(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6437480
(24)【登録日】2018年11月22日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 1/06 20060101AFI20181203BHJP
B62D 1/08 20060101ALI20181203BHJP
B60R 16/027 20060101ALI20181203BHJP
【FI】
B62D1/06
B62D1/08
B60R16/027 T
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-70374(P2016-70374)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-178133(P2017-178133A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2017年1月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】大舘 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 傑
【審査官】
青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2016/013180(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/123222(WO,A1)
【文献】
特開2014−190856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/06
B60R 16/027
B62D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、乗員が把持するリムに乗員の状態を検知するための左側センサ及び右側センサが装着されたステアリング本体と、少なくとも前記左側センサ及び前記右側センサからの検知信号に基づいて前記乗員の状態を検知する検知回路とを有するステアリング装置であって、
前記ステアリング本体は、
中心部に設置された芯金と、
前記芯金上にウレタン製の基材及び革部材を介して積層された左側センサ用導電膜及び右側センサ用導電膜とを有し、
前記検知回路から延びる左側ハーネスは、前記左側センサに直接又は間接的に半田付けされ、
前記検知回路から延びる右側ハーネスは、前記右側センサに直接又は間接的に半田付けされ、
前記半田付けされた部位と前記基材との間に、前記基材よりも硬質な部材が配置され、
前記検知回路から前記左側センサまでの左側ハーネスの配線長と、前記検知回路から前記右側センサまでの右側ハーネスの配線長とがほぼ同じであることを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
請求項1記載のステアリング装置において、
前記左側ハーネスと前記右側ハーネスとは、電気的特性が同一であることを特徴とするステアリング装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のステアリング装置において、
前記ステアリング本体は、中央スポーク、左側スポーク及び右側スポークを有し、
前記中央スポークを基準に前記左側スポークと前記右側スポークとが線対称に配置され、
前記中央スポークに前記検知回路が設置され、
前記左側ハーネスと前記左側センサとの接続部分は、前記左側スポークと前記リムとの接続部分の近傍に設定され、
前記右側ハーネスと前記右側センサとの接続部分は、前記右側スポークと前記リムとの接続部分の近傍に設定されていることを特徴とするステアリング装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のステアリング装置において、
前記ステアリング本体を暖めるためのヒータ部を有し、
前記ヒータ部は、ヒータを構成する導電フィルムを有し、
前記導電フィルムは、前記右側センサ及び前記左側センサと前記基材との間に配置されていることを特徴とするステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設置され、乗員が車両の運転の際に把持するステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員がステアリングホイールを把持しているかを検知する手段を有するステアリング装置が例えば特許文献1〜3に開示されている。
【0003】
特許文献1には、運転者がステアリングホイールを把持しているか否かを検出する把持検出手段をステアリングホイールの円周に沿って配設し、把持検出手段による検知結果に応じて警報手段を選択的に作動させるようにしたステアリング装置が記載されている。
【0004】
特許文献2には、複数のセンサが設けられた車両用のステアリングホイールにおいて、複数のセンサをそれぞれ複数のセグメントに分割することで、ステアリングホイール上の手の位置を検知可能にすることが開示されている。
【0005】
特許文献3には、配線数を減らして構造の簡略化を図ったステアリング装置が開示されている。このステアリング装置は、ステアリングコアに装着される静電容量センサを有する。この静電容量センサは、絶縁性を有する可撓性基板と、可撓性基板の上に設けられた複数の静電容量検出電極とを有する。各静電容量検出電極は、ステアリングコアに装着された状態で、ホイールが延びる方向を軸心としたステアリングコアの周方向に所定間隔で配置され、それぞれがホイールの延びる方向に延びるように形成されている。複数の静電容量検出電極は、ステアリングコアに装着された状態で、ステアリングコアの周方向に隣接する電極同士がそれぞれ異なる組に属するように複数の組に分割されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−059459号公報
【特許文献2】特表2003−535757号公報
【特許文献3】特開2015−147531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1及び2に記載のステアリングホイールにおいて、把持部分の検知精度を向上させるには、センサの数を増やすことが考えられるが、その分、配線数が増え、サイズが大きくなると共に、配線作業に時間がかかる等、コストの高価格化が懸念される。
【0008】
特許文献3に記載のステアリング装置は、ステアリングコアに静電容量センサを装着するため、配線数を減らして構造の簡略化を図ることができる。しかし、特許文献3のように、ステアリングコアに装着される静電容量センサを有するステアリング装置においては、乗員がステアリング装置を把持していること、すなわち、乗員のステアリング把持を検知する場合、微小な静電容量の変化を計測しなければならない。
【0009】
この場合、ノイズ耐性が弱いと考えられ、乗員のステアリング把持を正確に検知することができないおそれがある。
【0010】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、乗員のステアリング把持のように、微小な静電容量の変化を検知する場合に、その変化を確実、且つ、正確に検知することができ、しかも、複雑な回路構成や構造を採用する必要がないステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1] 本発明に係るステアリング装置は、車両に搭載され、乗員が把持するリムに乗員の状態を検知するための左側センサ及び右側センサが装着されたステアリング本体と、少なくとも前記左側センサ及び前記右側センサからの検知信号に基づいて前記乗員の状態を検知する検知回路とを有するステアリング装置であって、前記検知回路から前記左側センサまでの左側ハーネスの配線長と、前記検知回路から前記右側センサまでの右側ハーネスの配線長とがほぼ同じであることを特徴とする。ほぼ同じとは、配線長の差が5mm以下を示す。
【0012】
左側ハーネスの配線長と右側ハーネスの配線長とをほぼ同じにすることで、検知回路から左側センサ間のインピーダンスと検知回路から右側センサ間のインピーダンスとを一定にすることが可能となる。その結果、乗員のステアリング把持のように、微小な静電容量の変化を検知する場合に、その変化を確実、且つ、正確に検知することができる。しかも、複雑な回路構成や構造を採用する必要がないため、製造コストの低減化及び保守点検の簡便さにつながる。
【0013】
[2] 本発明において、前記左側ハーネスと前記右側ハーネスとは、電気的特性が同一であることが好ましい。電気的特性が同一のハーネスを用いることで、左側ハーネスと右側ハーネスの配線長を同一にするのみで、左側ハーネスと右側ハーネスの各インピーダンスが同一となり、コストをかけることなく、左右の接触検知を精度よく行うことができる。
【0014】
[3] 本発明において、前記ステアリング本体は、中央スポーク、左側スポーク及び右側スポークを有し、前記中央スポークを基準に前記左側スポークと前記右側スポークとが線対称に配置され、前記中央スポークに前記検知回路が設置され、前記左側ハーネスと前記左側センサとの接続部分は、前記左側スポークと前記リムとの接続部分の近傍に設定され、前記右側ハーネスと前記右側センサとの接続部分は、前記右側スポークと前記リムとの接続部分の近傍に設定されていることが好ましい。
【0015】
T型スポークやY型スポーク等のように、中央スポークを基準に前記左側スポークと右側スポークとが線対称に配置されている場合、中央スポークに検知回路を設置し、左側ハーネスと左側センサとの接続部分を、左側スポークとリムとの接続部分の近傍に設定し、右側ハーネスと右側センサとの接続部分を、右側スポークとリムとの接続部分の近傍に設定することで、容易に、且つ、最も高い配線効率で、左側ハーネスの配線長と右側ハーネスの配線長とをほぼ同じにすることができる。
【0016】
[4] 本発明において、前記ステアリング本体は、中心部に設置された芯金と、前記芯金上に
ウレタン製の基材及び革部材を介して積層された左側センサ用導電膜及び右側センサ用導電膜とを有し、前記検知回路から延びる前記左側ハーネスは、前記左側センサに直接又は間接的に半田付けされ、前記検知回路から延びる前記右側ハーネスは、前記右側センサに直接又は間接的に半田付けされ、前記半田付けされた部位と前記基材との間に、
ウレタンよりも硬質な部材が配置されていることが好ましい。
【0017】
左側ハーネスを左側センサに直接又は間接的に半田付けすると、革部材が熱によって収縮するおそれがある。これは、右側ハーネスを右側センサに直接又は間接的に半田付けする際も同様である。このような革部材の熱収縮は、半田付けされた部位に変形等の影響を及ぼし、例えば美観を損なったり、半田が剥がれるおそれがある。そこで、前記半田付けされる部位と前記基材との間に、事前に
ウレタンよりも硬質な部材を配置する。基材と、基材を被覆する革部材との間に、硬質な部材が介在することで、革部材のうち、硬質な部材と接する部分は面方向に引っ張られた状態となる。その結果、左側ハーネスを左側センサに直接又は間接的に半田付けしても、革部材での熱収縮が抑制され、美観を損なったり、半田が剥がれるおそれもなくなる。これは、右側ハーネスを右側センサに直接又は間接的に半田付けする際も同様である。
【0018】
また、基材を熱に弱いウレタ
ンで構成した場合、基材が半田付けの熱によって収縮するおそれがあるが、前記半田付けされる部位と前記基材との間に、事前に
ウレタンよりも硬質な部材を配置することで、以下のような効果を奏する。すなわち、基材が熱収縮しても、熱収縮による変形は、硬質な部材によって抑制され、半田付けされた部分に影響を及ぼさない。また、硬質な部材として、ガラス基板、ガラスエポキシ基板、ベークライト基板、セラミック基板等を用いれば、これらの基板は、熱抵抗が高いため、半田付けの際の熱が基材に伝達しにくくなり、半田付け作業による基材の熱収縮を抑制することができる。
【0019】
[5] 本発明において、前記ステアリング本体を暖めるためのヒータ部を有し、前記ヒータ部は、ヒータを構成する導電フィルムを有し、前記導電フィルムは、前記右側センサ及び前記左側センサと前記基材との間に配置されていることが好ましい。
【0020】
通常は、基材が有する静電容量が検知回路にてオフセット容量として検知されることになる。このオフセット容量が大きいと、左側センサ及び右側センサでの微小な容量の変化を検知回路にて捉え難くなるおそれがある。そこで、導電フィルムを、右側センサ及び左側センサと基材との間に配置することで、基材が持つ静電容量を右側センサ及び左側センサに対してシールドすることができ、左側センサ及び右側センサでの微小な容量の変化を検知回路にて捉え易くなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るステアリング装置によれば、乗員のステアリング把持のように、微小な静電容量の変化を検知する場合に、その変化を確実、且つ、正確に検知することができ、しかも、複雑な回路構成や構造を採用する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施の形態に係るステアリング装置を示す正面図である。
【
図2】検知回路の一構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3Aは左側ハーネスと左側センサとの電気的接続部分の断面を示す図であり、
図3Bは右側ハーネスと右側センサとの電気的接続部分の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るステアリング装置の実施の形態例を
図1〜
図3Bを参照しながら説明する。
【0024】
本実施の形態に係るステアリング装置10は、
図1に示すように、車両に搭載され、ステアリング本体12と、検知回路14とを有する。
【0025】
ステアリング本体12は、乗員(運転者)が把持するリム16と、リム16の中央に設置されたハブ18と、ハブ18とリム16間に設置された中央スポーク20C、左側スポーク20L及び右側スポーク20Rとを有する。各スポーク20C、20L、20Rは、中央スポーク20Cを基準に左側スポーク20Lと右側スポーク20Rとが線対称に配置されている。
図1では、中央スポーク20C、左側スポーク20L及び右側スポーク20RがT字状に配置されたT型スポークを示す。もちろん、Y型スポークでも構わない。
【0026】
リム16の内部には、乗員の状態を検知するための左側センサ22L及び右側センサ22Rを有する。これら左側センサ22L及び右側センサ22Rは、いずれも静電容量センサで構成されている。さらに、リム16内には、該リム16を暖めるためのヒータ部24が設置されている。ヒータ部24は、ヒータを構成する電熱線としての導電フィルム26(
図3A及び
図3B参照)を有する。
【0027】
検知回路14は、例えばステアリング装置10を制御する電子制御装置(以下、単にECU28という)に組み込まれている。検知回路14と左側センサ22Lは左側ハーネス30Lによって電気的に接続され、検知回路14と右側センサ22Rは右側ハーネス30Rによって電気的に接続されている。また、ヒータ部24は、ECU28とヒータ用配線32によって電気的に接続され、ECU28を通じて電力が供給される。左側ハーネス30Lと右側ハーネス30Rは、それぞれ電気的特性が同じ材料で構成されている。
【0028】
検知回路14は、
図2に示すように、少なくとも心拍検出部34と乗員状態解析部36とを有する。
【0029】
心拍検出部34は、左側センサ22Lにより検出された電位と、右側センサ22Rにより検出された電位との電位差に基づき、運転者の心拍を示す波形(時系列信号)を乗員状態解析部36に出力する。
【0030】
乗員状態解析部36は、心拍検出部34からの出力に基づき、車両が走行中において、乗員がステアリング本体12のリム16を両手で握っているかどうかを判定する。乗員状態解析部36は、心拍が測定されない場合、車両の走行中において、乗員が片手を離していることが推定されるため、乗員がリム16を両手で握っていないと判定する。また、乗員状態解析部36は、心拍検出部34からの出力に基づき、リム16を握る乗員の手の肌の水分量が少ないかどうかを判定する。
【0031】
そして、本実施の形態に係るステアリング装置10は、検知回路14から左側センサ22Lまでの左側ハーネス30Lの配線長Llと、検知回路14から右側センサ22Rまでの右側ハーネス30Rの配線長Lrとがほぼ同じである。ここで、「ほぼ」とは、左側ハーネス30Lの配線長Llと右側ハーネス30Rの配線長Lrとの差が5mm以下であることを示す。
【0032】
左側ハーネス30Lの配線長Llと右側ハーネス30Rの配線長Lrとをほぼ同じにすることで、検知回路14から左側センサ22L間のインピーダンスと検知回路14から右側センサ22R間のインピーダンスとを一定にすることが可能となる。その結果、乗員のステアリング把持のように、微小な静電容量の変化を検知する場合に、その変化を確実、且つ、正確に検知することができる。しかも、複雑な回路構成や構造を採用する必要がないため、製造コストの低減化及び保守点検の簡便さにつながる。しかも、左側ハーネス30Lと右側ハーネス30Rが、それぞれ電気的特性が同じ材料で構成されているため、左側ハーネス30Lと右側ハーネス30Rの配線長Ll、Lrを同一にするのみで、左側ハーネス30Lと右側ハーネス30Rの各インピーダンスが同一となり、コストをかけることなく、左右の接触検知を精度よく行うことができる。
【0033】
特に、本実施の形態では、ECU28を中央スポーク20C内に設置している。これにより、左側ハーネス30Lを中央スポーク20Cの中央部分から斜め上方の左側スポーク20Lを通じて左側センサ22Lに配線し、右側ハーネス30Rを中央スポーク20Cの中央部分から斜め上方の右側スポーク20Rを通じて右側センサ22Rに配線し、さらに、ヒータ用配線32を中央スポーク20Cの中央部分から下方に向かってヒータ部24(導電フィルム26)に配線することができる。すなわち、電力を必要とするヒータ用配線32と、微弱な信号(微小電流等)を扱う左側ハーネス30L及び右側ハーネス30Rとを離間して配線することができ、ヒータ用配線32からの電磁ノイズ等による影響を回避することができる。
【0034】
さらに、左側ハーネス30Lと左側センサ22Lとの電気的接続部分38Lを、左側スポーク20Lとリム16との接続部分40Lの近傍に設定し、右側ハーネス30Rと右側センサ22Rとの電気的接続部分38Rを、右側スポーク20Rとリム16との接続部分40Rの近傍に設定している。そのため、容易に、且つ、最も高い配線効率で、左側ハーネス30Lの配線長Llと右側ハーネス30Rの配線長Lrとをほぼ同じにすることができる。
【0035】
ここで、ステアリング本体12の断面構造について、
図3A及び
図3Bを参照しながら説明する。
図3Aは、左側ハーネス30Lと左側センサ22Lとの電気的接続部分38Lの断面を示し、
図3Bは、右側ハーネス30Rと右側センサ22Rとの電気的接続部分38Rの断面を示す。
【0036】
ステアリング本体12は、
図3A及び
図3Bに示すように、中心部に設置された芯金42と、芯金42上に基材44及び革部材46を介して積層された左側センサ用導電膜48L(
図3A参照)及び右側センサ用導電膜48R(
図3B参照)とを有する。基材44の構成材料としてはウレタン等が好ましく採用される。基材44は芯金42を被覆し、革部材46は基材44を被覆する。
【0037】
左側センサ用導電膜48L及び右側センサ用導電膜48Rは、例えば以下のようにして成膜される。すなわち、革部材46上にベースコート層50を塗布し、乾燥後、例えばスプレー塗装で導電塗料(左側センサ用導電膜48L及び右側センサ用導電膜48Rとなる導電塗料)を塗布する。その後、乾燥して、導電塗料上にトップコート層52を塗装し、その後、乾燥することで、左側センサ用導電膜48L及び右側センサ用導電膜48Rが成膜される。すなわち、革部材46上に左側センサ22L及び右側センサ22Rが形成される。
【0038】
ヒータを構成する導電フィルム26は、左側センサ22L及び右側センサ22Rと基材44との間に配置されている。
図3A及び
図3Bの例では、基材44と革部材46との間に接着剤54を介して接着、配置されている。
【0039】
また、検知回路14から延びる左側ハーネス30Lは、左側センサ22L(左側センサ用導電膜48L)に直接又は間接的に半田層56によって電気的に接続(半田付け)され、同様に、検知回路14から延びる右側ハーネス30Rは、右側センサ22R(右側センサ用導電膜48R)に直接又は間接的に半田層56によって電気的に接続(半田付け)されている。
図3A及び
図3Bでは、左側ハーネス30Lを、左側センサ用導電膜48Lに直接貼付された導電テープ58を介して間接的に左側センサ用導電膜48Lに半田付けし、右側ハーネス30Rを、右側センサ用導電膜48Rに直接貼付された導電テープ58を介して間接的に右側センサ用導電膜48Rに半田付けした例を示す。
【0040】
さらに、本実施の形態では、半田付けされた部位(電気的接続部分38L及び38R)と基材44との間に、
ウレタンよりも硬質な部材60が接着剤54を介して接着、配置されている。硬質な部材60としては、
ウレタンよりも硬質であればどのような材料でもよいが、ヒータを構成する導電フィルム26の近傍に設置されることと、乗員の操舵によって回転するリム16内に設置される関係等から、絶縁性を有し、且つ、軽量な材料であることが好ましい。例えばガラス基板、ガラスエポキシ基板、ベークライト基板、セラミック基板等が挙げられる。
【0041】
左側ハーネス30Lを左側センサ22Lに直接又は間接的に半田付けすると、革部材46が熱によって収縮するおそれがある。これは、右側ハーネス30Rを右側センサ22Rに直接又は間接的に半田付けする際も同様である。このような革部材46の熱収縮は、半田付けされた部位に変形等の影響を及ぼし、例えば美観を損なったり、半田が剥がれるおそれがある。そこで、半田付けされる部位と基材44との間に、事前に
ウレタンよりも硬質な部材60を配置する。
【0042】
基材44と、基材44を被覆する革部材46との間に、硬質な部材60が介在することで、革部材46のうち、硬質な部材と接する部分は面方向に引っ張られた状態となる。その結果、左側ハーネス30Lを左側センサ22Lに直接又は間接的に半田付けしても、革部材46での熱収縮が抑制され、美観を損なったり、半田が剥がれるおそれもなくなる。これは、右側ハーネス30Rを右側センサ22Rに直接又は間接的に半田付けする際も同様である。
【0043】
また、基材44を熱に弱いウレタ
ンで構成した場合、基材44が半田付けの熱によって収縮するおそれがあるが、上述のように、半田付けされる部位と基材44との間に、事前に
ウレタンよりも硬質な部材60を配置することで、以下のような効果を奏する。すなわち、基材44が熱収縮しても、熱収縮による変形は、硬質な部材60によって抑制され、半田付けされた部分に影響を及ぼさない。また、硬質な部材60として、ガラス基板、ガラスエポキシ基板、ベークライト基板、セラミック基板等を用いれば、これらの基板は、熱抵抗が高いため、半田付けの際の熱が基材44に伝達しにくくなり、半田付け作業による基材44の熱収縮を抑制することができる。これは、基材44の熱収縮による半田付けされた部位への影響を低減できることにつながる。
【0044】
さらに、本実施の形態では、上述したように、ヒータを構成する導電フィルム26を左側センサ22L及び右側センサ22Rと基材44との間に配置している。通常は、基材44の静電容量が検知回路14にてオフセット容量として検知されることになる。このオフセット容量が大きいと、左側センサ22L及び右側センサ22Rでの微小な容量の変化を検知回路14にて捉え難くなるおそれがある。そこで、導電フィルム26を、左側センサ22L及び右側センサ22Rと基材44との間に配置することで、基材44の静電容量を左側センサ22L及び右側センサ22Rに対してシールドすることができ、左側センサ22L及び右側センサ22Rでの微小な容量の変化を検知回路にて捉え易くなる。これは、検知回路14での検知精度の向上につながる。
【0045】
本発明は上記した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。
【符号の説明】
【0046】
10…ステアリング装置 12…ステアリング本体
14…検知回路 16…リム
18…ハブ 20C…中央スポーク
20L…左側スポーク 20R…右側スポーク
22L…左側センサ 22R…右側センサ
24…ヒータ部 26…導電フィルム
30L…左側ハーネス 30R…右側ハーネス
32…ヒータ用配線 38L、38R…電気的接続部分
40L、40R…接続部分 42…芯金
44…基材 46…革部材
48L…左側センサ用導電膜 48R…右側センサ用導電膜
56…半田層 58…導電テープ
60…硬質な部材 Ll、Lr…配線長