療薬として使用することができる。
【0147】
本発明は、線維化状態の治療において使用するための、標的物ポリペプチドに特異的に結合する抗体又はそれらの断片を含有する医薬組成物に関する。特定の実施態様において、線維化状態は、マクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した線維化疾患である。
【0148】
特定の態様において、本発明は、線維化疾患を有するか又は有するリスクのある哺乳類を治療する方法を提供し、該方法は、標的物ポリペプチドに特異的に結合する抗体又はそれらの断片を含有する1種以上の医薬組成物の状態を治療するか又は状態を予防する有効量を投与することを含む。特定の態様において、本発明は、特発性肺線維症(IPF)、嚢胞性線維症、医原性薬剤誘発性線維症を含む様々な病因の他のびまん性実質性肺疾患、職業及び/又は環境が誘導した線維症、肉芽腫性疾患(サルコイドーシス、過敏肺炎)、膠原血管病、肺胞タンパク症、ランゲルハンス細胞肉芽腫症、リンパ脈管筋腫症、遺伝性疾患(ハーマンスキー・パドラック症候群、結節硬化症、神経線維腫症、代謝性蓄積症、家族性間質性肺疾患)、放射線誘導性線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、強皮症、ブレオマイシン誘導性肺線維症、慢性喘息、珪肺、アスベスト誘導性肺線維症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、腎線維症、尿細管間質性線維症、糸球体腎炎、巣状分節性糸球体硬化症、IgA腎症、高血圧、アルポート症候群、消化管線維症、肝線維症、肝硬変、アルコール誘導性肝線維症、毒物/薬物誘導性肝線維症、ヘモクロマトーシス、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、胆管損傷、原発性胆汁性肝硬変症、感染症誘導性肝線維症、ウイルス誘導性肝線維症、自己免疫肝炎、角膜瘢痕化、肥厚性瘢痕化、デュピュイトラン病、ケロイド、皮膚線維症、皮膚強皮症、全身性硬化症、脊髄損傷/線維症、骨髄線維症、血管再狭窄、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化、ヴェーゲナー肉芽腫症、ペイロニー病、及び/又はマクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した疾患を有するか又は有するリスクのある哺乳類を治療する方法を提供する。具体的実施態様において、該抗体は、モノクローナル抗体である。代替の実施態様において、該抗体は、単鎖抗体である。特定の実施態様において、該線維化状態は、マクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した線維化状態である。
【0149】
別の態様において、本発明は、線維化状態の治療及び/又は予防において使用するための標的物ポリペプチドに特異的に結合する抗体又はそれらの断片を提供する。具体的実施態様において、該線維化状態は、特発性肺線維症(IPF)、嚢胞性線維症、医原性薬剤誘発性線維症を含む様々な病因の他のびまん性実質性肺疾患、職業及び/又は環境が誘導した線維症、肉芽腫性疾患(サルコイドーシス、過敏肺炎)、膠原血管病、肺胞タンパク症、ランゲルハンス細胞肉芽腫症、リンパ脈管筋腫症、遺伝性疾患(ハーマンスキー・パドラック症候群、結節硬化症、神経線維腫症、代謝性蓄積症、家族性間質性肺疾患)、放射線誘導性線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、強皮症、ブレオマイシン誘導性肺線維症、慢性喘息、珪肺、アスベスト誘導性肺線維症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、腎線維症、尿細管間質性線維症、糸球体腎炎、巣状分節性糸球体硬化症、IgA腎症、高血圧、アルポート症候群、消化管線維症、肝線維症、肝硬変、アルコール誘導性肝線維症、毒物/薬物誘導性肝線維症、ヘモクロマトーシス、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、胆管損傷、原発性胆汁性肝硬変症、感染症誘導性肝線維症、ウイルス誘導性肝線維症、自己免疫肝炎、角膜瘢痕化、肥厚性瘢痕化、デュピュイトラン病、ケロイド、皮膚線維症、皮膚強皮症、全身性硬化症、脊髄損傷/線維症、骨髄線維症、血管再狭窄、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化、ヴェーゲナー肉芽腫症、ペイロニー病、及び/又はマクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した疾患から選択される。具体的実施態様において、該抗体は、モノクローナル抗体である。代替の実施態様において、該抗体は、単鎖抗体である。特定の実施態様において、該線維化状態は、マクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した線維化状態である。
【0150】
更に別の態様において、本発明は、線維化状態の治療、又は発症予防のための医薬品の製造において使用するための、標的物ポリペプチドに特異的に結合する抗体若しくはそれらの断片、又は標的物ポリペプチドに特異的に結合する抗体若しくはそれらの断片を含有する医薬組成物を提供する。具体的実施態様において、該線維化状態は、特発性肺線維症(IPF)、嚢胞性線維症、医原性薬剤誘発性線維症を含む様々な病因の他のびまん性実質性肺疾患、職業及び/又は環境が誘導した線維症、肉芽腫性疾患(サルコイドーシス、過敏肺炎)、膠原血管病、肺胞タンパク症、ランゲルハンス細胞肉芽腫症、リンパ脈管筋腫症、遺伝性疾患(ハーマンスキー・パドラック症候群、結節硬化症、神経線維腫症、代謝性蓄積症、家族性間質性肺疾患)、放射線誘導性線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、強皮症、ブレオマイシン誘導性肺線維症、慢性喘息、珪肺、アスベスト誘導性肺線維症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、腎線維症、尿細管間質性線維症、糸球体腎炎、巣状分節性糸球体硬化症、IgA腎症、高血圧、アルポート症候群、消化管線維症、肝線維症、肝硬変、アルコール誘導性肝線維症、毒物/薬物誘導性肝線維症、ヘモクロマトーシス、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、胆管損傷、原発性胆汁性肝硬変症、感染症誘導性肝線維症、ウイルス誘導性肝線維症、自己免疫肝炎、角膜瘢痕化、肥厚性瘢痕化、デュピュイトラン病、ケロイド、皮膚線維症、皮膚強皮症、全身性硬化症、脊髄損傷/線維症、骨髄線維症、血管再狭窄、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化、ヴェーゲナー肉芽腫症、ペイロニー病、及び/又はマクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した疾患から選択される。具体的実施態様において、該抗体は、モノクローナル抗体である。代替の実施態様において、該抗体は、単鎖抗体である。特定の実施態様において、該線維化状態は、マクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した線維化状態である。
【0151】
本方法の特定の投与計画は、対象における異常な線維症のレベルを低下するのに十分な期間、及び好ましくは該線維化状態の原因となるプロセスを終結するのに十分な期間、標的物ポリペプチドに特異的に結合する抗体又はそれらの断片の有効量を、マクロファージのM2マクロファージへの分化に関与している線維化疾患に罹患している対象へ投与することを含む。本方法の特別な実施態様は、線維化疾患に罹患しているか又はこれを発症し易い対象患者へ、該患者における線維化状態を各々軽減又は防止するのに十分な期間、及び好ましくは該線維化状態の原因となるプロセスを終結するのに十分な期間、標的物ポリペプチドに特異的に結合する抗体又はそれらの断片の有効量を投与することを含む。具体的実施態様において、該抗体は、モノクローナル抗体である。代替の実施態様において、該抗体は、単鎖抗体である。特定の実施態様において、該線維化状態は、マクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した線維化状態である。
【0152】
本発明は、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、及び短ヘアピンRNA(shRNA)からなる群から選択される、該物質を含有する組成物に更に関し、ここで該物質は、配列番号:1-25からなる群から選択される核酸配列の約17〜約30の近接ヌクレオチドの天然に存在するポリヌクレオチド配列に相補的な、又はこれから操作された核酸配列を含む。これらの物質は、そうでなければ本明細書において発現阻害性物質と称される。
【0153】
特定の態様において、本発明は、線維症を有するか又は有するリスクのある哺乳類を治療する方法を提供し、該方法は、該発現阻害性物質を含有する1種以上の医薬組成物の状態を治療するか又は状態を予防する有効量を投与することを含む。特定の態様において、本発明は、特発性肺線維症(IPF)、嚢胞性線維症、医原性薬剤誘発性線維症を含む様々な病因の他のびまん性実質性肺疾患、職業及び/又は環境が誘導した線維症、肉芽腫性疾患(サルコイドーシス、過敏肺炎)、膠原血管病、肺胞タンパク症、ランゲルハンス細胞肉芽腫症、リンパ脈管筋腫症、遺伝性疾患(ハーマンスキー・パドラック症候群、結節硬化症、神経線維腫症、代謝性蓄積症、家族性間質性肺疾患)、放射線誘導性線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、強皮症、ブレオマイシン誘導性肺線維症、慢性喘息、珪肺、アスベスト誘導性肺線維症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、腎線維症、尿細管間質性線維症、糸球体腎炎、巣状分節性糸球体硬化症、IgA腎症、高血圧、アルポート症候群、消化管線維症、肝線維症、肝硬変、アルコール誘導性肝線維症、毒物/薬物誘導性肝線維症、ヘモクロマトーシス、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、胆管損傷、原発性胆汁性肝硬変症、感染症誘導性肝線維症、ウイルス誘導性肝線維症、自己免疫肝炎、角膜瘢痕化、肥厚性瘢痕化、デュピュイトラン病、ケロイド、皮膚線維症、皮膚強皮症、全身性硬化症、脊髄損傷/線維症、骨髄線維症、血管再狭窄、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化、ヴェーゲナー肉芽腫症、ペイロニー病、及び/又はマクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した疾患を有するか又は有するリスクのある哺乳類を治療する方法を提供する。特定の実施態様において、該線維化状態は、マクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した線維化状態である。
【0154】
別の態様において、本発明は、線維化状態の治療及び/又は発症予防において使用するための発現阻害性物質を提供する。具体的実施態様において、該線維化状態は、特発性肺線維症(IPF)、嚢胞性線維症、医原性薬剤誘発性線維症を含む様々な病因の他のびまん性実質性肺疾患、職業及び/又は環境が誘導した線維症、肉芽腫性疾患(サルコイドーシス、過敏肺炎)、膠原血管病、肺胞タンパク症、ランゲルハンス細胞肉芽腫症、リンパ脈管筋腫症、遺伝性疾患(ハーマンスキー・パドラック症候群、結節硬化症、神経線維腫症、代謝性蓄積症、家族性間質性肺疾患)、放射線誘導性線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、強皮症、ブレオマイシン誘導性肺線維症、慢性喘息、珪肺、アスベスト誘導性肺線維症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、腎線維症、尿細管間質性線維症、糸球体腎炎、巣状分節性糸球体硬化症、IgA腎症、高血圧、アルポート症候群、消化管線維症、肝線維症、肝硬変、アルコール誘導性肝線維症、毒物/薬物誘導性肝線維症、ヘモクロマトーシス、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、胆管損傷、原発性胆汁性肝硬変症、感染症誘導性肝線維症、ウイルス誘導性肝線維症、自己免疫肝炎、角膜瘢痕化、肥厚性瘢痕化、デュピュイトラン病、ケロイド、皮膚線維症、皮膚強皮症、全身性硬化症、脊髄損傷/線維症、骨髄線維症、血管再狭窄、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化、ヴェーゲナー肉芽腫症、ペイロニー病、及び/又はマクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した疾患から選択される。特定の実施態様において、該線維化状態は、マクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した線維化状態である。
【0155】
更に別の態様において、本発明は、線維化状態の治療、又は発症予防のための医薬品の製造において使用するための、発現阻害性物質、又は該発現阻害性物質を含有する医薬組成物を提供する。具体的実施態様において、該線維化状態は、特発性肺線維症(IPF)、嚢胞性線維症、医原性薬剤誘発性線維症を含む様々な病因の他のびまん性実質性肺疾患、職業及び/又は環境が誘導した線維症、肉芽腫性疾患(サルコイドーシス、過敏肺炎)、膠原血管病、肺胞タンパク症、ランゲルハンス細胞肉芽腫症、リンパ脈管筋腫症、遺伝性疾患(ハーマンスキー・パドラック症候群、結節硬化症、神経線維腫症、代謝性蓄積症、家族性間質性肺疾患)、放射線誘導性線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、強皮症、ブレオマイシン誘導性肺線維症、慢性喘息、珪肺、アスベスト誘導性肺線維症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、腎線維症、尿細管間質性線維症、糸球体腎炎、巣状分節性糸球体硬化症、IgA腎症、高血圧、アルポート症候群、消化管線維症、肝線維症、肝硬変、アルコール誘導性肝線維症、毒物/薬物誘導性肝線維症、ヘモクロマトーシス、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、胆管損傷、原発性胆汁性肝硬変症、感染症誘導性肝線維症、ウイルス誘導性肝線維症、自己免疫肝炎、角膜瘢痕化、肥厚性瘢痕化、デュピュイトラン病、ケロイド、皮膚線維症、皮膚強皮症、全身性硬化症、脊髄損傷/線維症、骨髄線維症、血管再狭窄、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化、ヴェーゲナー肉芽腫症、ペイロニー病、及び/又はマクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した疾患から選択される。特定の実施態様において、該線維化状態は、マクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した線維化状態である。
【0156】
本方法の特定の投与計画は、対象における異常な線維症のレベルを低下するのに十分な期間、及び好ましくは該線維化状態の原因となるプロセスを終結するのに十分な期間、発現阻害性物質の有効量を、マクロファージのM2マクロファージへの分化に関与している線維化疾患に罹患している対象へ投与することを含む。本方法の特別な実施態様は、線維化疾患に罹患しているか又は発症し易い対象患者への、該患者における線維化状態を各々軽減又は防止するのに十分な期間、及び好ましくは該線維化状態の原因となるプロセスを終結するのに十分な期間、標的物ポリペプチドに特異的に結合する抗体又はそれらの断片の有効量を投与することを含む。特定の実施態様において、該線維化状態は、マクロファージのM2マクロファージへの分化に関連した線維化状態である。
【0157】
本発明の別の態様は、標的物ポリペプチドの発現の阻害が可能であり且つ発現阻害性物質として説明されたポリヌクレオチドを発現することが可能なDNA発現ベクターを含有する組成物に関する。
【0158】
本発明は、標的物遺伝子の発現、具体的には線維症に関連したそれらの標的物遺伝子の発現を調節するのに有用な、及び小型核酸分子を使用するRNA干渉(RNAi)によりそのような状態を治療するのに有用な、化合物、組成物、及び方法を提供する。特に本発明は、標的物遺伝子並びに/又は標的物遺伝子発現及び/若しくは活性の経路に関与した他の遺伝子の発現を調節するために使用される、小型核酸分子、すなわち、低分子干渉核酸(siNA)分子であり、非限定的に低分子干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロ-RNA(miRNA)、短ヘアピンRNA(shRNA)及び環状RNA分子を含む方法を特徴としている。
【0159】
これらの組成物及び方法の特定の態様は、標的物と選択的に相互作用することが可能である細胞内結合タンパク質をコードしているポリヌクレオチドの誘導された発現により、標的物の発現をダウンレギュレーション又はブロックすることに関する。細胞内結合タンパク質は、そこでポリペプチドが発現され且つその機能が中和される細胞内のポリペプチドと選択的に相互作用するか又は結合することが可能な任意のタンパク質を含む。好ましくは、細胞内結合タンパク質は、配列番号:26-50からなる群から選択される標的物のエピトープに結合親和性を有する中和抗体又は中和抗体の断片である。より好ましくは、細胞内結合タンパク質は、単鎖抗体である。
【0160】
本発明の抗体は、単にボーラスとして、時間をかけた注入、又はボーラスとして及び時間をかけた注入の両方で投与されるよう、送達されてよい。当業者は、タンパク質についてよりもポリヌクレオチドについての様々な製剤を利用することができる。同様に、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの送達は、特定の細胞、状態、位置などに特異的であろう。
【0161】
この組成物の特定の実施態様は、アンチセンスRNA、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、配列番号:1-25からなる群から選択される標的物をコードしているポリリボヌクレオチドを切断するリボザイム、配列番号:1-25からなる群から選択される標的物をコードしているポリリボヌクレオチドの部分に十分に相同であり、その結果siRNA又はマイクロRNAは、標的物ポリリボヌクレオチドの標的物ポリペプチドへの翻訳と相互作用する低分子干渉RNA(siRNA)及びマイクロRNAからなる群から選択される発現-阻害する物質を含む。
【0162】
細胞において、発現阻害性物質を発現するポリヌクレオチド、又は標的物ポリペプチドを発現するポリヌクレオチドは、特にベクター内に含まれる。このポリ核酸は、核酸配列の発現が可能なシグナルへ、機能的に連結され、且つ好ましくは一旦ベクターが細胞へ導入されるとアンチセンス核酸を発現する組換えベクター構築体を利用し細胞へ導入される。様々なウイルス-ベースのシステムが、利用可能であり、これはアデノウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス又はセンダイウイルスベクター系を含み、且つ全て、標的細胞において発現-阻害する物質のポリヌクレオチド配列又は標的物ポリペプチドを発現するポリヌクレオチドを導入及び発現するために使用され得る。
【0163】
特に、本発明の方法において使用されるウイルスベクターは、複製欠損である。そのような複製欠損のベクターは、感染細胞内でのウイルスの複製に必要である少なくとも1つの領域を通常パッケージしているであろう。これらの領域は、当業者に公知の任意の技術により、除外するか(全体又は一部)、又は非機能性とするかのいずれかであることができる。これらの技術は、全体の除去、置換、部分欠失又は必須(複製に)領域への1以上の塩基の付加を含む。そのような技術は、遺伝子操作技術を使用するか又は変異誘発剤による処理により、インビトロにおいて(単離されたDNAにおいて)又はインサイチュにおいて行うことができる。好ましくは、複製欠損ウイルスは、ウイルス粒子を封入するのに必要である、そのゲノムの配列を保持する。
【0164】
好ましい実施態様において、ウイルスエレメントは、アデノウイルスに由来している。好ましくは、ビヒクルは、アデノウイルスキャプシドにパッケージされたアデノウイルスベクター、又はそれらの機能性部分、誘導体、及び/若しくは類縁体を含む。アデノウイルスの生物学はまた、分子レベルで比較的よくわかっている。アデノウイルスベクターに関する多くのツールが存在し、且つ開発され続けており、結果的に、アデノウイルスキャプシドを、本発明のライブラリーの組込みのための好ましいビヒクルとしている。アデノウイルスは、多種多様な細胞に感染することが可能である。しかし、異なるアデノウイルス血清型は、細胞に関する異なる選好を有する。本発明のアデノウイルスキャプシドを好ましい実施態様に入れることができる標的細胞集団と一緒にし且つ拡大するために、ビヒクルは、少なくとも2種のアデノウイルス由来のアデノウイルス線維タンパク質を含む。好ましいアデノウイルス線維タンパク質配列は、血清型17、45及び51である。これらのキメラベクターの技術又は構築及び発現は、US 2003/0180258及びUS 2004/0071660に開示されており、これらは引用により本明細書中に組み込まれている。
【0165】
好ましい実施態様において、アデノウイルス由来の核酸は、アデノウイルス後期タンパク質又はそれらの機能性部分、誘導体、及び/若しくは類縁体をコードしている核酸を含む。アデノウイルス後期タンパク質、例えばアデノウイルス線維タンパク質は、ある種の細胞にビヒクルを標的化するため、又は細胞へのビヒクルの増強された送達を誘導するために使用されることが好ましい。好ましくは、アデノウイルス由来の核酸は、アデノウイルスキャプシド全体又はそれらの機能性部分、それらの類縁体、及び/若しくは誘導体を形成することができる、全てのアデノウイルス後期タンパク質を本質的にコードしている。好ましくは、アデノウイルス由来の核酸は、アデノウイルスE2A又はそれらの機能性部分、誘導体、及び/若しくは類縁体をコードしている核酸を含む。好ましくは、アデノウイルス由来の核酸は、細胞においてアデノウイルス由来の核酸の少なくとも一部の複製を促進する、少なくとも1種のE4-領域タンパク質又はそれらの機能性部分、誘導体、及び/若しくは類縁体をコードしている核酸を含む。本出願の実施例において使用されるアデノウイルスベクターは、本発明の治療法において有用なベクターの例である。
【0166】
本発明のいくつかの実施態様は、レトロウイルスベクターシステムを使用することができる。レトロウイルスは、分裂細胞に感染する組込みウイルスであり、それらの構築は当該技術分野において公知である。レトロウイルスベクターは、MoMuLV(“モロニーマウス白血病ウイルス”)、MSV(“モロニーマウス肉腫ウイルス”)、HaSV(“ハーベイ肉腫ウイルス”);SNV(“脾臓壊死ウイルス”); RSV(“ラウス肉腫ウイルス”)及びフレンドウイルスなどの、様々な型のレトロウイルスから構築され得る。レンチウイルスベクターシステムも、本発明の実践において使用され得る。
【0167】
本発明の他の実施態様において、アデノ随伴ウイルス(“AAV”)が利用される。AAVウイルスは、感染細胞のゲノムへ安定した位置指定様式で組込まれる、比較的サイズが小さいDNAウイルスである。これらは、細胞の成長、形態又は分化にいかなる作用も誘導することなく、細胞の幅広いスペクトルに感染することができ、且つヒト病理に関与するようには見えない。
【0168】
先に考察したように、組換えウイルスを使用し、本発明において有用なポリヌクレオチド物質をコードしているDNAを導入することができる。本発明の組換えウイルスは、概して、投与量約104〜約1014pfuの形状に製剤化され且つ投与される。AAV及びアデノウイルスの場合、約106〜約1011pfuの投与量が特に使用される。用語pfu(“プラーク形成単位”)は、ビリオン浮遊液の感染力に対応しており、且つこれは好適な細胞培養物を感染させ、形成されたプラーク数を測定することにより決定される。ウイルス溶液のpfu力価を決定する技術は、先行技術において良く説明されている。
【0169】
ベクター構築において、本発明のポリヌクレオチド物質は、1以上の調節領域に連結されてよい。好適な1又は複数の調節領域の選択は、慣習的な様式であり、当業者のレベル内である。調節領域は、プロモーターを含み、且つエンハンサー、サプレッサーなどを含むことができる。
【0170】
本発明の発現ベクターにおいて使用することができるプロモーターは、構成的プロモーター及び調節された(誘導性)プロモーターの両方を含む。プロモーターは、宿主に応じて原核又は真核であることができる。本発明の実践に有用な原核生物(バクテリオファージを含む)プロモーターを挙げると、lac、lacZ、T3、T7、ラムダPr、P1、及びtrpプロモーターがある。本発明の実践に有用な真核生物(ウイルスを含む)プロモーターを挙げると、偏在性プロモーター(例えば、HPRT、ビメンチン、アクチン、チューブリン)、治療的遺伝子プロモーター(例えば、MDR型、CFTR、VIII因子)、組織特異性を発揮し且つトランスジェニック動物において利用される動物転写制御領域を含む組織-特異性プロモーター、例えば、マスト細胞において活性のあるキマーゼ遺伝子制御領域(Liaoらの文献、(1997), Journal of Biological Chemistry, 272,: 2969-2976)、リンパ球様細胞において活性のある免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlらの文献、(1984) Cell 38:647-58;Adamesらの文献、(1985) Nature 318:533-8;Alexanderらの文献、(1987) Mol. Cell. Biol. 7:1436-44)、精巣、乳房、リンパ球及びマスト細胞において活性のあるマウス乳癌ウイルス制御領域(Lederらの文献、(1986) Cell 45:485-95)、骨髄細胞において活性のあるβグロビン遺伝子制御領域(Mogramらの文献、(1985) Nature 315:338-40;Kolliasらの文献、(1986) Cell 46:89-94)、CMVプロモーター及びビスナLTR(Sidiropoulosらの文献、(2001), Gene Therapy, 8:223-231)がある。
【0171】
本発明の実践において使用することができる他のプロモーターは、分裂細胞において優先的に活性化されるプロモーター、刺激に反応するプロモーター(例えば、ステロイドホルモン受容体、レチノイン酸受容体)、テトラサイクリン-調節される転写モジュレーター、サイトメガロウイルス最初期、レトロウイルスLTR、メタロチオネイン、SV-40、E1a、及びMLPプロモーターを含む。本発明の実践において使用することができる更なるプロモーターは、樹状細胞、単球、好中球、マスト細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋細胞などの炎症に寄与するマクロファージ又は他の細胞型において、活性があり及び/又は発現されるプロモーターを含む。
【0172】
追加のベクターシステムは、ポリヌクレオチド物質の患者への導入を促進する非-ウイルスシステムを含む。例えば、所望の配列をコードしているDNAベクターは、リポフェクションによりインビボにおいて導入され得る。リポソーム-媒介性トランスフェクションで遭遇された困難を制限するように設計された合成カチオン脂質を使用し、マーカーをコードしている遺伝子のインビボトランスフェクションのためのリポソームを調製することができる(Felgnerらの文献、(1987) Proc. Natl. Acad Sci. USA 84:7413-7);Mackeyらの文献、(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8027-31;Ulmerらの文献、(1993) Science 259:1745-8を参照)。カチオン脂質の使用は、負帯電された核酸の封入を促進し、また負帯電された細胞膜との融合を促進することができる(Felgner及びRingoldの文献、(1989) Nature 337:387-8)。核酸の導入に特に有用な脂質化合物及び組成物は、国際特許公報WO 95/18863及びWO 96/17823、並びに米国特許第5,459,127号に開示されている。インビボにおいて特定の臓器へ外因性遺伝子を導入するためのリポフェクションの使用は、ある種の実践的利点を有し、トランスフェクションを特定の細胞型に指示することは、例えば、膵臓、肝臓、腎臓、及び脳などの、細胞が不均一な組織において特に利点である。脂質は、標的化を目的として、他の分子と化学的に結合されてよい。標的化されたペプチド、例えばホルモン又は神経伝達物質、及びタンパク質、例えば抗体、又は非-ペプチド分子は、リポソームに化学的に結合され得る。例えば、陽イオン性オリゴペプチド(例えば国際特許公報WO 95/21931)、DNA結合タンパク質由来のペプチド(例えば国際特許公報WO 96/25508)、又は陽イオン性ポリマー(例えば国際特許公報WO 95/21931)など、他の分子も、インビボにおいて核酸のトランスフェクションを促進するのに有用である。
【0173】
裸のDNAプラスミドとして、インビボにおいてDNAベクターを導入することも可能である(米国特許第5,693,622号、第5,589,466号及び第5,580,859号参照)。治療目的の裸のDNAベクターは、当該技術分野において公知の方法、例えばトランスフェクション、電気穿孔法、微量注入、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈降、遺伝子銃の使用、又はDNAベクター輸送体の使用などにより、所望の宿主細胞へ導入することができる(例えば、Wilsonらの文献、(1992) J. Biol. Chem. 267:963-7;Wu及びWuの文献、(1988) J. Biol. Chem. 263:14621-4;Hartmutらの1990年3月15日に出願されたカナダ特許出願第2,012,311号;Williamsらの文献、(1991). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:2726-30を参照)。受容体-媒介性DNA送達法も、使用することができる(Curielらの文献、(1992) Hum. Gene Ther. 3:147-54;Wu及びWuの文献、(1987) J. Biol. Chem. 262:4429-32)。
【0174】
生物学的に適合性のある組成物は、固形、液体、ゲル、又は他の形状であることができる組成物であり、そこでは本発明の化合物、ポリヌクレオチド、ベクター、及び抗体は、活性のある形状で、例えば生物活性に作用することが可能な形状で維持される。例えば、本発明の化合物は、標的物に対する逆のアゴニスト活性又はアンタゴニスト活性を有し;核酸は、標的物のメッセージを複製、翻訳するか、又はその相補的mRNAにハイブリダイズすることができ;ベクターは、標的細胞をトランスフェクトし、且つ前述のアンチセンス、抗体、リボザイム又はsiRNAを発現することができ;抗体は、標的物ポリペプチドドメインに結合する。
【0175】
特定の生物学的に適合性のある組成物は、塩イオンを含有する、例えばトリス、リン酸塩、又はHEPES緩衝液などを用い緩衝されている水溶液である。通常塩イオン濃度は、生理的レベルに類似している。生物学的に適合性のある溶液は、安定化剤及び保存剤を含んでよい。より好ましい実施態様において、生体適合性のある組成物は、医薬として許容し得る組成物である。そのような組成物は、局所、経口、非経口、鼻腔内、皮下、及び眼球内経路による投与のために製剤化され得る。非経口的投与は、静脈内注射、筋肉内注射、動脈内注射又は輸注技術を含むことを意味する。この組成物は、望ましいならば標準の周知の無毒の生理的に許容し得る担体、アジュバント及びビヒクルを含有する単位用量製剤で非経口的に投与されてよい。
【0176】
経口投与のための医薬組成物は、経口投与に適した用量で当該技術分野において周知の医薬として許容し得る担体を使用し、製剤化することができる。そのような担体は、患者により摂取するための、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー、懸濁剤などとして製剤化された医薬組成物であることができる。経口使用のための医薬組成物は、錠剤又は糖衣錠コアを得るために、活性化合物を固形賦形剤と一緒にし、任意に得られた混合物を粉砕し、且つ望ましいならば好適な賦形剤の添加後に、顆粒の混合物を処理することにより調製することができる。好適な賦形剤は、炭水化物又はタンパク質充填剤、例えば乳糖、ショ糖、マンニトール、又はソルビトールを含む糖質;トウモロコシ、小麦、コメ、ジャガイモ、又は他の植物由来のデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、又はカルボキシメチル-セルロースナトリウムなどの、セルロース;アラビアゴム及びトラガカントを含むガム;並びに、ゼラチン及びコラーゲンなどのタンパク質である。望ましいならば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、又はアルギン酸ナトリウムなどのそれらの塩などの、崩壊剤又は可溶化剤を添加してもよい。糖衣錠コアは、濃縮された糖溶液などの好適なコーティングと複合して使用することができ、これはまた、アラビアゴム、タルク、ポリビニル-ピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー液、及び好適な有機溶媒若しくは溶媒混合物も含むことができる。製品識別のため、又は活性化合物の量、すなわち用量を特徴づけるために、染料又は顔料を、錠剤又は糖衣錠コーティングに添加することができる。
【0177】
経口的に使用することができる医薬調製品は、ゼラチンで製造されたプッシュ-フィットカプセル、並びにゼラチンとグリセロール又はソルビトールなどのコーティングで製造された軟密封カプセルを含む。プッシュフィットカプセルは、乳糖又はデンプンなどの充填剤又は結合剤、タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、及び任意に安定剤と混合された活性成分を含むことができる。軟カプセルにおいて、活性化合物は、安定剤を含む又は含まずに、脂肪油、液体、又は液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体中に溶解又は懸濁することができる。
【0178】
特定の無菌注射用調製品は、無毒の非経口的に許容し得る溶媒又は希釈剤中の溶液又は懸濁液であることができる。医薬として許容し得る担体の例は、食塩水、緩衝食塩水、等張食塩水(例えば、リン酸一ナトリウム若しくはリン酸二ナトリウム、ナトリウム、カリウム;塩化カルシウム若しくは塩化マグネシウム、又はそのような塩の混合物)、リンゲル液、デキストロース、水、滅菌水、グリセロール、エタノール、並びにそれらの組合せである。1,3-ブタンジオール及び無菌の不揮発性油は、好都合なことに溶媒又は懸濁媒体として利用される。合成モノ-又はジ-グリセリドを含む、任意の無刺激の不揮発性油を利用することができる。オレイン酸などの脂肪酸も、注射用調製品における使用が認められる。
【0179】
本発明の化合物又は組成物は、高分子担体(類)、生分解性若しくは生体模倣マトリクスとの又はスカフォールドとの投与と組み合わせるか又はそれらの中に包埋することができる。担体、マトリクス又はスカフォールドは、組成物が組込み及び発現されることを可能にし、且つ細胞の添加又は細胞の存在と適合性がある任意の物質であることができる。特に、担体マトリクス又はスカフォールドは、主として非免疫原性であり、且つ生分解性である。生分解性物質の例としては、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ヒアルロン酸、腸線縫合糸材料、ゼラチン、セルロース、ニトロセルロース、コラーゲン、アルブミン、フィブリン、アルギン酸塩、綿又は他の天然に存在する生分解性物質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。マトリクス又はスカフォールド材料を、投与又は移植前に、例えばエチレンオキシドによる処理又はγ線照射又は電子線照射により、滅菌することは好ましい。加えて、以下を含むが、これらに限定されるものではない多くの他の材料を、スカフォールド又はフレームワーク構造を形成するために使用することができる:ナイロン(ポリアミド)、ダクロン(ポリエステル)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリビニル化合物(例えばポリ塩化ビニル)、ポリカーボネート(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン)、サーマノックス(TPX)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、及びポリ乳酸-グリコール酸(PLGA)などのヒドロキシ酸のポリマー、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリホスファゼン、及び様々なポリヒドロキシアルカン酸エステル、並びにそれらの組合せ。適したマトリクスは、高分子メッシュ又はスポンジ及び高分子ヒドロゲルを含む。特定の実施態様において、マトリクスは、1年未満の期間かけて、より特定すると6ヶ月未満かけて、最も特定すると2〜10週間かけて、生分解性である。このポリマー組成物並びに製造方法は、分解速度を決定するために使用することができる。例えば、漸増量のポリ乳酸とポリグリコール酸の混合は、分解時間を短縮する。使用することができるポリグリコール酸のメッシュは、例えば、手術用備品会社(例えば、Ethicon社、N.J)から、商業的に入手することができる。概してこれらのポリマーは、水、緩衝された塩溶液などの水溶液、又は帯電された側基を有する水性アルコール溶液、若しくはそれらの一価のイオン性塩中に、少なくとも部分的に可溶性である。
【0180】
組成物媒体はまた、薬物吸収スポンジとして働くことができる親水性ポリアクリル酸ポリマーなどの、任意の生体適合性又は非-細胞毒性のホモ-又はヘテロ-ポリマーから調製されるヒドロゲルであることができる。特にエチレン及び/又はプロピレンオキシドから得られるものなど、それらのいくつかは、商業的に入手可能である。ヒドロゲルは、例えば外科的介入時に、治療される組織の表面上に直接沈着され得る。
【0181】
本発明の医薬組成物の実施態様は、本発明の物質をコードしている複製欠損組換えウイルスベクター及びポロキサマーなどのトランスフェクションエンハンサーを含む。ポロキサマーの例は、市販されている、無毒の生体適合性のあるポリオールであるポロキサマー407(BASF社、Parsippany, N.J.)である。組換えウイルスにより含浸されたポロキサマーは、例えば外科的介入時に、治療される組織の表面上に直接沈着されてよい。ポロキサマーは、ヒドロゲルと本質的に同じ利点を有するが、より低い粘度を有する。
【0182】
本活性物質は、例えば各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルなど、例えば界面重合により調製されたマイクロカプセル中に、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)中又はマクロエマルション中に、閉じ込められることもできる。そのような技術は、「レミントン薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」(1980)、第16版、Osol, A.編集において明らかにされている。
【0183】
持続放出調製品を調製することができる。持続放出調製品の適例は、抗体を含む固形疎水性ポリマーの半透過性マトリクスを含み、このマトリクスは、成形された製品、例えば、フィルム又はマイクロカプセルの形である。持続放出マトリクスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタミン酸塩のコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドで構成された注射用ミクロスフェア)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーは、100日間以上にわたり分子を放出することができるが、ある種のヒドロゲルは、より短い期間タンパク質を放出する。封入された抗体が長時間体内に留まる場合、これらは37℃での湿潤への曝露の結果として変性するか又は凝集し、結果的に生物活性の喪失及び免疫原性の変化の可能性をもたらす。論理的戦略を、関与した機序に応じた安定化のために考案することができる。例えば凝集機序が、チオ-ジスルフィド交換を介した分子間S-S結合形成であることがわかった場合、安定化は、スルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、含水量の制御、好適な添加剤の使用、及び具体的ポリマーマトリクス組成物の開発により達成され得る。
【0184】
本明細書において使用される治療的有効量は、症状又は状態を改善する、タンパク質、ポリヌクレオチド、ペプチド、又はその抗体、アゴニスト若しくはアンタゴニストの量を意味する。そのような化合物の治療的有効性及び毒性は、細胞培養物又は実験動物における、例えば、ED50(集団の50%における治療効果用量)及びLD50(集団の50%の致死量)など、標準調剤手順により決定することができる。致死量対治療効果用量の比は、治療指数であり、且つこれは比LD50/ED50として表すことができる。大きい治療指数を示す医薬組成物は、特別である。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータは、ヒト使用のための用量範囲の処方において使用される。そのような化合物の用量は、特に毒性がほとんど又は全くないED50を含む、循環濃度の範囲内に存在する。用量は、利用される剤形、患者の感受性、及び投与経路に応じて、この範囲内で変動する。
【0185】
任意の化合物に関して、治療的有効量は、細胞培養アッセイ、又は通常マウス、ウサギ、イヌ又はブタの動物モデルのいずれかで、最初に推定され得る。動物モデルはまた、望ましい濃度範囲及び投与経路を実現するために使用される。その後そのような情報を使用し、ヒトにおける有用な投与量及び投与経路を決定することができる。正確な用量は、治療される患者の観点から個々の医師により選択される。用量及び投与は、活性部分の十分なレベルを提供するか又は所望の作用を維持するように、調節される。考慮され得る追加の因子は、患者の病態の重症度、年齢、体重及び性別;食餌、治療の望ましい期間、投与方法、投与の時間と頻度、併用薬(複数可)、反応感受性、及び治療に対する耐性/反応を含む。長期間作用する医薬組成物は、特定の製剤の半減期及びクリアランス速度を基に、3〜4日毎、毎週、又は2週間に1回投与されてよい。
【0186】
本発明の医薬組成物は、様々な方法で対象へ投与することができる。これらは、当該技術分野において公知の他の方法により、標的化された組織へ直接添加されるか、カチオン脂質と複合されるか、リポソーム内にパッケージされるか、又は標的化された細胞へ送達されてよい。所望の組織への局所投与は、直接注射、経皮吸収、カテーテル、注入ポンプ又はステントにより行うことができる。DNA、DNA/ビヒクル複合体、又は組換えウイルス粒子は、治療部位に局所的に投与される。代替の送達経路は、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、エアロゾル吸入、経口(錠剤又は丸剤の形状)、局所的、全身的、眼球、腹腔内及び/又は髄腔内送達を含むが、これらに限定されるものではない。リボザイム送達及び投与の例は、SullivanらのWO 94/02595に提供されている。
【0187】
本発明の発現-阻害する物質又は抗体の対象患者への投与は、自己投与及び他者による投与の両方を含む。患者は、マクロファージの代替活性化マクロファージへの分化により影響される、存在する疾患若しくは医学的状態について治療の必要性があるか、又は疾患及び医学的状態を予防若しくはリスクを低減するために、発症予防的処置が望まれ得る。本発明の発現阻害性物質は、対象患者へ、経口、経皮、吸入により、注射、経鼻、経直腸又は持続放出製剤により、送達され得る。
【0188】
(インビトロ方法)
本発明はまた、マクロファージのM2マクロファージへの分化を減少又は阻害するインビトロ方法も提供し、該方法は、マクロファージ細胞の集団を、標的物ポリペプチドの活性又は発現のインヒビターと接触させることを含む。特定の実施態様において、該インヒビターは抗体である。代替の実施態様において、該抗体はモノクローナル抗体である。
【0189】
本発明は更に、マクロファージのM2マクロファージへの分化を阻害するインビトロ方法に関し、該方法は、マクロファージ細胞の集団を、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、低分子干渉RNA(siRNA)及び短ヘアピンRNA(shRNA)からなる群から選択されるインヒビターと接触させることを含み、ここで該インヒビターは、標的物ポリペプチドをコードしている核酸の約17〜約30近接ヌクレオチドの天然に存在するポリヌクレオチド配列と相補的又はこれから操作された核酸配列を含む。
【0190】
アンチセンス核酸を使用する遺伝子発現のダウンレギュレーションは、翻訳又は転写レベルで実現され得る。本発明のアンチセンス核酸は、特に標的物ポリペプチドをコードしている核酸又は対応するmRNAの全て又は一部と、特異的にハイブリダイズすることが可能な核酸断片である。加えて、その一次転写物のスプライシングを阻害することにより、標的物ポリペプチドをコードすることが可能な核酸配列の発現を減少するアンチセンス核酸が設計され得る。標的物をコードしている核酸の発現をダウンレギュレーション又はブロックすることが可能である限りは、任意の長さのアンチセンス配列が、本発明の実践に適している。特に、アンチセンス配列は、長さが、少なくとも約15〜30、特に少なくとも17ヌクレオチドである。アンチセンス核酸の調製及び使用、アンチセンスRNAをコードしているDNA、並びにオリゴ及び遺伝子アンチセンスの使用は、当該技術分野において公知である。
【実施例】
【0191】
(実施例)
本発明は、以下に提供される実施例を使用し、更に例示される。実施例は、慣習的適合を使用し、特定の型の条件、規模又は細胞型に容易に改変及び適合させることができることは、当業者には明らかであろう。
【0192】
実施例1は、M2スクリーニングアッセイを説明する。
【0193】
実施例2は、M2再-スクリーンを説明する。
【0194】
実施例3は、M1対比アッセイを説明する。
【0195】
実施例4は、CD206マーカーを使用するM2アッセイを説明する。
【0196】
実施例5は、選択されたshRNA構築体のオン標的及び毒性評価を説明する。
【0197】
実施例6は、選択されたshRNA構築体の感染単位(IU)-ベースのオン標的スクリーン及び毒性評価を説明する。
【0198】
実施例7は、マクロファージにおける標的物の発現の分析を説明する。
【0199】
(実施例1. M2マクロファージ分化アッセイを使用するアデノウイルスライブラリーのスクリーニング)
(1.1 アッセイのバックグラウンド)
M2マクロファージは、ヒト末梢単球由来のM0マクロファージを、IL-4及びIL-10の組合せでプライミングすることにより、作製することができる。極性化されたM2マクロファージは、高レベルの分泌型CCL18並びに表面-結合型マーカーCD163及びCD206を発現する。更に当業者は同じく、いくつかの陽性対照を、IL-4及びIL-10のシグナル伝達経路に関する入手可能な文献、並びにCCL18のリードアウトを基に選択され得ることを認めるであろう。
【0200】
(1.2 細胞培養)
M0マクロファージを得るために、50歳を超えない健常ドナー由来のバフィーコートを、末梢血単核細胞PBMCの単離のために、血液バンク(Sanquin、オランダ)から購入した。この単離は、フィコール-パケPLUS勾配(GE healthcare社、カタログ番号17-1440-03)を用いて行い、引き続きCD14+単球を、CD14マイクロビーズ(Miltenyi社、カタログ番号130-050-201)を使用し抽出した。CD14単離後、フローサイトメトリー分析(Facscalibur BD)及びCellQuest Proソフトウェアを使用し、純度に関するQCを、CD14蛍光標識された抗体染色を基に、単離されたCD14+画分について行った。
【0201】
CD14陽性細胞をM0マクロファージに分化するために、細胞を、10%FBS、1%P/S及び100ng/mL M-CSFを含有するRPMI Glutamax培地の入った96-ウェルプレートに播種した。合計4つのプレートに、1ドナーにつき、細胞密度20,000個細胞/ウェルで播種し、6日間培養した。6日目に、M0マクロファージを含む両方のドナー由来の1個のプレートを、RNA単離のために収集し、残りの3個のプレートをリフレッシュした。播種後10日目に、M0マクロファージを含む両方のドナー由来の第二のプレートを、RNA単離のために収集した。各ドナー由来の残りの2個のプレートを、各々M1又はM2を作製するために、10%FBS及び1%P/Sを含有するRPMI Glutamax培地において、20ng/ml IFNγ及び5ng/mL IFNγ又は20ng/mL IL-10及び20ng/mL LPSにより誘発した。細胞を、更に3日間培養し、その後マクロファージを、RNA単離のために収集した。収集後、特異的細胞マーカーを、フローサイトメトリーを使用し試験し、M0、M1及びM2表現型を確認した。これは、発現マーカーCD163及びCD206を評価することにより、行った。CD163及びCD206発現は、両方のドナーにおいて、M0マクロファージと比べ、M2マクロファージにおいて増強され、且つM1マクロファージにおいて減少された。
【0202】
(1.3 陽性及び陰性対照)
STAT6_v5を、IL-10及びIL-4経路に関する公的に入手可能なリソース(例えば、Sicaらの文献、2012)を基に、陽性対照としてのCCL18_v1、IL-4R_v6、JAK1_v23及びSTAT6_v6と一緒に使用した。ffluc_v19、ffluc_v24及びluc_v13は、非発現遺伝子(各々、ホタルルシフェラーゼ及びルシフェラーゼ)に対するshRNAであり、陰性対照として使用した。
表2. M2マクロファージアッセイにおける対照のノックダウン配列のまとめ
【表2】
【0203】
(1.4 CCL18 384-ウェルルミネセンスELISA)
高結合MSDプレートを使用するCCL18検出アッセイを、開発し且つ自動化した。市販のCCL18 ELISAにおいて使用される抗体対を、384-ウェルのメソスケールディスカバリー(MSD)アッセイと共に使用した(MSD技術の概要については、http://www.mesoscale.com/CatalogSystemWeb/WebRoot/technology/ecl/ walkthrough.htm参照)。自動化は、Bravoシステム(Agilent社)上で行った。自動化は、Bravoシステムを用いて行った。白色の384-ウェル高結合プレート(Lumitrac 600、Greiner Bio-one社)を使用し、PBS中CCL18捕獲抗体(ヒトCCL18/PARC MAb(クローン64507)、マウスIgG1、R&D Systems社)でコーティングし、4℃でインキュベーションした(o/n)。プレートを、PBS-Tween中の5%BSAによりRTで1時間ブロックした。プレートのブロック及び洗浄後、単独濃度のCCL18及び標準曲線を、プレートに追加し、RTで2時間インキュベーションした。その後、プレートを洗浄し、ビオチン標識したCCL18検出抗体(CCL18/PARCビオチン化された親和性精製したPAb、ヤギIgG、R&D Systems社)と共にインキュベーションした。引き続き、これらのプレートを、洗浄緩衝液(PBS-Tween)中で3回洗浄し、試薬緩衝液(PBS-Tween中1%BSA)中のストレプトアビジン-HRP(カタログ番号DY998、R&D Systems社)と共にインキュベーションした。振盪しながら室温で30分間インキュベーションした後、プレートを、洗浄緩衝液で3回洗浄し、その後15分前に調製したルミネセント基質(BM化学発光ELISA基質(HRP)、Roche社)を添加した。およそ5分後、プレートを、Envision装置(PerkinElmer社)において、Victor Wallacソフトウェアを使用し、測定した。
【0204】
(1.5 スクリーニングプロトコール)
一次スクリーンは、完全アデノウイルスshRNAライブラリーを含むshRNA構築体(4438遺伝子に対し設計された12210 shRNA構築体)を用いて行った。このライブラリーは、34×384-ウェルプレートからなり、且つスクリーンは、生物学的2つ組みで行った。パイロットスクリーンを基に、MOI4を選択した。全ての個別の384-ウェルソースプレートは、縦列13及び14に配置された、12の陰性対照ウェル及び20の陽性対照ウイルスを含んだ(図1)。追加のQCプレートも測定した。QCプレートは、試料希釈因子を決定するために、縦列13及び14に配置された対照ウイルスのみ含んだ。残りのウェルは、陰性対照の性能及びプレート間変動を評価するために、アデノウイルスにより形質導入されなかった細胞からなった。全体で、3つの希釈を、使用した3種のドナー全て(ドナーCQ、CR及びCU)由来のQC試料で作製した。縦列21を、CCL18標準のために使用し、個別に各ドナーについての最適希釈因子を決定した。5つの陽性対照中の3つは、陰性対照と比べ、40%を超える阻害を生じなければならない。プロトコールの設定を、図2に概説している。
【0205】
スクリーンを行うために、0日目に、10%ウシ胎仔血清(FBS)、1%ペニシリン/ストレプトマイシンP/S及び100ng/mLマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)を含有するRPMI Glutamax培地(カタログ番号:1870-010)を含む384-ウェル培養プレートに、5,000個のCD14+細胞/ウェルで播種した。5日後、M0マクロファージを、アデノウイルスにより形質導入し、引き続き1日後にリフレッシュメント工程を行った。10日目に、細胞を、10%FBS、1%P/S、20ng/mL IL-4及び20ng/mL IL-10を含有するRPMI Glutamax培地によりプライミングし、細胞のM2マクロファージへの分化を誘発した。13日目に、培地を収集し、試料希釈を決定するためにQCプレートを測定した後、分泌型CCL18を、CCL18 384-ウェルルミネセントELISAを用いて検出した(1.4に記載)。
【0206】
(1.6 QC、データ解析及びヒット同定)
試料集団は、Shapiro-Wilk検定を基に、非ガウス分布を有し、且つ正規化が必要であった。平均及びSDの代わりに中央値及び中央絶対偏差値(MAD)を利用する、ロバストZ-スコアを使用した(Zhangらの文献、2006)。この正規化法は、極値及び分布の非対称に対し感度が余り良くなく、従って生データポイントで観察された歪のある試料分布に適していた。可能性のあるプレート効果を、色分け図(heat map)を用いて評価した。
【0207】
これらの位置効果について補正するために、ロバストZ-スコアに類似した正規化法を使用した。この方法は、B-スコアと称され、可能性のあるプレート境界/横列/縦列効果及びプレート中心効果について補正を試みた。計算は、中央値計算のために、プレート上のその位置に応じて個別に各ウェルについて調節した中央値により置き換えた以外は、ロバストZ-スコアに類似している(Maloらの文献、2006)。
【0208】
B-スコアを計算した後、対照及び試料性能を、各プレートについて個別に決定し、互いに比較した。2つ組値の性能を評価するために、試料値を基にしたスピアマン相関係数を計算した。陽性対照及び陰性対照の性能を基に、B-スコアカットオフ値を、ヒットコーリングのために選択した。カッパ統計値を、ヒットコーリング後のヒットの反復間の一致(inter-replicate agreement)の統計測定として使用した。
【0209】
(1.7 結果)
3つのQCプレートの全てについて、非形質導入試料は、プレート間変動をほとんど示さず(データは示さず)、且つ陰性対照は、無ウイルス対照と比べ、25%以内の減少及び帰納範囲(induction range)に留まった。
【0210】
一次スクリーンの平均スピアマン相関係数は、0.87であり、1プレート対につき0.81から0.92までの範囲であった。
【0211】
B-スコアカットオフ値-1.3を、ヒットコーリングに使用した(図3A)。4個のプレートを個別に分析し、カットオフ値-0.95を、ヒットコーリングに使用した(図3B)。これらのカットオフ値により、いずれの陰性対照もヒットとして同定されず、且つ陽性対照の95%以上が、ヒットとして同定された。
【0212】
合計999のshRNAヒットが、一次スクリーンにおいて同定され、カットオフ値-1.3のプレートについて平均カッパ値0.80、及びカットオフ値-0.95のプレートについて平均カッパ値0.72であった。アッセイ統計解析の概要を表3に示した。この表において、アッセイ性能をまとめている。
【0213】
表3:一次スクリーンのアッセイパラメータまとめ
【表3】
【0214】
(実施例2. M2マクロファージ分化アッセイを使用する同定されたヒットの再-スクリーン)
(2.1 バックグラウンド)
実施例1に記載と同じアッセイの設定を使用する再スクリーンを、一次スクリーンに続けた。一次M2マクロファージ分化スクリーン(実施例1)において同定された999ウイルスを、再スクリーンにおいて更に評価した。再スクリーンのために、異なる形質導入プレートレイアウトを設計した。このレイアウトにおいて、外側ウェルは省略し、陰性対照を、可能性のあるプレート効果を検出することができるようは方式で配置した。更にヒットコーリング解析は、陰性対照の平均を基に行われたので、プレート含量の>30%は、陰性対照からなった。一次スクリーンから同定されたヒットは全て、再増幅させ(repropagate)、プレート全体に無作為に分布させた。
【0215】
実施例1の一次スクリーンにおいてヒットとして同定されたアデノウイルスライブラリー由来のアデノウイルスshRNA構築体、並びに同じ対照ウイルスは、再スクリーンのために再増幅させた。対照(実施例1において使用したものと同じ対照)の新たな増幅、及びヒットセットの代表的部分は、ウイルスの品質を評価し且つ再スクリーンのための最適形質導入容積を確立するために、パイロット再スクリーンにおいて試験した。一次スクリーンの開発において使用したものと類似の基準を使用した。
【0216】
(2.2 再-スクリーンプロトコール)
再スクリーンは、8個の384-ウェルプレートからなり、且つ1ドナーにおいてMOI4で、生物学的2つ組で行った。細胞は、実施例1と同じプロトコールに従い入手した。全ての個別の384-ウェルソースプレートは、図4に示したようにプレート全体に分布された80の陰性対照及び12の陽性対照ウイルスを含んだ。このアッセイ設定は、一次M2マクロファージ分化スクリーンと同一であった(実施例1参照)。プレートレイアウトに従い対照のみを含むQCプレートを、本アッセイに含んだ。QCプレートを使用し、CCL18分泌が測定される上清のための希釈因子を決定した。試料は、1:37.5で希釈した。
【0217】
(2.3 データ解析)
データの正規化は、平均陰性対照を基にしたロバストZスコアを用いて行った。陰性対照を基にしたロバストZスコアは、リードアウト値から陰性対照の中央値を減算したものを陰性対照のMAD(中央絶対偏差値)で除算することにより計算した。2つ組値の性能を評価するために、試料値を基にしたスピアマン相関係数を計算した。
【0218】
(2.4 結果)
図5において、再スクリーンの対照及び試料性能が示され、この図において、陽性対照と陰性対照の明らかな分離を認めることができる。2つ組データ点間の強力な相関は、平均スピアマン 0.93で、2つ組プレートにつき0.91から0.96までの範囲で認められた。陰性対照と比較した陽性対照の性能を基に、B-スコアカットオフ値-1.3を、ヒットコーリングに使用した。このカットオフ値により、いずれの陰性対照も、ヒットとして同定されず、陽性対照の100%が、ヒットとして同定された。
【0219】
この再スクリーンは成功し、カットオフ値-1.3は、619のヒットを生じた。QC解析及び徹底解析後、これらの619ヒットは、616種の遺伝子を表し、且つ確認された候補標的物を設計した(表4)。再スクリーンを基に、616種の遺伝子を、バリデーション相に進めた。
【0220】
表4:再スクリーンのアッセイパラメータのまとめ
【表4】
【0221】
(実施例3. M1対比アッセイ)
(3.1 アッセイのバックグラウンド)
600種の確認した候補標的物を、その阻害がマクロファージのM2マクロファージへの分化を阻害した一次スクリーン及び再スクリーンにおいて同定した(実施例1及び2)。これらのshRNAは、古典的に活性化されたM1マクロファージの発達を妨害しないことを評価するために、標的の発現を阻害し、次にM1表現型を阻害するshRNA構築体を除外する、M1対比スクリーンを開発した。
【0222】
M1マクロファージの顕著な特徴は、TNFαの分泌である(Mantovaniの文献、2004)。LPS及びIFNγ(M1表現型への極性マクロファージとして公知)による誘発時のTNFαの発現は、M1マクロファージが、M0及びM2マクロファージから識別されることを可能にした。従って、分泌型TNFαがリードアウトとして使用され得るM1対比スクリーンを行うことができる。ロバスト及び再現可能なM1対比アッセイを確立するために、以下の側面が評価されなければならない:TNFα分泌の決定、M1対比スクリーンアッセイの最適化、並びに陽性対照及び陰性対照の選択。
【0223】
(3.2 細胞ドナー及び細胞プロトコール)
マクロファージを得るために、健常ドナー由来のバフィーコートを、末梢血単核細胞PBMCの単離のために、血液バンク(Sanquin、オランダ)から購入した。この単離は、フィコール-パケ勾配(GE healthcare社)を用いて行い、引き続きCD14+単球を、CD14マイクロビーズ(Miltenyi社、カタログ番号130-050-201)を使用し抽出した。CD14単離後、フローサイトメトリー分析(Facscalibur BD社)及びCellQuest Proソフトウェアを使用し、純度に関するQCを、CD14蛍光標識された抗体染色により、PBMC及び単離されたCD14+画分について行った。
【0224】
(3.3 TNFα HTRFアッセイ)
分泌されたTNFαを、製造業者のプロトコールに従い、均一時間分解蛍光(HTRF)技術(Cisbio Bioassays社、カタログ番号:62TNFPEC)を用いて測定した。シグナルを、描画装置(envision machine)(Perkin Elmer社)において、665及び620nmで測定し、且つVictor Wallacソフトウェアを用いて解析した。較正曲線を使用し、生の蛍光シグナルを、TNFα濃度と相関させた。
【0225】
このリードアウトの特異性を確認するために、M1マクロファージによるTNFαの分泌を、M2マクロファージによる分泌と比較した。M1マクロファージによるTNFα分泌は、強力に増強されたのに対し、M2マクロファージから得られた上清においては、TNFαが検出できなかった。従ってTNFα HTRFは、M1マクロファージをM2マクロファージから識別するのに適している。
【0226】
(3.4 陽性対照及び陰性対照)
陽性対照ウイルスTNF_v12に加え、M1経路の遺伝子(MYD88、TLR4、NFKB1、TRAF6及びTNFα)を標的とする新規の推定陽性対照の選択を、TNFα阻害について評価し、M1対比スクリーンを更にバリデートした。TRAF6_v4陽性対照は、ドナーEKにおいて60%以上の阻害を示し、TNF_v9陽性対照による処理は、ドナーEKにおいてTNFαの40%以上の減少を生じた。MYD88_v4陽性対照は、ドナーELにおけるおよそ40%の阻害を示した。TNF_v12陽性対照のみが、両方のドナーにおいて、陰性対照の平均と比べ、60%を超える阻害を示した。これらの陽性対照は全て、M1対比スクリーンの開発に進めた。
【0227】
表5. 対照のまとめ
【表5】
【0228】
(3.5 M1対比アッセイの設定)
実験設定は、下記であった:0日目に、5,000個のCD14+細胞/ウェルを、M-CSF含有培地の入った384-ウェルプレートに播種した。5日後、形質導入を行い、引き続き翌日リフレッシュを行った。10日目に、20ng/mL IFN-γ及び5ng/mL LPSを含有するトリガーを添加し、12日目にリフレッシュした。トリガーは、収穫前に16時間リフレッシュした。上清を、13日目に収穫し、その中の分泌型TNFαを、TNFα HTRFアッセイを用いて決定した(図6)。M1対比スクリーンは、再スクリーンのウイルス再増幅アリコートのセットに類似した8個の384-ウェルソースプレートからなった。従ってレイアウトは、CCL18陽性対照を、TNFαリードアウトについての3種の陽性対照MYD88_v4、TRAF6_v6及びTNF_v12と置き換えた以外は、再スクリーンのレイアウトと同じであった(図7)。スクリーンは、1つのバッチにおいて、MOI8で、2つのドナーにおいて行った(ドナーEO及びEP)。加えて、ウイルス対照のみを含む各ドナーのための1つのQCプレートを、各実験設定に含んだ。これらのプレートを、TNFα HTRFを用いて最初に評価し、どのドナーが最も最適なアッセイウィンドウを提供したかを決定した。
【0229】
両方のドナーにおいて、TNF_v12 陽性対照による形質導入後、TNFα分泌の減少は、陰性対照の平均と比べ40%以上であった。異なるドナーETを、ドナーESと比較してわずかに高いTNFα濃度をベースにした完全セットの分析のために選択した。
【0230】
(3.6 データ解析)
TNFαデータの正規化は、平均陰性対照を基にしたロバストZ-スコアを用いて行った。位置的効果は、引き続きB-スコアを計算することにより、補正した。
【0231】
ドナーET由来の平均スピアマンは、0.77であり、2つ組プレートにつき0.70から0.86までの範囲であり、2つ組間に強力な相関を示している。陰性対照と比べたTNF_v12陽性対照の性能を基に、B-スコアカットオフ値>-1.3を、ヒットコーリングに使用した。これらのカットオフ値により、陰性対照の1.67%は、ヒットとして同定され、TNF_v12陽性対照の90.60%は、ヒットとして同定された。
【0232】
(3.7 結果)
729のヒットを、この対比スクリーンにおいて同定した。再スクリーンの同じウイルスセットを使用したので、対比スクリーンの結果を、M2マクロファージ分化再スクリーンの結果(実施例1)と比較した。これは、M1分化に影響を及ぼさなかった総数408の確認された候補標的物の同定を生じた(表6)。これらの408の確認された候補標的物は、更なるバリデーションに進めた。
【0233】
表6:M1対比スクリーンの結果
【表6】
【0234】
(実施例4. CD206マーカーを使用するM2アッセイ)
(4.1 アッセイのバックグラウンド)
候補shRNA構築体はM2分化を阻害したことを確認するために、一次CCL18リードアウトとは異なるリードアウトを伴うバリデーションアッセイを、開発することができる。2種の表面マーカーCD163及びCD206は、M2マクロファージ上で発現されることがわかっており、且つM0、M1及びM2マクロファージ間の識別に使用することができる(Murrayらの文献、2011)。M2アッセイ開発の期間中及びスクリーニング相を通じて、CD163及びCD206の両方の発現レベルを、マクロファージ分化を評価するためのQC分析に使用した(実施例1参照)。M2プライミングされたマクロファージは、M0及びM1マクロファージと比べ、CD163及びCD206の増強された発現を示した。M2プライミング時のCD206発現の誘導は、CD163よりもより顕著であり、結果的にリードアウトとしてCD206を使うバリデーションアッセイの開発を決断した。
【0235】
(4.2 CD206検出法(ICC))
間接標識化のために、マウス-抗-ヒトCD206一次抗体(BD Pharmingen社、カタログ番号555953)を、ヤギ-抗-マウスAlexa488二次抗体(Invitrogen社、カタログ番号A-11001)と組合せて使用した。一次抗体及び二次抗体の両方を、異なる希釈で試験し、最適な染色条件をみつけた。
【0236】
これらの結果は、一次抗体が1:200希釈で使用され、且つ二次抗体が1:500希釈で使用される場合に得られた。画像は、DAPI(核)及びFITC(Alexa488)チャネルを装備した、GE INcell Analyzer 2000において、10×対物で、撮影した。この間接的標識化を使用し、M2プライミングしたマクロファージにおけるCD206発現は、M0マクロファージと比べ、強力に増強され、且つM1マクロファージにおいて減少した。
【0237】
(4.3 CD206を定量するためのアルゴリズム)
ハイスループットスクリーニングフォーマットにおいてCD206 ICC染色を定量するために、アルゴリズムを開発した。アルゴリズムのアウトプットは、造影された領域において認められる、CD206を発現しているマクロファージの数の代表値を提供するはずである(図8)。先の実験のFACSデータを基に、M0、M1及びM2マクロファージは全て、ある程度のレベルのCD206を発現した。M2マクロファージのみが、CD206の増強された発現を基に、M1及びM0集団から識別され得る。
【0238】
このアルゴリズムは、CD206発現の閾値を用いることにより、CD206陽性細胞の数を計算した。次に、核のカウントを基に、ウェル内の細胞の総数を決定し、この数を使用し、CD206陽性細胞、すなわちM2マクロファージの割合を決定した。このアルゴリズムを適用することにより、M2マクロファージの割合を決定することができる。絶対値は、ドナー間で異なるが、ロバストウィンドウが、単独のドナー内で認められたことは注目されるべきである。
【0239】
(4.4 陽性対照及び陰性対照)
実施例1及び2において使用した3種の陰性対照ウイルスはまた、M2バリデーションアッセイにおいても試験した。陰性対照は、無ウイルス対照と比べ、25%を超えてリードアウトを阻害も誘導もしてはならない。3種の陰性対照は全て、この基準を満たし、M2バリデーションアッセイのための陰性対照として選択した。
【0240】
陽性対照の選択のために、CD206(同じくマンノース受容体C1型(MRC1)と称される)を標的化する様々なウイルスを、M2バリデーションアッセイにおいて試験した。CD206を標的化する6種のウイルスのうちの4種が、陰性対照の平均と比べ、>60%の低下を生じた。2種のウイルスMRC1_v1及びMRC1_v2は、試験した全てのドナーにおいて最も一貫した結果をもたらし、従ってM2バリデーションアッセイリードアウトのための陽性対照として選択した。
【0241】
加えて、実施例1において使用した陽性対照のパネルも、CD206アッセイに含んだ。STAT6_v5及びSTAT6_v6陽性対照は、40%を超える割合でCD206を阻害し、従ってM2バリデーションアッセイのための陽性対照として選択した。CCL18_v1陽性対照は、CD206発現に影響しないか又はごくわずかに影響した。このことは、CCL18は、IL-4/IL-10経路の最終段階の分子であるので、従って恐らく可能なオートクリン又はパラクリンループを介する以外は、CD206発現に影響を及ぼさないであろうと予想される。
【0242】
表7:CD206スクリーンに使用した対照のまとめ
【表7】
【0243】
(4.5 毒性評価アッセイ)
毒性アッセイは、毒性作用に起因した偽陽性ヒットを除くためのバリデーションの一部として開発した。市販のCell Titer Blue(CTB)試薬(Promega社、カタログ番号G8081)を使用し、細胞の代謝能を測定することができる。CTB試薬は、色素レサズリンを含有し、生存細胞は、レサズリンを高度に蛍光を発するレソルフィンに変換することができる。CTB試薬は、培地を交換するか、又は細胞上の培地に試薬を直接添加するかのいずれかで、5種の希釈のうちの1種で細胞に添加した。24時間後、生存度を表す相対蛍光単位(RFU)を、画像化装置上で測定した。
【0244】
マクロファージにおけるCTB反応の感受性を評価するために、様々な細胞密度で播種し、生存度を測定した。これは、細胞数とRFUシグナルの間に強力な相関関係を生じ、このことは、このアッセイは非常に感度が良く、マクロファージにおける細胞生存度の測定に適していることを指摘している。引き続き、細胞を、shRNAアデノウイルスライブラリー由来の対照ウイルスで処理し、毒性を評価した。
【0245】
疑陽性候補標的物を除外するために、アデノウイルスライブラリー由来のshRNA構築体は、無ウイルス対照と比べ、30%を超える細胞毒性を示してはならない。従って、マクロファージは、無ウイルス又は陰性対照ウイルス(ffluc_v24)のいずれかで処理した。加えて、スタウロスポリンを、毒性に関する陽性対照として細胞に添加した。更にまた、IL4R_v6陽性対照による処理は、毒性を示唆する核数の有意な減少を生じたので、この陽性対照IL4R_v6を、陽性対照として含んだ。この観察は、CD206バリデーションスクリーンのアッセイ開発時に、複数のドナーにおいて行った。
【0246】
陰性対照のRFUは、無ウイルス対照と同等であり、従って毒性はなかった。スタウロスポリン処理したマクロファージにおいて、シグナルは、従って生存度は、劇的に減少した。IL4R_v6陽性対照による処理は、M0及びM2マクロファージにおいておよそ30%の毒性を誘導し、M1マクロファージにおいて50%を超える毒性を誘導した。
【0247】
(4.6 CD206リードアウトに関するスクリーニングプロトコールの設定)
M2マクロファージスクリーン(実施例1)及びM1対比スクリーン(実施例2)に続けて、408種の候補標的物に対するshRNAを、13個の96-ウェルウイルスソースプレートからなるM2 CD206バリデーションスクリーンにおいて試験した。このスクリーンは、生物学的2つ組で、MOI4で行った。毒性アッセイと一緒に組合せたプロトコールを、図9に示した。
【0248】
スクリーンを実行するために、0日目に、CD14+細胞を、M-CSFを含む培地の入った96-ウェル透明プレートに播種し、細胞をM0マクロファージへ分化させた。5日目に、形質導入を行い、その後翌日培地をリフレッシュした。10日目に、インターロイキンを添加し、M2マクロファージを得た。3日後、細胞を、CD206 ICCアッセイのために固定し、細胞傷害性を測定するためにCTBを添加した。shRNAアデノウイルスレイアウト及び実験設定は、縦列について1列は、毒性を誘導するために、12日目にスタウロスポリンを添加した以外は、パイロットスクリーンと同一であった(図9)。
【0249】
(4.7 結果)
CD206アッセイによる平均スピアマンは、0.73であり、2つ組プレートにつき0.54から0.86までの範囲であり、これは、反復間の強力な相関関係を示唆している。対照性能は、陽性対照(MRC1_v1、MRC1_v2及びJAK1_v23)と陰性対照の間の明らかな分離を示した。陰性対照は、無ウイルス対照と同じ範囲で行い、リードアウトに対する非特異的(a-specific)ウイルス作用の存在しないことを示唆している。ヒット-コーリングのためのカットオフ値は、陽性対照と陰性対照の間の分離を基に決定した。更に、カットオフ値はまた、CD206陽性細胞の〜60%からなるM0マクロファージ中のCD206陽性細胞の割合を基にした(図10A)。これらのパラメータを基に、ロバストZスコアカットオフ値≦-3を、選択した。陰性対照はいずれも、ヒットとして同定されず、且つMRC1_v1、MRC1_v2及びJAK1_v23陽性対照の100%が、ヒットとして同定された。
【0250】
毒性に起因した偽陽性ヒットを推定するために、CTBデータを分析した。スピアマン計算は、強力な反復相関関係を示した。平均スピアマンは0.82であり、2つ組プレートにつき0.70から0.93までの範囲であった。ヒット-コーリングのためのカットオフ値は、無ウイルス対照に対する、30%シグナル低下レベルを基にした。これは、ロバストZ-スコア値-10に対応していた。毒性に関する陽性対照として、様々なスタウロスポリン濃度及びIL4R_v6ウイルスを使用し、毒性を導入した。IL4R_v6ロバストZスコアは、先に得られたデータに対応する30%阻害スコア-10よりも低かった。様々なスタウロスポリン濃度の添加は、投与量-反応曲線を生じ、これはCTBアッセイの感度を指摘した(図10B)。これらの結果を基に、ヒットコーリングのためのカットオフ値を、>-10であると決定した。
【0251】
CD206スクリーン及びCTBスクリーンの両方を、スピアマン値及び対照性能を基にうまく行った。合計で371の候補標的物が、カットオフ値>-10を使用する毒性アッセイを通過した(表8)。CD206スクリーンから、73ウイルスが、カットオフ値≦-3でのヒットとして同定された。これら73の確認された候補標的物から、17のウイルス構築体が、毒性として同定された。これは、M2表現型を阻害し、毒性作用を誘導しないと分類された、56の候補標的物に対するshRNA構築体の選択を生じた。これらの56の候補標的物は、「オン標的」バリデーションに進めた。
【0252】
表8:M2バリデーション及び毒性スクリーンにおけるヒット性能
【表8】
【0253】
(実施例5. 選択されたshRNA構築体の「オン標的」及び毒性評価)
(5.1 バックグラウンド)
ノックダウン構築体が、異なるmRNAの発現、その後意図されたmRNAの発現に対する作用、いわゆるオフ-標的作用を有することを排除するために、オン標的バリデーションを、確認された候補標的物により行った。実施例1-3のスクリーンを通過した56の確認された候補標的物を、オン標的バリデーションのために選択した。この目的のために、同じ確認された候補標的物の異なる部位を標的化している複数のアデノウイルス-shRNAを設計し、且つ一次スクリーン及びM1対比スクリーン設定を用い試験した。オリジナルの配列を含む少なくとも2つの独立したshRNA配列がM2及びM1バリデーションスクリーンの基準を通過した場合に、確認された候補標的物を、「オン-標的」と称した。
【0254】
以下の追加のshRNA構築体を、「オン-標的」分析において使用し、標的の発現を阻害する能力を明らかにした。
【0255】
(5.2 「オン標的」分析に使用される対照)
2つの異なる対照パネルを、実施例3及び1に応じて説明されたM1及びM2分化アッセイのために使用した。
【0256】
(5.3 M2及びM1「オン標的」スクリーン及び毒性評価のプロトコール)
オン標的バリデーションのために、異なるウイルスレイアウトを設計した。そのレイアウトにおいて、外側ウェルは省略し、且つ陰性対照を基にしたヒットコーリングを可能にし及び可能性のあるプレート効果の補正のために、プレートの>30%に陰性対照を満たした。陽性対照は、M2及びM1オン標的バリデーションの両方のために含んだ。更に、スタウロスポリンの連続希釈を、毒性アッセイの参照として、非形質導入細胞に対する縦列1に添加した。候補標的物に対し向けられた全てのアデノウイルス-shRNAは、プレート全体に無作為に分布された。「無-ウイルス」対照(ウイルス処置を伴わない試料)は、ウイルスを含まないスポットについてプレート上に配置した。
【0257】
M2及びM1アッセイの実験設定(実施例1及び3)は、「オン標的」バリデーションについて調節した。CD14+細胞を、実施例1(1.2)に記載のように単離した。0日目に、5,000個(M2)又は10,000個(M1)のCD14+細胞/ウェルを、10%FBS、1%P/S及び100ng/ml M-CSFを含むRPMI Glutamax培地の入った、384-ウェル培養プレートに播種した。5日後、M0マクロファージを、アデノウイルスにより形質導入し、続けて翌日培地をリフレッシュした。10日目、細胞を、10%FBS、1%P/S、及び細胞のM2マクロファージ(20ng/ml IL-4及び20ng/ml IL-10)又はM1マクロファージ(20ng/ml INFγ及び5ng/ml LPS)へのプライミングに必要なサイトカインを含むRPMI Glutamax培地でプライミングした。M1プライミング条件は、上清を収集する前に、16時間リフレッシュした。13日目に、M2及びM1の上清を収集し、CTB試薬を細胞に添加した。CCL18及びTNFαを、各々、M2及びM1オン標的バリデーションのために測定した。毒性は、CTBの添加後24時間評価した。
【0258】
(5.4 データ解析)
(5.4.1 M2「オン標的」スクリーンデータ解析)
B-スコア解析を適用し、M2オン標的スクリーンから得られたCCL18データを正規化し、次にスピアマン順位相関係数を使用し、複製性能を評価した。M2オン標的スクリーンに関する平均スピアマン相関は0.95であり、これは複製物間の強力な相関を指摘した。対照性能は、陽性対照(CCL18_v1、STAT6_v6及びJAK1_v23)と陰性対照の間の明確な分離を示した。陰性対照は、「無ウイルス」対照と同じ範囲で行った。これらの結果を基に、B-スコアカットオフ値≦-1.6を、ヒットコーリングに使用した。
【0259】
(5.4.2 M2「オン標的」スクリーンデータ解析におけるCTBアッセイ)
M2オン標的バリデーションスクリーンにおけるCTB評価から得られたデータもまた、B-スコア正規化及びスピアマン順位相関を用い解析した。M2 CTBスクリーンに関する平均スピアマン相関は0.89であり、これは複製物間の強力な相関を指摘した。ヒットコーリングのためのカットオフ値は、無ウイルス対照に対する30%のシグナル減少レベルを基にし、これはB-スコア値-8に相当した。毒性に関する陽性対照として、様々な濃度のスタウロスポリン及びIL4R_v6ウイルスを使用し、毒性を導入した。IL4R_v6陽性対照は、カットオフ値-8でのヒットとして同定した。様々な濃度のスタウロスポリンの添加は、投与量-反応曲線を生じ、これはCTBアッセイは、毒性の感度の良い測定であることを指摘した。これらの結果を基に、M2マクロファージにおける無毒の標的のヒットコーリングのカットオフ値は、B-スコア>-8での設定であった。
【0260】
(5.4.3 M1「オン標的」スクリーンデータ解析)
M1オン標的スクリーン由来のTNFαデータもまた、B-スコア正規化を用い解析した。M1オン標的アッセイに関する平均スピアマンは0.84であり、これは反復物間の強力な相関を指摘した。対照性能は、2つの陽性対照(TNF_v12、TRAF6_v6)間の明確な分離を示したのに対し、TRAF6_v4及びMYD88_v4は、TNFαシグナルのより少ない阻害を示した。陰性対照は、無ウイルス条件と比べ、先のM1アッセイにおいて同じく認められたような小さい作用を示した。この作用は、無ウイルス対照と比べ、25%限界内であり、従ってアッセイ基準を通過する。これらの結果を基に、カットオフ値>-3を、ヒットコーリングに使用した。
【0261】
(5.4.4 M1「オン標的」スクリーンデータ解析におけるCTBアッセイ)
M1オン標的毒性アッセイのCTBリードアウトを基に、B-スコアを正規化に使用し、反復性能を評価した。M1オン標的アッセイに関する平均スピアマンは、0.83であった。ヒットコーリングのためのカットオフ値は、無ウイルス対照に対する30%のシグナル減少レベルを基にした。これは、B-スコア値-8に相当した。毒性に関する陽性対照として、様々な濃度のスタウロスポリン及びIL4R_v6ウイルスを使用し、毒性を導入した。様々な濃度のスタウロスポリンの添加は、投与量-反応曲線を生じ、これはCTBアッセイの感度を指摘した。これらの結果を基に、ヒットコーリングのカットオフ値は、>-8であると決定した。
【0262】
(5.5 結果)
少なくとも2つの独立したshRNA配列が、毒性の観察を伴わずにM2及びM1「オン標的」バリデーションスクリーンのカットオフ値基準を通過した場合、このshRNAは、「オン標的」として指定された。これらの基準を基に、14種の遺伝子標的が、オン標的として同定された。これらの結果のまとめは、表14に示している。
【0263】
(実施例6. 異なるIU及び毒性評価を使用するM2及びM1「オン標的」スクリーン)
(6.1 バックグラウンド)
実施例5においてオリジナルの構築体がヒットとして同定されていない34種の標的を、異なる「オン標的」スクリーンにおいて再試験した。プレートレイアウト及び実験設定は、実施例5の「オン標的」バリデーションと同じであった。形質導入は、2種のソースプレートを用いて行い、一つは相対的に低いIUを伴うウイルス構築体を含み、一つは相対的に高いIUを伴うウイルス構築体を含んだ。
【0264】
(6.2 M2及びM1「オン標的」スクリーンのプロトコール)
M2及びM1スクリーンの両方について、複数のウイルス希釈物を、2種のソースプレートで作製し、細胞の形質導入に使用した。これは、全てのウイルス構築体が、M2スクリーンに関してMOI範囲3〜5で、及びM1スクリーンに関して6.5〜9で添加されるように行った。これを行うことにより、全てのウイルス構築体の性能は、M2及びM1アッセイについて、各々MOI 4及び8で添加された陰性対照及び陽性対照の性能とより同等であった。
【0265】
(6.3 データ解析)
データは、B-スコアを用い正規化した。Bスコアの決定に関して、試料と同等のMOIを伴う陰性対照を使用した。反復性能は、スピアマン相関を用い解析し、且つ全て(al)>0.4であった。4つのスクリーン全てにおいて、適切なウィンドウを、陽性対照と陰性対照の間に認めた。ヒットコーリングのためのカットオフ値は、対照性能を基にした(表9)。
【0266】
(6.4 結果)
オリジナルのヒットを含む少なくとも2つの独立したshRNA配列が、スクリーンにおいて確認された場合、この標的は、「オン標的」と宣言される。合計して、13標的が、IUベースのM2及びM1オン標的バリデーション及び毒性スクリーンの結果を基に、オン標的であることがわかった。
【0267】
表9:IUベースのオン標的スクリーンアッセイのまとめ
【表9】
【0268】
実施例5の結果と組合せた場合、27種の確認された候補標的物が、オン標的と指定され、従って確認された標的物と考えられた。これらの標的は、更なる標的バリデーションに進めた。
【0269】
(実施例7. マクロファージ及びBALFにおける標的物の発現の解析)
(7.1 バックグラウンド)
マクロファージにおいて同定された標的のmRNA発現を確認するために、mRNAをこれらの細胞から単離し、全トランスクリプトーム配列決定を行った。線維化状態に関連するように、これらの標的物は、該疾患の関連組織において発現されるものとする。従って、患者材料における標的物の発現を確認することに加え、肺胞マクロファージ(AM)を、IPF患者由来の肺組織から単離した。
【0270】
全トランスクリプトーム配列決定又はmRNA-配列決定は、mRNA集団全体をプロファイリングするために使用することができ、且つ全ての転写物のマッピング及び定量化を可能にするcDNA配列決定適用である。プローブ又はプライマーデザインが不要であるmRNA-配列決定は、読みの深さ(read depth)に応じ、単独の実験において遺伝子発現、新規転写物、新規アイソフォーム、選択的スプライシング部位、及び稀な転写物の分析に関して、ポリA-テールRNAから比較的不偏の配列情報を提供する能力がある。
【0271】
(7.2 マクロファージにおけるmRNA-配列決定試験のための試料調製)
マクロファージを得るために、2名の健常ドナー由来のバフィーコートを、PBMCの単離のために、血液バンク(Sanquin、オランダ)から購入した。この単離は、フィコール勾配を用いて行い、引き続きCD14+単球を、CD14マイクロビーズ(Miltenyi社、カタログ番号130-050-201)を使用し抽出した。CD14単離後、フローサイトメトリー分析を使用し、純度に関するQCを、PBMC及び単離されたCD14+画分について行った。
【0272】
CD14陽性細胞をM0マクロファージへ分化するために、細胞を、10%FBS、1%P/S及び100ng/mL M-CSFを含むRPMI Glutamax 培地の入った、96-ウェルプレートに播種した。合計4個のプレートを、ドナー1名につき細胞密度20,000個細胞/ウェルで播種し、6日間培養した。6日目に、M0マクロファージを含む両方のドナー由来の1個のプレートを、RNA単離のために収集し、他の3個のプレートをリフレッシュした。播種の10日後、M0マクロファージを含む両方のドナー由来の第二のプレートを、RNA単離のために収集した。各ドナー由来の他の2個のプレートは、10%FBS及び1%P/Sを含むRPMI Glutamax培地中の20ng/mL IFNγ及び5ng/mL IFNγ又は20ng/mL IL-10及び20ng/mL LPSにより誘発し、各々M1又はM2を作製した。これらの細胞を、更に3日間培養し、その後マクロファージを、RNA単離のために収集した。収集後、M0、M1及びM2表現型を確認するために、フローサイトメトリーを使用し、特異的細胞マーカーを試験した。これは、発現マーカーCD163及びCD206を評価することにより行った。CD163及びCD206の発現は、両方のドナーにおいて、M0マクロファージと比べ、M2マクロファージにおいて増強され、且つM1マクロファージにおいて減少された。
【0273】
(7.4 RNA決定)
全RNAを、市販のRNA単離キット(RNeasy Mini Kit、Qiagen社)を用い、M0及びM2マクロファージに加えAMから単離した。濃度及び純度を、NanoDrop 2000(Thermo Scientific社)を用い、チェックした。
【0274】
(7.5 mRNA分析)
RNA試料(複数可)の品質及び完全性を、Bioanalyzer 2100(Agilent Technologies社)を使用するRNA 6000 Lab-on-a-Chipにおいて分析した。試料品質は、試料調製の必要要件に合致した。Illumina(登録商標)mRNA-Seq試料調製キットを、試料の処理に使用した。試料調製は、Illuminaプロトコール「mRNA配列決定のための試料調製」(1004898 Rev. D)に従い行った。簡単に述べると、mRNAを、全RNAから、ポリ-T-オリゴ-付着した磁気ビーズを用いて単離した。mRNAの断片化後、cDNA合成を行った。これを、配列決定アダプターとのライゲーション及び生じた生成物のPCR増幅のために使用した。試料調製後の品質及び収量は、DNA 1000 Lab-on-a-Chip(Agilent Technologies社)により測定し、全ての試料は、品質管理を通過した。得られた生成物のサイズは、広範なサイズ分布300〜600bpを持つ予想された生成物と一致した。
【0275】
(7.6 クラスター化及びDNA配列決定)
Illumina HiSeq 2000(Solexa社)を使用するクラスター化及びDNA配列決定を、製造業者のプロトコールに従い行った。合計6.5pmolのDNAを使用した。各々Read 1及びRead 2配列決定プライマーを使用する100サイクルの2つの配列決定の読みを、フローセルにより行った。
【0276】
(7.7 生データ処理)
画像解析、塩基-コーリング、及び品質チェックを、Illuminaデータ解析ピペリン(pipeline)RTA v1.13.48及び/又はOLB v1.9及びCASAVA v1.8.2により行った。Illumina配列決定試行の品質を評価するために行ったQA解析は、Solexa技術を使用する良好な品質の標準試行のための品質測定法を基にした。フローセルの全てのレーンは、QA解析を通過した。加えて、Illumina社が供給したPhi Xコントロールを基にした詳細な誤差率情報を、報告した。Phi Xコントロールは、少量で試料へ添加される(読み値の最大5%)。Illumina対照DNAからの読み値を、データの処理時に、Illuminaピペリンにより取り除いた。誤差率は、Illuminaピペリン中のELANDアライナー(aligner)を使用し、Phi X参照ゲノムに対する品質フィルターを通過する読み値のアラインメント後に、算出した。全ての誤差率は、許容された基準内であった。
【0277】
(7.8 データ解析)
Illumina HiSeq 2000シークエンサーから得られた読み値は、最小閾値Q25及び最短長さ50塩基の品質スコアによりフィルタリングした。次に読み値は、各試料についてBowtie v0.12.7アライナーにより、ヒト参照ゲノム(hg19)とアラインメントした。新規アイソフォームを、デフォルトの設定及びマスクとしての既知のトランスクリプトームアノテーション(Homo_sapiens.GRCh37.65.gff)を使用し、Cufflinks v2.02パッケージにより同定した。各試料について新規アイソフォームの同定後、新たに検出されたアイソフォームを、全ての試料についてマージさせ、標準トランスクリプトームアノテーションに加えた。最後に、FPKM(断片数/転写物キロベース/マップされた100万の断片)値を、各試料について、Cufflinksにより計算し、デフォルトのCufflinksアウトプットにおいて報告した。FPKM値は、試料中の、従ってmRNA-配列解析及びスクリーニングアッセイに使用された細胞中のmRNAの定量的代表値である。高度に豊富なmRNAは、高いFPKM値を生じるのに対し、低いFPKM値は、低コピー数のmRNAを表す。
【0278】
(7.9 患者材料由来の肺胞マクロファージ中の発現試験のための試料調製)
IPF患者組織試料を、組織溶液から得た。肺胞マクロファージの単離は、T80細胞培養フラスコ上への接着により行った。これらの細胞の一部を、この細胞調製品中のマクロファージ集団の量を決定するためのフローサイトメトリー分析に使用した。このために、マウス-抗-ヒトCD68-FITC抗体(Miltenyi社、カタログ番号130-096-964)を使用し、CD68発現マーカーを検出し、これは肺胞マクロファージにおいて発現されることがわかっている(Kunischらの文献、2004)。合計でゲート通過された(gated)細胞の73%が、CD68陽性であることがわかり、これはマクロファージ集団を表している。
【0279】
これらの細胞の残りは、溶解し、且つRNeasyミニキット(Qiagen社、カタログ番号74106)を使用するRNA単離に使用した。逆転写を、TaqMan(登録商標)逆転写試薬(Applied Bioscience社、カタログ番号N8080234)を使用し行い、cDNAを作製した。このcDNAは、LightCycler(登録商標)480リアルタイムPCRシステム(Roche Diagnostics社)上で、市販のバリデートされたTaqMan(登録商標)アッセイ(Life Technologies社又はQiagen社)により、TaqMan(登録商標)Fast Advanced Master Mix(Life Technologies社、カタログ番号4444964)を使用し、定量した。4種のハウスキーピング遺伝子のセットを試験し、試料の品質を確認した。Roche社のLightCyclerは、閾値を超えるサイクル数としてCpに言及し、同じく別の装置においてCtに言及している。Bustinらは(2009)、異なる命名をCq(定量サイクル)に統一することを提唱している。
【0280】
(7.10 mRNA-配列決定の結果)
このmRNA-配列決定解析の結果を、表12に含み、且つ標的物の選択基準として使用した。発現データは、FPKM値として列記し、且つ標的物の選択基準として使用した。遺伝子は、FKPM値が決定された場合に、発現されたと考えられた。これらの結果は、これらの標的物は、M0及びM2マクロファージの両方において発現されることを示している。
【0281】
(7.11 AMに対するqPCRの結果)
この分析の結果は、表15に含まれる。発現データは、Cq値として列記し、且つ標的物の選択基準として使用した。遺伝子は、Cq値最大35で発現されると考えられ、35を超えるC値は「発現されない」と考えられた。これらの結果は、本標的物はAMにおいて発現されることを示している。
【0282】
(実施例8. CCL18アッセイにおける標的物に対するsiRNAの試験)
(8.1 バックグラウンド)
shRNAノックダウン構築体が、異なるmRNAの発現、その後意図されたmRNAの発現に対する作用、いわゆるオフ-標的作用を有することを排除するために、オン-標的バリデーションを、選択された標的物に対するsiRNA構築体を用い、確認された候補標的物により行った。
【0283】
(8.2 siRNA「オン標的」分析に使用される対照)
CCL18、JAK1及びSTAT6に対するsiRNAを、陽性対照として使用し、且つ非-標的化siRNA(Thermo Fisher Scientific Biosciences社)を、陰性対照として使用した。
【0284】
(8.3 M2「オン標的」siRNAアッセイ及び毒性評価のプロトコール)
実験設定は、以下のようであった:0日目に、CD14+細胞20,000個/ウェルを、10%FBS、1%P/S及び100ng/ml M-CSFを含むRPMI Glutamax培地の入った、96-ウェルプレートに播種した。5日後、siRNAトランスフェクションを行った。細胞を、Dharmafect 1(Thermo社、カタログ番号T-2001-03)0.02〜0.2μL/ウェルを用いて、トランスフェクトした。OnTarget Plus siRNA(Thermo Fisher Scientific Biosciences社)を、最終濃度20nMで、1ウェルにつき4種の構築体のスマートプールとして使用した。EFEMP2に関して、各siRNA構築体を同じく個別に試験した。1日後、細胞を、10%FBS、1%P/S、及び細胞のM2へのプライミングに必要なサイトカイン(20ng/ml IL-4及び20ng/ml IL-10)を含むRPMI Glutamax培地でプライミングした。8日目の細胞に、スタウロスポリンを、各プレートの対照ウェルへ添加した(各プレート上1つの単独列)。9日目、上清を収集し、CTB試薬を細胞に添加した。同日、RNA単離を、標準MagMax全RNA単離キット(Ambion社、カタログ番号AM1830)を、品質対照としてCell Titer Blueアッセイ(Promega社、カタログ番号G808B)と一緒に使用し行った。CCL18を、実施例1に説明したように、ELISAを使用し、上清中で測定した。
【0285】
(8.4 データ解析)
正規化された阻害率(NPI)解析を用い、siRNA構築体のリードアウトに対する作用を定量化した。計算において、CCL18 siRNAを陽性対照として使用し、且つ非-標的化siRNAを陰性対照として使用した。正規化された阻害率(NPI)は、試料測定値と陽性対照平均の差を、陽性対照と陰性対照の差により、除算することにより算出した。
【0286】
(実施例9. 線維症動物モデルにおける標的物発現)
(9.1 バックグラウンド)
インビボにおける標的物遺伝子の発現を試験するために、いくつかのマウス及びラット線維症モデルを試験し、腎臓、肺及び皮膚などの特定組織における発現を決定した。
【0287】
(9.2 マウスUUO(一側尿管閉塞)腎線維症モデル)
一側尿管閉塞を、Balb/c雌マウス(Harlan社-フランスより)において、1群あたりマウス10匹で作製した。0日目に、マウスに、腹腔内注射により麻酔をかけ、皮膚の切開後、左側尿管を切り離し、その長手方向に沿って2点を4.0絹糸で結紮した。その後尿管を、2つの結紮の間で切断した。無傷のマウスを、対照として使用した。マウスを、10又は21日後に、麻酔下での鋏による放血により屠殺した。
【0288】
(9.3 ラット5/6 NTX(5/6腎摘出)腎線維症モデル)
腎摘出術を、Sprague-Dawley雄ラット(CERJ社-フランスより)において、1群あたりラット10匹で作製した。0日目に、ラットに麻酔をかけ、皮膚の切開後、副腎を保護しながら、腎臓皮膜を除去した。腎門部を結紮し、右側腎臓を摘出した。左側腎臓の末端を、メスで切除し、5/6腎摘出を生じた。ラットを、4又は8週間後に屠殺した。
【0289】
(9.4 マウスBLM(ブレオマイシン)肺線維症モデル)
肺線維症を、ブレオマイシン静脈内投与について、CD1雄マウス(CERJ社-フランスより)において、1群あたりマウス6〜8匹で誘導し、且つブレオマイシン脊髄内投与について、C57/Bl6 J雌マウス(Janvier社より)において、1群あたりマウス14匹で誘導した。
【0290】
静脈内投与(i.v.)に関して、マウスには、ブレオマイシン(10mg/kg;100μl/マウス)又は対照として食塩水を、1日1回最初の5日間連続して静脈内注射した(Okuらの文献、2004)。マウスを、3又は6週間後に、麻酔下での鋏による放血により屠殺した。
【0291】
腹腔内(i.p)投与に関して、マウスに、麻酔液(18mL NaCl 0.9%+0.5mLキシラジン(5mg/kg)+1.5mLケタミン(75mg/kg))の腹腔内注射(容積10mL/kg以下)により麻酔をかけた。ブレオマイシン溶液2U/kg又は食塩水を、気管内経路により投与した(10mg/kg;40μL/マウス)。マウスを、3週間後に、麻酔下での鋏による放血により屠殺した。
【0292】
(9.5 マウス強皮症モデル(SCL))
強皮症は、Balb/c雌マウス(CERJ社-フランスより)において、1群あたりマウス15匹で誘導した。0日目に、マウスに、溶液(キシラジン5mg/kg、ケタミン75mg/kg)の腹腔内注射により麻酔をかけ、剃毛した。ブレオマイシン1mg/ml溶液又は食塩水の容積100μlを、マウスの剃毛した背部へ、26g針により、皮下注射した。ブレオマイシンを、連続する3週間にわたり1週につき5日間注射した。合計の実験期間は、6週間であった。6週間後に、マウスを、麻酔下での鋏による放血により屠殺した。
【0293】
(9.6 動物線維症モデルにおける遺伝子発現及び調節)
インビボ実験の最後に、動物を屠殺し、組織(UUOモデルについて1/2マウス腎臓、5/6NTXモデルについて1/3ラット腎臓、マウス強皮症モデルについて皮膚小片、及びマウス肺線維症モデルについて肺一葉)を、RNALater(登録商標)安定化溶液(Ambion社、#AM7021)の入った、2ml-マイクロチューブ(Ozyme社、#03961-1-405.2)中に収集した。組織を、Precellys(登録商標)24組織ホモジナイザー(Bertin Technologies社)内で1.4mmセラミックビーズ(Ozyme社、#03961-1-103、BER1042)により破壊した。全RNAを単離し、組換えDNase消化に供し、Qiazol(登録商標)(Qiagen社、#79306)及びNucleoSpin(登録商標)RNAキット(Macherey-Nagel社、#740955.250)を製造業者の推奨に従い用い精製した。RNAを、RNase-非含有水60μlにより溶離した。RNAの濃度及び純度を、260、280及び230nmでの吸光度により決定した。cDNAを、全RNA 500ngから、高性能cDNA RTキット(Applied Biosystems社、#4368814)を使用する逆転写により、調製した。10倍希釈したcDNA調製品5μlを、リアルタイム定量的PCRに使用した。qPCRは、SYBR Green技術を使用するQiagen社からの遺伝子特異的プライマーにより行った。反応は、ViiA7リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems社)中での、95℃で5分間の変性工程、続けて40サイクル(95℃で10秒間、60℃で30秒間)で実行した。
【0294】
下記の齧歯類β-アクチンプライマー(Eurogentec社)を使用した:
【化2】
【0295】
マウス及びラットのアッセイ混合物は、下記表に列記している。
【0296】
表10. マウス及びラットのアッセイ混合物(Qiagen社)
【表10】
【0297】
(9.7 データ解析)
各遺伝子の発現レベルは、対照動物におけるそれらの閾値サイクル(CT)値により推定した。
【0298】
遺伝子発現の相対変化の定量は、2-ΔΔCT法(ここで、ΔΔCT=(CT.標的−CTβ-アクチン)罹患動物−(CT.標的−CTβ-アクチン)対照動物)を使用し、表した。2-ΔΔCT値の統計解析は、対照群に対する対応のないスチューデントt-検定を用いて行った(***:p<0.001;**:p<0.01;*:p<0.05)。
【0299】
(9.8 結果)
腎臓において発現不良であったMS4A4Aを除き、全ての試験したmRNAは、線維性組織(腎臓、肺及び皮膚)において良好に発現された(表11参照)。
【0300】
表11. 無傷の動物におけるmRNA発現レベル(Ct>30:低度、25<Ct<30:中等度、Ct<25:高度)
【表11】
【0301】
多くの遺伝子が、マウスUUOモデルにおいて、アップレギュレート又はダウンレギュレートされているのに対し、ごくわずかな調節が、ラットNTXモデル(4及び8週間)、並びに肺及び皮膚線維症モデルにおいて認められた。EFEMP2及びLIF物質は、少なくとも1種のマウス線維症モデルにおいてアップレギュレートされている。LIFは、両方の時点で(10日目及び21日目)UUOにおいて強力にアップレギュレートされている。ZMPSTE24は、UUOモデルにおいて、両方の時点で(10日目及び21日目)有意にダウンレギュレートされている(表12参照)。
【0302】
表12. 線維症モデルのqPCR解析(倍率>1.8:無傷の動物に対し有意な倍率の誘導;倍率<-1.8:無傷の動物に対し有意な倍率の阻害;ns:有意な変化なし;***:p<0.001;**:p<0.01;*:p<0.05)
【表12】
【0303】
表13:一次スクリーン、再スクリーン、M1対比スクリーン、M2 CD206バリデーションアッセイ及びM2毒性アッセイにおける標的物の性能のまとめ
【0304】
この表は、オン-標的であることが示された、56種の候補標的物の性能の概要を示す。第一列は、標的物遺伝子記号を示す。2つ組みB-スコアは、一次CCL18スクリーン及び再スクリーンについて示され、ここでB-スコアのカットオフ値≦-1.3を使用した。これの次に、M1 TNFα対比スクリーンを示し、ここでカットオフ値≧-1.3を使用した。M2 CD206バリデーションアッセイの結果は、2つ組Z-スコアで示し、ロバストZのカットオフ値≦-3を使用した。M2 CTB毒性アッセイは、2つ組Z-スコアで示し、無毒を示す標的を含むために、ロバストZのカットオフ値>-10を使用した。右側の縦列は、M2 CD206バリデーションアッセイにおけるM2核数を表している。
【表13】
【0305】
表14:オン-標的バリデーションにおける標的物の性能のまとめ
【0306】
この表は、オン-標的アッセイにおける標的物の性能の概要を示す。アデノウイルス構築体の確認された候補標的物遺伝子記号及びノックダウン配列を示している。ヒットと考えられたshRNAの結果を、示している。shRNAが、両方のOTアッセイにおいてヒットし且つ一次スクリーンにおいてオリジナルのヒットであった場合、対応する値は、太字で強調した。オン-標的バリデーションは、2つのバッチA及びBで行った。カットオフ値B-スコアが、バッチAについて≦-1.6、又はバッチBについて≦-3で、M2 CCL18オン-標的スクリーンの2つ組の結果を示している。リードアウトとしてのM1 TNFα対比スクリーンの結果は、B-スコアとして示し、ここで非-ヒットは、両方のバッチについてB-スコアのカットオフ値>-3を用いて同定した。CTB結果は、2つ組B-スコアとして、M2及びM1の両アッセイについて示している。M2アッセイにおいて、B-スコア>-8の場合、及びM1アッセイにおいて、B-スコア>-8(バッチA)若しくはB-スコア>-6(バッチB)の場合に、無毒の作用を基に、ヒットに含んだ。オン-標的は、オリジナルのshRNAを含む、少なくとも2つの独立したshRNAが、同じ作用を生じることを示している。
【表14】
【0307】
表15:shRNAによりオン-標的であることが確認された標的物の発現のまとめ
【0308】
確認された候補標的物コードを、標的物の対応する遺伝子クラスと共に示している。RNA-配列決定から得られた発現データは、2名の健常ドナー由来のM0又はM2マクロファージの平均FPKM値として示している。mRNA発現は、Ct値として示している(AM=肺胞マクロファージ、ND=検出不可能、nt=試験せず、AVG=平均)。
【表15】
(参考文献)
【化3】
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
[構成1]
線維症の治療に有用な化合物を同定する方法であって:
a)被験化合物を、配列番号:26-50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、それらの断片及び構造的機能性誘導体と接触させる工程;
b)被験化合物の該ポリペプチドへの結合親和性を決定する工程;
c)被験化合物を、マクロファージ細胞集団と接触させる工程;
d)マクロファージの代替活性化マクロファージへの分化に関連した特性を測定する工程;並びに
e)マクロファージの代替活性化マクロファージへの分化を減少又は阻害し、且つ該ポリペプチドへの結合親和性を示すことが可能な化合物を同定する工程:を含む、前記方法。
[構成2]
線維症の治療に有用な化合物を同定する方法であって:
a)被験化合物を、配列番号:26-50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、それらの機能性断片及び機能性誘導体と接触させる工程;
b)該ポリペプチドの活性を測定する工程;
c)被験化合物を、マクロファージ細胞集団と接触させる工程;並びに、
d)マクロファージの代替活性化マクロファージへの分化に関連した特性を測定する工程;並びに
e)マクロファージの代替活性化マクロファージへの分化を減少又は阻害し、且つ該ポリペプチドの活性を阻害することが可能な化合物を同定する工程:を含む、前記方法。
[構成3]
線維症の治療に有用な化合物を同定する方法であって:
a)被験化合物を、配列番号:26-50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを発現するマクロファージ細胞集団と接触させる工程;
b)該細胞中の該ポリペプチドの発現、活性及び/又は量を測定する工程;
c)マクロファージの代替活性化マクロファージへの分化に関連した特性を測定する工程;並びに
d)該ポリペプチドの発現、活性及び/又は量の減少を生じ、且つマクロファージの代替活性化マクロファージへの分化を減少又は阻害することが可能な化合物を同定する工程:を含む、前記方法。
[構成4]
マクロファージのM2マクロファージへの分化を減少又は阻害するのに有用な化合物を同定する方法であって:
a)被験化合物を、配列番号:26-50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、それらの機能性断片及び機能性誘導体と接触させる工程;
b)該ポリペプチドの活性を測定する工程;
c)被験化合物を、マクロファージ細胞集団と接触させる工程;並びに、
d)マクロファージの代替活性化マクロファージへの分化に関連した特性を測定する工程;並びに
e)マクロファージのM2マクロファージへの分化を減少又は阻害し、且つ該ポリペプチドの活性を阻害することが可能な化合物を同定する工程:を含む、前記方法。
[構成5]
マクロファージのM2マクロファージへの分化を減少又は阻害するのに有用な化合物を同定する方法であって:
a)被験化合物を、配列番号:26-50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、それらの機能性断片及び機能性誘導体と接触させるか、又は配列番号:26-50からなる群から選択されるアミノ酸をコードしている核酸若しくはそれらの機能性誘導体と接触させる工程;
b)該ポリペプチドの発現又は活性を測定する工程;
c)該ポリペプチドの発現又は活性を阻害することが可能な化合物を同定し、これにより、該ポリペプチドの発現又は活性の阻害が、マクロファージのM2マクロファージへの分化の減少又は阻害を生じるか又はこれに関連している工程:を含む、前記方法。
[構成6]
前記核酸が、配列番号:1-25からなる群から選択される、構成5記載の方法。
[構成7]
前記試験される化合物を対照と比較する工程を追加的に含む、構成1〜5のいずれか1記載の方法。
[構成8]
前記ポリペプチドが、検出可能な標識と結合されている、構成1〜5のいずれか1記載の方法。
[構成9]
前記工程(a)及び(b)の該ポリペプチド配列が、インビトロ無細胞調製物中に存在する、構成1又は2記載の方法。
[構成10]
前記工程(a)及び(b)の該ポリペプチド配列が、細胞内に存在する、構成1、2、4又は5のいずれか1記載の方法。
[構成11]
前記細胞が、該ポリペプチドを天然に発現する、構成10又は3記載の方法。
[構成12]
前記細胞が、該ポリペプチドを発現するように操作されている、構成10又は3記載の方法。
[構成13]
前記細胞が、哺乳類細胞である、構成10〜12のいずれか記載の方法。
[構成14]
前記細胞が、マクロファージ細胞である、構成13記載の方法。
[構成15]
前記特性が、代替活性化マクロファージのマーカーの放出又は発現の阻害である、構成1〜4のいずれか記載の方法。
[構成16]
前記特性が、CCL18、CCL13、TGFβ、CCL22、CCL17、可溶性フィブロネクチン、葉酸受容体β、CD206、及びCD163からなる群から選択されるマーカーの発現又は放出である、構成15記載の方法。
[構成17]
前記マーカーが、CCL18又はCD206である、構成16記載の方法。
[構成18]
前記細胞が、M2マクロファージへのマクロファージ分化を誘導する因子(M2誘導性因子)により誘発されている、構成1〜4のいずれか記載の方法。
[構成19]
前記細胞が、IL4、IL10、IL13、免疫複合体及びリポ多糖からなる群から選択される1以上のM2誘導性因子により誘発されている、構成1〜4のいずれか記載の方法。
[構成20]
前記細胞が、IL10及びIL4の組合せにより誘発されている、構成19記載の方法。
[構成21]
前記方法が:
マクロファージの古典的活性化(M1)マクロファージへの分化に関連した特性を測定し、且つ該分化を阻害しない化合物を同定する工程:を追加的に含む、構成1〜5のいずれか記載の方法。
[構成22]
前記特性が、M1マクロファージ表現型のマーカーのレベル及び/又は発現であり、並びに該マーカーのレベルを増加しない化合物が、同定される、構成21記載の方法。
[構成23]
前記マーカーが、TNFαである、構成22記載の方法。
[構成24]
前記被験化合物が、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、短ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、及びマイクロRNA(miRNA)からなる群から選択される、構成3記載の方法。
[構成25]
前記被験化合物が、配列番号:1-25からなる群から選択される核酸配列の約17〜約30の近接ヌクレオチドの天然に存在するポリヌクレオチド配列に相補的な、又はこれから操作された核酸配列を含む、構成24記載の方法。
[構成26]
哺乳類細胞中のベクターが、該化合物を発現する、構成24記載の方法。
[構成27]
前記ベクターが、アデノウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス又はセンダイウイルスのベクターである、構成26記載の方法。
[構成28]
前記アンチセンスポリヌクレオチド、該siRNA又は該shRNAが、センス鎖に相補的な17-25ヌクレオチドのアンチセンス鎖を含み、ここで該センス鎖が、配列番号:1-25からなる群から選択される核酸配列の17-25の連続ヌクレオチドから選択される、構成24記載の方法。
[構成29]
前記化合物が、抗体又は抗体断片である、構成1〜5のいずれか1記載の方法。
[構成30]
線維化状態の治療に使用するための、配列番号:26-50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する、抗体又はそれらの断片を含有する医薬組成物。
[構成31]
前記抗体が、モノクローナル抗体である、構成30記載の医薬組成物。
[構成32]
前記抗体が、単鎖抗体である、構成30記載の医薬組成物。
[構成33]
線維化状態の治療に使用するための、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)及び短ヘアピンRNA(shRNA)からなる群から選択される物質を含有する医薬組成物であって、ここで該物質が、線維化状態の治療に使用するための、配列番号:1-25からなる群から選択される核酸配列の約17〜約30の近接ヌクレオチドの天然に存在するポリヌクレオチド配列に相補的な、又はこれから操作された核酸配列を含む、前記医薬組成物。
[構成34]
構成30〜33のいずれか一項記載の線維化状態の治療において使用するための医薬組成物であって、ここで該線維化状態が、マクロファージの代替活性化(M2)マクロファージへの分化に関連した線維化状態である、前記医薬組成物。
[構成35]
前記線維化状態が、特発性肺線維症(IPF)、嚢胞性線維症、医原性薬剤誘発性線維症を含む様々な病因の他のびまん性実質性肺疾患、職業及び/又は環境が誘導した線維症、肉芽腫性疾患(サルコイドーシス、過敏肺炎)、膠原血管病、肺胞タンパク症、ランゲルハンス細胞肉芽腫症、リンパ脈管筋腫症、遺伝性疾患(ハーマンスキー・パドラック症候群、結節硬化症、神経線維腫症、代謝性蓄積症、家族性間質性肺疾患)、放射線誘導性線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、強皮症、ブレオマイシン誘導性肺線維症、慢性喘息、珪肺、アスベスト誘導性肺線維症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、腎線維症、尿細管間質性線維症、糸球体腎炎、巣状分節性糸球体硬化症、IgA腎症、高血圧、アルポート症候群、消化管線維症、肝線維症、肝硬変、アルコール誘導性肝線維症、毒物/薬物誘導性肝線維症、ヘモクロマトーシス、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、胆管損傷、原発性胆汁性肝硬変症、感染症誘導性肝線維症、ウイルス誘導性肝線維症、自己免疫肝炎、角膜瘢痕化、肥厚性瘢痕化、デュピュイトラン病、ケロイド、皮膚線維症、皮膚強皮症、全身性硬化症、脊髄損傷/線維症、骨髄線維症、血管再狭窄、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化、ヴェーゲナー肉芽腫症及びペイロニー病から選択される、構成34記載の線維化状態の治療において使用する医薬組成物。
[構成36]
前記線維化状態が、特発性肺線維症(IPF)である、構成35記載の線維化状態の治療において使用する医薬組成物。
[構成37]
マクロファージの代替活性化(M2)マクロファージへの分化を減少又は阻害するインビトロ方法であって、マクロファージ細胞を含む哺乳類細胞の集団を、配列番号:26-50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの活性又は発現のインヒビターと、接触させる工程を含む、前記インビトロ方法。
[構成38]
前記インヒビターが、抗体である、構成37記載の方法。
[構成39]
前記抗体が、モノクローナル抗体である、構成37記載の方法。
[構成40]
前記インヒビターが、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)及び短ヘアピンRNA(shRNA)からなる群から選択され、ここで該インヒビターが、該ポリペプチドをコードしている核酸の約17〜約30の近接ヌクレオチドの天然に存在するポリヌクレオチド配列に相補的な、又はこれから操作された核酸配列を含む、構成37記載の方法。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]